特許訂正審判
2022-390067
遊技機
- 審判番号
- 2022-390067
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2017-247374
- 登録番号
- 7054173
- 請求日
- 2022年05月18日
- 審決日
- 2022年07月12日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】株式会社 サンセイアールアンドディ
- 【請求人代理人】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 長崎 洋一
- 審判官 澤田 真治
- 審判官 北川 創
- 分類
- P141 .852-Y (A63F) / P141 .853-Y (A63F) / P141 .856-Y (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7054173号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7054173号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第7054173号(以下「本件特許」という。)は、平成29年12月25日に出願され、令和4年4月5日に特許権の設定登録がなされ、令和4年5月18日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記通常遊技状態よりも遊技者に不利な有利遊技状態」と記載されているのを、「前記通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態」に訂正する(下線は合議体が付したもので、訂正箇所を示す。以下同様。)。
2 訂正事項2
明細書の段落【0006】に「前記通常遊技状態よりも遊技者に不利な有利遊技状態」とあるのを、「前記通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態」に訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について(特許法第126条第1項ただし書)
ア 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に「前記通常遊技状態よりも遊技者に不利な有利遊技状態」と記載されているのを、「前記通常遊技状態よりも遊技者に有利な有利遊技状態」に訂正するというものである。
事案に鑑み、訂正事項1が誤記の訂正を目的とするものであるか検討する。
誤記の訂正とは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。
そして、特許請求の範囲の誤記の訂正は、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと当事者その他一般第三者が理解する場合に限って許され、発明の詳細な説明の項の記載は、この点の判断の資料となる限度においてのみ斟酌されると解される。
そこで、請求項1における「不利」なる記載が明らかな誤りであり、当該記載が当然に「有利」の意味であるといえるか否かを検討する。
イ 本件特許の設定登録時の請求項1の記載は、以下のとおりである。
「通常遊技状態にするときと、前記通常遊技状態よりも遊技者に不利な有利遊技状態にするときと、がある前記遊技状態制御手段と、
所定の演出を実行するための演出モードを設定可能な演出実行手段と、を備え、
前記遊技状態制御手段は、前記有利遊技状態において所定の終了条件が成立した場合、前記有利遊技状態から前記通常遊技状態に変更することがあり、
前記演出実行手段が前記有利遊技状態において設定可能な演出モードとして、所定演出モードがあり、
前記演出実行手段が前記通常遊技状態において設定可能な演出モードとして、通常演出モードと、前記通常演出モードとは異なる特定演出モードと、があり、
前記通常演出モードにはさらに、第1通常演出モードと、第2通常演出モードとがあり、
前記演出実行手段は、
前記有利遊技状態において前記所定演出モードを設定しているときに前記終了条件が成立して前記有利遊技状態から前記通常遊技状態に変更された場合、前記所定演出モードから前記特定演出モードに変更することがあり、
前記通常遊技状態において前記第1通常演出モードを設定しているときに、所定の開始条件が成立した場合、当該第1通常演出モードから前記特定演出モードに変更することがあり、
前記通常遊技状態において前記第2通常演出モードを設定しているときに前記開始条件が成立した場合、当該第2通常演出モードから前記特定演出モードに変更することがあり、
前記所定演出モードから変更された前記特定演出モードが終了する条件と、前記第1通常演出モードおよび前記第2通常演出モードから変更された前記特定演出モードが終了する条件とは異なり、
前記所定演出モードから変更された前記特定演出モードが終了すると、前記第1通常演出モードに変更され、
前記第1通常演出モードから変更された前記特定演出モードが終了すると、前記第1通常演出モードに変更され、
前記第2通常演出モードから変更された前記特定演出モードが終了すると、前記第1通常演出モードに変更されるときと、前記第2通常演出モードに変更されるときとがあることを特徴とする遊技機。」
請求項1における「不利」なる記載を含む「前記通常遊技状態よりも遊技者に不利な有利遊技状態」なる記載は、「有利遊技状態」を修飾する文言として「不利」という「有利」とは対極の文言が用いられていること、遊技機において、通常遊技状態が遊技者にとって相対的に最も不利な遊技状態であるという技術常識からみて、当業者にとって技術的に正しい記載であるかどうかという疑念を十分に生じさせ、本件特許の設定登録時の明細書の記載を参酌する契機を抱かせるものといえる。
そこで、当該記載の意味するところについて、本件特許明細書の記載を参酌することとする。
ウ 本件特許明細書には、以下の記載がある(下線は合議体が付した。)。
「【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技機では、遊技球が始動口に入球することを条件に、大当たりであるか否かの判定を行うことが可能であり、当該判定で大当たりと判定されると、遊技球を獲得可能な大当たり遊技が行われる。また、遊技者に有利な遊技状態や不利な遊技状態など、様々な遊技状態で遊技が行われる(特許文献1参照)。特許文献1に記載の遊技機では、遊技状態の変更に伴って、異なる演出モードを設定することで遊技興趣を向上させている。」
「【0149】
3-4.遊技状態
次に、パチンコ遊技機PY1が制御可能な遊技状態について説明する。パチンコ遊技機PY1は、大入賞口14の開放を伴う大当たり遊技が実行されている状態である大当たり遊技状態と、大当たり遊技が実行されていない非大当たり遊技状態がある。非大当たり遊技状態には、基本的なベースとなる遊技状態である通常遊技状態と、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特定遊技状態と、がある。この特定遊技状態に係る「遊技者に有利」となる要素には大当たり当選確率と、第2始動口12の開放の容易性とがある。すなわち、特定遊技状態に大当たり当選確率と、第2始動口12の開放の容易性を関連付けることができる。
【0150】
大当たり当選確率について遊技者に有利とは、通常遊技状態よりも大当たり当選確率が高くなり、大当たり当選し易くなるということである。また、第2始動口12の開放の容易性について遊技者に有利とは、通常遊技状態よりも第2始動口12の開放の容易性が高くなり、単位時間あたりの第2始動口12の開放時間が長くなるということである。
【0151】
そして、特定遊技状態としては、大当たり当選確率および第2始動口12の単位時間あたりの開放時間の何れもが遊技者に有利な第1特定遊技状態と、大当たり当選確率のみが遊技者に有利な第2特定遊技状態と、第2始動口12の単位時間あたりの開放時間のみが遊技者に有利な第3特定遊技状態の3種類を設定可能である。なお、これらの3種類の特定遊技状態の全てをパチンコ遊技機PY1に搭載せずに、3種類の特定遊技状態の中の一部を搭載することができる。
【0152】
ここで、大当たり当選確率に注目した局所的な遊技状態として、大当たり当選確率が通常遊技状態よりも高くなり、大当たり当選確率について遊技者に有利な状態を「高確率状態」という。これに対して、大当たり当選確率が通常遊技状態での通常確率であり、大当たり当選確率について遊技者に有利ではない状態を「通常確率状態」という。
【0153】
また、単位時間あたりの第2始動口12の開放時間に注目した局所的な遊技状態として、単位時間あたりの第2始動口12の開放時間が通常遊技状態よりも長く、第2始動口12の開放の容易性が遊技者に有利な状態を「時短状態」という。これに対して、単位時間あたりの第2始動口12の開放時間が通常遊技状態での開放時間であり、第2始動口12の開放の容易性が遊技者に有利ではない状態を「非時短状態」という。」
「【0158】
このように、時短状態においては非時短状態よりも当たりに当選し易いこと、普図変動時間が短くなり易いこと、および1回の補助遊技における電チュー12Dの開放時間が長くなり易いことからなる3つの条件が成立することによって、時短状態では、非時短状態に比べて、単位時間あたりの電チュー12Dの開放時間が長くなり、第2始動口12への入賞を容易にすることができる。この結果、発射球数に対する賞球数の割合である所謂「ベース」が高くなる。そのため、ベースの高い時短状態では、通常遊技状態に比べて所持する遊技球を大きく減らすことなく大当たり当選を狙うことができる。すなわち、時短状態の方が非時短状態よりも遊技者にとって有利であるといえる。」
「【0163】
このように、パチンコ遊技機PY1は、低確率低ベース遊技状態、低確率高ベース遊技状態、高確率低ベース遊技状態、高確率高ベース遊技状態、および大当たり遊技状態で制御可能である。なお、大当たり遊技状態では、大入賞口14が長時間開放し、遊技球を多量に獲得することができるので、大当たり遊技状態も遊技者に有利な遊技状態ということができる。よって、大当たり遊技状態と、特定遊技状態は、通常遊技状態よりも遊技者に有利な「有利遊技状態」ということもできる。また、小当たり遊技が実行されているときは一応、大入賞口14が開放し、遊技球を獲得することができるので、小当たり遊技が実行されている状態も有利遊技状態に含めることもできる。
【0164】
なお、高確率高ベース遊技状態、および高確率低ベース遊技状態は、大当たり当選確率が通常確率状態よりも高確率となっている点で低確率低ベース遊技状態よりも遊技者に有利な遊技状態である。また、高確率高ベース遊技状態、および低確率高ベース遊技状態は、第2始動口12への入賞容易性が非時短状態よりも高い点で低確率低ベース遊技状態よりも遊技者に有利な遊技状態である。さらには、大当たり遊技状態、および小当たり遊技状態では、1回の入賞による賞球数が第1始動口11、および第2始動口12よりも多い大入賞口14が開放するので、大当たり遊技状態、および小当たり遊技状態は低確率低ベース遊技状態よりも遊技者に有利な遊技状態である。」
「【0418】
また、パチンコ遊技機PY1によれば、第2終了条件より第1終了条件の方が早期に終了し易い。これは、第2終了条件は特図可変表示の実行回数が20回に到達することであるのに対し、第1終了条件は特図可変表示の実行回数が20回に到達すること以外に、Lハズレ変動またはSPハズレ変動による特図可変表示の実行と、特図可変表示の実行回数が10回になった後に終了判定で20%の確率で「特殊演出モードを終了」と判定されることも含まれるからである。そのため、見方を変えると、第3開始条件で設定された特殊演出モードの方が第1開始条件または第2開始条件で設定された特殊演出モードよりも長く継続し易いことになる。このように、通常遊技状態よりも遊技者に有利な時短状態が終了した後の方が特殊演出モードを長く継続し易くすることで、その終了に対する失意を軽減させることができる。」
「【0425】
この場合、時短演出モードが設定されている場合のみ特殊演出モードが設定され、確変演出モードが設定されている場合は特殊演出モードが設定されず、第1通常演出ステージの通常演出モードが設定されるようにしても良い。反対に、確変演出モードが設定されている場合のみ特殊演出モードが設定され、時短演出モードが設定されている場合は特殊演出モードが設定されず、第1通常演出ステージの通常演出モードが設定されるようにしても良い。さらには、確変演出モードおよび時短演出モードの何れの場合であっても、通常遊技状態が設定されるときに特殊演出モードが設定されるようにしても良い。なお、遊技者に有利な遊技状態から通常遊技状態が設定される際に特殊演出モードを設定するか否かの判定を行い、特殊演出モードを設定すると判定された場合は特殊演出モードを設定し、特殊演出モードを設定すると判定されなかった場合は通常演出モードを設定するようにしても良い。」
「【0428】
なお、通常遊技状態において大当たり当選し、大当たり遊技が実行されて大当たり遊技後に、遊技者に有利な高確率高ベース遊技状態、および低確率高ベース遊技状態で遊技が制御されるときに特殊演出モードが設定されるようにしても良い。さらには、大当たり遊技が実行された後に、高確率低ベース遊技状態、または低確率低ベース遊技状態で遊技を制御可能にしておき、これらの遊技状態で遊技が制御されているときに所定期間、特殊演出モードを設定可能にしても良い。また、大当たり遊技後に高確率高ベース遊技状態、および低確率高ベース遊技状態で遊技が制御可能であり、これらの遊技状態に専用の演出モードが設定され、高確率高ベース遊技状態は特図可変表示が所定回数実行されたら終了するようにし、専用の演出モードで所定回数の特図可変表示が実行されたら特殊演出モードが設定されるようにしても良い。」
以上の記載事項からみて、本件特許明細書において、一貫して、通常遊技状態よりも遊技者に有利な遊技状態についてのみ記載されていることが読み取れる。
そうすると、本件特許明細書において、有利遊技状態とは、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なものであることは明らかである。
エ してみると、請求項1における「前記通常遊技状態よりも遊技者に不利な有利遊技状態」なる記載は、当業者にとって技術的に疑念を生じさせるものであり、本件特許明細書を参酌すれば、請求項1における「不利」なる記載が明らかな誤りであり、当該記載が当然に「有利」の意味であるといえる。
オ したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること(特許法第126条第5項)
上記(1)ウの本件特許明細書で摘記した記載と願書に最初に添付した明細書の記載は同一であるから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書の記載に基づいて導き出されるものである。
したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと(特許法第126条第6項)
上記(1)で説示したとおり、請求項1における「不利」なる記載は、それ自体で又は本件特許明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、「有利」なる正しい記載が自明な事項として定まるといえるから、この誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について(特許法第126条第7項)
訂正事項1は、特許請求の範囲の誤記の訂正を目的とするものであるから、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができることが要件となるところ、当該訂正後における特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由を発見しないから、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
2 訂正事項2
(1)訂正の目的(特許法第126条第1項ただし書)
訂正事項2は、本件特許明細書の【0006】の記載について、訂正事項1に係る訂正に伴って特許請求の範囲の請求項1の記載と整合がとれなくなったことを是正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること(特許法第126条第5項)
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に対応する明細書の段落【0006】について、訂正事項1と同様の訂正をしたものである。
そして、上記(1)ウで摘記した記載は、本件特許明細書と願書に最初に添付した明細書と同一である。
したがって、訂正事項2は、訂正事項1と同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと(特許法第126条第6項)
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に対応する明細書の段落【0006】について、訂正事項1と同様の訂正をしたものである。
したがって、訂正事項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものではなく、かつ、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
第4 むすび
以上のとおり、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものであり、また、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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