特許異議申立
2019-700758
ソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、硬化物及びプリント配線板
- 審判番号
- 2019-700758
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-046213
- 登録番号
- 特許第6491417号(P6491417)
- 請求日
- 2019年09月24日
- 審決日
- 2021年01月21日
- 公報発行日
- 2021年05月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】互応化学工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人北斗特許事務所
- 【権利者代理人】西川 惠清
- 【権利者代理人】水尻 勝久
- 【権利者代理人】竹尾 由重
- 【権利者代理人】坂口 武
- 【権利者代理人】北出 英敏
- 【権利者代理人】仲石 晴樹
- 【権利者代理人】木村 豊
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 國分 直樹
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 赤穂 嘉紀
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K) / P1651.16 -YAA(H05K) / P1651.537-YAA(H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6491417号発明「ソルダーレジスト用樹脂組成物、マーキングインク用樹脂組成物、硬化物及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6491417号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第6491417号の請求項1、3、7ないし8に係る特許を維持する。
特許第6491417号の請求項2、4ないし6に係る特許についての特許異議申立を却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6491417号の請求項1ない8に係る発明についての出願は、平成26年3月10日に出願され、平成31年3月8日にその特許権が設定登録され、平成31年3月27日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 1年 9月24日:特許異議申立人前田洋志による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 1年12月16日付け:取消理由通知書
令和 2年 2月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 5月 7日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和 2年 7月16日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 2年 9月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年11月19日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和2年2月18日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年9月30日の訂正請求の趣旨は、特許第6491417号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して」とあるのを「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、7、8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「であることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物」とあるのを「であり、前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有することを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、7、8も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「ガラス粒子とを含有し、」とあるのを「ガラス粒子とを含有し、前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、7、8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物」とあるのを「請求項1に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から3のいずれか一項に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物並びに請求項4から6のいずれか一項に記載のマーキングインク用樹脂組成物の少なくともいずれか1つを基材上に塗布し」とあるのを「請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物を基材上に塗布し」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0078】に記載された「このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカ、溶融シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。」を「このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0081】に記載された「ガラス粒子の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して、1~600質量部であることが好ましい。」を「ガラス粒子の配合量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部であることが好ましい。」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項
本件訂正前の請求項1ないし3、7、8について、請求項2、3、7、8は訂正する請求項1を引用しているものであるから、請求項1ないし3、7、8は一群の請求項を構成する。
また、本件訂正前の請求項4ないし8について、請求項5ないし8は訂正する請求項4を引用しているものであるから、請求項4ないし8は一群の請求項を構成する。
そして、これらの一群の請求項は、共通する請求項7及び8を有するから、訂正前の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
請求項1には「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、・・・ガラス粒子とを含有し、・・・であることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物。」と記載されており、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」は「ガラス粒子」を含有するから、ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、ガラス粒子の配合量が100質量部以上になることはない。
しかし、訂正前の請求項1には「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、1~600質量部である」と、配合量が100質量部以上の範囲を含む記載がされており、当該記載は明らかに正しくないものである。
ここで、本件明細書の実施例(【0110】-【0119】)をみると、表2と表3のいずれにおいてもワニス(ワニスA-1:カルボキシル基を有しない活性エネルギー線硬化性樹脂、ワニスA-2:カルボキシル基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂)100質量部に対して、ガラスフィラーを70~240の範囲で配合している。
そうすると、上記「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、1~600質量部である」における「前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して」という記載は、設定登録時の明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲の記載全体から、「前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して」という正しい記載が自明な事項として定まる。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は「活性エネルギー線硬化性樹脂」について、「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」ことを限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2における「前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み」は訂正前の請求項2に記載されている。
そして、本件明細書の段落【0014】に「本発明によれば、アルカリ現像可能で優れた解像性を有するとともに、耐(湿)熱性、耐無電解金めっき性に優れ、低い線膨張係数(CTE)を有する硬化物、その硬化物を形成することが可能なソルダーレジスト用樹脂組成物、・・・が得られる。」と記載されているから、「活性エネルギー線硬化性樹脂」が「アルカリ現像性を有する」ことは明らかである。
したがって、訂正事項2は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項2は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、「ガラス粒子」について「線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃であり」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件明細書の段落【0078】には、「ガラス粒子は、線膨張率の値(CTE値)が・・・CTE値が30×10-7~80×10-7/℃の範囲内であることがさらに好ましい。」と記載されているので、訂正事項3は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項3は特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 訂正事項4、6ないし8について
訂正事項4、6ないし8は、請求項2、4ないし6を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 訂正事項5について
訂正事項5は、引用する請求項を請求項1のみに限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ 訂正事項9について
訂正事項9は、「基材上に塗布」するのものを「請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物」に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
キ 訂正事項10について
本件明細書の段落【0078】には「本実施形態に用いられるガラス粒子は、例えば非晶質のガラス状態にある化合物(例えば、ソーダガラス、石英ガラス)を機械的に微粉砕し、或いは他の方法によって微粒子化したものであることが好ましい。・・・このようなガラス粒子を充填剤として用いることにより、例えば硫酸バリウム、破砕シリカ、溶融シリカなどの充填剤などでは得られない硬化物特性を付与することが可能になる。」と記載されている。ここで、「溶融シリカ」は溶融された後に固化されることで非晶質化したシリカであり石英ガラスに相当するから、ガラス粒子以外の充填剤の例として列挙された中の「溶融シリカ」は明らかな誤記であるといえる。
したがって、訂正事項10に係る明細書の【0078】についての訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。
ク 訂正事項11について
訂正事項11に係る明細書の【0081】についての訂正は、上記アと同様に、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するところもない。
(3)小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
なお、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがなされているから、特許法第120条のの5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1ないし8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃であり、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み、
アルカリ現像性を有することを特徴とするソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
熱硬化性樹脂を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1又は3に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物を基材上に塗布し、それを硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を備えることを特徴とするプリント配線板。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、3ないし8に係る特許に対して、当審が令和2年7月16日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(サポート要件)請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項4、6ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(新規性)請求項1、3ないし8に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、請求項1、3ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(進歩性)請求項1、3ないし8に係る発明は、引用文献3に記載された発明、及び引用文献1又は2に記載された周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
・引用文献1:特開2013-135192号公報(甲第5号証)
・引用文献2:特開平11-311858号公報(甲第6号証)
・引用文献3:特開昭58-49702号公報(甲第7号証)
2 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。
(2)特許法第29条第1項(新規性)について
ア 引用文献1の記載事項、引用発明1
取消理由通知において引用した引用文献1には、ソルダーレジスト用樹脂組成物及びマーキングインク用樹脂組成物に関して、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与したものである。
(ア)「【0013】
本発明のソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、蓄光顔料とを含むものである。尚、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂のどちらか一方のみを含むものでもよいし、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の両方を含むものであってもよい。また、本発明のマーキングインク用樹脂組成物も、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくともいずれか一方と、蓄光顔料とを含むものである。尚、マーキングインク用樹脂組成物も、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂のどちらか一方のみを含むものでもよいし、活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の両方を含むものであってもよい。以下、ソルダーレジスト用樹脂組成物やマーキングインク用樹脂組成物(以下、両者を単に樹脂組成物ということもある)に含まれる各成分の詳細について説明する。」
(イ)「【0014】
(活性エネルギー線硬化性樹脂)
本発明で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性不飽和結合を有する重合体(プレポリマーともいう)が挙げられる。すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射によって、硬化反応(重合反応)が進行するようなものをいう。また、活性エネルギー線硬化性樹脂には、分子中に重合性不飽和結合を有する単量体(モノマー)が含まれていてもよく、このようなモノマーも活性エネルギー線の照射によって重合反応が進行するものである。ここで、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、モノマー等の分子を重合又は架橋させ得る程度のエネルギー量子を有するものであり、通常は、紫外線又は電子線を示す。
【0015】
分子中に重合性不飽和結合を有する重合体としては、例えば、重合体の両末端又は片末端、あるいは重合体の側鎖がアクリロイル基やメタクリロイル基等のエチレン性不飽和基で変性された重合体が挙げられる。特に本発明においては、重合体の側鎖にエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する活性エネルギー線硬化性樹脂であることが好ましい。この「側鎖にエチレン性不飽和基とカルボキシル基とを有する活性エネルギー線硬化性樹脂」をさらに具体的に説明すると、「側鎖にエポキシ基を有するポリマー」中の前記エポキシ基に、「カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物」と「多価カルボン酸無水物」とを付加して生成させた活性エネルギー線硬化性樹脂である。」
(ウ)「【0040】
(その他添加剤)
また、樹脂組成物には、公知の無機充填材が含有されていてもよく、この場合、例えば樹脂組成物から形成された被膜(ソルダーレジスト層や蓄光層)の熱膨張を抑えることができると共に、機械強度も向上させることができる。このような無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの無機充填材は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用して使用してもよい。また、無機充填材は、本発明の効果を阻害しなければ、適宜の配合量で使用することができる。」
(エ)「【0059】
表1に示す各原料のうち、まず、蓄光剤(蓄光グリン)以外の原料を(株)井上製作所製の三本ロールで十分に混練し、次いで、蓄光グリンを添加し、これを2軸ミキサーで分散させることで、ソルダーレジスト用樹脂組成物及びマーキングインク用樹脂組成物をそれぞれ調製した。各原料の詳細を以下に示す。
・エポキシアクリレート(DIC社製 ディックライトUE-8740)
・アクリルモノマー(長興化学社製 エターマー231)
・グリシジル基含有アクリルポリマー(ダイセル・サイテック社製 サイクロマー(ACA)Z320MW=23000)
・メラミン(日産化学社製 メラミンHM)
・重合開始剤(双幅化学社製 2-エチルアントラキノン)
・エポキシ樹脂(ダイセル化学社製 EHPE-3150)
・蓄光グリン(太平製作所社製 SG-15G D50=15μm) 化学名:Alkaline earthmetal boron aluminate oxide europium doped化学式又は構造式:SrAl2-xBxO4:Eu,Dy(xは0<x<2)
・溶剤(日本乳化剤社製 MFDG)
・シリカ(龍森社製 イムシルA-8)
・微粉シリカ(トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)
・タルク(富士タルク社製 LMS-100)
・炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製 ユニグロス3000)
・添加剤(堺化学社製 FTR-700)
以下、表1の配合で調整した樹脂組成物を使用してソルダーレジスト層又は蓄光層を形成させた実施例及び比較例について説明する。
(オ)「【0060】
(実施例1:活性エネルギー線硬化性樹脂含有ソルダーレジスト用樹脂組成物の使用)
表1の配合条件により調製したソルダーレジスト用樹脂組成物を、225メッシュスクリーンを使用してスクリーン印刷法によってパターン形成されたプリント配線板上に印刷塗布した。その後、120W/cm(又は80W/cm)のメタルハライドランプ(又は高圧水銀灯)を使用して光量1000mJ/cm2で光を照射することによって塗布されたソルダーレジスト用樹脂組成物を硬化させて、ソルダーレジスト層が形成されたテストピースを得た。」
(カ)「【0062】
(実施例3:活性エネルギー線硬化性樹脂含有マーキングインク用樹脂組成物の使用)
LED照明等に使用される高反射率白色ソルダーレジスト層が形成されたプリント基板上に、表1の配合条件により調製したマーキングインク用樹脂組成物を、225メッシュスクリーンを使用してスクリーン印刷法によって印刷塗布した。その後、120W/cm(又は80W/cm)のメタルハライドランプ(又は高圧水銀灯)を使用して光量1000mJ/cm2で光を照射することによって塗布されたマーキングインク用樹脂組成物を硬化させて、蓄光層が形成されたテストピースを得た。」
(キ)「【0068】
【表1】
」
(ク)上記(ア)によれば、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の両方を含むものであり、上記(イ)によれば、当該活性エネルギー線硬化性樹脂はカルボキシル基を有する。また、上記(ウ)によれば、樹脂組成物には、公知の無機充填材が含有される。
そして、上記(オ)及び(カ)によれば、実施例1及び3として、表1の配合条件により調製したソルダーレジスト用樹脂組成物が記載されており、上記(キ)によれば、実施例1及び3では、活性エネルギー線硬化性樹脂として、エポキシアクリレート25質量部とアクリルモノマー75質量部が配合されており、無機充填材として、微粉シリカが18質量部配合されている。すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して微粉シリカが18質量部配合されている。ここで、上記(エ)によれば、前記エポキシアクリレートはDIC社製 ディックライトUE-8740であり、前記アクリルモノマーは長興化学社製 エターマー231であり、前記微粉シリカは、トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)である。
(ケ)以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「活性エネルギー線硬化性樹脂と、熱硬化性樹脂と、無機充填材を含有し、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、前記無機充填材を18質量部含有したソルダーレジスト用樹脂組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、エポキシアクリレートとアクリルモノマーであり、
前記無機充填材は、微粉シリカ(トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「ソルダーレジスト用樹脂組成物」は「活性エネルギー線硬化性樹脂」と「無機充填材」を含有するものであるところ、当該無機充填材の「微粉シリカ(トクヤマ社製 レオロシールMT-10C)」は微粉な非晶質シリカであり(必要であれば、特開2004-175900号公報の【0008】を参照。一般に無定形シリカは非晶質シリカともいわれる。)、非晶質なガラス状態にある化合物の粒子といえるから、本件発明1の「ガラス粒子」に含まれる。
したがって、引用発明1と本件発明1の「ソルダーレジスト用樹脂組成物」は「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で一致する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。
b 引用発明1の「微粉シリカ」の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して18質量部であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部」の範囲に含まれる。
c 以上によれば、本件発明1と引用発明1とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点。
(相違点2)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明1はそのような特定がない点。
(イ)判断
本件発明1は上記相違点1及び2で引用発明1と相違するから、本件発明1は、引用文献1に記載された発明でない。
ウ 本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記イと同様の理由により、引用文献1に記載された発明でない。
エ 小活
本件発明1、3、7及び8は、引用文献1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明1、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。
(3)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用文献3の記載事項、引用発明3
取消理由通知において引用した引用文献3には、光硬化性樹脂組成物に関して、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与したものである。
(ア)「(1) 充填材として、透光性を有する充填材が配合されていることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(2) 透光性を有する充填材が、シリカ、石英ガラス粉末、石英ガラスビーズおよびケイ砂からなる群から選ばれた少なくとも一つの充填材である特許請求の範囲第1項記載の光硬化性樹脂組成物。
(3) 透光性を有する充填材が20~80重量%配合されている特許請求の範囲第1項または第2項記載の光硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
(イ)「特に、両面スルーホール印刷配線板には、銅回路パターンに沿ってハンダをメッキし、これをエツチングレジストとして利用して回路形成するハンダメッキ基板が用いられるが、この基板には、後工程のフローソルダーによるハンダ付けの際に用いるソルダーレジストとして、UV硬化性のソルダーレジストは用いられていない。UV硬化性のソルダーレジストは厚膜硬化性に劣るからである。」(第1頁右欄12行目-20行目)
(ウ)「なお、この発明の光硬化性樹脂組成物に用いられる光硬化性樹脂としては公知のものが用いられ、その製造も公知の方法によって行われる。」(第3頁左上欄16行目-17行目)
(エ)「 以上のように、この発明の光硬化性樹脂組成物は、充填材として、透光性を有する充填材が配合されているため、厚膜硬化性に富んでおり、ハンダ基板のソルダーレジストおよび層間絶縁用の絶縁塗料等として最適である。」(第3頁右上欄3行目-7行目)
(オ)上記(ア)によれば、光硬化性樹脂組成物には、透光性を有する充填材として石英ガラス粉末が20~80重量%配合されており、上記(ウ)によれば、当該光硬化性樹脂組成物に用いられる光硬化性樹脂として公知のものが用いられる。
また、上記(エ)によれば、前記光硬化性樹脂組成物は、ハンダ基板のソルダーレジスト用として最適であり、上記(イ)によれば、当該ハンダ基板は印刷配線板に用いられるものである。ここで、前記ソルダーレジストの形成について、樹脂組成物をハンダ基板に塗布して硬化することは自明である。
(カ)以上によれば、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「光硬化性樹脂と、充填材として石英ガラス粉末20~80重量%とが配合されている、印刷配線板に用いられるハンダ基板に塗布して硬化するソルダーレジスト用として最適な光硬化性樹脂組成物。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明3を対比する。
a 引用発明3の「光硬化性樹脂」、「石英ガラス粉末」及び「ソルダーレジスト用として最適な光硬化性樹脂組成物」は、それぞれ本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」、「ガラス粒子」及び「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、引用発明3と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、引用発明3はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明3はそのような特定がない点で相違する。
b 引用発明3の石英ガラス粉末の配合量は20~80重量%であるから、光硬化性樹脂の配合は80~20重量%であり、そうすると、光硬化性樹脂の重量100換算に対して、石英ガラス粉末の重量は25~400である。
よって、引用発明3の「石英ガラス粉末」の配合量は、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部」の範囲に含まれる。
c 以上によれば、本件発明1と引用発明3とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、引用発明3はそのような特定がない点。
(相違点4)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、引用発明3はそのような特定がない点。
(イ)判断
まず、上記相違点3について検討する。
引用発明3の「光硬化性樹脂組成物」は、「石英ガラス粉末」を含有するが、石英ガラスの線膨張係数(すなわち線膨張率)は、特許権者が令和2年9月30日に意見書と共に提出した参考資料B(化学大辞典5縮刷版、286頁、共立出版株式会社、昭和56年10月15日縮刷版第26刷発行)によれば、(5.5~5.8)×10-7deg-1である。そして、引用文献3には、線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃のガラス粒子を用いることは記載されておらず、そのようガラス粒子を用いることの示唆もない。
また、引用文献1及び2にも、ソルダーレジスト用樹脂組成物に、線膨張率が30×10-7~80×10-7/℃のガラス粒子を用いることは記載されておらず、そのようガラス粒子を用いることの示唆もない。
そうすると、引用発明3において、「石英ガラス粉末」に換えて、線膨張率が30×10-7~80×10-7/℃のガラス粒子を用いることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明3、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たことでない。
よって、本件発明1は、上記相違点4について検討するまでもなく、引用文献3に記載された発明、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記イと同様の理由により、引用文献3に記載された発明、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和2年11月19日の意見書において、
「甲第10号証(特開平6-77649号公報)の【請求項8】には、『耐熱性絶縁膜は、ポリイミド樹脂30~90Vol%と、石英を主成分とした線膨張率が3.5ppm/K以下の無機材料粉末とを混合したものを用いる・・多層回路基板。』と記載されており、回路基板の絶縁膜用途として線膨張係数が35×10-7/℃以下の無機材料粉末(例えば、ガラス粉末)を用いることは当業者が容易になし得ることである。」(第9頁)と主張している。
しかしながら、甲第10号証における「無機材料粉末」は、多層回路基板の薄膜配線6間に用いる耐熱性絶縁膜(【0028】、【0029】)に混合するものであり、現像性が求められるソルダーレジスト用の光硬化性樹脂組成物である引用発明3に適用する合理的な根拠を見出すことはできない。
よって、意見書における上記主張は採用できない。
オ 小活
本件発明1、3、7及び8は、引用文献3に記載された発明、引用文献1及び2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものでないから、本件発明1、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。
(4) まとめ
以上のことより、当該取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明1、3、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条の2について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関して、請求項1ないし8に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた特許出願1ないし3の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである旨を主張している。
特許出願1:特願2013-173477号(甲第1号証:国際公開第2015/025925号)
特許出願2:特願2013-100519号(甲第3号証:特開2014-219636号公報)
特許出願3:特願2013-260781号(甲第4号証:特開2015-118194号公報)
(2)特許出願1に記載された発明について
ア 特許出願1の記載事項、先願発明1
(ア)本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後の出願公開された特許出願1(特願2013-173477号(甲第1号証:国際公開第2015/025925号))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0009】(甲第1号証の[0009]、以下同じ。)
本発明は、成分(A)エポキシ樹脂、成分(B)(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂、成分(C)光重合開始剤、成分(D)無機充填材を含有する感光性樹脂組成物であって、成分(A)エポキシ樹脂は、数平均分子量1000以下のエポキシ樹脂を含み、感光性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、成分(D)無機充填材の含有量が35質量%以上である感光性樹脂組成物である。以下、感光性樹脂組成物の配合成分について詳述する。」
「【0020】([0020])
<成分(B)(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂>
本発明の感光性樹脂組成物は、成分(B)(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂を含む。(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂は、成分(A)エポキシ樹脂の硬化剤としての機能を発揮するとともに、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができ、該感光性樹脂組成物の硬化物に対し多層プリント配線板の絶縁層に好適なガラス転移温度、低い線熱膨張係数といった特性を付与することができる。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートを指す。」
「【0056】([0060])
本発明の感光性樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板(感光性樹脂組成物の硬化物を(層間)絶縁層とした多層プリント配線板)の(層間)絶縁層の形成用の樹脂組成物、メッキにより導体層が形成された多層プリント配線板(感光性樹脂組成物の硬化物上にメッキにより導体層が形成された多層プリント配線板)の(層間)絶縁層の形成用の樹脂組成物として好適に使用することができる。」
「【0084】([0089])
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例の説明において、「部」は「質量部」を意味する。」
「【0087】([0092])
<実施例1>
結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量185、数平均分子量800、不揮発成分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)111.4部、アクリレート変性フェノール樹脂Aを73部、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製「OXE-02」、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、不揮発成分10質量%のMEK溶液)17.4部、無機充填材((株)アドマテックス製「SC2050」、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状溶融シリカ、平均粒径0.5μm)34部、無機充填材(電気化学工業(株)製「UFP-30」、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球状溶融シリカ、平均粒径0.1μm)25.5部、無機充填材(旭硝子(株)製「AZフィラー」、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形ガラスフィラー、平均粒径0.2μm、比重2.2g/m3)17部、(メタ)アクリレート含有化合物(日本化薬(株)製「DPHA」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)10部、硬化促進剤(四国化成(株)製「2P4MZ」、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、不揮発成分2.5質量%のMEK溶液)8.8部、ゴム粒子(アイカ工業(株)製「AC3816N」)2.4部、光増感剤(日本化薬(株)製「DETX-S」、2,4-ジエチルチオキサントン、不揮発成分10質量%のMEK溶液)4.4部、有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート)10部、を配合し、3本ロールを用いて混錬して、樹脂ワニスを調製した。
次に、かかる樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製「R310-16B」、厚さ16μm)上にダイコーターにて厚さが均一になるように塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて75℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層の厚さが20μmの支持体付き感光性フィルムを得た。」
(イ)【0009】([0009])には、エポキシ樹脂とアクリレート変性フェノール樹脂と無機充填材とを含有する感光性樹脂組成物が記載されている。ここで、【0020】([0020])によれば、感光性樹脂組成物は(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂を含むことで光硬化性を有する、すなわち、(メタ)アクリレート変性フェノール樹脂は感光性樹脂組成物に光硬化性を付与する。また、【0084】([0089])及び【0087】([0092])にはアクリレート変性フェノール樹脂Aが73質量部配合され、無機充填材として平均粒径0.2μmの球形ガラスフィラーが17質量部配合されることが記載されている。
また、【0056】([0060])には、感光性樹脂組成物は、ソルダーレジストなどの樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる旨記載されている。ここで、ソルダーレジストの形成について、樹脂組成物をプリント配線板に塗布して硬化することは自明である。
(ウ)以上によれば、特許出願1の先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されている。
「エポキシ樹脂と、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与するアクリレート変性フェノール樹脂A73質量部と、無機充填材として平均粒径0.2μmの球形ガラスフィラー17質量部を含有する感光性樹脂組成物であって、
樹脂組成物をプリント配線板に塗布して硬化するソルダーレジストなどの樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる、感光性樹脂組成物。」
イ 対比、判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と先願発明1とを対比する。
(a)先願発明1の「アクリレート変性フェノール樹脂A」、「球形ガラスフィラー」及び「ソルダーレジスト」に使用できる「感光性樹脂組成物」は、本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」、「ガラス粒子」及び「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、先願発明1と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、先願発明1はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明1はそのような特定がない点で相違する。
(b)先願発明1の「球形ガラスフィラー」は、「アクリレート変性フェノール樹脂A」100質量部換算に対して、23.3(小数点第2位を四捨五入)質量部であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部」の範囲に含まれる。
(c)以上によれば、本件発明1と先願発明1とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点5)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、先願発明1はそのような特定がない点。
(相違点6)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明1はそのような特定がない点。
b 判断
本件発明1は上記相違点5及び6で先願発明1と相違し、実質同一でもないから、本件発明1は、特許出願1の先願明細書等に記載された発明と同一でない。
(イ)本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、特許出願1の先願明細書等に記載された発明と同一でない。
(3)特許出願2に記載された発明について
ア 特許出願2の記載事項、先願発明2
(ア)本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後の出願公開された特許出願2(特願2013-100519号(甲第3号証:特開2014-219636号公報))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の事項が記載されている。
「【0029】
本発明に係る紫外線硬化性シート材料は、紫外線で硬化する樹脂組成物で形成されている。そしてこの樹脂組成物は、紫外線硬化性樹脂及びフィラーを複合して含有する。」
「【0031】
例えば、紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等の1種のみを用いたり、2種以上を組み合わせて用いたりすることができる。特に光で硬化すると共に熱でも硬化する樹脂が、露光現像の際に硬化度を制御しやすいために好ましい。このような樹脂としては、エポキシ系樹脂が好適である。エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂など公知慣用のものを1種のみ用いたり、2種以上を組み合わせて用いたりすることができる。」
「【0040】
フィラーとしては、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、Eガラス、アルミナ、ガラスフリット、Tガラス等の1種のみを用いたり、2種以上を含有して用いたりすることが好ましい。結晶シリカとしては、例えば、(株)龍森製「C-BASE-1」(破砕状、平均粒径5.0μm、屈折率1.55)、(株)龍森製「5X」(破砕状、平均粒径1.5μm、屈折率1.55)、(株)龍森製「クリスタライト3K-S」(平均粒径35μm)等を挙げることができる。Eガラスとしては、例えば、旭シュエーベル(株)製「球状Eガラス」(平均粒径5.0μm、屈折率1.56)等を挙げることができる。アルミナとしては、例えば、電気化学工業(株)製「DAW-45」(球状、平均粒径43μm)、電気化学工業(株)製「DAW-05」(球状、平均粒径5.0μm、屈折率1.65)、電気化学工業(株)製「ASFP-20」(平均粒径0.3μm)等を挙げることができる。ガラスフリットとしては、例えば、日本フリット(株)製「CF0111」(平均粒径15μm、屈折率1.524)等を挙げることができる。」
「【0053】
次に紫外線硬化性シート材料1の使用例について説明する。
【0054】
紫外線硬化性シート材料1をキャリア基材4に積層して形成された図1に示すものは、紫外線硬化性ドライフィルムとして用いることができる。図2は半導体パッケージを示し、この半導体パッケージにおいて上記の紫外線硬化性ドライフィルムをソルダレジスト形成に用いる例を示す。ソルダレジスト形成は、表面に第一パッド7が設けられ、裏面に第二パッド8が設けられたインターポーザ6の両面に紫外線硬化性ドライフィルムの紫外線硬化性シート材料1を接着した後、露光、現像することによって行うことができる。接着は、簡易ラミネータや真空ラミネータによるラミネートにより行ったり、直圧成形等により行ったりすることができる。その後、インターポーザ6の表面に半導体チップ9を搭載し、半導体チップ9と第一パッド7とをボンディングワイア10により電気的に接続した後、半導体チップ9をモールド樹脂11により封止する。一方、第二パッド8にはんだボール12を設けることによって、図2に示すような半導体パッケージを製造することができる。」
「【0062】
光カチオン重合硬化剤:(株)アデカ製「SP-170」(SbF6-系スルホニウム塩)
(紫外線硬化性シート材料)
表1に示す配合量(質量部)で樹脂、フィラー、光重合開始剤をプラネタリーミキサーで混練し、さらにメチルエチルケトン配合することによって、粘度が3000cpsである樹脂ワニスを調製した。
【0063】
次に上記の樹脂ワニスを、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなるキャリア基材に、コンマコーターヘッドのマルチコータ((株)ヒラノテクシード製)を用いて塗布した。このキャリア基材は、樹脂ワニスの塗布面にあらかじめオルガノポリシロキサンを塗布して離型処理したものである。そして、130℃で8分間加熱乾燥することにより、キャリア基材の片面に表1に記載の厚さでBステージ状態のエポキシ樹脂組成物からなる紫外線硬化性シート材料を製造した。」
(イ)【0029】には、紫外線硬化性樹脂及びフィラーを含有する樹脂組成物で形成される紫外線硬化性シート材料が記載されている。ここで、【0031】には紫外線硬化性樹脂として光で硬化すると共に熱でも硬化する樹脂2種以上を組み合わせて用いることができる旨記載されており、【0040】にはフィラーとしてEガラス(例えば、旭シュエーベル(株)製「球状Eガラス」(平均粒径5.0μm、屈折率1.56))が記載されている。
また、【0062】には表1に示す樹脂、フィラー、光重合開始剤の配合量(質量部)で樹脂ワニスを調製し、【0063】には樹脂ワニスをキャリア基材に塗布して加熱乾燥することにより紫外線硬化性シート材料を製造することが記載されている。ここで、【0071】の表1によれば、樹脂合計100質量部に対して球状Eガラス233質量部が配合されることがみてとれる。
そして、紫外線硬化性シート材料の使用例として(【0053】)、【0054】には紫外線硬化性シート材料をキャリア基材に積層して形成された紫外線硬化性ドライフィルムを、ソルダレジスト形成に用いる例が記載されている。
(ウ)以上によれば、特許出願2の先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されている。
「紫外線硬化性樹脂100質量部、及び、フィラーとして球状Eガラス233質量部を含有する樹脂組成物で形成される紫外線硬化性シート材料であって、
紫外線硬化性樹脂として光で硬化すると共に熱でも硬化する樹脂2種以上を組み合わせて用い、紫外線硬化性シート材料を積層して形成された紫外線硬化性ドライフィルムをソルダレジスト形成に用いる、紫外線硬化性シート材料。」
イ 対比、判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と先願発明2とを対比する。
(a)先願発明2の「紫外線硬化性樹脂」及び「球状Eガラス」は、それぞれ本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」及び「ガラス粒子」に相当する。また、先願発明2の「樹脂組成物」は、それから形成されたフィルムがソルダレジストに用いられるから、本件発明1の「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、先願発明2と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、先願発明2はそのような特定がない点で相違する。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明2はそのような特定がない点で相違する。
(b)先願発明2は「紫外線硬化性樹脂100質量部」及び「球状Eガラス233質量部」であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部」の範囲に含まれる。
(c)以上によれば、本件発明1と先願発明2とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部である、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点7)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、先願発明2はそのような特定がない点。
(相違点8)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含み、アルカリ現像性を有する」のに対して、先願発明2はそのような特定がない点。
b 判断
本件発明1は上記相違点7及び8で先願発明2と相違し、実質同一でもないから、本件発明1は、特許出願2の先願明細書等に記載された発明と同一でない。
(イ)本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、特許出願2の先願明細書等に記載された発明と同一でない。
(4)特許出願3に記載された発明について
ア 特許出願3の記載事項、先願発明3
(ア)本願の出願日前の他の出願であって、本願の出願後の出願公開された特許出願3(特願2013-260781号(甲第4号証:特開2015-118194号公報))の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、以下の事項が記載されている。
「【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリイミド、(B)不飽和結合含有重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)熱架橋性化合物および(E)屈折率が1.55~1.75のガラス粒子を含有する感光性樹脂組成物である。」
「【0066】
また、本発明の感光性樹脂組成物は着色剤をさらに含有することもできる。着色剤を含有することで、有機電界発光素子の絶縁層に用いた場合は、発光エリアからの迷光を防止する作用があり、回路基板用のソルダーレジストに用いた場合は、基板上の回路配線を隠す目隠しの作用がある。本発明に用いられる着色剤としては、染料、熱発色性染料、無機顔料、有機顔料などがあげられる。また、着色剤としては、前記(A)成分を溶解する有機溶剤に可溶で、かつ、(A)成分と相溶するものが好ましい。」
「【0127】
実施例1~8、比較例1~3
表1に示す重量比で配合した組成物をジアセトンアルコール/乳酸エチル=40/60の重量比率である溶媒に溶解した。溶媒の添加量は、溶媒以外の添加物を固形分とし、固形分濃度が45重量%となるように調整した。」
(イ)【0010】には、(A)アルカリ可溶性ポリイミド、(B)不飽和結合含有重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)熱架橋性化合物および(E)ガラス粒子を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。ここで、【0129】の表1の実施例1には、具体的に、(A)28、(B)16、(C)2、(D)4、(E)50の重量比で配合した組成物(【0127】)が記載されている。
また、【0066】には、感光性樹脂組成物を回路基板用のソルダーレジストに用いる旨記載されている。ここで、ソルダーレジストの形成について、樹脂組成物を回路基板(プリント配線板)に塗布して硬化することは自明である。
(ウ)以上によれば、特許出願3の先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明3」という。)が記載されている。
「アルカリ可溶性ポリイミド28重量%、不飽和結合含有重合性化合物16重量%、熱架橋性化合物4重量%、ガラス粒子50重量%を含有し、樹脂組成物をプリント配線板に塗布して硬化する回路基板用のソルダーレジストに用いる、感光性樹脂組成物。」
イ 対比、判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と先願発明3とを対比する。
(a)先願発明3の「アルカリ可溶性ポリイミド」及び「不飽和結合含有重合性化合物」は、本件発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂」に相当する。また、先願発明3の「ガラス粒子」及び「ソルダーレジストに用いる、感光性樹脂組成物」は、本件発明1の「ガラス粒子」及び「ソルダーレジスト用樹脂組成物」に相当する。
したがって、先願発明3と本件発明1は、「ソルダーレジスト用樹脂組成物」が「活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有」する点で共通する。
但し、本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、先願発明3はそのような特定がない点で相違する。
(b)先願発明3の「ガラス粒子」は、「アルカリ可溶性ポリイミド」及び「不飽和結合含有重合性化合物」の重量100換算に対して、重量113.6(小数点第2位を四捨五入)であるから、本件発明1の「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部」の範囲に含まれる。
(c)先願発明3の「アルカリ可溶性ポリイミド」及び「不飽和結合含有重合性化合物」は、本件発明1と「前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、アルカリ現像性を有する」点で共通する。
但し、活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含」むのに対して、先願発明3はそのような特定がない点で相違する。
(d)以上によれば、本件発明1と先願発明3とは
「ソルダーレジスト用樹脂組成物であり、
活性エネルギー線硬化性樹脂と、ガラス粒子とを含有し、
前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、アルカリ現像性を有する、
ソルダーレジスト用樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点9)
本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、先願発明3はそのような特定がない点。
(相違点10)
活性エネルギー線硬化性樹脂が、本件発明1は「カルボキシル基含有樹脂を含」むのに対して、先願発明3はそのような特定がない点。
b 判断
本件発明1は上記相違点9及び10で先願発明3と相違し、実質同一でもないから、本件発明1は、特許出願3の先願明細書等に記載された発明と同一でない。
(イ)本件発明3、7及び8について
本件発明3、7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、特許出願3の先願明細書等に記載された発明と同一でない。
(5)小活
本件発明1、3、7及び8は、特許出願1ないし3の先願明細書等に記載された発明と同一でないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものでない。
また、請求項4に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項4及び請求項4を引用する請求項6ないし8に係る特許異議申立理由は、対象が存在しないものとなった。
よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。
2 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関して、
ア 請求項1、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、
イ 請求項1、7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第7号証に記載された発明及び甲第8ないし10号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している。
甲第7号証:特開昭58-49702号公報(本決定における引用文献3)
甲第8号証:カーク・オスマー化学大辞典(昭和63年9月20日発行、丸善株式会社)
甲第9号証:無機化学ハンドブック(昭和40年8月10日発行、株式会社技報堂)
甲第10号証:特開平6-77649号公報
(2)特許法第29条第1項について
甲第7号証に記載された発明(引用発明3)は、上記「第4 2(3) ア(カ)」で説示したとおりである。そして、上記「第4 2(3) イ(ア) c」で説示したとおり本件発明1と引用発明3を対比すると、上記相違点3及4で相違する。
そうすると、本件発明1は、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明ではない。
また、本件発明7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、同様の理由により、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明でない。
よって、本件発明1、7及び8は、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、したがって、本件発明1、3、7及び8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
(3)特許法第29条第2項について
上記(2)のとおり、本件発明1と引用発明3を対比すると、上記相違点3及び4で相違する。
まず、上記相違点3(本件発明1は「前記ガラス粒子の線膨張率は30×10-7~80×10-7/℃」であるのに対して、引用発明3はそのような特定がない点。)について検討する.
甲第8号証には、ガラスが、電気電子工業の分野で絶縁体、小型回路の保護などに用いられ、線膨張係数が低いことが記載されているが(第272頁右欄)、線膨張率が30×10-7~80×10-7/℃であるガラス粒子は記載されていない。
そして、甲第9号証には、石英ガラスの線膨張係数が小さいことが記載されているが(第967頁)、上記のように参考資料Bによると石英ガラスの線膨張係数は、(5.5~5.8)×10-7deg-1である。
また、甲第10号証の【請求項8】には、「耐熱性絶縁膜は、ポリイミド樹脂30~90Vol%と、石英を主成分とした線膨張率が3.5ppm/K以下の無機材料粉末とを混合したものを用いる・・多層回路基板。」と、多層回路基板の耐熱性絶縁膜用として、線膨張係数が35×10-7/℃以下の無機材料粉末を用いることが記載されている。しかしながら、甲第10号証における「無機材料粉末」は、多層回路基板の薄膜配線6間に用いる耐熱性絶縁膜(【0028】、【0029】)に混合するものであり、現像性が求められるソルダーレジスト用の光硬化性樹脂組成物である引用発明3に適用する合理的な根拠を導き出すことはできない。
そうすると、甲第8ないし10号証の記載を参酌しても、引用発明3において、「石英ガラス粉末」に換えて、線膨張率が30×10-7~80×10-7/℃のガラス粒子を用いて、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、上記相違点4について検討するまでもなく、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明及び甲第8ないし10号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、本件発明7及び8は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、同様の理由により、甲第7号証(引用文献3)に記載された発明及び甲第8ないし10号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、本件発明1、7及び8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
(4)特許法第29条第1項、特許法第29条第2項についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。
3 特許法第36条第6項第2号について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、概略、次の主張をしている。
「(1)請求項1および4で規定している「ガラス粒子」には、球状シリカが含まれていないことが明記されているが(段落[0085])、球状シリカは、甲第11~16号証によれば、石英を粉砕し、火炎中で溶融、球状化した非晶質体であり、ガラス粒子に該当するため、請求項1で規定している「ガラス粒子」の外延が不明確である。
(2)請求項1における「前記ガラス粒子の配合量は、前記ソルダーレジスト用樹脂組成物100質量部に対して、1~600質量部である」との規定は、ガラス粒子がソルダーレジスト用樹脂組成物に含まれている場合には、ガラス粒子の配合量が100質量部を超える含有量となることは有り得ないため、不明確な規定である。請求項4における規定も同様である。
(3)実施例1と実施例2の結果において、ガラスフィラーの配合量が多い実施例2の方が線膨張係数が大きくなっている。本件特許発明が線膨張係数の低いソルダーレジスト用樹脂組成物などを提供することを課題としているため、ガラス粒子を配合していることの技術的意義が不明である。
よって、請求項1~8に係る発明は明確でない。」(第9頁表5、理由の要点)
(2)当審の判断
ア 主張(1)について
本件明細書の段落【0078】に「本実施形態に用いられるガラス粒子は、例えば非晶質のガラス状態にある化合物(例えば、ソーダガラス、石英ガラス)を機械的に微粉砕し、或いは他の方法によって微粒子化したものであることが好ましい。」と記載されていることから、請求項1で特定している「ガラス粒子」は非晶質のガラス状態にある化合物の粒子であることが明確である。
そして、本件明細書の【表2】の備考欄で「球状シリカ(クリスタライト5X:(株)龍森製)」と記載された、クリスタライト5Xは、結晶性シリカ(特開平11-124502号公報、段落【0029】参照)であるから、本件明細書の段落【0085】の「球状シリカ」は、結晶性シリカを示すものと解され、請求項1で特定している「ガラス粒子」を不明確にするものでない。
イ 主張(2)について
請求項1は「前記ガラス粒子の配合量は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂100質量部に対して、1~600質量部であり」と訂正されたので、請求項1は明確になった。
ウ 主張(3)について
請求項1は「前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、カルボキシル基含有樹脂を含み」と訂正された。
そして、活性エネルギー線硬化性樹脂が、カルボキシル基含有樹脂を含む実施例4ないし6では、ガラスフィラーの配合量を増大すると、CTEの測定値が低下する傾向があることが、表3及び表6に示されているので、ガラス粒子を配合していることの技術的意義が明らかである。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1、3、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3、7及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2、4ないし6は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項2、4ないし6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700758