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特許異議申立

2024-700013

蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス

審判番号
2024-700013
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-011151
登録番号
7305103
請求日
2024年01月09日
審決日
2024年06月17日
公報発行日
2024年07月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東洋インキSCホールディングス株式会社
  • 【権利者】東洋モートン株式会社
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 岩間 直純
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7305103号発明「蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7305103号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7305103号の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和5年1月27日に出願され、令和5年6月30日にその特許権の設定登録がなされ、同年7月10日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年1月9日特許異議申立人 松山 徳子による請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件請求項1~10に係る特許発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤であって、 前記ポリオール主剤(A)が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオール(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを含み、 前記ポリエステルポリオール(A1)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分との反応生成物であり、前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを80モル%以上含有し、 前記接着剤を硬化させた硬化物の250℃における貯蔵弾性率の値が、0.10MPa~10MPaである、蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項2】 前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、ジエチレングリコールを0~10モル%含有する、請求項1に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項3】 前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを90~100モル%含有する、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項4】 前記接着剤を硬化させた硬化物の軟化点が、250~350℃である、請求項 1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項5】 前記エポキシ樹脂(A2)の含有率が、ポリエステルポリオール(A1)の質量を基準として、20~100質量%である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項6】 前記ポリイソシアネート 硬化剤(B)が、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、又はヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体を含む、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項7】 前記オキシアルキレン構造が、オキシエチレン構造である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。 【請求項8】 少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、 前記外層側接着剤層が、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物である、蓄電デバイス包装材。 【請求項9】 請求項8に記載の蓄電デバイス包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器。 【請求項10】 請求項9に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイス。 また、従来技術には「特定のポリエステルポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤を使用しているものの、車載用途や全固体電池等で要求される高耐熱ポリエステル系基材を用いた場合、ラミネート後の外観、成型性、変形成型後のヒートシール耐性、及び成型後の長期高温耐久性に課題がある。」(【0007】)ところ、本件発明1~10は、その発明特定事項により、「高耐熱ポリエステル系基材を塗工基材として用いた場合においても優れたラミネート外観を示し、且つ、成型性、変形成型後のヒートシール耐性に優れ、成型後の長期高温耐久性試験後においても優れた成型性を維持し層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス包装材用接着剤、並びに、該接着剤を用いてなる、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイスを提供することができる。」(【0020】)との効果を奏するものと認められる。 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証~甲第4号証を提出し、以下の申立理由により、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 1 申立理由(進歩性) 本件発明1~10は、甲1号証に記載された発明若しくは甲2号証に記載された発明に基づき、又は、甲1号証に記載された発明若しくは甲2号証に記載された発明と本件特許出願時の周知技術とに基づき、当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反しているため、同法第113条第2号により、その特許は取り消されるべきである。 [証拠方法] 甲第1号証:特開2014-091770号公報 甲第2号証:特開2023ー006643号公報 甲第3号証:特開2017ー152244号公報 甲第4号証:国際公開第2015/087761号 なお、以下、「甲第1号証」~「甲第4号証」をそれぞれ「甲1」~「甲4」と省略して言うことがある。 第4 当審の判断 1 証拠の記載事項 (1) 甲1号証 ア 甲1号証の記載 甲1には、以下の記載がある。 (ア) 「【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 近年、車載や家庭蓄電など用途が拡大すると共に、二次電池の大容量化が求められており、成型性の良さが電池用包装材には求められるようになっている。 また、車載や家庭蓄電用途の二次電池は屋外に設置され、長期の耐用年数が求められるようになっており、包装材の各プラスチックフィルムや金属箔などの層間の接着強度が長期耐久試験後においても維持し、さらに外観に異常が無いことが求められている。 本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、優れた成型性を有し、長期耐久性試験後においても層間の接着強度の低下がなく、層間の浮きなどの外観不良の無い電池、電池用包装材、接着剤を提供する事を課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は上記課題に鑑み、成されたものであり、ポリウレタンを形成するための水酸基成分として、ガラス転移温度の異なるポリエステルポリオール(A1)、(A2)を特定の割合で含むポリオール成分(A)を用い、前記ポリオール成分(A)の反応性官能基に対し、相当過量なイソシアネート成分を硬化剤として含有する接着剤に関する。 即ち、本発明は、主剤とポリイソシアネート硬化剤とを含有する電池用包装材用ポリウレタン接着剤であって、 前記主剤が、ガラス転移温度が40℃以上のポリエステルポリオール(A1)5~50重量%およびガラス転移温度が40℃未満のポリエステルポリオール(A2)95~50重量%を含むポリオール成分(A)とシランカップリング剤(B)とを含み、 前記ポリオール成分(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が10~30であることを特徴とする電池用包装材用ポリウレタン接着剤に関する。」 (イ) 「【0026】 本発明のポリウレタン接着剤は、耐久性試験後の接着強度の維持や、フィルムの浮きによる外観不良を抑制するために、カルボキシル基と反応可能な化合物(C)をさらに使用することができる。カルボキシル基と反応可能な化合物(C)は主剤に含ませても、硬化剤に含ませても良く、また主剤と硬化剤とを混合させる際に加えることもできる。 カルボキシル基と反応可能な化合物(C)としては、分子内にグリシジル基を有する化合物、またはカルボジイミド基を有する化合物、またはオキサゾリン基を有する化合物が好ましい。カルボキシル基と反応可能な化合物(C)を使用することにより、長期耐久性試験にて接着剤層中のエステル結合が分解して発生したカルボン酸と反応させ、接着剤層の分子量低下による凝集力低下を抑制し、接着強度の低下や外観不良の発生を抑制する事が出来る。」 (ウ) 「【0030】 カルボキシル基と反応可能な化合物(C)としては、ビスフェノール型エポキシ化合物であることが好ましく、数平均分子量400~5000のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が400より小さいと接着剤層が柔らかくなり十分な耐久性が得られない傾向にある。エポキシ樹脂の数平均分子量が5000より大きいとポリエステルポリオールとの相溶性が低下し、外観不良が発生する恐れがある。 また、ポリオール成分(A)100重量部に対し、カルボキシル基と反応可能な化合物(C)は1~100重量部、さらには5~50重量部含ませることが好ましい。」 (エ) 「【実施例】 【0042】 次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の%は総て質量%を意味する。 (合成例1) イソフタル酸166.0g、テレフタル酸166.0g、エチレングリコール85.6g、ネオペンチルグリコール95.6gを仕込み、200~220℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.12gを添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で6時間エステル交換反応を行い、数平均分子量20,000、Tg60℃のポリエステルポリオールを得た。 このポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整し、水酸基価2.71mgKOH/g、酸価0.1mgKOH/gのポリエステルポリオール溶液(1)を得た。」 (オ) 「【0046】 (合成例3) イソフタル酸83.2g、テレフタル酸83.2g、エチレングリコール142.6gを仕込み、200~220℃で8時間エステル化反応を行い、所定量の水を留出後、アゼライン酸188gを加え、更に4時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.13gを添加し、徐々に減圧し、1.3~2.7hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量22,000、Tg-5℃のポリエステルポリオールを得た。 このポリエステルポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整し、水酸基価2.45mgKOH/g、酸価0.1mgKOH/gのポリエステルポリオール溶液(3)を得た。」 (カ) 「【0049】 [主剤(1)の製造] ポリエステルポリオール溶液(1)60g(固形分30g)と、ポリエステルポリオール溶液(3)140g(固形分70g)と、KBM-403(シランカップリング剤)1gとを配合した後、酢酸エチル136gを加え、不揮発分が30%の主剤(1)を得た。主剤(1)の水酸基価と酸価の合計は約1.56mgKOH/gであった。 【0050】 [主剤(2)~(11)の製造] 主剤(1)の場合と同様にして、ポリエステルポリオール溶液(1)~(5)並びに下記に示すシランカップリング剤、及びカルボキシル基と反応可能な化合物を表1に示す割合(g)で配合した後、不揮発分が30%となるように酢酸エチルを加えて、主剤(2)~(11)を得た。 シランカップリング剤 KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製) KBM-903:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製) カルボキシル基と反応可能な成分 Y012:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製)」 (キ) 「【0058】 [図:0001412303000001.jpg] 」 イ 甲1発明 前記(ア)より、甲1号証には、 「ポリエステルポリオール(A1)、(A2)」と「ポリイソシアネート硬化剤」とを含有する電池用包装材用ポリウレタン接着剤が記載されていると認められる。また、前記(ア)より、電池は二次電池であると認められる。 前記(イ)、(ウ)より、ビスフェノール型エポキシ化合物を主剤に含ませてもよいことが記載されている。 前記(エ)~(キ)より、実施例として、ポリエステルポリオール(A1)としてポリエステルポリオール溶液(1)を重量比60,ポリエステルポリオール(A2)としてポリエステルポリオールを重量比140含み、ビスレノールA型エポキシ樹脂であるYD-012を含む、主剤(5)が記載されていると認める。 そして、ポリエステルポリオール溶液(1)は、原料として、イソフタル酸、テレフタル酸、多価アルコールとして、エチレングリコール85.6g、ネオペンチルグリコール95.6gを含む。 してみれば、甲1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「ポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤とを含有する二次電池用包装材ポリウレタン接着剤であって、 ポリオール主剤が、ポリエステルポリオールとビスレノールA型エポキシ樹脂であるYD-012を含み、 前記ポリエステルポリオールは、原料として、イソフタル酸、テレフタル酸、多価アルコールとして、エチレングリコール85.6g、ネオペンチルグリコール95.6gを含む、 二次電池用包装材ポリウレタン接着剤」 (2) 甲2号証 ア 甲2号証の記載 甲2には、以下の記載がある。 (ア) 「【0007】 近年、車載や家庭蓄電など用途が拡大すると共に、二次電池の大容量化が求められており、蓄電デバイス用包装材は良好な成型性が求められている。また、車載用途では、耐熱性や耐湿熱性について、良好な屋外長期耐久性が求められており、安全性の面からは、ポリマー型リチウムイオン電池や全固体電池の開発が進んでおり、電解液に含まれる低沸点のカーボネート溶剤が排除されることで、要求される耐熱耐久温度も高くなっている。そのため、包装材として、フィルムと金属箔の初期接着強度や成型性、及び成型物のヒートシール耐性が良好であり、成型物として長期耐久試験後においてもデラミが無い形状が維持され、さらに外観に異常が無いことが求められている。 しかしながら、特許文献1~3に記載された接着剤は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂を使用しているものの、車載用途等で要求される耐熱及び耐湿熱の長期耐久性に課題がある。 したがって本発明の課題は、優れた接着性や成型性、且つ変形成型物のヒートシール耐性を有し、更に耐熱及び耐湿熱の長期耐久性試験後においても優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス包装材用接着剤、該接着剤を用いてなる蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、及び蓄電デバイスを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0009】 本発明の実施形態は、ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤であって、前記ポリオール主剤(A)が、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂を含み、且つ、ポリオール主剤(A)の質量を基準として、フェノール系酸化防止剤(C)を0.03~3質量%含む、蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤に関する。 【0010】 本発明の他の実施形態は、前記ポリオール主剤(A)が、さらにエポキシ樹脂を含む、上記蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤に関する。」 (イ) 「【0023】 <ポリオール主剤(A)> ポリオール主剤(A)は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂と、ポリオール主剤(A)の質量を基準として、フェノール系酸化防止剤(C)を0.03~3質量%含むことを特徴とする。水酸基を有するポリウレタン樹脂は、後述するポリエステルポリオール中の水酸基と、ポリイソシアネート中のイソシアネート基とを水酸基を過剰にした条件でウレタン化反応させることで得ることができる。 本発明において、ポリオール主剤(A)は水酸基を有するポリウレタン樹脂を含み、フェノール系酸化防止剤(C)の含有量を所定範囲内に制御することが重要であり、前記所作により、熱酸化劣化を安定化させて、成型物の高温耐久性を向上させることができ、高温耐久性前後の接着性と成型性に優れる接着剤層を形成することができる。 【0024】 <水酸基を有するポリウレタン樹脂> 本発明における水酸基を有するポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとの反応物であって、ポリエステルポリウレタンポリオールである。 【0025】 (ポリエステルポリオール) ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの反応物;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合したもの;が挙げられる。 上記多塩基酸は、以下に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。 上記多価アルコールは、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物が挙げられる。 上記多塩基酸成分及び多価アルコール成分は、各々、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」 (ウ) 「【実施例】 【0073】 以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。 (略) 【0078】 <ポリエステルポリオールの合成> (ポリエステル1) イソフタル酸166.4部、テレフタル酸138.6部、アジピン酸219.5部、エチレングリコール83.4部、ネオペンチルグリコール199.8部、ブチルエチルプロパンジオール92.4部、フェノール系酸化防止剤Irganox1010を2.7部仕込み、170~230℃で6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.36部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量11,000、重量平均分子量24,000、分子量分布2.18、水酸基価11.6mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、樹脂Tgが-8℃のポリエステルポリオールであるポリエステル1を得た。 過剰の多価アルコール成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル1の組成は、表1に示すように、イソフタル酸:テレフタル酸:アジピン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:ブチルエチルプロパンジオール=30:25:45:35:50:15(モル%)となる。フェノール系酸化防止剤Irganox1010はポリエステル原料合計の質量を基準として、0.3質量%となる。 【0079】 (フェノール系酸化防止剤と水酸基含有ポリウレタン樹脂の共有結合の確認) 共有結合の有無は、1H-NMRを測定することにより確認した。測定条件は、FT-NMR装置(JNM-ECZ400R)、共鳴周波数は400MHz、プローブは10mmスーパークールプローブ、測定温度は室温、パルス間隔は15秒、溶媒は重水素化クロロホルムとし、乾燥試料0.6gを重水素化クロロホルム4gに溶解した試料を用いた。未反応のフェノール系酸化防止剤(C-1:Irganox1010)について、t-ブチル基が結合した炭素の隣の炭素に結合した水素が6.98ppmのピークとなるのに対して、ポリエステル1では、前記ピーク強度が減少して、6.80~6.86ppmにブロードなピークが出現した。その他水素も前記同様に未反応時のピーク強度が減少して、反応後のブロードなピークが近傍に出現した。これにより、フェノール系酸化防止剤と水酸基含有ポリウレタン樹脂とが共有結合していることが確認できた。 【0080】 (ポリエステル2~22) 得られるポリエステルポリオールの、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とした場合の各成分のモル%を表1に示す組成に変更した以外は、ポリエステル1と同様にして多塩基酸成分と多価アルコール成分とを反応させ、ポリエステル2~22を得た。 【0081】 【表1】 [図:0001412303000002.jpg] 【0082】 表1中の略号は以下の通りである。 IPA:イソフタル酸 TPA:テレフタル酸 PA :オルトフタル酸 AdA:アジピン酸 SeA:セバシン酸 AzA:アゼライン酸 TMA:無水トリメリット酸 EG :エチレングリコール NPG:ネオペンチルグリコール BEPG:ブチルエチルプロパンジオール MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール DEG:ジエチレングリコール 1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール C-1:テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(フェノール系酸化防止剤、Irganox1010、BASF社製) C-2:1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(フェノール系酸化防止剤、Irganox1330、BASF社製) C-3:1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン(フェノール系酸化防止剤、Irganox3114、BASF社製) 【0083】 <水酸基含有ポリウレタン樹脂の合成> (ウレタン(a)-1) 得られたポリエステル1を100部と、酢酸エチル43部とを4口フラスコに仕込み、85℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを2.5部、ジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル59部を添加し、ウレタン結合濃度0.29mmol/g、Mw82,000、樹脂Tg-7℃、水酸基価1.6mgKOH/g、不揮発分50%の、水酸基を有するポリウレタン樹脂であるウレタン(a)-1溶液を得た。 【0084】 (ウレタン(a)-2~(a)-23) 表2に示す配合量に変更した以外は、ウレタン(a)-1と同様にして、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、水酸基を有するポリウレタン樹脂であるウレタン(a)-2~(a)-23を得た。 【0085】 【表2】 [図:0001412303000003.jpg] 【0086】表2中の略号は以下の通りである。 1,4BD:1,4-ブタンジオール TMP:トリメチロールプロパン TDI:トリレンジイソシアネート(コロネートT-80 東ソー株式会社製) MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT 東ソー株式会社製) IPDI:イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI コベストロ社製) HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュールH コベストロ社製)」 (エ) 「【0090】 <蓄電デバイス用包装材の評価>得られた蓄電デバイス用包装材について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。 (略) 【0097】 【表3】 [図:0001412303000004.jpg] 【0098】 表3中の略号は以下の通りである。 C-1:テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Irganox1010、BASF社製) EP-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1002、三菱ケミカル社製、エポキシ当量650、分子量約1200) EP-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER834、三菱ケミカル社製、エポキシ当量250、分子量約470) SC-1:3-アミノプロピルトリメトキシシラン SC-2:3-アミノプロピルトリエトキシシラン NCO-1:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(コロネートL東ソー株式会社製、不揮発分濃度75%、NCO含有量13.2%) NCO-2:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体(VESTANAT(登録商標)T1890/100エボニック社製NCO含有量17.3%) NCO-3:ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート構造体(デュラネートMHG-80B旭化成社製NCO含有量15.0%) 【0099】 表3の結果から、外層側接着剤層を形成する主剤として、所定量のフェノール系酸化防止剤を含む水酸基含有ポリウレタン樹脂を用いた包装材は、延伸されて外層側接着剤層が薄膜且つ塑性変形した接着剤層においても、熱酸化劣化が抑制されて、成型物の高温耐久性に優れる。更に、水酸基含有ポリウレタン樹脂に含まれるポリエステルポリオールとフェノール系酸化防止剤が、共有結合を介して一体化することで、熱酸化劣化が効率的に抑制されて、多次元分岐により熱分解劣化も抑制される。また、フェノール系酸化防止剤の含有量を調整することで、接着性と成型物の高温耐久性を両立できる。特に、実施例5、11、12は、フェノール系酸化防止剤の含有量が適切であり、フェノール系酸化防止剤と水酸基含有ポリウレタン樹脂が共有結合を介して一体化しているため、熱酸化劣化及び熱分解劣化が抑制できる強靭な接着層が得られており、成型性や変形成型物のヒートシール耐性、及び成型物の高温耐久性に優れる。 【0100】 一方、比較例1はフェノール系酸化防止剤の含有量が少なく、成型物の高温耐久性が低い。比較例2はフェノール系酸化防止剤の含有量が過多で接着剤層が硬脆くなり接着性が低下した。比較例3~9は、フェノール系酸化防止剤を含有していないため、成型物の高温耐久性が低下した。 なお、比較例3は、国際公開第2018/117082号の実施例に基づき、比較例4は、特開2019-156925号公報の実施例に基づき、比較例5は、特開2016-196580号公報の実施例に基づき、比較例6は、特開2019-117706号公報の実施例に基づき、比較例7は、特開2017-25287号公報の実施例に基づき、比較例8は、国際公開第2021/039338号に基づく。 比較例5は、酸基価含有ポリウレタン樹脂の芳香族多塩基酸比率が高く、分子量が低いため、接着剤層が硬脆くなり、接着性や成型性が大幅に低下した。そのため、成型高さ5mmの成型物が得られず、変形成型物のヒートシール耐性と成型物の耐久性評価には進めなかった。比較例7は、水酸基含有ポリウレタン樹脂のウレタン結合濃度が高く、フェノール系酸化防止剤が含まれていない為、成型物の高温耐久性が低下した。比較例9は、主剤に水酸基含有ポリウレタン樹脂を含んでいないため、成型物の湿熱耐久性と高温耐久性が低下した。」 イ 甲2発明 前記(ア)より、甲2には、「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤」が記載されていると認められる。 前記(イ)より、甲2には、「ポリオール主剤(A)は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂」を含み、「前記ポリエステルポリオールは、多塩基酸と多価アルコールとの反応物」であることが記載されていると認められる。 前記(ウ)の実施例の記載、特に表1より、甲2には、実施例として、ポリエステルポリオールであるポリエステル4が多価アルコール成分の総量を基準としてエチレングリコールを80モル%含有すること、が記載されている。 さらに、表2より、ポリエステル1~20を原料とする水酸基含有ポリウレタン樹脂の中で、前記ポリエステル4を用いた、ウレタン(a)-6のみが、多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを80モル%以上含有するものと記載されていると認められる。ただし、表3においてウレタン(a)-6を用いた実施例6では、ポリオール手段(A)にエポキシ樹脂は含まれていない。 以上から、ポリエステル4を用いたものに着目すると、甲2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という)が記載されている。 「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤であって、 前記ポリオール主剤(A)はポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂を含み、 ポリエステルポリオールは、多塩基酸と多価アルコールとの反応物であり、 多価アルコール成分の総量を基準としてエチレングリコールを80モル%含有する、 蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤」 (3) 甲3号証 甲3号証には、以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 少なくとも、第1基材層、第1接着剤層、及び金属箔をこの順に備えてなる電池外装用積層体であって、 前記第1基材層がポリオレフィンからなる層であり、 前記第1接着剤層が、当該第1接着剤層単層の動的粘弾性測定において、150℃における貯蔵弾性率の値が1.0x104以上、1.0x107以下となる層であることを特徴とする電池外装用積層体。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、二次電池やキャパシタ等の外装体として良好な電池外装用積層体、並びに、当該積層体を用いて得られた電池外装体及び電池に関する。 【背景技術】 【0002】 環境に対する意識が高まる中、太陽光や風力等の自然エネルギーの活用と共に、電気エネルギーを貯蔵するための蓄電池として、リチウムイオン電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタが注目を集めている。 これら電池に用いられる外装体としては、小型化と軽量化とを目的として、金属箔と樹脂層とを積層した電池外装用積層体が用いられている。このような電池外装用積層体を、凹部を有するトレー状となるように絞り成形等によって成形し、外装体容器本体とする。 また、前記外装体容器本体と同様にして、電池外装用積層体を成形して外装体蓋部を得る。この外装体容器本体の凹部に電池本体を収納した後、収納された電池本体を覆うように外装体蓋部を重ね、容器本体と外装体蓋部との側縁部を接着することにより、外装体に電池本体が収納された電池が得られる。 【0003】 例えば特許文献1には、基材層と、アルミニウム箔と、ポリプロピレン又はポリエチレン層からなる最内層とが順に積層され、アルミニウム箔の最内層側の面には薄膜コーティング層が積層された電池外装用積層体が開示されている。より具体的には、特許文献1において、当該薄膜コーティング層と、ポリプロピレン又はポリエチレン層からなる最内層とはヒートシール剤を介して接着することが好ましいとされており、酸変性ポリプロピレン系ヒートシール剤を用いたラミネート加工により、薄膜コーティングされたアルミニウム箔と最内層とが接着されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2012-33393号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 二次電池等の電池の応用分野が拡大し、電池生産量の増加が求められる中、電池外装体にも製造時の歩留り向上、時間短縮等の生産効率の向上が求められている。また、小型化、大容量化等の電池特性の向上と共に、電池外装体にも耐熱性、耐薬品性(耐電解液性)等の優れた特性が求められている。 しかしながら、特許文献1のように、表面処理がなされた金属箔と、最内層樹脂とをヒートシール剤を用いてラミネート接着する場合、ラミネート時に高温及び高圧を付加する必要があり、製造時間の短縮や製造コストの低減が難しいため、生産効率の向上に限りがあった。また、高温でラミネート加工を行うことにより、接着対象である最内層(ポリプロピレン層、ポリエチレン層等)や金属箔にシワや劣化が発生する場合があり、このことが歩留りの低下や、各種材料の選択の幅を狭めることにつながっていた。 【0006】 本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであって、高い生産効率で製造が可能であって、且つ、各種特性に優れる電池外装用積層体を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、任意に表面加工がなされた金属箔と基材層(最内層)とを、特定の貯蔵弾性率を有する接着剤層を介して接着することにより、電池外装用積層体に求められる各種特性を向上させることができるのみならず、必要に応じて製造時間の短縮や歩留りの向上等の生産効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。 【0008】 すなわち、本発明は以下の構成を採用した。 本発明の第一の態様の電池外装用積層体は、少なくとも、第1基材層、第1接着剤層、及び金属箔をこの順に備えてなる電池外装用積層体であって、前記第1基材層がポリオレフィンからなる層であり、前記第1接着剤層が、当該第1接着剤層単層の動的粘弾性測定において、150°Cにおける貯蔵弾性率の値が1.0×104以上、1.0×107以下となる層であることを特徴とする。 前記第1接着剤層は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の100質量部と、複数のエポキシ基を含有する化合物(B)の1~20質量部と、を含有する接着剤からなる層であることが好ましい。 前記複数のエポキシ基を含有する化合物(B)は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。 前記第1接着剤層と、前記金属箔との間に第1腐食防止層を備え、該第1腐食防止層は、ハロゲン化金属化合物を含有することが好ましい。 前記第1腐食防止層は、さらに、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有することが好ましい。 前記ハロゲン化金属化合物は、鉄、クロム、マンガン、ジルコニウムの塩化物、又は、鉄、クロム、マンガン、ジルコニウムのフッ化物であることが好ましい。 前記金属箔は、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル又はチタンであることが好ましい。 前記金属箔の厚みは、10~40μmであることが好ましい。 本発明の第二の態様の電池外装体は、前記第一の態様の電池外装用積層体を備える電池外装体であって、電池を収納する内部空間を有し、電池外装用積層体の第1基材層の側が当該内部空間の側となることを特徴とする。 本発明の第三の態様の電池は、前記第二の態様の電池外装体を備えることを特徴とする。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、優れた特性を有し、且つ、高い生産効率で製造が可能な電池外装用積層体を提供できる。」 (4) 甲4号証 甲4号証には、以下の記載がある。 ア 「[0001] 本発明は、接着性、耐湿熱性、耐腐食性に優れるポリエステル樹脂組成物およびこれを用いた接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、建材、家電製品等に用いられるアルミニウムラミネートフィルムや化粧シート用の接着剤組成物に関するものである。 [0002] 家電の外装や建材など各種プラスチックフィルムとアルミニウムなどの金属箔のラミネートには主に溶剤系の2液型ドライラミネート接着剤が用いられている。2液型ドライラミネート接着剤とは、末端に水酸基を有するポリウレタン、ポリエステルを主剤とし、該水酸基と反応するイソシアネート基を有する硬化剤を混合して使用する接着剤であり、さらに湿熱性などの耐久特性を上げるためにエポキシ化合物を添加する処方が提案されている。 [0003] しかし、従来の2液型ドライラミネート接着剤を電気冷蔵庫の外装やユニットバスの内装に用いられる化粧鋼板用の化粧シートに使用した場合、プラスチックフィルムに透湿性があるため、調味料や温水等の影響による高温高湿度状態で接着剤が劣化してしまう問題があった。特に、長期間の使用により、調味料や温水等がプラスチックフィルムを透過し、もしくは端部に溜まることでフィルムや接着剤の劣化を促進し、積層界面での剥離や膨れが発生する問題があった。さらに劣化が進むと水分や食品、調味料が化粧シートのアルミニウム箔を腐蝕し、発生した錆が化粧面に浮いてきて意匠性を悪化させるという問題があった。 [0004] 上記課題に対して、透湿性を低減させるため酸化珪素または酸化マグネシウムにより無機物の防湿層を設ける処方が開発されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この処方では、無機物の透湿層を設けるためには真空蒸着が必要となるため、専用の大きな設備が必要であるという問題があった。 [0005] また、透明樹脂フィルムを金属箔の裏打ち層として設け、金属箔とできるだけ近い線膨張係数を持つ透明樹脂フィルムを用いることで腐蝕により金属表面の色調が変化しない化粧シートが提案されている(例えば、特許文献2)。 先行技術文献 特許文献 [0006]特許文献1:特開2004-42343号公報 特許文献2:特許4616634号公報 発明の概要 [0007] しかしながら、特許文献2の方法では、特別な製造や基材を必要とするうえ、煩雑な工程を得なければならず、実用化に耐え得るものではなかった。本発明は特別な装置や基材を必要とせず、接着性、耐湿熱性、耐腐食性に優れるポリエステル樹脂組成物およびこれを用いた接着剤組成物を提供するものである。 [0008] 上記目的を達成するため、本発明者等は鋭意検討し、以下の発明を提案するに至った。即ち本発明は、以下の通りである。 [0009] ガラス転移温度が15℃以下、エステル基濃度が8500~11000当量/106gであるポリエステル樹脂(A)およびポリイソシアネート(B)を含有し、下記(1)~(2)を満足するポリエステル樹脂組成物。 (1)ポリエステル樹脂組成物で薄膜を作製したときに、該薄膜の60℃における貯蔵弾性率が4.8×106Pa以下である (2)ポリエステル樹脂組成物で薄膜を作製したときに、該薄膜の200℃における貯蔵弾性率が2.0×105Pa以上である」 2 申立理由についての当審の判断 (1) 本件発明1について ア 甲1発明を主引用発明とした場合 (ア) 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「ポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤とを含有する二次電池用包装材ポリウレタン接着剤」は、本件発明1の「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤」に対応する。 甲1発明の「ポリオール主剤が、ポリエステルポリオールとビスフェノールA型エポキシ樹脂であるYD-012を含み」と、本件発明1の「前記ポリオール主剤(A)が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオール(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを含み、とでは、「前記ポリオール主剤(A)が、ポリエステルポリオール(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを含み」との点で一致し、後記する相違点で相違する。 甲1発明の「イソフタル酸、テレフタル酸」は、本件発明1の「多塩基酸成分」に相当する。また、甲1発明のポリオール主剤は、2種類のポリエステルポリオールを混合するものであるが、何れのポリエステルポリオールも多塩基酸成分と多価アルコール成分との反応生成物である。 ここで、甲1発明の「前記ポリエステルポリオールは、原料として、イソフタル酸、テレフタル酸、多価アルコールとして、エチレングリコール85.6g、ネオペンチルグリコール95.6gを含む」に関し、エチレングリコールのモル質量は62.07(g/mol)、ネオペンチルグリコールのモル質量は、104.148(g/mol)であることから、甲1発明のポリエステルポリオール溶液(1)のエチレングリコールのモル割合は(85.6/62.07)/((85.6/62.07)+(95.6/104.148))=0.6。よって、主剤(5)のエチレングリコールの多価アルコールにおける割合は、(60*0.6+140*1.0)/(60+140)=0.88となり、主剤(5)における多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを88モル%含有すると認められる。 してみれば、甲1発明の「前記ポリエステルポリオールは、原料として、イソフタル酸、テレフタル酸、多価アルコールとして、エチレングリコール85.6g、ネオペンチルグリコール95.6gを含む」は、本件発明1の「前記ポリエステルポリオール(A1)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分との反応生成物であり、前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを80モル%以上含有し」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲1発明とでは、以下の点で一致及び相違する。 [一致点] 「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤であって、 前記ポリオール主剤(A)が、ポリエステルポリオール(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを含み 前記ポリエステルポリオール(A1)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分との反応生成物であり、前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを80モル%以上含有する、 蓄電デバイス包装材用接着剤。」 [相違点1] 本件発明1が「前記ポリオール主剤(A)が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオール(A1)」を含むのに対し、甲1発明では、ポリオール主剤がオキシアルキレン構造を有することが特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1が「前記接着剤を硬化させた硬化物の250℃における貯蔵弾性率の値が、0.10MPa~10MPaである」のに対し、甲1発明では、貯蔵弾性率について特定がない点。 (イ) 判断 a 相違点1について 甲2~4にはいずれにも、ポリオール主剤として、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールは記載されていない。また、甲1におけるポリオール主剤が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールを含むことを示す証拠もない。(詳細は後記するが、異議申立人の主張する、高温下でポリエステルポリオールの合成を行うと、一部エチレングリコール同士の縮合反応が生じるとの技術常識の存在は、証拠もなく、認められない。) そして、本件発明は、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールを用いることを要因の一つとして、「高耐熱ポリエステル系基材を塗工基材として用いた場合においても優れたラミネート外観を示し、且つ、成型性、変形成型後のヒートシール耐性に優れ、成型後の長期高温耐久性試験後においても優れた成型性を維持し層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス包装材用接着剤、並びに、該接着剤を用いてなる、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイスを提供することができる。」(【0020】)との効果を奏するものと認められる。 してみれば、相違点1は、ポリオール主剤として、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールを用いること及びそれによる効果が何ら記載されていない甲1発明及び甲2~4に記載された技術に基づき、当業者が容易に想到することができたものとは言えない。 b 異議申立人の主張について 申立人は、異議申立書において、 「上記相違点1に関し、上記(1ー2)に記載のように、甲第1号証の合成例(3)及び、上記(2-2)に記載のように、甲第2号証のポリエステル4、22では、ポリエステルポリオールの合成を高温下で行っており、このような高温下でポリエステルポリオールの合成を行うと、一部エチレングリコール同士の縮合反応が生じる。このことは本件特許出願時における技術常識である。 そうすると、甲1発明及び甲2発明において、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールが合成されおり、構成Bを満たしている蓋然性が高い。」 と主張している。 しかしながら、「このような高温下でポリエステルポリオールの合成を行うと、一部エチレングリコール同士の縮合反応が生じる」ことが、本件特許出願時における技術常識であることを示す客観的な証拠は示されておらず、そのような技術常識は認められない。 なお、本件明細書には、 「【0027】 このようなオキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオール(A1)は、例えば、オキシアルキレン基を有する多価アルコール及び80モル%以上のエチレングリコールを含む多価アルコールと、多塩基酸と、の反応生成物として得ることができる。 【0028】 本発明においては、多価アルコール成分が多価アルコール成分の質量を基準としてエチレングリコールを80モル%以上含有する事が必要である。エチレングリコールが80モル%以上であると、エステル結合濃度が増加することで接着剤塗膜の凝集力が高まり、成型性及び高温接着性が向上する。エチレングリコールの含有率は、好ましくは90モル%以上、98モル%以下である。 (略) 【0031】 さらに、多価アルコール成分がエチレングリコールを多量に含有する場合、高温且つ高圧下でのエステル化反応を行うことでエチレングリコールの脱水反応(2量化反応)が進行してジエチレングリコールが生成し、該ジエチレングリコールがエステル化することで、ポリエステルポリオール(A1)にオキシアルキレン構造を導入することができる。」 との記載があるが、本件明細書の記載をもって、本件出願前に「多価アルコール成分がエチレングリコールを多量に含有する場合、高温且つ高圧下でのエステル化反応を行うことでエチレングリコールの脱水反応(2量化反応)が進行してジエチレングリコールが生成し、該ジエチレングリコールがエステル化することで、ポリエステルポリオール(A1)にオキシアルキレン構造を導入することができる」ことが技術常識であったとはいえない。 してみれば、異議申立人の主張は、採用することはできない。 (ウ) 小括 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲2発明を主引用発明とした場合 (ア) 対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用ポリウレタン接着剤」は、本件発明1の「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤」に対応する。 本件発明1の「前記ポリオール主剤(A)が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオール(A1)とエポキシ樹脂(A2)とを含み」と、甲2発明の「前記ポリオール主剤(A)はポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応物である水酸基を有するポリウレタン樹脂を含み」とでは、「「前記ポリオール主剤(A)が、ポリエステルポリオール(A1)を含み」との点で一致し、後記する相違点で相違する。 甲2発明の「ポリエステルポリオールは、多塩基酸と多価アルコールとの反応物であり」、「ポリエステルポリオールであるポリエステル4が、多価アルコール成分の総量を基準としてエチレングリコールを80モル%含有する」は、本件発明1の「前記ポリエステルポリオール(A1)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分との反応生成物であり、前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを80モル%以上含有し」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲2発明とでは、以下のとおり、一致及び相違する。 [一致点] 「ポリオール主剤(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤であって、 前記ポリオール主剤(A)が、ポリエステルポリオール(A1)を含み、 前記ポリエステルポリオール(A1)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分との反応生成物であり、前記多価アルコール成分が、多価アルコール成分の総量を基準として、エチレングリコールを80モル%以上含有する、 蓄電デバイス包装材用接着剤。」 [相違点3] 本件発明1が「前記ポリオール主剤(A)が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオール(A1)」を含むのに対し、甲2発明では、ポリオール主剤がオキシアルキレン構造を有することが特定されていない点。 [相違点4] 本件発明1のポリオール主剤(A)が「エポキシ樹脂(A2)」を含むのに対し、甲2発明では、ポリオール主剤はエポキシ樹脂を含まない点。 [相違点5] 本件発明1が「前記接着剤を硬化させた硬化物の250℃における貯蔵弾性率の値が、0.10MPa~10MPaである」のに対し、甲2発明では、貯蔵弾性率について特定がない点。 (イ) 判断 まず、相違点3について検討する。 甲1,3,4にはいずれにも、ポリオール主剤として、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールは記載されていない。また、前記「ア(イ)b 異議申立人の主張について」で検討したとおり、甲2におけるポリオール主剤が、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールを含むことを示す証拠もない。 してみれば、相違点3は、ポリオール主剤として、オキシアルキレン構造を有するポリエステルポリオールを用いること及びそれによる効果が何ら記載されていない甲2発明及び甲1,3,4に記載された技術に基づき、当業者が容易に想到することができたものとは言えない。 よって、相違点4,5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1,3,4に記載された技術に基づき、当業者が容易に想到することができたものとは言えない。 (2) 本件発明2~10について 本件発明2~7は、何れも本件発明1を引用し、本件発明1のすべての発明特定事項を含むものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2~甲4に記載された技術、並びに、甲2発明及び甲1,3,4に記載された技術に基づき、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 本件発明8は、 「少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、 前記外層側接着剤層が、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物である、蓄電デバイス包装材」 であって、ここで、「請求項1」「に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物」は、本件発明1のすべての発明特定事項を含むものと解される。してみれば、本件発明8及び本件発明8を引用する本件発明9,10は発明1のすべての発明特定事項を含むものと解される。 よって、本件発明8~10は、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲2~甲4に記載された技術、並びに、甲2発明及び甲1,3,4に記載された技術に基づき、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本件請求項1~10に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700013

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