特許拒絶査定不服審判
2021-011677
半導体レーザモジュール
- 審判番号
- 2021-011677
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-024645
- 請求日
- 2021年09月02日
- 審決日
- 2022年10月31日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】古河電気工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 山村 浩
- 審判官 吉野 三寛
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B) / P18 .537-Z (G02B) / P18 .536-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017- 24645「半導体レーザモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月23日出願公開、特開2018-132573〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月14日の出願であって、その手続の主な経緯は次のとおりである。
令和 2年11月24日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 1月28日 :意見書・手続補正書
令和 3年 6月 1日付け:拒絶査定
令和 3年 9月 2日 :審判請求書・手続補正書
令和 4年 6月10日付け:審尋
令和 4年 8月 8日 :回答書
第2 令和3年9月2日に提出された手続補正書でされた補正(以下「本件補正」という。)の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件補正前の
「半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されており、
前記固定部材は、
Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、
前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収し、前記固定部材は、前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱する
ことを特徴とする半導体レーザモジュール。」から、本件補正後の
「半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されており、
前記固定部材は、
Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、
前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収し、前記固定部材は、前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱し、
前記光反射低減領域の表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であり、
前記光反射低減領域は、前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている
ことを特徴とする半導体レーザモジュール。」へと補正された(下線は、補正箇所として請求人が付したものである。)。
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「光反射低減領域」について、その表面粗さが「算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であ」ることを限定し、さらに、その状態が「前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号所定の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(いわゆる独立特許要件を充足するかどうか)について、以下、項を改めて検討する。
3 独立特許要件の検討
(1)本件補正後の明細書及び図面の記載
ア 本件補正後の明細書及び図面(以下「本件補正明細書等」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】」、
「本発明は、半導体レーザモジュールに関するものである。」(【0001】)
(イ)「【背景技術】」、
「従来、半導体レーザモジュールにおいて、光ファイバからレーザ光を出力する場合に、パッケージ上の所定の位置に固定された半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を、レンズなどによって集光し、光ファイバに結合する方法が知られている(たとえば特許文献1参照)。」(【0002】)、
「このような光結合方法において、半導体レーザ素子が高出力である場合、光ファイバを固定する接着剤や光ファイバの被覆部が光吸収による発熱によって損傷し、信頼性が低下する場合がある。そのため、従来、透明なガラスキャピラリに光ファイバを挿通し、光ファイバを固定する方法が知られている(たとえば特許文献2参照)。しかしながら、半導体レーザモジュールにおいて、ガラスキャピラリを用いても接着剤や被覆部が発熱により損傷する場合がある。これに対して、本発明者は、接着剤や被覆部の損傷を防止した、信頼性の高い半導体モジュールを開示している(特許文献3参照)。」(【0003】)
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】」、
「半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の高強度化に伴って、信頼性の高い半導体レーザモジュールへの要求はますます高まっている。」(【0005】)、
「本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、信頼性の高い半導体レーザモジュールを提供することを目的とする。」(【0006】)
(エ)「【課題を解決するための手段】」、
「上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を当該半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、を備え、前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されていることを特徴とする。」(【0007】)、
「また、本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されていることを特徴とする。」(【0008】)、
「また、本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記固定部材は、Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有することを特徴とする。」(【0009】)、
「また、本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して接続されていることを特徴とする。」(【0021】)、
「また、本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記熱良導体は、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする。」(【0022】)
(オ)「【発明の効果】」、
「本発明によれば、信頼性の高い半導体レーザモジュールを実現することができる。」(【0027】)
(カ)「【発明を実施するための形態】」、
「つぎに、半導体レーザモジュール100の光ファイバ112近傍の構成について、詳細に説明する。図3は、図1に示す半導体レーザモジュール100の光ファイバ112、ガラスキャピラリ116、固定部材117の模式的な断面図である。図3に示すように、光ファイバ112は、コア部112cと、クラッド部112dとを備える。コア部112cと、クラッド部112dとは、光ファイバ112のガラス光ファイバ部112eを構成する。」(【0033】)、
[図:0001392630000001.jpg]
「また、固定部材117の内面、すなわち、ガラスキャピラリ116と対向する面には、光反射低減領域117aが形成されている。光反射低減領域117aは、固定部材117の内面が、光を吸収し、かつ粗面であるように処理されて形成された領域である。」(【0035】)、
「光反射低減領域117aについてより具体的に説明する。光反射低減領域117aの表面粗さについては、たとえばJIS B 0601:2000で定義されている算術平均粗さRaが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であることが好ましい。0.05μm≦Raであれば光吸収率向上および光反射量低減の効果が好適に発揮される。また、算術平均粗さRaが大きすぎると、粗面化された領域内に局所的に平坦面が存在する場合があり、その平坦面で光が反射されるおそれがある。しかし、Ra≦10μmであればそのような平坦面が存在する可能性が十分に低くなる。」(【0066】)、
「光反射低減領域117aは、固定部材117の内面に、処理用レーザ光を照射して表面処理することにより形成することが好ましい。処理用レーザ光により表面にエネルギーが与えられると、酸化等の化学反応が生じて黒みを帯びるため、光の吸収係数が高まり、かつ粗面化される。処理用レーザ光の波長および強度は、表面処理すべき材料に応じて、所望の吸収係数および表面粗さの状態となるように設定すればよい。」(【0067】)、
「また、処理用レーザ光を照射して表面処理することにより光反射低減領域117aを形成する場合、光反射低減領域117aの形成領域を任意かつ高精度に設定することができるので、所望の領域に光反射低減領域117aを形成する上で好適である。一方、たとえば迷光の低減のために固定部材の内面にコーティングを施す場合、コーティング剤がコーティング不要の領域にまではみ出してしまう場合がある。このため、たとえばコーティング剤が固定部材の外部にまではみ出てしまい、固定部材をパッケージに固定する際に悪影響を及ぼす場合がある。」(【0068】)、
「また、光反射低減領域117aは固定部材117の構成材料そのものを処理したものなので、光反射低減のための追加の部材は不要であり、部品コストの向上を防止することができる。さらには、コーティング剤のように有機樹脂を原料とするものではないので、光L3の強度が高い場合でも、照射された場合に焼損や強い酸化を起こして破損するということもない。」(【0069】)、
「また、処理用レーザ光としてパルスレーザ光を用いると、パルスレーザ光の照射によって照射面に発生する熱が拡散しやすくなるので、照射面が加熱されて過度の処理や破損が発生することを防止することができる。パルスレーザ光の波長やピークパワーやデューティー比を調整することで、処理時の照射面の過度の温度上昇を抑制し、好適な処理を実現することができる。また、本発明者らの検討によれば、処理用レーザ光としてパルスレーザ光を用いると、照射面にレーザ光の波長を反映した周期(0.5μm~1.5μm程度)の凹凸ができ、粗面化の観点から好適である。」(【0070】)、
「さらに、半導体レーザモジュール100は、光反射低減領域117aが形成された固定部材117を備えるため、固定部材117における反射光が第1固定剤119、第2固定剤120、および被覆部112aを損傷させることが抑制されている。」(【0073】)
イ 上記アによれば、本件補正後の請求項1に記載される発明の技術的意義は次のとおりであると認められる。
(ア)本件補正後の請求項1に記載される発明の技術的意義は、従来、半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を、レンズなどによって集光し、光ファイバに結合する方法が知られている(【0002】)ところ、半導体レーザ素子が高出力である場合、光ファイバを固定する接着剤や光ファイバの被覆部が光吸収による発熱によって損傷し、信頼性が低下する場合があり(【0003】)、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の高強度化に伴って、信頼性の高い半導体レーザモジュールへの要求はますます高まっている(【0005】)という課題が存在することから、当該課題を解決するために、光ファイバを固定する光学部品の周囲に、レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されるようにする(【0007】)ものであって、当該光反射低減領域が形成されたことによって、固定部材における反射光が前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤を損傷させることが抑制される(【0073】)ので、信頼性の高い半導体レーザモジュールを実現することができる(【0027】)ことにあると認められる。
(イ)a 当該光反射領域の表面粗さは、JIS B 0601:2000で定義されている算術平均粗さRaが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲となるものであり、0.05μm≦Raであれば光吸収率向上および光反射量低減の効果が好適に発揮され、Ra≦10μmであれば、粗面化された領域内に局所的に存在する平坦面で光が反射されるおそれが十分に低くなる(【0066】)。
b 当該光反射低減領域は、固定部材の内面に、処理用レーザ光を照射して表面処理することにより形成されている(【0067】)ので、光反射のための追加の部材が不要であるとともに、照射された場合に焼損や強い酸化を起こして破損するということもない(【0068】)。処理用レーザ光により表面にエネルギーが与えられると、酸化等の化学反応が生じて黒みを帯びるため、光の吸収係数が高まり、かつ粗面化される。処理用レーザ光の波長および強度は、表面処理すべき材料に応じて、所望の吸収係数および表面粗さの状態となるように設定すればよい(【0067】)。
処理用レーザ光としてパルスレーザ光を用いると、照射面にレーザ光の波長を反映した周期(0.5μm~1.5μm程度)の凹凸ができ、粗面化の観点から好適である(【0070】)。
(2)明確性要件について
物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
これを本件補正後の請求項1に記載される発明についてみると、当該請求項1は、「半導体レーザモジュール」という物の発明に係るものである一方で、「前記光反射低減領域は、前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている」との特定事項を備えている。そして、この特定事項は、「光反射低減領域」を製造するに際して、「レーザ光により表面処理」するという技術的な特徴ないし条件を付すものといえるから、当該「光反射低減領域」を備えた「半導体レーザモジュール」の製造方法に係るものであると認められる。しかるところ、本件補正明細書等の記載及び技術常識に照らしても、不可能・非実際的事情が存在することはうかがわれないし、請求人も、不可能・非実際的事情が存在することについて何らの主張立証をしていない。
したがって、本件補正後の請求項1に記載される発明は、明確であるとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)実施可能要件について
ア 本件補正明細書等の発明の詳細な説明の記載は、以下のとおり、当業者が、本件補正後の請求項1に記載される発明の「前記光反射低減領域は、前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されて」おり、その「表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であ」るとの特定事項(以下「本件特定事項」という。)を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
すなわち、本件特定事項を実施する際には、少なくとも、レーザ光の照射特性(波長、強度、照射時間、スポット径、照射位置等)を、被処理材料の種類及び得ようとする算術平均粗さの大きさに応じて、しかるべく設定する必要があるが、本件補正明細書等の記載によっても、これを具体的にどのように設定すればよいのかが不明である。この点、本件補正明細書等には、その【0067】・【0070】に、(i)処理用レーザ光により表面にエネルギーが与えられると、酸化等の化学反応が生じて黒みを帯びるため光の吸収係数が高まり粗面化されること、(ii)処理用レーザの波長及び強度は、表面処理すべき材料に応じて、所定の吸収係数及び表面粗さの状態となるように設定すればよいこと、(iii)パルスレーザ光を用いると照射面にレーザ光の波長を反映した周期(0.5μm~1.5μm程度)の凹凸ができること、(iv)レーザ光の波長、ピークパワー及びデューティー比を調整することにより照射面の過度の温度上昇を抑制し、好適な処理を実現できること、が記載されている。しかしながら、これらの記載は、いずれも一般的なものにとどまり、波長や強度等の具体的な値や被処理材料が何であるかとの関係を明らかにするものではないとともに、得ようとする算術平均粗さの大きさとの関係も不明である。そして、本件補正明細書等には、レーザ光による表面処理によって、酸化が生じて光の吸収係数が高まるような黒みを帯びるとともに、粗面化されることを実現する具体的なメカニズムが記載されていないことから、レーザ光の照射特性を、被処理材料の種類及び得ようとする算術平均粗さの大きさに応じて設定するための一般的な指針も不明であり、しかも、実施例の記載も一切存在しない。加えて、レーザ光によるこのような表面処理が、技術常識であるともいえない。
そうすると、本件補正明細書等の記載及び技術常識によっては、本件特定事項を実施するために、レーザ光の照射特性を具体的にどのように設定すればよいのかにつき当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤を要すると言わざるを得ない。よって、本件補正明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特定事項を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
イ 上記アは措き、仮に、本件補正明細書等の記載及び技術常識に基づいて、当業者が、レーザ光の照射特性を具体的にどのように設定すればよいのかを理解できることがあるとしても、本件補正後の請求項1で特定された、レーザ光による被処理材料(つまり、「固定材料」)の全てに対して、それが可能であるとはいえない。
すなわち、上記固定部材には、金属部材のほかに、セラミック部材なども存在するとされているところ、例えば、セラミック部材においては、レーザ光による表面処理によって、酸化が生じて光の吸収係数が高まるような黒みを帯びることや、粗面化されることが、そもそも生じ得るのかが不明である。また、金属部材であっても、黒みを帯びるかどうかは、どの金属元素を用いるかによると考えられるが、上記固定材料の全てについて、それが可能なのかが不明である。
よって、本件補正明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特定事項を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
ウ したがって、本件補正明細書等の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件補正後の請求項1に記載される発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4)サポート要件について
本件補正後の請求項1に記載される発明の課題は、上記(1)イ(ア)のとおり、半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を、レンズなどによって集光し、光ファイバに結合する方法が知られているところ、半導体レーザ素子が高出力である場合、光ファイバを固定する接着剤や光ファイバの被覆部が光吸収による発熱によって損傷し、信頼性が低下する場合があり、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の高強度化に伴って、信頼性の高い半導体レーザモジュールへの要求はますます高まっているということにあり、この課題を解決するために、当該発明は、光学部品の外周に配置され、光学部品を固定する固定部材の内面に光反射低減領域を形成するとともに、固定部材として所定の金属部材又はセラミック部材等を有し、光反射低減領域の表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であり、光反射領域は、固定部材の内面がレーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されていることを、その解決手段として採用するものと認められる。
そこで、本件補正明細書等の記載及び技術常識に基づき、当業者が、上記の解決手段によって上記の課題を解決できると認識できるかどうかについて検討すると、上記(3)のとおり、上記の解決手段を製造することができるとはいえないから、当業者は、上記の解決手段によって上記の課題を解決できると認識できるともいえない。
したがって、本件補正後の請求項1に記載される発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(5)進歩性について
本件補正後の請求項1に記載される発明については、上記(2)~(4)に係る記載不備があるものの、仮に、当該請求項1に特定された固定部材に係る材料の種類及び得ようとする粗面化の程度に応じて、固定部材の内面が「レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化され」るように加工する手法が、本願の出願時において技術常識であるならば、少なくとも上記(3)及び(4)の理由は解消し得ることになる。しかしながら、その場合であっても、以下のとおり、当該発明は、進歩性を欠如する。
ア 本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1の記載には、上記(2)に係る明確性要件違反が存在するものの、光反射低減領域に係る表面処理がレーザ光によりなされた態様を少なくとも含むものと解して、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を、上記1の本件補正後の請求項1の記載のとおりに認定する。これを再掲すると、次のとおりである。
「半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されており、
前記固定部材は、
Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、
前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収し、前記固定部材は、前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱し、
前記光反射低減領域の表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であり、
前記光反射低減領域は、前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている
ことを特徴とする半導体レーザモジュール。」
イ 引用文献について
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2015/037725号(以下「引用文献」という。)には、次の記載がある(下線は当審が付した。)。
a 「発明を実施するための形態」、
「以下に、図面を参照して本発明に係る半導体レーザモジュールの実施の形態を説明する。・・・」([0030])、
「(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態に係る半導体レーザモジュールの構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る半導体レーザモジュールの模式的な平面図である。図2は、図1に示す半導体レーザモジュールの側面を表す模式的な一部切欠図である。・・・」([0031])、
[図:0001392630000002.jpg]
[図:0001392630000003.jpg]
「つぎに、半導体レーザモジュール100の光ファイバ112近傍の構成について、詳細に説明する。図3は、図1に示す半導体レーザモジュールの光ファイバ、ガラスキャピラリ、光吸収体を拡大した模式的な断面図である。図3に示すように、光ファイバ112は、コア部112cと、クラッド部112dとを備える。」([0034])、
[図:0001392630000004.jpg]
「光吸収体117は、ガラスキャピラリ116の外周に配置されており、ガラスキャピラリ116と第2固定剤120で固着される。そして、光吸収体117は、半導体レーザ素子104-1~6が出力したレーザ光の波長において、光吸収性を有し、たとえばこの波長において、吸収率が30%以上、好ましくは70%以上である。その結果、光吸収体117は、ガラスキャピラリ116を透過したレーザ光を吸収する。また、光吸収体117は、光吸収により発生した熱を放熱するため、熱伝導性のよい材料からなることが好ましく、たとえばCu、Ni、ステンレス鋼、またはFeを含む金属部材、Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、AlN、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、またはAlN、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材からなることが好ましい。また、光吸収体117は、光吸収により発生した熱を放熱するため、パッケージ101に不図示の熱良導体を介して接続されていることが好ましい。熱良導体は、熱伝導率が0.5W/mK以上の材料からなることが好ましく、たとえばはんだや熱伝導性接着剤からなる。」([0052])、
「(変形例)
つぎに、上記実施の形態における半導体レーザモジュールの変形例について説明する。変形例に係る半導体レーザモジュールは、上記実施の形態の半導体レーザモジュールの各構成要素を、以下のような変形例の構成要素と置換することにより構成することができる。」([0072])、
「光吸収体は、光ファイバの長手方向に沿って、レーザ光の波長における光吸収率の分布を有していてもよい。図12は、変形例に係る半導体レーザモジュールの光吸収体の光ファイバの長手方向におけるガラスキャピラリの入射側の端面からの距離と光吸収体の光吸収率との関係を表す模式図である。図12に示すように、変形例に係る光吸収体717は、レーザ光を入射する側よりもレーザ光を出射する側の光吸収率が高くされている。このとき、図12に示すように、光吸収体717は、たとえばクラッドから漏れた光であるレーザ光Lが最初に光吸収体に照射される位置よりも、レーザ光Lが光吸収体717に1回反射されて2回目に光吸収体717に照射される位置において光吸収率が高い。その結果、レーザ光Lの入射側において光吸収が集中し、その光吸収による発熱で第2固定剤を損傷させることが抑制されている。したがって、変形例の光吸収体717は、半導体レーザモジュールの信頼性をより高くすることができる。」([0081])、
[図:0001392630000005.jpg]
「光吸収率に分布を有する光吸収体の具体例として、変形例の光吸収体は、光吸収体のガラスキャピラリに固着される面の平均表面粗さが、光ファイバの長手方向に沿って、第4レンズ側(光入射側)で小さくされている。ここで、金属は、光が入射する面の表面粗さが大きいほど吸収率が高くなる。したがって、この光吸収体は、第4レンズ側の光吸収率が小さい。すなわち、この光吸収体は、レーザ光の入射側において光吸収が集中し、その光吸収による発熱で第2固定剤を損傷させることが抑制されている。したがって、変形例の光吸収体は、半導体レーザモジュールの信頼性をより高くすることができる。」([0082])
b 「請求の範囲」、
「レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を当該半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する光吸収体と、
前記光ファイバの前記レーザ光の入射端と前記光学部品との間に配置された第1光遮断部と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、前記第1光遮断部と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品は、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光吸収体は、前記レーザ光の波長において光吸収性を有することを特徴とする半導体レーザモジュール。」([請求項1])、
「前記光学部品と前記光吸収体とを固着する第2固定剤を有し、
前記第1固定剤と前記第2固定剤とは、同一の材料からなり、
前記第1固定剤および前記第2固定剤の屈折率は、前記光学部品の屈折率と略等しく、かつ前記クラッド部の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザモジュール。」([請求項3])、
「前記光吸収体は、前記筐体に熱良導体を介して接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。」([請求項7])、
「前記熱良導体は、熱伝導率が0.5W/mK以上であることを特徴とする請求項7に記載の半導体レーザモジュール。」([請求項8])、
「前記光吸収体は、
Cu、Ni、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。」([請求項9])、
「前記光吸収体の前記レーザ光の波長における光吸収率は、前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が低くされていることを特徴とする請求項1~14のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。」([請求項15])、
「前記光吸収体の前記光学部品と固着される面の平均表面粗さは、前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が小さくされていることを特徴とする請求項1~15のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。」([請求項16])
(イ)上記(ア)によれば、引用文献には、図12に係る変形例(請求項15を引用する請求項16に対応する。)に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、引用発明の認定に関連する段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
「レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を当該半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する光吸収体と、
前記光ファイバの前記レーザ光の入射端と前記光学部品との間に配置された第1光遮断部と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、前記第1光遮断部と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品は、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光吸収体は、前記レーザ光の波長において光吸収性を有する半導体レーザモジュールであって、([請求項1])
前記光学部品と前記光吸収体とを固着する第2固定剤を有し、([請求項3])
前記光吸収体は、前記筐体に熱良導体を介して接続されており、([請求項7])
前記熱良導体は、熱伝導率が0.5W/mK以上であり、([請求項8])、
前記光吸収体は、
Cu、Ni、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、([請求項9])
前記光吸収体の前記レーザ光の波長における光吸収率は、前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が低くされており、([請求項15])
前記光吸収体の前記光学部品と固着される面の平均表面粗さは、前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が小さくされており、([請求項16])
ここで、金属は、光が入射する面の表面粗さが大きいほど吸収率が高くなるので、この光吸収体は、前記レーザ光の入射端側の光吸収率が小さく、([0082]・[請求項16])
この光吸収体は、レーザ光の入射側において光吸収が集中し、その光吸収による発熱で第2固定剤を損傷させることが抑制されている、([0082])
半導体レーザモジュール。」
ウ 本件補正発明と引用発明との対比
(ア)本件補正発明の「半導体レーザモジュールであって、」との特定事項について
引用発明の「半導体レーザモジュール」は、本件補正発明の「半導体レーザモジュール」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(イ)本件補正発明の「レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、」との特定事項について
引用発明の「レーザ光を出力する半導体レーザ素子」は、本件補正発明の「レーザ光を出力する半導体レーザ素子」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(ウ)本件補正発明の「コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、」との特定事項について
引用発明の「コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を当該半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバ」は、本件補正発明の「コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバ」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(エ)本件補正発明の「前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、」との特定事項について
引用発明の「前記光ファイバの外周に配置され、前記光ファイバを固定する光学部品」における「光学部品」は、本件補正発明の「光学部品」に相当する。
そして、引用発明の「光学部品」は、「前記光ファイバの外周に配置され、前記光ファイバを固定する」ものであるとともに、「前記レーザ光の波長において光透過性を有」するものであるから、本件補正発明でいう「前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する」ものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(オ)本件補正発明の「前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、」との特定事項について
引用発明の「前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤」は、本件補正発明の「前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(カ)本件補正発明の「前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、」との特定事項について
引用発明の「前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、前記第1光遮断部と、を内部に収容する筐体」における「筐体」は、本件補正発明の「筐体」に相当する。
引用発明の「筐体」は、「前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端」を「内部に収容する」から、本件補正発明でいう「前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する」ものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(キ)本件補正発明の「前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されており、前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されており、」との特定事項について
引用発明の「光吸収体」は、「前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する」ものであるから、本件補正発明の「前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材」に相当する。
引用発明の「前記光吸収体の前記光学部品と固着される面」においては、「平均表面粗さ」が「前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が小さくされ」ているところ、「金属は、光が入射する面の表面粗さが大きいほど吸収率が高くなる」とされている。このように、金属に表面粗さが存在するとそこで光吸収が生じることから、当該「平均表面粗さ」が存在する領域(以下「平均表面粗さ領域」という。)は、物理的にみて、光反射が低減していることが明らかであり、よって、平均表面粗さ領域は、本件補正発明の「光反射低減領域」に相当するとともに、本件補正発明の「前記レーザ光を吸収」するものといえる。そして、平均表面粗さ領域は、「平均表面粗さ」が場所により変動するようにされることから、本件補正発明でいう「粗面であるように処理されている」ものといえる。
さらに、引用発明の平均表面粗さ領域は、「前記光吸収体の前記光学部品と固着される面」に存在しているところ、「光吸収体」は「前記光学部品の外周に配置され」ていることから、平均表面粗さ領域は、本件補正発明でいう「当該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されて」いるといえるとともに、また、「前記光学部品の周囲に」形成されていることが明らかである。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(ク)本件補正発明の「前記固定部材は、Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、」との特定事項について
引用発明の「光吸収体」(本件補正発明の「固定部材」に相当。)は、「Cu、Ni、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、AlN、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、またはAlN、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有」するものであるから、本件補正発明でいう「前記固定部材は、Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有」するものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(ケ)本件補正発明の「前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されており、」との特定事項について
引用発明の「光吸収体」(本件補正発明の「固定部材」に相当。)は、「前記筐体に熱良導体を介して接続されて」いるから、本件補正発明でいう「前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されて」いるものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(コ)本件補正発明の「前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収し、前記固定部材は、前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱し、」との特定事項について
引用発明の「光吸収体」(本件補正発明の「固定部材」に相当。)は、「前記光吸収体の前記光学部品と固着される面」に平均表面粗さ領域を備えており、当該領域は、上記(キ)のとおり、レーザ光を吸収するものである。そして、当該領域が吸収するレーザ光は、「光学部品」を透過したものであるのであり、このことは、「光学部品」がレーザ光の波長において光透過性を有するものであり(上記(エ))、「光吸収体」が「前記光学部品の外周に配置され」ていることからみて明らかである。よって、引用発明は、本件補正発明でいう「前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収」するものといえる。
また、引用発明の「光吸収体」(本件補正発明の「固定部材」に相当。)は、上記のとおり、その「前記光学部品と固着される面」に平均表面粗さ領域を備えており、しかも、「前記筐体に熱良導体を介して接続されて」いるから、本件補正発明でいう「前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱」するものといえる。
よって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
(サ)本件補正発明の「前記光反射低減領域の表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であり、前記光反射低減領域は、前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている」との特定事項について
引用発明は、平均表面粗さ領域を備えており、平均表面粗さは、前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が小さくされているものの、上記特定事項を満たしているかは不明である。
(シ)本件補正発明の「半導体レーザモジュール」との特定事項について
上記(ア)と同様に、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
エ 一致点及び相違点の認定
上記ウによれば、本件補正発明と引用発明とは、
「半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されており、
前記固定部材は、
Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、
前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収し、前記固定部材は、前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱する、
半導体レーザモジュール。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
「前記光反射低減領域」が、本件補正発明は、その「表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であり」、「前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている」のに対し、引用発明は、その平均表面粗さが、「前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が小さくされている」点。
オ 相違点の判断
引用発明の「前記光吸収体の前記光学部品と固着される面の平均表面粗さは、前記光ファイバの長手方向に沿って、前記レーザ光の入射端側が小さくされて」いるから、当業者は、このような平均表面粗さを設けるために、具体的な手法を検討するという動機をもつといえる。しかるに、進歩性の判断の冒頭で説示したとおり、本判断では、本件補正発明で特定された固定部材に係る材料の種類及び得ようとする粗面化の程度に応じて、固定部材の内面が「レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化され」るように加工する手法が、本願の出願時において技術常識であると仮定されている。
そうすると、当業者であれば、引用発明の「前記光吸収体の前記光学部品と固着される面」の平均表面粗さを設ける具体的手法として、上記技術常識に基づく手法を採用することは、適宜なし得たことであるといえる。そして、「平均表面粗さ」の程度は、引用発明の「光吸収体は、レーザ光の入射側において光吸収が集中し、その光吸収による発熱で第2固定剤を損傷させることが抑制される」という目的に応じて、当業者が適宜設計し得たものであるところ、相違点に係る「算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲」は、格別特異な数値であるとはいえないことから、当業者が適宜至ることができるといえる。
よって、相違点に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして引用発明及び技術常識に基づいて当業者が予測し得たものにすぎない。
カ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)独立特許要件の検討の小括
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号、同条同項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、仮に、同法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしているとしても、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、本件補正後の請求項1に記載される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するのであり、したがって、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年1月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)において、本件補正前の請求項1として記載したとおりのものであって、これを再掲すると次のとおりである。
「半導体レーザモジュールであって、
レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記レーザ光が一端から入射され、該レーザ光を前記半導体レーザモジュールの外部に導波する光ファイバと、
前記光ファイバの外周に配置され、前記レーザ光の波長において光透過性を有し、前記光ファイバを固定する光学部品と、
前記光学部品と前記光ファイバとを固着する第1固定剤と、
前記半導体レーザ素子と、前記光ファイバの前記レーザ光を入射する側の一端と、を内部に収容する筐体と、
を備え、前記光学部品の周囲に、前記レーザ光を吸収し、かつ粗面であるように処理されている光反射低減領域が形成されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品の外周に配置され、該光学部品を固定する固定部材の内面に形成されており、
前記固定部材は、
Cu、Ni、Al、ステンレス鋼、もしくはFeを含む金属部材、
Ni、Cr、Tiを含む金属、もしくはCを含む表面メッキ層を備える部材、
AlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含むセラミック部材、
またはAlN、BeO、ZrO2、SiC、もしくはAl2O3を含む表面を覆うセラミック層を備える部材、のうち少なくとも1つを有し、
前記固定部材は、前記筐体に熱良導体を介して熱的に接続されており、
前記光反射低減領域は、前記光学部品を透過した前記レーザ光を吸収し、前記固定部材は、前記光反射低減領域が吸収した前記レーザ光のエネルギーを熱に変換し、前記熱良導体を介して前記筐体に放熱する
ことを特徴とする半導体レーザモジュール。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献に記載された発明であるとともに、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
3 引用文献について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2の[理由]3(5)イに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]3(5)で検討した本件補正発明から、「前記光反射低減領域の表面粗さについては、算術平均粗さが0.05μm≦Ra≦10μmの範囲であり、前記光反射低減領域は、前記固定部材の内面が、レーザ光により表面処理され酸化が生じて黒みを帯びることで、光の吸収係数が高まりかつ粗面化されている」に係る限定事項を削除したものである。そして、上記第2の3(5)エによれば、本件補正発明は、引用発明とは、上記限定事項を除いて一致しているといえる。
よって、本願発明は引用発明であるし、仮に、何らかの相違点があるとしても、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-011677