特許訂正審判
2022-390032
遊技機
- 審判番号
- 2022-390032
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2017-127665
- 登録番号
- 6717543
- 請求日
- 2022年03月28日
- 審決日
- 2022年09月07日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 大一商会
- 【請求人代理人】小原 崇広
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼川 康史
- 審判官 三田村 陽平
- 審判官 澤田 真治
- 分類
- P141 .852-Z (A63F) / P141 .853-Z (A63F) / P141 .855-Z (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6717543号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6717543号(以下「本件特許」という。)は、平成29年6月29日の出願(特願2017-127665)であって、令和2年6月15日にその特許権の設定登録がなされ、令和4年3月28日に本件訂正審判の請求がなされた後、当審において、令和4年6月14日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もなかったものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)及び特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)を本件審判請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のものである。
1 訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1における
「前記演出受付期間では、前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」を、
「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」
に訂正する。
2 訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項1における
「該特定の演出受付期間では、操作受付がなされない場合に前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」を、
「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」
に訂正する。
3 訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0008】の
「前記演出受付期間では、前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」を、
「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」
に訂正する。
4 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0008】の
「該特定の演出受付期間では、操作受付がなされない場合に前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」を、
「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」
に訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的について
ア 特許請求の範囲の減縮
本件特許請求の範囲の請求項1には、「前記演出受付期間では、前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」(以下、「記載A」という。)と記載されていることから、操作後演出は「演出受付期間」で実行開始されるものである。
一方、訂正事項1は、操作後演出が実行される時期について特定する「前記演出受付期間では、」という記載を削除するものであるから、訂正事項1によって、操作後演出が実行される時期について、「演出受付期間」で実行開始されるもの以外にも、「演出受付期間」でない期間、例えば「演出受付期間」が終了した後で実行開始されるものなど、任意の時期で実行されるものを含みうることとなった。
してみると、訂正事項1により「前記演出受付期間では、」という記載が削除された結果、「操作後演出」が「実行される」時期が「演出受付期間」から任意の時期で実行されるものを含みうることとなった点において、操作後演出が実行される時期を拡張するものとなり、本件特許請求の範囲の請求項1の「前記演出受付期間では、前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」という事項の下位概念でなく減縮には当たらない。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
イ 明瞭でない記載の釈明
上記記載Aより、操作後演出が実行される時期について「演出受付期間」で実行開始されるものであることが明確に理解できるため、上記記載Aは、それ自体意味の不明瞭な記載ではない。
また、上記記載Aにおける「前記自動演出手段」が指す、本件特許請求の範囲の請求項1の「前記演出受付期間で操作受付がなされない場合であっても、該操作受付があったときと同じ操作後演出を実行開始させる自動演出手段」という記載も、操作後演出が「演出受付期間」で実行開始されるものであることと矛盾する等の事情は認められず、上記記載Aは、それ自体の記載内容が他の記載において不合理を生じている記載でもない。
したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものには該当しない。
ウ 誤記の訂正
上記記載Aには、それ自体で誤りであることが明らかな記載は存在せず、また、上記イの検討から、上記記載Aは本件明細書の記載との関係で誤りであることが明らかな記載も存在しない。
さらに、上記アの検討から、訂正事項1の「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」という記載は、上記記載Aを拡張するものであるから、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものとも認められない。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものには該当しない。
また、訂正事項1は、誤訳の訂正、請求項間の引用関係の解消のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
エ 請求人の主張
請求人は、訂正事項1の目的について、審判請求書において、次の主張をしている。
・主張1
「訂正前の「前記演出受付期間では、前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき」との記載では、「自動演出手段」自体が包含する「演出受付期間」との関係で、「演出受付期間」が二重記載になっており、より具体的には「前記演出受付期間では前記演出受付期間で操作受付がなされない場合に、該操作受付があったときと同じ操作後演出が実行開始されるとき」といった意味になっている。この記載事項については、本来、「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき・・・」でなければならず、その前の記載事項である「前記演出受付期間では、」との記載は、明細書、及び特許請求の範囲作成段階で生じたタイプのミスを削除し忘れたものであり、これを訂正しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである(第2頁第29行-45行)
請求人が主張する上記主張1ついて検討する。
請求人は上記主張1において、「「自動演出手段」自体が包含する「演出受付期間」との関係で、「演出受付期間」が二重記載になっており」と主張しているが、このような二重記載やタイプのミスがあるからといって、直ちに誤記の訂正に該当するものではない。
そして、請求人が主張する誤記の訂正のほか、いずれの目的にも該当しないことは、既に説示したとおりである。
したがって、訂正事項1が誤記の訂正を目的とする請求人の上記主張1を採用することはできない。
オ 小括
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、請求項間の引用関係の解消のいずれにも該当しないものであり、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
(2)新規事項の追加の有無について
訂正事項1の「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」について、本件特許明細書には、以下の記載がある(下線は、当審で付した)。
「【2903】
ただし、この演出例では、演出受付が許容されるように設定される期間(図285:タイミングtf1~tf3)内で操作ボタン410は操作されず、当該有効期間内の予め定められたタイミング(ここでは、タイミングtf2(図285を参照))で操作ボタン410に対する自動演出機能が有効化された場合を想定している。
【2904】
すなわちこの場合、演出受付が許容されるように設定される期間(図285:タイミングtf1~tf3)内で操作ボタン410に対する操作によって演出受付がなされた場合と同じ変化を演出に対して生じさせることとなる。ここでは、図柄変動に際して行われた演出判定の結果に基づいて、「特定装飾部材SDY(簾役物)が動作せず、演出表示装置1600においてチャンス!!が表示される低期待態様演出(図286(d)を参照)」、または「特定装飾部材SDY(簾役物)が動作するとともに、演出表示装置1600において激熱!!が表示される高期待態様演出(図286(e)を参照)」が操作後演出として実行されるようになっている。」
上記記載より、本件特許明細書には、訂正事項1の「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」が記載されていると認められる。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書より導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記アで検討したとおり、訂正後の「前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」という事項は、訂正前の「前記演出受付期間では、前記自動演出手段によって前記操作後演出が実行開始されるとき、」という事項を拡張するものとなっている。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合しない。
2 訂正事項2について
(1)訂正の目的について
ア 特許請求の範囲の減縮
本件特許請求の範囲の請求項1には、「該特定の演出受付期間では、操作受付がなされない場合に前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」(以下、「記載B」という。)と記載されていることから、操作後演出は「特定の演出受付期間」で実行開始されるものである。
一方、訂正事項2には、「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」と記載されており、操作後演出は「特定の演出受付期間」が終了すると実行開始されるものである。
してみると、訂正前と訂正後で操作後演出が実行開始されるタイミングが異なるものであるから、訂正事項2の「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」という事項は、本件特許請求の範囲の請求項1の「該特定の演出受付期間では、操作受付がなされない場合に前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」という事項の下位概念でなく減縮には当たらない。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
イ 明瞭でない記載の釈明
訂正事項2は、上記記載Bにおける「特定の演出受付期間」において、いつまでに「操作受付」がなければ「操作受付がなされない場合」に該当し、「特定の操作後演出が実行開始される」のかが明瞭でなかったものを明瞭にするために、「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始される」と訂正することによって、「操作受付がなされない場合」が「操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了する」ことにより判定されることを明瞭にする趣旨であると捉える余地があるので検討する。
ここで、上記記載Bと同様の記載である本件特許請求の範囲の請求項1の「前記演出受付期間で操作受付がなされない場合であっても、該操作受付があったときと同じ操作後演出を実行開始させる自動演出手段」という記載については、演出受付期間と操作受付との期間に関する記載の訂正を求めていない。そうすると、訂正事項2により特許請求の範囲全体として明瞭でない記載が残るとともに、記載の不整合を生じさせるため、かえって不明瞭となる。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものには該当しない。
ウ 誤記の訂正
上記記載Bには、それ自体で誤りであることが明らかな記載は存在しない。
また、上記アの検討から、訂正事項2の「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」という記載は、操作後演出が実行開始されるタイミングが当該記載Bと異なるものであるから、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものとも認められない。
したがって、訂正事項2は、誤記の訂正を目的とするものには該当しない。
(2)新規事項の追加の有無について
訂正事項2の「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」について、本件特許明細書には、以下の記載がある(下線は、当審で付した)。
ア「【2903】
ただし、この演出例では、演出受付が許容されるように設定される期間(図285:タイミングtf1~tf3)内で操作ボタン410は操作されず、当該有効期間内の予め定められたタイミング(ここでは、タイミングtf2(図285を参照))で操作ボタン410に対する自動演出機能が有効化された場合を想定している。」
イ「【2906】
なお、この演出例では、演出受付が許容される期間については、図285に示されるように、操作ボタン410に対する自動演出機能が有効化されて演出受付が自動発生したタイミングtf2で早期終了されることとなる。そしてこの後、演出受付が許容されないなかで、操作ボタン410を模した摸画像(ボタン画像BTG)を表示状態にしたままで操作後演出が開始されることとなるが、操作ボタン410を模した摸画像(ボタン画像BTG)については、操作後演出が終了されるタイミングtf5が到来するよりも前に非表示にするようにしている。」
ウ「【2966】
ただし、この演出例では、特定の受付演出に対応する有効期間内で遊技者による操作が行われない場合を想定しており、図290(j)(図288(d)に相当)に示されるタイミングが到来すると、自動演出機能によって演出受付が発生し、該演出受付に応じた操作後演出が開始されるようになっている。」
エ「【2972】
ちなみに、図290及び図291を参照しつつ上述した特定の受付演出も、基本的には、図285に示した演出例と同じ態様で演出進展されるようになっている。すなわち、図285に示されるタイミングtf1では図290(g)に示される演出状況が現れるようになっており、図285に示されるタイミングtf2では図290(j)に示される演出状況が現れるようになっている。ただし、図285に示されるタイミングtf2では期待度を示唆しない操作後演出のみが実行される点と、刀装飾画像SYGとして継続されていた動画像が非表示にされる図285に示されるタイミングtf4が到来した以降に、期待度を示唆する操作後演出が新たに開始される点とで、図285に示した演出例と異なっていると言える。なお、この演出例において、図285に関する上述した別例を適用するようにしてもよい。」
上記ア~エの記載より、本件特許明細書には、「特定の受付演出に対応する有効期間」内で操作ボタン410は操作されず、タイミングtf2で操作ボタン410に対する自動演出機能が有効化されて演出受付がタイミングtf2で早期終了され、この後、自動演出機能によって発生した演出受付に応じた操作後演出が開始されることが記載されているといえる。
そうすると、本件特許明細書には、訂正事項2の「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」が記載されていると認められる。
よって、訂正事項2は、本件特許明細書より導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記アで検討したとおり、訂正後の「該特定の演出受付期間で操作受付がなされずに当該特定の演出受付期間が終了すると前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」という事項は、訂正前の「該特定の演出受付期間では、操作受付がなされない場合に前記自動演出手段によって前記操作後演出として特定の操作後演出が実行開始されるようになっており、」という事項と、操作後演出が実行開始されるタイミングが異なるものとなっている。
よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第6項の規定に適合しない。
3 訂正事項3、4について
訂正事項1、2は、上記「1 訂正事項1について」及び「2 訂正事項2について」において検討したように訂正の要件を満たすものでない。
そうすると、訂正の要件を満たさない訂正事項1、2に整合させる内容の訂正を行う上記訂正事項3、4は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当しない。
また、訂正事項3、4は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、請求項間の引用関係の解消のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1、2は、特許法第126条第5項の規定に適合するものの、同条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではなく、同条第6項の規定にも適合しない。
また、本件訂正の訂正事項3、4は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。
したがって、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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