特許異議申立
2024-701024
低温熱伝導率測定装置
- 審判番号
- 2024-701024
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-130495
- 登録番号
- 7470851
- 請求日
- 2024年10月17日
- 審決日
- 2025年07月09日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】明星工業株式会社
- 【権利者代理人】北村 光司
- 【権利者】大陽日酸株式会社
- 【権利者代理人】北村 光司
- 【異議申立人】本間 賢一
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 北島 拓馬
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1651.537-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7470851号発明「低温熱伝導率測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7470851号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7470851号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7470851号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年9月27日に出願した特願2019-177327号の一部を令和5年8月9日に新たな特許出願としたものであって、令和6年4月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許について、令和6年10月17日に特許異議申立人 本間賢一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和7年1月23日付けで取消理由を通知し、特許権者により同年3月17日に訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)及び意見書が提出されたところ、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは何らの応答もなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項
本件訂正請求書での訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって、本件訂正による訂正事項は次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の、
「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」を、
「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、又は、特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)
(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が請求項1を直接的又は間接的に引用していることから、一群の請求項である。そして、訂正事項1は、一群の請求項〔1-6〕についてされたものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の適否
・訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否
訂正事項1は、前文に記載の「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、」と、後文に記載の「特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」との関係が不明確であるところ、前文と後文とが「又は、」の関係であることを明確にするものである。すると、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許の明細書等」という。)における明細書の「【0029】前記金属製気密容器6は、その内部空間を真空状態にしたり、又は、特定のガスを充填してその充填ガスを介して冷却板3を冷却する冷媒冷却装置としたり、充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定もできる。」との記載に基づいている。すると、訂正事項1は、本件特許の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。また、訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)独立特許要件
なお、特許異議の申立てが全請求項に対してされているので、本件訂正請求においては、いずれの請求項についても、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2で判断したとおり本件訂正が認められるから、本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下のとおりのものである。ここで、請求項1の各構成単位冒頭の「A」などは、おおむね特許異議申立書における付番に沿って当審で付した分説番号であり、各構成単位については以下、上記分説番号を用い「構成A」などということがある(以下同様)。
「 【請求項1】
A 加熱板の両面側に一対の被測定物平板を配置し、
B 前記一対の被測定物平板の更に両外側夫々に一対の冷却板を配置し、
C1 前記一対の被測定物平板夫々の表裏両面部の温度を測定して、
C2 与えた熱量と前記表裏両面部の計測温度差に基づいて被測定物平板の熱伝導率を算出するGHP法測定装置を、
C3 断熱性気密容器の内側に収容し、
D 前記冷却板を0℃以下の低温に冷却する冷却手段を前記断熱性気密容器内に設けてある
E 低温熱伝導率測定装置であって、
F1 前記冷却手段を構成するのに、前記断熱性気密容器の内側空間内で前記GHP法測定装置の前記冷却板を冷却する放冷部を備えた機械式冷凍機を設け、
F2 前記機械式冷凍機の前記放冷部から金属製熱伝導部材を介して前記冷却板に直接熱接触させ、
G 前記断熱性気密容器の内側空間内に、前記GHP法測定装置を囲繞する金属製気密容器を設け、
H 前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、又は、特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある
E 低温熱伝導率測定装置。
【請求項2】
前記断熱性気密容器の内部を真空断熱状態に減圧可能な真空ポンプを設けてある請求項1に記載の低温熱伝導率測定装置。
【請求項3】
前記断熱性気密容器は、前記金属製気密容器を更に囲繞する輻射シールド容器と、前記輻射シールド容器を更に囲繞する外槽気密容器とから構成してある請求項2に記載の低温熱伝導率測定装置。
【請求項4】
前記輻射シールド容器の外側は、スーパーインシュレーションのシールド層部材で全周を覆われている請求項3に記載の低温熱伝導率測定装置。
【請求項5】
前記機械式冷凍機は、GM冷凍機またはパルスチューブ冷凍機からなるものである請求項1に記載の低温熱伝導率測定装置。
【請求項6】
前記断熱性気密容器の内部空間に、液体窒素または液体ヘリウムを気化させる貯留容器を設けて、雰囲気温度を低下させるように構成してある請求項1に記載の低温熱伝導率測定装置。」
第4 特許異議の申立てについて
1 申立理由の概要
申立人は、証拠として下記2に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1~6に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。申立人が提出した甲第1~第5号証は、何れも、本件特許の出願日である令和元年(西暦2019年)9月27日より前に公知となったものである。以下、各甲号証について「甲1」などと略称する。
申立理由1:(明確性)請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項1~6に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
申立理由2:(サポート要件)請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項1~6に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
申立理由3:(進歩性)請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、甲2~5に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1~6に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証(甲1):町田清、上園正義、「GHP法による低温域における熱伝導率測定」、建材試験情報、日本、建材試験センター、1989年12月1日、Vol.25、No.12、pp.6-10
甲第2号証(甲2):特開平7-142241号公報
甲第3号証(甲3):特開2004-356573号公報
甲第4号証(甲4):小川光惠、釘宮一真、松原秀彰、「保護熱板法による断熱素材の熱伝導率評価」The 30th Japan Symposium on Thermophysical properties、日本、日本熱分析研究会、2009年10月 p.283-285
甲第5号証(甲5):特表2019-513665号公報
第5 取消理由通知書に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1:(明確性)請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきである。
第6 各甲号証の記載等
1 甲1について
(1)甲1の記載
甲1の記載は、以下のとおりである(下線や囲みは当審にて付与した。以下同様。)。
ア 6頁左欄~7頁左欄
下記(ア)~(ウ)は連続した記載事項である。
(ア)6頁左欄
[図:0001427968000001.jpg]
[図:0001427968000002.jpg]
(イ)6頁右欄
[図:0001427968000003.jpg]
(ウ)7頁左欄
[図:0001427968000004.jpg]
[図:0001427968000005.jpg]
イ 図-1
[図:0001427968000006.jpg]
ウ 7頁右欄
[図:0001427968000007.jpg]
エ 8頁左欄
[図:0001427968000008.jpg]
オ 図-4
[図:0001427968000009.jpg]
カ 8頁右欄
[図:0001427968000010.jpg]
キ 10頁左欄
[図:0001427968000011.jpg]
(2)甲1発明
上記(1)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。各構成単位末尾の括弧内には主たる認定根拠とした記載箇所を示す。
「a 主熱板Aとその周囲を囲む保護熱板Bとからなる高温板ユニットの両面にそれぞれ厚さdの断熱材や構造材からなる試料Cを配置し、(6頁、図-1)
b 前記各試料Cの更に外側に、それぞれ熱板Dと冷却板Eとからなる低温板ユニットを配置し、(6頁左欄、図-1)
c1 前記両試料Cの表裏両面に熱電対を設けて試料の両面の温度差を測定し、(8頁右欄、図-1)
c2 主熱板Aの発熱量Qと試料C表裏の温度差Δθに基づいて試料Cの熱伝導率λを求める、JIS A 1412(保温材の熱伝導率測定方法)中の「平板直接法」と同じ測定方法を行うGHP法に基づく測定部本体を、(6頁左欄・7頁左欄・8頁左欄、10頁左欄)
c3 低温槽Jと、その内側のステンレス容器Iとからなる二重容器内に収納し、(6頁右欄、8頁左欄、図-1)
c4 測定中、低温槽Jとステンレス容器Iとの間の温度変動は約-97℃を中心に振幅10℃程度に、ステンレス容器I内の温度変動は約-107℃を中心に振幅3℃程度にそれぞれ維持されるものであり、(8頁左欄、図-4)
d 低温板ユニットを-130℃±1~6℃に制御するために、液体窒素を冷却板Eに直接流して冷却板Eを通過させ、ステンレス容器Iと冷却槽Jとの間を循環して外気に排出される冷却機構を設けてある、(6頁左欄~7頁左欄、図-1)
e 低温熱伝導率測定装置であって、(6頁左欄)
f1 前記冷却機構は、冷却槽J外の液体窒素タンクGから電磁バルブHを介し冷却槽J内に供給された液体窒素を冷却板Eに直接流し、ステンレス容器Iと冷却槽Jとの間を循環して外気に排出するものであり、(6頁左欄~7頁左欄、図-1)
f2 試料の両面の温度差による熱伝導率の変化は、測定誤差の範囲内にあり、試料側面部と周囲空気との温度差により、試料側面から熱移動が生じていない一次元熱流が実現している、(8頁右欄)
e 低温熱伝導率測定装置(6頁左欄)。」
2 甲2について
甲2の記載は、以下のとおりである。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超電導磁石装置に係り、特に超電導コイルを極低温用冷凍機で直接的に伝導冷却する超電導磁石装置に関する。
・・・
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る超電導磁石装置は、超電導コイルと、良熱伝導部材で形成されて前記超電導コイルの外周面に熱的に接続された吸熱部材と、冷却ステージを備え、この冷却ステージで前記吸熱部材を伝導冷却する冷凍機とを備えている。
・・・
【0011】
【実施例】以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1には本発明の一実施例に係る超電導磁石装置の概略構成が示されている。この超電導磁石装置は、大きく別けて、内部が真空雰囲気となるように排気された真空容器1を備えている。真空容器1は、たとえばステンレス鋼などの非磁性材で形成されている。真空容器1の上壁2および下壁3には、それぞれ孔4a,4bが対向関係に設けてあり、これらの孔4a,4bを連通させるようにステンレス鋼などの非磁性材で形成された筒体5の両端部が上壁2および下壁3の内面に気密に接続されている。したがって、筒体5の内側は大気圧に、外側は真空雰囲気に保持されている。
【0012】筒体5の回りで真空雰囲気中には、筒体5とは非接触に、かつ筒体5と同心的に超電導コイル6が配置されており、この超電導コイル6は吸熱部材7を介して熱伝導部材8に熱的に接続されている。そして、熱伝導部材8は極低温用冷凍機、この例ではギホード・マクマホン型冷凍機(以後、GM冷凍機と略称する。)9の冷却ステージに接続されている。
【0013】GM冷凍機9は、30K程度に冷却される第1段冷却ステージ10と、4K以下程度(超電導線材の超電導転移温度以下)に冷却される第2段冷却ステージ11とを備えており、各冷却ステージが真空容器1内に位置するように真空容器1の上壁2に設けられた図示しない装着孔を使って真空容器1に取り付けられている。そして、第2段冷却ステージ11に熱伝導部材8が熱的および機械的に接続されている。
【0014】超電導コイル6,吸熱部材7および熱伝導部材8は、具体的には、図2および図3に示すように構成されている。・・・。
【0015】吸熱部材7は、銅やアルミニウムなどの良熱伝導金属材で内径が超電導コイル6の外径より所定だけ大きく、かつ軸方向長さが超電導コイル6のそれより若干長い円筒状に形成された筒状部12と、この筒状部12の一端側内面に内側に突出するように筒状部12と一体に形成された環状部13とで構成されている。・・・。
・・・
【0017】一方、熱伝導部材8は、図2に示すように、銅やアルミニウムなどの良熱伝導金属材で外径が筒状部12の外径と同程度に、内径が環状部13の内径より所定だけ大きい環状に形成された部分16と、この部分16から一体に延びる部分17とで構成されている。なお、部分16には、この部分に周方向の渦電流通路が形成されないようにするために、切込み18が形成されている。
【0018】このように形成された熱伝導部材8は、吸熱部材7に設けられた切込み14に切込み18を合せるようにして部分16が環状部13の外面に当てがわれ、この状態で部分16が環状部13に対してねじ止めされている。すなわち、上記ねじ止めによって部分16と環状部13とが熱的および機械的に接続されている。そして、部分17が前述したGM冷凍機9の第2段冷却ステージ11に熱的および機械的に接続されている。
【0019】上記構成から判るように、超電導コイル6は、吸熱部材7および熱伝導部材8を介してGM冷凍機9の第2段冷却ステージ11に熱的に接続され、かつその荷重が吸熱部材7および熱伝導部材8を介してGM冷凍機9によって支持されている。
・・・
【0021】このような構成であると、GM冷凍機9を運転開始させると、このGM冷凍機9の第1段および第2段冷却ステージ10,11が温度低下する。この結果、超電導コイル6,吸熱部材7および熱伝導部材8の顕熱が伝導によって第2段冷却ステージ11に伝わり、この第2段冷却ステージ11を介してGM冷凍機9によって吸収される。したがって、これらが徐々に冷却される。そして、最終的に、これら超電導コイル6,吸熱部材7,熱伝導部材8は、第2段冷却ステージ11の最低到達温度に近い温度、つまり4K以下に冷却される。
・・・
[図:0001427968000012.jpg]
[図:0001427968000013.jpg]
」
3 甲3について
甲3の記載は、以下のとおりである。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビーム電流計に関し、さらに詳細には、微弱なビーム電流を非破壊かつ高精度で測定することのできるビーム電流計に関する。
・・・
【0038】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような発明の背景ならびに従来の技術の有する問題点や従来の技術に対する要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、超伝導体の冷却機構を簡素化するとともに、コストの大幅な削減を可能としたビーム電流計を提供しようとするものである。
・・・
【0041】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるビーム電流計は、ビーム電流センサー、SQUIDおよび磁気シールドを断熱真空容器の真空中に配置するとともに、これらビーム電流センサー、SQUIDおよび磁気シールドの冷却手段として冷凍機を用いるようにして、断熱真空容器の内部に配置された冷凍機のコールドヘッドやコールドフィンガーなどの熱伝導手段からの熱伝導によって、ビーム電流センサー、SQUIDおよび磁気シールドを冷却するようにしたものである。
【0042】
従って、本発明によるビーム電流計によれば、液体ヘリウムや液体窒素などの冷媒を用いる必要がないので冷却機構が簡素化され、また、コストの大幅な削減が可能となる。
【0043】
さらに、測定作業中に液体ヘリウムや液体窒素などの冷媒を補給する必要はないので測定作業が簡素化され、しかもSQUIDを安定して連続的に動作させることができるので測定時間を短縮化することができる。
・・・
【0056】
図7乃至図9において、真空容器5’は断熱真空容器として構成されており、真空容器5’の上面5’a側は、中央に開口部6’aが形成された上フランジ6’により閉塞されている。なお、後述するように、パルス管冷凍機12のコールドヘッド12aに接続されたコールドフィンガー12fは、この開口部6’aから真空容器5’内部に挿通されることになる。
【0057】
即ち、符号12は真空容器5’内に配置されたビーム電流センサー1、SQUID3および磁気シールド2を冷却する冷凍機としてのパルス管冷凍機を示し、符号12aはパルス管冷凍機12の熱伝導手段としてのコールドヘッドを示し、符号12fはパルス管冷凍機12の熱伝導手段としてのコールドフィンガーを示しており、コールドヘッド12aに接続されたコールドフィンガー12fは真空容器5’の開口部6’aから真空容器5’内部に挿通されている。
【0058】
・・・符号12fは上記したようにコールドヘッド12aに接続されたコールドフィンガーを示し、符号13はコールドフィンガー12fに接続されて当該コールドフィンガー12fを介してコールドヘッド12aからの熱伝導によって冷却される熱伝導手段としての冷却板を示し、符号14はビーム電流センサー1および磁気シールド2を支持するためのドーナツ形状に形成された一対の支持板を示し、符号15は冷却板13と支持板14とを連結して熱伝導を確保するために配置された機械的にフレキシブルな編組導体を示し、符号16は一対の支持板14とビーム電流センサー1および磁気シールド2の両端面との間にそれぞれ配置されて熱抵抗を低減する熱伝導シートを示し、・・・符号22はSQUID3近傍の位置として冷却板13に取り付けられた電気ヒーターを示している。
・・・
【0067】
さらに、支持板14は、編組導体15を介して冷却板13に接続されており、コールドフィンガー12fを介してコールドヘッド12aに接続された冷却板13からの熱伝導により支持板14、ビーム電流センサー1、磁気シールド2およびSQUID3が冷却されるように構成されている。
・・・
[図:0001427968000014.jpg]
」
4 甲4について
甲4の記載は、以下のとおりである。
「熱伝導率はNETZSCH製のGHP456[1]を用いて測定した。この装置は保護熱板法によるもので、試験体2枚方式の平板タイプである。測定温度範囲は-160℃~250℃、測定雰囲気は、大気、不活性ガスおよび真空が可能で、真空度については0.01Pa程度から大気圧まで変化できる。」(284頁左欄)
5 甲5ついて
甲5の記載は、以下のとおりである。
「【0097】
<実験例5:熱伝導度の測定>
1)前記実施例2及び比較例1で製造したシリカエアロゲルブランケットを、NETZSCH社のGHP 456装備を利用してGHP(Guarded Hot Plate)高温熱伝導度を測定し、その結果を図4に示した。
2)さらに、前記実施例1から6及び比較例1から3で製造したシリカエアロゲルブランケットを、NETZSCH社のGHP 456装備を利用して常温(25℃)熱伝導度を測定し、その結果を下記表3に示した。」
第7 当審の判断
1 取消理由1について
当審は、請求項1の「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」との記載について、前文に記載の「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、」と、後文に記載の「特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」との関係が、不明確である旨指摘したところ、本件訂正により、前文と後文が「又は、」の関係であることが特定された。そして、前文及び後文は、いずれも記載自体から一義的にその意味を理解し得る。よって、当該記載は、本件訂正により明確となったので、当該取消理由1は解消された。
2 申立理由1及び2について
(1)特許異議申立書(8~10頁)の(イ-1)欄:明確性
申立人は、請求項1に記載された「放冷部を備えた機械式冷凍機」との用語が示す技術的範囲が不明確である、と主張する。
当該主張について検討する。機械式冷凍機が、蓄冷材をシリンダー内で機械的に往復動させながら冷媒の断熱膨張を繰り返すことによって寒冷を発生させるものであって、寒冷を放出する放冷部を備えるものであることは、技術常識である。そして、明細書には、機械式冷凍機として周知の「GM冷凍機」(【0024】)や「パルスチューブ冷凍機」(【0036】)が例示されていることから、当該用語が示す技術的範囲が不明確であるとはいえない。よって、当該主張は採用できない。
(2)特許異議申立書(10~18頁)の(イ-2)欄:明確性・サポート要件
ア 特許異議申立書(10~13頁)の(1)欄
・構成Hの技術的範囲について
申立人は、訂正前の請求項1の「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」との記載は、以下(ア)~(ウ)の各点で不明確であり、サポートされていない、と主張する。
なお、当該記載は訂正されたので、申立人の主張において、取消理由1で採用していない理由についてのみ検討する。
(ア)申立人は、当該記載の前文「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、」が選択された場合、本件発明1の「加熱板の両面側・・・低温熱伝導率測定装置」は「充填ガス雰囲気ではない状態で熱伝導率」の測定が可能となる(下線は申立人による)。一方、当該記載の後文「前記金属製気密容器の内部空間を特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」が選択された場合、本件発明1の「加熱板の両面側・・・低温熱伝導率測定装置」は「充填ガス雰囲気における熱伝導率」の測定が可能となる。しかしながら、「充填ガス雰囲気」の有無により、物の発明である「低温熱伝導率測定装置」の熱伝導率を測定するための構成要素が変更されるのか否か不明確であり、且つ、本件明細書には「充填ガス雰囲気」の有無により、「低温熱伝導率測定装置」の熱伝導率を測定するための構成要素(或いは測定方法)がどの様に変更されるのかサポートされていない、と主張するが、上記1で説示したとおり、当該記載は、本件補正により明確となった。また、本件発明は、「液体窒素やヘリウムの消費を抑制してGHP法測定装置の冷却板を冷却できる低温熱伝導率測定装置を提供する」(【0006】)ことを課題とし、「前記冷却手段を構成するのに、断熱性気密容器5の内側空間内でGHP法測定装置4を囲繞する金属製気密容器6を設け、金属製気密容器6を熱伝導により冷却する冷凍機7を設け、金属製気密容器6と冷却板3とを直接熱接触させる第1金属製熱伝導部材8を設けてある」(【0023】)ことを課題解決手段としたものであるところ、本件発明1(~6)は、当該課題解決手段を備えている。すると、本件発明1は、当該記載について明確であり、発明の詳細な説明の記載にサポートされている。なお、「充填ガス雰囲気」の有無に基づく構成要素(測定方法)を具体的にどのように為し得たかは、明確性・サポート要件の判断に何ら影響を与えない。よって、当該主張は採用できない。
(イ)申立人は、前文に記載の「金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり」との発明特定事項が、「金属製機密容器」を「真空状態」にしても耐え得る構造とすることを特定しているのか、或いは、本件発明2に記載の「真空ポンプ」等の「真空状態」にするための装置を備えること特定しているのか不明確である。また、後文に記載の「充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」との発明特定事項が、「低温熱伝導率測定装置」が備える何れの構成要素を特定することで、「充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能」としているのか、不明確である。更に、本件明細書には、当該記載が、物の発明である「低温熱伝導率測定装置」の何れの構成要素をどの様に特定するのかサポートされていない、と主張するが、上記(ア)で説示したとおり、本件発明1は、当該記載について明確であり、発明の詳細な説明の記載にサポートされている。なお、前文の「真空状態」及び後文の「充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成」を具体的にどのように為し得たかは、明確性・サポート要件の判断に何ら影響を与えない。よって、当該主張は採用できない。
(ウ)申立人は、後文に記載の「特定のガスを充填して」について、明細書の【0029】には「熱交換作用を有する特定のガスを充填した場合は、放冷部23からの冷熱が、その充填ガスの凝固点以上の温度であれば、その充填ガスが熱交換ガスとして働いて、冷却板3に冷熱が伝わり、より冷却効率が上がる効果がある。」との記載がある。しかしながら、明細書には、「特定のガス」に含まれる種類は何ら記載されてなく、且つ、放冷部23からの冷熱と充填ガスの凝固点との関係の記載からではガスの種類を特定することもできない。更に、特定のガスには、例えば、通常の空気が含まれるのか否かも不明確である。したがって、後文の「特定のガス」との記載は、包含される範囲が不明確であり、且つ、「特定のガス」に何が含まれるのか明細書にサポートされていない、と主張するが、上記(ア)で説示したとおり、本件発明1は、当該記載について明確であり、発明の詳細な説明の記載にサポートされている。なお、仮に、明細書の記載からでは、冷却効率が上がるガス種を具体的に特定できないとしても、本件発明1では、「特定のガス」に含まれるガス種は何ら特定されないから、本件発明1において、「特定のガス」を冷却効率が上がるガス種に特定される理由はなく、また、通常の空気が排除される理由もない。よって、当該主張は採用できない。
イ 特許異議申立書(13~16頁)の(2)欄
・「冷却手段」と「機械式冷凍機」の関係について
(ア)申立人は、本件発明1において、「冷却手段」と「放冷部を備えた機械式冷凍機」との関係、および、「放冷部を備えた機械式冷凍機」の位置関係について、不明確であり、サポートされていない、と主張する。
上記主張について検討する。本件発明1は、「前記冷却板を0℃以下の低温に冷却する冷却手段を前記断熱性気密容器内に設け」(構成D)、「前記冷却手段を構成するのに、前記断熱性気密容器の内側空間内で前記GHP法測定装置の前記冷却板を冷却する放冷部を備えた機械式冷凍機を設け、前記機械式冷凍機の前記放冷部から金属製熱伝導部材を介して前記冷却板に直接熱接触させ」(構成F1、F2)ることが発明特定事項として記載されている。そして、当該記載によれば、「冷却手段」は「前記断熱性気密容器内に設け」られるのだから、「冷却手段」は、「機械式冷凍機」が「備えた」、「断熱性気密容器の内側空間内で前記GHP法測定装置の前記冷却板を冷却する放冷部」(機械式冷凍機の一部)と、「前記機械式冷凍機の前記放冷部から」「前記冷却板に直接熱接触させ」る「金属製熱伝導部材」とから「構成」されることが理解し得る。そして、この理解は明細書の【0023】の記載及び図1とも符合するものであるところ、上記ア(ア)で説示したとおり、本件発明1は発明の詳細な説明の記載にサポートされている。すると、本件発明1は、「冷却手段」と「放冷部を備えた機械式冷凍機」との関係、および、「放冷部を備えた機械式冷凍機」の位置関係について、明確であり、発明の詳細な説明の記載にサポートされている。よって、当該主張は採用できない。
(イ)加えて、申立人が上記主張について詳説した、『「冷却手段を構成するのに・・・放冷部を備えた機械式冷凍機を設け」との記載では、「放冷部を備えた機械式冷凍機」と「冷却手段」との関係が不明確である』点(14頁(ア)欄)、『「機械式冷凍機」全体が断熱性気密容器内に位置するのか、或いは、図1に示されるように、機械式冷凍機の一部が「断熱性機密容器」の外部に位置するのか不明確である』点(14頁(イ)欄)、『冷却板を冷却する手段を発明特定事項1Dでは「冷却手段」と特定し、発明特定事項1Fでは「放冷部を備えた機械式冷凍機」と特定している点は、発明特定事項間に矛盾を生じている』点(14頁(ウ)欄)、『段落【0023】には、「冷却手段を構成するのに」として「金属製気密容器」、「機械式冷凍機」、「第1金属製熱伝導部材」なる各要素を「設け」るものとして並列的に特定するものであるが、上記(ア)の指摘事項に関連し、前記各要素が「冷却手段」に含まれることを特定するものか否か不明確である』点(14~15頁(エ)欄)、『上記(ア)~(エ)に関連し、本件特許発明1の「冷却手段」および「機械式冷凍機」と、本件明細書の発明の詳細な説明内に記載されたいずれの具体的手段(要素)とが対応するのか不明である』点(15頁(オ)欄)、『上記(イ)に関連し、本件特許発明1の「放冷部を備えた機械式冷凍機」が断熱性気密容器内に設けられることを特定するものと解される場合、実施例に関する図1において、GM冷凍機の一部である「1段冷却部23B」が、二重容器からなる断熱性気密容器5の内側容器であるアルミ製外槽気密容器28の外部(または内外部にまたがって)設けられていること、また、この配置からみて機械式冷凍機の本体はさらに外方に存在しているとはずであることと整合しない』点(15~16頁(オ)欄)など、上記各点の主張について、本件発明1において、「冷却手段」と「放冷部を備えた機械式冷凍機」との関係、および、「放冷部を備えた機械式冷凍機」の位置関係を上記(ア)のとおり理解することで、いずれも採用できないことは明らかである。
ウ 特許異議申立書(16~18頁)の(3)欄
・「真空」にする構成要素について
申立人は、本件発明1および2の記載からは、a:本件発明1では「金属製気密容器」のみを真空状態にすることを特定し、本件発明2では、「真空状態にするため気密に形成された金属製機密容器」の外側空間である「断熱性気密容器」の空間のみを真空状態にすることを特定しているのか、b:「金属製気密容器」は、「断熱性気密容器」の「内側空間内」に連通しており、本件発明1の「金属製気密容器の内部空間を真空状態」とは、「断熱性気密容器」を真空状態にすることにより連通部分を介して「金属製気密容器の内部空間を真空状態」にしているのか、不明確であり、上記a及びbのいずれの形態も、明細書にサポートされていない、と主張する。
上記主張について検討する。本件発明1は、「前記断熱性気密容器の内側空間内に、前記GHP法測定装置を囲繞する金属製気密容器を設け」(構成G)、「前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり」(構成H)することが記載されている。そして、本件発明1の構成G及びHに係る記載は、いずれも記載自体から一義的にその意味を理解し得る。また、当該記載は、明細書の【0029】の記載に基づくところ、上記ア(ア)で説示したとおり、本件発明1は発明の詳細な説明の記載にサポートされている。すると、本件発明1は、「真空状態」に関する記載について明確であり、発明の詳細な説明の記載にサポートされている。また、本件発明2では、請求項1の記載を引用し、「前記断熱性気密容器の内部を真空断熱状態に減圧可能な真空ポンプを設けてある」ことが発明特定事項として記載されている。そして、本件発明2において、(本件発明1の)「真空状態」と(本件発明2の)「真空ポンプ」との関係は特定されていないところ、本件発明2の発明特定事項に係る記載は、その記載自体から一義的にその意味を理解し得る。また、当該記載は、明細書の【0028】の記載に基づくところ、上記ア(ア)で説示したとおり、本件発明2は発明の詳細な説明の記載にサポートされている。すると、本件発明2は、「真空ポンプ」に関する記載について明確であり、発明の詳細な説明の記載にサポートされている。よって、当該主張は採用できない。
3 申立理由3について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成aの「主熱板Aとその周囲を囲む保護熱板Bとからなる高温板ユニット」は、構成Aの「加熱板」に相当する。
また、構成c2によれば甲1発明は「JIS A 1412(保温材の熱伝導率測定方法)中の「平板直接法」と同じ測定方法を行うGHP法に基づく測定」を行うものであり、ここでの「平板直接法」とは当該JISにおいて「保護熱板法」とも言い換えられる、平板状の熱絶縁材を被検体とするGHP法の別称である。よって、構成aの「厚さdの断熱材や構造材からなる試料」は、構成Aの「被測定物平板」に相当する。
よって、甲1発明は構成Aに相当する構成を備えている。
(イ)構成bの「熱板Dと冷却板Eとからなる低温板ユニット」は、構成Bの「冷却板」に相当する。
よって、甲1発明は構成Bに相当する構成を備えている。
(ウ)構成c1の「前記両試料Cの表裏両面に熱電対を設けて試料の両面の温度差を測定」することは、構成C1の「前記一対の被測定物平板夫々の表裏両面部の温度を測定」することに相当する。
よって、甲1発明は構成C1に相当する構成を備えている。
(エ)構成c2の「主熱板Aの発熱量Q」、「試料C表裏の温度差Δθ」、「試料Cの熱伝導率λ」は、それぞれ構成C2の「与えた熱量」、「表裏両面部の計測温度差」、「被測定物平板の熱伝導率」に相当する。
よって、構成c2の「JIS A 1412(保温材の熱伝導率測定方法)中の「平板直接法」と同じ測定方法を行うGHP法に基づく測定部本体」は、構成C2の「GHP法測定装置」に相当し、甲1発明は構成C2に相当する構成を備えている。
(オ)構成c3の「低温槽Jと、その内側のステンレス容器Iとからなる二重容器」は、該二重容器がない場合に比べて少なくともステンレス容器Iを構成するステンレスや、低温槽Jを構成する素材が有する熱伝導率分の熱伝導に対する断熱性と、熱輻射の透過を阻害する分の熱輻射に対する断熱性とを備えることが自明である。
また、構成c4によれば「測定中、低温槽とステンレス容器との間の温度変動は約-97℃を中心に振幅10℃程度に、ステンレス容器内の温度変動は約-107℃を中心に振幅3℃程度にそれぞれ維持」できるものであり、当然に該二重容器外部は実験室の常温環境にあるから、内外間に大きな温度差を維持することを要する前記二重容器が全体として一定程度の断熱性を備えるように構成されるべきことはエネルギー効率上の要請や技術常識からみて自明であるともいえる。
よって、甲1発明は本件発明1の構成C2~C3の「・・・GHP法測定装置を断熱性」「容器の内側に収容」することと共通する構成を備えるといえる。
(カ)構成dの「低温板ユニットを-130℃±1~6℃に制御するために、液体窒素を冷却板Eに直接流して冷却板Eを通過させ、ステンレス容器Iと冷却槽Jとの間を循環して外気に排出される冷却機構」は、構成Dの「前記冷却板を0℃以下の低温に冷却する冷却手段」に相当する。
また、構成dの「冷却板E」は、構成c3で「二重容器内に収納」されると特定される構成c2の「測定部本体」の構成要素である旨、構成bで特定されるものであるから、それ自体「二重容器内に収納」されるものである。そうすると、構成dの「液体窒素を冷却板Eに直接流して冷却板Eを通過させ」る「冷却機構」は、配管など少なくともその一部が「冷却板E」と共に前記「二重容器内」に存在するといえる。
よって、甲1発明は構成Dと、「前記冷却板を0℃以下の低温に冷却する冷却手段を前記断熱性」「容器内に設けてある」点で共通する。
(キ)構成eの「低温熱伝導率測定装置」は、構成Eの「低温熱伝導率測定装置」に相当する。
(ク)上記(カ)でも説示したとおり、甲1発明の「冷却機構」は、「容器内に収納」される「冷却板E」に「液体窒素を冷却板Eに直接流して冷却板Eを通過させ」るものであるから、甲1発明は構成F1・F2と、「前記冷却手段を構成するのに、前記断熱性気密容器の内側空間内で前記GHP法測定装置の前記冷却板を冷却する放冷部を備えた」「冷凍機を設け、前記」「冷凍機の前記放冷部から」「前記冷却板に直接熱接触させ」点で共通する。
イ 一致点・相違点
上記アによれば、本件発明1と甲1発明とは下記(ア)の点で一致し、下記(イ)の各点で相違する。
(ア)一致点
A 加熱板の両面側に一対の被測定物平板を配置し、
B 前記一対の被測定物平板の更に両外側夫々に一対の冷却板を配置し、
C1 前記一対の被測定物平板夫々の表裏両面部の温度を測定して、
C2 与えた熱量と前記表裏両面部の計測温度差に基づいて被測定物平板の熱伝導率を算出するGHP法測定装置を、
C3 断熱性気密容器の内側に収容し、
D 前記冷却板を0℃以下の低温に冷却する冷却手段を前記断熱性気密容器内に設けてある
E 低温熱伝導率測定装置であって、
F1’前記冷却手段を構成するのに、前記断熱性気密容器の内側空間内で前記GHP法測定装置の前記冷却板を冷却する放冷部を備えた冷凍機を設け、
F2’前記冷凍機の前記放冷部から前記冷却板に直接熱接触させる、
E 低温熱伝導率測定装置。
(イ)相違点
・相違点1(構成C3・D・F1)
GHP法測定装置を収容する断熱性容器が、本件発明1では、断熱性「気密」容器であるのに対し、甲1発明では、「低温槽Jと、その内側のステンレス容器Iとからなる二重容器」が、気密であるか不明である点。
・相違点2(構成F1・F2)
本件発明1では、前記冷却手段を構成するのに、前記断熱性気密容器の内側空間内で前記GHP法測定装置の前記冷却板を冷却する放冷部を備えた「機械式」冷凍機を設け、前記「機械式」冷凍機の前記放冷部から「金属製熱伝導部材を介して」前記冷却板に直接熱接触させるのに対し、甲1発明では、「容器内に収納」される「冷却板E」に「液体窒素を冷却板Eに直接流して冷却板Eを通過させ」るものである点。
・相違点3(構成G・H)
本件発明1では、「前記断熱性気密容器の内側空間内に、前記GHP法測定装置を囲繞する金属製気密容器を設け、前記金属製気密容器の内部空間を真空状態にしたり、又は、特定のガスを充填して、その充填ガスを介して充填ガス雰囲気における熱伝導率の測定可能に形成してある」のに対し、甲1発明では、「低温槽Jと、その内側のステンレス容器Iとからなる二重容器」の内側空間内に、GHP法測定装置を囲繞する金属製気密容器を設けていない点。
ウ 判断
事案に鑑み相違点2について検討する。
(ア)容器内に設置された冷却対象要素を冷却するための機構として、容器を真空断熱容器などの断熱密閉容器とした上で、GM冷凍機等の機械式冷凍機を当該断熱密閉容器に取り付けて用い、該密閉容器内の冷却対象要素と熱的に接続された容器内の冷却対象要素に対し、GM冷凍機等の機械式冷凍機の冷却ステージから、熱伝導部材を介して前記冷却対象要素を熱的に接続することで、前記冷却対象要素を、液体窒素や液体ヘリウムなどの冷熱源流体を大量消費することなく冷却する冷却機構は、上記第6の2、3に摘記した甲2、3の記載によっても裏付けられるとおり周知技術である。
(イ)一方、甲1発明の「低温熱伝導率測定装置」では、構成f1の「液体窒素を冷却板Eに直接流し、ステンレス容器Iと冷却槽Jとの間を循環して外気に排出する」「冷却機構」を採用することで、構成f2の「試料の両面の温度差による熱伝導率の変化は、測定誤差の範囲内にあり、試料側面部と周囲空気との温度差により、試料側面から熱移動が生じていない一次元熱流が実現している」。すなわち、低温熱伝導率測定の前提となる一次元熱流を、液体窒素を活用した上記冷却機構を用いて周囲の環境温度と冷却板Eの温度とをそれぞれ一定の範囲内に制御できたことで、実現したものといえる。
(ウ)他方、上記(ア)で言及した周知技術として例示された甲2、3は、真空断熱容器などの断熱密閉容器と、冷却対象要素として超伝導体の冷却にGM冷凍機等の機械式冷凍機とを用いた文献であって、断熱密閉容器が液体窒素や液体ヘリウムなどを循環させるタイプのものでも、機械式冷凍機が冷却する冷却対象要素が低温熱伝導率測定装置の冷却板でもない。また、上記第6の4、5に摘記した甲4、5は、構成Hに関連するものであって、構成F1・F2ないしは上記周知技術に関連するものではない。
(エ)してみると、甲1発明では、液体窒素を活用した上記冷却機構が、一次元熱流を実現するために設計した必須構成といえることから、たとえ、液体窒素の消費を防ぐことが周知の課題であったとしても、甲1発明において、当該必須構成(冷却手段)を、液体窒素を活用しない冷却手段(例えば、上記周知技術など)に変更する動機は存在しない。また、甲1発明において、液体窒素の消費を防ぐために、仮に上記(ア)で言及した周知技術(断熱密閉容器と機械式冷凍機)の適用を想定した場合、上記(ウ)で説示したとおり、上記周知技術を裏付ける甲2、甲3の技術的事項から直ちに、構成f2の「試料の両面の温度差による熱伝導率の変化は、測定誤差の範囲内にあり、試料側面部と周囲空気との温度差により、試料側面から熱移動が生じていない一次元熱流が実現」できるか不明であることから、甲1発明には、上記周知技術の適用を阻害する事情があるといえる。
(オ)よって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、上記周知技術を踏まえても当業者が容易になし得たことでない。
エ 小括
したがって、上記相違点1、3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、本件発明2~6は、甲1発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701024