特許拒絶査定不服審判
2023-004724
組成物、膜、光学フィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、赤外線センサ、並びに、センサモジュール
- 審判番号
- 2023-004724
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-542655
- 請求日
- 2023年03月20日
- 審決日
- 2024年01月22日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】富士フイルム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 本田 博幸
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .113-Z (G02B) / P18 .572-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-542655「組成物、膜、光学フィルタ及びその製造方法、固体撮像素子、赤外線センサ、並びに、センサモジュール」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月 4日国際公開、WO2021/039253〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)7月29日(先の出願に基づく優先権主張 令和元年8月30日、令和2年2月20日)に国際出願されたものであって、令和4年8月31日付けの拒絶理由に対し、同年10月21日に意見書が提出されたが、同年12月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年3月20日に審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正前の請求項1に係る発明
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、出願当初の願書に添付された特許請求の範囲に記載された、次のとおりである。
「 顔料と、
下記式(1)~式(4)のいずれかで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する顔料誘導体と、
吸着性基を有する構成単位及び立体反発性基を有する構成単位を有し、ランダム共重合体又は交互共重合体である分散剤と、
溶剤と、
を含む組成物。
式(1) -NH-R1
式(1)中、R1は、-COR11、-SO2R11、又は-PO(R11)2で表される総炭素数が10以下の置換基であり、R11は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
式(2) -L-NH-R2
式(2)中、Lは、-CO-、-SO2-、又は-PO(R21)-を表し、R21は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、R2は、-COR22、-SO2R22、又は-PO(R22)2を表し、R22は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
式(3) -N+(R3)3 X-
式(3)中、R3は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、3つのR3のうち少なくとも1つが炭素数3以上のアルキル基であり、X-は対アニオンを表す。
式(4) -L-N+(R4)3 X-
式(4)中、Lは、-CO-、-SO2-、又は-PO(R42)-を表し、R42は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、3つのR4のうち少なくとも1つが炭素数3以上のアルキル基であり、X-は対アニオンを表す。」
(2)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。
「 顔料と、
下記式(1)~式(4)のいずれかで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する顔料誘導体と、
吸着性基を有する構成単位及び立体反発性基を有する構成単位を有し、側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有するランダム共重合体又は交互共重合体である分散剤と、
溶剤と、
を含む組成物。
式(1) -NH-R1
式(1)中、R1は、-COR11、-SO2R11、又は-PO(R11)2で表される総炭素数が10以下の置換基であり、R11は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
式(2) -L-NH-R2
式(2)中、Lは、-CO-、-SO2-、又は-PO(R21)-を表し、R21は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、R2は、-COR22、-SO2R22、又は-PO(R22)2を表し、R22は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
式(3) -N+(R3)3 X-
式(3)中、R3は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、3つのR3のうち少なくとも1つが炭素数3以上のアルキル基であり、X-は対アニオンを表す。
式(4) -L-N+(R4)3 X-
式(4)中、Lは、-CO-、-SO2-、又は-PO(R42)-を表し、R42は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、3つのR4のうち少なくとも1つが炭素数3以上のアルキル基であり、X-は対アニオンを表す。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明について、発明を特定するために必要な事項である「分散剤」に、「側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有する」とする要件を付加する補正事項からなるものである。
上記補正事項は、「分散剤」の範囲を「側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有する」という要件を有するものに限定するものといえる。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、当該補正事項は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。
4 引用文献
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において主引用発明が記載された文献として引用され、本願において優先権主張された先の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2018/230387号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載事項がある。
ア 技術分野
「[0001] 本発明は、硬化性組成物、硬化膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサ、分散助剤、分散液および分散液の製造方法に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「[0009] よって、本発明の目的は、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造できる硬化性組成物を提供することにある。また、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜、前述の硬化膜を有する光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。また、分散助剤、分散液および分散液の製造方法を提供することにある。」
ウ 課題を解決するための手段
「[0010] かかる状況のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、後述する化合物Aと、硬化性化合物と、溶剤と、を含む硬化性組成物は、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下を提供する。
<1> pKaが3以下でClogP値が-1.1以上の酸基、酸基から水素原子が1個以上解離したアニオン性基、および、酸基の塩から選ばれる少なくとも1種の官能基が、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有し、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物Aと、
硬化性化合物と、溶剤と、を含む硬化性組成物。
<2> 官能基は、イミド酸構造、メチド酸構造、ボロン酸構造、カルボン酸構造およびスルホン酸構造から選ばれる酸構造、酸構造から水素原子が1個以上解離したアニオン、ならびに、酸構造の塩から選ばれる少なくとも1種の構造を有する、<1>に記載の硬化性組成物。
<3> 官能基は、下記式(1)で表される部分構造を含む、<1>または<2>に記載の硬化性組成物;
X1-Y1-Z1 ・・・(1)
X1およびZ1はそれぞれ独立して、-SO2-、-CO-、-B(OH)-または-P(=O)(OH)-を表し、Y1は、-NH-、-N--または-NM1-を表し、M1は塩を形成する原子または原子団を表す。…
<20> pKaが3以下でClogP値が-1.1以上の酸基、酸基から水素原子が1個以上解離したアニオン性基、および、酸基の塩から選ばれる少なくとも1種の官能基が、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有する化合物を含む分散助剤。
<21> 色素骨格が、ピロロピロール色素骨格、ジインモニウム色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ポリメチン色素骨格、キサンテン色素骨格、ピロメテン色素骨格、キナクリドン色素骨格、アゾ色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、アントラキノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、トリアジン色素骨格、イソフタル酸色素骨格、イソインドリン色素骨格、キノリン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、キノキサリン色素骨格およびベンゾオキサゾール色素骨格から選ばれる少なくとも一種である、<20>に記載の分散助剤。
<22> 顔料と、<20>または<21>に記載の分散助剤と、分散剤と、溶剤とを含む、分散液。…」
エ 発明の効果
「[0011] 本発明によれば、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造できる硬化性組成物を提供できる。また、本発明によれば、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜、前述の硬化膜を有する光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。また、本発明によれば、分散性に優れた分散助剤、分散液および分散液の製造方法を提供することができる。」
オ 硬化性組成物
「[0014]<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、pKaが3以下でClogP値が-1.1以上の酸基、前述の酸基から水素原子が1個以上解離したアニオン性基、および、前述の酸基の塩から選ばれる少なくとも1種の官能基が、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有し、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物Aと、
硬化性化合物と、
溶剤と、
を含むことを特徴とする。以下、「pKaが3以下でClogP値が-1.1以上の酸基、前述の酸基から水素原子が1個以上解離したアニオン性基、および、前述の酸基の塩から選ばれる少なくとも1種の官能基」を、「官能基A」ともいう。
[0015] 本発明によれば、上述した官能基Aを有する化合物Aを含む硬化性組成物を用いることにより、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造できる。このような効果が得られるメカニズムは、推測であるが以下によるものであると考えられる。化合物Aは、pKaが3以下の酸基またはそれに由来する基(アニオン性基、塩)を有することにより、膜中における化合物A同士の凝集を抑制できたと推測される。また、化合物Aがこのような酸基またはそれに由来する基を有することにより、化合物Aの他に更に色素(他の色素)を含む場合においては、化合物Aと他の色素との凝集や、他の色素同士の凝集も抑制することもできると推測される。このため、膜中における色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生を効果的に抑制できたと推測される。また、一般的にpKaが低い基は、親水性が高く、得られる硬化膜の耐湿性が低下し易い傾向にあるが、この化合物Aにおける官能基Aは、pKaが3以下であるとともに、ClogP値が-1.1以上の酸基またはそれに由来する基である。化合物Aがこのような官能基を有することで、硬化膜中への水の侵入を効果的に抑制でき、その結果優れた耐湿性が得られたと推測される。このため、本発明によれば、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造することができたと推測される。
[0016] また、化合物Aにおける上記官能基Aは、pKaが3以下の酸基またはそれに由来する基(アニオン性基、塩)であるので、塩基性成分との相互作用がより強く働くと推測される。このため、例えば、硬化性化合物として、塩基性基を有する樹脂(例えば、後述する塩基性分散剤および/または両性分散剤)を含むものを用いた場合においては、化合物Aにおける上述した官能基Aと、塩基性分散剤や両性分散剤における塩基性基との相互作用がより強く働き、化合物Aの組成物中における分散性をより向上させることができる。更には、膜中における化合物A自体の凝集や、化合物A以外の色素の凝集をより効果的に抑制でき、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を製造することもできる。また、化合物A自体のアルカリ現像液に対する現像性を高めることができ、現像性に優れた硬化性組成物とすることもできる。」
カ 化合物A
「[0017]<<化合物A>>
本発明の硬化性組成物は、pKaが3以下でClogP値が-1.1以上の酸基、前述の酸基から水素原子が1個以上解離したアニオン性基、および、前述の酸基の塩から選ばれる少なくとも1種の官能基(官能基A)が、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有し、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物A(以下、単に化合物Aともいう)を含有する。
[0018] なお、本発明において、官能基AにおけるpKaおよびClogP値は、色素骨格のπ共役構造との結合手をメチル基に置換して算出した計算値を用いる。また、pKaは、水中における値であって、ACD/Labs ver8.08(Advanced Chemsistry Development社製)を用いて、予測計算して求めた。また、ClogP値は、1-オクタノール/水の分配係数Pの常用対数であるLogPの計算値であって、ChemiBioDraw Ultra ver.13.0.2.3021(Cambridge soft社製)を用いて予測計算して求めた。
[0019] また、色素骨格のπ共役構造において、官能基Aとの結合末端が-C(=O)-、-S(=O)2-、または、-P(=O)-である場合においては、これらの基は、官能基Aに含める。すなわち、下記構造の化合物1、2の場合、それぞれ丸で囲った基が官能基Aに相当する。下記構造の化合物1における官能基A(CF3-SO2-NHCO-C4H8-O-)は、ClogP値が1.09で、pKaが-1.43の酸基である。また、下記構造の化合物2における官能基A(SO3H-C3F6-SO2-)は、ClogP値が1.44で、pKaが-3.38の酸基である。
[化6]
[図:0001408785000001.jpg]
…
[0021] 化合物Aは、π共役構造を有する色素骨格を有する。…
[0067] 化合物Aの具体例としては下記構造の化合物が挙げられる。以下の構造式および表中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
[化19]
[図:0001408785000002.jpg]
…
[0069] 本発明において、化合物Aは色素として用いてもよく、分散助剤として用いてもよい。なお、化合物Aを分散助剤として用いる場合においては、本発明の硬化性組成物は、化合物Aの他に後述する他の色素を含有することが好ましい。また、化合物Aを色素として用いる場合、化合物Aは、顔料であってもよく、染料であってもよい。…」
キ 硬化性化合物
「[0073]<<硬化性化合物>>
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物を含有する。硬化性化合物としては、架橋性化合物、樹脂等が挙げられる。樹脂は、非架橋性の樹脂(架橋性基を有さない樹脂)であってもよく、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)であってもよい。架橋性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、架橋性の樹脂(架橋性基を有する樹脂)は、架橋性化合物でもある。…
[0076](架橋性化合物)
架橋性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物等が挙げられる。架橋性化合物は、モノマーであってもよく、樹脂であってもよい。…
[0083] エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、さらに、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズ(例えば、M-305、M-510、M-520)などが挙げられる。…
[0094](樹脂)
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物として樹脂を用いることができる。硬化性化合物は、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましい。樹脂は分散剤として用いることもできる。なお、顔料などを分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。なお、架橋性基を有する樹脂は、架橋性化合物にも該当する。…
[0115] 本発明の硬化性組成物は、樹脂として分散剤を含有することができる。特に、化合物Aが顔料である場合や、化合物Aの他に顔料をさらに含む場合においては、分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)、両性分散剤(両性樹脂)が挙げられる。分散剤は、塩基性分散剤および/または両性分散剤であることが好ましく、両性分散剤であることがより好ましい。分散剤として、塩基性分散剤および/または両性分散剤を用いることにより、化合物Aや化合物A以外の顔料の組成物中における分散性を高めることができる。すなわち、分散剤として、塩基性分散剤および/または両性分散剤を用いた場合においては、化合物Aにおける上述した官能基Aと、塩基性分散剤や両性分散剤における塩基性基との相互作用がより強く働き、化合物Aの硬化性組成物における分散性がより向上する。また、硬化性組成物中に、化合物A以外の顔料(以下、他の顔料ともいう)を更に含む場合においては、化合物Aにおける官能基Aが他の顔料とも作用して化合物Aが分散助剤として機能することもができるので、組成物中における他の顔料の分散性を向上させることもできる。
また、分散剤として、塩基性分散剤および/または両性分散剤を用いることにより、膜中における化合物A自体の凝集や、化合物A以外の顔料の凝集を抑制でき、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を製造することもできる。
また、分散剤として、両性分散剤を用いた場合においては、上述した効果に加えて、現像性をより向上させることができる。…
[0117] 分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料などの分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
[0118] また、本発明において、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。
[0119] オリゴイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、オリゴイミン系分散剤としては、特開2012-255128号公報の段落番号0168~0174に記載の樹脂を用いることもできる。
[化31]
[図:0001408785000003.jpg]
…」
ク 溶剤
「[0125]<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤の種類は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。…」
ケ 他の色素
「[0132]<<他の色素>>
本発明の硬化性組成物は、更に、上記化合物A以外の色素(以下、他の色素ともいう)を含むことができる。他の色素は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料は、硬化性組成物に含まれる溶剤(25℃)に対する溶解度が0.1g/L未満であることが好ましく、0.01g/L未満であることがより好ましい。また、染料は、硬化性組成物に含まれる溶剤(25℃)に対する溶解度が0.1g/L以上であることが好ましく、1g/L以上であることがより好ましい。他の色素は、可視領域に吸収を有する色素(以下、有彩色色素ともいう)であってもよく、近赤外領域に吸収を有する色素(以下、近赤外線吸収色素ともいう)であってもよい。なかでも、化合物Aを用いて分散した場合、近赤外領域の吸収特性が向上するという理由から近赤外線吸収色素であることが好ましい。…
[0135](有彩色色素)
有彩色色素としては、特に限定されず、可視領域に吸収を有する色素化合物が挙げられる。例えば、ジケトピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、アゾ化合物、イソインドリン化合物、キノフタロン化合物、ベンズイミダゾロン化合物、ペリノン化合物などが挙げられる。…
[0146] ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。
[化34]
[図:0001408785000004.jpg]
[0147] 式(PP)中、R1およびR2は、各々独立に、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、またはヘテロアリール基を表し、
R7およびR8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR9R10、または金属原子を表し、
R7は、R2、R3またはR4と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
R8は、R1、R5またはR6と、共有結合もしくは配位結合していてもよく、
R9およびR10は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、または、ヘテロアリールオキシ基を表し、R9およびR10が互いに結合して環を形成していてもよい。…
[0151] 式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-68731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
[化35]
[図:0001408785000005.jpg]
…」
コ 光開始剤
「[0188]<<光開始剤>>
本発明の硬化性組成物は、光開始剤を含有することができる。光開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤などが挙げられる。硬化性化合物の種類に応じて選択して用いることが好ましい。…」
サ 実施例
「[0280] 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。…
[0293][試験例1]
<分散液の製造>
下記表に示す特定化合物Aを3質量部と、下記表に示す色素Bを10質量部と、下記表に示す溶剤Cを150質量部と、下記表に示す樹脂Dを7.8質量部と、直径0.3mmのジルコニアビーズを230質量部と、を混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。…
[0294]<分散性の評価>
(粘度)
E型粘度計を用いて、25℃での分散液の粘度を、回転数1000rpmの条件で測定し、下記基準で評価した。
A:1mPa・s以上15mPa・s以下
B:15mPa・sを超え100mPa・s以下
C:100mPa・sを超える
[0295](チキソトロピー性)
E型粘度計を用いて25℃の分散液の粘度を、回転数20rpmおよび回転数50rpmの条件で測定し、回転数20rpmでの粘度/回転数50rpmでの粘度をチキソトロピーインデックス(TI値)と定義し下記基準で評価した。
A:TI値が1以上1.3以下
B:TI値が1.3を超え、2以下
C:TI値が2を超える
[0296](粒子径)
製造直後の分散液中の顔料の平均粒子径について、日機装(株)製のMICROTRACUPA 150を用いて、体積基準で測定した。なお、特定化合物Aおよび色素Bの粒子を顔料として、その平均粒子径を測定した。
A:5nm以上50nm以下
B:50nmを超え500nm以下
C:500nmを超える
[0297]
[表9]
[図:0001408785000006.jpg]
…
[0298] 上記表に示すように、実施例の分散液は分散性に優れていた。
[0299] 上記表に示す原料は以下の通りである。
(特定化合物A)
Ap-1、Ap-2、Ap-5、Ap-10、Ap-14、Ap-17、Ap-18、Ap-25、Ap-26、Ap-27、Ap-33、Ap-34、Ad-1、An-2、As-5、Ac-1:下記構造の化合物。これらの化合物は、いずれも上述した官能基Aが、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有する化合物である。また、Ap-1、Ap-2、Ap-5、Ap-10、Ap-14、Ap-17、Ap-18、Ap-25、Ap-26、Ap-27、Ap-33、Ap-34、Ac-1、As-5は、上述した官能基Aが、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有し、かつ、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物である。なお、Ap-1、Ap-2、Ap-25、Ad-1、As-5における官能基Aは、下記の(a-1)で表される基(pKa-1.43、ClogP値1.09の酸基)であり、Ap-17における官能基Aは、下記の(a-13)で表される基(pKa0.43、ClogP値2.92の酸基)であり、Ap-18における官能基Aは、下記の(a-14)で表される基(pKa0.27、ClogP値2.74の酸基)であり、Ap-26における官能基Aは、下記の(a-31)で表される基(pKa0.27、ClogP値1.71の酸基)であり、Ap-27における官能基Aは、下記の(a-35)で表される基(pKa1.35、ClogP値-0.08の酸基)であり、Ap-33における官能基Aは、下記の(a-32)で表される基(pKa0.38、ClogP値2.74の酸基)であり、Ap-33における官能基Aは、下記の(a-34)で表される基(pKa0.92、ClogP値6.14の酸基)であり、Ac-1における官能基Aは、下記の(a-19)で表される基(pKa-1.37、ClogP値3.42の酸基)であり、Ap-14における官能基Aは、下記の(a-10)で表される基(pKa1.43、ClogP値1.09の酸基の塩)であり、Ap-10における官能基Aは、下記の(a-6)で表される基(pKa1.84、ClogP値-0.52の酸基)であり、Ap-5における官能基Aは、下記の(a-2)で表される基(pKa2.88、ClogP値1.20の酸基)であり、An-2における官能基Aは、下記の(a-28)で表される基(pKa-0.26、ClogP値2.597の酸基)である。
[化65]
[図:0001408785000007.jpg]
…
[0302](色素B)
P-1、P-2、P-6、P-15、P-17、P-18、P-21~P-47、SQ-1、SQ-7、SQ-8、SQ-9、SQ-10、SQ-11、CY-1、CY-2、CR-3、Dp-1、Pc-1、Pc-2、Pc-3、Pc-4、II-1、Pr-1:上述した他の色素の具体例として挙げたP-1、P-2、P-6、P-15、P-17、P-18、P-21~P-47、SQ-1、SQ-7、SQ-8、SQ-9、SQ-10、SQ-11、CY-1、CY-2、CR-3、Dp-1、Pc-1、Pc-2、Pc-3、Pc-4、II-1、Pr-1
[0303](溶剤C)
C-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
C-2:ブタノール
C-3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
C-4:乳酸
C-5:酢酸ブチル
C-6:シクロペンタノン
C-7:シクロヘキサノン
C-8:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
C-9:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
[0304](樹脂D)
以下の構造において、主鎖に付記した数値は繰り返し単位のmol比を表し、側鎖に付記した数値は、繰り返し単位の数を表す。
D-2:下記構造の樹脂(酸価=32.3mgKOH/g、アミン価=45.0mgKOH/g、重量平均分子量=22900)。
D-3:下記構造の樹脂(酸価=44.3mgKOH/g、アミン価=40.0mgKOH/g、重量平均分子量=10424)。
D-4:下記構造の樹脂(酸価=36.0mgKOH/g、アミン価=47.0mgKOH/g、重量平均分子量=20903)。
[化71]
[図:0001408785000008.jpg]
[0305][試験例2]
<硬化性組成物の製造>
(製造例101)
下記の成分を混合して、製造例101の硬化性組成物を作製した。
・実施例1の分散液:55質量部
・アルカリ可溶性樹脂(アクリベースFF-426、(株)日本触媒製):7.0質量部
・硬化性化合物(アロニックス M-305、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物、ペンタエリスリトールトリアクリレート55~63質量%含有、東亞合成(株)製):4.5質量部
・光ラジカル重合開始剤(IRGACURE-OXE02、BASF社製):0.8質量部
・重合禁止剤(パラメトキシフェノール):0.001質量部
・界面活性剤(下記混合物(Mw=14000)。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。):0.03質量部
[化72]
[図:0001408785000009.jpg]
・紫外線吸収剤(UV-503、大東化学社製):1.3質量部
・溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):31質量部
<製造例102~105、108~225>
分散液を下記表に記載の分散液に変更した以外は製造例101の硬化性組成物と同様にして各硬化性組成物を製造した。
[0306]<製造例106>
分散液を実施例6の分散液に変更し、溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25質量部、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド6質量部に変更した以外は製造例101と同様にして硬化性組成物を製造した。
[0307]<製造例107>
分散液を実施例7の分散液に変更し、溶剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量部、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド11質量部に変更した以外は製造例101と同様にして硬化性組成物を製造した。
[0308]<硬化膜の作製>
硬化性組成物をガラス基板上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して組成物層を得た。得られた組成物層を、i線ステッパーを用い、500mJ/cm2の露光量にて露光した。次いで、露光後の塗布層に対し、さらにホットプレートを用いて220℃で5分間硬化処理を行い、厚さ0.7μmの硬化膜を得た。
[0309]<耐湿性の評価>
各硬化性組成物をプリベーク後の膜厚が0.8μmとなるようにスピンコーター(ミカサ(株)製)を用いてガラス基板上に塗布して塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃、120秒間の加熱(プリベーク)を行った後、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用いて1000mJ/cm2の露光量で全面露光を行った後、再度ホットプレートを用いて200℃、300秒間の加熱(ポストベーク)を行い、膜を得た。得られた膜について、波長700~1000nmの波長の光の透過率を測定した。次に、この膜を、85℃湿度95%の恒温器に入れて6ヵ月間保管して耐湿試験を行った。耐湿試験後の膜について、波長700~1000nmの各波長の光の透過率を測定した。膜の透過率は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製 U-4100)を用いて測定した。
耐湿試験前後における波長700~1000nmの範囲の波長での透過率変化の最大値(ΔT)を測定し、耐湿性の指標とした。
透過率変化(ΔT)=|耐湿試験前の膜の透過率(%)-耐湿試験後の膜の透過率(%)|
A:ΔT%<4%
B:4%≦ΔT%<10%
C:10%≦ΔT%
[0310]<色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の評価>
各硬化性組成物をプリベーク後の膜厚が0.8μmとなるようにスピンコーター(ミカサ(株)製)を用いてガラス基板上に塗布して塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃、120秒間の加熱(プリベーク)を行った後、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用いて1000mJ/cm2の露光量で全面露光を行った後、再度ホットプレートを用いて200℃、300秒間の加熱(ポストベーク)を行い、膜を得た。得られた膜について、走査型電子顕微鏡を用いて観察(測定倍率=10000倍)し、10μm×15μmの範囲に存在する異物の数を測定した。
A:10μm×15μmの範囲に存在する異物がない。
B:10μm×15μmの範囲に存在する異物が0個を超え100個以下。
C:10μm×15μmの範囲に存在する異物が100個を超える。
[0311]<現像性の評価>
各硬化性組成物を、塗布後の膜厚が0.7μmになるように、下塗り層付きシリコンウェハ上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートで、100℃で2分間加熱して硬化性組成物層を得た。次いで、得られた硬化性組成物層に対し、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1.1μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光(露光量は線幅1.1μmとなる最適露光量を選択)した。次いで、露光後の硬化性組成物層に対し、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗し、パターンを得た。得られたパターンの下地上に残る残渣の量を画像の2値化処理により、下記基準で評価した。
A:残渣量が下地全面積の1%未満
B:残渣量が下地全面積の1%を超え3%以下
C:残渣量が下地全面積の3%超
[0312]
[表12]
[図:0001408785000010.jpg]
…
[0313] 上記表に示す硬化性組成物のうち、製造例101~106、109~146、149~225の硬化性組成物は、特定化合物Aとして、上述した官能基Aが、π共役構造を有する色素骨格のπ共役構造に結合した構造を有し、かつ、波長650~1200nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物である、Ap-1、Ap-2、Ap-5、Ap-10、Ap-14、Ap-17、Ap-18、Ap-25、Ap-26、Ap-27、Ap-33、Ap-34、Ap-35、Ap-36、Ap-39、Ap-45、Ap-46、Ap-47、Ap-48、Ap-49、Ap-52、Ap-58、Ap-59、Ap-60、Ap-61、Ap-62、Ap-63、Ap-64、Ap-65、Ap-71、Ap-72、Ap-73、Ap-74、Ap-75、AP-78、Ap-79、Ap-80、Ap-81、Ap-82、Ap-83、Ap-84、Ap-85、Ap-86、Ap-87、Ap-88、Ap-91、Ap-97、Ap-98、Ap-99、Ap-100、Ap-101、Ap-104、Ap-110、Ap-111、Ap-112、Ac-1またはAs-5を用いた分散液を含む硬化性組成物である。また、製造例147、148の硬化性組成物は、本発明の比較例の硬化性組成物である。
[0314] 上記表に示すように、製造例101~146、149~225においては、耐湿性が良好で、色素骨格を有する化合物に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造することができた。また、製造例101~106、109~146、149~225の硬化性組成物においては、近赤外線吸収特性に優れていた。なかでも、製造例101~106、109~130、138~146、149~225の硬化性組成物においては、より優れた近赤外線吸収特性を有していた。」
(2)引用文献1に記載された発明
上記記載事項サに基づけば、引用文献1には、実施例1に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記に示す特定化合物Aを3質量部と、色素Bを10質量部と、溶剤Cを150質量部と、樹脂Dを7.8質量部と、直径0.3mmのジルコニアビーズを230質量部と、を混合し、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して製造した分散液。
特定化合物A:Ap-1
[図:0001408785000011.jpg]
色素B :P-1
[図:0001408785000012.jpg]
溶剤C :C-1
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
樹脂D :D-4
[図:0001408785000013.jpg]
」
5 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)顔料
引用発明の分散液に含まれる「P-1」は、引用文献1の記載事項ケの段落[0146]及び段落[0151]にピロロピロール化合物として好ましい化合物の具体例として挙げられている化合物であるから、技術的にみて、顔料であるといえる。したがって、引用発明の分散液に含まれる「P-1」は、本件補正発明の「顔料」に相当する。
(2)顔料誘導体
引用発明の「Ap-1」は、その構造式からみて、「P-1」におけるフェノールの水酸基を、「-O-C4H8-CO-NHSO2-CF3」に置換した化合物にあたる。そうすると、引用発明の「Ap-1」は、顔料である「P-1」と共通する化学構造を基本骨格として有するから、本件補正発明の「顔料誘導体」に相当する。
そして、上記「-O-C4H8-CO-NHSO2-CF3」は、本件補正発明における式(2)で表される基「-L-NH-R2」の、Lが「-CO-」であり、R2が「-SO2R22」であり、R22が「炭素数1以上の1価の有機基」である基にあたる(なお、本件補正発明の記載を引用する請求項4に係る発明では、式(2)中について、「R22がフッ素原子を含み且つ炭素数1以上の1価の有機基を表す」ことを特定していることから、R22が「フッ素原子を含み且つ炭素数1以上の1価の有機基」を包含することは明らかである。)。したがって、引用発明の「Ap-1」は、本件補正発明の「式(1)~式(4)のいずれかで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する」との要件を満たしている。
(3)分散剤
引用発明の「D-4」は、樹脂Dとして分散液に含まれるものである。そして、引用発明の「D-4」は、引用文献1の記載事項キの段落[0119]にオリゴイミン系分散剤の具体例として挙げられている化合物であるから、分散剤であるといえる。したがって、引用発明の「D-4」は、本件補正発明の「分散剤」に相当する。
そして、引用発明の「D-4」は、その構造式からみて、本願の段落「0097」に、吸着性基として挙げられた「塩基性基」を主鎖に、「酸基」を側鎖に含んでおり、また、立体反発性基として挙げられた「ポリアルキレングリコール構造」を含んでいる。したがって、引用発明の「D-4」は、本件補正発明の「吸着性基を有する構成単位及び立体反発性基を有する構成単位を有し」とする要件を満たしており、両者は、「側鎖に前記吸着性基を有する」点で共通する。
(4)溶剤
引用発明の「C-1」は、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」であって、溶剤Cとして含まれている。したがって、引用発明の「C-1」は、本件補正発明の「溶剤」に相当する。
(5)組成物
引用発明の「分散液」は、その製造方法からみて、特定化合物A、色素B、溶剤C及び樹脂Dを含む組成物であるといえる。したがって、引用発明の「分散液」は、本件補正発明の「組成物」に相当する。
(6)一致点及び相違点
以上より、本件補正発明と引用発明とは、
「 顔料と、
下記式(1)~式(4)のいずれかで表される基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する顔料誘導体と、
吸着性基を有する構成単位及び立体反発性基を有する構成単位を有し、側鎖に前記吸着性基を有する分散剤と、
溶剤と、
を含む組成物。
式(1) -NH-R1
式(1)中、R1は、-COR11、-SO2R11、又は-PO(R11)2で表される総炭素数が10以下の置換基であり、R11は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
式(2) -L-NH-R2
式(2)中、Lは、-CO-、-SO2-、又は-PO(R21)-を表し、R21は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、R2は、-COR22、-SO2R22、又は-PO(R22)2を表し、R22は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表す。
式(3) -N+(R3)3 X-
式(3)中、R3は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、3つのR3のうち少なくとも1つが炭素数3以上のアルキル基であり、X-は対アニオンを表す。
式(4) -L-N+(R4)3 X-
式(4)中、Lは、-CO-、-SO2-、又は-PO(R42)-を表し、R42は、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1以上の1価の有機基を表し、3つのR4のうち少なくとも1つが炭素数3以上のアルキル基であり、X-は対アニオンを表す。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]分散剤が、本件補正発明では「側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有するランダム共重合体又は交互共重合体」であるのに対し、引用発明では側鎖吸着性基として酸性基を有しており、ランダム共重合体又は交互共重合体であるかが文言上明らかでない点。
6 判断
上記[相違点]について検討する。
まず、側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有する点について検討すると、引用文献1の記載事項キの段落[0118]には、「樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。」と記載されている。上記記載に基づけば、引用文献1には、分散剤について、側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有するものとすることが示唆されていたといえる。さらに、引用文献1の記載事項キの段落[0119]には、オリゴイミン系分散剤の具体例として、本件補正発明の「D-4」を挙げるとともに、「また、オリゴイミン系分散剤としては、特開2012-255128号公報の段落番号0168~0174に記載の樹脂を用いることもできる。」と記載されている。そして、特開2012-255128号公報の段落【0172】及び【0173】には、側鎖に塩基性基を有する具体例が挙げられている。以上より、本件補正発明の分散剤を、側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。また、引用文献1の記載事項サの表9及び段落[0298]に示されるとおり、引用発明は分散性に優れており、表12及び段落[0314]に示されるとおり、引用発明を用いて製造された薄膜の耐湿性も良好とされている。そして、本願の明細書の記載を参酌しても、側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有することにより、効果において当業者が予測できない程度の差異が生じると理解することもできない。
次に、ランダム共重合体又は交互共重合体である点について検討すると、引用発明の「D-4」は、その構造式からみて、主鎖を構成する5種類の繰り返し単位によって主鎖が構成されるものであり、記載事項サの段落[0304]の記載から、5種類の繰り返し単位を、mol比で、36:4:35:1:24の割合で共重合させたものと理解できる。このことからみて、引用発明の「D-4」が、ブロック共重合体又は交互共重合体であるとは考えがたく、引用発明の「D-4」が、ランダム共重合体である蓋然性が高い。したがって、上記[相違点]のうち、ランダム共重合体又は交互共重合体であるかが文言上明らかでない点は、実質的な相違点とはいえない。
したがって、上記[相違点]のうち、「側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有するランダム共重合体又は交互共重合体」である点は、引用文献1等の記載に基づいて当業者が容易になし得たことであり、「ランダム共重合体又は交互共重合体」である点は、実質的な相違点ではない。
7 むすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1等の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明
1 本件発明
本件補正は、前記第2に記載したとおり却下されたので、本願の請求項1~19に係る発明は、出願当初の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~19に係る発明は、本願の先の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、引用文献1に記載された事項に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2018/230387号
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の4に記載したとおりである。
4 対比・判断
本件発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明の「吸着性基を有する構成単位及び立体反発性基を有する構成単位を有し、側鎖に前記吸着性基として塩基性基を有するランダム共重合体又は交互共重合体である分散剤」について、下線を付した限定事項を削除したものにあたる。
そうすると、本件発明と引用発明とを対比すると、以下の点のみで相違することになる。
[相違点’]分散剤が、本件補正発明では「ランダム共重合体又は交互共重合体」であるのに対し、引用発明ではランダム共重合体又は交互共重合体であるかが文言上明らかでない点。
そして、上記[相違点’]は、前記第2の6において検討したとおり、実質的な相違点とはいえないものである。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-004724