2022-014068
測定装置
- 審判番号
- 2022-014068
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-119994外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年09月07日
- 審決日
- 2023年05月08日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成29年5月26日に出願された特願2017-105025(以下、「原出願」という。)の一部を令和3年7月20日に特願2021-119994として新たに特許出願したものであって、令和3年7月20日に上申書が提出され、同年10月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月2日に意見書及び手続補正書が提出され、令和4年2月1日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、同年4月5日に意見書が提出されたところ、同年6月8日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和4年9月7日提出の手続補正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年9月7日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正により、令和3年12月2日提出の手続補正書の特許請求の範囲における、
「【請求項1】第1端及び第2端を有する金属管と、前記金属管の第1端側に配置され、前記金属管の前記第2端から入射する電磁波を測定可能な測定部と、前記金属管を保持する筐体と、続きを表示(全12行)前記筐体を振動させる振動部と、を備え、前記金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長く、前記振動部は、印加される音信号に基づいて前記筐体を振動させ、骨伝導音により音を被検者に伝達する、測定装置。【請求項2】前記金属管の長さは、前記金属管の直径の3倍以上の長さである、請求項1に記載の測定装置。【請求項3】前記金属管の少なくとも一部の内面は、前記金属管の素材よりも赤外線に対する放射率の低い素材により構成されている、請求項1又は2に記載の測定装置。」
は、令和4年9月7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲における、
「【請求項1】第1端及び第2端を有する金属管と、前記金属管の第1端側に配置され、前記金属管の前記第2端から入射する電磁波を測定可能な測定部と、前記金属管を保持する筐体と、続きを表示(全12行)前記筐体を振動させる振動部と、を備え、前記金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長く、前記振動部は、印加される音信号に基づいて前記筐体を振動させ、骨伝導音により音を被検者に伝達し、前記測定部は、前記筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置される、測定装置。【請求項2】前記金属管の長さは、前記金属管の直径の3倍以上の長さである、請求項1に記載の測定装置。 【請求項3】 前記金属管の少なくとも一部の内面は、前記金属管の素材よりも赤外線に対する放射率の低い素材により構成されている、請求項1又は2に記載の測定装置。」に補正がされた(下線は、特許請求の範囲の補正箇所を明示するために当審で付した。)。
2 補正の適否について
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1に対してされた補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「測定部」について、「筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置される」ものに限定したものである。
さらに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の【0013】、【0017】、【0018】、【図4】等に基づいたものであり、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、令和4年9月7日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1) 本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 補正の内容」においても示した次のとおりのものである(A~Hは、当審で分説して付与した。)。
(本願補正発明)
「【請求項1】A 第1端及び第2端を有する金属管と、B 前記金属管の第1端側に配置され、前記金属管の前記第2端から入射する電磁波を測定可能な測定部と、C 前記金属管を保持する筐体と、D 前記筐体を振動させる振動部と、を備え、E 前記金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長く、F 前記振動部は、印加される音信号に基づいて前記筐体を振動させ、骨伝導音により音を被検者に伝達し、G 前記測定部は、前記筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置される、H 測定装置。」
(2) 引用文献1に記載された事項
これに対して、原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2008-136556号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した)。
ア
「【背景技術】【0002】周囲の雑音に影響されることなく、音声や音楽等の音源を聞くことができるイヤホン装置は、携帯型の音響装置やラジオ受信機などに多用されているが、それ以外にも、たとえば、補聴器、無線受信機、ゲーム機などの様々な機器にも使用されている。【0003】他方、近年、健康増進等の観点からスポーツジム等で汗を流す機会も増えつつあり、運動をしながら、脈拍(心拍ともいう。以下、脈拍で代表する。)や体温の変化をリアルタイムに管理したいという要求がある。この要求に応えるためには、脈拍計や体温計といった単体の計測具を体に取り付けなければならず、運動の妨げになるという不都合がある。【0004】そこで、本発明の目的は、体に装着しても違和感がないイヤホン装置に、脈拍計や体温計を実装し、運動を妨げることなく、体調管理を行うことができるイヤホン装置を提供することにある。」
イ
「【0010】本発明のイヤホン装置は、かかる構造の人体の耳部に適用されるものであり、以下、その詳細を説明する。【0011】図2は、本発明に係るイヤホン装置の全体外観図である。イヤホン装置20は、耳穴6に装着されるイヤホン部21と、このイヤホン部21にケーブル22で接続される本体部23とからなる。本体部23は、特にそれに限定されないが、たとえば、携帯に適した形状のケース24の一側面に電源スイッチ25を配すると共に、その表面に体温表示部26、脈拍表示部27及びマイク部28を配して構成されている。なお、この本体部23には、必要に応じて、ケース24の一側面に設けられた外部信号入力端子24aを介して、任意の外部音源からの外部信号を入力できるようになっている。【0012】図3は、イヤホン部の一例の構成図である。この図において、イヤホン部21は、主部29と筒部30とを、たとえば、プラスチック素材等で一体成形して構成されており、主部29の内部に脈拍センサ31、体温センサ32、音響スピーカ33及び信号分配部34を実装している。・・・【0014】体温センサ32は、筒部30に形成された一端開放の中空孔30aの他端側(図面の右側)に装着されており、人体の外耳道7奥の鼓膜8の放射温度(赤外線Pcによって放射される温度)を計測し、その検出信号を信号線32aを介して信号分配部34に出力する。ここで、本実施形態における体温センサ32は、いわゆる「赤外線式」の体温センサである。つまり、あらゆる物体(正確には-273度の絶対零度以上の物体)は、その表面から電磁波の一種の波長1μm~1000μmの熱エネルギー波(赤外線)を放射しており、赤外線式の体温センサは、人体から放射される熱エネルギー波を、サーモバイル等のセンサで検出して体温を測定するというものである。ちなみに、鼓膜8の温度を測定する理由は、鼓膜8の温度は脇の下等の体表面温度に比べて、体深部(脳幹等)の温度に近く、しかも安定しているからである。」
ウ
「【0021】図5は、他の実施形態を示す図である。この図において、先の実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付してある。つまり、この図におけるイヤホン部20も、脈拍センサ31と体温センサ32を備える点で先の実施形態と共通するが、音響スピーカ33の代わりに骨伝導スピーカ39を備えている点で相違する。【0022】骨伝導スピーカ33(当審注:「骨伝導スピーカ33」は「骨伝導スピーカ39」の明らかな誤りである)は、信号線39aを介して信号分配部34から供給される音響信号に従って振動し、その振動Peを人体頭部の骨(図1の頭蓋骨12又は13参照)に伝えることにより、人間の脳に直接、音を知覚させるものである。【0023】このように、音響スピーカ33の代わりに骨伝導スピーカ39を備えるようにしてもよい。骨伝導スピーカ39は、音響スピーカ33に比べて周囲の雑音の影響を受けにくいので、とりわけ、騒音の激しい場所での使用に好ましいものとすることができる。」
エ 「図3[図:0001400225000001.jpg]」
「図5[図:0001400225000002.jpg]」
オ 図5より、骨伝導スピーカ39がイヤホン部の主部に設けられた態様が看取される。
カ 図3より、一端開放の中空孔30aの内径に比して筒部30の長さが長い態様が看取される。
そして、上記記載事項ア~ウ、図面エ、図面から看取される認定事項オ~カを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(b~hは、本願補正発明の構成B~Hに概ね対応させて当審にて付与した。また、各段落の末尾の括弧は引用文献1における引用箇所等を付した。)。
(引用発明)
「cg 耳穴6に装着されるイヤホン部21と、このイヤホン部21にケーブル22で接続される本体部23とからなり(【0011】)、イヤホン部21は、主部29と筒部30とをプラスチック素材等で一体成形して構成されており、主部29の内部に体温センサ32を実装し(【0012】)、b 体温センサ32は、筒部30に形成された一端開放の中空孔30aの他端側に装着されており、人体の外耳道7奥の鼓膜8の放射温度(赤外線Pcによって放射される温度)を計測し、その検出信号を信号線32aを介して信号分配部34に出力し(【0014】)、体温センサ32は、いわゆる「赤外線式」の体温センサであり(【0014】)、赤外線式の体温センサは、人体から放射される熱エネルギー波を、サーモバイル等のセンサで検出して体温を測定するというものであり(【0014】)、df 骨伝導スピーカ39を備え(【0021】)、骨伝導スピーカ39は、信号線39aを介して信号分配部34から供給される音響信号に従って振動し、その振動Peを人体頭部の骨に伝えることにより、人間の脳に直接、音を知覚させるものであり(【0022】)、骨伝導スピーカ39はイヤホン部21の主部29に設けられ(図5、認定事項オ)、e 一端開放の中空孔30aの内径に比して筒部30の長さは長い(図3、認定事項カ)、h イヤホン装置(【0010】)。」
(3) 引用文献2に記載された事項
原出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開平11-113857号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した)。
ア 「【0018】図1~図6に示すように、本発明の体温計1は、鼓膜から発せられる赤外線の強度を測定することにより体温を検出する赤外線体温計であり、検温部10を内蔵する体温計本体2と、体温計本体2の正面に設置された電源スイッチ3および表示部5と、体温計本体2の背面上部に設置された測定スイッチ4と、耳腔内に挿入されるプローブ6とを有している。」
イ 「【0023】
図3に示すように、ケーシング21内には、回路基板30が設置されており、この回路基板30には、検温部10およびそれを支持する検温部支持部材108、マイクロコンピュータよりなる制御手段31、A/D変換器32等が搭載されている。また、ケーシング21内には、電池を収納する電源部40が設置され、この電源部40より、回路基板30の各部へ電力が供給される。さらに、ケーシング21内には体温測定が終了したら、報知音を発するブザー33も設置されている。すなわち、ケーシング21の内部には、以上のような測温機構が内蔵されている。
【0024】
検温部10は、赤外線センサー101と、温度センサー(環境温度測定手段)107とで構成されている。
・・・
【0028】
また、赤外線センサー101の近傍には、温度センサー107が設置されている。この温度センサー107は、赤外線センサー101の熱絶縁帯105より外周側の温度、すなわち冷接点104近傍の温度(環境温度)を検出する。
ウ 「【0031】一方、管状のプローブ6の基端には、大径部71の先端面に当接する基部61を有するとともに、プローブ6の基端側内面には、前記雄螺子74と螺合する雌螺子62が形成されている。これらの雄螺子74と雌螺子62を螺合することにより、プローブ6が支持台7に支持、固定される。【0032】また、プローブ6は、その外径が先端に向かって漸減する形状をなしており、プローブ6の先端外周部(縁部)63は、耳腔内へ挿入したときの安全性を考慮して、丸みを帯びた形状をなしている。続きを表示(全88行)【0033】支持台7の中心部には、その先端から導入された赤外線(熱線)を検温部10の赤外線センサー101へ導くライトガイド(導波管)8が立設されている。ライトガイド8は、好ましくは熱伝導性の良い銅などの金属で構成され、その内面には、金メッキが施されている。エ 「図3[図:0001400225000003.jpg]」オ 「図4[図:0001400225000004.jpg]」カ 図3及び図4より、支持台7の中心部に検温部10が配置された態様が看取される。キ 図3より、ライトガイド(導波管)8の長さは、ライトガイド(導波管)8の直径よりも長く、ライトガイド(導波管)8は支持台7の検温部10からプローブ6の先端近傍まで延びた態様が看取される。そして、上記記載事項ア~ウ、図面エ~オ、図面から看取される認定事項カ~キを総合すると、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。(各段落の末尾の括弧は引用文献2における引用箇所等を付した。)。(引用文献2記載の事項)「鼓膜から発せられる赤外線の強度を測定することにより体温を検出する赤外線体温計であり(【0018】)、耳腔内に挿入されるプローブ6とを有し(【0018】)、プローブ6は管状であり(【0031】)、プローブ6は支持台7に支持、固定され(【0031】)、プローブ6は、その外径が先端に向かって漸減する形状をなしており、プローブ6の先端外周部(縁部)63は、耳腔内へ挿入するものであり(【0032】)、ケーシング21内には、回路基板30が設置され、この回路基板30には、検温部10およびそれを支持する検温部支持部材108が搭載され(【0023】)、支持台7の中心部に検温部10が配置され(図3、4に基づく認定事項カ)検温部10は、赤外線センサー101と、温度センサー(環境温度測定手段)107とで構成され(【0024】)、支持台7の中心部には、その先端から導入された赤外線(熱線)を検温部10の赤外線センサー101へ導くライトガイド(導波管)8が立設され(【0033】)ライトガイド(導波管)8は、熱伝導性の良い銅などの金属で構成され、その内面には、金メッキが施され【0033】ライトガイド(導波管)8の長さは、ライトガイド(導波管)8の直径よりも長く、ライトガイド(導波管)8は支持台7の検温部10からプローブ6の先端近傍まで延びる、(図3に基づく認定事項キ)赤外線体温計(【0018】)。」(4) 対比本願補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する(対比の見出しとしての(b)~(h)は、引用発明の分説構成と対応させた。)。(b) 引用発明の構成bの「体温センサ32」は本願補正発明の構成Bの「測定部」に相当するとともに、引用発明の構成bの「人体から放射される熱エネルギー波を、サーモバイル等のセンサで検出して体温を測定する」ものである「体温センサ32」は本願補正発明の構成Bの「電磁波を測定可能な測定部」に相当する。してみると、引用発明の構成bは、本願補正発明の構成Bと、「電磁波を測定可能な測定部と」「を備え」る点で共通する。(c) 引用発明の構成cgの「イヤホン21」は、「主部29と筒部30と」で「構成」され「主部29の内部に体温センサ32を実装」しているのだから、同「イヤホン21」は「体温センサ32」の筐体の役目を果たしているものといえ、本願補正発明の構成Cの「筐体」に相当する。してみると、引用発明の構成cgは、本願補正発明の構成Cと、「筐体と」「を備え」る点で共通する。(d) 引用発明の構成dfの「骨伝導スピーカ39」は「振動」するものであるから、本願補正発明の構成Dの「振動部」に相当する。そして、引用発明の構成dfの「骨伝導スピーカ39」(振動部)は、「イヤホン部21」(筐体)の「主部29に設けられ」ているのだから、引用発明の構成dfの「骨伝導スピーカ39」(振動部)は、「イヤホン部21」(筐体)を振動させていることは明らかといえる。してみると、引用発明の構成dfは、本願補正発明の構成Dに相当する構成を有するものである。(f) 引用発明の構成dfの「骨伝導スピーカ39」(振動部)が「イヤホン部21」(筐体)を振動させていることが明らかであることは上記(d)にて説示のとおりであるから、引用発明の構成dfの「骨伝導スピーカ33」(振動部)が「信号線39aを介して信号分配部34から供給される音響信号に従って振動」することは、本願補正発明の構成Fの「振動部は、印加される音信号に基づいて前記筐体を振動させ」ることに相当する。また、引用発明の構成dfの「振動Peを人体頭部の骨に伝えることにより、人間の脳に直接、音を知覚させる」ことは、本願補正発明の構成Fの「骨伝導音により音を被検者に伝達」することに相当する。してみると、引用発明の構成dfは、本願補正発明の構成Fに相当する構成を有するものである。(g) 引用発明の構成cgの「体温センサ32」(測定部)が「イヤホン部21」(筐体)を「構成」する「主部29の内部に」「実装」されることは、本願補正発明の構成Gの「測定部は」「筐体内に配置される」ことに相当する。してみると、引用発明の構成cgは、本願補正発明の構成Gと「測定部は」「筐体内に配置される」点で共通する。(h) 引用発明の構成hの「イヤホン装置」は、同構成bのとおり「体温センサ32」(測定部)を「装着」し「人体の外耳道7奥の鼓膜8の放射温度(赤外線Pcによって放射される温度)を計測し」ているのだから、本願補正発明の構成Hの「測定装置」に相当するものである。してみると、引用発明の構成hは、本願補正発明の構成Hに相当する構成を有するものである。そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。(一致点)「B′電磁波を測定可能な測定部と、C′筐体と、D 前記筐体を振動させる振動部と、を備え、F 前記振動部は、印加される音信号に基づいて前記筐体を振動させ、骨伝導音により音を被検者に伝達し、G′前記測定部は、前記筐体内に配置される、H 測定装置。」(相違点1)(構成A、B、C、E)本願補正発明は「第1端及び第2端を有する金属管」を「備え」(構成A)、「測定部」は、「前記金属管の第1端側に配置され、前記金属管の前記第2端から入射する電磁波を測定」し(構成B)、「筐体」は、「金属管を保持」し(構成C)、「金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長」い(構成E)のに対し、引用発明は金属管を備えない点。(相違点2)(構成G)「測定部」の「筐体内」への「配置」について、本願補正発明は「筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置される」のに対し、引用発明では、「体温センサ32」(測定部)は「イヤホン部21」(筐体)内に「配置」されるものの、「筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置」されているか不明である点。(5) 当審の判断上記相違点について検討する。ア 相違点1について(構成A、B、C、E)(ア) 引用文献2記載の事項の「熱伝導性の良い銅などの金属で構成され」る「ライトガイド(導波管)8」は、本願補正発明の構成Aの「金属管」に相当する。また、「ライトガイド(導波管)8」は「管」であることから、その両側端部に「第1端」及び「第2端」を有することは明らかなことである。(イ) 引用文献2記載の事項の「検温部10」は、「構成」する「赤外線センサー101」に「ライトガイド(導波管)8」「の先端から導入された赤外線(熱線)」が「導」かれることから、引用文献2記載の事項の「検温部10」は、本願補正発明の構成Bの「電磁波を測定可能な測定部」に相当する。また、引用文献2記載の事項において、「ライトガイド(導波管)8」は「検温部10からプローブ6の先端近傍まで延び」ていることから、「ライトガイド(導波管)8」の「検温部10」側は、本願補正発明の構成Bの「測定部」が「配置され」る「第1端側」に相当するとともに、引用文献2記載の事項の「赤外線(熱線)」が「導入され」る「先端」は本願補正発明の構成Bの「第2端」に相当する。(ウ) 引用文献2記載の事項の「支持台7の中心部」が「ライトガイド(導波管)8」を「立設」することは、本願補正発明の構成Cの「金属管を保持する」ことに相当する。(エ) 引用文献2記載の事項の「ライトガイド(導波管)8の長さは、ライトガイド(導波管)8の直径よりも長」いことは、本願補正発明の構成Eの「金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長」いことに相当する。(オ) 引用文献2記載の事項の「赤外線体温計」は補正発明の構成Hの「測定装置」に相当する。そうすると、引用文献2記載の事項は、本願補正発明のA 第1端及び第2端を有する金属管と、B 前記金属管の第1端側に配置され、前記金属管の前記第2端から入射する電磁波を測定可能な測定部と、を備え、C′前記金属管は保持され、E 前記金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長い、H 測定装置に相当する構成を備えたものということができる。一方、引用発明と引用文献2記載の事項とは、体温センサを有し、耳穴に挿入し体温センサが鼓膜から赤外線によって放射される温度を計測し、体温センサが「赤外線式」の体温センサである、体温を測定する装置である点において共通する。そして、引用発明の構成bによれば、「体温センサ32は、筒部30に形成された一端開放の中空孔30aの他端側に装着されており、人体の外耳道7奥の鼓膜8の放射温度(赤外線Pcによって放射される温度)を計測」するのだから、引用発明の構成bの「筒部30」は、「鼓膜8」から「赤外線Pc」を「体温センサ32」に導く必要があることは明らかである。そうすると、引用発明の「筒部30」において、「鼓膜8」から「赤外線Pc」を「体温センサ32」に導くために「熱伝導性の良い銅などの金属で構成され」、「長さ」が「直径よりも長」く、「体温センサ32」から「筒部30」の先端近傍まで延びる」「ライトガイド(導波管)8」を付加することは、当業者が容易に想到することである。
そして、引用文献2記載の事項では、「支持台7の中心部」が「ライトガイド(導波管)8」(金属管)を「立設」(保持)しているのだから、引用発明に引用文献2記載の事項の「ライトガイド(導波管)8」(金属管)を付加すれば、「ライトガイド(導波管)8」(金属管)は引用発明の「イヤホン部21」(筐体)に保持されることとなるのは自明のことである。
仮に、引用文献2記載の事項の「ライトガイド8の長さ」が「ライトガイド8の直径よりも長」いからといって、引用発明に引用文献2記載の事項を適用する際に、「ライトガイド(導波管)8」(金属管)がただちにそのような長さと直径の関係となるとは限らないとしても、そもそも引用発明は「一端開放の中空孔30aの内径に比して筒部30の長さは長い」(引用発明の構成e参照)のだから、引用発明に引用文献2記載の事項を適用する際に「筒部30」の内部に設置されることとなる「ライトガイド(導波管)8」(金属管)の長さを、その直径よりも長いものとすることは、当業者にしてみれば当然の設定というべきである。
してみると、引用発明に引用文献2記載の事項を適用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することである。
イ 相違点2について(構成G)
(ア) そもそも、本願補正発明の「測定部」について、本願の発明の詳細な説明を参照すると、【0018】には、
「測定部15は、被検者から放射される赤外線を取得し、取得した赤外線の光電変換信号を、図示しない制御部に出力する。制御部は、測定部15が出力した光電変換信号に基づいて、被検者の体温を測定する。測定部15は、第1の面14aに配置される。測定部15は、第1の面14aにおいて、交点Pの位置に配置されてよい。」
と記載されており、ここで「測定部」とは、測定を行う部品全体のことを指しているのか、測定を行う機能を有する部分のみ(例えば素子のみ)を指しているのか、発明の詳細な説明を参照してもなお定かでない。
(イ) しかし、赤外線式の体温測定の、測定を行う部品(測定部)を「筐体に直接接しない状態で筐体内に配置」することは、引用文献3(特開2002-48649号公報)や引用文献4(特開2003-70751号公報)にみられるように周知の技術である。
(引用文献3については、【0059】の
「まず、上述の耳式体温計100では、図3、図4(a)および図5(a)に示すように、入光した赤外線を導波管206内に伝搬させ、赤外線検出チップ210に誘導する。赤外線検出チップ210では、サーモパイル型の赤外線センサ209と基準温度を検出するためのサーミスタ211とをパッケージ基材212上に搭載し、パッケージケース213により全体を一体化させ、・・・」
との記載及び図3を参照。
【図3】
[図:0001400225000005.jpg]
引用文献4については、【0011】の
「図1に示すように、耳式体温計1は、被験者の耳孔に挿入されると共に耳内壁に当接するプローブ2と、このプローブ2内に設けられる導波管部3と、該導波管部3の受光側端部に装着固定されるフィルタプレート4と、前記導波管部3の奥端に設けられる赤外線センサ(例えば、サーモパイル)5と、この赤外線センサ5の近傍に設けられ、この赤外線センサ5の温度を検出する温度センサ(例えば、サーミスタ)6と、前記赤外線センサ5、前記温度センサ6及び制御回路7が配設されるプリント基板8と、ケース本体部9とを少なくとも構成される。」
との記載及び図1を参照。
【図1】
[図:0001400225000006.jpg]
)
してみると、引用発明において、「体温センサ32」(測定部)を「筐体に直接接しない状態で筐体内に配置」することは、当業者が容易に想到することである。
(ウ) 仮に、本願補正発明の「測定部」とは、測定を行う機能を有する素子のみを指しているとしても、赤外線式の体温測定の、測定を行う素子を封止することが、引用文献5(特開2003-156395号公報)にみられるように周知の技術である。
(引用文献5については、【0001】の
「本発明は非接触で測定する体温計、特に、プローブ先端部を耳穴に挿入して鼓膜の温度を測定する方式の体温計・・・に使用するための赤外線温度センサーに関するものである。」
との記載、【0002】の
「この種の温度測定に用いられる赤外線センサーBは・・・」
との記載、【0011】の
「本発明の実施例による赤外線温度センサーは、図1および2に示すように、基台となる絶縁体ベース1と、絶縁体ベース1との間に内部空間2を形成する絶縁体封止蓋3と、内部空間2内の絶縁体ベース1上に設けられる赤外線センサー4および温度補償部材5と、絶縁体ベース1と絶縁体封止蓋3との間の接合面間に設けられる発熱部材6とから構成される。」
との記載及び図2、図5を参照。図2において赤外線センサー4は、内部空間2内の絶縁体ベース1上に設けられることから、他の筐体等に接することがないことが明らかである。
【図2】
[図:0001400225000007.jpg]
【図5】
[図:0001400225000008.jpg]
)
してみると、引用発明において、「体温センサ32」を、素子が封止されたセンサとし、素子(測定部)が他の部材に接触しないようにすることは、当業者が容易に想到することである。
ウ 本願補正発明の効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術から、当業者が予測できるものであって、格別のものということができない。
(6) 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の「(c)本願発明と引用発明との対比」において、
「本願の補正後の請求項1に係る発明(本願発明1)は、「前記測定部は、前記筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置される」という発明特定事項を有するものです。測定部が筐体に接しない構造を取ることで、振動部の振動で筐体が振動した時に、測定部が筐体の振動の影響を受けにくくすることができます。これにより、測定装置は、被検者に音を伝えるために筐体が振動しても、赤外線に基づく体温の測定精度が向上するという顕著な効果を奏することができます。一方、これに対し、引用文献1-2には、本願発明1の上記構成についての直接的な記載も、これを示唆する記載もありません。」
と主張している。
しかし、本願補正発明における審判請求人の主張する構成は、上記のとおり引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術から、当業者が容易に想到する構成であって、審判請求人の上記主張を採用し、本願を特許すべきものとすることはできない。
(7) まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の事項及び周知の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
3 補正の却下の決定についてのむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1-3に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年12月2日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A~Hは、本願補正発明の分説を踏まえ、本願発明を分説するために当審で付した)。
(本願発明)
「【請求項1】A 第1端及び第2端を有する金属管と、B 前記金属管の第1端側に配置され、前記金属管の前記第2端から入射する電磁波を測定可能な測定部と、C 前記金属管を保持する筐体と、D 前記筐体を振動させる振動部と、を備え、E 前記金属管の長さは、前記金属管の直径よりも長く、F 前記振動部は、印加される音信号に基づいて前記筐体を振動させ、骨伝導音により音を被検者に伝達する、H 測定装置。」
2 拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由1(進歩性)について
・請求項 1-3
・引用文献等 1-2
引用文献1.特開2008-136556号公報
引用文献2.特開平11-113857号公報
3 引用文献に記載された事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1の記載事項及び引用発明については、上記第2 「3 独立特許要件について」「(2) 引用文献1に記載された事項」に示したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2に記載された事項、及びそれに基づく「引用文献2記載の事項」については、上記第2 「3 独立特許要件について」「(3) 引用文献2に記載された事項」に示したとおりである。
4 対比
本願発明は、本願補正発明から、本願補正発明の構成Gの「前記測定部は、前記筐体に直接接しない状態で前記筐体内に配置される」との限定を外したものである。
そうすると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、上記第2 「3 独立特許要件について」「(4) 対比」にて示す相違点1において相違し、その余の点では一致するといえる。
一方、上記相違点1について、引用発明に引用文献2記載の事項を適用し、上記相違点1に係る構成とすることが当業者が容易に想到することであることは、上記第2 「3 独立特許要件について」「(5) 当審の判断」「ア 相違点1について(構成A、B、C、E)」のとおりである。
そうすると、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は当業者が引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-014068