特許拒絶査定不服審判
2022-020008
均一出力照明を有する導波管
- 審判番号
- 2022-020008
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-529860
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2023年12月11日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ディジレンズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 山村 浩
- 審判官 齋藤 卓司
- 審判官 秋田 将行
- 分類
- P18 .113-Z (G02B) / P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-529860「均一出力照明を有する導波管」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日国際公開、WO2018/102834、令和 2年 5月21日国内公表、特表2020-514783〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)1月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年(平成29年)1月26日、米国。以下、この日を「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年 1月26日 :手続補正書の提出
令和 3年11月26日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 4月 7日 :意見書・手続補正書の提出
令和 4年 8月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 4年12月 9日 :審判請求書・手続補正書の提出
第2 令和4年12月9日にされた補正(本件補正)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年12月9日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「導波管デバイスであって、
少なくとも1つの光学基板と、
少なくとも1つの光源と、
少なくとも1つの光結合器であって、前記少なくとも1つの光結合器は、一意の全内部反射(TIR)角度が入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるように、ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能であり、前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される、少なくとも1つの光結合器と、
前記光学基板から光を抽出するための少なくとも1つの光抽出器と、
バンディング除去光学であって、前記バンディング除去光学は、前記抽出された光が軽減されたバンディングを有する略平坦照明プロファイルであるように、照明された瞳のバンディング効果を軽減することが可能であり、前記バンディング除去光学は、有効入力開口Wであって、前記光学基板が厚さDを有するときに、前記有効入力開口Wが、前記光学基板内のTIR角度Uを提供するように構成されるようなものである、有効入力開口Wを備え、前記TIR角度U、前記有効入力開口W、および前記厚さDは、W=2D tan(U)によって関連付けられている、バンディング除去光学と
を備える、導波管デバイス。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年4月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「導波管デバイスであって、
少なくとも1つの光学基板と、
少なくとも1つの光源と、
少なくとも1つの光結合器であって、前記少なくとも1つの光結合器は、一意の全内部反射(TIR)角度が入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるように、ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能である、少なくとも1つの光結合器と、
前記光学基板から光を抽出するための少なくとも1つの光抽出器と、
バンディング除去光学であって、前記バンディング除去光学は、前記抽出された光が軽減されたバンディングを有する略平坦照明プロファイルであるように、照明された瞳のバンディング効果を軽減することが可能であり、前記バンディング除去光学は、有効入力開口Wであって、前記光学基板が厚さDを有するときに、前記有効入力開口Wが、前記光学基板内のTIR角度Uを提供するように構成されるようなものである、有効入力開口Wを備え、前記TIR角度U、前記有効入力開口W、および前記厚さDは、W=2D tan(U)によって関連付けられている、バンディング除去光学と
を備える、導波管デバイス。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1における「光結合器」について「前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される」という限定を付加することを含むものである。前記限定を付加する補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を、上記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものと認定する。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-44326号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付した。)
「【0001】
本発明は、画像形成装置等によって形成された2次元画像を観察者に観察させるために使用される画像表示装置に関する。」
「【0008】
また、第2形式の画像表示装置800にあっては、導光板821の厚さを増やすことなく広い画角表示を可能とするため、また、観察者が画像を観察できる範囲(アイボックス)を広くするために、第2回折格子部材840においては、複数回に亙り反射回折をしながら、徐々に導光板821内の光を導光板821から出射させている。ここで、図14に示すように、第2形式の画像表示装置800にあっても、観察者の瞳10が領域「A」あるいは領域「C」に位置する場合には、コリメート光学系812から出射される平行光は瞳10に到達する。然るに、瞳10が領域「B」に位置する場合には、コリメート光学系812から光が出射されず、瞳10に到達しないか、たとえ出射されたとしても、光量の低下が著しい。従って、このような第2形式の画像表示装置800にあっても、観察者の瞳位置により表示画像に輝度むら、色むらが発生してしまう。
【0009】
従って、本発明の目的は、観察者の瞳位置が移動した場合でも、画像形成装置等によって形成された2次元画像を観察するときに輝度むら、色むらが生じ難い構成、構造を有する画像表示装置を提供することにある。」
「【0040】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る画像表示装置に関する。実施例1あるいは後述する実施例3の画像表示装置100,300は、図1に概念図を示すように、
(A)2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する画像形成装置111、
(B)画像形成装置111の各画素から出射された光を平行光とするコリメート光学系112、及び、
(C)コリメート光学系112にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される光学装置120,320、
を備えている。」
「【0044】
実施例1あるいは後述する実施例3において、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。より具体的には、反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させてコリメート光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、320×240個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。」
「【0046】
実施例1、あるいは、後述する実施例2~実施例4において、導光板121,321の軸線方向をY方向、導光板121,321の法線方向をX方向とし、導光板121,321に入射する光束のY方向に沿った幅(即ち、実施例1、実施例3にあっては、コリメート光学系の出射瞳径であり、実施例2、実施例4にあっては、リレー光学系の出射瞳径である)をWY(単位:mm)、導光板121,321の厚さをt(単位:mm)、導光板121,321の内部で全反射される光の導光板内面への入射角をθとする。」
「【0058】
実施例3は、本発明の第3の態様に係る画像表示装置に関する。図4の(A)に概念図を示すように、実施例3の画像表示装置300における画像形成装置111及びコリメート光学系112は、実施例1において説明した画像形成装置111及びコリメート光学系112と同じ構成、構造を有する。また、光学装置320も、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造、即ち、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板321、
(b)導光板321に入射された光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板321の内部を全反射により伝播した光を導光板321から出射させるために、導光板321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
を備えている点は、実施例1の光学装置120と同じである。
【0059】
実施例3にあっては、第1偏向手段及び第2偏向手段は導光板321の表面(具体的には、導光板321の第2面323)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板321に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材330』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材340』と呼ぶ。」
「【0063】
第1回折格子部材330は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、第1面322から導光板321に入射されたこの平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材340は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、導光板321の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板321から平行光のまま第1面322から出射する。但し、これに限定するものではなく、第2面323によって導光板入射面が構成され、第1面322によって導光板出射面が構成されていてもよい。」
「【0067】
図5に概念図を示すように、導光板321に入射したY方向に幅WYを有する光束は、第1回折格子部材330で回折反射され、導光板321内を全反射して伝播していく。このとき、導光板321内を全反射により伝播する光束が、導光板321内で重なることが無く、且つ、隙間なく、導光板321を満たすといった要請を満足するように、導光板に入射する光束のY方向に沿った幅WY、導光板の厚さt、導光板の内部で全反射される光の導光板内面への入射角θといったパラメータを設定すれば、図14にて説明したような現象は生じない。
【0068】
即ち、第1回折格子部材330で、一度、回折反射され、導光板321で全反射された光が、導光板321で全反射されるまでに進行する距離をDs’(単位:mm)とする。このとき、図5に概念図を示すように、WYとDs’との間で以下の式(6)の関係を満足すれば、上記の要請を満たすことになる。
【0069】
Ds’=2t・tan(θ) (6)
【0070】
従って、式(6)を満足すれば、導光板321内を全反射により伝播する光束が、導光板321内で重なることが無く、且つ、隙間なく、導光板321を満たすので、観察者の瞳10がY方向に移動しても、図14にて説明したような現象が生ぜず、画像の急激な明るさ(輝度)の変化が発生しない。云い換えれば、観察者の瞳10がどの領域に位置しても、コリメート光学系312から出射される光は、最終的に、瞳10に到達し、画像表示装置300において、観察者の瞳位置により表示画像に輝度むら、色むらが発生し難い。それ故、高い表示品質を有する画像表示装置を提供することができる。」
「【0073】
尚、第1回折格子部材330で、一度、回折反射され、導光板321で全反射された光が、再び第1回折格子部材330に入射しないことが、導光板321内を全反射により伝播する光束が導光板321内で重なることが無く、且つ、隙間なく、導光板321を満たすといった条件を満足する上で、一層好ましい。即ち、Y方向に沿った第1偏向手段330の有効長をLH-1(単位:mm)としたとき、
LH-1=2t・tan(θ) (7)
を満足することが一層好ましい。尚、式(7)は、上述したとおり、以下の式(8)の範囲まで拡大することができる。
2t・tan(θ)-2≦LH-1≦2t・tan(θ)+2 (8)」
「【0077】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。例えば、実施例3あるいは実施例4の光学装置にあっては、導光板321の第1面322に透過型ホログラムから成る第1偏向手段を配設し、第2面322に反射型ホログラムから成る第2偏向手段を配設するといった構成とすることもできる。このような構成にあっては、第1偏向手段に入射した光は、回折され、導光板内で全反射条件を満たし、第2偏向手段まで伝播される。そして、第2偏向手段において回折反射され、導光板から出射される。また、実施例3あるいは実施例4の光学装置にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子や表面レリーフ型ホログラムとすることもできる。」
「【図4】
[図:0001409738000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001409738000002.jpg]
」
イ 引用発明の認定
上記アによれば、引用文献1には、実施例3の画像表示装置について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)
「画像表示装置300であって、(【0058】)
画像形成装置111、コリメート光学系112及び光学装置320を備えており、(【0058】)
前記画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されているものであり、(【0044】)
前記コリメート光学系112は、前記画像形成装置111の各画素から出射された光を平行光とするものであり、(【0040】)
前記光学装置320は、(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板321、(b)前記導光板321に入射された光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された光を回折反射して偏向させる第1回折格子部材330、(c)前記導光板321の内部を全反射により伝播した光を導光板321から出射させるために、導光板321の内部を全反射により伝播した光を偏向させる第2回折格子部材340、を備えており、(【0058】・【0059】)
第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340は導光板321の第2面323に配設されており、(【0059】)
前記導光板321内を全反射により伝播する光束が、導光板321内で重なることが無く、且つ、隙間なく、導光板321を満たすといった要請を満足するように、導光板に入射する光束のY方向に沿った幅WY、導光板の厚さt、導光板の内部で全反射される光の導光板内面への入射角θといったパラメータを設定するものであって、(【0067】)
即ち、第1回折格子部材330で、一度、回折反射され、導光板321で全反射された光が、導光板321で全反射されるまでに進行する距離をDs’として、Ds’=2t・tan(θ)を満足し、(【0068】・【0069】)
従って、観察者の瞳10がどの領域に位置しても、コリメート光学系312から出射される光は、最終的に、瞳10に到達し、画像表示装置300において、観察者の瞳位置により表示画像に輝度むら、色むらが発生し難いものであり、(【0070】)
Y方向は、前記導光板321の軸線方向であり、(【0046】)
第1回折格子部材330で、一度、回折反射され、導光板321で全反射された光が、再び第1回折格子部材330に入射しないことが、導光板321内を全反射により伝播する光束が導光板321内で重なることが無く、且つ、隙間なく、導光板321を満たすといった条件を満足するものであって、
即ち、Y方向に沿った第1回折格子部材330の有効長をLH-1としたとき、LH-1=2t・tan(θ)を満足する、(【0073】)
画像表示装置300。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明の「導波管デバイスであって、少なくとも1つの光学基板と、少なくとも1つの光源と、」「を備える、導波管デバイス」の特定事項について、
(ア)引用発明の「導光板321」は、「導光」「板」である以上、光学的かつ板状の部材といえるから、本件補正発明の「光学基板」に相当する。そして、当該「導光板321」は、「入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される」ものであるから、入射された光を部材の表面で囲われた内部領域で導波するといえるのであり、したがって、本件補正発明の「導波管」にも相当するといえる。
(イ)引用発明の「画像形成装置111」は、「反射型空間光変調装置150、及び、光源153から構成されている」ところ、当該「光源153」は、本件補正発明の「光源」に相当する。
(ウ)引用発明の「画像表示装置300」は、「導光板321」と(光源153を含む)「画像形成装置111」を備えていることから、本件補正発明の「導波管デバイス」に相当する。
(エ)したがって、引用発明は本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
イ 本件補正発明の「少なくとも1つの光結合器であって、前記少なくとも1つの光結合器は、一意の全内部反射(TIR)角度が入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるように、ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能であり、前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される、少なくとも1つの光結合器と、」の特定事項について
(ア)引用発明の「第1回折格子部材330」は、「前記導光板321に入射された光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された光を回折反射して偏向させる」ものであるから、本件補正発明の「光結合器」に相当するとともに、「入力格子」にも相当する。
(イ)a 引用発明の上記の「前記導光板321に入射された光」は、「光源153」(本件補正発明の「光源」に相当。)を含む「画像形成装置111」の各画素から出射された光を「コリメート光学系112」により平行光としたものに由来するといえることから、当該「前記導光板321に入射された光」は、本件補正発明の「ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光」に相当する。
b 引用発明では、当該「前記導光板321に入射された光」が、「第1回折格子部材330」(本件補正発明の「光結合器」及び「入力格子」の双方に相当。)で、「一度、回折反射され、導光板321で全反射され」るものであり、その際の「導光板の内部で全反射される光の導光板内面への入射角」が「θ」である。このように、当該「入射角θ」は、「光源153」を含む「画像形成装置111」の各画素から出射された光を「コリメート光学系112」により平行光とした光に由来する光を、「第1回折格子部材330」で回折反射した後に導光板321の内部で全反射される光の導光板内面への入射角であることから、当該「入射角θ」は、本件補正発明の「入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるよう」な「一意の全内部反射(TIR)角度」に相当する。
c 引用発明の上記「第1回折格子部材330」は、上記a及びbにも照らせば、本件補正発明でいう「ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能であ」るものといえる。
d したがって、引用発明の「第1回折格子部材330」は、本件補正発明でいう「一意の全内部反射(TIR)角度が入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるように、ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能であ」るものといえる。
(ウ)引用発明の「第1回折格子部材330」(本件補正発明の「光結合器」に相当。)は、「導光板321に入射された光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射された光を回折により偏向させる」ものであるとともに、「導光板321の第2面323に配設されて」いるものであることから、上記(イ)aにも照らせば、本件補正発明と引用発明とは、「前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に」「回折するように構成される」点で共通する。
(エ)したがって、本件補正発明と引用発明とは、「少なくとも1つの光結合器であって、前記少なくとも1つの光結合器は、一意の全内部反射(TIR)角度が入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるように、ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能であり、前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に」「回折するように構成される、少なくとも1つの光結合器」を備える点で共通する。
しかしながら、「光結合器」が、本件補正発明は、「前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される」ものであるのに対し、引用発明は、「導光板321の第2面323に配設されて」いるとともに、「導光板321に入射された光を回折反射して偏向させる」ものである。
ウ 本件補正発明の「前記光学基板から光を抽出するための少なくとも1つの光抽出器と、」の特定事項について
(ア)引用発明の「第2回折格子部材340」は、「前記導光板321の内部を全反射により伝播した光を導光板321から出射させるために、導光板321の内部を全反射により伝播した光を偏向させる」ものであることから、本件補正発明の「光抽出器」に相当する。
そして、当該「第2回折格子部材340」は、本件補正発明でいう「前記光学基板から光を抽出するための」ものであるといえる。
(イ)したがって、引用発明は、本件補正発明の上記特定事項を満たしている。
エ 本件補正発明の「バンディング除去光学であって、前記バンディング除去光学は、前記抽出された光が軽減されたバンディングを有する略平坦照明プロファイルであるように、照明された瞳のバンディング効果を軽減することが可能であり、」「前記バンディング除去光学は、有効入力開口Wであって、前記光学基板が厚さDを有するときに、前記有効入力開口Wが、前記光学基板内のTIR角度Uを提供するように構成されるようなものである、有効入力開口Wを備え、前記TIR角度U、前記有効入力開口W、および前記厚さDは、W=2D tan(U)によって関連付けられている」、「バンディング除去光学と」の特定事項について
(ア)引用発明は、「導光板321内を全反射により伝播する光束が、導光板321内で重なることが無く、且つ、隙間なく、導光板321を満たすといった要請を満足する」「ものであっ」て、「従って、観察者の瞳10がどの領域に位置しても、コリメート光学系312から出射される光は、最終的に、瞳10に到達し、画像表示装置300において、観察者の瞳位置により表示画像に輝度むら、色むらが発生し難いもの」であることから、本件補正発明でいう「前記抽出された光が軽減されたバンディングを有する略平坦照明プロファイルであるように、照明された瞳のバンディング効果を軽減することが可能であ」るものといえる。
(イ)引用発明の「導光板の厚さt」は、本件補正発明の「光学基板」の「厚さD」に相当する。
本件補正発明の「有効入力開口W」について、本願の明細書の「例えば、バンディング除去光学は、入力格子がTIR角度Uに依存する有効入力開口W’を有するように、光を構成する。」(【0139】)との記載、及び本願の図1Aからは、W’が主伝搬方向Zに沿って観念される長さの次元をもつ量であるのが見て取れることに照らせば、当該「有効入力開口W」は、本件補正発明のように「光結合器」として「入力格子」が用いられる場合であれば、入力格子に対して観念される概念であり、しかも、主伝搬方向Zに沿って観念される長さの次元をもつ量であるといえる。そうすると、本件補正発明の「有効入力開口W」と引用発明の「Y方向に沿った第1回折格子部材330の有効長LH-1」(ここで、「Y方向」は、「前記導光板321の軸線方向」である。)とは、主伝搬方向に沿った所定長さ(以下「L」ということがある。)である点で共通する。
そして、引用発明の「第1回折格子部材330」は、上記イ(イ)dにも照らせば、本件補正発明の「前記有効入力開口Wが、前記光学基板内のTIR角度Uを提供するように構成されるようなものである」といえる。
また、引用発明の「第1回折格子部材330」は、「Y方向に沿った第1回折格子部材330の有効長をLH-1としたとき、LH-1=2t・tan(θ)を満足する」ものであるから、主伝搬方向に沿った所定長さLが本件補正発明でいう「2D tan(U)によって関連付けられている」ものといえる。
(ウ)したがって、本件補正発明と引用発明とは、「バンディング除去光学であって、前記バンディング除去光学は、前記抽出された光が軽減されたバンディングを有する略平坦照明プロファイルであるように、照明された瞳のバンディング効果を軽減することが可能であり、」「前記バンディング除去光学は、」入力格子の主伝搬方向に沿った所定長さL「であって、前記光学基板が厚さDを有するときに、」前記所定長さL「が、前記光学基板内のTIR角度Uを提供するように構成されるようなものである、」前記所定長さL「を備え、前記TIR角度U、」前記所定長さL、「および前記厚さDは、」L「=2D tan(U)によって関連付けられている」、「バンディング除去光学と」を備える点で共通する。
しかしながら、入力格子の主伝搬方向に沿った所定長さLが、本件補正発明は、「有効入力開口W」であるのに対し、引用発明は、導光板321の軸線方向である「Y方向に沿った第1回折格子部材330の有効長LH-1」である。
(4)一致点及び相違点の認定
上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明とは、
「導波管デバイスであって、
少なくとも1つの光学基板と、
少なくとも1つの光源と、
少なくとも1つの光結合器であって、前記少なくとも1つの光結合器は、一意の全内部反射(TIR)角度が入力格子において決定されるような各光入射角によって画定されるように、ある角度帯域幅を伴う前記光源からの入射光を前記少なくとも1つの光学基板内のTIRの中に結合することが可能であり、前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に回折するように構成される、少なくとも1つの光結合器と、
前記光学基板から光を抽出するための少なくとも1つの光抽出器と、
バンディング除去光学であって、前記バンディング除去光学は、前記抽出された光が軽減されたバンディングを有する略平坦照明プロファイルであるように、照明された瞳のバンディング効果を軽減することが可能であり、前記バンディング除去光学は、主伝搬方向に沿った所定長さであって、前記光学基板が厚さDを有するときに、前記所定長さLが、前記光学基板内の前記TIR角度Uを提供するように構成されるようなものである、所定長さLを備え、前記TIR角度U、前記所定長さL、および前記厚さDは、L=2D tan(U)によって関連付けられている、バンディング除去光学と
を備える、導波管デバイス。」である点で一致し、次の点で一応相違するか、又は相違する。
<相違点1>
「光結合器」が、本件補正発明は、「前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される」ものであるのに対し、引用発明は、「導光板321の第2面323に配設されて」いるとともに、「導光板321に入射された光を回折反射して偏向させる」ものである点。
<相違点2>
入力格子の主伝搬方向に沿った所定長さLが、本件補正発明は、「有効入力開口W」であるのに対し、引用発明は、導光板321の軸線方向である「Y方向に沿った第1回折格子部材330の有効長LH-1」である点。
(5)相違点の判断
ア 相違点1について
(ア)本件補正発明の「光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される」の「光学基板の中に直接回折する」の意味は判然としないところがあるが、仮に、光結合器により回折される前後の光が、いずれも光学基板の中に存在することを意味するのであれば、引用発明の「第1回折格子部材330」においても、「導光板321の第2面323に配設されて」いるとともに、「導光板321に入射された光を回折反射して偏向させる」ものである以上、当該「第1回折格子部材330」により回折される前後の光が、いずれも導光板321の中に存在するといえる。
したがって、相違点1は実質的なものではない。
(イ)また、本件補正発明の上記「光学基板の中に直接回折する」の意味が、仮に、光結合器により回折される前後の光のみならず、光結合器それ自体もが、光学基板の(外ではなく)中に存在することを意味するとしても、以下のとおり、相違点1は格別ではない。
すなわち、引用発明を開示する引用文献1には、「第1偏向手段を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる」(【0077】)ことが記載されているところ、耐久性を高めるという一般的な課題を解決するために、回折格子素子を導光板に埋め込んだ透過型回折格子素子は、周知技術(例えば、特開2005-37872号公報の【0053】、【0057】、【0058】、図1を参照。)である。そうすると、引用発明において、当業者が、「第1回折格子部材330」を、透過型回折格子素子から構成する形態としつつ上記周知技術を採用することは、容易に想到し得たことであり、そのようにすることにより、当業者は、相違点1に係る本件補正発明の構成に至る。
イ 相違点2について
(ア)相違点2に係る本件補正発明の「有効入力開口W」は、上記(3)エ(イ)で説示した本願の明細書及び図面の記載に照らせば、入力格子に入射する光線が通過可能な範囲の長さの意味であると解される。他方、引用発明の「有効長LH-1」は、導光板321の軸線方向である「Y方向に沿った第1回折格子部材330」について観念されるものであるところ、「有効長」という文言にも照らせば、第1回折格子部材に入射する光線が通過可能な範囲の長さを意味すると解するのが自然である。そうすると、引用発明の有効長LH-1と本件補正発明の有効入力開口Wとは、同じ範囲の長さを異なる呼称を用いているだけであって、両者の間に、特段の相違はない。
したがって、相違点2は実質的なものではない。
(イ)仮に、本件補正発明の「有効入力開口W」が、光結合器に設けられた、物理的な意味での「開口」の存在を前提とするものであるとしても、以下のとおり、相違点2は格別ではない。
すなわち、光線が通過可能な範囲を画定するために開口を用いることは例示するまでもなく技術常識であることから、引用発明の「第1回折格子部材330」において「有効長LH-1」の範囲を画定するために、上記技術常識を採用し、相違点2に係る本件補正発明の構成に至ることは、当業者にとって容易である。
ウ 本件補正発明の効果について
仮に相違点1及び2の少なくともいずれか一方が実質的であるとしても、本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、当業者が引用発明並びに上記周知技術及び技術常識に基づいて予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。
(6)請求人の主張について
請求人は、相違点2に係る本件補正発明の構成に関して、引用発明の「第1回折格子部材330」は、導光板に入射する光束が、Y方向に沿った特定の「幅」を有することに頼るものである一方、本件補正発明の「有効入力開口W」は、光束の幅がWよりも大きい場合についても有用である旨主張する。
しかしながら、相違点2が実質的なものではないことは、上記(5)イ(ア)で説示したとおりであるし、仮に実質的なものであるとしても、請求人が主張する効果は、上記同(イ)で認定した技術常識に照らして、当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
(7)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明であるか、又は引用発明並びに上記周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年4月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1において本件補正前の請求項1として記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である上記の引用文献1に記載された発明であるか、又は上記の引用文献1に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
3 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)で認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記光結合器は、前記少なくとも1つの光源からの光を前記少なくとも1つの光学基板の中に直接回折するように構成される」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2で検討したとおり、引用発明であるか、又は引用発明並びに上記周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であるか、又は引用発明並びに上記周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020008