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特許拒絶査定不服審判

2022-015445

分割ビームのレーザスクライビングプロセスとプラズマエッチングプロセスとを使用する、ハイブリッドなウエハダイシングの手法

審判番号
2022-015445
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-546040外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年09月29日
審決日
2023年06月05日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .56 -Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-546040「分割ビームのレーザスクライビングプロセスとプラズマエッチングプロセスとを使用する、ハイブリッドなウエハダイシングの手法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 8日国際公開、WO2017/151254、令和 1年 5月16日国内公表、特表2019-512875〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2017年(平成29年)1月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年3月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 3月17日:拒絶理由通知書
令和 3年 6月21日:意見書及び手続補正書の提出
令和 3年 9月22日:最後の拒絶理由通知書
令和 3年12月28日:意見書及び手続補正書の提出
令和 4年 5月23日:補正却下の決定、拒絶査定(原査定)
令和 4年 9月29日:審判請求書の提出

第2 令和4年5月23日付け補正却下の決定について

本件では、令和4年9月29日に提出された審判請求書の【請求の理由】の「2.補正の却下の決定が妥当でない理由」において、請求人は、「…令和3年12月28日付手続補正書による、本願請求項1ないし15に係わる発明は、進歩性を有するので、独立特許性を有します。したがって、補正の却下の決定は取り消されるべきです。」と主張しており、「前審の補正却下の決定に対する不服申立てがある」ものである。

そこで、令和4年5月23日付けの補正却下の決定(以下「前審補正却下の決定」という。)が適法か否かについて、以下において検討する。

1 令和3年12月28日付けの手続補正の内容

令和3年12月28日付けの手続補正による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1~15を補正後の特許請求の範囲の請求項1~15と補正するものであり、そのうちの補正前後の請求項1は、それぞれ次のとおりである。

<補正前>

「【請求項1】
複数の集積回路を備える半導体ウエハをダイシングする方法であって、
前記集積回路を覆いかつ保護する層を備えるマスクを、前記半導体ウエハ上に形成することと、
間隙を有するパターニングされたマスクを提供するために、分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスを用いて前記マスクをパターニングし、前記半導体ウエハの前記集積回路間の領域を露出させることと、
前記集積回路を個片化するために、前記パターニングされたマスクの前記間隙を通じて、前記半導体ウエハをプラズマエッチングすることとを含み、
前記分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスは、1つから2つに分割されたビームを使用し、約800kHzで且つ分割ビーム当たり約6μJのパルスエネルギー、約800mm/秒の載台速度で実施される、方法。」

<補正後>

「【請求項1】
複数の集積回路を備える半導体ウエハをダイシングする方法であって、
前記集積回路を覆いかつ保護する層を備えるマスクを、前記半導体ウエハ上に形成することと、
間隙を有するパターニングされたマスクを提供するために、分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスを用いて前記マスクをパターニングし、前記半導体ウエハの前記集積回路間の領域を露出させることと、
前記集積回路を個片化するために、前記パターニングされたマスクの前記間隙を通じて、前記半導体ウエハをプラズマエッチングすることとを含み、
前記分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスは、1つから2つに分割されたビームを使用し、800kHzで且つ分割ビーム当たり6μJのパルスエネルギー、800mm/秒の載台速度で実施され、さらに、
前記半導体ウエハをレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路の側壁を洗浄するための、プラズマベースの洗浄工程を実施することを含む、方法。」(下線は、補正箇所。)

2 本件補正についての検討

(1)前審補正却下の決定では、以下のとおりとされている。

「 理由
請求項1-15についての補正は限定的減縮を目的としている。この場合、補正後の請求項1-15に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
しかしながら、引用文献1には、段落[0013]に、プラズマエッチングの前に、スクライブされる溝内に残される残渣を最小限にして、きれいに除去することが記載されている。また、引用文献2には、レーザスクライブの後、且つ、プラズマエッチングの前に、「スクライブされた開口部(scribed openings)」(あるいは「レーザスクライブされたトレンチ(laser scribed trench)」あるいは「マスクに露出された領域(mask-opened regions)」)の洗浄のために、反応性または非反応性プラズマベースの洗浄プロセスを行うことが記載されている(特に、図1-13及び段落[0066]-[0069]を参照)。そして、引用文献2に記載の洗浄プロセスが、集積回路606の「側壁」が含まれる、「開口部」(「トレンチ」、「マスクに露出された領域」)全体を、洗浄の対象としていることは、当業者にとって明らかである。
また、その他の点は、令和 3年 9月22日付け拒絶理由通知書に記載したとおりである。
よって、当該補正後の請求項1-15にかかる発明は、引用文献1-2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
・・・(中略)・・・
<引用文献等一覧>
1.特表2014-526146号公報
2.米国特許出願公開第2015/0214109号明細書」

(2)上記1から、本件補正は、補正前の請求項1に、「、さらに、前記半導体ウエハをレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路の側壁を洗浄するための、プラズマベースの洗浄工程を実施することを含む」との記載を追加する補正事項を含むから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

そこで、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下において検討する。

(3)独立特許要件について

ア 本件補正後の発明

本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記1の<補正後>に記載した事項により特定されるとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項等

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(ア)引用文献1について

a 前審補正却下の決定で引用された本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2014-526146号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。(下線は当審において付した。)

「【0001】
1)分野
本発明の実施形態は、半導体処理の分野に関し、特に、各ウェハが複数の集積回路を上に有する半導体ウェハをダイシングする方法に関する。」
「【概要】
【0006】
本発明の実施形態は、各ウェハが複数の集積回路を上に有する半導体ウェハをダイシングする方法を含む。
【0007】
一実施形態では、複数の集積回路を有する半導体ウェハをダイシングする方法は、集積回路を覆い、保護する層から成るマスクを、半導体ウェハ上に形成する工程を含む。マスクはその後、分割ビームレーザスクライビングプロセスによってパターニングされ、これによって集積回路間の半導体ウェハの領域を露出させるギャップを有するパターニングされたマスクを提供する。その後、半導体ウェハは、パターニングされたマスク内のギャップを貫通してエッチングされ、これによって集積回路を個片化する。」
「【0012】
初めのレーザスクライブと、後続のプラズマエッチングを含むハイブリッドなウェハ又は基板のダイシングプロセスは、ダイの個片化のために実施することができる。レーザスクライブプロセスは、マスク層、有機・無機誘電体層、及びデバイス層をきれいに除去するために使用することができる。その後、レーザエッチングプロセスは、ウェハ又は基板の露出又は部分的なエッチング時に終了することができる。ダイシングプロセスのプラズマエッチング部分は、その後、ダイ又はチップを個片化又はダイシングするために、ウェハ又は基板のバルクを貫通して(例えば、バルクの単結晶シリコンを貫通して)エッチングするために用いることができる。本発明の一実施形態では、分割されたビームのアレイを用いたウェハのフェムト秒レーザスクライビングのための方法及びシステムが提供される。このような一実施形態では、必要なプロセスのスループットを維持しつつ、クリーンなレーザスクライビングが達成される。
【0013】
ポリマー、誘電体及び金属は、典型的には、(例えば、シリコン基板又は薄化されたシリコン基板からの)シリコンと比べて、エッチング除去するのがより困難である。メカニズムは不明なままであるが、過溶融したシリコンもまた、規則的なシリコンよりもエッチングすることがより困難であることが見出されている。ハイブリッドダイシング方式の成功したプラズマエッチング部を確実にするために、及びウェハ全体にわたって再現性よく一貫したトレンチ幅及び全厚さにわたるエッチングを達成するために、特定の条件を適用する必要があるかもしれない。例えば、一実施形態では、クリーンなハイブリッドダイシングのアプローチのために、ポリマー、誘電体(例えば、酸化物)層及び金属層は、スクライブされる溝内に残される残渣を最小限にして、きれいに除去する必要がある。このアプローチは、スクライブされるトレンチの底部にシリコンの最大利用可能な表面積を露出させることができる。また、一実施形態では、レーザの態様は、一貫したスクライビングカーフ幅を提供すべきである。
続きを表示(全26行)
・・・
【0016】
こうして、本発明の一態様では、分割ビームレーザスクライビングプロセスとプラズマエッチングプロセスの組合せが使用され、これによって半導体ウェハを個片化された集積回路にダイシングすることができる。図1は、本発明の一実施形態に係る、複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法における操作を示すフローチャート100である。図2A~図2Cは、本発明の一実施形態に係る、フローチャート100の操作に対応する、半導体ウェハをダイシングする方法を実施する間の、複数の集積回路を含む半導体ウェハの断面図を示す。
【0017】
フローチャート100の操作102及び対応する図2Aを参照すると、マスク202が、半導体ウェハ又は基板204の上方に形成される。マスク202は、半導体ウェハ204の表面上に形成された集積回路206を覆い、保護する層でできている。マスク202は、集積回路206のそれぞれの間に形成された介在するストリート207も覆う。
・・・
【0021】
フローチャート100の操作104及び対応する図2Bを参照すると、マスク202は、分割レーザスクライビングプロセスでパターニングされ、これによって集積回路206間の半導体ウェハ又は基板204の領域を露出させるギャップ210を有するパターニングされたマスク208を提供する。このように、レーザスクライビングプロセスは、集積回路206間にもともと形成されていたストリート207の材料を除去するために使用される。本発明の一実施形態によると、分割レーザスクライビングプロセスによってマスク202をパターニングする工程は、図2Bに示されるように、集積回路206間の半導体ウェハ204の領域内に部分的にトレンチ212を形成する工程を含む。一実施形態では、分割ビームレーザスクライビングプロセスでマスク202をパターニングする工程は、例えば、ナノ秒レーザ、ピコ秒レーザ、又はフェムト秒レーザが挙げられるが、これらに限定されないレーザを使用する工程を含む。
・・・
【0024】
本発明の一実施形態によると、レーザの出力レーザビームは、ビーム分割光学モジュールを介してM×N(ただし、MとNの一方又は両方は2以上の正の整数)のドットマトリクスパターンに分割される。その後、ドットマトリクスパターンは、テレセントリック焦点レンズを通して作業面に結像され、作業面上では、集束スポット間の距離が、個片化のために必要なダイのサイズに等しい。一実施形態では、レーザは、M×Nのドットマトリクスの各焦点に必要なパルスエネルギーを送出する最大パルス繰り返しレートで、又は最大パルス繰り返しレート近くで運転される。M=Nである特定の一実施形態では、レーザビームはワークピースに対して移動され、合計N本のラインをスクライビングし、これによって単一のパス内で(N-1)個のダイの個片化を行う。
【0025】
一実施形態では、回折型光学素子(DOE)は、ビームスプリッタとして使用される。DOEは、入力ビームの発散角、プロファイル、直径、及び偏光を保持することができる。このように、いくつかの実施形態では、各分割ビームが同じ量のパルスエネルギーを伝えることができ、作業面上に名目上等しい焦点とフルエンスを送出するだろう。しかしながら、他の実施形態では、ビームを分割するために等しくない出力分布を有するビームが提供される。一実施形態では、テレセントリック焦点レンズが使用され、これによって例えば、回折型ビームスプリッタを介してレーザビームを分割した後で、非ゼロの分割角度が存在し得るので、入射ビーム点が作業面に垂直に送出されることを確実にする。
【0026】
一実施形態では、二次元ビーム分割は、予め指定された間隔及びビームパターンの対称性を有するN×Nのビームに、単一のレーザビームを分割する。このような一実施形態では、適切な焦点距離に整合したテレセントリック焦点レンズが使用され、これによって個片化されるダイサイズに等しいピッチを有するようにN×Nのビームを提供する。特定の一実施形態では、レーザビームは、そのガウス分布内で使用される。あるいはまた、別の特定の一実施形態では、入力ビームは、ビーム分割光学装置に入力される前に、まずビーム整形光学モジュールを介してトップハットビームプロファイルに変換される。
【0027】
一実施形態では、分割ビームのアプローチは、シングルパス・マルチスポットのスクライビングプロセスを可能にする。一実施形態では、連続したマルチスポットのアブレーションは、個片化を受けるウェハ全域に亘って一貫してきれいなスクライブトレンチ形成を確実にする。一実施形態では、このようなアプローチを用いることによって、スループットが大幅に改善される。例えば、特定の一実施形態では、作業面をスクライビングするためにビームあたり約5uJが必要とされると仮定して、レーザは、約100kHzで約45uJ、約200kHzで約20uJ、約300kHzで約10uJ、約400kHzで約5uJを送出する。スクライビングプロセスのために約1ミクロンスポットの分離が必要とされる可能性があると仮定して、例えば、約100kHzでレーザを動作させながら、スクライビング速度は毎秒約100ミリメートル(又は約200kHzでのスクライビングに対して毎秒約200ミリメートル等)である。
【0028】
上記の例では、従来のアプローチは、毎秒約400ミリメートルで複数回(例えば、2パス)スクライブするために約400kHzで約5uJの単一のビームを使用することができる。単一パス当たりの相当スクライビング速度は、毎秒約200ミリメートル(=毎秒400ミリメートル/2)である。対照的に、一実施形態では、ビームは、事前に定義された間隔をもつ2×2=4のビームに分割され、各分割ビーム内において約200kHzで約5uJを送出する。単一パス内において毎秒約200ミリメートルでウェハをスクライブするのに2×2の分割ビームを使用すると、2本のスクライブされた線が同時に生成される。単一ビーム当たりの相当スクライビング速度は、およそ毎秒200ミリメートル×2=毎秒400ミリメートルであり、これは400kHzのスクライビングでの従来のアプローチの2倍である。
・・・
【0030】
このように、一実施形態では、分割ビームレーザスクライビングプロセスでマスクをパターニングする工程は、M又はNのいずれかが1よりも大きいM×Nの点列にレーザビームを分割する工程を含む。このような一実施形態では、MとNの両方が1よりも大きい。別のこのような一実施形態では、M×Nの点列のすべての点が、同じ出力を有する。別のこのような一実施形態では、第1の点は第2の点とは異なる出力を有し、例えば、出力分割比が点ごとに異なることができる。特定の一実施形態では、M=2かつN=2であり、M×Nの点列は、正方形、長方形などの形状を有するが、これらに限定されない。」
「【0039】
最終的に分割された空間ビームプロファイルは、シングルモード(ガウシアン)であるか、又は整形されたトップハットプロファイルを有していてもよい。一実施形態では、レーザ光源は、作業面で約0.5μJ~100μJの範囲内のパルスエネルギーを送出するが、好ましくは約1μJ~5μJの範囲内である。一実施形態では、レーザスクライビングプロセスは、ワークピース表面に沿って約300mm/秒~5m/秒の範囲内の速度で走るが、好ましくは、約500mm/秒~2m/秒の範囲内である。」
「【0043】
フローチャート100の操作106及び対応する図2Cを参照すると、半導体ウェハ204は、パターニングされたマスク208内のギャップ210を貫通してエッチングされ、これによって個片化された集積回路206を形成する。本発明の一実施形態によると、半導体ウェハ204をエッチングする工程は、分割ビームレーザスクライビングプロセスによって初めに形成されたトレンチ212をエッチングすることによって、図2Cに示されるように、最終的に、半導体ウェハ204を完全に貫通してエッチングする工程を含む。
【0044】
一実施形態では、半導体ウェハ204をエッチングする工程は、プラズマエッチングプロセスを使用する工程を含む。一実施形態では、スルーシリコンビア型のエッチングプロセスが使用される。例えば、特定の一実施形態では、半導体ウェハ204の材料のエッチング速度は、毎分25ミクロンよりも大きい。超高密度プラズマ源を、ダイの個片化プロセスのプラズマエッチング部分用に使用してもよい。このようなプラズマエッチングプロセスを行うのに適したプロセスチャンバの一例は、米国カリフォルニア州サニーベールのアプライドマテリアルズ(Applied Materials)から入手可能なApplied Centura(商標名) Silvia(商標名)Etchシステムである。Applied Centura(商標名) Silvia(商標名)Etchシステムは、容量性及び誘導性RF結合を組み合わせ、これによって容量結合のみで可能であったものよりも、イオン密度及びイオンエネルギーをはるかに独立して制御し、更に磁気強化による改善も提供される。・・・例示的な一実施形態では、基本的に正確なプロファイル制御と事実上スカラップの無い側壁を維持しながら、従来のシリコンのエッチング速度を約40%上回るエッチング速度で単結晶シリコン基板又はウェハ404をエッチングするのに、ディープシリコンエッチングが使用される。特定の一実施形態では、スルーシリコンビア型のエッチングプロセスが使用される。エッチングプロセスは、一般的にフッ素系ガス(例えば、SF6、C4F8、CHF3、XeF2)である反応ガス又は比較的速いエッチング速度でシリコンをエッチングすることができる任意の他の反応ガスから生成されたプラズマに基づく。一実施形態では、図2Cに示されるように、マスク層208は、個片化プロセス後に除去される。
【0045】
したがって、フローチャート100及び図2A~図2Cを再び参照すると、ウェハのダイシングは、マスク層を貫通し、(メタライゼーションを含む)ウェハのストリートを貫通し、部分的にシリコン基板内へアブレーション加工する分割ビームレーザスクライビングプロセスを用いた最初のアブレーションによって実行することができる。その後、ダイの個片化は、後続のスルーシリコンディーププラズマエッチングによって完了することができる。本発明の一実施形態に係る、ダイシング用材料スタックの具体例が、図7A~図7Dに関連して後述される。」

図1、図2A~図2Cは、以下のとおりのものである。

[図:0001403367000001.jpg]

[図:0001403367000002.jpg]

[図:0001403367000003.jpg]

b 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。

(a)引用文献1に記載された技術は、複数の集積回路を含む半導体ウェハをダイシングする方法に関するものである(【0016】)。

(b)方法は、集積回路206を覆い、保護する層を含むマスク202を、半導体ウェハ204の上方に形成する工程102を含む(【0017】、図2A)。

(c)方法は、分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングし、集積回路206間の半導体ウェハ204の領域を露出させるギャップ210を有する、パターニングされたマスク208を提供する工程104を含む(【0021】、図2B)。

(d)作業面をスクライビングするためにビームあたり5μJが必要とされると仮定して、300kHzで10μJのレーザを送出する(【0027】)、分割ビームレーザスクライビングプロセスでマスクをパターニングする工程は、M又はNのいずれかが1よりも大きいM×Nの点列にレーザビームを分割する工程を含む(【0030】)、すなわち、分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングする工程104は、1つから2つに分割されたビームを使用する。

(e)方法は、パターニングされたマスク208内のギャップ210を通じて、半導体ウェハ204をプラズマエッチングし、集積回路206を個片化する工程106を含む(【0043】、【0044】、図2C)。

(f)スクライビングプロセスのために1ミクロンスポットの分離が必要とされる可能性があると仮定して、200kHzのレーザでのスクライビング速度は200mm/秒、400kHzのレーザでのスクライビング速度は400mm/秒とする(段落[【0027】)。

(g)作業面でのパルスエネルギーを0.5μJ~100μJの範囲内、好ましくは1μJ~5μJの範囲内とし、載台速度を300mm/秒~5m/秒の範囲内とする(【0039】)。

c 上記a、bから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「複数の集積回路206を含む半導体ウェハ204をダイシングする方法であって、
集積回路206を覆い、保護する層を含むマスク202を、半導体ウェハ204の上方に形成する工程102と、
分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングし、集積回路206間の半導体ウェハ204の領域を露出させるギャップ210を有する、パターニングされたマスク208を提供する工程104と、
パターニングされたマスク208内のギャップ210を通じて、半導体ウェハ204をプラズマエッチングし、集積回路206を個片化する工程106と、を含み、
分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングする工程104は、1つから2つに分割されたビームを使用し、
スクライビングプロセスのために1ミクロンスポットの分離が必要とされる可能性があると仮定して、200kHzのレーザでのスクライビング速度は200mm/秒、400kHzのレーザでのスクライビング速度は400mm/秒とし、
作業面でのパルスエネルギーを0.5μJ~100μJの範囲内、好ましくは1μJ~5μJの範囲内とし、載台速度を300mm/秒~5m/秒の範囲内とし、
クリーンなハイブリッドダイシングのアプローチのために、スクライブされる溝内に残される残渣を最小限にして、きれいに除去する必要がある、方法。」

(イ)引用文献2について

a 前審補正却下の決定で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2015/0214109号明細書(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。(翻訳文は合議体が作成した。)

「[0008] Embodiments of the present invention include methods of dicing semiconductor wafers, each wafer having a plurality of integrated circuits thereon.」

(「[0008] 本発明の実施形態は、半導体ウェーハをダイシングする方法を含み、各ウェーハはその上に複数の集積回路を有する。」)

「[0009] In an embodiment, a method of dicing a semiconductor wafer having a plurality of integrated circuits involves forming a mask above the semiconductor wafer, the mask including a layer covering and protecting the integrated circuits. The mask is exposed to a plasma treatment process to increase an etch resistance of the mask. The mask is patterned with a laser scribing process to provide gaps in the mask, the gaps exposing regions of the semiconductor wafer between the integrated circuits. Subsequent to exposing the mask to the plasma treatment process, the semiconductor wafer is plasma etched through the gaps in the mask to singulate the integrated circuits.」

(「[0009] 一実施形態では、複数の集積回路を有する半導体ウェーハをダイシングする方法は、半導体ウェーハの上方にマスクを形成することを包含し、このマスクは、集積回路を被覆及び保護する層を含む。マスクは、マスクの耐エッチング性を高めるためにプラズマ処理プロセスにさらされる。マスクは、マスクに間隙を提供するために、レーザスクライビングプロセスでパターニングされ、半導体ウェーハの集積回路間の領域が露出される。マスクをプラズマ処理プロセスにさらすことに続いて、半導体ウェーハ、集積回路を個片化するために、マスクの間隙を通じてプラズマエッチングされる。」)

「[0066] Referring again to FIG. 6B, an intermediate post mask-opening cleaning operation may optionally performed following the laser scribing but prior to the plasma etching described below in association with FIG. 6C. In an embodiment, the post mask-opening cleaning operation is a plasma-based cleaning process. In a first example, as described below, the plasma-based cleaning process is reactive to the regions of the substrate 604 exposed by the gaps 610. In the case of a reactive plasma-based cleaning process, the cleaning process itself may form or extend trenches 612 in the substrate 604 since the reactive plasma-based cleaning operation is at least somewhat of an etchant for the substrate 604. In a second, different, example, as is also described below, the plasma-based cleaning process is non-reactive to the regions of the substrate 604 exposed by the gaps 610.」

(「[0066] 再び図6Bを参照すると、中間的なマスク開口後の洗浄工程は、任意選択で、レーザスクライビングに続いて、図6Cに関連して以下に説明するプラズマエッチングの前に実施され得る。一実施形態では、マスク開口後の洗浄工程は、プラズマベースの洗浄工程である。第1の例では、以下で説明するように、プラズマベースの洗浄プロセスは、間隙610によって露出された基板604の領域に反応する。反応性プラズマベースの洗浄プロセスの場合、反応性のプラズマベースの洗浄工程は、基板604のためのエッチング液の少なくとも何かであるので、洗浄プロセス自体が基板604にトレンチ612を形成し得るか、または延長し得る。第2の、別の例では、例えば、以下でも説明されるように、プラズマベースの洗浄プロセスは、間隙610によって露出された基板604の領域と反応しない。」)

「[0067] In accordance with a first embodiment, the plasma-based cleaning process is reactive to exposed regions of the substrate 604 in that the exposed regions are partially etched during the cleaning process. In one such embodiment, Ar or another non-reactive gas (or the mix) is combined with SF6 for a highly-biased plasma treatment for cleaning of scribed openings. The plasma treatment using mixed gases Ar+SF6 under high-bias power is performed for bombarding mask-opened regions to achieve cleaning of the mask-opened regions. In the reactive breakthrough process, both physical bombardment from Ar and SF6 along with chemical etching due to SF6 and F-ions contribute to cleaning of mask-opened regions. The approach may be suitable for photoresist or plasma-deposited Teflon masks 602, where breakthrough treatment leads to fairly uniform mask thickness reduction and a gentle Si etch. Such a breakthrough etch process, however, may not be best suited for water soluble mask materials.」

(「[0067] 第1の実施形態によれば、プラズマベースの洗浄プロセスは、露出された領域が洗浄プロセス中に部分的にエッチングされるという点で、基板604の露出された領域に反応する。かかる一実施形態では、Arまたは別の非反応性ガス(または混合物)は、スクライブされた開口部の洗浄のための高バイアスプラズマ処理のためにSF6と組み合わされる。マスクに露出された領域の洗浄を実現するために、高バイアス電力下での混合ガスAr+SF6を用いたプラズマ処理が、マスクに露出された領域をボンバードするために実施される。反応性の貫通(breakthrough)プロセスでは、Ar及びSF6による物理的ボンバードとSF6及びFイオンによる化学エッチングの両方が、マスクに露出された領域の洗浄に寄与する。このアプローチは、フォトレジストまたはプラズマ堆積されたテフロンマスク602に適していることがあり、貫通処理により、かなり均一なマスク厚さの減少及び穏やかなSiエッチングがもたらされる。しかし、このような貫通エッチングプロセスは、水溶性マスク材料には、最も適しているわけではないことがある。」)

「[0068] In accordance with a second embodiment, the plasma-based cleaning process is non-reactive to exposed regions of the substrate 604 in that the exposed regions are not or only negligible etched during the cleaning process. In one such embodiment, only non-reactive gas plasma cleaning is used. For example, Ar or another non-reactive gas (or the mix) is used to perform a highly-biased plasma treatment both for mask condensation and cleaning of scribed openings. The approach may be suitable for water-soluble masks or for thinner plasma-deposited Teflon 602. In an exemplary embodiment of the latter case, an SF6+Ar breakthrough cleaning process exhibits an etch rate of approximately 7.66 microns/minute for as-deposited plasma-based Teflon. By contrast, an Ar-only breakthrough cleaning process exhibits an etch rate of approximately 0.85 microns/minute. In another such embodiment, separate mask condensation and scribed trench cleaning operations are used, e.g., an Ar or non-reactive gas (or the mix) highly-biased plasma treatment for mask condensation is first performed, and the an Ar+SF6 plasma cleaning of a laser scribed trench is performed. This embodiment may be suitable for cases where Ar-cleaning is not sufficient for trench cleaning due to too thick of a mask material. Cleaning efficiency is improved for thinner masks, but mask etch rate is much lower, with almost no consumption in a subsequent deep silicon etch process. In yet another such embodiment, three-operation cleaning is performed: (a) Ar or non-reactive gas (or the mix) highly-biased plasma treatment for mask condensation, (b) Ar+SF6 highly-biased plasma cleaning of laser scribed trenches, and (c) Ar or non-reactive gas (or the mix) highly-biased plasma treatment for mask condensation.」

(「[0068] 第2の実施形態によれば、プラズマベースの洗浄プロセスは、基板604の露出した領域と反応せず、露出した領域は、洗浄プロセス中にエッチングされないかまたは無視できる程度にしかエッチングされない。かかる一実施形態では、非反応性ガスのプラズマ洗浄のみが用いられる。例えば、Arまたは他の非反応性ガス(または混合物)は、マスクの凝集とスクライブされた開口部の洗浄の両方のために、高バイアスプラズマ処理を実行するために使用される。このアプローチは、水溶性マスクまたは薄型のプラズマ堆積されたテフロン602に適していることがある。後者の場合の例示的な実施形態では、SF6+Arの貫通洗浄プロセスは、堆積したままのプラズマベースのテフロン(登録商標)に対して約7.66ミクロン/分のエッチング速度を示す。対照的に、Arのみの貫通洗浄プロセスは、約0.85ミクロン/分のエッチング速度を示す。別の該実施形態では、分離されたマスクの凝集及びスクライブされたトレンチの洗浄工程が使用され、例えば、マスク凝集のためのArまたは非反応性ガス(または混合物)の高バイアスされたプラズマ処理が最初に行われ、レーザスクライブされたトレンチのAr+SF6プラズマ洗浄が実施される。この実施形態は、マスク材料が厚すぎるためにAr洗浄がトレンチ洗浄には不十分である場合に適していることがある。薄型のマスクでは、洗浄効率が向上するが、マスクエッチング速度は大幅に低下し、その後のディープシリコンエッチングプロセスにおける消費量がほとんどなくなる。更に別のかかる実施形態では、(a)マスク凝集のための、Arまたは非反応性ガス(または混合物)による高バイアスプラズマ処理、(b)Ar+SF6による、レーザースクライブされたトレンチの高バイアスプラズマ洗浄、及び(c)マスク凝集のための、Arまたは非反応性ガス(または混合物)による高バイアスプラズマ処理、という三工程の洗浄が実施される。」)

「[0069] Referring to operation 508 of Flowchart 500, and corresponding FIG. 6C, the semiconductor wafer 604 is etched through the gaps 610 in the patterned mask 608 to singulate the integrated circuits 606. In accordance with an embodiment of the present invention, etching the semiconductor wafer 604 includes etching the trenches 612 formed with the laser scribing process (and possibly extended with a reactive post-mask-opening clean operation) to ultimately etch entirely through semiconductor wafer 604, as depicted in FIG. 6C.」

(「[0069] フローチャート500の工程508、及び対応する図6Cを参照すると、半導体ウェーハ604は、集積回路606を個片化するために、パターニングされたマスク608の間隙610を通じてエッチングされる。本発明の一実施形態により、半導体ウェハ604をエッチングすることは、図6Cに描かれているように、最終的に半導体ウェーハ604を貫通するようにエッチングするために、レーザスクライビングプロセスで形成され(そしておそらく反応性のマスク開口後の洗浄工程で拡張された)トレンチ612をエッチングすることを含む。」)

FIG.6A~FIG.6Cは、以下のとおりのものである。

[図:0001403367000004.jpg]

b 上記aから、引用文献2には、次の技術が記載されている。

「複数の集積回路を有する半導体ウェーハの上方にマスクを形成し、マスクは、集積回路間の半導体ウェーハの領域を露出させる間隙を提供するために、レーザースクライビング処理でパターニングされ、半導体ウェーハは、集積回路を個片化するために、マスクの間隙を通じてプラズマエッチングされる、半導体ウェーハをダイシングする方法において([0008]~[0009])、
レーザスクライビングの後、且つ、プラズマエッチングの前に、「間隙610によって露出された基板604の領域」、「スクライブされた開口部」、「マスク602に露出された領域」、「レーザスクライブされたトレンチ612」の洗浄のために、反応性または非反応性のプラズマベースの洗浄プロセスを行う([0066]~[0069])。」

ウ 本願補正発明について

(ア)対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明は、「複数の集積回路206を含む半導体ウェハ204をダイシングする方法」であるから、本願補正発明と引用発明とは、「複数の集積回路を備える半導体ウエハをダイシングする方法」である点で一致する。

b 引用発明は、「集積回路206を覆い、保護する層を含むマスク202を、半導体ウェハ204の上方に形成する工程102」を含むものであるから、本願補正発明と引用発明とは、「前記集積回路を覆いかつ保護する層を備えるマスクを、前記半導体ウエハ上に形成すること」を含む点で一致する。

c 引用発明は、「分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングし、集積回路206間の半導体ウェハ204の領域を露出させるギャップ210を有する、パターニングされたマスク208を提供する工程104」を含むものであるところ、引用発明の「分割ビームレーザスクライビング」、「集積回路206間の半導体ウェハ204の領域を露出させるギャップ210」、「集積回路206間の半導体ウェハ204の領域」は、それぞれ本願補正発明の「分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセス」、「(マスクが有する)間隙」、「前記半導体ウエハの前記集積回路間の領域」に相当するから、本願補正発明と引用発明とは、「間隙を有するパターニングされたマスクを提供するために、分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスを用いて前記マスクをパターニングし、前記半導体ウエハの前記集積回路間の領域を露出させること」を含む点で一致する。

d 引用発明は、「パターニングされたマスク208内のギャップ210を通じて、半導体ウェハ204をプラズマエッチングし、集積回路206を個片化する工程106」を含むものであるから、本願補正発明と引用発明とは、「前記集積回路を個片化するために、前記パターニングされたマスクの前記間隙を通じて、前記半導体ウエハをプラズマエッチングすること」を含む点で一致する。

e 引用発明は、「分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングする工程104は、1つから2つに分割されたビームを使用」するものであるから、本願補正発明と引用発明とは、「前記分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスは、1つから2つに分割されたビームを使用」する点で一致する。

f 以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「複数の集積回路を備える半導体ウエハをダイシングする方法であって、
前記集積回路を覆いかつ保護する層を備えるマスクを、前記半導体ウエハ上に形成することと、
間隙を有するパターニングされたマスクを提供するために、分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスを用いて前記マスクをパターニングし、前記半導体ウエハの前記集積回路間の領域を露出させることと、
前記集積回路を個片化するために、前記パターニングされたマスクの前記間隙を通じて、前記半導体ウエハをプラズマエッチングすることとを含み、
前記分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセスは、1つから2つに分割されたビームを使用する、方法。」

<相違点1>

「前記分割型レーザビームのレーザスクライビングプロセス」について、本願補正発明では、「800kHzで且つ分割ビーム当たり6μJのパルスエネルギー、800mm/秒の載台速度で実施され」るのに対し、引用発明は、「スクライビングプロセスのために1ミクロンスポットの分離が必要とされる可能性があると仮定して、200kHzのレーザでのスクライビング速度は200mm/秒、400kHzのレーザでのスクライビング速度は400mm/秒とし、作業面でのパルスエネルギーを0.5μJ~100μJの範囲内、好ましくは1μJ~5μJの範囲内とし、載台速度を300mm/秒~5m/秒の範囲内とする」ものであり、レーザスクライビングプロセス(分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングし、パターニングされたマスク208を提供する工程104)でのレーザのパルス繰り返し率「800kHz」で且つ「分割ビーム当たり6μJのパルスエネルギー、800mm/秒の載台速度で実施され」るとの構成は特定されていない点。

<相違点2>

本願補正発明は、「前記半導体ウエハをレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路の側壁を洗浄するための、プラズマベースの洗浄工程を実施することを含む」のに対し、引用発明では、「クリーンなハイブリッドダイシングのアプローチのために、スクライブされる溝内に残される残渣を最小限にして、きれいに除去する必要がある」ものの、半導体ウェハ204をレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路206の側壁を洗浄するための洗浄工程を実施することは特定されていない点。

(イ)判断

a 相違点1について

引用発明は、「スクライビングプロセスのために1ミクロンスポットの分離が必要とされる可能性があると仮定して、200kHzのレーザでのスクライビング速度は200mm/秒、400kHzのレーザでのスクライビング速度は400mm/秒とし、作業面でのパルスエネルギーを0.5μJ~100μJの範囲内、好ましくは1μJ~5μJの範囲内とし、載台速度を300mm/秒~5m/秒の範囲内とする」ものである。

また、パルスレーザを使用するレーザプロセスにおいて、パルス繰り返し率、ビームあたりのパルスエネルギーや載台速度の数値範囲を最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮といえ、かつ、本願補正発明における数値範囲に格別の技術的意義は認められないから、引用発明において、レーザのパルス繰り返し率を800kHz、分割ビームあたりのパルスエネルギーを6μJ、載台速度を800mm/秒とすることは、当業者であれば適宜なし得た設計事項である。

したがって、引用発明において、工程104に関し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

b 相違点2について

引用発明は、プラズマエッチングの前に、「スクライブされる溝内に残される残渣を最小限にして、きれいに除去する必要がある」ものである。

また、上記イ(イ)bのとおり、引用文献2には、引用発明と同様の半導体ウェーハのダイシング方法において、レーザスクライビングの後、且つ、プラズマエッチングの前に、「間隙610によって露出された基板604の領域」、「スクライブされた開口部」、「マスク602に露出された領域」、「レーザスクライブされたトレンチ612」の洗浄のために、反応性または非反応性のプラズマベースの洗浄プロセスを行うとの技術が記載されている。すなわち、引用文献2に記載の当該洗浄プロセスは、FIG.6Bも参照すると、洗浄の対象として、「スクライブされた開口部」であり、「マスク602に露出された領域」である「間隙610によって露出された基板604の領域」のうち、「トレンチ612」が含まれるところ、集積回路606の「側壁」も、「マスク602に露出された領域」である「間隙610によって露出された基板604の領域」であるから、当該洗浄の対象に、集積回路606の「側壁」が含まれることも、当業者にとって明らかである。

したがって、引用発明において、スクライブされる溝内に残される残渣を最小限にする手段として、引用文献2に記載された技術を採用し、「分割ビームレーザスクライビングでマスク202をパターニングし、集積回路206間の半導体ウェハ204の領域を露出させるギャップ210を有する、パターニングされたマスク208を提供する工程104」の後に、又は、当該工程104において、半導体ウェハ204をレーザスクライブし、更に、半導体ウェハ204をレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路206の側壁を洗浄するための、プラズマベースの洗浄工程を実施することは、当業者であれば容易になし得たことである。

よって、引用発明において、引用文献2に記載された技術に基づき、相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

c 請求人の主張について

請求人は、審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の2.において、「引用文献1、2いずれも、本願が示した課題と解決への認識もなく、かつ側壁を洗浄するため、プラズマベースの洗浄工程を実施することの記載はありません。」と主張する。

しかしながら、上記bのとおり、引用文献1の段落【0013】には、本願が示した課題への認識があり、引用文献2には、側壁を洗浄するため、プラズマベースの洗浄工程を実施することの記載があるから、当該主張は採用できない。

d 判断についてのまとめ

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

エ 独立特許要件についてのまとめ

以上検討したとおりであるから、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。

(4)前審補正却下の決定についてのまとめ

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、前審補正却下の決定は適法である。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記のとおり、前審補正却下の決定は適法であるので、本願の請求項に係る発明は、令和3年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1の<補正前>に記載した事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、1.この出願の請求項1~7、9~14に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、請求項8、15に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、2.この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。

引用文献1.特表2014-526146号公報

引用文献2.米国特許出願公開第2015/0214109号明細書

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の2(3)イに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、本願補正発明の「800kHz」、「6μJ」、「800mm/秒」、それぞれについて、「約」を付加するとともに、本願補正発明から、「、さらに、前記半導体ウエハをレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路の側壁を洗浄するための、プラズマベースの洗浄工程を実施することを含む」との限定事項を削除したものであり、本願発明は、当該「前記半導体ウエハをレーザスクライブすることに続いて、個片化された複数の集積回路の側壁を洗浄するための、プラズマベースの洗浄工程を実施することを含む」ものを含まないものも含む。

したがって、本願発明は、上記第2の2(3)ウ(ア)fに記載の<相違点2>に係る本願補正発明の構成を含まないものを含み、また、上記第2の2(3)ウ(イ)aで検討したとおり、相違点1は設計事項である。

そうすると、本願補正発明が、前記第2の2(3)ウ(ア)、(イ)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願発明は、相違点2に係る本願補正発明の構成を含まないから、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-015445

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