特許異議申立
2022-700346
低生体内持続性繊維を含有する耐火被覆材及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-700346
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-563585外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6955519
- 請求日
- 2022年04月26日
- 審決日
- 2023年09月05日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.537-YAA(C09D) / P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6955519号発明「低生体内持続性繊維を含有する耐火被覆材及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6955519号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。
特許第6955519号の請求項1、3-16に係る特許を維持する。
特許第6955519号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6955519号の請求項1~16に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)5月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年6月6日 (US)米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年10月5日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~16に係る特許に対し、令和4年4月26日に特許異議申立人本間賢一(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年7月13日付けで取消理由を通知し、これに対し、特許権者は、同年10月13日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年10月19日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年11月22日に意見書を提出し、当審は、令和5年1月11日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、これに対し、特許権者は、同年4月12日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年同月26日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、同年6月5日に意見書を提出した。
なお、本件訂正請求がされたことにより、令和4年10月19日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1~14からなる。
(1)訂正事項1
請求項1の「ゲル化剤とを含む」を、「ゲル化剤とを含み、アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~16も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
請求項3に「請求項1又は2」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項5に「請求項1~4」と記載されているのを、「請求項1、3又は4」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項6に「請求項1~4」と記載されているのを、「請求項1、3又は4」に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項7に「請求項1~6」と記載されているのを、「請求項1、3~6」に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項8に「請求項1~7」と記載されているのを、「請求項1、3~7」に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項9に「請求項1~8」と記載されているのを、「請求項1、3~8」に訂正する。
(9)訂正事項9
請求項11に「請求項1~10」と記載されているのを、「請求項1、3~10」に訂正する。
(10)訂正事項10
請求項12に「請求項1~11」と記載されているのを、「請求項1、3~11」に訂正する。
(11)訂正事項11
請求項13に「請求項1~12」と記載されているのを、「請求項l、3~12」に訂正する。
(12)訂正事項12
請求項14に「請求項1~12」と記載されているのを、「請求項l、3~12」に訂正する。
(13)訂正事項13
(訂正事項13-1)
請求項15に「請求項1~14」と記載されているのを、「請求項l、3~14」に訂正する。
(訂正事項13-2)
請求項15に「任意選択的には前記ゲル化剤、及び更に任意選択的には」と記載されているのを、「前記ゲル化剤、及び仕意選択的には」に訂正する。
(14)訂正事項14
(訂正事項14-1)
請求項16に「請求項1~14」と記載されているのを、「請求項l、3~14」に訂正する。
(訂正事項14-2)
請求項16に「任意選択的には前記ゲル化剤、及び更に任意選択的には」と記載されているのを、「前記ゲル化剤、及び任意選択的には」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~16について、請求項2~16は、それぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~16に対応する訂正後の請求項1~16は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正後の請求項1は、「耐火被覆材」の組成を、「ゲル化剤とを含み、アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との記載により明確かつ具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
同様に、訂正後の請求項3~16は、訂正後の請求項1に記載された「ゲル化剤とを含み、アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との記載を引用することにより、訂正後の請求項3~16に係る発明における耐火被覆材の組成を、より具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、耐火被覆材の組成を、より具体的に特定し、更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2~16の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記アの理由から明らかなように、訂正後の請求項1の記載は、訂正前の請求項1との関係で特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないといえる。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2~16の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項3~16に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないといえる。
したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項2~16との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断
訂正事項1は、例えば、願書に添付した明細書の段落0034、0049及び願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載されている。したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断
訂正事項2は、請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(3)訂正事項3~12
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項3が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項4は、請求項5が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項5は、請求項6が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項6は、請求項7が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、請求項8が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項8は、請求項9が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項9は、請求項11が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項10は、請求項12が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項11は、請求項13が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項12は、請求項14が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであるから、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断
訂正事項3は、請求項3が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項4は、請求項5が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項5は、請求項6が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項6は、請求項7が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、請求項8が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項8は、請求項9が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項9は、請求項11が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項10は、請求項12が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項11は、請求項13が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項12は、請求項14が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断
訂正事項3は、請求項3が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項4は、請求項5が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項5は、請求項6が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項6は、請求項7が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項7は、請求項8が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項8は、請求項9が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項9は、請求項11が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項10は、請求項12が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項11は、請求項13が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、訂正事項12は、請求項14が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)訂正事項13
ア 訂正の目的について
訂正事項13のうち訂正事項13-1は、請求項15が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
訂正事項13のうち訂正事項13-2は、訂正後の請求項1、15及び16に係る発明において「ゲル化剤」が必須の発明特定事項であることを明確にするものである。すなわち、訂正事項13-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断
訂正事項13のうち訂正事項13-1は、請求項15が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
訂正事項13のうち訂正事項13-2は、ゲル化剤が必須の発明特定事項であることを明確にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断
訂正事項13のうち訂正事項13-1は、請求項15が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
訂正事項13のうち訂正事項13-2は、ゲル化剤が必須の発明特定事項であることを明確にするものであるところ、耐火被覆材がゲル化剤を含むことは、例えば、願書に添付した明細書の段落0009、0016、0032、0038、0049に記載されている。したがって、当該訂正事項13-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(4)訂正事項14
ア 訂正の目的について
訂正事項14のうち訂正事項14-1は、請求項16が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するものであり、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
訂正事項14のうち訂正事項14-2は、訂正後の請求項1、15及び16に係る発明において「ゲル化剤」が必須の発明特定事項であることを明確にするものである。すなわち、訂正事項14-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかの判断
訂正事項14のうち訂正事項14-1は、請求項16が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
訂正事項14のうち訂正事項14-2は、ゲル化剤が必須の発明特定事項であることを明確にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でないかの判断
訂正事項14のうち訂正事項14-1は、請求項15が択ー的に引用する請求項の中から請求項2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
訂正事項14のうち訂正事項14-2は、ゲル化剤が必須の発明特定事項であることを明確にするものであるところ、耐火被覆材がゲル化剤を含むことは、例えば、願書に添付した明細書の段落0009、0016、0032、0038、0049に記載されている。したがって、当該訂正事項14-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
(5)独立特許要件
本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6955519号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~16に係る発明は、令和5年4月12日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明16」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
耐火被覆材であって、
低生体内持続性無機繊維と、
有機バインダと、
コロイド状無機酸化物と、
二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物と、
ゲル化剤とを含み、
アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない、ことを特徴とする耐火被覆材。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
5~70重量パーセントの低生体内持続性繊維、0.1~7.5重量パーセントの有機バインダ、2~50重量パーセントのコロイド状無機酸化物を含む無機バインダ、30~85重量パーセントのコロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物、及び任意選択的には0.1~3.0重量パーセントの増粘剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆材。
【請求項4】
27~42重量パーセントの低生体内持続性繊維、1.0~3.5重量パーセントの有機バインダ、7~25重量パーセントのコロイド状無機酸化物を含む無機バインダ、40~55重量パーセントのコロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物、及び任意選択的には0.1~0.5重量パーセントの増粘剤を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の耐火被覆材。
【請求項5】
前記低生体内持続性無機繊維は、少なくとも60~90重量パーセントのシリカ、及び0より多く35重量パーセントまでのマグネシアの解繊生成物を有するマグネシアケイ酸塩繊維を含む、ことを特徴とする請求項1、3又は4の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項6】
前記低生体内持続性無機繊維は、少なくとも45~90重量パーセントのシリカ、0より多く45重量パーセントまでのカルシア、及び0より多く35重量パーセントまでのマグネシアの解繊生成物を有するカルシア-マグネシアケイ酸塩繊維を含む、ことを特徴とする請求項1、3又は4の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項7】
前記コロイド状無機酸化物は、コロイド状シリカ、コロイド状ジルコニア、コロイド状チタニア、コロイド状セリア、コロイド状イットリア及び/又はこれらの組み合わせを含み、任意選択的には、前記コロイド状無機酸化物はコロイド状シリカを含む、ことを特徴とする請求項1、3~6の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項8】
前記ゲル化剤は、酢酸アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1、3~7の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項9】
前記少なくとも1つのシリカ含有化合物は、非晶質又は結晶二酸化シリコン粉末のうちの少なくとも1つを含み、任意選択的には、前記少なくとも1つのシリカ含有化合物は、非晶質シリカ又は石英のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1、3~8の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項10】
前記非晶質シリカは生体非晶質シリカであり、任意選択的には、非晶質シリカは、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰及び/又はこれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項9に記載の耐火被覆材。
【請求項11】
前記増粘剤は、ベントナイト粘土、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩及び/又はこれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1、3~10の何れか1項の請求項に記載の耐火被覆材。
【請求項12】
前記有機バインダは、天然樹脂、合成樹脂、澱粉及び/又はこれらの組み合わせを含み、任意選択的には、前記有機バインダは、ポリアクリルアミド含有ポリマーを含む、ことを特徴とする請求項1、3~11の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項13】
前記耐火被覆材は、重量で3~60%の低生体内持続性繊維、0.1~6.5%の有機バインダ、5~50%のコロイド状シリカ、5~65%のコロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物、0.1~3%の増粘剤、及び5~65%の水を含む水性スラリーから形成される、ことを特徴とする請求項1、3~12の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項14】
前記耐火被覆材は、重量で12~25%の低生体内持続性繊維、0.3~2.5%の有機バインダ、10~25%のコロイド状シリカ、15~30%のコロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物、0.1~0.5%の増粘剤、及び27~35%の水を含む水性スラリーから形成される、ことを特徴とする請求項1、3~12の何れか1項に記載の耐火被覆材。
【請求項15】
請求項1、3~14の何れか1項の前記耐火被覆材を生成するためのプロセスであって、前記低生体内持続性無機繊維、前記少なくとも1つの有機バインダ、前記少なくとも1つのコロイド状無機酸化物、前記少なくとも1つのシリカ含有化合物、前記ゲル化剤、及び任意選択的には前記増粘剤を含む水性スラリーを調製することを含む、プロセス。
【請求項16】
請求項1、3~14の何れか1項の前記耐火被覆材を利用する方法であって、前記低生体内持続性無機繊維、前記少なくとも1つの有機バインダ、前記少なくとも1つのコロイド状無機酸化物、前記少なくとも1つのシリカ含有化合物、前記ゲル化剤、及び任意選択的には前記増粘剤を含む材料で表面又は基板を被覆する段階を含む、方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 本件特許登録時の請求項1~16に係る特許に対して、当審が令和4年7月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~16に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
本件特許発明1と、15および16との関係について
本件特許発明1において、「ゲル化剤」は必須の発明特定事項として記載されている。しかしながら、本件特許発明1を引用する本件特許発明15および16において、「ゲル化剤」は任意選択的な発明特定事項として記載されている。
そうすると、本件特許発明1、15および16における「ゲル化剤」は、必須の発明特定事項であるのか、任意選択的な発明特定事項であるのか不明確である。
(2)理由2(サポート要件)本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書【0007】の記載からみて、約1500℃以上の望ましい使用温度を有する被覆組成物を提供することにあると認める。
ここで、請求項1は「ゲル化剤とを含む、ことを特徴とする耐火被覆材。」とオープン形式で記載されており、請求項2には「アルミナを含まない」と記載されていること、及び、本件特許明細書【0016】に、コロイド状無機酸化物(無機バインダ)には、アルミナが例示されていることからもからもみて、本件特許発明1は、「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートプラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリ力含有化合物」、および、「ゲル化剤」との発明特定事項以外に、「アルミナ」を含むものも包含される。
しかし、本件特許明細書【0006】の「1000°Cを上回る温度では、アルミナは、低生体内持続性繊維に含有されるマグネシア及びシリカと反応してコージライトを形成する。コージライトは、マグネシア及びシリカと比べて、著しく低い耐火性を有する。コージライトは、溶融及び結果として生じる物理的変形の理由から、約1300℃を上回る温度では短期間の間でさえも有用ではない。」という記載及び【0007】の「低生体内持続性繊維の化学的性質とアルミナとの間の反応で形成される共晶混合物は、被覆材の耐火性を低下させ、約1500°C以上の目的とする使用温度に不適当となる。被覆材中のアルミナ含有緻密化剤又は充填剤をシリカ含有化合物と置き換えることで、コージライトの形成が阻止され、これにより約1500°C以上の望ましい使用温度を有する被覆組成物を提供できることが分かっている。」という記載からみて、アルミナを含む場合、約1500℃以上の望ましい使用温度を有する被覆組成物を提供できないといえる。
そうすると、本件特許発明1および本件特許発明1を引用する本件特許発明3~16は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を包含していることは明らかであるから、本件特許発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 本件訂正前の請求項1、3~16に係る特許に対して、当審が令和5年1月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1、3~16に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
本件特許発明1は「実質的にアルミナを含まない」と特定されているが、「実質的に」なる記載により、アルミナを含むのか含まないのか不明であるから、その結果、本件特許発明1は不明確となっている。
ここで、本件特許明細書段落【0023】には、「SUPERWOOL607」が「微量のアルミナ」を含むことが明確に記載されており、また、特許異議申立人の前記意見書における実験結果に示すとおり、本件特許明細書の試験1及び試験2に記載のIsofraxは1.5質量%のアルミナを含むものであるから、本件特許明細書の前記記載から、本件特許発明1がアルミナを含むと解されるとしても、本件特許発明1においてアルミナの上限が特定されておらず、その結果、どの程度までアルミナを含む態様が「実質的にアルミナを含まない」に該当するのかが不明であるため、本件特許発明1は不明確となっている。
本件特許発明1を引用する本件特許発明3~16も同様に不明確である。
第5 前記第4 1(1)における理由1(明確性要件)についての判断
本件訂正により本件特許発明1を引用する本件特許発明15および16において、「ゲル化剤」は必須の発明特定事項となったので、「ゲル化剤」を必須の発明特定事項とする本件特許発明1と整合する特定となり、本件特許発明1、15および16における「ゲル化剤」は、必須の発明特定事項であることが明確となったため、本件特許発明1、15および16は明確である。
第6 前記第4 1(2)における理由2(サポート要件)についての判断
1 判断
本件特許発明が解決しようとする課題は、前記第4 1における理由2のとおりである。
そして、本件特許明細書【0006】には「被覆組成物において、耐火セラミック繊維を低生体内持続性繊維に置き換えることで、約1200°Cにて著しい溶融をもたらすことが分かっている。これは、一つには、従来の被覆材で用いられている板状アルミナのようなアルミナ系緻密化剤又は充填剤の使用に起因する。」と記載されており、ここで、「板状アルミナ」は充填剤であり、充填剤は配合することにより緻密充填性を付与するものであるから、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」は1つの用語として緻密充填性を付与する充填剤という1つの機能性のものであると解される。
また、本件特許明細書【0007】には「被覆材中のアルミナ含有緻密化剤又は充填剤をシリカ含有化合物と置き換えることで、コージライトの形成が阻止され、これにより約1500°C以上の望ましい使用温度を有する被覆組成物を提供できることが分かっている。」との記載は、「緻密化剤」又は「充填剤」のいずれかとしてアルミナが置き換えられていなければコージライトの形成を阻止できないことは明らかである以上、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」という1つの機能性のものとしての緻密充填性を付与する充填剤をシリカ含有化合物と置き換えることを意味すると解すべきであり、そうすると、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」は1つの用語として緻密充填性を付与する充填剤という1つの機能性のものを意味すると解される。
そして、本件特許明細書の前記【0006】及び【0007】の記載から、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」である板状アルミナのような1つの機能性のものを含まないことにより前記課題を解決できることが理解でき、実施例の記載から、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」であるといえるAL-20が含まないものが前記課題を解決できることが理解できる。
そうすると、本件特許発明1および本件特許発明1を引用する本件特許発明3~16は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を包含しているとはいえず、本件特許発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。
2 特許異議申立人の主張及び当審の判断
特許異議申立人は、令和5年6月5日提出の意見書において「本件特許発明1の「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との発明特定事項は、「アルミナ含有緻密化剤」および「充填剤」が「又は」で繋がれています。
したがって、本件特許発明1は、「アルミナ含有緻密化剤を含まない耐火被覆材」に係る発明と、「(アルミナ含有)充填剤を含まない耐火被覆材」に係る発明とを包含する発明と解釈できます。
そして、本件特許発明1は「耐火被覆材であって、低生体内持続性無機繊維と、・・・ゲル化剤とを含み」とオープン形式で記載されており、つまり、本件特許発明1は、「アルミナ含有緻密化剤を含まないが、(アルミナ含有)充填剤は含まれてもよい耐火被裂材」に係る発明と、「(アルミナ含有)充填剤を含まないが、アルミナ含有緻密化剤は含まれてもよい耐火被覆材」に係る発明とを包含する発明と解釈できます。
そうすると、本件訂正発明1は、段落【0004】~【0014】および段落【0048】~【0049】の記載からみて、課題を解決しない発明を包含していることは明らかであると思料致します。」と主張する。
しかし、前記1のとおり、本件特許明細書の前記【0006】及び【0007】の記載から、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」は1つの用語として緻密充填性を付与する1つの充填剤であると解される。
そうすると、本件特許発明1は、「アルミナ系緻密化剤又は充填剤」である1つ機能性のアルミナと解されるものを含まず、緻密化剤又は充填剤のいずれかとしてアルミナを含む態様を含まないから、課題を解決しない発明を包含しているとはいえない。
よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
第7 前記第4 2における理由(明確性要件)についての判断
本件訂正により、本件特許発明1において「実質的に」なる記載はなくなったので、その結果、本件特許発明1は明確となっている。
本件特許発明1を引用する本件特許発明3~16も同様に明確である。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
(1)(新規性)本件特許の請求項1~3、5~7、9、12、15に係るは、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)(進歩性)本件特許の請求項1~16に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証~甲第12号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2013-112600号公報
甲第2号証:特開2002-129891号公報
甲第3号証:特開2001-254184号公報
甲第4号証:特開平6-96793号公報
甲第5号証:特開2013-243120号公報
甲第6号証:特表2011-505325号公報
甲第7号証:特開2013-234110号公報
甲第8号証:特開2013-224235号公報
甲第9号証:特開2016-61464号公報
甲第10号証:特開2007-106630号公報
甲第11号証:特開2015-127295号公報
甲第12号証:特開2014-66450号公報
(3)(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~16に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
ア 本件特許発明1の「低生体内持続性無機繊維」について
「低」との記載は、比較の基準若しくは程度が不明確な表現である。
なお、本件明細書の段落【0017】には『語句「低生体内持続性繊維」は、生理学的媒体において又は模擬肺液、生理食塩溶液、緩衝生理食塩溶液又は同様のものなどの模擬生理学的媒体において可溶性又は他の分解可能な繊維を指す。』と記載されている。
しかしながら、明細書の段落【0018】には溶解度の数値が異なる実施形態が記載されており、一義的に「低」の意義が決まるものではない。
イ 本件特許発明1の「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」について
「シリカ含有化合物」が「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせ」からなる群から選択される、ことを意味するのか、
或いは、
「シリカ含有化合物」に「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせ」が含まれていれば、シリカ含有化合物にはEーガラス等のその他成分が含まれてもよいことを意味するのか、
不明確である。
また、上記の記載では、「又はこれらの組み合わせを含む」と他の記載との関係が不明確である。より具体的には、「二酸化シリコン粉末」、「石英」、「籾殻灰」、「オートブラン灰」、「小麦籾殻灰」、「又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」のように、「又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」が、「二酸化シリコン粉末」、「石英」、「籾殻灰」、「オートブラン灰」および「小麦籾殻灰」から選択する2以上の組み合わせを意味しているのか、
或いは、
「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含む」の記載は、「シリカ含有化合物」の種類を限定することを意味しているのか、不明確である。
ウ 本件特許発明1の「ゲル化剤」について
ゲル化剤について、明細書の段落【0032】には「耐火被覆材の他の構成要素は、ゲル化剤及びゲル化剤を可溶化するのに十分な量の水を含むことができる。ゲル化剤成分は、コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカの場合には、酢酸アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び同様のものなどの設定又はゲル化を促進する無機塩又は酸化物、及び/又は酢酸、塩酸、リン酸、及び同様のものなどの酸を含むことができる。特定の実施形態において、耐火被覆組成物はゲル化剤を含有しない。」と記載されている。
しかしながら、段落【0032】の記載では、
(ア)「ゲル化剤成分は」との主語が「コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカの場合には」に係る、つまり、「ゲル化剤成分」が「コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカの場合」を包含し、その場合、「ゲル化剤成分」が更に「酢酸アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び同様のものなどの設定又はゲル化を促進する無機塩又は酸化物、及び/又は酢酸、塩酸、リン酸、及び同様のものなどの酸を含むことができる」ことを意味しているのか、
或いは、
(イ)本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」が「コロイド状シリカの場合には」、「ゲル化剤成分」が「酢酸アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び同様のものなどの設定又はゲル化を促進する無機塩又は酸化物、及び/又は酢酸、塩酸、リン酸、及び同様のものなどの酸を含む」、つまり、「ゲル化剤」としては「コロイド状シリカ」を含まないことを意味しているのか、
不明確である。
仮に、上記(ア)を意味している場合、本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」と「ゲル化剤」との関係が不明確である。
また、仮に、上記(イ)を意味している場合であっても、「ゲル化を促進する無機塩又は酸化物」の文言には、「シリカ」等の酸化物が包含される。したがって、依然として「ゲル化剤としてのシリカ」と、本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」および「二酸化シリコン粉末...含むシリカ含有化合物」との関係が不明確である。
更に、上記(ア)および(イ)を問わず、段落【0032】の「及び同様のものなどの設定」および「及び同様のものなどの酸」との記載は、何を意味するのか不明確である。
したがって、明細書の記載を参照しても、本件特許発明1の「ゲル化剤」が包含する範囲、および、「ゲル化剤」と「コロイド状無機酸化物」および「二酸化シリコン粉末含むシリカ含有化合物」との関係が不明確である。
オ 本件特許発明3、4、7、9、10、12、15および16について
本件特許発明3、4、7、9、10、12、15および16には、「任意選択的には、・・・含む」との記載がある。しかしながら、「任意選択的には、・・・含む」との記載は、当該発明において、必須の発明特定事項であるのか否か不明確である。
カ 本件特許発明3および4について
本件特許発明3および4は、本件特許発明1に含まれる「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「無機バインダ」、「コロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物」、および、「増粘剤」の配合割合を記載している。しかしながら、本件特許発明3および4の記載は、以下の点で不明確である。
・本件特許発明1において必須の発明特定事項として記載されている「ゲル化剤」の配合割合が記載されてない一方で、任意選択的な「増粘剤」の配合割合が記載されている。そうすると、本件特許発明3および4は本件特許発明1または2を引用した発明であるが、本件特許発明1または2の何を特定し、どのような技術的意義を示しているのか不明確である。
・本件特許発明3および4では「コロイド状無機酸化物を含む無機バインダ」と記載されているが、本件特許発明1では「コロイド状無機酸化物」と記載されている。そうすると、本件特許発明3および4の「コロイド状無機酸化物を含む無機バインダ」と本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」の関係が不明確である。
・本件特許発明3および4では「コロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物」と記載されているが、本件特許発明1には「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」および「コロイド状無機酸化物」としか記載されていない。「コロイド状シリカ以外」が何を意味しているのか不明確である。
キ 本件特許発明13および14について
本件特許発明13および14は、本件特許発明1において必須の発明特定事項として記載されている[ゲル化剤」の配合割合が記載されてない一方で、任意選択的な「増粘剤」の配合割合が記載されている。そうすると、本件特許発明13および14は本件特許発明1~12を引用した発明であるが、本件特許発明1~12の何を特定し、どのような技術的意義を示しているのか不明確である。
(4)(実施可能要件)本件特許の請求項1~16に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許発明1の「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートプラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」、および、「ゲル化剤」について、実施例で具体的に効果を確認しているのは、
・低生体内持続性無機繊維:Isofrax(35質量)、
・コロイド状無機酸化物:コロイド状シリカ(150質量)、
・シリカ含有化合物:SiO2粉末(35質量)、または、籾殻灰(35質量)、
・ゲル化剤:MgCl2溶液(3質量、または、6質量)
のみであり、「有機バインダ」については特に言及されていない。
そうすると、材料の種類および配合割合が何ら特定されていない本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決する範囲の材料の種類および配合割合を特定するためには、過度な試行錯誤が必要である。
更に、本件特許発明1を引用する発明では、「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」、および、「ゲル化剤」の、種類及び/又は配合割合を特定している発明も記載されているが、何れの発明も広い選択肢が記載されている。
したがって、本件特許発明1と同様、本件特許発明の課題を解決する範囲の材料の種類および配合割合を特定するためには、過度な試行錯誤が必要である。
(5)(サポート要件)本件特許の請求項1~16に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許発明1の「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートプラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」、および、「ゲル化剤」について、実施例で具体的に効果を確認しているのは、
・低生体内持続性無機繊維:Isofrax(35質量)、
・コロイド状無機酸化物:コロイド状シリカ(150質量)、
・シリカ含有化合物:SiO2粉末(35質量)、または、籾殻灰(35質量)、
・ゲル化剤:MgCl2溶液(3質量、または、6質量)
のみであり、「有機バインダ」については特に言及されていない。
そうすると、材料の種類および配合割合が何ら特定されていない本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決しない範囲を包含する蓋然性は高い。
更に、本件特許発明1を引用する発明では、「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」、および、「ゲル化剤」の、種類及び/又は配合割合を特定している発明も記載されているが、何れの発明も広い選択肢が記載されている。
したがって、本件特許発明1と同様、本件特許発明の課題を解決しない範囲を包含する蓋然性は高い。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1)特許法第29条第1項第3号(新規性)及び(2)同法同条第2項(進歩性)について
ア 甲号証について
甲第1号証:特開2013-112600号公報
甲第2号証:特開2002-129891号公報
甲第3号証:特開2001-254184号公報
甲第4号証:特開平6-96793号公報
甲第5号証:特開2013-243120号公報
甲第6号証:特表2011-505325号公報
甲第7号証:特開2013-234110号公報
甲第8号証:特開2013-224235号公報
甲第9号証:特開2016-61464号公報
甲第10号証:特開2007-106630号公報
甲第11号証:特開2015-127295号公報
甲第12号証:特開2014-66450号公報
イ 甲号証の記載について
(ア)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
以下の組成の被覆層で被覆されていない無機繊維、無機バインダー及び溶媒を含み、
さらに針状結晶構造を含まない無機粉体を含むことができ、
前記無機繊維と無機粉体との割合が、無機繊維:無機粉体=100:0~10:90であり、
pH調整剤と有機繊維は含まない、ペースト状不定形組成物。
[無機繊維の組成]
SiO2 66~82重量%
CaO 10~34重量%
MgO 3重量%以下
Al2O3 5重量%以下
SiO2、CaO、MgO、Al2O3の合計 98重量%以上
・・・
【請求項9】
前記無機バインダーが、前記無機繊維と前記無機粉体の合計を100重量部としたときに、固形分として1~30重量部含まれる請求項1~8のいずれか記載の不定形組成物。
・・・
【請求項14】
請求項1~13のいずれか記載の不定形組成物が乾燥した成形物。」
1b「【0001】
本発明は、例えば、熱処理装置、工業窯炉内又は焼却炉内の目地材、特に、耐火タイル、断熱レンガ、鉄皮、モルタル耐火物等の隙間を埋める目地材として使用される不定形組成物に関し、より具体的には、特定の生体溶解性無機繊維を含む不定形組成物に関する。
・・・
【0009】
生体溶解性繊維は、MgOを多く含むMgシリケート繊維と、CaOを多く含むCaシリケート繊維に大別できるが、本発明では、Caシリケート繊維を用いる。生体溶解性繊維は水に溶けやすいため、通常組成物に含まれる水に溶解し、含有成分が溶出する。それが組成物中の他の成分や、塗布される被対象物等と反応し不都合をもたらす恐れがある。従って、水に溶けにくいセラミックス繊維を含む組成物は生体溶解性繊維を含む組成物と異なる挙動を示す場合があり、また、生体溶解性繊維の中でも、Mgシリケート繊維を含む組成物とCaシリケート繊維を含む組成物は溶出する成分の種類や量が異なるため、異なる挙動を示す場合がある。
・・・
【0011】
本発明で用いるCaシリケート繊維は以下の組成を有する。
SiO2 66~82重量%(例えば、66~75重量%未満、68~80重量%、70~80重量%、71~75重量%未満、71~80重量%又は71~76重量%、とできる)
CaO 10~34重量%(例えば、20~30重量%又は21~26重量%とできる)
MgO 3重量%以下(例えば、1重量%以下とできる)
Al2O3 5重量%以下(例えば3.5重量%以下又は3重量%以下とできる。また、1重量%以上又は2重量%以上とできる)
他の酸化物 2重量%未満」
1c「【0025】
無機バインダーは、無機繊維と無機粉体とを合わせた重量を100重量部としたとき、
固形分含量で1~30重量部(好ましくは1~25重量部、より好ましくは1~20重量部、さらに好ましくは1~15重量部、さらにより好ましくは1~12重量部、特に好ましくは2~10重量部)含むことができる。無機繊維と無機粉体は、所望する耐熱性、密度等になるように配合する。無機繊維が多く、無機粉体が少ないと軽量な不定形組成物が得られやすい。
耐熱性の観点から無機繊維:無機粉体の好適な配合比を以下に示す。
・・・
【0029】
無機粉体を含む場合であって、無機バインダーとしてコロイダルシリカ、無機粉体としてシリカを選択した場合は、無機繊維:無機粉体=100:0~10:90である。
・・・
【0035】
本発明の不定形組成物は、さらに溶媒を含む。
溶媒としては、特に制限されないが、水及び極性有機溶媒が挙げられ、極性有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール等の2価のアルコール類が挙げられる。これらのうち、水が、作業環境の悪化がなく、環境への負荷がない点で好ましい。懸濁液や分散液等として成分を配合するときは、その溶媒も含まれる。尚、固体を懸濁液や分散液等として配合するとき、その配合量は固形分の配合量である。
【0036】
溶媒の含有量は、無機繊維と無機粉体を合わせた含量を100重量部としたとき、通常10~600重量部(好ましくは20~400重量部)である。溶媒を含むことにより、流動性を調節でき、目地の機械的強度、特に曲げ強度が高まる。含有量が多すぎると不定形組成物のちょう度が高くなるので施工時に組成物がたれ、また、乾燥による目地の収縮が大きくなる恐れがある。
【0037】
本発明の不定形組成物は、前記無機繊維、無機粉体、無機バインダー、溶媒の他に有機バインダー、添加剤等を含むことができる。金属イオンを含まないキレート剤は含む必要はない。
有機バインダーとしては、有機繊維、アクリルエマルジョン、澱粉、増粘剤等が挙げられる。
有機バインダーは、無機繊維と無機粉体を合わせて100重量部としたとき、例えば固形分含量を0.1~20重量部(好ましくは0.5~10重量部、好ましくは0.5~8重量部、さらに好ましくは1~5重量部)含むことができる。
・・・
【0047】
本発明に係る不定形組成物は、各成分を混合・撹拌して製造できる。本発明に係る成形体は、不定形組成物を成形し乾燥/加熱して得ることができる。本発明の組成物はペースト状(漆喰)であるため、こてで塗ったり、手で固めたり、圧力銃で散布できる。」
1d「【0051】
実施例1
[不定形組成物の製造]
表1に示す組成の不定形組成物1~4を製造した。
無機繊維AはSiO2を73重量%、CaOを24重量%、MgOを0.3重量%、Al2O3を2重量%含む。
無機バインダーとしてコロイダルシリカ(スノーテックス30、日産化学工業社製、pH9~10、固形分が30%の懸濁液)を用いた。
有機バインダーとして増粘剤及びアクリルエマルジョンを用いた。
【0052】
表1において、無機繊維Aと無機粉末の量は、無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量%としたときの重量%である。
無機バインダー、有機バインダー、水の量は、無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部としたときの重量部である。表中の無機バインダー、有機バインダーの値は固形分量である。
【0053】
100℃24時間乾燥した後の密度は、それぞれ0.26g/cm3、0.44g/cm3、0.75g/cm3、1.07g/cm3であり、乾燥収縮はなかった。密度はJIS A 1116に準じ、寸法体積及び重量を測定して算出した。
【0054】
【表1】
[図:0001404738000001.jpg]
・・・
【0066】
実施例2
[不定形組成物の製造]
表6の組成である他は実施例1と同様にして、不定形組成物10~20を得た。参考として、組成物におけるSiO2、CaO、Al2O3の重量比を表7に示す。
【0067】
評価例2
[不定形組成物の評価]
実施例2で得られた不定形組成物10~20について、1100℃,1200℃,1300℃,1400℃,1500℃で24時間加熱したときの、加熱収縮率(%)を評価例1と同様にして測定した。尚、加熱収縮率が50%以上、もしくは外観上で明らかなガラス化、変形したとき「溶融」とした。結果を表6に示す。
【0068】
【表6】
[図:0001404738000002.jpg]
」
(イ)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】 地下構造物の上部背面に非流動状のグラウトを注入して充填し、該グラウトが硬化した後に、該地下構造物の下部背面に流動状の浸透性グラウトを注入して地下構造物の下部背面と硬化したグラウトとの間に充填して一体化させる地下構造物の補修工法。」
2b「【0012】本発明による浸透性グラウトは、本発明による地下構造物の補修工法に用いるグラウトであって、基本的に、グラウト懸濁液にゲル化剤を加えて流動状に構成しており、具体的には、ゲル化剤を水ガラス、コロイダルシリカ及びセメント急硬剤のいずれか1つにすることを特徴としており、地下構造物の背面下部に在る堆積土砂の間隙に浸透し硬化することで堆積土砂の間隙を補修できる。」
(ウ)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼の表面に塗布するだけで均一に不動態化膜を形成させることのできる不動態化剤に関するものである。」
3b「【0008】ここで、ゲル化剤としては、コロイダルシリカ,超微粒子状無水シリカ等の無水ケイ酸、ケイ酸ソーダ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カリ、ケイ酸マグネシウム,ホワイトカーボン等のケイ酸化合物の内いずれか1種以上、もしくはそれらを主剤とした混合物が用いられる。なかでも純水中にシリカ微粒子をコロイド分散させたコロイダルシリカが好適に用いられる。コロイダルシリカを用いると、硝酸のように強酸性を示す溶液でも容易にゲル化させることができる。その他用途や目的に応じて、ケイ酸化合物の他にアルミナゾル等のアルミナ化合物を混合してもよい。また、ゲル化剤に予めイオン交換水や蒸留水を混合し、不動態化剤の硝酸濃度や粘度を調整してもよい。」
(エ)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】未化成の正極板と負極板およびセパレータからなる極板群を電槽内に収納した後、この電槽内にゲル化剤を含んだゾル状の希硫酸電解液を注液し、ついで、充電して極板を電槽内で化成した後、前記電解液をゲル化させる密閉型鉛蓄電池の製造法。」
4b「【0027】なお、本実施例ではゾル状のゲル化剤として、コロイダルシリカを用いたが、コロダイルアルミナ等であっても同様の効果が得られた。」
(オ)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「【請求項1】
発熱体と、
前記発熱体を保持する、生体溶解性無機繊維を含む支持体と、
を備え、
前記生体溶解性無機繊維が前記発熱体と直接接触しないか又は前記生体溶解性無機繊維と前記発熱体との接触が低減された加熱装置。」
5b「【0013】
生体溶解性繊維に含まれるシリカやアルカリ土類金属は、外部部材に含まれるアルミナと反応する恐れがある。このため、シリカ含有処理剤は、アルミナは少ないほうが好ましく、シリカが多いほうが好ましい。シリカの含有量は、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらにより好ましくは80重量%以上、90重量%以上が望ましい。また、不可避不純物を含んでシリカのみでもよい。」
(カ)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「【0027】
したがって、非ゲル化コロイダル・シリカは、その後に、1つ以上のゲル化剤を組成物に添加することによってゲル化されうる。実施の形態では、コロイダル・シリカは、組成物のイオン濃度を増大させることによってゲル化されうる。他の実施の形態では、コロイダル・シリカは、組成物のpHを変化させることによってゲル化されうる。さらなる実施の形態は、組成物のイオン濃度の増大およびpHの変化の両方を含みうる。ゲル化剤は、本明細書に記載されるゲル化無機結合剤を提供するのに有効な量で用いられうることが理解されるべきである。
【0028】
開示される組成物イオン濃度を増大させる働きをする例となるゲル化剤、すなわち、イオン増強ゲル化剤は、1つ以上の水溶性の塩を含む。このため、適切なゲル化剤である例となる水溶性の塩としては、塩化マグネシウムまたは酢酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、塩化カルシウムなどのカルシウム塩、または塩化ナトリウムなどのナトリウム塩が挙げられる。さらには、本発明の実施の形態では、MgおよびCaなどの2の陽イオンを含む塩の使用は、無機結合剤成分を、比較的低い塩濃度でゲル化させるのに特に有効でありうる。」
(キ)甲第7号証「以下、「甲7」という。」
7a「【0001】
本発明は、断熱材用組成物、断熱材用成形体及びそれらの製造方法に関する。
・・・
【0039】
また、珪酸原料としては、珪石、珪砂、シリカゲル、ホワイトカーボン、珪藻土、フェロシリコンダスト、シラス、籾殻灰等の一種類以上を併用することができる。」
(ク)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
8a「【0001】
本発明は、断熱材用組成物、断熱材用成形体及びそれらの製造方法に関する。
・・・
【0033】
具体的には、例えば、ゾノトライトの水和物の二次粒子の場合は、原料中のCaO/SiO2の比が1.0程度になるように調整した、石灰質原料、珪酸質原料及び水を含む原料スラリーを撹拌下に水熱反応させることにより、ゾノトライトの水和物の二次粒子よりなる水性スラリーが得られる。石灰質原料としては限定されないが、例えば、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、カーバイド滓、塩化カルシウム等を用いることができる。また、珪酸質原料としては、珪石、珪砂、シリカゲル、ホワイトカーボン、珪藻土、フェロシリコンダスト、シラス、籾殻灰等の一種類以上を併用することができる。また、水の含有量は石灰質原料及び珪酸質原料の合計量に対して通常5重量倍以上(好ましくは10~70重量倍)である。また、トバモライトの水和物の二次粒子の場合は、上記に於いて原料中のCaO/SiO2の比を0.8程度になるように調整すれば良い。」
(ケ)甲第9号証(以下、「甲9」という。)
9a「【0001】
本発明は、炉内のライニングに用いられる無機繊維質断熱材ブロックおよびその製造方法に関する。また、本発明は、この無機繊維質断熱材ブロックを備えた炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炉内の炉壁ライニングには、鋼板、レンガなどの重質な耐火物が多く用いられてきた。近年では、高断熱性、高耐熱衝撃性、急速降昇温が可能など、操業性および省エネルギー性に優れた無機繊維断熱材の使用が拡大している。
・・・
【0033】
増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース、デキストリンなどの有機系増粘剤であってもよく、ベントナイト等の無機系増粘剤であってもよい。」
(コ)甲第10号証(以下、「甲10」という。)
10a「【0001】
本発明は、耐火性吹付材と、その耐火性吹付材を使用した吹付け施工方法に関するものである。
・・・
【0035】
酸化防止剤は、シリコン、フェロシリコン、炭化ホウ素(B4C)、ホウ化ジルコニウム、ホウ化カルシウム等である。中でも炭化ホウ素が好ましい。その添加量は、耐火原料組成100質量部に対し0.1~3質量部が好ましい。増粘剤は、粘土、ベントナイト、CMC等であり、好ましい添加量は耐火原料組成100質量部に対し、2質量部以下である。」
(サ)甲第11号証(以下、「甲11」という。)
11a「【0001】
本発明は、無機繊維質耐火成形体、無機繊維質耐火成形体および無機繊維質不定形耐火組成物に関する。
・・・
【0031】
有機バインダーとしては、澱粉、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド等を挙げることができる。」
(シ)甲第12号証(以下、「甲12」という。)
12a「【0001】
本発明は、燃焼機器の内張り材、並びに燃焼炉に関する。
・・・
【0015】
無機繊維質成形体は、例えば、無機繊維50~95質量%と、バインダー5~30質量%と、無機粉末0~30質量%、好ましくは5~30質量%とを含む無機繊維質成形体であればよい。無機繊維としては、特に制限されず、例えば、ガラス繊維、グラスウール、ロックウール、アルミナ質繊維、ジルコニア質繊維、シリカ・アルミナ質繊維等が挙げられる。こうした無機繊維は、1種又は2種以上の組合わせのいずれでもよい。バインダーとしては、例えばコロイダルシリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾルといった無機バインダーや、アクリル樹脂、澱粉、ポリアクリルアミドといった有機バインダーが挙げられる。こうしたバインダーは、1種又は2種以上の組合わせのいずれでもよい。」
ウ 甲1に記載された発明
(ア)引用発明1
甲1には、実施例1の不定形組成物1として「SiO2を73重量%、CaOを24重量%、MgOを0.3重量%、Al2O3を2重量%含む無機繊維Aを78重量%、無機粉末としてシリカを22重量%、無機バインダーとしてコロイダルシリカ(スノーテックス30、日産化学工業社製、pH9~10、固形分が30%の懸濁液)を無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部として3重量部、有機バインダーとして増粘剤及びアクリルエマルジョンを無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部として4重量部、及び、水を無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部として360重量部含む不定形組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記1d参照)。
(イ)引用発明2
甲1には、実施例1の不定形組成物2として「SiO2を73重量%、CaOを24重量%、MgOを0.3重量%、Al2O3を2重量%含む無機繊維Aを65重量%、無機粉末としてシリカを35重量%、無機バインダーとしてコロイダルシリカ(スノーテックス30、日産化学工業社製、pH9~10、固形分が30%の懸濁液)を無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部として5重量部、有機バインダーとして増粘剤及びアクリルエマルジョンを無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部として3重量部、及び、水を無機繊維Aと無機粉末の合計を100重量部として180重量部含む不定形組成物。」の発明が記載されているといえる(摘記1d参照)。
エ 対比・判断
(ア)本件特許発明1
a.引用発明1及び2との対比
本件特許発明1と引用発明1及び2を対比する。
引用発明1の「SiO2を73重量%、CaOを24重量%、MgOを0.3重量%、Al2O3を2重量%含む無機繊維A」及び引用発明2の「SiO2を73重量%、CaOを24重量%、MgOを0.3重量%、Al2O3を2重量%含む無機繊維A」は、その組成からみて、Caシリケート繊維であり、生体溶解性繊維であるから(摘記1b参照)、本件特許発明1の「低生体内持続性無機繊維」に相当する。
引用発明1及び2の「無機粉末としてシリカ」は、シリカは二酸化シリコンであるから、本件特許発明1の「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」に相当する。
引用発明1及び2の「無機バインダーとしてコロイダルシリカ(スノーテックス30、日産化学工業社製、pH9~10、固形分が30%の懸濁液)」は、本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」に相当する。
引用発明1及び2の「不定形組成物」は、耐火タイル、断熱レンガ、鉄皮、モルタル耐火物等の隙間を埋める目地材として使用されるものであり(摘記1b参照)、ペースト状(漆喰)であるため、こてで塗ったり、手で固めたり、圧力銃で散布できるものであり、アルミナを含まないから(摘記1c参照)、本件特許発明1の「アルミナ系緻密化剤又は充填剤を含まない」及び「耐火被覆材」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明1及び2は、「耐火被覆材であって、
低生体内持続性無機繊維と、
有機バインダと、
コロイド状無機酸化物と、
二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物とを含み、
アルミナ系緻密化剤又は充填剤を含まない、ことを特徴とする耐火被覆材。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
耐火被覆材が、本件特許発明1はゲル化剤を含むのに対し、引用発明1及び2はそのような特定がない点。
b.相違点についての検討
甲1には引用発明1及び2の不定形組成物がゲル化剤を含むことについて記載も示唆もない。
ここで、引用発明1及び2の不定形組成物にはコロイダルシリカが含まれており、甲2~甲4には、コロイダルシリカがゲル化剤であることは、記載されているが(摘記2b、3b、4b照)、引用発明1及び2の不定形組成物に含まれるコロイダルシリカがゲル化剤であると仮定しても、引用発明1及び2の不定形組成物にはゲル化剤にゲル化される成分が入っておらず、そうすると、引用発明1及び2の不定形組成物にはコロイダルシリカはゲル化剤であるとはいえず、この点は実質的な相違点である。
また、甲6にはコロイダルシリカはゲル化剤によりゲル化されることが記載されているが(摘記6a参照)、甲1には引用発明1及び2の不定形組成物のコロイダルシリカをゲル化することについて記載も示唆もないから、引用発明1及び2の不定形組成物においてコロイダルシリカをゲル化するゲル化剤を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
そして、甲7~甲12にも引用発明1及び2のような不定形組成物においてゲル化剤を含むものとすることについて記載も示唆もないから、甲7~甲12の記載から、引用発明1及び2のような不定形組成物においてゲル化剤を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、引用発明1及び2の不定形組成物にゲル化剤を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
c.特許異議申立人の主張及び当審の判断について
特許異議申立人は、特許異議申立書において「本件特許発明1の「ゲル化剤」について、本件明細書の段落【0032】には「耐火被覆材の他の構成要素は、ゲル化剤及びゲル化剤を可溶化するのに十分な量の水を含むことができる。ゲル化剤成分は、コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカの場合には、酢酸アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び同様のものなどの設定又はゲル化を促進する無機塩又は酸化物、及び/又は酢酸、塩酸、リン酸、及び同様のものなどの酸を含むことができる。特定の実施形態において、耐火被覆組成物はゲル化剤を含有しない。」と記載されている。
つまり、コロイド状無機酸化物がコロイド状シリカの場合には、ゲル化剤として「酸化物」を使用できることが記載されている。
そして、「シリカ」は「酸化物」である。また、「コロイダルシリカ」は、「ゲル化剤」としての機能を有することは周知である(必要であれば甲第2号証乃至甲第4号証参照)。
そうすると、本件特許発明1の「ゲル化剤」は「コロイダルシリカ」を包含する概念であることから、甲1発明の「コロイダルシリカ」は、本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」および「ゲル化剤」に相当する。
したがって、甲第1号証には、不定形組成物が「ゲル化剤」を含むことが明確に記載されていないものの、本件特許発明1は、甲第1号証から新規性を有しない。」と主張する。
しかし、本件特許請求の範囲の請求項1の記載からみて、本件特許発明1の耐火被覆材にはゲル化剤とは別にコロイド状無機酸化物が含まれると解すべきであり、また、コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカはゲル化するものでもあることが出願時の技術常識であるから、前記段落【0032】の記載から、ゲル化されるものが「コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカの場合には」と解すべきであり、本件特許発明1の耐火被覆材に含まれるゲル化剤がコロイダルシリカを包含するとは解すことはできない。
そうすると、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
d.小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2~甲12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(イ)本件特許発明3~16
本件特許発明3~14は本件特許発明1を引用してさらに限定するもの、本件特許発明15は本件特許発明1の耐火被覆材を生成するためのプロセスであり、本件特許発明16は本件特許発明1の耐火被覆材を利用する方法であり、上記本件特許発明1と引用発明1及び2との<相違点>と同じの相違点を有するものであるから、本件特許発明3~16は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(3)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
ア 本件特許発明1の「低生体内持続性無機繊維」について
本件明細書の段落【0017】には『語句「低生体内持続性繊維」は、生理学的媒体において又は模擬肺液、生理食塩溶液、緩衝生理食塩溶液又は同様のものなどの模擬生理学的媒体において可溶性又は他の分解可能な繊維を指す。』と定義されており、その定義により十分明確である。
イ 本件特許発明1の「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」について
「含む」となっているので、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせ」が含まれていれば、他の成分を含んでもよいことを意味することは明らかであるし、「又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」が、「二酸化シリコン粉末」、「石英」、「籾殻灰」、「オートブラン灰」および「小麦籾殻灰」から選択する2以上の組み合わせを含んでいればよいことを意味していることは、明らかである。
ウ 本件特許発明1の「ゲル化剤」について
(ア)判断
「ゲル化剤」自体は明確な技術用語である。
また、前記(1)及び(2)、エ、c.で検討したとおり、明細書の段落【0032】の記載からみても、「ゲル化剤成分」は「コロイド状無機酸化物、例えば、コロイド状シリカの場合」を包含せず、前記3、ウにおける(イ)を意味していることは明らかであり、その場合、「酸化物」には「シリカ」等の酸化物が包含されるかもしれないが、明細書の段落【0032】の記載では「ゲル化を促進する無機塩又は酸化物」となっており、その文言には、「シリカ」等の酸化物が包含されるとはいえず、「ゲル化剤」と、本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」および「二酸化シリコン粉末・・・含むシリカ含有化合物」との関係は明確であるし、 段落【0032】の「及び同様のものなどの設定」および「及び同様のものなどの酸」との記載は、その前に列記されるものど同様のものを意味することが明確である。
したがって、明細書の記載を参照してもしなくても、本件特許発明1の「ゲル化剤」が包含する範囲、および、「ゲル化剤」と「コロイド状無機酸化物」および「二酸化シリコン粉末含むシリカ含有化合物」との関係は明確である。
(イ)特許異議申立人の主張及び当審の判断について
特許異議申立人は、令和4年11月22日提出の意見書において「特許異議申立書の第37頁~第39頁に記載のとおり、本件訂正発明1の「ゲル化剤」は、明細書の段落【0032】の記載を参酌しても、「ゲル化剤」が包含する範囲、および、「ゲル化剤」と「コロイド状無機酸化物」および「二酸化シリコン粉末含むシリカ含有化合物」との関係が不明確であります。
したがって、本件訂正発明1の記載では、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確であることから、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得ると思料致します。」と主張する。
しかし、前記(ア)で検討したとおり、明細書の記載を参照してもしなくても、本件特許発明1の「ゲル化剤」が包含する範囲、および、「ゲル化剤」と「コロイド状無機酸化物」および「二酸化シリコン粉末含むシリカ含有化合物」との関係は明確であり、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
エ 本件特許発明3、4、7、9、10、12、15および16について
本件特許発明3、4、7、9、10、12、15および16には、「任意選択的には、・・・含む」との記載があるが、当該発明において、必須の発明特定事項でないことは明らかである。
オ 本件特許発明3および4について
本件特許発明3および4は本件特許発明1または2を引用した発明であり、本件特許発明1または2にさらに増粘剤を含むことを特定し、どのような技術的意義を示しているのか明確である。
本件特許発明3および4では「コロイド状無機酸化物を含む無機バインダ」と記載されているが、本件特許発明1では「コロイド状無機酸化物」が特定されており、一方、本件特許発明3および4の「コロイド状無機酸化物を含む無機バインダ」が特定されており、それぞれが明確であり、本件特許発明1の「コロイド状無機酸化物」の関係も明確である。
また、「コロイド状シリカ」自体は明確であるから、本件特許発明3および4では「コロイド状シリカ以外のシリカ含有化合物」何を意味しているのか明確である。
カ 本件特許発明13および14について
本件特許発明13および14は、「増粘剤」を含むこととその配合割合が特定されており、本件特許発明13および14は本件特許発明1~12を引用した発明であって、本件特許発明1~12の任意選択的に含まれる「増粘剤」がその配合割合で含まれるものと解され、本件特許発明1~12の必須成分である「ゲル化剤」を任意に配合割合で含むものと解され、任意選択的に含まれる「増粘剤」の配合割合が特定され、必須成分である「ゲル化剤」の配合割合が特定されないことに何ら不明確な点はないから、本件特許発明1~12の何を特定し、どのような技術的意義を示しているのか明確である。
(4)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
発明の詳細な説明には、実施例として、
・低生体内持続性無機繊維:Isofrax(35質量)、
・コロイド状無機酸化物:コロイド状シリカ(150質量)、
・シリカ含有化合物:SiO2粉末(35質量)、または、籾殻灰(35質量)、
・ゲル化剤:MgCl2溶液(3質量、または、6質量)からなる耐火被覆材が、記載されている。
確かに、発明の詳細な説明に、有機バインダーを含むものは具体的に記載されていないが、本件特許発明の耐火被覆材を製造するために、本件特許発明12には有機バインダが具体的に挙げられており、各成分の配合割合も本願発明3、4、13及び14において特定されているから、上記実施例の耐火被覆材を参照して、本件特許発明12において特定される有機バインダを、本願発明3、4、13及び14において特定される配合割合で配合すればよく、本件特許発明の耐火被覆材を製造するために本件特許発明の課題を解決する範囲の材料の種類および配合割合を特定することまでを要しないから、本件特許発明の耐火被覆材を実施するために過度な試行錯誤が必要であるとまではいえない。
また、本件特許発明1を引用する発明では、「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」、および、「ゲル化剤」の、種類及び/又は配合割合を特定している発明において、何れの発明も広い選択肢が記載されているが、その選択肢の範囲で、本件特許発明の耐火被覆材を製造すればよく、本件特許発明の課題を解決する範囲の材料の種類および配合割合を特定すればよく、本件特許発明の耐火被覆材を製造するために本件特許発明の課題を解決する範囲の材料の種類および配合割合を特定することまでを要しないから、本件特許発明の耐火被覆材を実施するために過度な試行錯誤が必要であるとまではいえない。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
(5)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件特許発明1の課題は、【0007】の記載からみて、約1500°C以上の望ましい使用温度を有する被覆組成物を提供することにあると認める。
ここで、発明の詳細な説明には、実施例として、
・低生体内持続性無機繊維:Isofrax(35質量)、
・コロイド状無機酸化物:コロイド状シリカ(150質量)、
・シリカ含有化合物:SiO2粉末(35質量)、または、籾殻灰(35質量)、
・ゲル化剤:MgCl2溶液(3質量、または、6質量)からなる耐火被覆材が前記課題を解決できることが、記載されている。
確かに、発明の詳細な説明に、有機バインダーを含むものは具体的に記載されていないが、前記実施例から、本件特許発明1は、低生体内持続性無機繊維と、コロイド状無機酸化物と、二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物と、ゲル化剤とを含むことにより、上記課題を解決できることが理解でき、有機バインダーが、低生体内持続性無機繊維と、コロイド状無機酸化物と、二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物と、ゲル化剤の作用を著しく阻害するものという出願時の技術常識もないから、有機バインダーを含んでいても、同様に上記課題を解決できるといえるし、また、特許異議申立人は有機バインダーを含むことにより上記課題を解決できないことを実証しているわけでもない。
また、本件特許発明1を引用する発明では、「低生体内持続性無機繊維」、「有機バインダ」、「コロイド状無機酸化物」、「二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物」、および、「ゲル化剤」の、種類及び/又は配合割合を特定している発明において、何れの発明も広い選択肢が記載されているが、低生体内持続性無機繊維と、コロイド状無機酸化物と、二酸化シリコン粉末、石英、籾殻灰、オートブラン灰、小麦籾殻灰、又はこれらの組み合わせを含むシリカ含有化合物と、ゲル化剤とを含を含んでいれば、多少程度に差があるとしても、その種類及び/又は配合割合にかかわらず、上記課題を解決できるといえるし、また、特許異議申立人は広い選択肢を含むことにより上記課題を解決できないことを証明しているわけでもない。
そうすると、本件特許発明1および本件特許発明1を引用する発明は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を包含しているとまではいえない。
第9 令和5年6月5日提出の意見書において主張する新たな特許異議申立理由について
理由(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1、3~16に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
1 理由の概要
(1)「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との記載の解釈について
本件訂正発明1の「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」との記載では、「アルミナ含有」が「緻密化剤」のみを修飾しているのか、或いは、「緻密化剤」および「充填剤」の両方を修飾しているのか不明確である。
本件明細書の段落【0006】には「従来の被覆材で用いられている板状アルミナのようなアルミナ系緻密化剤又は充填剤の使用に起因する。」との記載があり、段落【0007】には「被覆材中のアルミナ含有緻密化剤又は充填剤をシリ力含有化合物と置き換えることで」との記載がある。
しかしながら、本件明細書には、上記段落【0006】および【0007】以外に、「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」に関連する記載はない。
更に、例えば甲第8号証(特開2013-224235号公報)の段落【0019】に「珪藻土やベントナイトなどの既存の充填剤」と記載されているとおり、当該技術分野において「充填剤」と記載した場合、一義的に「アルミナ含有充填剤」を意味すると解釈することはできない。
そうすると、「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」との記載では、「充填剤」が「アルミナ含有充填剤」を意味するのか、或いは、単に「充填剤」を意味するのか不明確である。
(2)「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との発明特定事項が包含する技術的範囲について
次に、本件明細書に記載の技術的事項からみて、「充填剤」が「アルミナ含有充填剤」を意味すると仮定した場合であっても、本件訂正発明1は不明確である。
(ア)上記(1)に記載のとおり、本件明細書の段落【0006】および【0007】以外に、「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」に関連する記載はない。つまり、本件明細書には、「アルミナ含有緻密化剤」が何を意味するのか定義されておらず、且つ、「アルミナ含有緻密化剤」に包含される具体的材料についても全く例示されていない。
なお、段落【0006】には「板状アルミナのようなアルミナ系密化剤又は充填剤」との記載がある。しかしながら、「アルミナ系緻密化剤」は本件訂正発明1の「アルミナ含有緻密化剤」と用語が異なっており、同じ発明特定事項を意図しているのか不明確である。
仮に、同じ発明特定事項を意図しているとしても、「板状アルミナのような」との記載のみから「アルミナ系緻密化剤」が包含する技術的範囲を特定することはできない。
以上のとおり、「アルミナ含有緻密化剤」との発明特定事項は、当該発明特定事項が包含する技術的範囲が不明確である。
(イ)「アルミナ含有充填剤」についても、上記(ア)と同様、段落【0006】および【0007】以外に関連する記載はない。更に、単に「充填剤」と解釈した場合であっても、本件明細書には「充填剤」について何ら記載されていない。したがって、「アルミナ含有充填剤」、「充填剤」についても、当該発明特定事項が包含する技術的範囲が不明確である。
(ウ)J-P1atPatに「アルミナ含有緻密化剤」、「アルミナ含有充填剤」、更には、「アルミナ含有緻密化材」、「アルミナ含有充填材」との用語を入力しても、本技術分野において、当該用語が包含する技術的範囲が明確であると解釈できる文献はヒットない。したがって、「アルミナ含有緻密化剤」、「アルミナ含有充填剤」との用語は、本技術分野において、一般的に使用されている技術用語ということもできない。
(エ)また、本件明細書には「アルミナ含有」の定義、例えば、剤の総重搬の何重量%以上の場合に「アルミナ含有」の範囲に包含されるのかについて、一切記載はない。したがって、「アルミナ含有緻密化剤」、「アルミナ含有充填剤」との用語全体が不明確であることに加え、「アルミナ含有」との用語部分に関しても不明確である。
(オ)本件明細書の段落【0048】には『表1は、コロイド状アルミナを指すAL-20のアルミナ含有化合物、及びAl2O3(試験3)及びAL-20単独(試験4)を含有する従来の耐火被覆材の反応性と比べて、SiO2粉末(試験1)及び二次シリカ含有化合物として籾殻灰(試験2)を指すRiceSi1を含む耐火被毅材の例示の実施形態の反応性を示している。』と記載されている。
しかしながら、本件明細書の記載からでは、「AL-20」が「アルミナ含有緻密化剤」又は「アルミナ含有充填剤」の何れに該当するのか不明である。同様に、「Al2O3(表1では「UK Al2O3と記載。)が「アルミナ含有緻密化剤」又は「アルミナ含有充填剤」の何れに該当するのか不明である。
したがって、本件訂正発明1が包含する技術的範囲から、表1の試験3および試験4が除かれているのか否か不明確である。
(カ)令和5年4月12日付け意見書を参照しても、「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」が何を意味するのか、換言すると、本件訂正発明1から除かれる発明特定事項が明確であるとの説明は何ら記載されていない。
(キ)以上のとおり、本件訂正発明1の「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との発明特定事項は、特許請求の範囲の記載、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても、当該発明特定事項の文言の解釈および包含する技術的範囲が不明確である。
したがって、本件訂正発明1は、第三者が耐火被裂材を実施する際に本件訂正発明1の技術的範囲内であるのか否か確認をすることができず、第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確である。
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明3~16も同様に不明確である。
2 当審の判断
(1)「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」との記載で、「アルミナ含有」は「充填剤」も修飾すると解するのが自然である。
(2)(ア)前記第6 1のとおり、「アルミナ系密化剤又は充填剤」は、「アルミナ系密化剤又は充填剤」として機能する板状アルミナのような1つの機能性のものを意味することが明らかである。
(イ)「アルミナ含有緻密化剤」及び「アルミナ含有充填剤」という用語において、「アルミナ」は技術用語として明確であり、「緻密化剤」及び「充填剤」もフィラーとして機能するものと理解でき、明確である。
(ウ)前記(イ)のとおり、「アルミナ」、「緻密化剤」及び「充填剤」は、技術用語として明確であり、J-P1atPatにおいてもそれらの用語が通常用いられている技術用語であることが理解できる。
(エ)「アルミナ含有」との用語も、アルミナが入ってさえいればよいことを意味するものとして明確である。
(オ)前記(ア)のとおりであるから、「AL-20」は「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」であることは明らかである。
(カ)前記(ア)~(オ)から、「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤」は明確である。
(キ)以上から、「アルミナ含有緻密化剤又は充填剤を含まない」との発明特定事項は明確である。
第10 むすび
以上のとおりであるから、令和4年7月13日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和5年1月11日付けの取消理由通知に記載した取消理由に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、令和5年6月5日提出の意見書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1、3~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1、3~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
訂正前の請求項2は本件訂正により削除されたため、請求項2についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700346