2022-020412
指標素子及び指標素子モジュール
- 審判番号
- 2022-020412
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-029914外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2024年01月29日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】TOPPANホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【請求人代理人】蔵田 昌俊
- 【請求人代理人】井上 正
- 【請求人代理人】飯野 茂
- 【請求人代理人】森川 元嗣
- 【請求人代理人】矢頭 尚之
- 【請求人代理人】大宅 郁治
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成30年2月22日の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
第2 令和4年12月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月16日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所である。)。
「【請求項1】顕微鏡に装着される指標素子であって、第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に充填され、正の誘電率異方性を有する液晶を含む高分子分散型液晶層と、続きを表示(全13行)前記第1基板上に設けられた複数の配線と、前記複数の配線上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた複数のセグメント電極と、前記絶縁層内に設けられ、前記複数の配線と、前記複数のセグメント電極とを電気的に接続する複数のコンタクトプラグと、前記第2基板に設けられ、前記複数のセグメント電極に対向するようにして前記複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極とを具備し、平面視において前記指標素子のうち前記複数のセグメント電極の各々が占める領域は、光を透過する透過状態と、光を散乱する散乱状態とに切り替え可能であり、前記指標素子は、形状の異なる複数の指標を選択的に表示可能である指標素子。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】顕微鏡に装着される指標素子であって、第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に充填され、正の誘電率異方性を有する液晶を含む高分子分散型液晶層と、続きを表示(全12行)前記第1基板上に設けられた複数の配線と、前記複数の配線上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた複数のセグメント電極と、前記絶縁層内に設けられ、前記複数の配線と、前記複数のセグメント電極とを電気的に接続する複数のコンタクトプラグと、前記第2基板に設けられ、前記複数のセグメント電極に対向するようにして前記複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極とを具備し、形状の異なる複数の指標を選択的に表示可能である指標素子。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「指標素子」について、「平面視において前記指標素子のうち前記複数のセグメント電極の各々が占める領域は、光を透過する透過状態と、光を散乱する散乱状態とに切り替え可能であり」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明等
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平10-48732号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。以下同じ。)
「【請求項3】 一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶素子であって、液晶分子によって構成される液晶層中に高分子を分散させた前記液晶層に電界を印加して透明状態及び光散乱状態を制御する液晶素子からなり、倍率を任意に表示可能な表示パターンと複数のスケールパターンが形成されているファインダー表示パネルと、倍率調整機構もしくはズーム機構と、該倍率調整機構もしくはズーム機構による倍率を判定もしくは検出する手段と、判定もしくは検出された倍率に応じて上記表示パターンおよびスケールパターンを選択して駆動する選択駆動手段とを備えていることを特徴とするファインダー表示装置。」
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等の光学系のファインダー表示技術さらには液晶セルを利用したファインダー表示装置に好適な技術に関し、特に高分子分散型液晶セルを用いたファインダー表示装置および表示駆動方法に関する。」
「【0004】【発明が解決しようとする課題】上述のように従来よりカメラ等においてはファインダー表示部には視野内に倍率やスケール、撮影モードなど種々の情報が表示されるようになっている。ところが、顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等においては、倍率やスケールを視野内に表示するようにしたものがなかった。」
「【0006】この発明の目的は、顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等の視野内に倍率やスケールなどの情報をできるようにしたファインダー表示装置を提供することにある。顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等においては、倍率やスケールを視野内に表示するようにしたものがなかった。【0007】この発明の他の目的は、コントラストが充分にとれ、表示が非常に見易いとともに、低消費電力で駆動可能なファインダー表示装置を提供することにある。【0008】【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するため、高分子物質と液晶を互い分散させた高分子分散型液晶素子によりファインダー表示パネルを構成するとともに、表示パネルには数値表示可能ないわゆる7セグメント型電極および設定可能な倍率に対応した複数のスケール表示電極を設けておき、倍率調整機構やズーム機構に連動して上記電極を選択的に駆動して所望の倍率とスケールを表示パネルに表示させるようにしたものである。これによって、倍率やスケールが顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等の視野内に見えるようになるため、観察がやり易くなる。【0009】上記高分子分散型液晶素子としては、電圧が印加されていない状態で透明ないわゆるリバースモードが適している。これによって、電極に印加する電圧に応じて散乱度を調節できるため、周囲の像とのコントラストが高くなる。また、ファインダー内の大部分を占める視野領域を除いた表示部分にのみ電圧を印加させればよいため、消費電力を減らすことができる。」
「【0013】図2には上記ファインダー表示パネル7によってファインダー内に表示されるパターンの例を、また図3には上記ファインダー表示パネル7の構造を示す。【0014】図2において、目盛り状のパターン71a,71b,71cは倍率に応じた寸法を表すためのスケール、72a,72bは倍率を数字で示すためのいわゆる7セグメント型表示パターン、73は倍率を意味する記号であり、これらは電極パターンとして形成される。この実施例においては、セグメント電極とそれに対応するコモン電極は同一形状である。」
「【0016】すなわち、この実施例のファインダー表示パネル7としての液晶セルは、図3に示されているように、2枚の透明ガラス板21,22の間に高分子物質と液晶とを分散させた混合体23を封入した高分子分散型液晶セルである。上記2枚のガラス板21,22の内面には、セグメント電極やコモン電極を構成するITO等からなる透明電極24,25が蒸着法等により形成され、さらにその表面にはポリイミドなどからなる配向膜(図示省略)がスピンコート等によりそれぞれ被着されている。この配向膜は例えばその表面をさらしで所定方向に擦ることで配向処理がなされている。この場合、各基板の配向膜の配向方向は互いに直交するように設定され、配向膜間におよそ10μmの隙が生じるように透明ガラス板21,22の間隔が、スペーサ30によって設定されている。そして、上記配向膜同士の隙に、例えば高分子前駆体として4-ビフェニルメタクリレートと液晶PN-001とを1:9の割合で混合したものを封入してから紫外線を照射して高分子が粒子状に分散した組織にする。」
「【0021】図4において、11はファインダー表示パネル7を駆動するLCDドライバであり、このLCDドライバ11によってセグメント電極24にはそれぞれの表示状態に応じた波形(コモン電極波形と逆相のオン波形またはコモン電極波形と同相のオフ波形)のセグメント電極信号が、またコモン電極25には共通のコモン電極信号が印加される。また、12は上記照明用ランプ9を駆動するLEDドライバであり、このLEDドライバ12によって照明用ランプ9が点灯される。」
「【0024】この実施例においては、上記コントローラ16が画角変換ボタン17からの入力信号に基づいてズーム機構による倍率を判定し、それに対応した数値とスケールを選択して、対応する表示パターン(71a~71c,72)のセグメント電極24へオン波形を印加させる制御信号を形成してLCDドライバ11に出力するように構成されている。」
図1~3は次のものである。
[図:0001408605000001.jpg]
[図:0001408605000002.jpg]
(イ)引用文献1から読み取れる事項
a 図1から、顕微鏡に装着されたファインダー表示パネル7が、見て取れる。
b 図3から、透明ガラス板21上に複数のセグメント電極24が設けられ、透明ガラス板22上に複数のコモン電極25が設けられていることが、見て取れる。
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献1には、図2及び図3に記載されたファインダー表示パネル7について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明等の認定に根拠とした段落の段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。
「一対の基板間に液晶層を挟持してなる液晶素子であって、液晶分子によって構成される液晶層中に高分子を分散させた前記液晶層に電界を印加して透明状態及び光散乱状態を制御する液晶素子からなり、倍率を任意に表示可能な表示パターンと複数のスケールパターンが形成されているファインダー表示パネルであって、(【請求項3】)前記一対の基板は、2枚の透明ガラス板21,22であって、当該2枚の透明ガラス板21,22の間に高分子物質と液晶とを分散させた混合体23を封入した高分子分散型液晶セルをもってファインダー表示パネルとしての液晶セルとし、(【0016】)上記2枚の透明ガラス板21,22の内面には、複数のセグメント電極24やコモン電極25を構成するITO等からなる透明電極24,25が形成され、(【0016】、上記(イ)b)ファインダー表示パネル7によってファインダー内に表示されるパターンである目盛り状のパターン71a,71b,71cは倍率に応じた寸法を表すためのスケール、72a,72bは倍率を数字で示すためのいわゆる7セグメント型表示パターン、73は倍率を意味する記号であり、これらは電極パターンとして形成されており、(【0014】)ファインダー表示パネル7としての液晶セルを駆動する際に、セグメント電極24にはそれぞれの表示状態に応じた波形(コモン電極波形と逆相のオン波形またはコモン電極波形と同相のオフ波形)のセグメント電極信号が、またコモン電極には共通のコモン電極信号が印加され、(【0016】及び【0021】)ズーム機構による倍率を判定し、それに対応した数値とスケールを選択して、対応する表示パターン(71a~71c,72)のセグメント電極24へオン波形を印加させて、所望の倍率とスケールを表示パネルに表示させるようにしたものであり、(【0008】及び【0024】)これによって、倍率やスケールが顕微鏡の視野内に見えるようになる(【0008】)顕微鏡に装着されるファインダー表示パネル。((イ)a)」
イ 引用文献2の記載及び引用文献2に記載された技術的事項について
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2014-240891号公報(以下「引用文献2」という。原査定の引用文献5に相当。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0001】本発明は、液晶表示装置に関する。」
「【0020】[2.液晶表示装置の構成]次に、図1乃至図3のキャラクターを表示するための液晶表示装置の構成について説明する。図4は、第1実施形態に係る液晶表示装置10のブロック図である。液晶表示装置10は、液晶表示パネル11、端子部12、信号線ドライバ(信号線駆動回路)13、共通線ドライバ(共通線駆動回路)14、及び制御回路15を備える。【0021】液晶表示パネル11は、液晶層を備え、この液晶層を透過する光に応じて画像表示を行う。液晶表示パネル11は、液晶層に電位差(電界)を印加するために、複数のセグメント電極、及び複数のセグメント電極に対向配置された1個の共通電極を備える。複数のセグメント電極にそれぞれ電気的に接続された信号線、及び共通電極に電気的に接続された共通線は、端子部12に含まれる複数の端子に電気的に接続される。」
「【0029】CF基板20と対向基板25との間には、液晶層30が挟持される。液晶層30は、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、又は高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)により構成される。PDLCは、高分子層(高分子ネットワーク)内に液晶が分散された構造を有しており、すなわち高分子内において液晶が相分離した構造を有している。或いは、高分子ネットワーク中の液晶が連続相を有していてもよい。液晶層30は、表示領域(画面領域)を囲む枠状のシール材(図示せず)によって封止される。【0030】高分子層としては光硬化樹脂を用いることができる。例えば、PDLCは、光重合型の高分子前駆体(モノマー)に液晶を混合させた溶液に紫外線を照射し、モノマーを重合させてポリマーを形成し、そのポリマーのネットワーク中に液晶が分散される。液晶としては、例えば、誘電率異方性が正(ポジ型)のネマティック液晶が用いられる。すなわち、液晶層に電圧が印加されない場合は、液晶分子が高分子ネットワーク内にランダムに配置した状態となり、液晶層に電圧が印加される場合は、液晶分子が電界方向に立っている状態(液晶分子の長軸が電界方向に向いている状態)となる。」
「【0049】セグメント電極27及び共通電極23を同電圧にして高分子分散型液晶層30に電圧(電界)を印加しない場合、液晶分子がランダムに配置する。対向基板25から液晶層30に入射した光は、散乱を起こしながら液晶層30を透過し、さらにカラーフィルタ22を透過して反射膜21で反射され、観察者の目に届く。これにより、赤色フィルタ22-R、緑色フィルタ22-G、及び青色フィルタ22-Bを透過した光が混ざり、観察者には白表示として視認される。」
「【0080】第1及び第2実施形態で説明した液晶表示装置は、デジタル時計や、カメラなどのファインダに文字や図形を重ねて表示するパターン表示型の液晶表示装置に適用することができる。その他、冷蔵庫や洗濯機などの家庭用電気器具に備えられた表示部などに使用することができる。」
図5は次のものである。
【図5】
[図:0001408605000003.jpg]
(イ)引用文献2に記載された技術的事項
上記(ア)によれば、引用文献2には、図5の液晶表示パネル11について、次の技術的事項が(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「液晶層を備え、この液晶層を透過する光に応じて画像表示を行う液晶表示パネル11であって、液晶表示パネル11は、液晶層に電位差(電界)を印加するために、複数のセグメント電極、及び複数のセグメント電極に対向配置された1個の共通電極を備え、(【0021】)液晶層は、高分子分散型液晶、又は高分子ネットワーク型液晶により構成され、(【0029】)液晶としては、誘電率異方性が正(ポジ型)のネマティック液晶が用いられ、(【0030】)高分子分散型液晶層30に電圧(電界)を印加しない場合、液晶分子がランダムに配置し、対向基板25から液晶層30に入射した光は、散乱を起こしながら液晶層30を透過して、観察者の目に届くものであり、(【0049】)カメラなどのファインダに文字や図形を重ねて表示するパターン表示型の液晶表示装置に適用することができる、(【0080】)液晶表示パネル11。(【0021】)」
(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 本件補正発明の「顕微鏡に装着される指標素子」及び「指標素子」との特定事項について
引用発明は「顕微鏡に装着されるファインダー表示パネル」と「ファインダー表示パネル7によってファインダー内に表示されるパターンである目盛り状のパターン71a,71b,71cは倍率に応じた寸法を表すためのスケール、72a,72bは倍率を数字で示すためのいわゆる7セグメント型表示パターン、73は倍率を意味する記号」を備えており、上記「ファインダー表示パネル7によってファインダー内に表示されるパターン」は、本件補正発明の「指標素子」に相当する。そして、引用発明は「ファインダー表示パネル7によって」「顕微鏡」の「ファインダー内に表示されるパターン」であるから、本件補正発明の「顕微鏡に装着される指標素子」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
イ 本件補正発明の「第1基板」及び「第2基板」との特定事項について
引用発明のセグメント電極24が形成される「透明ガラス板21」及びコモン電極25が形成される「透明ガラス板22」は、それぞれ、本件補正発明の「第1基板」及び「第2基板」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
ウ 本件補正発明の「前記第1及び第2基板間に充填され、正の誘電率異方性を有する液晶を含む高分子分散型液晶層」との特定事項について
引用発明の「高分子分散型液晶セル」は「2枚の透明ガラス板21,22の間に高分子物質と液晶とを分散させた混合体23を封入し」「高分子分散型液晶セル」を備えており、当該「高分子分散型液晶セル」が「液晶層」を有することは明らかであるから、引用発明は、2枚の透明ガラス板21,22の間に、高分子分散型の液晶層を備えているといえる。
したがって、引用発明の「2枚の透明ガラス板21,22の間に高分子物質と液晶とを分散させた混合体23を封入」し、「高分子を分散させた」「液晶層」と、本件補正発明の「前記第1及び第2基板間に充填され、正の誘電率異方性を有する液晶を含む高分子分散型液晶層」とは、「前記第1及び第2基板間に充填され」た「高分子分散型液晶層」の点で共通する。
エ 本件補正発明の「前記第1基板上に設けられた複数の配線と、前記複数の配線上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた複数のセグメント電極と、前記絶縁層内に設けられ、前記複数の配線と、前記複数のセグメント電極とを電気的に接続する複数のコンタクトプラグ」との特定事項について
引用発明の「複数のセグメント電極」は、本件補正発明の「複数のセグメント電極」に相当する。
また、引用発明の「複数のセグメント電極」は、「透明ガラス板21上に」「設けられ」るものであり、「セグメント電極にはそれぞれの表示状態に応じた波形(コモン電極波形と逆相のオン波形またはコモン電極波形と同相のオフ波形)のセグメント電極信号が、」「印加され」るものであるから、「複数のセグメント電極」に、それぞれ対応するように複数の配線を設けていることが明らかである。
そして、それぞれの「セグメント電極」及び各セグメント電極に対応する配線の導通は避ける必要があるところ、複数の電極とそれに対応する複数の配線を基板上に設けるにあたっては、複数の配線と複数の電極との間に絶縁層を設け、当該絶縁層により隔たれた複数の電極とそれに対応する配線とをコンタクトプラグにより接続するように構成することは周知技術であり、上記導通を避ける構成が明記されていない引用発明においても当該構成を備えていると解することが自然であるといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
オ 本件補正発明の「前記第2基板に設けられ、前記複数のセグメント電極に対向するようにして前記複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極」との特定事項について
引用発明の「コモン電極」は、「コモン電極」が共通の電位となる電極を意味するといえるから、本件補正発明の「共通電極」に相当する。また、複数のコモン電極は、複数のセグメント電極に対向しており、前記複数のコモン電極が共通の電位となる電極であることは、当該複数のコモン電極が前記複数のセグメント電極に共通に設けられているといえる。
そして、引用発明の「コモン電極」は、「透明ガラス板22上に」「設けられ」ており、透明ガラス板21上に設けられた「複数のセグメント電極」に対向していることは明らかである。
したがって、引用発明の「透明ガラス板22上に」「設けられ」た「コモン電極」と、本件補正発明の「前記第2基板に設けられ、前記複数のセグメント電極に対向するようにして前記複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極」とは、「前記第2基板に設けられ、前記複数のセグメント電極に対向するようにして前記複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極」である点で一致するといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
カ 本件補正発明の「平面視において前記指標素子のうち前記複数のセグメント電極の各々が占める領域は、光を透過する透過状態と、光を散乱する散乱状態とに切り替え可能であり」との特定事項について
引用発明の「セグメント電極」は「それぞれの表示状態に応じた波形」の「セグメント電極信号」が「印加」されるものであり、また、「ズーム機構による倍率を判定し、それに対応した数値とスケールを選択して、対応する表示パターン(71a~71c,72)のセグメント電極24へオン波形を印加させて、所望の倍率とスケールを表示パネルに表示させるようにしたものであ」るから、引用発明は、平面視において、ファインダー表示パネルのうち複数のセグメント電極のそれぞれの占める領域の表示状態を切り替え可能といえる。
さらに、引用発明は、「液晶分子によって構成される液晶層中に高分子を分散させた前記液晶層に電界を印加して透明状態及び光散乱状態を制御し」ていることから、上記表示状態の切り替えは、透明状態と光散乱状態を切り替えることによるものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
キ 本件補正発明の「前記指標素子は、形状の異なる複数の指標を選択的に表示可能である」との特定事項について
引用発明は、「ズーム機構による倍率を判定し、それに対応した数値とスケールを選択して、対応する表示パターン(71a~71c,72)のセグメント電極24へオン波形を印加させて、所望の倍率とスケールを表示パネルに表示させるようにしたものである」から、引用発明の「ファインダー表示パネル」は、所望の倍率とスケールを選択的に表示するものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を備えている。
(4)一致点及び相違点の認定
上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明は、下記の点で一致し、下記の点で相違する。
【一致点】
「顕微鏡に装着される指標素子であって、第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に充填された高分子分散型液晶層と、前記第1基板上に設けられた複数の配線と、続きを表示(全12行)前記複数の配線上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられた複数のセグメント電極と、前記絶縁層内に設けられ、前記複数の配線と、前記複数のセグメント電極とを電気的に接続する複数のコンタクトプラグと、前記第2基板に設けられ、前記複数のセグメント電極に対向するようにして前記複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極とを具備し、平面視において前記指標素子のうち前記複数のセグメント電極の各々が占める領域は、光を透過する透過状態と、光を散乱する散乱状態とに切り替え可能であり、前記指標素子は、形状の異なる複数の指標を選択的に表示可能である指標素子。」
【相違点】
高分子分散型液晶層について、本件補正発明は、「正の誘電率異方性を有する液晶を含む」のに対し、引用発明は、そのようなものか明らかでない点。
(5)判断
ア 相違点について
高分子分散型液晶セルは、一般に、電圧が印加されている状態で光散乱状態となるノーマルモード又は電圧が印加されている状態で光散乱状態となるリバースモードを有することが技術常識であるところ、引用発明の高分子分散型液晶セルを用いた高分子分散型液晶素子として、電圧が印加されている状態で光散乱状態となるノーマルモードと電圧が印加されている状態で光散乱状態となるリバースモードのいずれとするのか、当業者が検討するといえる。
そして、引用文献2に記載された技術的事項において、誘電率異方性が正(ポジ型)のネマティック液晶が用いられ、高分子分散型液晶層30に電圧(電界)を印加しない場合、液晶分子がランダムに配置し、対向基板25から液晶層30に入射した光は、散乱を起こしながら液晶層30を透過して、観察者の目に届くノーマルモードの表示装置であることが記載されているところ、引用発明と引用文献2に記載された技術的事項は、高分子分散型液晶を用いた表示装置という技術分野が関連し、高分子分散型液晶素子に印加される電圧を変化させて当該高分子分散型液晶素子を光散乱状態とすることを利用して表示内容を変更するという作用・機能が共通するものであるから、引用発明の高分子分散型液晶セルを用いた高分子分散型液晶素子として、引用文献2に記載された技術的事項を踏まえて、電圧が印加されている状態で光散乱状態となるノーマルモードを選択することは、当業者が適宜選択する事項にすぎない。
以上によれば、引用発明として、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
イ 共通電極について
仮に、本件補正発明の「複数のセグメント電極に共通に設けられた共通電極」が、「複数のセグメント電極に共通に設けられた」「1つの」「共通電極」と解されるとしても、共通電極を1つの電極により構成する技術は周知であるから、引用発明に記載の「コモン電極」として、上記周知技術のように一つの電極により構成することは、当業者が適宜なし得た事項である。
ウ 本件補正発明の効果について
相違点を勘案しても、本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づき当業者が予測し得た範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 請求人の主張について
請求人は、要するに、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用しても、本件補正発明の構成は得られない旨主張し、その根拠として、(i)引用文献1に記載された発明では、セグメント電極とコモン電極は同一形状であること、(ii)引用文献1に記載された発明では、リバースモードの高分子分散型液晶セルを用いていること、(iii)引用文献2では、高分子分散型液晶とともに、不透明な反射膜21とその上にある赤フィルタ22-R、緑フィルタ22ーG、及び青フィルタ22-Bが設けられていること、を挙げている。
しかしながら、(i)については、本件補正発明の共通電極が1つの電極により構成されることは限定されておらず、引用発明との相違点とはならないことは上記(3)オのとおりであるし、仮に、「1つの」「共通電極」と解されるとしても、周知技術に基づいて引用発明に適宜採用することができることは、上記イに説示したとおりである。
また、(ii)については、引用文献1においては、顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等においては、倍率やスケールを視野内に表示するようにしたものがなかったことから、顕微鏡や双眼鏡、望遠鏡等の視野内に倍率やスケールなどの情報をできるようにしたファインダー表示装置を提供することを第1の目的としつつ(【0006】)、他の目的として、コントラストが充分にとれ、表示が非常に見易いとともに、低消費電力で駆動可能なファインダー表示装置を提供することを挙げ(【0007】)、当該他の目的を果たすために、上記高分子分散型液晶素子としては、電圧が印加されていない状態で透明ないわゆるリバースモードを採用して、周囲の像とのコントラストが高くし、また、消費電力を減らすことができるようにすることが開示されており、リバースモードとすることは上記「他の目的」を果たすための構成として説明されているのであって、上記「第1の目的」のために、リバースモードが必須であるとはしていないから、引用文献1に記載された引用発明は、リバースモードを用いた表示装置に限定されるものではない。
また、(iii)については、引用文献2には、カメラなどのファインダに文字や図形を重ねて 表示するパターン表示型の液晶表示装置に適用することができることが記載されているところ(【0080】)、当該記載に触れた当業者は、カメラのファインダーにおいて、被写体に「文字や図形を重ねて表示」されるような、透過型での液晶表示装置の利用も視野に入れていると理解すると解されるし、仮に、引用文献2の【0080】の記載を、透過型を視野に入れた記載と解さないとしても、液晶表示装置は、バックライトの光の見え方を液晶により制御するものであることが技術常識であるところ、引用発明においては、顕微鏡のファインダーを通して観察する以上、ファインダー表示パネル7は透過型であって、既にバックライトが存在しているのであるから、引用文献2に記載された反射膜を用いてバックライトを発生する必要がなく、引用発明の液晶パネルの液晶部分をノーマルモードとすれば足りることは当業者にとっては明らかであるから、引用文献2に反射膜やカラーフィルタが設けられていることは、引用発明の液晶パネルの液晶部分にノーマルモードの液晶を用いることを排除することにはならず、したがって、引用発明の液晶パネルの液晶部分にノーマルモードの液晶を用いることは当業者が適宜選択し得ることは、上記アのとおりである。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和4年12月16日に提出された手続補正書による補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年2月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという内容を含むものである。
記
1.特開平10-48732号公報
2. 特開2014-240891号公報
3 進歩性について
(1)引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載及び引用発明は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「指標素子」について、「平面視において前記指標素子のうち前記複数のセグメント電極の各々が占める領域は、光を透過する透過状態と、光を散乱する散乱状態とに切り替え可能であり」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2で認定判断したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020412