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特許異議申立

2024-700178

油性粒子分散組成物及びその製造方法

審判番号
2024-700178
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-071048
登録番号
7339391
請求日
2024年02月26日
審決日
2025年02月25日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社コスモビューティー
  • 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人】上田 剛士
  • 【異議申立人】小池 良
  • 【異議申立人】本間 賢一
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 冨永 保
  • 審判官 木村 敏康
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.161-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K) / P1651.852-YAA(A61K) / P1651.853-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条の2、特許法第36条第5項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7339391号発明「油性粒子分散組成物及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7339391号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。 特許第7339391号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7339391号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和4年4月22日に特願2022-71048号として出願され、令和5年8月28日に特許権の設定登録がなされ、令和5年9月5日に特許掲載公報が発行され、 令和6年2月26日に、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、上田剛士(以下「申立人A」という。)により、 令和6年3月5日に、その請求項1、3及び4に係る発明の特許に対し、小池良(以下「申立人B」という。)により、 令和6年3月5日に、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、本間賢一(以下「申立人C」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 令和6年 5月31日付け 取消理由通知 同年 8月 5日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 8月19日付け 訂正があった旨の通知 同年 9月18日 意見書(申立人A) 同年 9月19日 意見書(申立人B) 同年10月 7日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年12月20日 意見書・訂正請求書(特許権者) なお、令和6年8月19日付けの訂正があった旨の通知に対して、申立人Cは、その指定期間内に意見書の提出をしていない。 また、令和6年8月5日付けの訂正請求による訂正(以下「第1訂正」ともいう。)について、当該請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 令和6年12月20日付けの訂正請求による訂正(以下「第2訂正」ともいう。)の「請求の趣旨」は「特許第7339391号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであって、その内容は以下の訂正事項1~18からなるものである(なお、下線は当審合議体による。以下同じ。)。 (1)訂正事項1 請求項1に 「成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、成分(B)が17質量部以上であり」と記載されているのを、 「成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、成分(B)が17~62質量部であり」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 請求項1に 「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり」と記載されているのを、 「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり、油性粒子分散組成物は、エステル油及び炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 請求項1に 「成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなるからなる群より選択される2種以上であり」と記載されているのを、 「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであり、 油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上であり」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 請求項1に 「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択される少なくとも1種であり」と記載されているのを、 「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、油性粒子分散組成物は(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 請求項1に 「(C1)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリルからなるからなる群より選択される少なくとも1種の2価カルボン酸エステル」と記載されているのを、 「(C1)(C1-1)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び(C1-2)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種の2価カルボン酸エステル、ここで、(C1-1)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-1)の含有量は2~6質量%であり、(C1-2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-2)の含有量は0.001~0.5質量%である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 請求項1に 「(C2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26及びPPG-14ポリグリセリル-2エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシド誘導体」と記載されているのを、 「(C2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26及びPPG-14ポリグリセリル-2エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシド誘導体、ここで、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物は、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン及びPPG-20メチルグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C2)の含有量は2~6質量%である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 請求項1に 「(C3)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール及びジプロピレングリコールからなるからなる群より選択される少なくとも1種」と記載されているのを、 「(C3)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、ここで、(C3)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C3)の含有量は5~15質量%である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 請求項1に 「(C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤」と記載されているのを、 「(C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤、ここで、(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であり、(C4-2)HLB10以上17.5以下の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-2)の含有量は0.001~0.7質量%である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (9)訂正事項9 請求項1に 「成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である」と記載されているのを、 「成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。 (10)訂正事項10 請求項4に 「成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、成分(B)が17質量部以上であり」と記載されているのを、 「成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、成分(B)が17~62質量部であり」に訂正する。 (11)訂正事項11 請求項4に 「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり」と記載されているのを、 「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり、油性粒子分散組成物は、エステル油及び炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」に訂正する。 (12)訂正事項12 請求項4に 「成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなるからなる群より選択される2種以上であり」と記載されているのを、 「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであり、 油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上であり」に訂正する。 (13)訂正事項13 請求項4に 「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択される少なくとも1種であり」と記載されているのを、 「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、油性粒子分散組成物は(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」に訂正する。 (14)訂正事項14 請求項4に 「(C1)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリルからなるからなる群より選択される少なくとも1種の2価カルボン酸エステル」と記載されているのを、 「(C1)(C1-1)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び(C1-2)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種の2価カルボン酸エステル、ここで、(C1-1)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-1)の含有量は2~6質量%であり、(C1-2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-2)の含有量は0.001~0.5質量%である」に訂正する。 (15)訂正事項15 請求項4に 「(C2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26及びPPG-14ポリグリセリル-2エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシド誘導体」と記載されているのを、 「((C2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26及びPPG-14ポリグリセリル-2エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシド誘導体、ここで、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物は、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン及びPPG-20メチルグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C2)の含有量は2~6質量%である」に訂正する。 (16)訂正事項16 請求項4に 「(C3)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール及びジプロピレングリコールからなるからなる群より選択される少なくとも1種」と記載されているのを、 「(C3)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、ここで、(C3)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C3)の含有量は5~15質量%である」に訂正する。 (17)訂正事項17 請求項4に 「(C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤」と記載されているのを、 「(C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤、ここで、(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であり、(C4-2)HLB10以上17.5以下の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-2)の含有量は0.001~0.7質量%である」に訂正する。 (18)訂正事項18 請求項4に 「成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である」と記載されているのを、 「成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」に訂正する。 2.訂正事項1~18の適否 (1)訂正事項1及び10について 訂正事項1及び10は、明細書の段落0038の「成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、…成分(B)の含有量として、好ましくは17~70質量部が例示され、…特に好ましくは29~62質量部が例示される。」との記載に基づき、訂正前の請求項1又は4の「17質量部以上であり」を「17~62質量部であり」に限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項1及び10は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1及び10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2及び11について 訂正事項2及び11は、明細書の段落0121~0123(表1~3)の実施例1~5、10~22及び25で、成分(A)として、エステル油〔比重0.95、凝固点-20℃以下のトリエチルヘキサノイン、若しくは比重1.009、凝固点-40℃未満の(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリル〕、又は炭化水素(比重0.81、凝固点-38℃のスクワラン)を用いる記載に基づき、訂正前の請求項1又は4の成分(A)の「比重0.8~1.1の液状油」として「エステル油及び炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種」を必須成分として含有するものに限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項2及び11は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2及び11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3及び12について ア 誤記の訂正と出願当初明細書等の記載範囲 訂正事項3及び12のうち、訂正前の請求項1及び4の「からなるからなる群」との記載を「からなる群」との記載に改める訂正は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 イ 明瞭でない記載の釈明と特許明細書等の記載範囲 (ア)特許権者が主張する目的の妥当性 訂正事項3及び12のうち、訂正前の請求項1及び4の「成分(B)は、…選択される2種以上であり」との記載を「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、…選択される2種以上の固形油のみであり」との記載に改める訂正について、令和6年12月20日付けの訂正請求書の第11頁及び第37頁において、特許権者は、訂正事項3-2及び訂正事項12-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とすると主張する。 しかしながら、そもそも、訂正前の請求項1及び4の「成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなるからなる群より選択される2種以上であり」と記載にある固形油(B)の9つの選択肢の中には、明細書の段落0026「(B)固形油は、25℃で固体である限り制限されず、成分(B)として、高級アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、動植物ロウ類、炭化水素系ワックス等が例示される。」との記載にある「(B)固形油」の定義に該当する上記9つの選択肢以外のもの、例えば、セタノール(融点49.3℃の高級アルコール)やミツロウ(融点69.3℃の動植物ロウ類)などの固形油が含まれていない。 加えて、訂正前の「(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル」等の9つの選択肢から選択されるものである成分(B)と、訂正後の「(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル」等の9つの選択肢から選択されるものである成分(B)は、訂正前後の選択肢の数や化合物において増減や変更がないので、訂正後の請求項1及び4の記載に当該「油性粒子分散組成物に含有される」及び「の固形油のみ」との表現を付加しても、訂正前後の固形油(B)の選択肢の範囲に変動が生じない。 したがって、訂正事項3及び12のうち、訂正前の請求項1及び4の「成分(B)は、…選択される2種以上であり」との記載を「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、…選択される2種以上の固形油のみであり」との記載に改める訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 (イ)取消理由通知の理由4(明確性要件)との関係 訂正前の請求項1及び4の「成分(B)は、…選択される2種以上であり」との記載部分それ自体は、下線を付した「であり」との特定により、油性粒子分散組成物に「セタノール」や「ミツロウ」などの他の「固形油」が「任意の他の成分」として配合されることを許容しないものと文理的に解し得る。 一方、第1訂正による訂正後の請求項1~4の記載に関して、特許権者の令和6年8月5日付け意見書の主張を斟酌すると、明細書の段落0028や0031の「セタノール」や「ミツロウ」などの「固形油」が本件発明の「油性粒子分散組成物」に配合されるか否か明らかではなく、令和6年10月7日付けの取消理由通知(決定の予告)の第5 1(5)で、その旨を指摘する取消理由が通知されている。 そして、第2訂正の訂正事項3及び12により、訂正後の請求項1及び4の記載に当該「油性粒子分散組成物に含有される」及び「の固形油のみ」との表現を付加することにより、訂正前の請求項1及び4の当該「成分(B)は、…からなる群より選択される2種以上であり」とにある選択肢の中に、セタノールやミツロウなどが含まれないことが、訂正前よりも明瞭になると解される。 したがって、訂正事項3及び12のうち、訂正前の請求項1及び4の「成分(B)は、…選択される2種以上であり」との記載を「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、…選択される2種以上の固形油のみであり」との記載に改める訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 ウ 明瞭でない記載の釈明と特許明細書等の記載範囲 訂正事項3及び12のうち、訂正前の請求項1及び4に「油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上であり」との発明特定事項を付加して限定する訂正は、明細書の段落0034の「成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからからなる群より選択される少なくとも1種が5~80質量部であることがより好ましく例示され、更に好ましくは7~65質量部、特に好ましくは10~60質量部、特により好ましくは21~60質量部が例示される。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 エ 実質的な拡張・変更の有無 以上のとおり、訂正事項3及び12のうち、上記アの訂正は訂正前の明らかな誤記を訂正することを目的とするのものであり、上記イの訂正は訂正前の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、上記ウの訂正は訂正前の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、上記ア~ウからなる訂正事項3及び12は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 オ 訂正事項3及び12のまとめ したがって、訂正事項3及び12は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4及び13について 訂正事項4及び13は、訂正前の請求項1及び4の「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択される少なくとも1種であり」との記載にある下線部の記載を、訂正後の請求項1及び4の「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、油性粒子分散組成物は(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」との記載にある下線部の記載に改めるものであって、実質的に「成分(C)が(C4)のみからなる場合」を除外して限定するだけのものといえるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。 そして、訂正事項4及び13は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであって、訂正前の下線部の記載を削除することによって、その意味内容に変動が生じるものとは解せないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4及び13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5及び14について 訂正事項5及び14は、明細書の段落0059の「成分(C1-1)の含有量は…より好ましくは2~8質量%」との記載、及び同段落0123の実施例18~21の記載、並びに同段落0060の「成分(C1-2)の含有量は…更に好ましくは0.01~0.5質量%が例示される。」との記載、及び同段落0058の「成分(C)の含有量は…0.001~15質量%である。」との記載に基づき、訂正前の請求項1及び4の成分(C1)を(C1-1)と(C1-2)の2種類に分類した上で「ここで、(C1-1)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-1)の含有量は2~6質量%であり、(C1-2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-2)の含有量は0.001~0.5質量%である」との発明特定事項を付加して限定するとともに、訂正前の請求項1及び4の「からなるからなる群」との記載を「からなる群」との記載に改めるものであるから、前者については願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、後者については願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項5及び14は「特許請求の範囲の減縮」と、訂正前の明らかな「誤記の訂正」を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5及び14は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6及び15について 訂正事項6及び15は、訂正前の請求項1及び4に「ここで、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物は、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン及びPPG-20メチルグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C2)の含有量は2~6質量%である」との発明特定事項を付加して、(C2)を含有する場合の油性粒子分散組成物の組成を限定的に減縮するとともに、明細書の段落0061の「成分(C2)の含有量は…更に好ましくは2~6質量%が例示される。」との記載を根拠に、(C2)の含有量の特定を付加して減縮するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項6及び15は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6及び15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項7及び16について 訂正事項7及び16は、明細書の段落0062の「成分(C3)の含有量は好ましくは0.05~15質量%が例示され、…更に好ましくは5~12質量%…が例示される。」との記載に基づき、訂正前の請求項1及び4に「ここで、(C3)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C3)の含有量は5~15質量%である」との発明特定事項を付加して限定するとともに、訂正前の請求項1及び4の「からなるからなる群」との記載を「からなる群」との記載に改めるものであるから、前者については願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、後者については願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項7及び16は「特許請求の範囲の減縮」と、訂正前の明らかな「誤記の訂正」を目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項7及び16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項8及び17について 訂正事項8及び17は、明細書の段落0063の「HLBが3.5以上10未満の非イオン界面活性剤の含有量は好ましくは0.01~2質量%が例示され、より好ましくは0.03~1質量%…が例示される。…HLBが10以上20以下の非イオン界面活性剤の含有量は好ましくは0.001~1質量%が例示され、…更に好ましくは0.01~0.7質量%が例示され」との記載に基づき、訂正前の請求項1及び4の成分(C4)を(C4-1)と(C4-2)の2種類に分類した上で「ここで、(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であり、(C4-2)HLB10以上17.5以下の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-2)の含有量は0.001~0.7質量%である」との発明特定事項を付加して限定するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項8及び17は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項8及び17は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項9及び18について 訂正事項9及び18は、明細書の段落0080の「成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、を含む油性粒子分散組成物の製造方法」との記載、同段落0101の「撹拌冷却の過程で、分散した油滴が50~65℃程度(混合液温度)で硬化した(油性粒子の形成)。」との記載、及び同段落0095の「後述の実施例に示す、篩過により分散媒を除去して得た油性粒子の安定性(25℃)に従い評価する。」との記載に基づいて、訂正前の請求項1及び4に記載された「油性粒子分散組成物」の「油性粒子」が、特定の手順により油滴(分離困難なもの)を「硬化」して「篩過」により分散媒を除去して分離可能な程度に造粒して油性粒子(分離可能なもの)にされていることを明瞭にするものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 そして、訂正事項9及び18は、特許請求の範囲の明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 したがって、訂正事項9及び18は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (10)一群の請求項について 訂正事項1~9に係る訂正前の請求項1~3について、訂正前の請求項2~3は請求項1を直接又は間接的に引用し、訂正事項1~9によって訂正される請求項1に連動して訂正される訂正後の請求項2~3は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、引用する関係が一体として特許請求の範囲の一部を形成するように連関している関係にある。 したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3.まとめ 以上総括するに、訂正事項1~18による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~3〕、4についての訂正を認める。 第3 本件発明 第2訂正により訂正された請求項1~4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (A)液状油と、(B)固形油と、(C)両親媒性物質及び(D)無機塩類からなる群より選択される少なくとも1種と、(E)水とを含有し、且つ、次の特徴を有する、油性粒子分散組成物: 油性粒子分散組成物中、 成分(A)と成分(B)との合計量が1~50質量%であり、 成分(C)を含有する場合、成分(C)が0.001~15質量%であり、 成分(D)を含有する場合、成分(D)が0.01~2質量%であり、 成分(E)が40~98質量%であり、 成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、成分(B)が17~62質量部であり、 成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり、油性粒子分散組成物は、エステル油及び炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、 油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであり、 油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上であり、 成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、油性粒子分散組成物は(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、 (C1)(C1-1)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び(C1-2)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種の2価カルボン酸エステル、ここで、(C1-1)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-1)の含有量は2~6質量%であり、(C1-2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-2)の含有量は0.001~0.5質量%である、 (C2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26及びPPG-14ポリグリセリル-2エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシド誘導体、ここで、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物は、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン及びPPG-20メチルグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C2)の含有量は2~6質量%である、 (C3)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、ここで、(C3)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C3)の含有量は5~15質量%である、 (C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤、ここで、(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であり、(C4-2)HLB10以上17.5以下の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-2)の含有量は0.001~0.7質量%である、 成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、 油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である ここで、油性粒子分散組成物は、カルボキシビニルポリマー及びアルカリ変性カルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有しない。 【請求項2】 請求項1に記載する油性粒子分散組成物の分散媒除去物である油性粒子。 【請求項3】 請求項1に記載する油性粒子分散組成物または請求項2に記載する油性粒子を配合した、外用組成物。 【請求項4】 油性粒子分散組成物の製造方法であって、次の(1)~(3)のいずれかの工程を含む製造方法: 工程(1) (1-1)(A)液状油と(B)固形油と(C)両親媒性物質とを混合し、成分(B)の融点以上の温度の混合液1を得る工程、及び (1-2)前記混合液1と、成分(B)の融点以上の温度の(E)水とを混合し、得られた混合液を、撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、 工程(2) (2-1)(A)液状油と(B)固形油とを混合し、成分(B)の融点以上の温度の混合液2-1を得る工程、 (2-2)(D)無機塩類と(E)水とを混合し、成分(B)の融点以上の温度の混合液2-2を得る工程、及び (2-3)前記混合液2-1と前記混合液2-2とを混合し、得られた混合液を、撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、 工程(3) (3-1)(A)液状油と(B)固形油と(C)両親媒性物質とを混合し、成分(B)の融点以上の温度の混合液3-1を得る工程、 (3-2)(D)無機塩類と(E)水とを混合し、成分(B)の融点以上の温度の混合液3-2を得る工程、及び (3-3)前記混合液3-1と前記混合液3-2とを混合し、得られた混合液を、撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、 ここで、 該油性粒子分散組成物は、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)及び成分(D)からなる群より選択される少なくとも1種と、成分(E)とを含有し、 該油性粒子分散組成物中、 成分(A)と成分(B)との合計量が1~50質量%であり、 成分(C)を含有する場合、成分(C)が0.001~15質量%であり、 成分(D)を含有する場合、成分(D)が0.01~2質量%であり、 成分(E)が42~98質量%であり、 成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中、成分(B)が17~62質量部であり、 成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり、油性粒子分散組成物は、エステル油及び炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、 油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであり、 油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上であり、 成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、油性粒子分散組成物は(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有し、 (C1)(C1-1)シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及び(C1-2)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリルからなる群より選択される少なくとも1種の2価カルボン酸エステル、ここで、(C1-1)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-1)の含有量は2~6質量%であり、(C1-2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C1-2)の含有量は0.001~0.5質量%である、 (C2)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26及びPPG-14ポリグリセリル-2エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシド誘導体、ここで、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物は、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン及びPPG-20メチルグルコースからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、(C2)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C2)の含有量は2~6質量%である、 (C3)1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール及びジプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、ここで、(C3)を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C3)の含有量は5~15質量%である、 (C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤、ここで、(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であり、(C4-2)HLB10以上17.5以下の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-2)の含有量は0.001~0.7質量%である、 成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、 油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である 該油性粒子分散組成物は、カルボキシビニルポリマー及びアルカリ変性カルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有しない。」 第4 取消理由通知の概要 令和6年10月7日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知された取消理由は、次の〔理由3〕及び〔理由4〕からなるものである。 〔理由3〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 『2(2)成分(A)について、本件特許明細書の実施例1~25においては、成分(A)として「エステル油」と「炭化水素油」を用いた試験結果による裏付けされているものの、これら「エステル油」及び「炭化水素油」を含まない「(A)液状油」の選択肢の全てが、本件発明の「肌なじみが良く、分散安定性に優れた油性粒子分散組成物の提供」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとはいえない。』 『2(3)成分(C)について、本件特許明細書の実施例1~25で用いられた成分(C)の種類と配合量の限定的事例から、本件請求項1及び4に記載の成分(C4)の種類と配合量の広範な範囲の全てにまで、特許を受けようとする発明を拡張ないし一般化できるとはいえない。』 『2(4)他の成分の配合量との関係について、ステアリン酸やワセリンやミツロウなどの固形油を「任意の他の成分」として最大58.99質量%の量で用いる場合のものが、発明の詳細な説明に発明として実質的に記載され、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあると合理的に解し得ない。』 よって、本件特許の請求項1~4に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 〔理由4〕本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 『1(5)令和6年8月5日付けの意見書の第5頁の「油性粒子分散組成物は「篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散組成物」に特定されています。訂正発明1及び4は、これらの構成を兼ね備える限りにおいて、訂正発明1及び4において特定する成分(A)~(E)以外の成分が更に配合されることを妨げるものではありません。」等の主張を斟酌すると、明細書の段落0028や0031の「セタノール」や「ミツロウ」などの「固形油」が本件発明の「油性粒子分散組成物」に配合されるか否か明らかではない。また、成分(A)及び(C)~(D)についても同様である。』 よって、本件特許の請求項1~4に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に該当し取り消されるべきものである。 第5 当審合議体の判断 1.理由3(サポート要件)について (1)成分(A)について 第2訂正(訂正事項2及び11)により、訂正後の請求項1及び4の関連する記載は「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり、油性粒子分散組成物は、エステル油及び炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」との記載に改められた。 してみると、訂正後の請求項1及び4の記載は、成分(A)として「エステル油」及び「炭化水素」の少なくとも1種を必ず含むものに限定されており、上記〔2(2)成分(A)について〕に理由はない。 (2)成分(C)について 第2訂正(訂正事項4及び13)により、訂正後の請求項1及び4の関連する記載は「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、油性粒子分散組成物は(C1)、(C2)及び(C3)からなる群より選択される少なくとも1種を含有し」との記載に改められた。 してみると、訂正後の請求項1及び4の記載は、成分(C)として(C1)~(C3)を必ず含み、成分(C)として(C4)のみを含む場合が除外されており、上記〔2(3)成分(C)について〕に理由はない。 (3)他の成分の配合量との関係について 令和6年12月20日付けの意見書の第7頁で、特許権者は『審尋事項(あ)の成分(B)について、訂正発明1及び4に記載する特定の固形油以外の、ステアリン酸、ワセリン、ミツロウ等の固形油は、訂正発明1及び4に記載する油性粒子分散組成物に配合されるものではない』と釈明している。 そして、第2訂正(訂正事項3及び12)により、訂正後の請求項1及び4の関連する記載は「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、…選択される2種以上の固形油のみであり」との記載に改められた。 してみると、訂正後の請求項1及び4の記載は、ステアリン酸やワセリンやミツロウなどの固形油を「任意の他の成分」として含まないことが明らかであり、上記〔2(4)他の成分の配合量との関係について〕に理由はない。 2.理由4(明確性要件)について (1)成分(B)の明確性について 第2訂正による訂正後の請求項1及び4の「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであり、油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し」との記載の文理解釈について、以下に検討する。 令和6年10月7日付けの取消理由通知(決定の予告)の「第5 1(3)」に示したように、下線を付した「を含有し」との特定は、成分(B)に「ステアリン酸グリセリル」及び「ベヘン酸グリセリル」以外の「ベヘニルアルコール」等が含まれることを許容するものと文理的に解されるのに対して、下線を付した「であり」との特定は、成分(B)が「セタノール」や「ミツロウ」である場合を排除し、請求項1~4の「油性粒子分散組成物」に「セタノール」や「ミツロウ」などの他の「固形油」が「任意の他の成分」として配合されないものと文理的に解される。 そして、令和6年12月20日付けの意見書の第6頁で、特許権者は『成分(B)の性質を有するものと解される「セタノール」や「ミツロウ」などの「固形油」は、訂正発明1及び4に記載する油性粒子分散組成物に配合されないことを明確に特定しました。』と主張する。 してみると、第2訂正による訂正後の請求項1及び4の記載は、その文理上の解釈と意見書における主張に不整合な点がないので、訂正後の請求項1及び4の成分(B)に関する記載に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点があるとはいえず、上記〔理由4〕の成分(B)に関する記載不備について理由はない。 (2)成分(A)及び(C)~(D)の明確性について 第2訂正による訂正後の請求項1及び4の「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油であり、…成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択され、…成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり」との記載の文理解釈について、以下に検討する。 令和6年10月7日付けの取消理由通知(決定の予告)の「第5 1(4)」に示した理由と同様に、下線を付した「成分(A)は…であり」並びに「成分(C)は…より選択され」及び「成分(D)は…であり」との特定は、選択肢として明示されない他の「液状油」並びに「両親媒性物質」及び「無機塩類」が「任意の他の成分」として、請求項1~4の「油性粒子分散組成物」に配合されないものと文理的に解される。 そして、第2訂正においては、明瞭でない記載の釈明を目的として、上記「であり」及び「より選択され」との記載による発明特定事項を、例えば「含む」や「含有する」等の記載による発明特定事項に改める訂正がされていない。 してみると、第2訂正による訂正後の請求項1及び4の「油性粒子分散組成物」の組成に関する解釈は、上記の文理解釈のとおりであって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点があるとはいえず、上記〔理由4〕の成分(A)並びに(C)及び(D)に関する記載不備について理由はない。 これにつき、特許権者は、令和6年12月20日付けの意見書の第7頁で、『訂正発明1及び4において特定する成分(A)が、訂正発明1及び4に記載する含有量(数値範囲)で含有されるという、特定の構成を備える限りにおいて、訂正発明1及び4において特定する「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の比重0.8~1.1の液状油」との記載にない、本件特許明細書の段落0011に記載の液状油は、2024年8月5日付け提出の意見書でいう、油性粒子分散組成物に「更に配合されることを妨げるもの」ではない成分であって、訂正発明1及び4で特定する成分(A)~(E)以外の成分の位置づけにあります。』と主張する。 しかしながら、上記主張は、本願特許明細書の段落0011に例示される「動物油」等、「成分(A)は、エステル油、炭化水素、植物油、シリコーン油、高級脂肪酸及び高級アルコールからなる群より選択される」として特定される成分(A)以外に、成分(A)と同様の性質を有する「比重0.8~1.1の液状油」が油性粒子分散組成物に含まれることを主張するものであり、上記訂正後の請求項1の記載の文理解釈から、明らかに失当であるといえる。 よって、上記特許権者の主張は、受け入れられない。 また、上記意見書では、成分(C)及び(D)についても同様の主張をしているが、同様の理由で受け入れられない。 3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立人Aによる特許異議の申立て ア 申立人Aが提示した甲第1~30号証(以下「甲A1」~「甲A30」のように略記する。)は、以下のとおりである。 甲A1:特開2004-307353号公報 甲A2:特開2006-298834号公報 甲A3:特開2010-18536号公報 甲A4:特開2019-131492号公報 甲A5:特開2015-189762号公報 甲A6:特開2008-127342号公報 甲A7:特開2020-105130号公報 甲A8:特開2018-100258号公報 甲A9:特開2007-137847号公報 甲A10:特開2016-172732号公報 甲A11:特開2009-57350号公報 甲A12:特開2007-197332号公報 甲A13:特開2013-14540号公報 甲A14:特開2009-209102号公報 甲A15:特開2008-88129号公報 甲A16:国際公開第2020/158908号 甲A17:特開2021-98669号公報 甲A18:パーソナルケアハンドブックI巻 甲A19:日清オイリオグループの化粧品原料製品カタログ 甲A20:化粧品成分オンライン「シクロメチコン」の総合レポート 甲A21:化粧品成分オンライン「ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)」の総合レポート 甲A22:高機能ポリグリセリン脂肪酸エステル製品ラインナップ、太陽化学株式会社 甲A23:香粧品用界面活性剤製品カタログ、青木油脂工業株式会社 甲A24:化粧品成分オンライン「ステアリン酸PEG-40」の総合レポート 甲A25:化粧品成分オンライン「ステアリン酸PEG-5グリセリル」の総合レポート 甲A26:化粧品成分オンライン「セスキステアリン酸ソルビタン」の総合レポート 甲A27:化粧品成分オンライン「パルミチン酸ソルビタン」の総合レポート 甲A28:化粧品成分オンライン「イソステアリン酸ソルビタン」の総合レポート 甲A29:化粧品成分オンライン「ステアリン酸スクロース」の総合レポート 甲A30:化粧品成分オンライン「セテアリルアルコール」の総合レポート イ 申立人Aの申立理由1及び2(新規性・進歩性)について (ア)はじめに 申立人Aが主張する申立理由1(新規性)は、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2項)について「本件特許の請求項1-3は、甲第1-16号証の各々に記載された事項と発明特定事項に差異はなく、新規性を有さない。本件特許の請求項4は、甲第1-7号証の各々に記載された事項と発明特定事項に差異はなく、新規性を有さない。」というものである(特許異議申立書(以下「申立書」という。)第74頁)。 また、申立理由2(進歩性)は、特許法第29条第2項(同法第113条第2項)について「本件特許の請求項1-3は、甲第1-17号証の各々に記載された事項に基づいて容易に発明をできたものであるから、進歩性を有さない。本件特許の請求項4は、甲第1-7、17号証の各々に記載された事項に基づいて容易に発明をできたものであるから、進歩性を有さない。本件特許の請求項4は、甲第8-16号証の各々に記載された事項と周知技術に基づいて容易に発明をできたものであるから、進歩性を有さない。」というものである(申立書第74頁)。 そして、具体的には「請求項1-3に係る発明は、 甲第1号証の実施例5、比較例3、 甲第2号証の実施例3、 甲第3号証の実施例2、 甲第4号証の実施例4、 甲第5号証の実施例2、8~10、比較例7~8、 甲第6号証の実施例36、 甲第7号証の実施例1、 甲第8号証の試験例1、 甲第9号証の実施例22、 甲第10号証の本発明品9、 甲第11号証の実施例11、 甲第12号証の実施例2、11、 甲第13号証の処方例11、 甲第14号証の実施例6、13、 甲第15号証の実施例6、 甲第16号証の製造例6 に記載された事項と発明特定事項に差異はなく、また、これらに記載された事項から容易に想到しうるものである」と主張し、 さらに「請求項4に係る発明は、 甲第1号証の実施例5、比較例3、 甲第2号証の実施例3、 甲第3号証の実施例12、 甲第4号証の実施例4、 甲第5号証の実施例2、8~10、比較例7~8、 甲第6号証の実施例36、 甲第7号証の実施例1 に記載された事項と発明特定事項に差異はなく、また、これらに記載された事項から容易に想到しうるものである」と主張する(申立書第1~3頁)。 また、請求項1~3に係る発明は、甲第17号証の処方例4に基いて、請求項4に係る発明は、甲8~17号証の実施例等に基いて、進歩性を有しない旨の主張をしている(申立書第2~3頁)。 (イ)甲A1を主引用例とした場合の検討 a 申立人Aの主張 申立人Aは、申立書の第19~20頁において、次のとおり主張する。 「<新規性> 甲第1号証の実施例5には、本件特許の成分(A)に該当するジネオペンタン酸トリプロピレングリコール及びジメチルポリシロキサン(6mPa・s)、本件特許の成分(B)に該当するステアリルアルコール及びベヘニルアルコール、本件特許の成分(C)に該当するトリイソステアリン酸POEグリセリル(POE20)(HLB=7)、並びに、本件特許の成分(E)に該当する水を含有する水中油型乳化組成物(スキンクリーム)が記載されている。実施例5の水中油型乳化組成物において、成分(A)と成分(B)の含有量の合計は16質量%であり、成分(C)の含有量は2.5質量%であり、成分(E)の含有量は68.5質量%であり、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中の成分(B)の含有量は37.5質量部であり、成分(A)を少なくとも1種含有し、成分(B)を2種以上含有し、成分(C)を少なくとも1種含有し、カルボキシビニルポリマー及びアルカリ変性カルボキシビニルポリマーを含有しない。 甲第1号証の比較例3には、本件特許の成分(A)に該当する2-エチルヘキサン酸セチル及びジメチルポリシロキサン(6mPa・s)、本件特許の成分(B)に該当するステアリルアルコール及びベヘニルアルコール、本件特許の成分(C)に該当するトリイソステアリン酸POEグリセリル(POE20)(HLB=7)、並びに、本件特許の成分(E)に該当する水を含有する水中油型乳化組成物(スキンクリーム)が記載されている。比較例3の水中油型乳化組成物において、成分(A)と成分(B)の含有量の合計は30質量%であり、成分(C)の含有量は0.5質量%であり、成分(E)の含有量は58質量%であり、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部中の成分(B)の含有量は33.3質量部であり、成分(A)を少なくとも1種含有し、成分(B)を2種以上含有し成分(C)を少なくとも1種含有し、カルボキシビニルポリマー及びアルカリ変性カルボキシビニルポリマーを含有しない。 そうすると、甲第1号証の実施例5又は比較例3に記載された発明と、本件特許の請求項1に記載された発明とは、その発明特定事項に差異はなく、本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証に記載されたものである。」 b 対比 本件特許の請求項1に係る発明(前者)と甲A1の段落0057~0058及び0066に記載される実施例5の発明(後者)とを対比すると、少なくとも次の(A1)~(A4)の4つの点において相違点が認められる。 (A1)前者は「油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上」であるのに対して、後者は、水中油型乳化組成物(スキンクリーム)が「ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有」するものではなく、その合計量は0質量部である点 (A2)前者は「(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であ」るのに対して、後者は「トリイソステアリン酸POEグリセリル(POE20)(HLB=7)」を2.5質量%の量で含有するものである点 (A3)前者は「成分(C)は、次の(C1)~(C4)からなる群より選択」されるものであって、請求項1又は4に列挙される(C1)~(C4)の特定の種類の「両親媒性物質」から選択される成分(C)であるのに対して、後者は「セトステアリルグルコシド(HLB=7)」という(C1)~(C4)の特定の種類の「両親媒性物質」に該当しないものを含有する点 (A4)前者は「油性粒子分散組成物」であって「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」のに対して、後者は「水中油型乳化組成物(スキンクリーム)」である点 c 判断 (a)新規性について 上記bに示したように、本件特許の請求項1に係る発明と、甲A1に記載される実施例5の発明は、少なくとも上記(A1)~(A4)の点において相違し、これらの相違点が技術的に無意味な相違点であるとすべき合理的な理由も見当たらない。 また、本件特許の請求項1に係る発明と、甲A1に記載される比較例3の発明とを対比しても、上記bに示した理由と同様に、上記(A1)、(A3)及び(A4)と同様の点において相違し、これらの相違点が技術的に無意味な相違点であるとすべき合理的な理由も見当たらない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲A1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 (b)進歩性について 事案に鑑み、先ず、上記(A4)の相違点について検討する。 本件特許の明細書の段落0002には「従来、油性粒子を水相に分散させた組成物」が知られていることが記載され、同段落0003には、特許文献1(特許4798899号公報)の油性粒子分散組成物が「ベヘニルアルコールを必ず含んでカプセルの組成物の5~40質量%含有」することが記載され、同段落0004には、従来の油性粒子分散組成物は「水相と油相との混合後,せん断処理が必要になるなど、煩雑な操作が必要」になることが多いことが記載され、同段落0007には、本発明者らが「これらの成分を特定量で用いることにより、該油性粒子分散組成物を簡便に製造できることを見出した。」と記載され、同段落0079~0083には、本開示の油性粒子分散組成物の好ましい製造方法として、手順(1)~(3)の3つ(本件特許の請求項4に記載の製造方法に対応するもの)を一例として記載している。 これに対して、甲A1には、その「水中油型乳化組成物」について、その水相中に乳化して分散される油相が、液状の油滴として分散(乳化)せずに、固形の粒子として分散(懸濁)していることについて、示唆を含めて記載がなく、油性粒子を「造粒」するための特殊な方法(本件特許の請求項4に記載の製造方法など)を採用することについて示唆を含めて記載がなく、油性粒子分散物を形成するための特殊な成分を特定の量で含むことについて示唆を含めて記載がない。 そして、申立人Aが提示する甲A1~甲A30の全ての記載を精査しても「油性粒子分散組成物」という字句ないし構成を示唆する記載は見当たらず、申立人Aが提示する申立書の全ての記載を精査しても、甲A1~甲A30のいずれかに「油性粒子分散組成物」という構成について実質的な記載があると認めるに足る説明や根拠が見当たらない。 してみると、申立人Aの証拠方法及び主張によっては、上記(A4)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件特許の請求項1に係る発明は「油性粒子分散組成物」に関するものであるところ、甲A1に記載された実施例5又は比較例3の「水中油型乳化組成物」を、本件発明の「油性粒子分散組成物」にすることに動機付けがあるとはいえない。 また、本件特許の明細書の段落0091の「本開示の油性粒子分散組成物は、肌なじみがよい。…皮膚に感じる粒子感(油性粒子に起因するつぶつぶ感)が抑制されており、油性粒子が皮膚に溶けなじむ」との記載や同段落0092の「本開示の油性粒子分散物は、良好な液中分散安定性を有する。」との記載などからみて、本件発明は所定の「油性粒子分散組成物」の形態を有することで、肌なじみに優れ、また、分散安定性にも優れた、化粧料等に利用される組成物の提供が可能になったといえるから、上記(A4)の相違点が、技術的に無意味な構成要件に相当するとは認められない。 したがって、上記(A1)~(A3)の相違点について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲A1に記載された発明及び甲A2~甲A30に記載された発明若しくは技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 d 本件特許の請求項2~4に係る発明について 本件特許の請求項2~3に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、本件特許の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を甲A1を主引用例とした場合に否定できない以上、当該請求項2~3に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、当該請求項2~3に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 さらに、本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に、本件特許の請求項1に係る発明の「油性粒子分散組成物」の製造方法に関するものといえるから、本件特許の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を甲A1を主引用例とした場合に否定できない以上、当該請求項4に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、当該請求項4に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 (ウ)甲A2~甲A17を主引用例とした場合の検討 甲A2の請求項1の「水中油型乳化皮膚化粧料」及び段落0058の「実施例1~8…水中油型乳化組成物であるスキンクリーム」等の記載、甲A3の請求項1の「水中油型乳化皮膚化粧料」及び段落0075の「実施例12: スキンウリーム」等の記載、甲A4の請求項1の「皮膚外用剤または化粧料」及び段落0070の「実施例4:水中油型乳化化粧料(クリーム)」等の記載、甲A5の請求項1の「水中油型乳化組成物」及び段落0072の「試験例1 表1及び2に示す組成のクリーム状の水中油型乳化組成物」等の記載、甲A6の請求項6の「化粧料又は皮膚外用剤」及び段落0066の「実施例36 エモリエントクリーム」等の記載、甲A7の請求項1の「外用乳化組成物」及び段落0089の「外用乳化組成物(水中油型)」等の記載、甲A8の請求項1の「水中油型組成物」及び段落0108の「試験例1~3に係る組成物の組成及び評価を表1に示す」等の記載、甲A9の請求項7の「化粧料及び皮膚外用剤」及び段落0062の「実施例22 エモリエントクリーム」等の記載、甲A10の請求項1の「水中油型乳化組成物」及び段落0062の「実施例1(乳液) 本発明品1~15」等の記載、甲A11の請求項7の「化粧料又は皮膚外用剤」及び段落0054の「実施例11 スキンケアクリーム」等の記載、甲A12の請求項1の「水中油型乳化化粧料」及び段落0043の「[実施例11]保湿クリーム」等の記載、甲A13の請求項1の「保湿化粧料」及び段落0105の「処方例11:スキンクリーム」等の記載、甲A14の請求項1の「水中油型乳化化粧料」及び段落0030の「実施例13(クリーム)」等の記載、甲A15の請求項1の「水中油型乳化化粧料」及び段落0032の「実施例6 クリーム」等の記載、甲A16の請求項1の「皮膚外用組成物」及び段落0148の「製造例6 乳液」等の記載、並びに甲A17の請求項1の「シワ改善皮膚化粧料」及び段落0037の「処方例4(ジェルクリーム)」等の記載を斟酌するに、甲A1~甲A30には、本件特許の請求項1及び4に記載された「油性粒子分散組成物」及び「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」という発明特定事項に対応する技術事項について、示唆を含めて記載があるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲A2~甲A16の各甲号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 そして、申立人Aが提示する甲A1~甲A30の全ての記載を精査しても「油性粒子分散組成物」という字句ないし構成を示唆する記載は見当たらず、申立人Aが提示する申立書の全ての記載を精査しても、甲A1~甲A30のいずれかに「油性粒子分散組成物」という構成について実質的な記載があると認めるに足る説明や根拠が見当たらない。 加えて、申立人Aは、令和6年9月18日付けの意見書の第10頁において「訂正後の本件特許の請求項1、3に係る発明は、令和6年2月26日付けで提出した特許異議申立書に詳細な説明を記載したように、甲第3号証、甲第8~11号証、甲第13~16号証の記載から、新規性、進歩性を有さない。」と主張し、同第10~16頁において、前記甲各号証について「各成分の含有量は請求項1で規定する数値範囲内であり、油性粒子の硬さに影響する油相中の固形油の含有量を鑑みると、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散したものであると推認される。」と主張するが、各成分の含有量が仮に本件特許の請求項1及び4で規定する数値範囲内にあるとしても、本件特許の明細書に記載の「油性粒子を造粒する工程」と異なる手順で製造した場合であっても必ず「油性粒子分散組成物」が得られると認めるに足る合理的な根拠は見当たらない。 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲A1~甲A30に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 そして、同様の理由により、本件特許の請求項2~4に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとは認められず、また、本件特許の請求項2~4に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとも認められない。 以上のとおりであるから、申立人Aが主張する申立理由1及び2について、理由があるものとすることはできない。 ウ 申立人Aの申立理由3(サポート要件)について 申立人Aが主張する申立理由3(サポート要件)は、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4項)について「本件特許の請求項1-4で特定される成分(C)の含有量は極めて広範囲であり、本件特許の請求項1-4に係る発明には、当業者が課題を解決できるとは認識できないものを明らかに包含している」から「サポート要件を満たさない。」というものである(申立書第73及び74頁)。 しかしながら、第2訂正による訂正後の請求項1及び4の記載は、訂正前の「成分(C)を含有する場合、成分(C)が0.001~15質量%であり」という発明特定事項に加えて、特定の(C1)~(C4)からなる群より選択される「(C)両親媒性物質」の具体的な種類ごとに、油性粒子分散組成物中の含有量を、(C1-1)は2~6質量%、(C1-2)は0.001~0.5質量%、(C2)は2~6質量%、(C3)は5~15質量%、(C4-1)は0.01~1質量%、(C4-2)は0.001~0.7質量%に限定しているので、成分(C)の含有量が「極めて広範囲」であるとはいえない。 したがって、申立人Aが主張する申立理由3について、理由があるものとすることはできない。 エ 申立人Aの申立理由4(明確性)について 申立人Aが主張する申立理由4(明確性)は、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4項)について「成分(C)が水相にも油相にも配合しうる両親媒性物質であることを鑑みると、成分(C)を複数種含有する油性粒子分散組成物を製造する場合、請求項4の記載では、工程(1-1)の「(A)液状油と(B)固形油と(C)両親媒性物質とを混合し、」との工程において、成分(C)すべてが成分(A)、(B)ともに混合されているべきなのか、或いは、成分(C)の少なくとも1種が成分(A)、(B)ともに混合されていればよいのかが必ずしも明確ではない(工程(3-1)も同様である)」から「その権利の範囲が明確ではない。」というものである(申立書第74頁)。 しかしながら、本件特許の請求項4の「油性粒子分散組成物の製造方法であって、次の(1)~(3)のいずれかの工程を含む製造方法:」との記載にある「含む」という発明特定事項からみて、請求項4の「製造方法」は、工程(1)~(3)以外の工程をも含み得るものであり、工程(1-1)以外の工程において、更なる成分(C)を添加し得るものと解されるから、その工程(1-1)における「(C)両親媒性物質」の混合については、同種又は異種の全部又は一部を混合するものと明確に解釈できる。 したがって、申立人Aが主張する申立理由4について、理由があるものとすることはできない。 (2)申立人Bによる特許異議の申立て ア 申立人Bが提示した甲第1~9号証(以下「甲B1」~「甲B9」のように略記する。)は、以下のとおりである。 甲B1:特開2020-105130号公報 甲B2:特開2021-151963号公報 甲B3:特開2019-112314号公報 甲B4:特開2010-254624号公報 甲B5:特開2020-100583号公報 甲B6:特開2023-44437号公報(特願2021-152469号) 甲B7:特開2023-70391号公報(特願2021-182533号) 甲B8:特開2023-124019号公報(特願2022-27551号) 甲B9:特開2023-135356号公報(特願2022-40519号) イ 申立人Bの申立理由1及び2(新規性・進歩性)について (ア)はじめに 申立人Bが主張する申立理由1(新規性)は「請求項1、3、4に係る各発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証または甲第5号証に記載された発明であるため、特許法第113条第2号において引用される第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。」というものである(申立書第11頁)。 申立人Bが主張する申立理由2(進歩性)は「請求項1、3、4に係る各発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証または甲第5号証の記載に基づいて本分野の通常の知識を有する者が容易に想到できたものであるので、特許法第113条第2号において引用される第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。」というものである(申立書第11頁)。 (イ)甲B1を主引用例とした場合の検討 a 申立人Bの主張 申立人Bは、申立書の第18~19頁において、次のとおり主張する。 「(甲第1号証との対比) 甲第1号証には、エステル油であるトリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸オクチルドデシル、高級アルコールであるイソステアリルアルコール(成分(A)に対応)、ステアリルアルコールまたはモノステアリン酸グリセリル(成分(B)に対応)、ラウリン酸ポリグリセリル-10および1,3-ブチレングリコール(成分(C)に対応)、および水からなる外用皮膚組成物が記載されている。 特に甲第1号証の実施例1、2、4、5、参考例2、3にはこれら成分からなる外用皮膚組成物が記載されており、良好な肌なじみと分散安定性が確認されている。 これら実施例および参考例では、成分(A)と成分(B)の合計量が14.4~26.1%であり、質量比率(B)/(A)+(B)が21.6~48.3%であり、成分(C4)が10.5~12.5%であり、成分(E)(水)量が45.5~69.5%である。 更に、甲第1号証の実施例1、2、4、5、参考例2、3では、(1-1)(A)エステル油と(B)固形油(ステアリルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリル)と(C)両親媒性物質(ラウリン酸ポリグリセリルおよび1,3-ブチレングリコール)とを混合し、成分(B)の融点以上の温度である85℃で加熱し、混合液1を得ている。 また、(1-2)前記混合液1と、成分(B)の融点以上の温度(85℃)の(E)水とを混合し、得られた混合液を、撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒している。 ゆえに請求項4の工程1と同じであり、また工程3とも同等である。 ゆえに、本特許請求項4記載の発明は甲第1号証に記載されており、あるいは甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものである。」 b 対比 本件特許の請求項1に係る発明(前者)と甲B1(甲A7と同じ。)の段落0089及び0095に記載される実施例1の発明(後者)とを対比すると、少なくとも次の(B1)~(B4)の4つの点において相違点が認められる。 (B1)前者は「油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上」であるのに対して、後者は、外用乳化組成物(水中油型)が、ステアリルアルコール(融点57.9℃)4.5重量%と、ステアリン酸(融点69.3℃)1.0重量%と、モノステアリン酸グリセリル(融点59℃)0.1重量%を有するものであって、(B)固形油の合計量100質量部に対するステアリン酸グリセリルの合計量が1.79質量部である点 (B2)前者は「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであ」るのに対して、後者は、外用乳化組成物(水中油型)が「ステアリン酸」を含有するものである点 (B3)前者は「(C4)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE-アルキルエーテル及びPOE脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のHLB3.5~17.5の非イオン界面活性剤、ここで、(C4-1)HLB3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-1)の含有量は0.01~1質量%であり、(C4-2)HLB10以上17.5以下の非イオン界面活性剤を含有する場合、油性粒子分散組成物中の(C4-2)の含有量は0.001~0.7質量%である」のに対して、後者は「ラウリン酸ポリグリセリル-10」という(C4-2)HLB15.5のポリグリセリン脂肪酸エステルを0.8重量%の量で含有するものである点 (B4)前者は「油性粒子分散組成物」であって「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」のに対して、後者は「外用乳化組成物(水中油型)」である点 c 判断 (a)新規性について 上記bに示したように、本件特許の請求項1に係る発明と、甲B1に記載される実施例1の発明は、少なくとも上記(B1)~(B4)の点において相違し、これらの相違点が技術的に無意味な相違点であるとすべき合理的な理由も見当たらない。 また、本件特許の請求項1に係る発明と、甲B1に記載される実施例2、4、5、参考例2、3の発明とを対比しても、上記bに示した理由と同様に、上記(B1)~(B4)と同様の点において相違し、これらの相違点が技術的に無意味な相違点であるとすべき合理的な理由も見当たらない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲B1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 (b)進歩性について 事案に鑑み、先ず、上記(B4)の相違点について検討する。 甲B1には、その「外用乳化組成物(水中油型)」について、その水相中に乳化して分散される油相が、液状の油滴として分散(乳化)せずに、固体の粒子として分散(懸濁)していることについて、示唆を含めて記載がない。 また、甲B1の段落0089の「85℃に加熱した水相用組成物に、85℃に加熱した油相用組成物を徐々に添加しホモミキサーを用いて乳化させ、水中油型の外用乳化組成物を得た。」との記載にある製造方法は、本件特許の明細書の段落0080の「得られた混合液を、撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程」との記載にある、温度制御(降温)を伴う「油性粒子」の造粒工程と異なるものであるから、甲B1において「油性粒子」が造粒されているとも認められない。 そして、申立人Bが提示する甲B1~甲B5の公知刊行物の全ての記載を精査しても「油性粒子分散組成物」という字句ないし構成を示唆する記載は見当たらず、申立人Bが提示する特許異議申立書の全ての記載を精査しても、甲B1~甲B5のいずれかに「油性粒子分散組成物」という構成について実質的な記載があると認めるに足る説明や根拠が何ら見当たらない。 してみると、申立人Bの証拠方法及び主張によっては、上記(B4)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件特許の請求項1に係る発明は「油性粒子分散組成物」に関するものであるところ、甲B1に記載された実施例1、2、4、5、参考例2、3の「外用乳化組成物(水中油型)」を、本件発明の「油性粒子分散組成物」にすることに動機付けがあるとはいえない。 また、本件特許の明細書の段落0091の「本開示の油性粒子分散組成物は、肌なじみがよい。…皮膚に感じる粒子感(油性粒子に起因するつぶつぶ感)が抑制されており、油性粒子が皮膚に溶けなじむ」との記載や同段落0092の「本開示の油性粒子分散物は、良好な液中分散安定性を有する。」との記載などからみて、本件発明は所定の「油性粒子分散組成物」の形態を有することで、肌なじみに優れ、また、分散安定性にも優れた、化粧料等に利用される組成物の提供が可能になったといえるから、上記(B4)の相違点が、技術的に無意味な構成要件に相当するとは認められない。 したがって、上記(B1)~(B3)の相違点について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲B1に記載された発明及び甲B2~甲B5に記載された発明若しくは技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 d 本件特許の請求項3及び4に係る発明について 本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、本件特許の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を甲B1を主引用例とした場合に否定できない以上、当該請求項3に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、当該請求項3に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 さらに、本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に、本件特許の請求項1に係る発明の「油性粒子分散組成物」の製造方法に関するものといえるから、本件特許の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を甲B1を主引用例とした場合に否定できない以上、当該請求項4に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、当該請求項4に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 (ウ)甲B2~甲B5を主引用例とした場合の検討 甲B2の請求項1の「乳化皮膚化粧料」及び段落0062の「実施例及び比較例の各乳化皮膚化粧料」等の記載、甲B3の請求項1の「水中油型乳化化粧料」及び段落0038の「実施例および比較例の各水中油型乳化化粧料」等の記載、甲B4の請求項1の「マイクロエマルション」及び段落0025の「実施例の製法を用いてローションを得た」等の記載、並びに甲B5の請求項1の「乳化組成物」及び段落0050の「表1に示す組成の乳化組成物」等の記載を斟酌するに、甲B1~甲B5には、本件特許の請求項1及び4に記載された「油性粒子分散組成物」及び「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」という発明特定事項に対応する技術事項について、示唆を含めて記載があるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲B2~甲B5の各甲号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 そして、申立人Bが提示する甲B1~甲B5の公知刊行物の全ての記載を精査しても「油性粒子分散組成物」という字句ないし構成を示唆する記載は見当たらず、申立人Bが提示する申立書の全ての記載を精査しても、甲B1~甲B5のいずれかに「油性粒子分散組成物」という構成について実質的な記載があると認めるに足る説明や根拠が見当たらない。 加えて、申立人Bは、令和6年9月19日付けの意見書の第14頁において、甲B1の実施例1、2、4、5、参考例2、3では「(1-2)前記混合液1と、成分(B)の融点以上の温度(85℃)の(E)水を混合し、得られた混合液を、撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒している。ゆえに、「篩分によって分離可能な油性粒子が分散した油性粒子分散組成物」の生成は甲B1に内在している。」と主張するが、上記(イ)c(b)に示したように、甲B1の段落0089の「85℃に加熱した水相用組成物に、85℃に加熱した油相用組成物を徐々に添加しホモミキサーを用いて乳化させ、水中油型の外用乳化組成物を得た。」との記載に「撹拌しながら成分(B)の融点未満の温度」にすることや「油性粒子を造粒」することの記載は存在しない。 なお、上記意見書の主張のうち、申立人Cが提示する甲C2に基づく主張は、実質的に新たな内容を含むから、新たな取消理由として採用しない。 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲B1~甲B5に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 そして、同様の理由により、本件特許の請求項3及び4に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとは認められず、また、本件特許の請求項3及び4に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとも認められない。 以上のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由1及び2について、理由があるものとすることはできない。 ウ 申立人Bの申立理由3(拡大先願)について 申立人Bが主張する申立理由3(拡大先願)は「請求項1、3、4に係る各発明は、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証または甲第9号証の出願当初の明細書等に記載された発明と同一であるので、特許法第113条第2号において引用される第29条の2の規定に違反して特許されたものである。」というものである(申立書第11~12頁)。 しかしながら、甲B6の請求項1の「乳化化粧料組成物」等の記載、甲B7の請求項1の「水中油型乳化化粧料」等の記載、甲B8の請求項1の「水中油型乳化化粧料」等の記載、及び甲B9の請求項1の「水中油型乳化組成物」等の記載を斟酌するに、甲B6~甲B9の当初明細書等には、本件特許の請求項1及び4に記載された「油性粒子分散組成物」及び「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」という発明特定事項に対応する技術事項について記載があるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、甲B6~甲B9の各甲号証の出願当初の明細書等に記載された発明と同一であるであるとはいえないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。 したがって、申立人Bが主張する申立理由3について、理由があるものとすることはできない。 (3)申立人Cによる特許異議の申立て ア 申立人Cが提示した甲第1~9号証(以下「甲C1」~「甲C9」のように略記する。)は、以下のとおりである。 甲C1:特開2005-179308号公報 甲C2:特開2012-246248号公報 甲C3:特開2022-6239号公報 甲C4:特開2003-238378号公報 甲C5:特開平11-106328号公報 甲C6:特開2008-74788号公報 甲C7:特開2009-269900号公報 甲C8:特開2011-79977号公報 甲C9:特許第4942072号公報 イ 申立人Cの申立理由1(明確性)について 申立人Cが主張する申立理由1(明確性)は、特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4項)について「本件特許発明の「油性粒子分散組成物」との発明特定事項は、油性粒子が分散媒に対して容易に分離可能に分散した状態の組成物のみを意味するのか、或いは、油性粒子が分散媒に対して容易に分離できない乳化状態になっている組成物についても包含する概念であるのか、不明確である」というものである(申立書第19及び66頁)。 しかしながら、第2訂正による訂正後の請求項1及び4の記載においては「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」との発明特定事項が導入されているので、本件特許発明の「油性粒子分散組成物」の範囲に「油性粒子が分散媒に対して容易に分離できない乳化状態になっている組成物」が包含されないことは明らかであって、本件特許の請求項1~4の記載に第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な点があるとは認められない。 したがって、申立人Cが主張する申立理由1について、理由があるものとすることはできない。 ウ 申立人Cの申立理由2(サポート要件)について (ア)はじめに 申立人Cが主張する申立理由2(サポート要件)は、特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4項)について、次の〔理由1〕~〔理由3〕を主張する(申立書第20~22及び66頁)。 〔理由1〕本件特許発明1および4は、任意のサイズの油性粒子、油性粒子が凝集している実施形態、および、溶融温度が任意の温度である油性粒子を包含するから、サポート要件を満たしていない。 〔理由2〕本件特許発明1および4には、「成分(A)と成分(B)との合計量が1~50重量%であり」と記載されているとおり、「油性粒子分散組成物中」に含まれる油性成分が1質量%である実施形態を包含するが、実施例で具体的に効果を確認している合計量の最小値は16.6質量%(実施例16)であるから、サポート要件を満たしていない。 〔理由3〕本件特許発明1および4には、「成分(D)」から選択した1種類のみを使用した実施形態が包含されるが、「(D)無機塩類」を単独で使用したのは実施例17の「塩化ナトリウム」のみであるから、「塩化ナトリウム」以外の「(D)無機塩類」を単独で使用した場合にも本件特許発明の課題が解決できる根拠がなく、サポート要件を満たしていない。 (イ)理由1:油性粒子のサイズ等の特定について 本件特許の請求項1~4に係る発明の解決しようとする課題は、本件特許の明細書の段落0006の記載を含む発明の詳細な説明の全ての記載からみて『肌なじみが良く、分散安定性に優れた油性粒子分散組成物の提供、及び該組成物を簡便に製造する方法の提供』にあるものと認められる。 そして、同段落0007には、(A)液状油と、(B)固形油と、(C)両親媒性物質及び/又は(D)無機塩類とを、特定量で組み合わせて用いることにより、分散安定性に優れた油性粒子分散組成物が得られることを見出したと記載され、本件特許の請求項1~4には特許法第36条第5項の規定に従い「各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載され、その発明の詳細な説明には、実施例1~25及び比較例1~5の試験結果が示され、請求項に記載した「発明を特定するために必要と認める事項」を具備する場合に、上記課題を解決できると当業者が認識できる程度に「特許を受けようとする発明」が「発明の詳細な説明」に記載されていると認められる。 すなわち、本件特許の請求項1~4に記載された「特許を受けようとする発明」は、成分(A)~(D)の種類と配合量を特定することで、上記課題を解決するという技術思想に立脚した発明であって、油性粒子のサイズや凝集形態や溶融温度などを工夫して上記課題を解決しようとした発明ではないから、油性粒子のサイズや凝集形態や溶融温度などの発明特定事項と関係ない事項を根拠に、本件特許の請求項1~4の記載が特許法第36条第6項第1号の「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」という要件に適合しないと解することはできない。 したがって、申立人Cが主張する申立理由2の〔理由1〕について、理由があるものとすることはできない。 (ウ)理由2:(A)及び(B)の油性成分の含有量の下限値について 申立人Cは、申立書の第21頁において『実施例で具体的に効果を確認している「成分(A)と成分(B)との合計量」の最小値は16.6質量%(実施例16)である。…そして、本件明細書の段落【0091】に「本開示において肌なじみがよいとは、該組成物を皮膚(粘膜、頭皮を含む)に適用した際(指を使って皮膚上を滑らせた際)に、皮膚に感じる粒子感(油性粒子に起因するつぶつぶ感)が抑制されており、油性粒子が皮膚に溶けなじむことを意味する。」と記載されているとおり、本件特許発明の課題は、油性粒子分散組成物中にある程度の油性粒子が含まれることが前提の課題であると理解できる。そうすると、本件特許発明1および4は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものと言わざるを得ない。』と主張する。 しかしながら、本件特許の明細書の段落0091に記載された上記「作用機序」を顧慮すると、油性粒子を構成する(A)液状油と(B)固形油の油性成分の合計量は、少量である方が、つぶつぶ感の原因となる油性粒子の含有量が抑制され、皮膚に溶けなじまない油性粒子の割合も低減すると合理的には解されるので、実施例16で確認された「16.6質量%」という下限値よりもさらに少ない量の油性成分の合計量であっても、上記『肌なじみが良く、分散安定性に優れた油性粒子分散組成物の提供』という課題を解決できると当業者は認識できるといえる。 してみると、本件特許の請求項1及び4の「成分(A)と成分(B)との合計量が1~50重量%であり」との記載にある油性成分の合計量の数値範囲が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないとはいえない。 したがって、申立人Cが主張する申立理由2の〔理由2〕について、理由があるものとすることはできない。 (エ)理由3:塩化ナトリウム以外の「(D)無機塩類」について 申立人Cは、申立書の第22頁において『本件明細書には、「塩化ナトリウム」以外の「(D)無機塩類」を単独で使用した場合にも本件特許発明の課題が解決できる根拠は記載されておらず、且つ、出願時の技術常識を参酌しても自明ということはできないと思料する。』と主張する。 しかしながら、本件特許の請求項1及び4の「成分(D)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり」との記載にある4種類の無機塩類について、本件特許の明細書の段落0123の【表3】には、(D)無機塩類の種類を変えた以外は同条件で実施した、実施例18(塩化ナトリウム)、実施例19(硫酸マグネシウム)、実施例20(塩化カリウム)、及び実施例21(塩化カルシウム)において「評価4 肌なじみ」や「評価5 分散安定性(25℃)」の評価が同程度であったことが示されている。 してみると、実施例18~21の試験結果が「(C1)2価カルボン酸エステル」という(C)両親媒性物質の共存下の試験結果であるとしても、成分(D)の無機塩類の4種類の各々が同程度の有用性を示し得ると合理的に期待できるといえるので、成分(C)を併用しない場合であっても、実施例17の塩化ナトリウムの単独使用で得られた結果を、上記他の無機塩類の選択肢の全てにまで拡張ないし一般化できると当業者は認識できる。 したがって、申立人Cが主張する申立理由2の〔理由3〕について、理由があるものとすることはできない。 エ 申立人Cの申立理由3及び4(新規性・進歩性)について (ア)はじめに 申立人Cが主張する申立理由3(新規性)は、特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2項)について「本件特許発明1、3は甲第1号証乃至甲第9号証のそれぞれに記載された発明である。本件特許発明4は、甲第5号証に記載された発明である。」というものである(申立書第67頁)。 申立人Cが主張する申立理由4(進歩性)は、特許法第29条第2項(同法第113条第2項)について「本件特許発明1、3は甲第1号証乃至甲第9号証のそれぞれの記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。本件特許発明4は、甲第5号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」というものである(申立書第67頁)。 (イ)甲C1を主引用例とした場合の検討 a 申立人Cの主張 申立人Cは、申立書の第22~27頁において、甲C1の段落0076に記載の「配合例18:ボディージェル」を甲1発明とした上で、次の旨を主張する。 『(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比 a 甲1発明のマカデミアナッツ油、ミリスチン酸ドデシル、メチルフェニルポリシロキサンおよびパルミチン酸レチノールは、本件特許発明1の成分(A)に相当し、その合計量は17.1wt%である。 b 甲1発明におけるベヘニルアルコールおよびものステアリン酸グリセリルは、本件特許発明1の成分(B)に相当し、その合計量は4.0wt%である。 c 甲1発明における1,3-ブチレングリコールは、本件特許発明1の成分(C)に相当し、その合計量5.0wt%である。 d 甲1発明における精製水は、本件特許発明1の成分(E)に相当し、その量は約65wt%である。 e 上記「イ 記載不備」において説明したとおり、本件特許発明1の「油性粒子分散組成物」はエマルジョンを含む概念であり、甲1発明の「ボディージェル」は、本件特許発明1の「油性粒子分散組成物」に相当する。… m 甲1発明には「カルボキシビニルポリマー及びアルカリ変性カルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種」は含まれていない。 そうすると、甲1発明と本件特許発明1との間に相違点はない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明から新規性を有しない。 仮に、表現等の問題から相違点として挙げるべき成分があるとしても、本件特許発明1は、甲1発明から当業者であれば容易に想到し得ると言うべきである。 以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証記載事項に基づき、新規性および進歩性を有しない。』 b 対比 本件特許の請求項1に係る発明(前者)と甲C1の段落0076に記載される配合例18の発明(後者)とを対比すると、少なくとも次の(C1)~(C3)の3つの点において相違点が認められる。 (C1)前者は「油性粒子分散組成物は、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、成分(B)の合計量100質量部中、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種が合計量で21質量部以上」であるのに対して、後者は、ボディージェルが、ベヘニルアルコール(融点59℃)3.0wt%と、ステアリン酸(融点69.3℃)3.0wt%と、バチルアルコール(融点71℃)1.0wt%と、モノステアリン酸グリセリル(融点59℃)1.0wt%を有するものであって、(B)固形油の合計量100質量部に対するステアリン酸グリセリルの合計量が12.5質量部である点 (C2)前者は「油性粒子分散組成物に含有される成分(B)は、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される2種以上の固形油のみであ」るのに対して、後者は「ステアリン酸」及び「バチルアルコール」を含有するものである点 (C3)前者は「油性粒子分散組成物」であって「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」のに対して、後者は「ボディージェル」である点 c 判断 (a)新規性について 上記bに示したように、本件特許の請求項1に係る発明と、甲C1に記載される配合例18の発明は、少なくとも上記(C1)~(C3)の点において相違し、これらの相違点が技術的に無意味な相違点であるとすべき合理的な理由も見当たらない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲C1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 (b)進歩性について 事案に鑑み、先ず、上記(C3)の相違点について検討する。 甲C1には、その「ボディージェル」について、これが水相と油相を有する分散物なのか否か、仮に分散物であるとしても、水中油型と油中水型のいずれの分散物の状態にあるのか等々について、示唆を含めて記載がない。 そして、申立人Cは、申立書の第19頁で『本件特許発明の「油性粒子分散組成物」との発明特定事項は、油性粒子が分散媒に対して容易に分離できない乳化状態になっている組成物についても包含する概念であるのか、不明確である』と主張した上で、同第24頁で『e 上記「イ 記載不備」において説明したとおり、本件特許発明1の「油性粒子分散組成物」はエマルジョンを含む概念』であるから『甲1発明の「ボディージェル」は、本件特許発明1の「油性粒子分散組成物」に相当する。』と主張するものであるところ、本件特許の請求項1及び4に係る発明は「篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」と特定されているので、油性粒子が「分散媒に対して容易に分離できない乳化状態になっている組成物」とは明確に区別されるものであり、上記『本件特許発明1の「油性粒子分散組成物」はエマルジョンを含む概念である』旨の前提に立った上での申立人Cの主張ないし立証は採用できない。 さらに、申立人Cが提示する甲C1~甲C9の全ての記載を精査しても「油性粒子分散組成物」という字句ないし構成を示唆する記載は見当たらず、申立人Cが提示する申立書の全ての記載を精査しても、甲C1~甲C9のいずれかに「油性粒子分散組成物」という構成について実質的な記載があると認めるに足る説明や根拠が何ら見当たらない。 してみると、申立人Cの証拠方法及び主張によっては、上記(C3)の相違点に係る構成を導き出すことが、当業者にとって容易であるとはいえない。 そして、本件特許の請求項1に係る発明は「油性粒子分散組成物」に関するものであるところ、甲C1に記載された配合例18の「ボディージェル」を、本件発明の「油性粒子分散組成物」にすることに動機付けがあるとはいえない。 また、本件特許の明細書の段落0091の「本開示の油性粒子分散組成物は、肌なじみがよい。…皮膚に感じる粒子感(油性粒子に起因するつぶつぶ感)が抑制されており、油性粒子が皮膚に溶けなじむ」との記載や同段落0092の「本開示の油性粒子分散物は、良好な液中分散安定性を有する。」との記載などからみて、本件発明は所定の「油性粒子分散組成物」の形態を有することで、肌なじみに優れ、また、分散安定性にも優れた、化粧料等に利用される組成物の提供が可能になったといえるから、上記(C3)の相違点が、技術的に無意味な構成要件に相当するとは認められない。 したがって、上記(C1)及び(C2)の相違点について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲C1に記載された発明及び甲C2~甲C9に記載された発明若しくは技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 d 本件特許の請求項3及び4に係る発明について 本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用し、さらに限定したものであるから、本件特許の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を甲C1を主引用例とした場合に否定できない以上、当該請求項3に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、当該請求項3に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 さらに、本件特許の請求項4に係る発明は、実質的に、本件特許の請求項1に係る発明の「油性粒子分散組成物」の製造方法に関するものといえるから、本件特許の請求項1に係る発明の新規性及び進歩性を甲C1を主引用例とした場合に否定できない以上、当該請求項4に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、当該請求項4に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 (ウ)甲C2~甲C9を主引用例とした場合の検討 甲C2の請求項1の「化粧料」及び段落0029の「実施例4(クリーム)」等の記載、甲C3の請求項1の「皮膚化粧料」及び段落0042の「処方例1 (ジェル状化粧水)」等の記載、甲C4の請求項1の「皮膚外用剤」及び段落0051の「(実施例4)…エモリエントクリーム」等の記載、甲C5の請求項1の「皮膚外用組成物」及び段落0034の「〔実施例10〕下記組成の乳液」等の記載、甲C6の請求項1の「エラスチン産生促進剤」及び段落0080の「製剤実施例2:クリーム」等の記載、甲C7の請求項1の「タイトジャンクション形成促進剤」及び段落0034の「(実施例-2)クリーム」等の記載、甲C8の請求項3の「皮膚外用剤」及び段落0030の「実施例5(クリーム)」等の記載、並びに甲C9の請求項1の「毛髪化粧料」及び段落0054の「処方例10 ヘアリンス」等の記載を斟酌するに、甲C1~甲C9には、本件特許の請求項1及び4に記載された「油性粒子分散組成物」及び「油性粒子分散組成物は、篩過することで分離可能な程度に硬化した油性粒子が分散媒に分散した油性粒子分散物である」という発明特定事項に対応する技術事項について、示唆を含めて記載があるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲C2~甲C9の各甲号証に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 そして、申立人Cが提示する甲C1~甲C9の全ての記載を精査しても「油性粒子分散組成物」という字句ないし構成を示唆する記載は見当たらず、申立人Cが提示する申立書の全ての記載を精査しても、甲C1~甲C9のいずれかに「油性粒子分散組成物」という構成について実質的な記載があると認めるに足る説明や根拠が見当たらない。 なお、令和6年8月19日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人Cは、指定した期間内に何ら応答していない。 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲C1~甲C9に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 そして、同様の理由により、本件特許の請求項3及び4に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当するとは認められず、また、本件特許の請求項3及び4に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとも認められない。 以上のとおりであるから、申立人Cが主張する申立理由3及び4について、理由があるものとすることはできない。 第6 むすび 以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人A~Cが申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の本件特許の請求項1~4に係る発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに訂正後の本件特許の請求項1~4に係る発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700178

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  • 2023-700556異議申立 / 2024-01-30 / 訂正認容固形粉末化粧料
    共通の審決分類: 113・A61K、121・A61K、536・A61K、537・A61K ほか2件

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