特許拒絶査定不服審判
2022-018517
光導波路コア用樹脂組成物、並びにそれを用いたドライフィルム、光導波路コア及び光電気複合配線板
- 審判番号
- 2022-018517
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-548227外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年11月17日
- 審決日
- 2023年11月13日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】小谷 昌崇
- 【請求人代理人】宇佐美 綾
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-548227「光導波路コア用樹脂組成物、並びにそれを用いたドライフィルム、光導波路コア及び光電気複合配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月18日国際公開、WO2019/074035〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月11日(優先権主張 平成29年10月13日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 4年 4月28日付け:拒絶理由通知書
同年 6月30日 :意見書の提出
同年 8月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
同年11月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和4年11月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年11月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物であって、
前記液状エポキシ樹脂の屈折率と前記固体状エポキシ樹脂の屈折率との加重平均値より算出される変動係数が、2.10%以下であり、
樹脂組成物全体に対する、前記液状エポキシ樹脂の比率が5~35質量%であり、かつ、前記液状エポキシ樹脂の比率が、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して23質量部以下である、光導波路コア用樹脂組成物。」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載
本件補正前の、本願出願当初の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物であって、
前記液状エポキシ樹脂の屈折率と前記固体状エポキシ樹脂の屈折率との加重平均値より 算出される変動係数が、2.10%以下である、光導波路用コア用樹脂組成物。」
「【請求項5】
樹脂組成物全体に対する、前記液状エポキシ樹脂の比率が5~35質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の光導波路コア用樹脂組成物。」
2 本件補正の適否
本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1を削除して本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項5を本件補正後の請求項1とするとともに、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「液状エポキシ樹脂」について「前記液状エポキシ樹脂の比率が、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して23質量部以下であ」るとの限定を含むものであって、本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項5に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除及び同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に発行された国際公開第2017/038040号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当合議体が付した。)。
「[0001] 本発明は、光導波路用組成物、光導波路用ドライフィルム、及び光導波路に関する。」
「[0088] はじめに、本実施例において用いた材料を以下にまとめて示す。
[0089] [A:液状脂肪族エポキシ化合物]
セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物
YH-300:新日鉄住金化学株式会社製の液状脂肪族エポキシ化合物
[B:多官能芳香族エポキシ化合物]
VG3101:株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物
[C:固形ビスフェノールA型エポキシ化合物]
1006FS:三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量900~1100g/eq)
1003:三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量670~770g/eq)
YP-50:新日鉄住金化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量6000g/eq以上)
[D:液状ビスフェノールA型エポキシ化合物]
850S:DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量184~194g/eq)
[E:フェノールノボラック型エポキシ化合物]
EPPN-201:日本化薬株式会社製のフェノールノボラック型エポキシ化合物(固体)
[F:クレゾールノボラックエポキシ化合物]
EOCN-4600:日本化薬株式会社製のクレゾールノボラックエポキシ化合物
[G:固形脂環式エポキシ化合物]
EHPE3150:株式会社ダイセル製の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(エポキシ当量900~1500g/eq)
[H:固形脂肪族エポキシ化合物]
YX8040:三菱化学株式会社製の水添ビスフェノールA型エポキシ化合物
[光硬化剤]
SP-170:株式会社アデカ製の光カチオン硬化剤
[酸化防止剤]
AO-60:株式会社アデカ製の酸化防止剤
[実施例1~28、比較例1~5]
実施例1~28、及び比較例1~5に係る組成物を、以下のようにする。まず、(表1)及び(表2)に示す組成(質量部)となるように、各材料を、ガラス容器内に秤量し、溶剤として2-ブタノンとトルエンを加える。その配合物を80℃の還流下で攪拌する。そうすることで、溶解可能な固形分がすべて溶解される均一なワニス状の組成物が得られる。得られるワニス状の組成物を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の孔径1μmのメンブレンフィルターでろ過する。そうすることにより、含有している固形状の異物が除去される。以下、ろ過されワニス状の組成物を用いる。」
「[0099] なお、実施例14~28及び比較例4,5は、クラッド用として用いるので、現像性については評価していない。また、実施例1~13及び比較例1~3は、コア用として用いる。
[0100] これらの評価結果を、組成物の組成とともに、(表1)及び(表2)に示す。
[0101]
[表1]
[図:0001406375000001.jpg]
」
イ 表1から読み取れる事項の認定
[0001]、[0088]、[0089]及び[0099]を参照しつつ上記表1を見ると、以下の光導波路のコア用組成物が把握できる。
(ア) 実施例1
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを10質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を50質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを40質量部、及び光硬化剤のSP-170を1質量部含むコア用組成物。
(イ) 実施例2
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、及び光硬化剤のSP-170を1質量部含むコア用組成物。
(ウ) 実施例4
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を1質量部、及び酸化防止剤のAO-60を1質量部含むコア用組成物。
(エ) 実施例5
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を1質量部、及び酸化防止剤のAO-60を2質量部含むコア用組成物。
(オ) 実施例6
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を0.5質量部、及び酸化防止剤のAO-60を0.3質量部含むコア用組成物。
(カ) 実施例7
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を2質量部、及び酸化防止剤のAO-60を0.3質量部含むコア用組成物。
(キ) 実施例11
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを50質量部、DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850Sを5質量部、及び光硬化剤のSP-170を1質量部含むコア用組成物。
(ク) 比較例1
株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを15質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを40質量部、DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850Sを20質量部、光硬化剤のSP-170を1質量部、及び酸化防止剤のAO-60を0.3質量部含むコア用組成物。
ウ 引用発明の認定
前記アで摘記した引用文献1の記載事項及び前記イで認定した表1から読み取れる事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」~「引用発明8」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明1>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを10質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を50質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを40質量部、及び光硬化剤のSP-170を1質量部含む(上記イ(ア))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明2>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、及び光硬化剤のSP-170を1質量部含む(上記イ(イ))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明3>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を1質量部、及び酸化防止剤のAO-60を1質量部含む(上記イ(ウ))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明4>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を1質量部、及び酸化防止剤のAO-60を2質量部含むコア用組成物(上記イ(エ))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明5>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を0.5質量部、及び酸化防止剤のAO-60を0.3質量部含む(上記イ(オ))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明6>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを55質量部、光硬化剤のSP-170を2質量部、及び酸化防止剤のAO-60を0.3質量部含む(上記イ(カ))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明7>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを20質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを50質量部、DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850Sを5質量部、及び光硬化剤のSP-170を1質量部含む(上記イ(キ))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
<引用発明8>
「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを15質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を25質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを40質量部、DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850Sを20質量部、光硬化剤のSP-170を1質量部、及び酸化防止剤のAO-60を0.3質量部含む(上記イ(ク))
光導波路のコア用組成物。([0001]及び[0099])」
(3) 本件補正発明と引用発明1との対比・判断
ア 対比分析
(ア) 引用発明1の「光導波路のコア用組成物」は、本件補正発明の「光導波路コア用組成物」に相当する。
(イ) 本件補正発明の「液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物」の発明特定事項について
本願明細書には、液状エポキシ樹脂について、「本実施形態において使用できる液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば、特に限定なく使用することができる。・・・略・・・これらについても市販品を用いてもよく、例えば、株式会社ダイセル製/セロキサイド2021P、ナガセケムテックス(株)製/EX-201、大日本インキ化学工業製/エピクロン850S等を用いることができる。これらは単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。」と記載されており(【0025】)、固体状エポキシ樹脂について、「本実施形態において使用できる固形状エポキシ樹脂としては、常温で固形状であれば、特に限定なく使用することができる。・・・略・・・これらは市販品を用いてもよく、例えば、ダイセル化学工業製/EHPE-3150、プリンテック製/VG3101、三菱ケミカル株式会社製/1006FS等を使用することができる。」と記載されている(【0029】~【0030】)。
そして、引用発明1の「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021P」は、その製品の物性に照らせば、液状エポキシ樹脂と理解でき、また、引用発明1の「株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101」及び「三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FS」は、その製品の物性に照らせば、固体エポキシ樹脂と理解でき、この理解は、本願明細書の【0029】~【0030】の記載にも沿っている。
そうすると、引用発明1の「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021P」は、本件補正発明の「液状エポキシ樹脂」に、引用発明1の「株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101」及び「三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FS」は、本件補正発明の「固体状エポキシ樹脂」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「光導波路のコア用組成物」は、「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021P」、「株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101」及び「三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FS」を含むことから、本件補正発明の「樹脂組成物」に相当する。
したがって、引用発明1は、上記発明特定事項を満たす。
(ウ) 本件補正発明の「樹脂組成物全体に対する、前記液状エポキシ樹脂の比率が5~35質量%であり」の発明特定事項について
引用発明1の光導波路のコア用組成物は、株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを10質量部、3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を50質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを40質量部及び光硬化剤のSP-170を1質量部含むものであるから、光導波路のコア用組成物全体で101質量部である。
そうすると、液状エポキシ樹脂である株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pが10質量部であるから、光導波路のコア用組成物全体に対する液状エポキシ樹脂の比率は、10/101=9.9質量%である。
したがって、引用発明1は、上記発明特定事項を満たす。
(エ) 本件補正発明の「前記液状エポキシ樹脂の比率が、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して23質量部以下である」の発明特定事項について
引用発明1の「光導波路のコア用組成物」は、「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pを10質量部、株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101を50質量部、三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSを40質量部」含むことから、液状エポキシ樹脂である株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pの比率は、液状エポキシ樹脂である株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021Pと固体状エポキシ樹脂である株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101及び三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FSとの合計100質量部に対して10質量部である。
したがって、引用発明1は、上記発明特定事項を満たす。
イ 一致点及び相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(ア) 一致点
【一致点】
「液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物全体に対する、前記液状エポキシ樹脂の比率が5~35質量%であり、かつ、前記液状エポキシ樹脂の比率が、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との合計100質量部に対して23質量部以下である、光導波路コア用樹脂組成物。」
(イ) 相違点
【相違点1】
本件補正発明では、「前記液状エポキシ樹脂の屈折率と前記固体状エポキシ樹脂の屈折率との加重平均値より算出される変動係数が、2.10%以下であ」るのに対し、引用発明1では、そのようなものであるのか明らかでない点。
ウ 上記相違点に対する判断
以下、上記相違点1について検討する。
(ア) 本願明細書の【0052】~【0053】の記載によれば、株式会社ダイセル製のセロキサイド2021Pの屈折率は1.5175、株式会社プリンテック製のVG3101の屈折率は1.6022、三菱化学株式会社製のエピコート1006FSの屈折率は1.5948である。
(イ) 上記(ア)の屈折率と、「変動係数」を定義する本願明細書【0017】~【0019】に記載されている式(3)~(5)を用いて引用発明1の変動係数を計算すると、以下に示すとおり、その変動係数は、1.5509%となる。
樹脂組成物全体の平均屈折率Rav3=(1.5175×10+1.6022×50+1.5948×40)/(10+50+40)=1.5908
標準偏差Std=√(((1.5908-1.5175)2×10+(1.5908-1.6022)2×50+(1.5908-1.5948)2×40)/(10+50+40))=0.02467
変動係数C.V.=(0.02467/1.5908)×100=1.5509
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。
エ 小括
したがって、本件補正発明と引用発明1は発明特定事項に差異がなく、両者は同一である。また、本件補正発明は引用発明1に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえる。
(4) 本件補正発明と引用発明2~6との対比・判断
本件補正発明と引用発明2~6との一致点及び相違点についても、上記(3)と同様である。
そして、上記式(3)~(5)を用いて引用発明2~6の変動係数を計算すると、引用発明2~6の変動係数は、2.0233%となる。
そうすると、本件補正発明と引用発明2~6との相違点は、実質的な相違点ではない。
したがって、本件補正発明と引用発明2~6は発明特定事項に差異がなく、両者は同一である。また、本件補正発明は引用発明2~6に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえる。
(5) 審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張内容
審判請求人は、引用文献1の比較例1および実施例11における液状エポキシ樹脂の比率は、本件補正発明よりいずれも多くなっていること及び引用文献1には本件補正発明の課題や、本件補正発明によって当該課題が解決できることについて何ら記載も示唆もないと主張する。
イ 審判請求人の主張についての検討
上記主張について検討すると、引用文献1には、上記引用発明1~6が開示されており、本件補正発明と引用発明1~6は発明特定事項に差異がないから、引用文献1に本件補正発明の課題や、本件補正発明によって当該課題が解決できることについて何ら記載も示唆もないとしても、上記(3)及び(4)の判断を左右するものではない。
よって、審判請求人の上記主張は、採用することができない。
(6) 独立特許要件についてのまとめ
以上によれば、本件補正発明と引用発明1~6とは発明特定事項に差異がないから、本件補正発明は引用発明1~6である。また、本件補正発明は引用発明1~6に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえる。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正の却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、当該請求項1の記載は前記第2の[理由]1(2)に示したとおりである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明に対する拒絶の理由の概略は、以下の理由を含むものである。
理由1.(新規性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2017/038040号
3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び原査定で引用された引用発明7及び8は、前記第2の[理由]2(2)で記載したとおりである。
4 本願発明と引用発明7との対比・判断
(1) 対比分析
ア 引用発明7の「光導波路のコア用組成物」は、本願発明の「光導波路コア用組成物」に相当する。
イ 本願発明の「液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物」の発明特定事項について
本願明細書には、液状エポキシ樹脂について、「本実施形態において使用できる液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば、特に限定なく使用することができる。・・・略・・・これらについても市販品を用いてもよく、例えば、株式会社ダイセル製/セロキサイド2021P、ナガセケムテックス(株)製/EX-201、大日本インキ化学工業製/エピクロン850S等を用いることができる。これらは単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。」と記載されており(【0025】)、固体状エポキシ樹脂について、「本実施形態において使用できる固形状エポキシ樹脂としては、常温で固形状であれば、特に限定なく使用することができる。・・・略・・・これらは市販品を用いてもよく、例えば、ダイセル化学工業製/EHPE-3150、プリンテック製/VG3101、三菱ケミカル株式会社製/1006FS等を使用することができる。」と記載されている(【0029】~【0030】)。
そして、引用発明7の「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021P」及び「DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850S」は、その製品の物性に照らせば、液状エポキシ樹脂と理解でき、また、引用発明7の「株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101」及び「三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FS」は、その製品の物性に照らせば、固体エポキシ樹脂と理解でき、この理解は、本願明細書の【0029】~【0030】の記載にも沿っている。
そうすると、引用発明7の「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021P」及び「DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850S」は、本願発明の「液状エポキシ樹脂」に、引用発明7の「株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101」及び「三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FS」は、本願発明の「固体状エポキシ樹脂」に、それぞれ相当する。
また、引用発明7の「光導波路のコア用組成物」は、「株式会社ダイセル製の液状脂肪族エポキシ化合物のセロキサイド2021P」、「株式会社プリンテック製の3官能の芳香族エポキシ化合物のVG3101」、「三菱化学株式会社製の固形ビスフェノールA型エポキシ化合物の1006FS」及び「DIC株式会社製の液状ビスフェノールA型エポキシ化合物の850S」を含むことから、本件補正発明の「樹脂組成物」に相当する。
したがって、引用発明7は、上記発明特定事項を満たす。
(2) 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明7との一致点及び相違点は、次のとおりである。
ア 一致点
【一致点】
「液状エポキシ樹脂と、固体状エポキシ樹脂とを含む樹脂組成物である、光導波路コア用樹脂組成物。」
イ 相違点
【相違点2】
本願発明では、「前記液状エポキシ樹脂の屈折率と前記固体状エポキシ樹脂の屈折率との加重平均値より算出される変動係数が、2.10%以下であ」るのに対し、引用発明7では、そのようなものであるのか明らかでない点。
(3) 上記相違点に対する判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 本願明細書の【0052】~【0053】の記載によれば、株式会社ダイセル製のセロキサイド2021Pの屈折率は1.5175、株式会社プリンテック製のVG3101の屈折率は1.6022、三菱化学株式会社製のエピコート1006FSの屈折率は1.5948、DIC株式会社製のエピクロン850Sの屈折率は1.5859である。
イ 上記アの屈折率と「変動係数」を定義する本願明細書【0017】~【0019】に記載されている式(3)~(5)を用いて引用発明7の変動係数を計算すると、以下に示すとおり、その変動係数は、2.0156%となる。
樹脂組成物全体の平均屈折率Rav3=(1.5175×20+1.6022×25+1.5948×50+1.5859×5)/(20+25+50+5)=1.5807
標準偏差Std=√(((1.5807-1.5175)2×20+(1.5807-1.6022)2×25+(1.5807-1.5948)2×50+(1.5807-1.5859)2×5)/(20+25+50+5))=0.03186
変動係数C.V.=(0.03186/1.5807)×100=2.0156
したがって、相違点3は実質的な相違点ではない。
(4) 小括
したがって、本願発明と引用発明7は発明特定事項に差異がなく、両者は同一である。また、本願発明は引用発明7に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえる。
5 本願発明と引用発明8との対比・判断
本願発明と引用発明8との一致点及び相違点についても、上記4と同様である。
そして、上記式(3)~(5)を用いて引用発明8の変動係数を計算すると、引用発明8の変動係数は、1.7786%となる。
そうすると、本願発明と引用発明8との相違点は、実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明と引用発明8は発明特定事項に差異がなく、両者は同一である。また、本願発明は引用発明8に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえる。
6 本願発明についてのまとめ
以上によれば、本願発明と引用発明7又は8との間に相違点はないから、本願発明は引用発明7又は8である。また、本願発明は引用発明7又は8に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-018517