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特許異議申立

2023-701316

シリカ系艶消し剤及びそれを作製及び使用する方法

審判番号
2023-701316
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-505851
登録番号
7308185
請求日
2023年12月13日
審決日
2025年06月03日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
  • 【権利者代理人】山本 修
  • 【権利者代理人】野矢 宏彰
  • 【異議申立人】服部 道俊
審判長/審判官
  • 審判長 村守 宏文
  • 審判官 弘實 由美子
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.54 -YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第184条の4第1項、特許法第184条の18
データ出所
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事件の表示

特許第7308185号発明「シリカ系艶消し剤及びそれを作製及び使用する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7308185号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7、8、10~15、17~19、21~57〕、6、9、16、20について訂正することを認める。 特許第7308185号の請求項1~5、7、8、10~15、17~19、21~57に係る特許を維持する。 特許第7308185号の請求項6、9、16、20に係る特許についての特許異議の申立を却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、2018年(平成30年)8月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年8月3日(以下「本件優先日」という。)(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月5日に特許権の設定登録(請求項の数57)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、同年12月13日に申立人である服部 道俊(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、令和6年3月13日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年6月14日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年7月11日付けで申立人に通知し、申立人は、同年8月14日に意見書を提出し、当審は、同年10月1日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者は、その指定期間内である令和7年1月6日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、同年2月4日付けで手続補正指令書(方式)を通知し、特許権者は、同年3月7日に手続補正書を提出し、当審は、特許権者から訂正請求があったことを、同年3月18日付けで申立人に通知し、申立人は、同年4月15日に意見書を提出したものである。 なお、本件訂正請求がされたことにより、令和6年6月14日にされた訂正の請求は取り下げたものとみなされる。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 本件訂正請求は、請求の趣旨を「特許第7308185号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~57について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~17からなる。訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 請求項1に「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」と記載されているのを 『1つ以上のワックスのコーティングであり』と訂正し、この訂正に続いて、 『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、』の記載を追加する(請求項1の記載を引用する請求項2~5、10、11、15、24、44~57も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 請求項6を削除する。 (3)訂正事項3 請求項7に「前記複合シリカ粒子が、(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つを、前記複合粒子の総重量に基づいて1.0重量%~70.0重量%含む、請求項6に記載の艶消し剤。」と記載されているのを、独立形式に改め、 『複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供する、艶消し剤。』と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、44~57も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 請求項8に「(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つ」と記載されているのを『前記1つ以上のワックスと訂正し、さらに請求項8に「前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて2.0重量%~50.0重量%含む」と記載されているのを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて40重量%~50.0重量%含む』と訂正する(請求項8の記載を引用する請求項44~57も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 請求項9を削除する。 (6)訂正事項6 請求項12に「前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する、請求項9に記載の艶消し剤。」と記載されているのを、独立形式に改め、 『複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する、艶消し剤。』と訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13、14、44~57も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7 請求項16を削除する。 (8)訂正事項8 請求項17に「前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項16に記載の艶消し剤。」と記載されているのを、独立形式に改め、 『複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む、艶消し剤。』と訂正する(請求項17の記載を引用する請求項18、19、44~57も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 請求項20を削除する。 (10)訂正事項10 請求項21に「前記1つ以上のポリマーが、ポリジエン、加硫ポリジエン、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリピロリドン、セルロースアセテートブチレート、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項20に記載の艶消し剤。」と記載されているのを、独立形式に改め、 『複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のポリマーのコーティングであり、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記1つ以上のポリマーが、ポリジエン、加硫ポリジエン、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリピロリドン、セルロースアセテートブチレート、又はこれらの任意の組み合わせを含む、艶消し剤。』と訂正する(請求項21の記載を引用する請求項22、23、44~57も同様に訂正する)。 (11)訂正事項11 請求項32に「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせと接触させる」と記載されているのを、『1つ以上のワックスと接触させる』と訂正する(請求項32の記載を引用する請求項33~35、38、44~57も同様に訂正する)。 (12)訂正事項12 請求項33に「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせを溶媒に溶解させて」と記載されているのを、『1つ以上のワックスを溶媒に溶解させて』と訂正する(請求項33の記載を引用する請求項38、44~57も同様に訂正する)。 (13)訂正事項13 請求項34に「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせを融解させて」と記載されているのを、『1つ以上のワックスを融解させて』と訂正する(請求項34の記載を引用する請求項38、44~57も同様に訂正する)。 (14)訂正事項14 請求項35に「(a)(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせ」と記載されているのを、『(a)1つ以上のワックス』と訂正する(請求項35の記載を引用する請求項38、44~57も同様に訂正する)。 (15)訂正事項15 請求項36に「硫黄元素、加硫促進剤、又はこれらの両方を前記1つ以上のポリマーに添加することを更に含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。」と記載されているのを、請求項32を引用するものについて、独立形式に改め、 『複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤を調製する方法であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のポリマーのコーティングであり、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記方法は、 1.2cc/gm以下の総細孔体積を有する複合シリカ粒子を形成するために、少なくとも0.1cc/gm以上の総細孔体積を有する多孔質シリカ粒子を、1つ以上のポリマーと接触させることを含み、 前記接触工程中に、硫黄元素、加硫促進剤、又はこれらの両方を前記1つ以上のポリマーに添加することを更に含む、 方法。』と訂正する(請求項36の記載を引用する請求項37、38、44~57も同様に訂正する)。 (16)訂正事項16 請求項39に「500マイクロメートル(μm)未満の中央粒径を有する複合シリカ粒子を形成することと、 前記複合シリカ粒子を高温で熱処理時間にわたって熱処理することと、 前記熱処理された複合シリカ粒子を冷却することと、 100μm未満の最終中央粒径が得られるように、前記熱処理された複合シリカ粒子を粉砕することと、を更に含む、請求項38に記載の方法。 方法。」と記載されているのを、独立形式に改め、 『複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤を製造する方法であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記方法が、 1.2cc/gm以下の総細孔体積を有する複合シリカ粒子を形成するために、少なくとも0.1cc/gm以上の総細孔体積を有する多孔質シリカ粒子を、(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせと接触させることを含み、そして 500マイクロメートル(μm)未満の中央粒径を有する複合シリカ粒子を形成することと、 前記複合シリカ粒子を高温で熱処理時間にわたって熱処理することと、 前記熱処理された複合シリカ粒子を冷却することと、 100μm未満の最終中央粒径が得られるように、前記熱処理された複合シリカ粒子を粉砕することと、を更に含み、ここで中央粒径は前記複合シリカ粒子が水中又は有機溶媒で懸濁液にされる場合に動的光散乱法により測定される、 方法。』と訂正する(請求項39の記載を引用する請求項40~57も同様に訂正する)。 (17)訂正事項17 請求項44に「請求項1~31のいずれか一項に記載の艶消し剤」と記載されているのを、『請求項1~5、7、8、10~15、17~19、21~31のいずれか一項に記載の艶消し剤』と訂正する(請求項44の記載を引用する請求項45~57も同様に訂正する)。 3 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1により特許請求の範囲の請求項1において、「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組合せのコーティングであり」の記載から択一的記載の要素を削除して、『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』と訂正され、そして『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記多孔質シリカ粒子の細孔内に前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、』の記載が追加される。訂正事項1は、『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』との訂正により、コーティングを1つ以上のワックスのコーティングに限定し、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、』の記載の追加により、多孔質シリカ粒子を限定し、『前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、』の記載の追加により、ワックスの含量を特定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 請求項1に係る発明において、『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』との訂正事項は、訂正前請求項1の「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組合せのコーティングであり」との記載の範囲内の事項であり、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含』むことは訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項9に記載されている事項である。『前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含』むことは、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項6に「前記複合シリカ粒子が、(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つを、前記複合粒子の総重量に基づいて最大で75重量パーセント(重量%)含む、請求項1に記載の艶消し剤。」と記載され、訂正前の請求項6を引用する訂正前の請求項7に「前記複合シリカ粒子が、(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つを、前記複合粒子の総重量に基づいて1.0重量%~70.0重量%含む、請求項6に記載の艶消し剤。」と記載され、そして訂正前の請求項7を引用する訂正前の請求項8に「前記複合シリカ粒子が、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内に(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて2.0重量%~50.0重量%含む、請求項7に記載の艶消し剤。」と記載されていること、ならびに明細書段落0102の表3において、シリカ複合体1、8および9の「複合体中のワックス含有量」がいずれも「20%」であることにより支持されている。よって訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項6を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項6を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 前記アに記載したとおり、訂正事項2は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項6に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3は、請求項7に「前記複合シリカ粒子が、(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つを、前記複合粒子の総重量に基づいて1.0重量%~70.0重量%含む、請求項6に記載の艶消し剤。」と記載されているのを独立項形式に書き下し、さらに訂正前請求項6で引用する訂正前請求項1の「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」の記載を『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』と訂正して限定し、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み』の記載を加えて多孔質シリカを限定し、そして訂正前請求項6の「前記複合シリカ粒子が、(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのうちの1つを、前記複合粒子の総重量に基づいて1.0重量%~70.0重量%含む」の記載を『前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含み』と訂正して、ワックスの含量を特定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」および同項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項7に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 請求項7において、『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』との訂正事項は、訂正前請求項6が引用する訂正前請求項1の「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組合せのコーティングであり」との記載の範囲内の事項であり、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含』むことは訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項9や明細書段落0035に記載される事項である。また『前記複合シリカ粒子が、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内に前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含』むことのうち下限量について、明細書段落0102の表3において、シリカ複合体2、3の「複合体中のワックス含有量」がいずれも「30%」であることにより支持されている。よって訂正事項3は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4は、請求項8に「(i)前記1つ以上のワックス、(ii)前記1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせ」と記載されているのを『前記1つ以上のワックス』に限定し、さらに『前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて40重量%~50.0重量%含む』と訂正して、ワックスの下限量を限定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項8に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 『前記複合シリカ粒子が、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内に前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて40重量%~50.0重量%含』むことは、明細書段落0102の表3において、シリカ複合体4、5の「複合体中のワックス含有量」がいずれも「40%」であることにより支持されている。よって訂正事項4は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項8に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的 訂正事項5は、請求項9を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アに記載したとおり、訂正事項5は、請求項9を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 前記アに記載したとおり、訂正事項5は、請求項9を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項9に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的 訂正事項6は、請求項12に「前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する、請求項9に記載の艶消し剤。」と記載されているのを独立項形式に書き下し、さらに訂正前請求項9で引用する訂正前請求項1の「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」の記載を『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』と限定し、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み』の記載を追加して多孔質シリカ粒子を限定し、そして『前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み』の記載を追加してワックスの含量を特定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」および同項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項12に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』との訂正事項は訂正前請求項9が引用する訂正前請求項1に記載されている事項の範囲内であり、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み』との訂正事項は、訂正前請求項9及び明細書0035に記載されている事項であり、『前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含』むことは、明細書段落0034の「最終複合シリカ粒子中の1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせの量は、複合粒子を調製するために使用される多孔質シリカの出発多孔度に応じて異なる。典型的には、(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせは、複合粒子の総重量に基づいて最大で約75.0重量%の成分(i)、(ii)又は(iii)を有する複合粒子を得るのに十分な量で存在する。いくつかの例示的な実施形態では、複合粒子は、当該複合粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~約70.0重量%(又は0.1重量%きざみで1.0重量%超かつ70.0重量%以下の任意の値、例えば約3.1重量%、又は0.1重量%きざみで1.0~70.0重量%の任意の値の範囲、例えば約10.3~約37.8重量%)の範囲の量の成分(i)、(ii)、又は(iii)を含む。いくつかの例示的な実施形態では、複合粒子は、当該複合粒子の総重量に基づいて、0.1重量%きざみで約2.0~約50.0重量%の任意の値の範囲、例えば約2.3~約47.8重量%)の範囲の量の成分(i)、(ii)、又は(iii)を含む。他の実施形態では、複合粒子は、約5.0重量%~約67重量%以下(又は0.1重量%きざみで5.0重量%超かつ67.0重量%以下の任意の値、例えば約5.1重量%、又は0.1重量%きざみで5.0~67.0重量%の任意の値の範囲、例えば約10.3~約37.8重量%)の範囲の量の成分(i)、(ii)、又は(iii)を含む。」との記載、ならびにコーティングの下限量については明細書段落0102の表3において、シリカ複合体1、8および9の「複合体中のワックス含有量」がいずれも「20%」であることにより支持されている。よって訂正事項6は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項9に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的 訂正事項7は、請求項16を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アに記載したとおり、訂正事項7は、請求項16を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 前記アに記載したとおり、訂正事項7は、請求項16を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項16に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的 訂正事項8は、請求項17に「前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項16に記載の艶消し剤。」と記載されているのを独立項形式に書き下し、さらに請求項16が引用する訂正前請求項1の「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」の記載を『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』と限定し、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み』の記載を追加して多孔質シリカ粒子を限定し、そして『前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み』と訂正して、含量を特定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」および同項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項17に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり』との訂正事項は訂正前請求項16が引用する訂正前請求項1に記載されている事項の範囲内であり、『前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み』との訂正事項は、訂正前請求項9及び明細書0035に記載されている事項であり、『前記複合シリカ粒子が、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内に前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含』むことは、明細書段落0034の「最終複合シリカ粒子中の1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせの量は、複合粒子を調製するために使用される多孔質シリカの出発多孔度に応じて異なる。典型的には、(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせは、複合粒子の総重量に基づいて最大で約75.0重量%の成分(i)、(ii)又は(iii)を有する複合粒子を得るのに十分な量で存在する。いくつかの例示的な実施形態では、複合粒子は、当該複合粒子の総重量に基づいて、1.0重量%~約70.0重量%(又は0.1重量%きざみで1.0重量%超かつ70.0重量%以下の任意の値、例えば約3.1重量%、又は0.1重量%きざみで1.0~70.0重量%の任意の値の範囲、例えば約10.3~約37.8重量%)の範囲の量の成分(i)、(ii)、又は(iii)を含む。いくつかの例示的な実施形態では、複合粒子は、当該複合粒子の総重量に基づいて、0.1重量%きざみで約2.0~約50.0重量%の任意の値の範囲、例えば約2.3~約47.8重量%)の範囲の量の成分(i)、(ii)、又は(iii)を含む。他の実施形態では、複合粒子は、約5.0重量%~約67重量%以下(又は0.1重量%きざみで5.0重量%超かつ67.0重量%以下の任意の値、例えば約5.1重量%、又は0.1重量%きざみで5.0~67.0重量%の任意の値の範囲、例えば約10.3~約37.8重量%)の範囲の量の成分(i)、(ii)、又は(iii)を含む。」との記載、ならびにコーティングの下限量については明細書段落0102の表3において、シリカ複合体1、8及び9の「複合体中のワックス含有量」がいずれも「20%」であることにより支持されている。よって訂正事項8は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項17に係る訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的 訂正事項9は、請求項20を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アに記載したとおり、訂正事項9は、請求項20を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 前記アに記載したとおり、訂正事項9は、請求項20を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項20に係る訂正事項9に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的 訂正事項10は、請求項21に「前記1つ以上のポリマーが、ポリジエン、加硫ポリジエン、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリピロリドン、セルロースアセテートブチレート、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項20に記載の艶消し剤。」と記載されているのを独立項形式に書き下し、さらに請求項20が引用する訂正前請求項1の「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」を『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のポリマーのコーティングであり』と訂正してコーティングを限定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」および同項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項21に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 『前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のポリマーのコーティングであり』との訂正事項は訂正前請求項20で引用する訂正前請求項1に記載された事項の範囲内である。よって訂正事項10は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項21に係る訂正事項10に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (11)訂正事項11 ア 訂正の目的 訂正事項11は、請求項32において「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせと接触させることを含む」の記載を『1つ以上のワックスと接触させることを含む』と限定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項32に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項11の『1つ以上のワックスと接触させることを含む』ことは、訂正前請求項32の「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせと接触させることを含む」の記載の範囲内である。よって訂正事項11は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項32に係る訂正事項11に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (12)訂正事項12 ア 訂正の目的 訂正事項12は、請求項33において「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせを溶媒に溶解させて」の記載を『1つ以上のワックスを溶媒に溶解させて』と限定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項33に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項12の『1つ以上のワックスを溶媒に溶解させ』ることは、訂正前の「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせを溶媒に溶解させ」の記載の範囲内である。よって訂正事項12は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項33に係る訂正事項12に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (13)訂正事項13 ア 訂正の目的 訂正事項13は、請求項34において「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせを融解させて」の記載を『1つ以上のワックスを融解させて』と限定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項34に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項13の『1つ以上のワックスを融解させて』は、訂正前請求項34の「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせを融解させて」の記載の範囲内である。よって訂正事項13は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項34に係る訂正事項13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (14)訂正事項14 ア 訂正の目的 訂正事項14は、請求項35において「(a)(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせ」を『(a)1つ以上のワックス』と限定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項35に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項14は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項14の『(a)1つ以上のワックス』は、訂正前の「(a)(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせ」の記載の範囲内の事項である。よって訂正事項14は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項35に係る訂正事項14に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (15)訂正事項15 ア 訂正の目的 訂正事項15は、請求項36の「硫黄元素、加硫促進剤、又はこれらの両方を前記1つ以上のポリマーに添加することを更に含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。」の記載のうち、請求項32を引用する部分を独立項形式に書き下し、さらに請求項32が引用する訂正前請求項1の『(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」を『1つ以上のポリマーのコーティングであり』と限定し、「硫黄元素、加硫促進剤、又はこれらの両方を前記1つ以上のポリマーに添加すること」が『前記接触工程中に』実施されることを特定するものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第1号に挙げる「特許請求の範囲の減縮」および同項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項36に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項15は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項15は、請求項32~35のいずれか一項を引用する請求項36のうち、請求項1を引用する請求項32を引用する部分を独立項形式に書き下すものであり、さらに『1つ以上のポリマーのコーティングであり』との訂正事項は、訂正前請求項1の「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり」との記載の範囲内である。また、「硫黄元素、加硫促進剤、又はこれらの両方を前記1つ以上のポリマーに添加すること」が『前記接触工程中に』実施されることは、明細書段落0055の「いくつかの例示的な実施形態では、架橋は加硫工程を含む。加硫工程を含む方法においては、硫黄元素、加硫促進剤又はその両方が、接触工程中に1つ以上のポリマーに添加され得る。」との記載により支持されている。よって訂正事項15は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項36に係る訂正事項15に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (16)訂正事項16 ア 訂正の目的 訂正事項16は、請求項39に「500マイクロメートル(μm)未満の中央粒径を有する複合シリカ粒子を形成することと、 前記複合シリカ粒子を高温で熱処理時間にわたって熱処理することと、 前記熱処理された複合シリカ粒子を冷却することと、 100μm未満の最終中央粒径が得られるように、前記熱処理された複合シリカ粒子を粉砕することと、を更に含む、請求項38に記載の方法。」と記載されているのを独立項形式に書き下すものであるが、請求項39で引用する請求項38は請求項32~37のいずれか一項を引用している。このうち訂正事項16は、請求項38において請求項32を引用する部分を用いて請求項39を独立項形式に書き下すものである。よって特許法第120条の5条第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正前後で発明が解決しようとする「「水溶性」又は水性のコーティング組成物から得られるコーティングされたフィルムにおいて耐化学性の増大と合わせて良好な艶消し効率性を提供する、改善されたシリカ系艶消し剤を見出す」(明細書段落0017)という課題及びその解決手段は変更されておらず、請求項39に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。よって、訂正事項16は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 訂正事項16は、請求項39が引用する請求項38のうち請求項32を引用する部分を独立項形式に書き下すものである。なお、請求項の最後段の『ここで中央粒径は前記複合シリカ粒子が水中又は有機溶媒で懸濁液にされる場合に動的光散乱法により測定される』との訂正事項は請求項38に記載されている事項である。よって訂正事項16は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項39に係る訂正事項16に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (17)訂正事項17 ア 訂正の目的 訂正事項17は、請求項44に「請求項1~31のいずれか一項に記載の艶消し剤を含む、コーティング組成物。」と記載されているのを、『請求項1~5、7、8、10~15、17~19、21~31のいずれか一項に記載の艶消し剤を含む、コーティング組成物。』と訂正して、訂正により削除する請求項6、9、16、20との引用関係を解消するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記アに記載したとおり、訂正事項17は、訂正により削除する請求項6、9、16、20との引用関係を解消するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。 ウ 新規事項の有無 前記アに記載したとおり、訂正事項17は、訂正により削除する請求項6、9、16、20との引用関係を解消するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。 エ 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1~57について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項39に係る訂正事項17に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (18)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~57において、請求項2~57は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであって、前記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~57は一群の請求項である。 したがって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~57についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。 (19)別の訂正単位とする求め 特許権者は、令和7年1月6日の訂正請求書において、次のとおり、訂正後の請求項6、9、16、20について、前記(18)に示した一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 4 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、前記(19)のとおり、特許権者は、訂正後の請求項6、9、16、20について、前記(18)に示した一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めているところ、訂正後の請求項6、9、16、20について、請求項ごとに訂正することを認める。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7、8、10~15、17~19、21~57〕、6、9、16、20について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~57に係る発明は、令和7年3月7日の手続補正書により補正された令和7年1月6日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~57に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。 「【請求項1】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供する、艶消し剤。 【請求項2】 フィルムを形成するために平坦、平滑、かつ非浸透性の黒色チャート上で乾燥させた際に、乾燥させたフィルムにおいて10.0~15.0の60°光沢度値を達成するのに十分な量で、水性コーティング組成物に組み込まれたとき、前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.0単位未満の水損傷24時間ΔL*を示すことを可能にする、請求項1に記載の艶消し剤。 【請求項3】 フィルムを形成するために平坦、平滑、かつ非浸透性の黒色チャート上で乾燥させた際に、乾燥させたフィルムにおいて10~15の60°光沢度値を達成するのに十分な量で、水性コーティング組成物に組み込まれたとき、前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに13.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*を示すことを可能にする、請求項1に記載の艶消し剤。 【請求項4】 フィルムを形成するために平坦、平滑、かつ非浸透性の黒色チャート上で乾燥させた際に、乾燥させたフィルムにおいて10~15の60°光沢度値を達成するのに十分な量で水性コーティング組成物に組み込まれたとき、前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに15.0単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*を示すことを可能にする、請求項3に記載の艶消し剤。 【請求項5】 フィルムを形成するために平坦、平滑、かつ非浸透性の黒色チャート上で乾燥させた際に、乾燥させたクリアコートフィルムにおいて10.0~15.0の60°光沢度値を達成するのに十分な量で水性コーティング組成物に組み込まれたとき、フィルム組成物が、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに7.0単位未満のフィルム透明度ΔL*を示すことを可能にする、請求項1に記載の艶消し剤。 【請求項6】(削除) 【請求項7】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供する、艶消し剤。 【請求項8】 前記複合シリカ粒子が、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内に前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて40重量%~50.0重量%含む、請求項7に記載の艶消し剤。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 前記多孔質シリカ粒子が、BJH法によって求めたときに0.10cc/gm~1.2cc/gmの総細孔体積を有する、請求項1の艶消し剤。 【請求項11】 前記多孔質シリカ粒子が、BJH法によって求めたときに0.10cc/gm~1.0cc/gmの総細孔体積を有する、請求項10の艶消し剤。 【請求項12】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する、艶消し剤。 【請求項13】 前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも20m2/gかつ最大で900m2/g以下のBETシリカ粒子表面積を有する、請求項12に記載の艶消し剤。 【請求項14】 前記複合シリカ粒子が、BJH法によって求めたときに0.01cc/gm~1.2cc/gmの総細孔体積を有する、請求項13の艶消し剤。 【請求項15】 前記複合シリカ粒子が、BJH法によって求めたときに0.01cc/gm~1.2cc/gmの総細孔体積を有する、請求項1の艶消し剤。 【請求項16】(削除) 【請求項17】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む、艶消し剤。 【請求項18】 前記1つ以上のワックスが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、又はこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の艶消し剤。 【請求項19】 前記1つ以上のワックスが、少なくとも2000の平均分子量を有するポリエチレンワックスを含む、請求項18に記載の艶消し剤。 【請求項20】(削除) 【請求項21】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のポリマーのコーティングであり、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記1つ以上のポリマーが、ポリジエン、加硫ポリジエン、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリピロリドン、セルロースアセテートブチレート、又はこれらの任意の組み合わせを含む、艶消し剤。 【請求項22】 前記1つ以上のポリマーが、ポリジエン、加硫ポリジエン、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項21に記載の艶消し剤。 【請求項23】 前記1つ以上のポリマーが、加硫ポリジエンを含む、請求項22に記載の艶消し剤。 【請求項24】 前記複合シリカ粒子の外側表面領域の過半部分がシリカを含む、請求項1に記載の艶消し剤。 【請求項25】 コーティング組成物に組み込まれ、平坦、平滑、かつ非浸透性の黒色チャート上に塗布されたとき、前記コーティング組成物が、携帯型Micro-TRI光沢度計を使用して測定したときに10.0~15.0の60°光沢度値を有するクリアコートフィルムを形成することを可能にする、請求項1に記載の艶消し剤。 【請求項26】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.0単位未満の水損傷24時間ΔL*を示す、請求項25に記載の艶消し剤。 【請求項27】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに13.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*を示す、請求項25に記載の艶消し剤。 【請求項28】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに15.0単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*を示す、請求項25に記載の艶消し剤。 【請求項29】 コーティング組成物に組み込まれ、基材上に塗布されたとき、前記コーティング組成物が、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに7.0単位未満のフィルム透明度ΔL*を示すことを可能にする、請求項26~28のいずれか一項に記載の艶消し剤。 【請求項30】 前記フィルムが、(i)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.0単位未満の水損傷24時間ΔL*、(ii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに13.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*、(iii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに15.0単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*、及び(iv)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに7.0単位未満のフィルム透明度ΔL*を示す、請求項25に記載の艶消し剤。 【請求項31】 前記フィルムが、(i)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに4.8単位未満の水損傷24時間ΔL*、(ii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに11.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*、(iii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに11.5単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*、及び(iv)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.5単位未満のフィルム透明度ΔL*を示す、請求項25に記載の艶消し剤。 【請求項32】 請求項1に記載の艶消し剤を調製する方法であって、前記方法が、 1.2cc/gm以下の総細孔体積を有する複合シリカ粒子を形成するために、少なくとも0.1cc/gm以上の総細孔体積を有する多孔質シリカ粒子を、1つ以上のワックスと接触させることを含む、方法。 【請求項33】 前記接触工程が、 1つ以上のワックスを溶媒に溶解させて、懸濁液又は分散液を形成することと、 前記多孔質シリカ粒子を前記懸濁液又は分散液に組み込むことと、 前記懸濁液又は分散液から前記溶媒を除去して、前記複合シリカ粒子を形成することと、を含む、請求項32に記載の方法。 【請求項34】 前記接触工程が、 1つ以上のワックスを融解させて、液体コーティングを形成することと、 前記多孔質シリカ粒子を前記液体コーティングに組み込んで、前記複合シリカ粒子を形成することと、を含む、請求項32に記載の方法。 【請求項35】 前記接触工程が、 (a)1つ以上のワックスと(b)前記多孔質シリカ粒子とを加熱しながら同時に混合又は粉砕して、前記複合シリカ粒子を形成することを含む、請求項32に記載の方法。 【請求項36】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤を調製する方法であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のポリマーのコーティングであり、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記方法は、 1.2cc/gm以下の総細孔体積を有する複合シリカ粒子を形成するために、少なくとも0.1cc/gm以上の総細孔体積を有する多孔質シリカ粒子を、1つ以上のポリマーと接触させることを含み、そして 前記接触工程中に、硫黄元素、加硫促進剤、又はこれらの両方を前記1つ以上のポリマーに添加することを更に含む、 方法。 【請求項37】 前記加硫促進剤が、硫黄元素及び/又はブチルジメートを含む、請求項36に記載の方法。 【請求項38】 前記複合シリカ粒子の中央粒径を減少させて、100マイクロメートル(μm)未満の最終中央粒径を有する複合シリカ粒子を得ることを更に含み、ここで中央粒径は前記複合シリカ粒子が水中又は有機溶媒で懸濁液にされる場合に動的光散乱法により測定される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。 【請求項39】 複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤を製造する方法であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせのコーティングであり、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供し、 前記方法が、 1.2cc/gm以下の総細孔体積を有する複合シリカ粒子を形成するために、少なくとも0.1cc/gm以上の総細孔体積を有する多孔質シリカ粒子を、(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせと接触させることを含み、そして 500マイクロメートル(μm)未満の中央粒径を有する複合シリカ粒子を形成することと、 前記複合シリカ粒子を高温で熱処理時間にわたって熱処理することと、 前記熱処理された複合シリカ粒子を冷却することと、 100μm未満の最終中央粒径が得られるように、前記熱処理された複合シリカ粒子を粉砕することと、を更に含み、ここで中央粒径は前記複合シリカ粒子が水中又は有機溶媒で懸濁液にされる場合に動的光散乱法により測定される、 方法。 【請求項40】 前記複合シリカ粒子が、90℃~140℃の範囲である高温で熱処理され、熱処理時間が1.0時間(hr)~4.0hrの範囲である、請求項39に記載の方法。 【請求項41】 1つ以上のワックスが存在し、前記高温が100℃~130℃の範囲であり、前記熱処理時間が1.0hr~1.5hrの範囲である、請求項40に記載の方法。 【請求項42】 1つ以上のポリマーが存在し、前記高温が90℃~100℃の範囲であり、前記熱処理時間が2.5hr~3.5hrの範囲である、請求項40に記載の方法。 【請求項43】 前記減少工程の結果、45μm未満の最終中央粒径を有するコーティングされた粒子が得られる、請求項40に記載の方法。 【請求項44】 請求項1~5、7、8、10~15、17~19、21~31のいずれか一項に記載の艶消し剤を含む、コーティング組成物。 【請求項45】 水性組成物を含む、請求項44に記載のコーティング組成物。 【請求項46】 前記コーティング組成物の総重量に基づいて、最大で50重量%の前記艶消し剤を含む、請求項45に記載のコーティング組成物。 【請求項47】 平坦、平滑、かつ非浸透性の黒色チャート上に塗布されたとき、携帯型Micro-TRI光沢度計を使用して測定したときに10.0~15.0の60°光沢度値を有するフィルムを形成する、請求項45に記載のコーティング組成物。 【請求項48】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.0単位未満の水損傷24時間ΔL*を示す、請求項47に記載のコーティング組成物。 【請求項49】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに13.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*を示す、請求項47に記載のコーティング組成物。 【請求項50】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに15.0単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*を示す、請求項47に記載のコーティング組成物。 【請求項51】 前記フィルムが、携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに7.0単位未満のフィルム透明度ΔL*を示す、請求項47に記載のコーティング組成物。 【請求項52】 前記フィルムが、(i)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.0単位未満の水損傷24時間ΔL*、(ii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに13.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*、(iii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに15.0単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*、及び(iv)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.5単位未満のフィルム透明度ΔL*を示す、請求項47に記載のコーティング組成物。 【請求項53】 前記フィルムが、(i)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに4.8単位未満の水損傷24時間ΔL*、(ii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに11.0単位未満の50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*、(iii)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに11.5単位未満の50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*、及び(iv)携帯型Spectro-Guide45/0比色計を使用して測定したときに6.0単位未満のフィルム透明度ΔL*を示す、請求項47に記載のコーティング組成物。 【請求項54】 請求項44~53のいずれか一項に記載のコーティング組成物でコーティングされた基材。 【請求項55】 木材基材を含む、請求項54に記載の基材。 【請求項56】 木材基材に塗布される水性組成物の、EN 12720/DIN 68861-1に従って測定した耐化学性を改善する方法であって、 請求項1に記載の艶消し剤を前記コーティング組成物に組み込むことと、 前記コーティング組成物を木材基材の少なくとも1つの表面上に塗布してコーティングを形成することと、 前記コーティングを乾燥させて、前記木材基材の少なくとも1つの表面上にフィルムを形成することと、を含む方法。 【請求項57】 前記フィルムがクリアコートフィルムである、請求項56に記載の方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 令和6年3月13日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由1~2である。 理由1(新規性)本件特許の請求項1~10、12~16、24~32、44、54、55に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~20、24~35、38、44~57に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和6年10月1日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由2である。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~5、10~20、24~35、38、44~57に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 記 甲第1号証:Grace社が製造販売するシリカ製品の製品カタログ、2010年6月(印刷日) 甲第2号証:特公昭49-4550号公報 甲第3号証:特表2011-500986号公報 甲第4号証:特開平11-60231号公報 甲第5号証:特開平9-110413号公報 甲第6号証:特開2010-409号公報 甲第7号証:特開平11-305448号公報 甲第8号証:特開平9-25440号公報 甲第9号証:JIS Z 8831-2:2010「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性-第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」 甲第11号証:特開2021-52146号公報 甲第14号証:特表2010-521539号公報 第5 前記第4における理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 1 甲号証について 甲第1号証~甲第9号証及び甲第11号証は前記第4 2の理由1及び2のものと同じ。 2 甲号証の記載について (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。) なお、摘記事項の後ろに申立人による仮訳を掲載した。 1a「 [図:0001426796000001.jpg] 」(第4ページ左欄の図) [図:0001426796000002.jpg] 1b「 [図:0001426796000003.jpg] 」(第4ページ左欄第1段落) 艶消し剤 艶消し剤としてのシリカゲルの使用は、1947年に米国ボルチモアのDavison Chemical社によって開拓された。 1c「 [図:0001426796000004.jpg] 」(第4ページ左欄第3段落) SYLOID(R)(当審注:「(R)」は、丸囲いのRである。以下、同じ。)は、世界中のコーティング業界で使用されている優れたシリカの艶消し剤である。それは、よく規定された、多孔質で高純度の合成アモルファスシリカゲル(Si02)である。 1d「 [図:0001426796000005.jpg] 」(第4ページ左欄第5段落) 今日、グレース デイヴィソンは、様々なコーティング産業分野の様々なアプリケーション性能要件に遮合する幅広い製品を提供することができる。SYLOID(R)艶消し剤の用途には、コイルコーティング、工業用木材コーティング、一般工業用コーティング、自動車用コーティング、印刷インキ、皮革用コーティング、装飾用コーティングなどがある。 1e「 [図:0001426796000006.jpg] 」(第4ページ左欄第6段落) SYLOID(R)艶消し剤は、シリカゲルを数ミクロンの正確に規定された粒子径に粉砕して製造される。 1f「 [図:0001426796000007.jpg] 」(第4ページ右欄第1段落) 有機処理されたSYLOID(R)艶消し剤は、未処理のグレードに比べ、より優れた耐凝結性を持つため、クリアワニスヘの使用に推奨される。 1g「 [図:0001426796000008.jpg] 」(第4ページ右欄第2段落) 揮発性有機化学物質の排出量を削減するための法改正に対応するため、グレースデイヴィソンは、紫外線硬化型コーティングおよび水性コーティングヘの配合に適した、特殊なSYLOID(R)艶消し剤を開発した。 1h「 [図:0001426796000009.jpg] 」(第6ページ) [図:0001426796000010.jpg] 1i「 [図:0001426796000011.jpg] 」(第7ページ) [図:0001426796000012.jpg] (2)甲第2号証(以下、「甲2」という。) 2a「(k)サイロイド72(Davison Chemical社製の表面積175m3/gおよび平均粒度4ミクロン(180%が6.5ミクロン以下)を有する合成無定形シリカの商標名)」(第7ページ下から第2行から第8ページ第1行) 2b「例 14 共重合したアクリル酸4%を含有し融解指数6dg/minを有するエチレン-アクリル酸共重合体を0.1%サイロイド161(Davison Chemical社製の表面積175m3/gおよび平均粒度7ミクロンを有する合成無定形シリカの商標名)と共に使用したこと以外は例1を反復した。」(第8ページ左欄第10~16行) (3)甲第3号証(以下、「甲3」という。) 3a「【0098】 Syloid 72:Grace Davidson(ドイツ)から入手可能の非晶質シ リカゲルであり、全細孔容積が約1.1ml/g、平均粒径5.0μm、表面積(BET)345~370m2/gであり、アニオン表面電荷を有する。」 (4)甲第4号証(以下、「甲4」という。) 4a「【請求項1】 濃密な非晶質シリカのコアと嵩高な非晶質シリカのシェルとの二重構造を有し、体積基準のメジアン径が1乃至5μmの範囲にあり且つ粒径0.5μm以下の微粒子の含有率が10容積%以下であることを特徴とする非晶質シリカ粒子。 ・・・ 【請求項6】 ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液とをpH2乃至10の条件下で中和してゲル法非晶質シリカを製造する工程と、生成するゲル法非晶質シリカを湿式粉砕する工程と、湿式粉砕されたゲル法非晶質シリカ粒子の存在下に、ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸水溶液とをpH5乃至9の条件下で中和して沈降法非晶質シリカ粒子をゲル法非晶質シリカ粒子の表面に析出させることを特徴とする二重構造を有する非晶質シリカ粒子の製法。 ・・・ 【請求項10】 請求項1乃至5の何れかに記載の非晶質シリカ粒子から成る塗料用艶消し剤。」 4b「【0022】(5)これに対して、本発明に従い、濃密な非晶質シリカをコアとし、嵩高な非晶質シリカをシェルとした二重粒子構造をとる場合には、粉体の状態では勿論のこと、塗料或いは樹脂中に配合した状態でも粒径が一定しており、微粒子の発生がない:艶消し作用やアンチブロッキング作用に優れているとともに、磨耗傾向が少なく、耐傷付き性乃至耐擦傷性にも優れている:この非晶質シリカ粒子を配合した塗料或いは樹脂組成物は透明性に優れており、深みのある外観を与える:等の作用効果が得られるのである(実施例1参照)。」 4c「【0049】また、この粒状非晶質シリカは、金属石鹸、樹脂酸石鹸、各種樹脂乃至ワックス類等のコーティング等を所望により施すことができる。特に、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス等オレフィン系樹脂ワックスや、動植物系ワックス、鉱物系ワックス等のワックスによる処理が、艶消し効果増大や耐傷性向上に有効である。このコーティング処理は、水洗上がりの非晶質シリカのケーキにワックスの水性エマルジョンを添加し混合することにより、容易に行うことができる。非晶質シリカ粒子100重量部当たり1乃至20重量部のワックスで表面処理されていることが好ましい。 【0050】本発明においては、前述した多孔質シリカを単独で艶消し剤として使用するほか、他の充填剤や顔料と組合せて塗料の配合に使用しうる。組合せで使用する無機成分としては、アルミナ、アタパルガイド、カオリン、カーボンブラック、グラファイト、微粉ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイソウ土、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、スレート粉、セリサイト、フリント、炭酸カルシウム、タルク、長石粉、二硫化モリブデン、バライト、ひる石、ホワイティング、マイカ、ろう石クレイ、石こう、炭化ケイ素、ジルコン、ガラスビーズ、シラスバルーン、アスベスト、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール、スラグウール、ボロンウスイカ、ステンレススチール繊維、チタン白、亜鉛華、ベンガラ、鉄黒、黄色酸化鉄、ゼオライト、ハイドロタルサイト、リチウム、アルミニウム、カーボネート、チタンエロー、酸化クロムグリーン、群青、紺青等が挙げられる。 【0051】本発明の非晶質シリカ粒子は、それ自体公知の塗料中に配合して、艶消し塗料組成物とすることができる。 ・・・ 【0053】また、用いる塗料は、その用い方によって、溶剤型塗料、水性塗料、紫外線硬化型塗料、粉体塗料等の任意のものであってよいが、本発明は溶剤型塗料、水性塗料に特に適している。」 4d「【0069】 【実施例】本発明は以下の例で詳細に説明する。なお本発明に用いる艶消剤等の物性及び評価方法は以下の通りである。 【0070】(1)粒度 コールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製TA-II型)法により、アパーチャーチューブ50μmを用いて測定した。 【0071】(2)比表面積、細孔容積 カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法により測定した。 【0072】(3)艶消し効果試験法 塗膜形成剤として焼付メラミン塗料(関西ペイント(株)製アミラック#1400)を用いて、この塗料100重量部に艶消剤試料を5部添加し、ディスパー分散機を用いて2500rpmで5分間分散させた後、バーコーター#14を用いてミラーコート紙に塗布し、室温で20分放置し、次いで140℃で20分間焼き付けをし塗布板を調製した。次いで村上色彩技術研究所製のデジタル光沢度計GM-3Dを用いて60゜グロス(光沢率(%))を測定した。 ・・・ 【0075】(実施例1) (第一工程)500Lのステンレス製容器に3号珪酸ソーダ(SiO2 濃度22%)を86Kgと水253Kgを加えた後、攪拌しながら35℃まで昇温した。昇温後、硫酸をpHが2.5になるまで一方注加し、ゲル法非晶質シリカゾルを得た。注加終了後、5時間の熟成を行った。熟成終了後、マイコロイダーにて湿式粉砕を行った。 (第二工程)上記第一工程で得たゲル法非晶質シリカゾル60Kg(SiO2 分3Kg)を150Lのステンレス製容器に秤取り攪拌下85℃まで昇温する。昇温後、シリカ濃度13%に希釈した3号珪酸ソーダを13.6Kgを0.35L/minで注加し、7%硫酸を同時に反応pHを7.5になるように調製しながら30分間の同時注加を行った。同時注加終了後30分の熟成を行った。熟成終了後、硫酸を注加しpHを3.5に調製した。pH調製後、濾過洗浄を行いケーキを得た。その後、この濾過ケーキを乾燥して粉砕、分級を行い二重構造を有する非晶質シリカ粒子を得た。得られた粉末の物性値及び評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0080】(実施例6)実施例1の第二工程での濾過洗浄後のケーキに、低分子量ポリプロピレンワックスエマルジョン(ユーメックスEM-100:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリプロピレンワックス純分で、10重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリカを得た。得られた粉末の物性値及び評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0082】(実施例8)実施例7の第二工程での濾過洗浄後のケーキに、ポリエチレンワックスエマルジョン(Hi-Wax 110P:三井化学社製)を、シリカ100重量部に対してポリプロピレンワックス純分で、15重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリカを得た。得られた粉末の物性値及び評価結果を表1に示す。 【0083】(実施例9)実施例1の第一工程における昇温する温度を25℃とした以外は実施例1と同様にして行った。得られた粉末の物性値及び評価結果を表1に示す。 【0084】(実施例10)実施例9の第二工程での濾過洗浄後のケーキに、ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリプロピレンワックス純分で、5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリカを得た。得られた粉末の物性値及び評価結果を表1に示す。 ・・・ 【0089】 【表1】 実 施 例 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平均粒径(μm) 2.5 2.5 2.5 2.5 2.5 2.5 2.0 2.0 3.0 3.0 比表面積(m2/g) 180 200 175 210 198 170 210 195 170 160 細孔容積(ml/g) 0.6 0.7 0.6 0.8 0.7 0.6 0.7 0.7 0.6 0.6 艶消し性(%) 15 15 16 16 15 15 16 15 15 15 沈降性 △ △ △ △ △ ○ ○ ○ △ △ 耐擦傷性 5回 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 15回 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 25回 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2」 (5)甲第5号証(以下、「甲5」という。) 5a「【0050】 【実施例】本発明を次の例で説明する。本発明によるマクロポア増進剤(以下SPと記す)を含む耐水破砕性と高マクロポアを有する球状シリカゲルの製法とその物性について次の例で説明する。尚本発明においての各種物性の測定は次の方法によった。 (1)比表面積 カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800 を使用しBET法により測定した。 (2)細孔容積-1 (1)と同じく Sorptomatic Series 1800 BJH法により測定した。 (3)細孔容積-2 150℃、3時間乾燥した試料0.5gを水銀圧入法ポロシメーター(マイ クロメリチクス社製オートポア9220)を用いて半径7.5~7500n mのポアサイズに於ける細孔容積を求めた。 (4)充填密度 500mlメスシリンダーに試料200gを投入し試料容積が変化しなくなるまで振とうさせて容量を読みとる。同試料を150℃で2時間乾燥させて水分を測定し、無水換算のg/mlを求めた。 (5)耐圧強度 アイコーエンジニアリング(社)製卓上荷重測定器に50kgf容量ロードセルを装着して測定を行った。又、荷重スピードは5mm/minで、試料が破壊した時の荷重がデジタル表示され、それを読みとるものである。 (6)粘度 20℃にてB型粘度計(東京計器製造所製)を用いて測定した。 (7)耐水破砕性 150℃で乾燥した試料50粒を150mlの常温の水に投入し、破砕するものの有無で耐水性を判断した。数粒でも割れが認められるものは不良、全く割れの認められないものを良とした。」 (6)甲第6号証(以下、「甲6」という。) 6a「【0031】 本明細書にいう「積算細孔体積」の値は、BET法およびDH法を用いることによって得られた値を実質的に意味している。BET法とは、多分子層吸着モデルに基づいた比表面積の測定法であって、Langmuirの単分子層吸着理論を多分子層の吸着に拡張したものである。かかるBET法は、粒子に気体(例えば窒素ガス)を吸着させた際の吸着量を測定し、これにより得られる吸着等温線に以下で示されるBET式を適用して単分子層吸着量Vmを求め、この値と吸着ガス分子の分子断面積とから粒子の比表面積を算出する手法である。このBET法による比表面積の測定の詳細は、JIS Z8830:2001で規定されている。一方、DH法とは、Dollimore-Heal法の略で、細孔を円筒形と仮定して吸着ガスの相対圧と吸着量の増分から細孔サイズの体積頻度分布を求める解析法である。 [BET式] [図:0001426796000013.jpg] 」 (7)甲第7号証(以下、「甲7」という。) 7a「【0045】このアルミニウム支持体に下記の物理現像核液を塗布し、その後乾燥した。 <物理現像核液>物理現像核として硫化パラジウムを3mg/m2と、親水性バインダーとしてポリビニルピロリドンを1mg/m2含有する物理現像核液Aを作成した。該物理現像核液Aに化8(重量平均分子量約3万)あるいは化13(重量平均分子量約5万)のカチオン性ポリマーを5mg/m2になるように添加して、物理現像核液B(化8を含有)、C(化13を含有)を作成した。また前記物理現像核液A中にポリエチレン系ワックスとして酸化タイプのパーマリンKUE-8(平均分子量2000、三洋化成工業株式会社製)を20mg/m2になるように添加して物理現像核液Dを作成した。」 (8)甲第8号証(以下、「甲8」という。) 8a「【0019】実施例1 市販の塗料艶消し剤用沈殿法シリカである、ニップシールE200A(日本シリカ工業社製)1kgをヘンシェルミキサーに仕込んだ。分子量90000の多鎖型非イオン界面活性剤であるディスコールK-1151(第一工業製薬社製)10gを40mlのエチルアルコールに溶解した溶液を、前記シリカ全体に均一になるように、攪拌混合下、噴霧添加した。更に10分間の混合処理の後、取り出してアルコールが完全に飛散するまで乾燥を行ない、本発明の表面処理シリカを得た。得られた表面処理シリカについて、前記した塗料調製及び沈降性試験を行い、物性を評価した。結果を表1に示す。 【0020】実施例2 ニップシールE-200A(同上)5kgを水に懸濁、スラリー化(約10~15%)し、このスラリーに実施例1と同じ処理剤25gの水懸濁物を添加し、1時間攪拌混合した。次いで、噴霧乾燥し、粉砕分級して、本発明の表面処理シリカを得た。得られた表面処理シリカについて、実施例1と同様の評価をした。結果を表1に示す。」 (9)甲第9号証(以下、「甲9」という。) 9a「 [図:0001426796000014.jpg] 」(第20ページ第11~18行) 9b「 [図:0001426796000015.jpg] 」(第22ページ) (10)甲11号証(以下、「甲11」という。) 11a「【0022】 <本実施形態に係るインダクタの大粒金属磁性粉及び粒金属磁性粉> 図2に示す本実施形態に係るインダクタ1では、平均粒径が25~80μmの大粒金属磁性粉20、及び平均粒径が1~4μmの小粒金属磁性粉30が用いられている。大粒金属磁性粉20及び小粒金属磁性粉30は、ほぼ正規分布の粒度分布を有しており、平均粒径は、磁性粉の累積50%値であるD50とほぼ一致する。 更に、大粒金属磁性粉20の平均粒径と小粒金属磁性粉30の平均粒径との比が、6.25~80の範囲内にある。また、大粒金属磁性粉20と小粒金属磁性粉30との混合比が、体積比で90:10~60:40の範囲内にある。これにより、大粒金属磁性粉20及び小粒金属磁性粉30において、バランスの取れた適切な粒径及び混合比を得ることができるので、金属磁性粉の充填率を高めることができる。」 (12)甲第14号証(以下、「甲14」という。) 14a「【請求項1】 無機酸化物粒子;及び 無機酸化物粒子上にコートされているワックス; を含み、ワックスが約50%以上の結晶化度を有する、艶消しコーティングを製造するのに有用な艶消し剤。 ・・・ 【請求項9】 該無機酸化物が、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、イオン酸化物、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の艶消し剤。」 14b「【0007】 コーティング産業において、改良された耐摩耗性及び化学安定性も与えながら許容できる艶消し特性を与える無機酸化物艶消し剤に関する必要性が未だ存在する。」 14c「【0023】 本発明のワックス含有艶消し剤は、シリカを約2~12ミクロンの所望の粒径に粉砕すると同時にワックスを溶融する従来の共粉砕法によって製造することができる。かかるプロセスは、Hosokawa Micron Limitedから入手できるAlpine(登録商標)ミル、及びNetzsch, Inc.から入手できるCondux(登録商標)万能ミルのような流体エネルギーミル又は微粒化器内で最も有効に行われる。運転温度はワックスの要求に従って変化させることができる。流体エネルギーミルに供給する空気の入口温度は、少なくとも、粉砕装置の滞留時間プロファイル内でのワックスの溶融を確保するのに十分に高いものでなければならない。ワックスは、最終生成物が15~30重量%のワックス含量を有するようにミルに加える。」 14d「【0030】 更に、本発明の艶消し剤は、他の従来の艶消し剤と同等の艶消し効率、及び従来の艶消し剤を凌ぐ向上した化学耐性を与える。」 3 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1の記載から、艶消し剤(Matting Agent)「SYLOID(R) 161」は、多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子を含み、「SYLOID(R) 161」は、そのようなシリカ粒子を「10%wax」で表面処理(Surface Treatment)して得たものであり、平均粒径(APS:Average Particle Size)は6.2μmで、表面処理前(prior to surface treatment)の細孔体積(Pore Volume)は1.2mL/gであり、「SYLOID(R) 161」は、特殊用途 (Special Applications)向けの艶消し剤であり、「SYLOID(R) 161」は、水性コーティングヘの配合に適した艶消し剤である(摘記1c、1e、1g、1h、1i参照)。 甲2に記載の「Davison Chemical 社」は、本件特許権者が発行する製品カタログ甲1においても触れられており(摘記1b参照)、「サイロイド」は「SYLOID」の日本語表記である。このような事実からみて、「Davison Chemical社」が提供する商品名「サイロイド161」のシリカは、甲1に記載の艶消し剤「SYLOID(R) 161」と同一製品であり、甲1に記載の艶消し剤「SYLOID(R) 161」の表面積は、甲1に記載の「サイロイド161」と同じ「175」m2/gであることが分かる(摘記2b参照、「m3/g」は「m2/g」の誤記と認める。)。 甲2には、表面積がBET法によるものか否かについて明示されていないが、甲3に記載の「Syloid 72」のBET法による表面積「345~370m2/g」が、甲2に記載の「サイロイド72」の表面積「370m2/g」とよく一致することから(摘記2a参照)、甲2における表面積はBET法によるものと認められる。 そうすると、甲1には「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子を10%waxで表面処理して得た、水性コーティングヘの配合に適した艶消し剤であって、表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり、平均粒径が6.2μmであり、BET法による表面積が175m2/gである艶消し剤。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)甲4に記載された発明 甲4の表1に記載の「平均粒径(μm)」は同請求項1に記載より「体積基準のメジアン径」の意味である(摘記4a参照)。 甲4の実施例10では、実施例9の第二工程での濾過洗浄後のケーキに、ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリプロピレンワックス純分で、5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリカを得ている(摘記4d参照)。ここで、「ポリプロピレンワックス純分」との記載は、ポリエチレンワックス純分の誤記である。 そうすると、甲4には実施例10の非晶質シリカ粒子から得られた艶消剤試料として「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製、平均分子量2000)を、体積基準のメジアン径が3.0μm、カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用して、測定した比表面積が170m2/g、細孔容積が0.6mL/g及び60゜グロス光沢率が15%であるシリカ100重量部に対して、ポリエチレンワックス純分で5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質のゲル法によるシリカ粒子であって、体積基準のメジアン径が3.0μm、カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用して、測定した比表面積が160m2/g、BJH法による細孔容積が0.6mL/g及び60゜グロス光沢率が15%であり、水性塗料に特に適しているシリカ粒子から成る塗料用艶消し剤。」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる(摘記4c、4d参照)。 4 対比・判断 (1)甲1発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」は本件特許発明1の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当し、甲1発明の「10%waxで表面処理」は、本件特許発明1の「コーティング」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当するから、甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子を10%waxで表面処理して得た」及び「艶消し剤」は、本件特許発明1の「複合シリカ粒子」及び「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり」は本件特許発明1の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり、平均粒径が6.2μmであり、BET法による表面積が175m2/gである」は、総細孔体積の測定は通常BJH法に基づくものであり(摘記9a、9b参照)、表面処理により細孔体積は小さくなり平均粒径と表面積も変わるものの大きく変わるものではないこと、また、「正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」の粒径は通常正規分布に近い粒度分布となることから、粒径が正規分布を有する場合には平均粒径と中央粒径(50体積パーセントの粒子のサイズ、本件特許明細書の段落0042)がほぼ一致することから(摘記11a参照)、本件特許発明1の「前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」を充足する。 甲1発明の「水性コーティングヘの配合に適した艶消し剤」は本件特許発明1の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有する、 艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点1-2> 本件特許発明1では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むのに対し、甲1発明では10%waxである点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-2>について検討する。 <相違点1-2>について <相違点1-2>は実質的な相違点である。 甲14に記載されるように、コーティング産業において、改良された耐摩耗性及び化学安定性も与えながら許容できる艶消し特性を与える無機酸化物艶消し剤に関する必要性が存在するところ(摘記14b参照)、甲14にはそのような艶消し剤としてシリカのような無機酸化物粒子上にワックス含量を15~30重量%としてワックスがコートされているものが記載されている(摘記14a、14b参照)。 ここで、本件特許発明1は(i)水性コーティング系で使用するのに好適であり、(ii)良好な艶消し効率性と合わせて、改善された耐化学性及び/又は改善されたフィルム透明度を有するクリアコートフィルムを提供する艶消し剤の提供を課題とするものであり(【0016】)、そのために本件特許発明1の艶消し剤に含まれる複合シリカ粒子はワックスのコーティングを施されており、全ての実施例においてワックスの含有量は複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%以上となっており、それにより、複合シリカ粒子が許容される耐化学性を提供できるという効果を奏するものであり、本件特許発明1の構成から当業者が予測できた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 そして、甲1には甲1発明の艶消し剤が10%waxであること以外にワックスや本件特許発明1の前記課題について記載も示唆もなく、また、甲14に記載のような必要性についての記載も示唆も以上、甲1発明の艶消し剤において、甲14の記載に基づいて、10%waxを20重量%以上とする動機付けがあるとはいえない。 また、他の証拠をみても、甲1発明の艶消し剤において10%waxを20重量%以上とする動機付けとなる記載はない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、令和6年8月14日提出の意見書において、甲14に基づき、甲1発明において、ワックスの含有量を、「10%」の量から、最終生成物である複合シリカ粒子に基づいて20~30重量%程度の量に変更することは、当業者が容易になし得たことであり、訂正発明1の全ての範囲で良好な艶消し効果と組み合わされた、優秀な耐化学性とフィルムの透明性を有するクリアコートフィルムが得られるという効果が得られることは本件特許明細書には記載されておらず、請求項1規定の所望の耐化学性は、小さい総細孔体積(1.2cc/g以下の総細孔体積)を有するシリカ粒子がワックスで表面処理された結果もたらされる所謂インヘレントな特性であり、1.2cc/g以下の総細孔体積を有するシリカ粒子がワックスで表面処理された艶消し剤である甲1発明も当然に当該耐化学性を有すると認められると主張する。 しかし、前記(イ)で検討したとおり、甲14に基づき、甲1発明において、ワックスの含有量を、「10%」の量から、最終生成物である複合シリカ粒子に基づいて20~30重量%程度の量に変更する動機付けがあるとはいえず、効果についても前記で検討したとおり、本件特許発明1の構成から当業者が予測できた範囲の効果を超える顕著なものであるといえるから、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点1-1>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~5、10、11、15、24~35、38、56、57 本件特許発明2~5、10、11、15、24~35、38、56、57は、本件特許発明1又は本件特許発明1を引用する発明を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-2>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~5、10、11、15、24~35、38、56、57は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明7 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明7と甲1発明を対比する。 甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」は本件特許発明7の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当し、甲1発明の「10%waxで表面処理」は、本件特許発明7の「コーティング」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当するから、甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子を10%waxで表面処理して得た」及び「艶消し剤」は、本件特許発明7の「複合シリカ粒子」及び「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり」は本件特許発明7の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり、平均粒径が6.2μmであり、BET法による表面積が175m2/gである」は、総細孔体積の測定は通常BJH法に基づくものであり(摘記9a、9b参照)、表面処理により細孔体積は小さくなり平均粒径と表面積も変わるものの大きく変わるものではないこと、また、「正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」の粒径は通常正規分布に近い粒度分布となることから、粒径が正規分布を有する場合には平均粒径と中央粒径(50体積パーセントの粒子のサイズ、本件特許明細書の段落0042)がほぼ一致することから(摘記11a参照)、本件特許発明7の「前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」を充足する。 甲1発明の「水性コーティングヘの配合に適した艶消し剤」は本件特許発明7の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明7と甲1発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有する、 艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-3> 本件特許発明7では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点1-4> 本件特許発明7では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含むのに対し、甲1発明では10%waxである点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-4>について検討する。 <相違点1-4>について <相違点1-4>は実質的な相違点であり、前記ア(イ)<相違点1-2>についてで検討したのと同様の理由により、甲1発明の艶消し剤において、甲14の記載に基づいて、10%waxを30重量%以上とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、前記ア(ウ)のとおり主張するが、前記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明7は、<相違点1-3>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 エ 本件特許発明8 本件特許発明8は、本件特許発明7を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明7と甲1発明との<相違点1-4>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明8は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 オ 本件特許発明12 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明12と甲1発明を対比する。 甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」は本件特許発明12の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当し、甲1発明の「10%waxで表面処理」は、本件特許発明12の「コーティング」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当するから、甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子を10%waxで表面処理して得た」及び「艶消し剤」は、本件特許発明12の「複合シリカ粒子」及び「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり」は本件特許発明12の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の」及び「BET法による表面積が175m2/gである」は本件特許発明12の「前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり、平均粒径が6.2μmであり、BET法による表面積が175m2/gである」は、総細孔体積の測定は通常BJH法に基づくものであり(摘記9a、9b参照)、表面処理により細孔体積は小さくなり平均粒径と表面積も変わるものの大きく変わるものではないこと、また、「正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」の粒径は通常正規分布に近い粒度分布となることから、粒径が正規分布を有する場合には平均粒径と中央粒径(50体積パーセントの粒子のサイズ、本件特許明細書の段落0042)がほぼ一致することから(摘記11a参照)、本件特許発明12の「前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」を充足する。 甲1発明の「水性コーティングヘの配合に適した艶消し剤」は本件特許発明12の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明12と甲1発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積をし、 前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する、 艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-5> 本件特許発明12では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点1-6> 本件特許発明12では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むのに対し、甲1発明では10%waxである点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-6>について検討する。 <相違点1-6>について <相違点1-6>は実質的な相違点であり、<相違点1-6>は前記ア(ア)の<相違点1-2>と同じであり、前記ア(イ)<相違点1-2>についてで検討したのと同様の理由により、甲1発明の艶消し剤において、甲14の記載に基づいて、10%waxを20重量%以上とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、前記ア(ウ)のとおり主張するが、前記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明12は、<相違点1-5>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 カ 本件特許発明13、14 本件特許発明13は、本件特許発明12を引用し、本件特許発明14は、本件特許発明12を引用する本件特許発明13を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明12と甲1発明との<相違点1-6>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明13、14は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 キ 本件特許発明17 (ア)甲1発明との対比 本件特許発明17と甲1発明を対比する。 甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」は本件特許発明17の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当し、甲1発明の「10%waxで表面処理」は、本件特許発明17の「コーティング」、「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」及び「前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む」に相当するから、甲1発明の「多孔質の合成アモルファスシリカゲルを正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子を10%waxで表面処理して得た」及び「艶消し剤」は、本件特許発明17の「複合シリカ粒子」及び「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり」は本件特許発明17の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の」及び「BET法による表面積が175m2/gである」は本件特許発明17の「前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する」に相当する。 甲1発明の「表面処理前の細孔体積が1.2mL/gであり、平均粒径が6.2μmであり、BET法による表面積が175m2/gである」は、総細孔体積の測定は通常BJH法に基づくものであり(摘記9a、9b参照)、表面処理により細孔体積は小さくなり平均粒径と表面積も変わるものの大きく変わるものではないこと、また、「正確に規定された粒子径に粉砕して製造したシリカ粒子」の粒径は通常正規分布に近い粒度分布となることから、粒径が正規分布を有する場合には平均粒径と中央粒径(50体積パーセントの粒子のサイズ、本件特許明細書の段落0042)がほぼ一致することから(摘記11a参照)、本件特許発明17の「前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」を充足する。 甲1発明の「水性コーティングヘの配合に適した艶消し剤」は本件特許発明17の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明17と甲1発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径、(c)25~210m2/gmのBET表面積をし、 前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有し、 前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む、艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-7> 本件特許発明17では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点1-8> 本件特許発明17では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むのに対し、甲1発明では10%waxである点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点1-8>について検討する。 <相違点1-8>について <相違点1-8>は実質的な相違点であり、<相違点1-8>は前記ア(ア)の<相違点1-2>と同じであり、前記ア(イ)<相違点1-2>についてで検討したのと同様の理由により、甲1発明の艶消し剤において、甲14の記載に基づいて、10%waxを20重量%以上とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、前記ア(ウ)のとおり主張するが、前記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明17は、<相違点1-7>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ク 本件特許発明18、19 本件特許発明18は、本件特許発明17を引用し、本件特許発明19は、本件特許発明17を引用する本件特許発明18を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明17と甲1発明との<相違点1-8>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明18、19は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ケ 本件特許発明44~55 本件特許発明44は、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21又はそれらを引用する発明を引用し、本件特許発明45~55は、本件特許発明44又は本件特許発明44を引用する発明を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-1>、前記本件特許発明7と甲1発明との<相違点1-3>、前記本件特許発明12と甲1発明との<相違点1-5>、前記本件特許発明17と甲1発明との<相違点1-7>、前記本件特許発明21と甲1発明との<相違点1-9>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明44~55は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)甲4発明を主たる引用発明とする場合 ア本件特許発明1 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)」は、非晶質シリカ粒子を表面処理しているから、本件特許発明1の「コーティング」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「ゲル法非晶質シリカゾルの表面に沈降法非晶質シリカ粒子を析出させた二重構造を有する非晶質シリカ粒子」は、表1からみて、細孔を有するものであるから、本件特許発明1の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当する。ここで、本件特許発明1の「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」が「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル粒子、沈殿シリカ粒子、又はヒュームドシリカ粒子を含み」とも解されるが、そうであったとしても、本件特許明細書【0038】に記載のとおり、多孔質シリカ粒子は、非晶質又は結晶質などを含む異なる構造を有し得るから、前記判断したとおりである。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリエチレンワックス純分で、5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリ力粒子」は、本件特許発明1の「複合シリカ粒子」、「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用して、測定した比表面積が160m2/g、BJH法による細孔容積が0.6mL/g」は、甲6の記載のとおり、BET法とは比表面積を算出する方法であり(摘記6a参照)、甲5の記載から、甲4で使用された測定装置「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800」はBET法により比表面積を測定し及びBJH法により細孔容積を測定する装置であり(摘記5a参照)、甲5及び甲6の記載を踏まえると、甲4の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法により測定した」(摘記4d参照)との記載は、比表面積の算出方法を特に説明したものと理解でき、甲4において細孔容積を測定する手法はBJH法であると理解できるから、本件特許発明1の「(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」に相当する。 甲4発明の「細孔容積が0.6mL/g」及び「であるシリカ」は、本件特許発明1の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲4発明の「水性塗料に特に適しているシリカ粒子から成る塗料用艶消し剤」は、本件特許発明1の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲4発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有する、 艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-1> 複合シリカ粒子が、本件特許発明1では(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径であるのに対し、甲4発明では体積基準のメジアン径が3.0μmである点。 <相違点4-2> 本件特許発明1では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点。 <相違点4-3> 本件特許発明1では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むのに対し、甲4発明ではシリカ100重量部に対して、ポリエチレンワックスがポリエチレンワックス純分で5重量部である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点4-3>について 事案に鑑み、まず、<相違点4-3>について検討する。 確かに、甲4には非晶質シリカ粒子100重量部当たり1乃至20重量部のワックスで表面処理されていることが好ましいと記載されているから(摘記4c参照)、表面処理された非晶質シリカ粒子の総重量に対しては20質量未満となるが、ワックスで表面処理することの技術的意義や表面処理された非晶質シリカ粒子の総重量に対しては20重量部やそれ以上とした場合に甲4の課題を解決できないことは記載されていない以上、表面処理するワックスの量を非晶質シリカ粒子100重量部当たり20重量部を超えるものとする阻害要因があるとまではいえない。 そして、甲14に記載されるように、コーティング産業において、改良された耐摩耗性及び化学安定性も与えながら許容できる艶消し特性を与える無機酸化物艶消し剤に関する必要性が存在するところ(摘記14b参照)、甲14にはそのような艶消し剤としてシリカのような無機酸化物粒子上にワックス含量を15~30重量%としてワックスがコートされているものが記載されている(摘記14a、14c参照)。 しかし、本件特許明細書の【0111】に記載からみて、本件特許発明1は、ワックスが複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%以上であれば、複合シリカ粒子が許容される耐化学性を提供できるという効果を奏するものであり、そのような効果は甲4及び甲14の記載から、当業者が予測できるものであるとはいえない。 また、他の証拠をみても、甲4発明の艶消し剤において、ワックスを複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むものとするとする動機付けとなる記載はない。 そうすると、甲4発明の艶消し剤において、ワックスを複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、令和7年4月16日提出の意見書において以下のとおり主張する。 甲4発明の艶消し剤においても、改良された耐摩耗性及び化学安定性も与えながら許容できる艶消し特性を得るために、非晶質シリカ粒子を表面処理するポリエチレンワックスを、最終生成物である複合シリカ粒子に基づいて15~30重量%程度に増量して、「複合シリカ粒子に基づいて20重量%~50.0質量%」を充足する艶消し剤を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 特許権者の主張する「より高いワックス濃度で粒子細孔の収縮量が減少」する効果は、訂正発明1の全ての範囲で奏されるものとは理解できないから、採用するべきでない。 シリカ粒子をワックスでコーティングすることで、耐化学性が増大することは、甲14の記載(例えば段落0030)に基づいて当業者が容易に予測し得たことであり、何ら格別なものではない。 前記主張について検討する。 「複合シリカ粒子に基づいて20重量%~50.0質量%」を充足する艶消し剤を得ることは、前記(イ)で検討したとおり、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 また、「より高いワックス濃度で粒子細孔の収縮量が減少」する効果についても、本件特許発明の実施例の記載からみて、ワックスのコーティングされた、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含む多孔質シリカ粒子からなる本件特許発明1の複合シリカ粒子がそのような効果を奏することは理解できる。 そして、耐化学性が増大することは、甲14の記載(例えば段落0030)に基づいて当業者が容易に予測し得たことであるとしても、ワックスが複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%以上であれば、複合シリカ粒子が許容される耐化学性を提供できることまでは当業者が容易に予測し得たことであるとはいえない。 そうすると、申立人の前記主張はいずれも採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点4-1>及び<相違点4-2>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明2~5、10、11、15、24~35、38、56、57 本件特許発明2~5、10、11、15、24~35、38、56、57は、本件特許発明1又は本件特許発明1を引用する発明を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲4発明との<相違点4-3>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2~5、10、11、15、24~35、38、56、57は、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明7 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明7と甲4発明を対比する。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)」は、非晶質シリカ粒子を表面処理しているから、本件特許発明7の「コーティング」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「ゲル法非晶質シリカゾルの表面に沈降法非晶質シリカ粒子を析出させた二重構造を有する非晶質シリカ粒子」は、表1からみて、細孔を有するものであるから、本件特許発明7の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当する。ここで、本件特許発明7の「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」が「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル粒子、沈殿シリカ粒子、又はヒュームドシリカ粒子を含み」とも解されるが、そうであったとしても、本件特許明細書【0038】に記載のとおり、多孔質シリカ粒子は、非晶質又は結晶質などを含む異なる構造を有し得るから、前記判断したとおりである。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリエチレンワックス純分で、5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリ力粒子」は、本件特許発明7の「複合シリカ粒子」、「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用して、測定した比表面積が160m2/g、BJH法による細孔容積が0.6mL/g」は、甲6の記載のとおり、BET法とは比表面積を算出する方法であり(摘記6a参照)、甲5の記載から、甲4で使用された測定装置「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800」はBET法により比表面積を測定し及びBJH法により細孔容積を測定する装置であり(摘記5a参照)、甲5及び甲6の記載を踏まえると、甲4の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法により測定した」(摘記4d参照)との記載は、比表面積の算出方法を特に説明したものと理解でき、甲4において細孔容積を測定する手法はBJH法であると理解できるから、本件特許発明7の「(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」に相当する。 甲4発明の「細孔容積が0.6mL/g」及び「であるシリカ」は、本件特許発明7の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲4発明の「水性塗料に特に適しているシリカ粒子から成る塗料用艶消し剤」は、本件特許発明7の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明7と甲4発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有する、 艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-4> 複合シリカ粒子が、本件特許発明7では(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径であるのに対し、甲4発明では体積基準のメジアン径が3.0μmである点。 <相違点4-5> 本件特許発明7では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点。 <相違点4-6> 本件特許発明7では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含むのに対し、甲4発明ではシリカ100重量部に対して、ポリエチレンワックスがポリエチレンワックス純分で5重量部である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点4-6>について 事案に鑑み、まず、<相違点4-6>について検討する。 前記ア(イ)<相違点4-3>についてで検討したのと同様の理由により、甲4発明の艶消し剤において、「ワックスを複合シリカ粒子の総重量に基づいて30重量%~50.0重量%含む」を充足するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 特許権者は前記ア(ウ)と同様の主張をするが、前記ア(ウ)で検討したとおり、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明7は、<相違点4-4>及び<相違点4-5>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 エ 本件特許発明8 本件特許発明8は、本件特許発明7を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明7と甲4発明との<相違点4-6>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明8は、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 オ 本件特許発明12 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明12と甲4発明を対比する。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)」は、非晶質シリカ粒子を表面処理しているから、本件特許発明12の「コーティング」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「ゲル法非晶質シリカゾルの表面に沈降法非晶質シリカ粒子を析出させた二重構造を有する非晶質シリカ粒子」は、表1からみて、細孔を有するものであるから、本件特許発明12の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当する。ここで、本件特許発明12の「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」が「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル粒子、沈殿シリカ粒子、又はヒュームドシリカ粒子を含み」とも解されるが、そうであったとしても、本件特許明細書【0038】に記載のとおり、多孔質シリカ粒子は、非晶質又は結晶質などを含む異なる構造を有し得るから、前記判断したとおりである。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリエチレンワックス純分で、5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリ力粒子」は、本件特許発明12の「複合シリカ粒子」、「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用して、測定した比表面積が160m2/g、BJH法による細孔容積が0.6mL/g」は、甲6の記載のとおり、BET法とは比表面積を算出する方法であり(摘記6a参照)、甲5の記載から、甲4で使用された測定装置「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800」はBET法により比表面積を測定し及びBJH法により細孔容積を測定する装置であり(摘記5a参照)、甲5及び甲6の記載を踏まえると、甲4の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法により測定した」(摘記4d参照)との記載は、比表面積の算出方法を特に説明したものと理解でき、甲4において細孔容積を測定する手法はBJH法であると理解できるから、本件特許発明12の「(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」に相当する。 甲4発明の「BET法による比表面積が170m2/g」及び「であるシリカ」は、本件特許発明12の「前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する」に相当する。 甲4発明の「細孔容積が0.6mL/g」及び「であるシリカ」は、本件特許発明12の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲4発明の「水性塗料に特に適しているシリカ粒子から成る塗料用艶消し剤」は、本件特許発明12の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明12と甲4発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 前記多孔質シリカ粒子が、少なくとも10m2/gかつ最大で2000m2/g、又はそれ以上のBETシリカ粒子表面積を有する、艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-7> 複合シリカ粒子が、本件特許発明12では(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径であるのに対し、甲4発明では体積基準のメジアン径が3.0μmである点。 <相違点4-8> 本件特許発明12では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点。 <相違点4-9> 本件特許発明12では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むのに対し、甲4発明ではシリカ100重量部に対して、ポリエチレンワックスがポリエチレンワックス純分で5重量部である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点4-9>について 事案に鑑み、まず、<相違点4-9>について検討する。 前記ア(イ)<相違点4-3>についてで検討したのと同様の理由により、甲4発明の艶消し剤において、「ワックスを複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含む」を充足するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 特許権者は前記ア(ウ)と同様の主張をするが、前記ア(ウ)で検討したとおり、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明12は、<相違点4-7>及び<相違点4-8>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 カ 本件特許発明13、14 本件特許発明13は、本件特許発明12を引用し、本件特許発明14は、本件特許発明12を引用する本件特許発明13を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明12と甲4発明との<相違点4-9>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明13、14は、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 キ 本件特許発明17 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明17と甲4発明を対比する。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)」は、非晶質シリカ粒子を表面処理しているから、本件特許発明17の「コーティング」、「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスコーティングであり」及び「前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む」に相当する。 甲4発明の「ゲル法非晶質シリカゾルの表面に沈降法非晶質シリカ粒子を析出させた二重構造を有する非晶質シリカ粒子」は、表1からみて、細孔を有するものであるから、本件特許発明17の「多孔質シリカ粒子」及び「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」に相当する。ここで、本件特許発明17の「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み」が「前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル粒子、沈殿シリカ粒子、又はヒュームドシリカ粒子を含み」とも解されるが、そうであったとしても、本件特許明細書【0038】に記載のとおり、多孔質シリカ粒子は、非晶質又は結晶質などを含む異なる構造を有し得るから、前記判断したとおりである。 甲4発明の「ポリエチレンワックスエマルジョン(パーマリン:三洋化成社製)を、シリカ100重量部に対してポリエチレンワックス純分で、5重量部となるように添加し、表面処理された非晶質シリ力粒子」は、本件特許発明17の「複合シリカ粒子」、「前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み」及び「前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり」に相当する。 甲4発明の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用して、測定した比表面積が160m2/g、BJH法による細孔容積が0.6mL/g」は、甲6の記載のとおり、BET法とは比表面積を算出する方法であり(摘記6a参照)、甲5の記載から、甲4で使用された測定装置「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800」はBET法により比表面積を測定し及びBJH法により細孔容積を測定する装置であり(摘記5a参照)、甲5及び甲6の記載を踏まえると、甲4の「カルロエルバ社製 Sorptomatic Series 1800を使用し、BET法により測定した」(摘記4d参照)との記載は、比表面積の算出方法を特に説明したものと理解でき、甲4において細孔容積を測定する手法はBJH法であると理解できるから、本件特許発明17の「(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し」に相当する。 甲4発明の「細孔容積が0.6mL/g」及び「であるシリカ」は、本件特許発明17の「前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し」に相当する。 甲4発明の「水性塗料に特に適しているシリカ粒子から成る塗料用艶消し剤」は、本件特許発明17の「水性コーティング組成物用の艶消し剤」に相当する。 そうすると、本件特許発明17と甲4発明は、「複合シリカ粒子を含む水性コーティング組成物用の艶消し剤であって、 前記複合シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子とコーティングとを含み、前記多孔質シリカ粒子はコーティングされる前に0.10cc/gm以上の総細孔体積を有し、前記コーティングは、少なくとも部分的に前記多孔質シリカ粒子の細孔内にある1つ以上のワックスのコーティングであり、 前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含み、 前記複合シリカ粒子は、(a)Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって求めたときに1.2cc/gm以下の総細孔体積、(c)25~210m2/gmのBET表面積を有し、 前記1つ以上のワックスが、炭化水素ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、植物ワックス、動物ワックス、又はこれらの任意の組み合わせを含む、艶消し剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-10> 複合シリカ粒子が、本件特許発明17では(b)3.0μmより大きく50.0μm以下の中央粒径であるのに対し、甲4発明では体積基準のメジアン径が3.0μmである点。 <相違点4-11> 本件特許発明17では、有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供するのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点。 <相違点4-12> 本件特許発明17では、前記複合シリカ粒子が、前記1つ以上のワックスを、前記複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含むのに対し、甲4発明ではシリカ100重量部に対して、ポリエチレンワックスがポリエチレンワックス純分で5重量部である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点4-12>について 事案に鑑み、まず、<相違点4-12>について検討する。 前記ア(イ)<相違点4-3>についてで検討したのと同様の理由により、甲4発明の艶消し剤において、「ワックスを複合シリカ粒子の総重量に基づいて20重量%~50.0重量%含む」を充足するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (ウ)申立人の主張及び当審の判断について 特許権者は前記ア(ウ)と同様の主張をするが、前記ア(ウ)で検討したとおり、申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明17は、<相違点4-10>及び<相違点4-11>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ク 本件特許発明18、19 本件特許発明18は、本件特許発明17を引用し、本件特許発明19は、本件特許発明17を引用する本件特許発明18を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明17と甲4発明との<相違点4-12>と同じ相違点を有するものであるから、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ケ 本件特許発明44~55 本件特許発明44は、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21又はそれらを引用する発明を引用し、本件特許発明45~55は、本件特許発明44又は本件特許発明44を引用する発明を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲4発明との<相違点4-3>、前記本件特許発明7と甲4発明との<相違点4-6>、前記本件特許発明12と甲4発明との<相違点4-9>、前記本件特許発明17と甲4発明との<相違点4-12>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明44~55は、甲4に記載された発明、並びに、甲1~甲3、甲5~甲8及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は後記理由1~3である。 理由1(新規事項)特許請求の範囲の請求項1~57に記載した事項が、下記の点で、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、同法第184条の18による読み替え後の同法第113条第5号に該当する。 本件特許は、国際出願PCT/US2018/045096号の日本国への移行出願に係るものであり、本件特許に係る明細書、特許請求の範囲又は図面(「本件特許明細書等」という。)に記載した事項は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(「原文明細書等」といい、国際公開第2019/028312号に基づいて説明する。)に記載した事項の範囲内になければならない(特許法184条の18にて読み換えて準用する同法第113条第5号)。 本件特許権者は、令和4年9月1日付誤訳訂正書により、本件特許発明1において、「複合シリカ粒子」が、「(c)25~210m2/gmのBET表面積」を有すること、さらに、艶消し剤を含む水性コーティング組成物を基材上に塗布して形成したクリアコートフィルムの耐化学性の評価に際し、比較対象とするフィルム中に艶消し剤として含まれるシリカ粒子が「1.2cc/gmより高い総細孔体積」を有すること、を追加した。 しかしながら、これらの追加事項は、原文明細書等に記載した事項の範囲内にない事項であるから、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2~57は取り消されるべきである。 理由2(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~57に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 1 「総細孔体積」の定義 本件特許明細書において、用語「総細孔体積」は通常の意味と異なる意味を持つ旨の定義がなされ、この定義が意味する「総細孔体積」がどのような技術的意味を有するか、当該技術分野における常識や本件特許明細書において根拠として記載するドイツ規格を参照しても当業者には理解できないから、本件特許発明1は不明確である。 よって、本件特許発明1は明確でないから、取り消されるべきである。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2~57についても、用語「総細孔体積」が通常の意味と異なる意味を持つ事情は同じであり、同様の理由により取り消されるべきである。 2 用語「耐化学性」の意味 本件特許発明1は、「増大した耐化学性を提供する」との発明特定事項を有する。 本件特許明細書の実施例では、耐化学性として、50/50水/エタノール損傷1時間ΔL*及び50/50水/エタノール損傷4時間ΔL*の2種の耐性(段落0083)が評価されているが、本件特許発明1における「耐化学性」が、上記2種の耐性のうちいずれか1つを意味するのか或いはその両方を意味するのか、又はそれ以外の性質を意味するのか明確でない。 よって、本件特許発明1は、明確でないから、取り消されるべきである。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2~57についても、事情は同じであり、同様の理由により取り消されるべきである。 理由3(実施可能要件)本件特許の請求項1~57に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 1 「総細孔体積」の定義 「中央細孔体積」の導出方法が不明であるから、当業者は、本件特許明細書に記載の定義に従い、本件特許発明1に記載の「中央細孔体積」を有する多孔質シリカ粒子をどのように実現するのか理解できないから、(a)の総細孔体積を有するシリカ複合粒子を含む艶消し剤を製造し、使用することはできない。 よって、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、取り消されるべきである。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2~57についても、「中央細孔体積」をどのように実現するのか理解できない事情は同じであり、同様の理由により取り消されるべきである。 2 比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」と範囲で特定されている点 本件特許発明1は、「有効艶消し量で水性コーティング組成物に組み込まれ、前記水性コーティング組成物が基材上に塗布されてクリアコートフィルムを形成したとき、前記艶消し剤が、1.2cc/gmより高い総細孔体積を有するシリカ粒子を艶消し剤として含む水性コーティング組成物から形成されたフィルムと比較して、前記クリアコートフィルムにEN 12720/DIN 68861-1に従って測定した増大した耐化学性を提供する」との発明特定事項を有する。 しかしながら、シリカ粒子が有する総細孔体積につき「1.2cc/gmより高い」無限の範囲の比較対象フィルムを作製しかつ比較することは、技術常識に照らして不可能であるか、或いは、そのような無限の範囲の比較対象フィルムを作製しかつ比較するために、当業者は、期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要がある。 よって、本件特許発明1は、当業者が実施可能なものとはいえないから、取り消されるべきである。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2~57についても、比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」無限の範囲で特定される事情は同じであり、同様の理由により取り消されるべきである。 理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~57に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 1 比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」と範囲で特定されている点 本件特許発明の課題は、良好な艶消し効率性と合わせて、改善された耐化学性及び/又は改善されたフィルム透明度を有するクリアコートフィルムを得ることであり(段落0016~0017)、特に、請求項1の記載からして耐化学性に関しては、比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」あらゆる範囲において比較対象フィルムよりも改善することである。 しかしながら、本件特許明細書において具体的な耐化学性が示された比較対象に係る総細孔体積は、「1.2cc/gmより高い」範囲のうち、「1.9」cc/gmの1点のみであり(表2~4に記載の「シリカサンプル1」)、「1.9」cc/gmの点以外の範囲の総細孔体積を有する多孔質シリカ粒子を比較対象としての耐化学性の評価が行われていないから、上記課題が解決できることを確認できない。 よって、本件特許発明1は、当業者が発明の課題を解決できることを理解できる範囲内のものではないから、取り消されるべきである。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2~57についても、比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」あらゆる範囲で発明の課題が解決できることを確認できない事情は同じであり、同様の理由により取り消されるべきである。 2 実施例の内容に比して特許請求の範囲が過度に広い点 (1)コーティング材料の範囲が過度に広い点 本件特許発明の解決すべき課題は、本件特許発明を含むコーティング組成物を使用してフィルムを形成した場合、良好な艶消し効率性と合わせて、改善された耐化学性及び/又は改善されたフィルム透明度を有するクリアコートフィルムを得ることである(段落0016~0017)。 本件特許発明1は、シリカ粒子のコーティング材料につき、「(i)1つ以上のワックス、(ii)1つ以上のポリマー、又は(iii)(i)及び(ii)の任意の組み合わせ」と特定している。 しかしながら、本件特許発明の課題解決の観点から、コーティング材料として「ポリエチレンワックス」1種の性能が実証されたのみで、この結果から、「ポリエチレンワックス」以外のあらゆるワックスおよびポリマーにまで上記記載が当てはまると言える根拠が不明である。 結局、本件特許明細書の記載から認識できるのは、複合シリカ粒子が「ポリエチレンワックス」を含むとき、本件特許発明の課題を解決できたことのみであり、この結果を本件特許発明1の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、取り消されるべきである。 (2)シリカ粒子の範囲が過度に広い点 本件特許発明1において、シリカ粒子の種類は特定されていない。 これに対し、本件特許明細書では、課題を解決できることが示されているのはシリカ粒子が「シリカゲル」(本件特許明細書の表2から表6)である場合のみである。 シリカ粒子の種類としては、シリカゲルの他に、例えば沈降シリカ、ヒュームドシリカおよびコロイドシリカなどがあるが、これらが、合成条件の違いにより相互に異なる性質および構造を有することは、当該技術分野において広く知られている。 したがって、艶消し剤中のシリカ粒子の性質および構造が異なれば艶消し作用も異なってくるから、シリカゲル以外のシリカ粒子を使用して、シリカゲルを使用して得られた効果と同様の効果が得られるとは言えない。 よって、当業者は、シリカゲル以外のシリカ粒子を使用してシリカゲルの場合と同様に本件特許発明の課題を解決できることを理解できないから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであり、取り消されるべきである。 複合シリカ粒子が「ポリエチレンワックス」を含むこと及びシリカ粒子の種類が「シリカゲル」であることが特定されていない本件特許発明2~57についても、事情は同じであり、同様の理由により取り消されるべきである。 第7 前記第6の理由1(新規事項)について 1 複合シリカ粒子が「(c)25~210m2/gmのBET表面積」を有する事項について 前記第6 理由1 1のとおり、本件特許明細書における表4に相当する原文明細書等におけるTable 4には、シリカ複合体のBET表面積(BET Surface Area)が、シリカ複合体1の場合に「210」m2/gmであり、シリカ複合体2の場合に「150」m2/gmであり、シリカ複合体4の場合に「86」m2/gmであり、シリカ複合体5の場合に「67」m2/gmであり、シリカ複合体6の場合に「40」m2/gmであり、シリカ複合体7の場合に「25」m2/gmであり、シリカ複合体8の場合に「135」m2/gmであり、シリカ複合体9の場合に「163」m2/gmであったことが、記載されている以上、シリカ複合体のBET表面積(BET Surface Area)の下限が25m2/gmであり、上限が210m2/gmであることが読み取れるから、複合シリカ粒子が「(c)25~210m2/gmのBET表面積」を有する事項は、原文明細書等に記載した事項の範囲内にない事項ではないとはいえない。 2 耐化学性の評価に際し、比較対象となるフィルム中に艶消し剤として含まれるシリカ粒子が「1.2cc/gmより高い総細孔体積」を有する事項について 本件特許発明1は「1.2cc/gm以下の総細孔体積」と特定されているところ、本件特許発明1の範囲外の1.2cc/gmより高い総細孔体積のものを比較対象とするところ、通常、比較対象は本件特許発明1の範囲外のものであることは自明であるから、耐化学性の評価に際し、比較対象となるフィルム中に艶消し剤として含まれるシリカ粒子が「l.2cc/gmより高い総細孔体積」を有する事項は、原文明細書等に記載した事項の範囲内にない事項でないとはいえない。 第8 前記第6の理由2(明確性要件)について 1 「総細孔体積」の定義 「総細孔体積」は、複数の粒子については、それぞれの総細孔体積の分布の中央値である「中央細孔体積」と理解でき、「総細孔体積」がどのような技術的意味を有するか、当業者には理解できないとはいえないから、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57は明確である。 2 用語「耐化学性」の意味 本件特許発明1における「耐化学性」が前記第6 理由2 2の2種の耐性の両方を意味することは明らかであり、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57は明確である。 第9 前記第6の理由3(実施可能要件)について 1 「総細孔体積」の定義 前記第8 1で検討したとおり、「中央細孔体積」は総細孔体積の分布の中央値であると理解でき、明確であるから、当業者は、本件特許明細書に記載の定義に従い、本件特許発明1に記載の「中央細孔体積」を有する多孔質シリカ粒子をどのように実現するのか理解でき、(a)の総細孔体積を有するシリカ複合粒子を含む艶消し剤を製造し、使用することはできないとはいえない。 よって、本件特許明細書は、当業者が、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。 2 比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」と範囲で特定されている点 「1.2cc/gmより高い」との特定について、その文言からして、比較対象に係るシリカ粒子が有する総細孔体積に関しては、1.2cc/gmより高いあらゆる範囲が比較対象であると理解できるものの、本件特許発明1が当業者が実施可能なものといえるためには、「1.2cc/gmより高い」無限の範囲の比較対象フィルムを作製しかつ比較することまでは要求されず、1.2cc/gmより高いあらゆる範囲の任意のものと比較できれば、本件特許発明1が当業者が実施可能なものといえる。 そうすると、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57は、当業者が実施可能なものではないとはいえない。 第10 前記第6の理由4(サポート要件)について 1 比較対象に係るシリカ粒子の総細孔体積が「1.2cc/gmより高い」と範囲で特定されている点 本件特許明細書の実施例にあたるシリカ複合体と比較例にあたるシリカサンプルについての記載からみて、1.2cc/gm以下の総細孔体積を有する本件特許発明1のものが、1.9cc/gmの総細孔体積を有するものと比較して、改善された耐化学性及び/又は改善されたフィルム透明度を有するクリアコートフィルムを得られるといえ、そうすると、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57について、前記第6の理由4 1の発明の課題が解決できるといえる。 2 実施例の内容に比して特許請求の範囲が過度に広い点 (1)コーティング材料の範囲が過度に広い点 本件特許発明1では、コーティング剤により、シリカ粒子の総細孔体積を小さくすることにより、前記第6の理由4 1の発明の課題が解決できるといえるところ、コーティング剤であれば、シリカ粒子の総細孔体積を小さくできるといえるから、複合シリカ粒子が「ポリエチレンワックス」を含むとき、本件特許発明の課題を解決できたという結果を本件特許発明1の範囲まで拡張ないし一般化できないとはいえない。 よって、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。 (2)シリカ粒子の範囲が過度に広い点 甲1及び甲4の記載からみて、多孔質シリカ粒子であれば、艶消し剤に使用できるといえ、前記(1)のとおり、シリカ粒子の総細孔体積を小さくすれば、本件特許発明の課題を解決できといえるから、当業者は、シリカゲル以外のシリカ粒子を使用してシリカゲルの場合と同様に本件特許発明の課題を解決できることを理解できるから、本件特許発明1、本件特許発明7、本件特許発明12、本件特許発明17、本件特許発明21、本件特許発明36、本件特許発明39及びそれらを直接又は間接的に引用する本件特許発明2~5、7、8、10、11、13~15、18、19、22~35、37、38、40~57は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものとはいえない。 第11 むすび 本件特許の請求項1~5、7、8、10~15、17-19、21~57に係る特許は、令和6年3月13日付けの取消理由通知に記載した取消理由、令和6年10月1日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~5、7、8、10~15、17~19、21~57を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項6、9、16、20は、本件訂正により削除され、この特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701316

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  • 2025-700458異議申立 / 2026-05-22 / 訂正認容脱離用印刷インキ組成物及び脱離方法
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D
  • 2024-700901異議申立 / 2026-01-21 / 訂正認容導電性顔料ペースト、合材ペースト、及びリチウムイオン電池用電極
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D
  • 2024-701074異議申立 / 2025-09-11 / 訂正認容塗料組成物、塗装物の製造方法および塗装物
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D
  • 2024-700809異議申立 / 2025-07-08 / 訂正認容クリヤー塗料組成物および塗装物品の製造方法
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D
  • 2024-700808異議申立 / 2025-07-01 / 訂正認容クリヤー塗料組成物および塗装物品の製造方法
    共通の審決分類: 113・C09D、121・C09D、536・C09D、537・C09D

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