特許異議申立
2024-700300
接合用ペースト、それを用いた接合体、並びに接合体の製造方法
- 審判番号
- 2024-700300
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-231071
- 登録番号
- 7354829
- 請求日
- 2024年04月02日
- 審決日
- 2024年07月19日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 池渕 立
- 審判官 相澤 啓祐
- 分類
- P1652.121-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7354829号発明「接合用ペースト、それを用いた接合体、並びに接合体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7354829号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7354829号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2019-231071号。以下、「本願」という。)は、令和 1年12月23日の出願であって、令和 5年 9月25日に特許権の設定登録がされ、同年10月 3日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、令和 6年 4月 3日受付で、請求項1~3に係る特許に対し、特許異議申立人である山▲崎▼浩一郎(以下、「申立人」という。なお、「▲崎▼」は「たつさき」である。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5(以下、「本件請求項1」等という。)に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~3に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
有機成分(a)により被覆された金属粒子(A)と分散媒(B)とを、金属粒子(A)/分散媒(B)=80/20~95/5(質量比)の割合、且つ金属粒子(A)と分散媒(B)とを合計で99~100質量%含有し、
金属粒子(A)は、1%積算粒径分布粒子径(d1)が30~200nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が100~350nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が300~900nmであり、
熱重量-示差熱分析により求められる前記金属粒子(A)の最も高温側の発熱ピークの補外終了温度Teが200℃以上、300℃以下であり、
熱重量-示差熱分析により求められる前記金属粒子(A)の最も低温側の発熱ピークの補外開始温度Tsにおける金属粒子(A)の質量を100質量%とした際、
補外終了温度Teにおける金属粒子(A)の質量減少率が1~5質量%であり、
前記分散媒(B)が、沸点180℃以上、230℃未満の有機溶剤(B-1)を、分散媒全体の80質量%以上含む、
接合用ペースト。
【請求項2】
前記有機溶剤(B-1)が、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソホロン、γ-ブチルラクトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちの1種ないし2種以上からなる請求項1記載の接合用ペースト。
【請求項3】
粘度が1~150Pa・sである請求項1または2記載の接合用ペースト。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法としていずれも本願の出願前に日本国内において公知となった、下記甲第1~5号証を提出して、以下の申立理由1により、本件特許の請求項1~3に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(進歩性)
(1)本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項、及び周知技術(甲第4号証、甲第5号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2009-289745号公報
甲第2号証:特開2005-146386号公報
甲第3号証:特開2013-108140号公報
甲第4号証:特開2011-80147号公報
甲第5号証:特開2015-105372号公報
(以下、甲第1~5号証をそれぞれ「甲1」~「甲5」という。)
第4 当審の判断
上記申立理由1は採用できない。その理由は以下に記載のとおりである。
1 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
(1)甲1の記載及び甲1に記載された発明
ア 甲1には、「加熱焼結性銀粒子の製造方法、ペースト状銀粒子組成物、固形状銀の製造方法、金属製部材の接合方法、プリント配線板の製造方法および電気回路接続用バンプの製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある(なお、下線は当審が付したものであり、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。
(1ア)「【0003】
…
しかしながら、電子機器、電子部品、チップ部品等およびこれらを構成する材料の耐熱性の制約から、低温度、具体的には150℃以下の温度でペースト状組成物が焼結し、かつ、接着性を有することを求められる場合が増えてきている。
しかし、特に低温度での焼結における接着性の発現が十分ではなく、この原因として銀粒子の凝集防止の目的で用いられている銀粒子の被覆剤(例、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸)に問題があることに気がついた。
【0004】
ペースト状銀粒子組成物に使用される銀は微細粒子であるため、銀粒子同士の凝集を防ぐためその表面は有機物で被覆されている。特開昭54-121270では、銀粉末の凝集を防止するために、銀粉末生成過程で高級脂肪酸を共存させることにより高級脂肪酸で被覆された銀粉末を製造している。具体的には硝酸銀水溶液にホルマリン、水酸化ナトリウム等の還元剤とステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸を添加して攪拌した後、これらの高級脂肪酸で被覆された銀粉末を分離している。」
(1イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記問題のない銀ペースト、すなわち、比較的低温度で焼結し、かつ、接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となる、ペースト状銀粒子組成物を開発すべく鋭意研究した結果、高級脂肪酸若しくはその誘導体で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸若しくはその誘導体を、より低級の高・中級脂肪酸または高・中級脂肪酸の誘導体に置換することが有効なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、加熱すると銀粒子が比較的低温度で容易に焼結して接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となる加熱焼結性銀粒子の製造方法;加熱すると銀粒子が比較的低温度で容易に焼結して接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となるペースト状銀粒子組成物;ペースト状銀粒子組成物から強度と電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状銀を製造する方法;該ペースト状銀粒子組成物を使用して金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合する方法;耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を有するプリント配線板を製造する方法;および、電気伝導性と熱伝導性が優れた電気回路接続用バンプを製造する方法を提供することにある。」
(1ウ)「【0010】
この目的は、
「[3](A)表面が高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子と、(B)揮発性分散媒とからなり、加熱により該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結するペースト状銀粒子組成物において、銀粒子表面を被覆している高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)は、銀粒子表面をあらかじめ被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で置換したものであることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
…」により達成され、…」
(1エ)「【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における、置換前と置換後の銀粒子についての大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)チャートである。
【図2】実施例3における、置換前と置換後の銀粒子についての大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)チャートである。」
(1オ)「【0029】
銀粒子の表面を予め被覆している高級脂肪酸(a1)は、炭素原子数15以上の脂肪酸であり、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12-ヒドロキシオクタデカン酸(12-ヒドロキシステアリン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の直鎖飽和脂肪酸;2-ペンチルノナン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ヘプチルドデカン酸、イソステアリン酸等の分枝飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の不飽和脂肪酸が例示される。
(1カ)「【0032】
銀粒子表面を予め被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を置換するために使用する、高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)は、炭素原子数が16以下の高・中級脂肪酸が好ましく、炭素原子数が8~14の中級脂肪酸がより好ましい。そのような高・中級脂肪酸として、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が例示される。本発明では、「より低級の」は、脂肪酸の炭素原子数が一つでも小さいことを意味し、置換効果の点で炭素原子数が2以上小さいことが好ましく、3以上小さいことがさらに好ましい。
なお、銀表面が高・中級脂肪酸(b1)により被覆された銀粒子は通常撥水性を示す。」
(1キ)「【0040】
かくして得られた銀粒子表面を被覆している、より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)の量は、銀粒子の焼結性と、焼結してできた固形状銀の強度と電気伝導性と熱伝導性の点で、0.01%以上であり、2.0重量%以下であることが好ましく、特には0.05%以上であり、1.0重量%以下であることが好ましい。
【0041】
銀粒子を被覆している高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)の量は通常の方法で測定できる。銀粒子を空気気流中で500℃に加熱して、銀粒子に付着している高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)を酸化分解、揮発、あるいは燃焼により除去して重量減少を測定するという熱重量分析が例示される。別の方法として、銀粒子を酸素気流中で加熱して銀粒子に付着している高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)中の炭素を炭酸ガスに変えて赤外線吸収スペクトル法により定量分析する方法が例示される。これらの場合、銀粒子表面や銀粒子中の有機系還元剤との合計量が定量されるが、有機還元剤の残留量はごく微量なので、無視することができる。」
(1ク)「【0044】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子(A)と揮発性分散媒(B)との混合物であり、粉末状の銀粒子が揮発性分散媒(B)の作用によりペースト化している。ペースト化することによりシリンダーやノズルから細い線状に吐出でき、またメタルマスクによる塗布が容易であり、電極の形状に適用しやすくなる。なお、ペースト状は、クリーム状やスラリー状を含むものである。
【0045】
非揮発性分散媒ではなく、揮発性分散媒を使用するのは、加熱により銀粒子が焼結する際に分散媒が前もって揮散すると銀粒子が焼結しやすく、その結果固形状銀の強度と電気伝導性や熱伝導性が大きくなりやすいからである。揮発性分散媒は、銀粒子表面を変質させず、その沸点は60℃以上であり、300℃以下であることが好ましい。沸点が60℃未満であるとペースト状銀粒子組成物を調製する作業中に溶媒が揮散しやすく、沸点が300℃より大であると、銀粒子が焼結後も揮発性分散媒が残留しかねないからである。
【0046】
そのような揮発性分散媒(B)として、水;エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の揮発性多価アルコール;低級n-パラフィン、低級イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;…;低分子量の揮発性シリコーンオイルおよび揮発性有機変成シリコーンオイルが例示される。
…
【0048】
揮発性分散媒(B)の配合量は、高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子(A)をペースト状にするのに十分な量でよく、目安として加熱焼結性銀粒子(A)100重量部あたり、5~20重量部であり、好ましくは6~14重量部である。本発明のペースト状銀粒子組成物は、本発明の目的に反しない限り加熱焼結性銀粒子(A)以外の還元銀、アトマイズ銀、銀コロイド、銀合金、表面銀コート粉、その他の金属系や非金属系の粉体、金属化合物や金属錯体、チクソ剤、安定剤、着色剤等の添加物を含有しても良い。」
(1ケ)「【0070】
[実施例3]
参考例の製造方法において、市販の還元法で製造された粒状の銀粒子(被覆剤なし)をボールミルに投入し、オレイン酸を添加してフレーク化することにより製造された、表面がオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子{レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであり、アスペクト比Aが3.3であり、アスペクト比Bが15.3であり、有機物量(注:オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量である)が0.3重量%である}と、ラウリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)の30%アセトン溶液を用いて、銀粒子の表面を被覆しているオレイン酸(炭素原子数18、分子量282)をラウリン酸(炭素原子数12、分子量200)に置換したフレーク状銀粒子(A)を得た。
【0071】
オレイン酸がラウリン酸に置換されたことを確認するため、置換前と置換後の銀粒子について大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)を行ない図2に示した。図2によると、置換前のオレイン酸の酸化分解ピーク温度は227℃である。置換後の酸化分解ピーク温度は212℃であり、かつ、オレイン酸の酸化分解ピーク温度の227℃付近には発熱ピークがまったく検出されていない。したがって、オレイン酸はラウリン酸に置換されたことがわかった。
【0072】
この銀粒子(A)50部に、蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィン(新日本石油化学株式会社製、商品名アイソゾール300)4部を添加し、へらを用いて均一に混合なるまで混合することによりペースト状銀粒子組成物を調製した。このペースト状銀粒子組成物はメタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。硬さ測定に使用したフィルム状銀は、固体状であるに十分な硬さを有していた。以上の結果より、このペースト状銀粒子組成物が、強固な固形状銀を製造するのに有用なこと、金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合するのに有用なこと、耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を形成するのに有用なこと、および半導体素子上または基板上に銀バンプを形成するのに有用なことがわかった。」
(1コ)「【図2】
[図:0001413367000001.jpg]
[図:0001413367000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
(ア)上記ア(1ア)、(1イ)によれば、甲1に記載された発明が解決しようとする課題の一つは、銀粒子の凝集を防止する目的で用いられている従来の被覆剤は高級脂肪酸や高級脂肪酸塩が使用されていたために、低温度での焼結における接着性の発現が十分ではなかったところ、銀粒子が比較的低温度で容易に焼結して接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となるペースト状銀粒子組成物を提供することであると認められる(以下、単に「課題」という。)。
(イ)上記課題を解決し得る発明の実施例として、上記ア(1ケ)に記載された実施例3のペースト状銀粒子組成物に注目する。
実施例3の組成物は次の製造方法により製造されるものである。
まず、市販の還元法で製造された粒状の銀粒子(被覆剤なし)をボールミルに投入し、オレイン酸を添加してフレーク化することにより、表面がオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子を製造する。このオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子は、レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであり、オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量である有機物量が0.3重量%である。
次に、ラウリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)の30%アセトン溶液を用いて、銀粒子の表面を被覆しているオレイン酸をラウリン酸に置換したフレーク状銀粒子(A)を得る。
最後に、このフレーク状銀粒子(A)50部に、蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィン(新日本石油化学株式会社製、商品名アイソゾール300)4部を添加し、混合することによりペースト状銀粒子組成物を調製した。
(ウ)上記(イ)の記載事項に関して、上記ア(1コ)の図2と上記ア(1ケ)の段落【0071】の記載によれば、置換後のラウリン酸の酸化分解ピーク温度は、大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)によると、212℃であり、オレイン酸はラウリン酸に完全に置換されていることが確認できる。
また、上記ア(1オ)によれば、上記オレイン酸は、銀粒子の表面を予め被覆している高級脂肪酸(a1)の一例であり、上記ア(1カ)によれば、上記ラウリン酸は、高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)の一例であり、上記ア(1ク)の段落【0046】によれば、上記低級イソパラフィンは、揮発性分散媒(B)の一例である。
(エ)以上、上記実施例3についての記載を総合すると、甲1には次の発明が記載されているものと認められる。
「表面がラウリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子50部と、蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィンからなる揮発性分散媒4部と、を混合して得られたペースト状銀粒子組成物であって、
上記ラウリン酸は、銀粒子表面を予め被覆していたオレイン酸をラウリン酸で置換したものであり、
上記ラウリン酸の酸化分解ピーク温度は、大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)によると、212℃であり、
ラウリン酸で置換する前のオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子は、レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであり、オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量である有機物量が0.3重量%である、
ペースト状銀粒子組成物。」(以下「甲1発明」という。)
(2)甲2の記載
ア 甲2には、「金属粉スラリーの製造方法及びその製造方法で得られたニッケル粉スラリー」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(2ア)「【背景技術】
【0002】
従来から金属粉の製造に用いられてきた製造方法として、非特許文献1に開示されている如きポリオール法と一般的に称される方法がある。このポリオール法を簡単に言えば、金属塩及び/又は金属水酸化物を金属イオン供給源として用いて、還元糖等のポリオール類の溶媒中で還元することにより、高純度で高結晶な金属粉を得る方法であり、工程が単純で、生産コストも低廉化できることから広く採用されてきた。
【0003】
このポリオール法で得られた金属粉は、通常、還元析出した金属粉を濾過し、乾燥することにより、製品としての金属粉として市場に供給されてきた。ところが、このポリオール法で得られた金属粉の特徴としては、還元析出した直後の金属粉の凝集が著しく、乾燥処理することで更に凝集が進行するという性質があった。その結果として、ポリオール法で得られた金属粉は有機ビヒクルとの混合が困難で導電性ペーストに加工することが困難と言われてきた。そして、本件出願人も、特許文献1に開示の発明を行い、上述の問題を解決するために、分散性に優れた金属粉を得ることのできる方法を広く提唱してきた。」
(2イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
…
【0010】
現在の市場に供給されているポリオール法で得られたニッケル粉を初めとする金属粉では、粉粒の凝集が著しいために市場要求を満たさず、より粉粒の分散性が高く導電性ペースト製造が容易となり、しかも、その導電性ペーストを用いて形成した電極表面の形状が滑らかとなる金属粉が求められてきたのである。仮に、ポリオール法で得られた金属粉を上述した如き用途に用いることが出来れば、ポリオール法の生産性の高さを有効に活用する方法が拡大するのである。」
(2ウ)「【0027】
更に、上述した金属粉スラリーの製造方法を用いて得られた、ニッケル粉スラリー中のニッケル粉は、以下のa)~c)の粉体特性を同時に備えていることが好ましい。a)の特性は、走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径DIAが0.4μm以下というものである。このa)の特性は、 走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径DIAが0.4μm以下というものである。ここで、「走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径DIA」とは、電界放射走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察される粉粒の観察像(本件発明の場合には倍率50000倍、程度で観察するのが好ましい。)を画像解析することにより得られる平均粒径のことである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察されるニッケル粉の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP-1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均粒径DIAを求めたものである。このニッケル粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子の平均粒径が確実に捉えられていることになる。本件発明で言うニッケル粉のDIAは、本件発明者らが観察する限り0.01μm~0.2μmの範囲に殆どが入ってくるが、現実には更に微細な粒径のものが確認できる場合もあり、下限値を敢えて明記していないのである。なお、従来のニッケル粉も、一次粒子径のみを見れば、ここで述べた粒径と同程度である。
【0028】
しかしながら、b)の特性は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50及びD90は、従来のポリオール法で得られたニッケル粉には見られない値となっているのである。ここで、D50、D90とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる体積累積50%及び90%における粒径のことであり、これらの値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではなく、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、粒径を算出していると言えるのである。即ち、現実のニッケル粉の粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、解粒処理を行ったとはいえ複数個の粉粒が凝集した状態になっているのが通常と考えられるからである。従来のポリオール法で得られたニッケル粉のD50は0.85μm以下、D90が1.80μm以下の範囲としてしか品質保証できないのに対し、本件発明にかかる金属粉スラリーを構成するニッケル粉のD50は0.33μm以下、D90が0.54μm以下の範囲として品質保証することが可能となり、D90とD50との値の差が狭まるのである。なお、本件明細書における、レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、ニッケル粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US-300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320-X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて測定したものである。」
(2エ)「【実施例1】
【0033】
本実施例では、上述した製造方法を用いてニッケル粉スラリーを製造し、そこに含まれるニッケル粉の粉体特性を測定した。そして、更に、3本ロールを用いてニッケルペーストを製造し、試験回路を形成し、その表面粗さの測定を行った。以下、製造手順を工程ごとに説明する。
【0034】
工程1:最初は、ポリオール金属粉反応工程で、水酸化ニッケルをエチレングリコール中に入れ、190℃に加熱してニッケル粉を生成し、エチレングリコールを取り除くことなくスラリー状態のままで一時的に保持しポリオールニッケル粉スラリーとしたのである。以下に具体的な方法に関して説明する。
…
【0037】
工程2:この金属粉分取工程では、ポリオールニッケル粉スラリーの固液分離を行いニッケル粉が7kg、濃度80wt%となるように、磁選機を採用しニッケル粉をスラリー状態で回収したのである。
【0038】
工程3:この洗浄工程では、工程2で回収したニッケル粉をメタノールを洗浄用有機溶媒として用いて洗浄し固液分離する操作を複数回行い、最終洗浄のときに固液分離することなく洗浄液含有ニッケル粉スラリーの状態としたのである。このときの洗浄操作は、工程2で回収したニッケル粉にメタノールを加えて磁力選鉱法を用いて固液分離する洗浄操作を6回繰り返した。このときに用いたメタノール量は、トータル108リットルであった。そして、最終洗浄の時の洗浄液(メタノール)を分離することなく残留させて洗浄液含有ニッケル粉スラリーの状態としたのである。
【0039】
工程4:この工程では、工程3の洗浄液含有ニッケル粉スラリーに新たな有機溶媒として9リットルのターピネオールを加えて、攪拌しつつ110℃に加温して洗浄液成分であるメタノールのみを揮発させて有機溶媒置換を行い、ターピネオールが50wt%、残部ニッケル粉のニッケル粉スラリーとしたのである。
【0040】
以上に述べてきた工程1~工程4により得られたニッケル粉スラリーに含まれるニッケル粉の粉体特性及びニッケルペーストに加工して形成した導体表面粗さを測定した結果を表1に他の実施形態及び比較例と共に示している。なお、各実施形態及び比較例で製造したニッケルペーストは、ニッケル粉スラリーにエチルセルロースを加えることにより、ニッケル粉が40wt%、エチルセルロースが2.5wt%、ターピネオールが57.5wt%のものとした。
【0041】
膜の比抵抗は、上記ニッケルペーストを用いて、アルミナ基板にスクリーン印刷を行い、80℃の温度で1時間乾燥し、株式会社東京精密社製のサーフコム130Aを用いて膜の表面粗さ(Ra、Rmax)を測定した。粉体特性と表面粗さに関しては表1に記載する。その後、窒素置換雰囲気において600℃で1時間焼成した。その後、得られた焼成膜を、室温に戻し、ヒューレッド・パッカード社製のミリオームメータを用いて膜抵抗を測定した。その結果も表1に示している。」
(2オ)「【0062】
【表1】
[図:0001413367000003.jpg]
」
(3)甲3の記載
ア 甲3には、「金属微粒子組成物及びその製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(3ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分散性及び耐酸化性に優れる金属微粒子を含む金属微粒子組成物を提供することにある。また、他の目的は、分散性及び耐酸化性に優れる金属微粒子組成物の製造方法を提供することにある。」
(3イ)「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属微粒子組成物は、下記の成分(A)及び(B)、
(A)ニッケル及び銅を含有する金属微粒子であって、該金属微粒子100質量部に対し、ニッケル元素の量が5~50質量部の範囲内にあり、銅元素の量が50~95質量部の範囲内にある金属微粒子、及び
(B)ロジン変性マレイン酸樹脂、
を含んでいる。そして、この金属微粒子組成物は、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を0.3~50質量部の範囲内となるように配合してなるものである。
【0009】
本発明の金属微粒子組成物は、(A)成分が、粒子径1~150nmの範囲内にある金属微粒子であってもよい。
【0010】
また、本発明の金属微粒子組成物は、(B)成分が、酸価140以上のロジン変性マレイン酸樹脂であってもよい。
【0011】
また、本発明の金属微粒子組成物は、さらに溶媒を含有するものであってもよい。ここで、前記溶媒が、アルコール系溶媒であってもよいし、あるいは、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート及びジヒドロターピニルアセテートからなる群より選ばれる1種以上を主成分として含有する有機溶媒であってもよい。」
(3ウ)「【0022】
[ロジン変性マレイン酸樹脂]
ロジン変性マレイン酸樹脂とは、ロジンとマレイン酸のDiels-Alder反応によって得られる付加物に、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールを反応させたアルキド樹脂のことである。
【0023】
ロジン成分としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸等を主成分とする天然ロジン、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン等が挙げられるが、それら主成分の中でも、特にアビエチン酸は金属微粒子の分散性及び耐酸化性を向上させる効果を有する。また、アビエチン酸は、3つの環構造、共役二重結合、及びカルボキシル基を有し、反応性に富んだ嵩高い構造を有しているため、これらの環構造-カルボキシル基が分散作用に関与している可能性がある。すなわち、環構造-カルボキシル基によって金属微粒子との間に相互作用が生じ、金属微粒子の周囲にアビエチン酸が近接した状態で存在することによって、金属微粒子の表面の電気的性質を変化させ、あるいは立体的な障害によって、金属微粒子同士の凝集を抑制し、更には金属微粒子組成物に任意に配合される溶媒との親和性によって分散性を付与しているものと考えられる。ここで、相互作用としては、例えばイオン性結合、共有結合、静電結合、配位結合、水素結合等が考えられる。また、アビエチン酸は、銅の存在によって、金属微粒子の表面の酸化銅をアビエナイト銅に変化させるので、酸化銅の生成を抑制すると考えられる。従って、アビエチン酸由来成分は、本発明の効果を発揮するための有効成分と考えられる。」
(3エ)「【0073】
(実験例1-1)
125.9gのラウリルアミンに18.5gのギ酸ニッケル二水和物を加え、窒素フロー下、120℃で10分間加熱することによって、ギ酸ニッケルを溶解させて錯化反応液を得た。次いで、その錯化反応液に、さらに83.9gのラウリルアミンを加え、マイクロ波を用いて180℃で10分間加熱することによって、ニッケル微粒子スラリーを得た。
【0074】
ニッケル微粒子スラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、60℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥することによって、ニッケル微粒子1(ニッケル含有率;98質量%、平均粒子径;100nm、CV値;0.17、5%熱収縮温度;295℃)を得た。元素分析の結果、C;0.5、N;0.026、O;2.2(単位は質量%)であった。
【0075】
(実験例1-2)
実験例1-1で得られたニッケル微粒子スラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンを用いて洗浄し、更にイソプロパノールを用いて洗浄した後、高圧ホモジナイザー(株式会社スギノマシン製、商品名;スターバースト)を用いて、圧力200MPaの条件にてニッケル微粒子を分散させたスラリー溶液1(固形分濃度10wt%)を調製した。このスラリー溶液1の粒度分布の測定を行った。体積分布の結果は、次のとおりであった。
D10;0.115μm、D30;0.177μm、D50;0.238μm、D90;0.479μm、D99;1.151μm
【0076】
(実験例1-3)
実験例1-2で調製したスラリー溶液1の10gを分取し、これにアビエチン酸の0.3gを加え、15分間撹拌した後、イソプロパノールで洗浄し、粒度分布の測定を行った。体積分布の結果は、次のとおりであった。
D10;0.074μm、D30;0.111μm、D50;0.149μm、D90;0.300μm、D99;0.669μm」
(4)甲4の記載
ア 甲4には、「接合材およびそれを用いた接合方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(4ア)「【0012】
そこで、本発明の解決すべき課題としては、可能な限り単純な構成であっても接合強度が確保され、かつ接合強度のムラを低減させうる、接合用金属ペースト(接合材)の提供を図ることに定めた。」
(4イ)「【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らはこうした課題を鋭意検討し、以下に示す接合材の構成により上記課題を解決できうることを見いだし、本発明を完成させた。
【0014】
上記課題を解決する接合材は、マイクロトラック粒度分布測定装置で測定される、平均一次粒径(D50径)0.5~3.0μmである金属サブミクロン粒子と、平均一次粒子径が1~200nmであって、炭素数6~8の有機化合物で被覆された金属ナノ粒子、およびそれらを分散させる分散媒で構成させるものである。」
(4ウ)「【0084】
(実施例1)
金属ナノ粒子として、上記で得られたヘキサン酸被覆銀粒子粉末(平均一次粒子径:13.9nm)45gと金属サブミクロン粒子として、球状銀粒子粉末(平均粒子径(D50)600nm、なお粒子をSEMで確認したところ、視野中の粒子はおのおの独立した粒子として確認された)45gと、テルピネオール(構造異性体混合/和光純薬工業株式会社製)8.57gと、湿潤分散剤としてDisperBYK(登録商標)-2020(ビックケミー・ジャパン株式会社製)1.43gを混合し、接合材を作製した。得られた接合材を印刷法により銅無垢材上に塗布した。このときの条件はメタルマスク(マスク厚50μmt)とし、メタルスキージは手動にて実施した。
【0085】
その後、予備焼成工程として大気雰囲気中で100℃、10分間の加熱を行った。100℃から本焼成の温度(350℃)までは3.0℃/sの昇温速度で昇温し、350℃に達した時点から、5分間の本焼成工程を行った。本実施例では、接合層には、焼きムラのない金属光沢を呈したものが得られた。」
(4エ)「【0101】
実施例1~4では上述したようにペースト粘度が下がるに従って、平均接合強度が高くなる傾向がグラフでも確認された。実施例および比較例は、分散媒および銀含有量の量はほぼ同じであるので、粘度の違いは溶剤の含有量の違いによるものではない。そこで、ナノ粒子とサブミクロン粒子の構成割合を比較すると、実施例2~4では、サブミクロン粒子の構成割合が多いほど、ペースト粘度が低下した。具体的には、ナノ粒子/サブミクロン粒子が9.00、1.00、0.25となると、ペースト粘度は112.1、34.4、11.5(単位はPa・s)と低下した。なお、実施例1ナノ粒子とサブミクロン粒子の構成比率が同じであるが、ナノ粒子にヘキサン酸を被覆しているため、ペースト粘度が上昇したと考えられる。」
(5)甲5の記載
ア 甲5には、「水性銀コロイド液及びその製造方法、並びに水性銀コロイド液を用いた塗料」(発明の名称)に関して、次の記載がある。
(5ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車、自転車、携帯電話などの電子機器、OA機器、加熱調理器具や冷暖房機器などの家電製品、又はそれらの部品等を対象とするメタリック塗装用の塗料、並びにその原料となる水性銀コロイド液及びその製造方法に関する。」
(5イ)「【0017】
上記の通り、高い金属質感と電磁波透過性とを兼ね備えた塗膜を形成することができる金属微粒子を含んだ塗料組成物が求められている。特に、このような金属微粒子は凝集を防ぐためにコロイドの形態をとることが多く、この場合は分散性に優れ、且つコロイドを長期間保存したとしても沈降しない保存安定性の高さも求められる。本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、高い分散性と保存安定性を有し、さらに塗料として用いた時に金属質感及び電磁波透過性に優れた塗膜が得られる水性銀コロイド液を提供することを目的としている。」
(5ウ)「【0080】
[実施例]
下記の方法で試料1~5の水性銀コロイド液を作製した。先ず、6.65Lの純水に塩化銀35gと25%アンモニア水0.35Lとを添加して溶解し、銀アンミン錯塩水溶液を調製した(銀濃度3.8g/L、35℃、pH12.23)。一方、ヒドラジン一水和物(関東化学製、鹿1級)7mLを純水1.8Lで希釈し、この液にポリビニルアルコールとしてポバール203(クラレ製)10g、及びポリビニルピロリドンK15(東京化成製)2gを溶解し、還元液とした。なおポバール203の分子量は13,000、ポリビニルピロリドンK15の分子量は10,000であった。
【0081】
攪拌機を用いて銀アンミン錯塩水溶液を300rpmで攪拌しつつ、還元液を添加した。1時間攪拌保持して還元を終了させた後、限外濾過キットのビバフロー200 VF20P3(ザルトリウス・メカトロニクス製、分画分子量50,000)を用いて純水による洗浄と濃縮とを繰り返すことで不純物を取り除いた。これにより銀濃度が1g/mL、不純物の総量が0.15質量%の試料1の水性銀コロイドを得た。得られた試料1の水性銀コロイド液中の銀粒子の走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察像を図1に示す。」
(5エ)「【0087】
上記した試料1~5の水性銀コロイド液の作製条件をまとめたものを下記表1に示す。また、これにより得られた試料1~5の水性銀コロイド液中の銀粒子に対して行った有機物付着量の測定結果、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いた平均粒径D50及びDmin、並びに沈降性の評価結果を下記表2に示す。さらに、上記試料1~5の水性銀コロイド液に各々エチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬製)を銀に対して5%添加して塗料とし、各塗料を塗布して得られた塗膜の金属質感及び電磁波透過損失を評価した。その評価結果も併せて表2に示す。
【0088】
【表1】
[図:0001413367000004.jpg]
【0089】
【表2】
[図:0001413367000005.jpg]
」
2 申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
ア 甲1発明の「ラウリン酸」、「フレーク状銀粒子」、「低級イソパラフィンからなる揮発性分散媒」は、それぞれ、本件特許発明1の「有機成分(a)」、「金属粒子(A)」、「分散媒(B)」に相当する。
イ 甲1発明において、「表面がラウリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子50部と、蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィンからなる揮発性分散媒4部と、を混合」したことは、フレーク状銀粒子と低級イソパラフィンの質量比が50/4=12.5であり、当該質量比12.5が「80/20(=4)~95/5(=19)」の範囲に含まれていて、低級イソパラフィンからなる揮発性分散媒にはラウリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子以外の物質が含まれていないことから、上記アの検討を踏まえると、本件特許発明1の「有機成分(a)により被覆された金属粒子(A)と分散媒(B)とを、金属粒子(A)/分散媒(B)=80/20~95/5(質量比)の割合、且つ金属粒子(A)と分散媒(B)とを合計で99~100質量%含有」することに相当する。
ウ 甲1発明の「ペースト状銀粒子組成物」は、上記1(1)ア(1ケ)の【0072】に、このペースト状銀粒子組成物が金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合するのに有用であると記載されていることから、本件特許発明1の「接合用ペースト」に相当する。
エ 甲1発明において、「揮発性分散媒」が「蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィンからなる」ことは、本件特許発明1において、「前記分散媒(B)」が「沸点」「230℃未満の有機溶剤(B-1)を、分散媒全体の80質量%以上含む」ことに相当する。
オ 甲1発明において、ラウリン酸で置換する前のオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子の粒径は、「レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)」で表されるが、当該平均粒径(メディアン径D50)について、甲1の段落【0026】には「なお、メディアン径D50は、レーザー回折法50%粒径と称されたり(特開2003-55701参照)、体積累積粒径D50と称されてもいる(特開2007-84860参照)。」と記載されていることから、体積基準の累積分布関数において累積%が50%となる粒子径を意味しているものと認められる。
一方、本件特許発明1における「1%積算粒径分布粒子径(d1)」等の粒径について、本願の願書に添付した明細書の段落【0019】には、「測定には例えば、ナノトラックUPA-EX150(日機装社製)を用いることができる。」、「1%積算粒径分布粒子径(d1)、50%積算粒径分布粒子径(d50)、99%積算粒径分布粒子径(d99)とは、それぞれ積算粒径分布の1%、50%、99%に対応した粒子径(体積基準)を意味する。」と記載されている。
したがって、甲1発明におけるD50と、本件特許発明1におけるd1、d50、d99は、いずれも、体積基準の累積分布関数において、累積%が1%、50%、99%のいずれかとなる粒径を意味している、つまりD50とd50は表現は異なるが、同じ種類の粒径を表していることが理解される。
カ 以上の検討によれば、本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「有機成分(a)により被覆された金属粒子(A)と分散媒(B)とを、金属粒子(A)/分散媒(B)=80/20~95/5(質量比)の割合、且つ金属粒子(A)と分散媒(B)とを合計で99~100質量%含有し、
前記分散媒(B)が、沸点230℃未満の有機溶剤(B-1)を、分散媒全体の80質量%以上含む、
接合用ペースト。」の点。
(相違点1)
本件特許発明1では「金属粒子(A)は、1%積算粒径分布粒子径(d1)が30~200nm、50%積算粒径分布粒子径(d50)が100~350nm、99%積算粒径分布粒子径(d99)が300~900nmであ」るのに対して、甲1発明では「ラウリン酸で置換する前のオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子は、レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであ」る点。
(相違点2)
本件特許発明1では「熱重量-示差熱分析により求められる前記金属粒子(A)の最も高温側の発熱ピークの補外終了温度Teが200℃以上、300℃以下であ」るのに対して、甲1発明では「ラウリン酸の酸化分解ピーク温度は、大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)によると、212℃であ」る点。
(相違点3)
本件特許発明1では「熱重量-示差熱分析により求められる前記金属粒子(A)の最も低温側の発熱ピークの補外開始温度Tsにおける金属粒子(A)の質量を100質量%とした際、
補外終了温度Teにおける金属粒子(A)の質量減少率が1~5質量%であ」るのに対して、甲1発明では「オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量である有機物量が0.3重量%である」点。
(相違点4)
本件特許発明1では「分散媒(B)」の「沸点」が「180℃以上」であるのに対して、甲1発明では「低級イソパラフィンからなる揮発性分散媒」の「蒸留範囲が106℃から202℃である」点。
(2)相違点についての検討
事案に鑑み、上記相違点1について検討する。
ア 甲1発明は、フレーク状銀粒子の粒径について「ラウリン酸で置換する前のオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子は、レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μm」であることが特定されているが、オレイン酸をラウリン酸で置換した後の銀粒子の粒径について明示的には特定されていないため、甲1発明において、「1%積算粒径分布粒子径(d1)(以下、単に「d1」という。)」、「50%積算粒径分布粒子径(d50)(以下、単に「d50」という。)」及び「99%積算粒径分布粒子径(d99)(以下、単に「d99」という。)」がどのような値であるか不明である。
そこで、甲1発明の特定事項に基づいて、オレイン酸をラウリン酸で置換した後の銀粒子の粒径分布がどのようなものであるかについて検討する。
イ 甲1発明において、「ラウリン酸で置換する前のオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子」は「オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量である有機物量が0.3重量%」であるところ、オレイン酸の密度が0.895g/cm3、銀の密度が10.49g/cm3であること、及び、有機系還元剤がオレイン酸の重量に比べて微量であり無視し得ると考えられることを踏まえると、銀粒子の体積に対するオレイン酸の体積比は3.52体積%と算出することができる。さらに、銀粒子が略球形をしており、オレイン酸は球形の銀粒子を均等に覆っていると仮定すると、銀粒子のD50に対するオレイン酸の膜厚(以下「δ」で表す。)の比(δ/D50)は0.59%と算出できる(詳細は下記*参照。)。
したがって、銀粒子のD50に対する当該銀粒子表面を被覆するオレイン酸の厚さの比は極微少(0.59%)であって、オレイン酸の厚さは銀粒子の粒径に対してほぼ無視し得る厚さであるといえる。また、オレイン酸とラウリン酸はいずれも炭化水素鎖にカルボキシ基を有した1価のカルボン酸であり、銀粒子への付着性能は類似しているものと考えられるから、オレイン酸を置換した後のラウリン酸の膜厚も、オレイン酸の膜厚と大きく変わることはないと考えられるので、表面がラウリン酸で被覆された銀粒子のD50は、表面がオレイン酸で被覆された銀粒子のD50と同程度の3.0μmであると推定される。
* 銀粒子の粒径に対するオレイン酸の膜厚の比の算出
銀粒子の質量を1とすると、オレイン酸の質量は0.3/100であるから、銀の密度が10.49g/cm3で、オレイン酸の密度が0.895g/cm3であることが技術常識であることを踏まえると、銀粒子体積(V)とオレイン酸体積(Δ)の比は次のように求めることができる。
[図:0001413367000006.jpg]
また、銀粒子が半径r=D50/2の略球状であり、オレイン酸は銀粒子を厚みδで均等に被覆していると仮定すると、V及びΔと次の関係がある。ここでδ≪rと考えられるから、
[図:0001413367000007.jpg]
[図:0001413367000008.jpg]
したがって、オレイン酸の厚みδは、D50の約0.59%と算出することができる。
ウ そうすると、甲1発明における「表面がラウリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子」の「1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)」は、3.0μm=3000nm程度と推定されるのに対して、本件特許発明1における「金属粒子(A)」の「50%積算粒径分布粒子径(d50)」は「100~350nm」であるから、両粒子径(D50とd50)は1桁程度相違しているといえる。
また、体積基準の累積分布関数においてd50<d99であり、d50=3000nmであることを踏まえると、甲1発明におけるd99>3000nmといえるので、甲1発明においてd99が300~900nmであるとはいえない。
また、甲1発明において、d1は不明である。
したがって、本件特許発明1と甲1発明は、d1、d50、及びd99のいずれにおいても相違するか、もしくは一致するとはいえないから、相違点1は実質的な相違点である。
エ 次に、甲1発明の粒径を、本件特許発明1の相違点1に係る特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるかについて検討する。最初に甲2との組合せについて検討し、次に甲3との組合せについて検討し、最後に甲4及び甲5との組合せについて検討する。
(甲1発明と甲2記載事項との組合せについて)
オ 最初に甲1発明と甲2に記載された事項との組合せについて検討する。
上記1(2)アの(2ア)、(2イ)によれば、甲2の発明が解決しようとする課題は、ポリオール法で得られたニッケル粉を初めとする金属粉は、凝集が著しいため有機ビヒクルとの混合が困難で導電性ペーストに加工することが困難であるとの従来技術の問題点に対して、粉粒の分散性が高く、導電性ペースト製造が容易となり、その導電性ペーストを用いて形成した電極表面の形状が滑らかとなる金属粉を用いたスラリーを提供することであると認められる。
カ そして、同(2エ)によれば、上記課題を解決し得る実施例1のニッケル粉スラリーは、工程1~工程4の方法によって得られる。具体的には、水酸化ニッケルをエチレングリコール中に入れ、190℃に加熱することにより、ポリオールニッケル粉スラリーを生成する工程1と、ポリオールニッケル粉スラリーを固液分離してスラリー状態のニッケル粉を回収する工程2と、メタノールを洗浄用有機溶剤に用いて洗浄し固液分離して洗浄液含有ニッケル粉スラリーとする工程3と、洗浄用有機溶剤であるメタノールをターピネオールで溶媒置換する工程4によって実施例1のニッケル粉スラリーが得られる。このようにして得られたスラリーの粉体特性が同(2オ)の【表1】に記載されている。
キ 上記【表1】には、実施例1~5の粉体特性が、D1Aが0.1μm、D10が0.16~0.23μm、D50が0.27~0.35μm、D90が0.45~0.71μm、Dmaxが0.97~2.25μmであることが記載されている。なお、同(2ウ)によれば、D1Aとは、走査型電子顕微鏡像の画像解析により得られる一次粒子の平均粒径であり、D50、D90とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる体積累積50%及び90%における粒径を意味する。
ク 以上の甲2の記載を総合すると、甲2には、ポリオール法で得られた金属粉であるニッケル粉を、工程1から工程4の方法によって、分散性の高いニッケル粉スラリーとする方法であって、当該方法で得られたニッケル粉の粉体特性をD1Aが0.1μm、D10が0.16~0.23μm、D50が0.27~0.35μm、D90が0.45~0.71μm、Dmaxが0.97~2.25μmとする方法が記載されている(以下、この方法を「甲2方法」といい、上記の粉体特性を「甲2粉体特性」という。)。
ケ ここで、甲2方法を甲1発明に適用することができるかについて検討する。
上記1(1)ア(1ケ)には甲1発明の認定の基礎とした実施例3の製造方法が記載されているところ、実施例3の原料の銀粒子が市販の還元法で製造されたと記載されているに留まり、ポリオール法で製造されたものであるか不明である。
一方、甲2は、上述のように、ポリオール法で製造された金属粉粒子は凝集が著しいため有機ビヒクルとの混合が困難で導電性ペーストに加工することが困難であるとの従来技術の問題点に対して、工程1~4の方法によって溶媒置換することにより分散性が高い金属粉スラリーを提供するものであるから、甲2方法はポリオール法を前提としたものであって、これを甲1発明に適用する動機付けを見いだすことができない。
コ 仮に、甲1発明の認定の基礎とした実施例3における銀粒子の還元法が、ポリオール(上記カの工程1で用いられているエチレングリコールのような2個以上のヒドロキシ基(-OH)をもった脂肪族化合物、多価アルコールのこと。溶媒以外に還元剤の機能を有する。)を用いた還元法であるとすれば、甲1発明に甲2方法を適用することにより、甲1発明の銀粒子の粒径を甲2粉体特性とする動機が存在することになる。
しかしながら、甲2には、甲2粉体特性に関して、本件特許発明1で特定されているd1とd99が特定されておらず不明であるから、甲1発明において、甲2方法を適用することによって上記甲2粉体特性を備えたものとすることが可能であるとしても、その結果、d1が30~200nmであり、d99が300~900nmになるということはできない。
なお、この点について、申立人は、特許異議申立書の第35頁下から12~10行において、「D1とD1Aとの関係は明確ではないものの、甲第2号証には、D1を30~200nmの範囲とすることを充分に示唆する記載がある。」と主張するに留まり、D1とD1Aの関係が不明であるから、D1が30~200nmであることを立証するに至っておらず、D1が30~200nmである蓋然性が高いともいえない。
サ そして、本件特許発明1は、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項を備えることにより、「被覆材由来の有機成分の接合材(以下、接合塗膜ともいう)中への残存を抑制し、接合塗膜に空隙(ボイド)の発生を抑制し、接合強度を大きくできる」とともに「著しく高温にせずとも、金属粒子同士の溶融一体化(以下、焼結ともいう)を十分に進め、緻密な接合塗膜が形成出来、冷熱サイクル後の接合強度の低下を抑制できる」という、優れた効果を奏するものである(【0021】参照。)。
シ したがって、甲1発明に甲2方法を適用する動機を見いだすことはできず、仮に、甲1発明に甲2方法を適用する動機があるとしても、本件特許発明1によって奏される効果は、甲1発明及び甲2の記載から予測される範囲を超える顕著なものであるから、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
(甲1発明と甲3記載事項との組合せについて)
ス 次に甲1発明と甲3に記載された事項との組合せについて検討する。
上記1(3)アの(3ア)によれば、甲3の発明が解決しようとする課題の一つは、分散性及び耐酸化性に優れる金属微粒子を含む金属微粒子組成物を提供することであると認められる。
セ そして、同(3エ)によれば、上記課題を解決し得る実施例1-3の金属微粒子組成物は、実施例1-2で調製したスラリー溶液に、ロジン成分であるアビエチン酸を加えて撹拌したものであり、その体積分布(当審注:体積基準の粒径分布を意味するものと解される。)は、D10;0.074μm、D30;0.111μm、D50;0.149μm、D90;0.300μm、D99;0.669μmである(この粒径分布を以下、「甲3粒径分布」という。)。
ソ 一方、上記1(1)イで検討したように、甲1発明は、銀粉末の凝集を防止する目的で用いられている従来の被覆剤は高級脂肪酸塩が使用されていたために、焼結の際の接着性が不十分であったところ、接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となるペースト状銀粒子組成物を提供することを課題として、上記被覆剤をより低級の高・中級脂肪酸で置換したものである。
タ そうすると、甲1発明は、高・中級脂肪酸(ラウリン酸)で置換した被覆剤を備えることによって既に銀粒子の凝集を防止しているものであるから、甲3の記載に基づいて、銀粒子の凝集を防止するために、スラリー溶液にロジン成分を追加する動機は見いだせない。また、甲3には「金属微粒子の周囲にアビエチン酸が近接した状態で存在することによって、金属微粒子の表面の電気的性質を変化させ、あるいは立体的な障害によって、金属微粒子同士の凝集を抑制」すると記載されており(上記1(3)ア(3ウ)の【0023】)、甲3の発明は、被覆されていない状態にある金属微粒子を前提としているものであるから、銀粒子が被覆剤を備えている甲1発明に適用することには阻害要因がある。
したがって、甲1発明に、甲3に記載された技術事項を適用することによって、粒径分布を甲3粒径分布とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
チ 仮に、甲1発明に、甲3に記載された技術事項を適用することが可能であるとしても、甲3粒径分布においてd1がいかなる値であるか不明であるから、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
(甲4と甲5に記載された事項との組合せについて)
ツ 最後に、技術常識を示すものとして提示された甲4と甲5について検討する。
上記1(4)アの(4イ)によれば、甲4には、金属サブミクロン粒子と金属ナノ粒子の平均一次粒径(D50径)について記載されているが、d1、d99について記載されていない。
また、上記1(5)アの(5エ)の【表2】によれば、甲5には、水性銀コロイド液中の銀粒子のD50とDminについて記載されており、d1についてはDminとD50の中間の大きさとなることから推定することは可能であるが、d99について何ら記載されていない。
テ したがって、甲4及び甲5を参照したとしても、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
(3)小括
以上のとおりであるから、甲1発明において、甲2~甲5の記載事項に基いて、相違点1に係る本件特許発明1の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
そうすると、相違点2~4について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、並びに甲3及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、並びに甲4及び甲5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
そして、本件特許発明1を引用することにより本件特許発明1の全ての特定事項を備えた本件特許発明2~3についても、同様の理由によって、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、並びに甲3及び甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、甲1に記載された発明、甲3に記載された事項、並びに甲4及び甲5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない
したがって、申立理由1によっては、本件特許発明1~3を取り消すことはできない。
第5 結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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