特許拒絶査定不服審判
2025-001681
移動型放射線撮影装置、プログラム、方法、制御装置及び放射線撮影システム
- 審判番号
- 2025-001681
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-206641外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年02月04日
- 審決日
- 2026年01月07日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人光陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-206641「移動型放射線撮影装置、プログラム、方法、制御装置及び放射線撮影システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月24日出願公開、特開2022- 93911〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月14日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 6月18日付け:拒絶理由通知書
同年10月22日 :意見書、手続補正書の提出
同月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年11月 5日 :原査定の謄本の送達)
令和7年 2月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和7年2月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月4日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和7年2月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年10月22日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
放射線による単一フレームからなる静止画を得るための静止画撮影と、放射線による複数フレームからなる動態画像を得るための動態撮影を行うことが可能な移動型放射線撮影装置であって、
前記静止画撮影の単一フレームのmAs値及び動態撮影の1フレームのmAs値に関連する撮影条件を設定する設定部と、報知部とを有し、
前記動態撮影の1フレームのmAs値の下限値は、前記静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値よりも小さく、
前記報知部は、前記静止画撮影時に当該静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、又は前記動態撮影時に当該動態撮影の1フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、設定不可である旨を報知する、
ことを特徴とする移動型放射線撮影装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
放射線による単一フレームからなる静止画を得るための静止画撮影と、放射線による複数フレームからなる動態画像を得るための動態撮影を行うことが可能な移動型放射線撮影装置であって、
前記静止画撮影の単一フレームのmAs値及び動態撮影の1フレームのmAs値に関連する撮影条件を設定する設定部と、報知部とを有し、
前記動態画像の1フレームあたりの線量は、前記静止画撮影の線量よりも小さく、
前記動態撮影の1フレームのmAs値の下限値は、前記静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値よりも小さく、
前記報知部は、前記静止画撮影時に当該静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、又は前記動態撮影時に当該動態撮影の1フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、設定不可である旨を報知する、
ことを特徴とする移動型放射線撮影装置。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「動態画像」及び「静止画撮影」について、「前記動態画像の1フレームあたりの線量は、前記静止画撮影の線量よりも小さく」に限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2010-179155号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a 【請求項1】
「【請求項1】
放射線発生装置と該放射線発生装置から発せられた放射線の強度分布を画像情報に変換する検出装置を制御して放射線画像を取得する放射線画像取得装置であって、
動態撮影のための放射線の総曝射線量が1回の静止画撮影に必要な曝射線量と同等もしくはそれ以下となるように、該動態撮影における各フレームの撮影条件を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定された撮影条件で各フレームの放射線画像を取得する取得手段とを備えることを特徴とする放射線画像取得装置。」
b 【0014】~【0041】
「【0014】
<第1実施形態>
本発明者は、X線動態画像観察では、画像情報1フレームごとの線量もさることながら動態撮影時におけるトータルの被曝線量も重要であることを見出した。これは、人間の目および認識の残像効果と、無意識もしくは意識的な移動物体の追跡により生じる「認識される画質の改善効果」が存在するためである。たとえば、静止している被写体に対して2つの方法で画像取得を試みる。1つはある特定のX線量で撮影された静止画を観察する場合であり、他方はトータルで上記特定のX線量になるように複数画像を撮影して動画として観察する場合である。理論的には、後者の複数の画像をすべて加算平均すればX線の量子モトル的には前者の画像とまったく同じになるので、前者の静止画と同様の画像になる。そして、後者の画像を繰り返し動画として観察する場合、動画の表示速度にも依存するが、人間の目および認識の残像効果により演算による平均化とほぼ同等の効果が生じ、静止画と同様の認識がおこなえる。
【0015】
また、被写体が動いた場合、その動画像を観察するときには、人間は無意識に物体の構造を認識し、必然的にその動きを追跡して観察する。この結果、一つの部位に関して言えば、前述と同様の平均化効果が起こり、やはり静止画と同程度の認識が行える。
【0016】
これらの人間の目や認識による残像効果によって得られる平均化は、複数の画像のトータルの線量が十分でなければ成り立たないが、上述したように静止画と同等の線量があれば観察に耐えるものとなる。従って、静止画と同じ受像装置で動態X線像を撮影し観察する場合に、静止画と同等の情報量を得るためには動態撮影のトータルの線量を静止画と同等にすればよい。また、動態観察に求める画像情報によっては、その動態撮影時のトータル線量を落としてもよいことになる。
【0017】
そこで、以下に説明する実施形態では、「動態撮影の総撮影線量を、静止画撮影と同等もしくはそれ以下に抑える」ように動態撮影を行う。
【0018】
そのため、第1実施形態では、1つのFPDを用いて静止画撮影と動態撮影とを連続して行い、動態撮影では、トータルの線量がその直前に行った静止画撮影と同じになるように設定される。すなわち、静止画像の撮影を動態画像撮影に先立って行うことにより、静止画像撮影に必要なX線量をモニタし、その結果を動態撮影の被曝線量の設定に役立てる。この場合、静止画撮影のみの場合に比べて2倍の被曝量になる。しかしながら、一般の静止画撮影においても、撮影失敗によるいわゆる「射損」と呼ばれる再撮影はよく行われることであり、その場合も被曝量は2倍になる場合がある。よって、通常、その程度の被曝量であれば人体に悪影響を及ぼすおそれはない。
【0019】
図1は第1実施形態によるX線画像取得装置および表示装置の構成例を示す図である。図1において、X線発生装置3で発生したX線は被写体1を透過してX線フラットパネルディテクタ(FPD)2に到達する。FPD2は、到達したX線の線量分布を画像化する。なお、FPD2は、不図示ではあるが、被写体1等からの散乱X線を除去するための散乱線除去グリッドを担持している。このFPD2は、人体の細部まで画像化するために、少なくとも空間サンプリングピッチは1mm以下とする。なお、不図示であるが、X線発生装置3は、X線の発生条件である管電圧、管電流値を設定できるようになっており、被写体や撮影目的に応じてそれらを調整することが可能である。」
「【図1】
[図:0001432875000001.jpg]
」
「【0020】
静止画撮影時に適度なX線被曝量にするためのX線量モニタとしてフォトタイマ4が設けられている。フォトタイマ4は、被写体1の特定部位を通過したX線量を信号線25上に出力する。この信号は制御ユニット5によって累積される。この制御ユニット5の制御により、その累積値がある一定値に達すると静止画を撮影するために十分なX線量が得られたとしてX線が遮断される。
【0021】
制御ユニット5はX線発生装置3およびFPD2を制御する。上述したように制御ユニット5は、フォトタイマ4からの信号を累積し、その累積値に基づいてX線発生装置3から発せられるX線を遮断したり、必要に応じたパルス幅のX線パルスをX線発生装置3から継続的に出力させるような制御を行う。制御ユニット5には、X線曝射を開始するための曝射開始トリガ19と、フォトタイマ出力の累積値と比較される静止画用X線量設定レベル20(静止画撮影に必要なX線量レベル)と、動態観察用の画像(以下、動画ともいう)取得時のフレーム数21、および動画取得時間22を入力、設定するための構成が設けられている。また、制御ユニット5は、X線発生装置3への制御信号23およびFPD2の制御信号24等を出力する。
【0022】
A/D変換器6は、FPD2の出力をデジタル値に変換する。切り替え器7は、FPD2の暗出力と画像出力とでデータの格納先を切り替える。暗出力とはX線を曝射しない状態でFPD2から取得される出力であり、切り替え器7をB側に接続することで画像メモリ9へ保存される。一方、画像出力は、X線を曝射時にFPD2から取得される出力であり、切り替え器7をA側に接続することで画像メモリ8へ保存される。なお、暗出力は、画像出力の取得前後等のどの段階で取得してもよい。減算器10により、画像メモリ8に格納された画像出力から画像メモリ9に格納された暗出力が差し引かれる。この処理により、画像出力に対するオフセット補正が行われる。
【0023】
ルックアップテーブルユニット11は、ルックアップテーブル(LUT:Look Up Table)を有し、減算器10でオフセット補正された画像データを対数値に変換する。対数値に変換することにより、後段の減算処理によって除算の操作が行われる。切り替え器12は、FPD2のゲイン画像と被写体画像を切り替えるための切り替え器である。ゲイン画像とは、あらかじめ被写体が無い状態でX線を曝射した際のFPD2よりの出力を取得し、暗出力を差し引いた後、ルックアップテーブルユニット11で対数変換したものである。ゲイン画像は、切り替えスイッチ12をB側に接続することによりゲイン画像メモリ13へ記録される。被写体画像も同様にスイッチ12をA側にすることでメモリ14へ記録される。減算器15は、ゲイン画像メモリ13に格納されたデータをメモリ14に格納されたオフセット補正後の画像データから減算する。減算器15による減算処理により、FPD2における画素ごとのゲインばらつきが補正される。なお、図1では図示しないが、FPD2において画像化されない欠陥画素がある場合、その欠陥画素を周囲の正常な画素値によって補修(補間)する。こうして得られた画像データはデータ記録装置16に保存される。データ記録装置16に保存された画像データは、表示制御装置17によって読み出され、表示用モニタ18に表示される。
【0024】
以下、制御ユニット5の構成、及びX線撮影処理についてより詳細に説明する。
【0025】
図2は制御ユニット5の詳細の構成を示すブロック図である。図2において、積分器31はフォトタイマ4からの信号、すなわち被写体1の特定部位を透過したX線量を示す信号を積分する。そして、その積分出力41は比較器32に入力される。比較器32では、設定された静止画用X線量設定レベル20と積分出力41を比較し、比較結果40を出力する。」
「【図2】
[図:0001432875000002.jpg]
」
「【0026】
フリップフロップ35は、曝射開始トリガ19でセットされ、比較器32から出力される比較結果40でリセットされる。フリップフロップ35からの信号はX線発生制御信号23として用いられる。処理ユニット34は、マイクロプロセッサを内蔵し、外部から設定される動画フレーム数21、動画取得時間22を受け付ける。また、処理ユニット34は曝射開始トリガ19を入力し、曝射が開始されたタイミングを検知し、動画用のX線制御パルス38を出力する。また、このX線制御パルス38に同期して画像データを取得すべく、信号線24を介してFPD2での画像取得のタイミングを制御する。また、処理ユニット34は、信号線39を介して、パルス幅計測ユニット33より静止画撮影時におけるX線曝射のパルス幅を取得する。パルス幅計測ユニット33は静止画撮影におけるX線パルス幅(フリップフロップ35の出力)を計測し、その結果を処理ユニット34へ伝える。論理和ゲート36は、フリップフロップ35からの静止画用のX線制御パルス、或いは処理ユニット34からの動画用のX線制御パルスの両者をX線発生装置3に伝える。即ち、論理和ゲート36の出力はX線制御信号23として図1のX線発生装置3へ伝えられる。
【0027】
次に、図3のタイミングチャートにより制御ユニット5によるX線撮影動作を説明する。なお、動画撮影において設定される動画フレーム数をN、動画撮影時間をTmとする。図3に示されるように、曝射トリガ19の立ち上がりによってフリップフロップ35がセットされ、X線発生制御信号23が出力される。このX線発生制御信号23がONの間、X線が発射される。X線が発射されるとフォトタイマ4が到達したX線量を示す信号を出力するので、積分器31からの積分出力41が図3に示すように増加していく。積分出力41は、比較器32によって静止用X線量設定レベル20と比較され、図3ではAの時点で目的の線量(静止画用X線量設定レベル20)に達している。このAの時点で比較器32は比較結果40を出力するため、即ち比較結果40が立ち上がるためフリップフロップ35はリセットされ、X線発生制御信号23がOFFされて、X線曝射は停止される。この結果、X線発生制御信号23は図3の第2段目に示すように幅TxのX線制御パルスとして出力され、このパルスの期間だけX線発射装置3からX線が出力される。」
「【図3】
[図:0001432875000003.jpg]
」
「【0028】
パルス幅計測ユニット33は、X線発生制御信号23のパルス幅(時間)Txを測定する。上述したように動画撮影時間がTm、フレーム数がNに設定されているので、処理ユニット34は、パルス幅計測ユニット33よりTxを受け取ると、動画撮影用のパルス幅(Tx/N)と、動画1フレームに割り当てられる時間(Tm/N)を算出する。処理ユニット34は、このTm/Nをパルス周期として幅Tx/NのパルスをX線発生制御信号として出力する。この結果、図3の第2段目の後半に示されるような動画用パルスがN個出力されることになる。こうして、静止画撮影から引き続き動画撮影が実行され、その動画撮影用のトータルのX線量は静止画と同レベルになる。
【0029】
なお、動画用のパルスを決定する際に、トータルのX線量が静止画とまったく同じである必要はなく、目的、患者への負担に応じて、少なめに設定することも可能である。この設定の詳細については後述する。
【0030】
以上の操作を具体的に呼吸動態を撮影する場合に適用すると、患者は操作者の指示により、最初の段階で吸気を行い、最大吸気の状態で静止し、静止画撮影を行う。静止画撮影が終わると、患者にゆっくりと呼気を開始させ、その呼気の様子を動態として連続して撮影することになる。
【0031】
図2の処理ユニット34はマイクロプロセッサがプログラムを実行することで上述した撮影処理を実行する。以下、図4、5に示すフローチャートを参照してその処理を更に説明する。
【0032】
図4は動画フレーム数および動画撮影時間入力を受け付ける処理であり、図1、2では不図示であるが、適切なユーザインターフェースにより、操作者が所望の動画撮影時間Tm、動画フレーム数Nを入力する。図4のフローチャートで示される処理では、その入力された値が適切なものであるかどうかを判断し、適切であれば設定値を保存する。」
「【図4】
[図:0001432875000004.jpg]
」
「【0033】
ステップS1において撮影時間Tmを受け付けると、ステップS2においてその時間が5秒以上であるかどうかを判断する。もし、5秒より少ない時間が指定された場合は、ステップS3に進み、操作者に対して警告を出し、撮影時間の変更を促す。5秒以上が設定されていれば、ステップS4へ進み、指定された動画フレーム数Nを受け付ける。なお、動画撮影時間Tmを5秒以上とする理由については後述する。次に、指定されたフレーム数Nと動画撮影時間Tmとを用いて、動画のフレーム周期に相当する動画フレーム時間Tm/Nを算出し、この値が1/3秒か否かを判定する。1/3秒以下でない場合は、ステップS6へ進み、操作者に対して警告を出し、フレーム数の設定変更を促す。ステップS5において1/3秒以下であると判定された場合は、ステップS7へ進み、設定値Tm、Nを処理ユニット34内の不図示のメモリに保持する。なお、動画フレーム時間を1/3秒以下とする理由は後述する。
【0034】
なお、この設定で決定しなければならないパラメータとしては「動画撮影時間(Tm)」、「動画フレーム数(N)」そして「動画フレーム時間(Tm/N)」の3つがある。
これら3つのパラメータはそれぞれ関連しており、2つが決定されればおのずと他方1つは計算できるものである。よって、図4では「動画撮影時間Tm」、「動画フレーム数N」を入力しているが、他2つのパラメータの組み合わせを入力しても構わないことは明白である。その場合でも、動画撮影時間Tmが5秒以上、動画フレーム時間Tm/Nが1/3秒以下という条件を判断し、適切な動態観察が行える条件を満たすようにする。
【0035】
なお、本実施形態で動画撮影時間を5秒以上、動態画像の撮影速度は1秒あたり3フレーム以上としている。その理由は以下のとおりである。課題の項で上述したように、意識的に呼吸などで人体を動かす場合にはその移動速度を遅くするにも限界がある。たとえば、呼吸に関しては意識的にゆっくりしても5秒間の呼気、5秒間の吸気程度の速度(どの部位にしても5秒間でひとつの動きを行う)が限界である。それ以下に遅くすると動きが非常にぎこちなくなり、安定した動きは望めない。本発明者は、そのような動きを画像化し、観察する場合に、最低でも1秒あたり3フレーム以上で取得したものでなければ、安定した追跡認識ができないことを見出した。動態撮影時間は上記の5秒間で1つの動きを行うため、5秒以上の撮影時間が必要になる。また、胸部の呼吸動態を観察する場合には、少なくとも人体胸部全体を包含するようなサイズのFPDを用いることも重要である。なお、動態画像の撮影時間に上限を設けることは望ましいことである。本実施形態の場合であれば、上述したように5秒間の呼気、吸気の速度が安定した動作を保証する限界であるとの観点から、例えば10秒以下という上限を設ければよい。
【0036】
図5は、動画用パラメータが決定された後に実際に撮影を行う場合の処理ユニット34による制御を説明するフローチャートである。図5に示す処理を処理ユニット34が実行することにより、図3のタイムチャートで説明した動作が実現される。」
「【図5】
[図:0001432875000005.jpg]
」
「【0037】
ステップS11及びステップS12により、静止画撮影におけるX線の曝射開始から終了を判断する。本実施形態では、曝射トリガ入力19をモニタしてX線の曝射開始を判断し、パルス幅計測ユニット33の出力をモニタすることによりX線の曝射終了を判断する。なお、フリップフロップ35の出力信号をモニタすることでX銭の曝射開始と終了を判断するようにしてもよい。ステップS13では、当該静止画撮影に要した曝射時間Txを読み出し、設定されているフレーム数Nや動画撮影時間Tmを用いて各フレームの撮影条件を設定する。例えば、1フレームあたりの曝射時間をTx/Nに、フレーム周期(曝射周期)をTm/Nに設定する。また、このときに撮影された画像データは図1に示した各ユニットを経て記憶装置16に格納される。ステップS14では、動画撮影の開始に至るまでの待ち時間である。待ち時間は患者の動作に応じて適当に設定されるものであり、無くても良い。或いは、動画撮影の開始を指示する操作入力に応じてステップS15以降へ進むようにしてもよい。
【0038】
動画撮影が開始されるとステップS15~S19の処理が実行される。まず、ステップS15では、動画用のパルスがN回出力されたかどうかを判断する。例えば、1フレームのX線照射を行う毎にカウンタメモリを累積することによりN回曝射(Nフレームの撮影の完了)の判断を行う。N回の曝射が完了していない場合は、図2に示されるタイミングに従ってX線を曝射するように動画用のX線制御パルス38を出力する。即ち、ステップS16において、動画用のX線制御パルス38をONし、ステップS17においてTx/Nの待ち時間だけ待ちを実行し、Tx/Nの待ち時間が過ぎるとステップS18においてX線制御パルス38をOFFする。こうして1フレームの曝射を終了する。ついでステップS19において、パルス間隔分の待ち時間(Tm-Tx)/Nだけ待ちを実行し、ステップS15に戻る。以上の処理をN回繰り返す(ステップS15)ことによりN個のX線画像(フレーム画像)が得られる。なお、この場合でも、一回のX線パルスが発生するごとに図1の各処理ユニットを経て、フレーム画像が記憶装置16に順次記録される。
【0039】
なお、ステップS17での待ち時間を(Tx-α)/N、ステップS19での待ち時間を(Tm-Tx+α)/Nとして、適当な数値α(α≧0)を用いることにより、動画撮影線量を目的・患者負担に応じて低減させることが可能になる。なお、αを0未満に設定すると動画撮影における総曝射線量が静止画撮影時の曝射線量よりも大きくなる設定となる。本実施形態では動画撮影における総曝射線量を静止画撮影時の曝射線量と同等もしくはそれ以下とするためにα≧0とするが、所定の許容範囲で動画撮影の曝射線量が静止画撮影時の曝射線量を超えるようにしてもよいであろう。例えば、フレーム数Nが多いと一回当たりのX線量が少なくなるので、Nが所定値より大きい場合に、Nに応じてαを負に設定するようにすることが考えられる。
【0040】
また、FPD2が外部入力の設定により、内部のアンプのゲインもしくは画像情報を担持するための容量を変化させて出力電圧ゲインを変化させることが可能であるようになっている場合もあり、この場合、静止画撮影時と動画撮影時の出力電圧ゲインを変化させることも当然可能である。
【0041】
以上のように第1実施形態によれば、動画撮影時のトータルの曝射線量が、同じ装置で静止画像を取得する際の曝射線量と同等になるように制御されるので、安全な被曝量で、動態観察に耐え得る動画データを取得できる。」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例1に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「静止画と同じ受像装置で動態X線像を撮影し観察する場合に、静止画と同等の情報量を得るためには動態撮影のトータルの線量を静止画と同等にし、(【0016】)
1つのFPDを用いて静止画撮影と動態撮影とを連続して行い、動態撮影では、トータルの線量がその直前に行った静止画撮影と同じになるように設定されるX線画像取得装置であって、(【0018】及び【0019】)
X線発生装置3で発生したX線は被写体1を透過してX線フラットパネルディテクタ(FPD)2に到達し、FPD2は、到達したX線の線量分布を画像化し、(【0019】)
制御ユニット5はX線発生装置3およびFPD2を制御し、制御ユニット5は、フォトタイマ4からの信号を累積し、その累積値に基づいてX線発生装置3から発せられるX線を遮断したり、必要に応じたパルス幅のX線パルスをX線発生装置3から継続的に出力させるような制御を行い、制御ユニット5には、X線曝射を開始するための曝射開始トリガ19と、フォトタイマ出力の累積値と比較される静止画用X線量設定レベル20(静止画撮影に必要なX線量レベル)と、動態観察用の画像(以下、動画ともいう)取得時のフレーム数21、および動画取得時間22を入力、設定するための構成が設けられ、(【0021】)
処理ユニット34は、マイクロプロセッサを内蔵し、外部から設定される動画フレーム数21、動画取得時間22を受け付け、(【0026】)
動画撮影において設定される動画フレーム数をN、動画撮影時間をTmとし、X線発生制御信号23がONの間、X線が発射され、X線が発射されるとフォトタイマ4が到達したX線量を示す信号を出力するので、積分器31からの積分出力41が増加し、積分出力41は、比較器32によって静止用X線量設定レベル20と比較され、静止画用X線量設定レベル20に達して、X線発生制御信号23がOFFされて、X線曝射は停止され、この結果、X線発生制御信号23は幅TxのX線制御パルスとして出力され、このパルスの期間だけX線発射装置3からX線が出力され、(【0027】)
上述したように動画撮影時間がTm、フレーム数がNに設定されているので、処理ユニット34は、パルス幅計測ユニット33よりTxを受け取ると、動画撮影用のパルス幅(Tx/N)と、動画1フレームに割り当てられる時間(Tm/N)を算出し、処理ユニット34は、このTm/Nをパルス周期として幅Tx/NのパルスをX線発生制御信号として出力し、動画用パルスがN個出力されることになり、こうして、静止画撮影から引き続き動画撮影が実行され、その動画撮影用のトータルのX線量は静止画と同レベルになり、(【0028】)
撮影時間Tmを受け付けると、その時間が5秒以上であるかどうかを判断し、5秒より少ない時間が指定された場合は、操作者に対して警告を出し、撮影時間の変更を促し、次に、指定されたフレーム数Nと動画撮影時間Tmとを用いて、動画のフレーム周期に相当する動画フレーム時間Tm/Nを算出し、この値が1/3秒か否かを判定し、1/3秒以下でない場合は、操作者に対して警告を出し、フレーム数の設定変更を促す(【0033】)
X線画像取得装置。(【0019】)」
イ 引用文献2及び3に記載された事項並びに周知技術1の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2018-7851号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0019】
なお、本発明は、例えば病院等の撮影室で撮影が行われる場合に適用されるが、例えば図1に示すように、放射線発生装置40を搭載した回診車90を病室SR等に搬送し、放射線技師等の操作者Aが被写体Hである患者とベッドBとの間に放射線画像撮影装置1を差し込む等してセットし、放射線発生装置40から放射線Xを複数回照射させて撮影を行うような場合にも適用される。」
(イ) 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2020-48864号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0014】
本実施形態の放射線画像撮影システム(以下システム100)は、図1に示したように、放射線発生装置(以下、発生装置1)と、放射線画像撮影装置(以下、撮影装置2)と、コンソール3と、を備えている。
また、システム100は画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:以下PACS110)、解析診断ワークステーション(WS)120等と通信ネットワークを介して通信することが可能となっている。
【0015】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:以下HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:以下RIS)、汎用クライアント端末等と通信可能となっていてもよい。
また、システム100は、上記の他、無線通信用のアクセスポイント4や、撮影装置2の充電やデータの送受信を行うためのクレードル5、撮影装置2を支持する立位撮影用の撮影台6Aと臥位撮影用の撮影台6Bの少なくとも一方を備えていてもよい。
また、図1には、システム100が施設内(撮影室、操作室)に設置された場合を例示したが、回診車等に組み込まれた移動可能な構成としてもよい。」
(ウ) 周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)に示した引用文献2及び3の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「放射線発生装置を搭載した回診車。」
ウ 引用文献4~7に記載された事項並びに技術常識1及び2の認定
(ア) 引用文献4に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2012-120886号(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、互いに異なる2つの撮影方向から放射線を被写体に照射して撮影する3次元放射線撮影装置および方法に関する。より詳しくは、2つの撮影方向のうち、一方の撮影方向から所定の照射線量の放射線、他方の撮影方向から一方の撮影方向における照射線量よりも少ない照射線量の放射線を被写体にそれぞれ照射して撮影する3次元放射線撮影装置および方法に関する。」
[0038] 管電流(mA)および照射時間(sec)は、管電流積である放射線の照射線量(mAs)を調整するものである。以下の説明においては、管電流積を照射線量(mAs)として説明する。なお、入力部4は、照射線量(mAs)の直接の入力を受け付けるものであってもよい。照射線量(mAs)の上限値は、乳房Mの被曝量を抑えるためのものであり、下限値は放射線画像の画質担保するためのものである。」
「[0042] 線量表示制御部2dは、3次元撮影装置本体1が乳房Mの放射線撮影を行う前に撮影方向D1,D2の照射線量、上限値および下限値をモニタ3に表示させるものである。図4は、照射線量(mAs)、上限値および下限値の表示の一例を示す図である。また、線量表示制御部2dは、照射線量(mAs)が上限値を超える場合および/または下限値未満の場合に警告表示させるものである。図5、図6および図7は、警告を伴う照射線量、上限値および下限値の表示の一例を示す図である。なお、線量表示制御部2dは上限値と下限値のどちらか一方をモニタ3に表示させるものであってもよい。」
「[図6]
[図:0001432875000006.jpg]
[図7]
[図:0001432875000007.jpg]
」
「[0047]
撮影方向D1,D2の照射線量が上限値以下の場合、撮影条件設定部2bは、撮影方向D1,D2の照射線量(mAs)が下限値未満であるか否かを判別し(ST10)、下限値未満の場合には、モニタ3に警告を表示させる(ST9)。撮影者が警告を確認するまで待機して警告確認後に撮影条件の受け付けに戻る(ST1)。
[0048]
撮影方向D1,D2の照射線量が下限値以上の場合、基準画像の撮影が開始する。まず、制御部2aが、撮影方向D1の撮影角度θ=0°を撮影条件設定部2bから読み出してアームコントローラ31にアーム部13を回転させる制御信号を出力する。アームコントローラ31が制御信号を受け取り、撮影方向D1が検出面15aに対して垂直な方向となるように、アーム部13を回転させる。」
(イ) 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2015-108097号(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、X線CT装置、画像処理装置、及び画像再構成方法に係り、詳細には、照射X線量を変調して撮影した投影データを用いた画像再構成処理に関する。」
「[0055] 線量値(mAs値)と画質を表す指標である画像SD値には、以下の式(1)の関係があることが知られている。
[0056][数1]
[図:0001432875000008.jpg]
」
「[0094] 下限線量算出部159は、記憶装置123から画質改善テーブル3を取得し、画質改善テーブル3に定義されている画質改善効果量のうち、最も大きい画質改善効果量と、目標画質設定部158により設定された目標画質(目標画質を達成するための線量値)とに基づいて照射X線量の下限値を算出する。下限値は目標画質を達成するための線量値を画質改善効果量で除算することにより求めることができる。下限線量算出部159は、算出した照射X線量の下限値を線量変調データ設定部151に通知する。
[0095] 線量変調データ設定部151は、照射X線量の下限値が下限線量算出部159により算出された下限値を下回らないように線量変調データを設定する。」
「[0103] 次にシステム制御装置124aは、記憶装置123から画質改善テーブル3を取得し、画質改善テーブル3に定義されている画質改善効果量のうち、最も大きい改善効果量を取得する(ステップS204)。システム制御部124aは、ステップS204で取得した最も大きい画質改善効果量と、ステップS203で設定された目標画質(または目標画質を達成するための線量値)とに基づいて照射X線量の下限値(下限線量)を算出する(ステップS205)。下限線量は高線量値を改善効果量で除算することにより求めることができる。システム制御装置124aは、算出した下限線量を線量変調データとともに表示装置125に表示する。例えば、図11に示すような線量変調データ表示画面53内に下限線量532を表示する(ステップS206)。
[0104] 操作者は、線量変調データ表示画面53に表示される下限線量532を参照しながら各位相の線量を調整することができる(ステップS207)。ステップS207において、システム制御装置124aは下限線量値を下回ることがないように操作者の調整操作を制限する。操作者の調整操作により設定された各位相の線量値を線量変調データとして設定し、撮影を開始する(ステップS208)。」
「[図11]
[図:0001432875000009.jpg]
」
(ウ) 引用文献6に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2012-127819号(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、互いに異なる2つの撮影方向から放射線を被写体に照射して撮影する3次元放射線撮影装置および方法に関する。より詳しくは、2つの撮影方向のうち、一方の撮影方向から所定の照射線量の放射線を被写体に照射した後、他方の撮影方向から一方の撮影方向における照射線量よりも少ない照射線量の放射線を被写体に照射して被写体を通した各放射線を放射線検出器によって検出して撮影する3次元放射線撮影装置および方法に関する。」
「[0037] 管電流(mA)および照射時間(sec)は、管電流積である放射線の照射線量(mAs)を調整するものである。以下の説明においては、管電流積を照射線量(mAs)として説明する。なお、入力部4は、照射線量(mAs)の直接の入力を受け付けるものであってもよい。照射線量(mAs)の上限値は、乳房Mの被曝量を抑えるためのものであり、下限値は放射線画像の画質担保するためのものである。」
(エ) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2016-39869号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、放射線発生装置、放射線撮影システム、放射線発生装置の制御方法およびプログラムに関する。」
「【0020】
制御部205は撮影条件表示部(210~212)の表示状態を変更することにより、撮影条件設定部(220~225)により設定される撮影条件が撮影条件の上限値または下限値に達したことを報知する。透過型放射線発生装置200は管電圧、照射時間、mAs値に関して予め上限値と下限値が決められている。そのため、例えば、照射時間の設定値が上限値に達した時に、制御部205は照射時間アップボタンが押されたのを検知すると、それ以上、照射時間を上げないように照射時間表示部211の照射時間の表示状態を制御する。照射時間の設定値が上限値に達した時に、制御部205は照射時間表示部211の表示状態を点滅させて、技師に報知する。このような表示制御により、技師は上限値に達したことを知ることができる。制御部205は照射時間の下限値に達した場合も、上限値の表示制御と同様の表示制御を行う。照射時間を例にして説明したが、制御部205は管電圧、mAs値に関しても同様に表示制御を行うことが可能である。」
(オ) 技術常識1の認定
前記(ア)~(ウ)に示した引用文献4~6の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識1」という。)。
<技術常識1>
「放射線撮影装置において、放射線画像の画質担保するために、照射線量(mAs)の下限値を設けること。」
(カ) 技術常識2の認定
前記(ア)、(イ)及び(エ)に示した引用文献4、5及び7の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識2」という。)。
<技術常識2>
「放射線撮影装置において、照射線量(mAs)に関して入力する撮影条件が、照射線量(mAs)の下限値未満の場合に警告表示させること。」
(2) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 本件補正発明の「放射線による単一フレームからなる静止画を得るための静止画撮影と、放射線による複数フレームからなる動態画像を得るための動態撮影を行うことが可能な移動型放射線撮影装置であって、」及び「移動型放射線撮影装置」の特定事項について
a 引用発明の「1つのFPDを用いて」行う「静止画撮影」は、静止画が、ある特定のX線量で1フレームの画像が撮影されたものであることは明らかであるから、本件補正発明の「放射線による単一フレームからなる静止画を得るための静止画撮影」に相当する。
b 引用発明は、「動態撮影」に関して、「動態観察用の画像(以下、動画ともいう)取得時のフレーム数21、および動画取得時間22を入力、設定するための構成が設けられ[る]」と特定されているから、引用発明の「動態撮影」が、設定された「フレーム数21」の「動態観察用の画像」からなる「動画」を得るための撮影を意味することは、明らかであり、また、動画が、複数フレームの画像を撮影するものであることは明らかである。したがって、引用発明の「1つのFPDを用いて」行う「動態撮影」は、本件補正発明の「放射線による複数フレームからなる動態画像を得るための動態撮影」に相当する。
c 引用発明の「X線画像取得装置」と本件補正発明の「移動型放射線撮影装置」は、放射線撮影装置である点で共通する。
また、引用発明の「X線画像取得装置」は、「1つのFPDを用いて静止画撮影と動態撮影とを連続して行[う]」ものであるから、本件件補正発明でいう「静止画撮影と、」「動態撮影を行うことが可能な」ものである。
d 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、前記特定事項の観点において次の(a)の点において一致し、後記(b)の点において相違する。
(a) 前記特定事項の観点での一致点
「放射線による単一フレームからなる静止画を得るための静止画撮影と、放射線による複数フレームからなる動態画像を得るための動態撮影を行うことが可能な」「放射線撮影装置」及び「放射線撮影装置」である点。
(b) 前記特定事項の観点での相違点
放射線撮影装置について、
本件補正発明は、
「移動型」であるのに対して、
引用発明は、
そのようなものか明らかでない点。
(イ) 本件補正発明の「前記静止画撮影の単一フレームのmAs値及び動態撮影の1フレームのmAs値に関連する撮影条件を設定する設定部と、報知部とを有し、」の特定事項について
a 引用発明の「フォトタイマ出力の累積値と比較される静止画撮影に必要なX線量レベル」は、本件補正発明の「静止画撮影の単一フレームのmAs値」「に関連する撮影条件」に相当する。
また、引用発明は、「動態撮影では、トータルの線量がその直前に行った静止画撮影と同じになるように設定される」ものであるから、「動態撮影」における1フレームの画像のX線量は、「取得時のフレーム数21」に関連するものであるといえる。したがって、引用発明の「取得時のフレーム数21」は、「動態撮影の1フレームのmAs値に関連する撮影条件」に相当する。
そうすると、引用発明の「制御ユニット5」は、「フォトタイマ4からの信号を累積し、その累積値に基づいてX線発生装置3から発せられるX線を遮断したり、必要に応じたパルス幅のX線パルスをX線発生装置3から継続的に出力させるような制御を行い、制御ユニット5には、X線曝射を開始するための曝射開始トリガ19と、フォトタイマ出力の累積値と比較される静止画用X線量設定レベル20(静止画撮影に必要なX線量レベル)と、動態観察用の画像(以下、動画ともいう)取得時のフレーム数21、および動画取得時間22を入力、設定するための構成が設けられ[る]」ものであるから、本件補正発明の「前記静止画撮影の単一フレームのmAs値及び動態撮影の1フレームのmAs値に関連する撮影条件を設定する設定部」に相当する。
b 引用発明は、「撮影時間Tmを受け付けると、その時間が5秒以上であるかどうかを判断し、5秒より少ない時間が指定された場合は、操作者に対して警告を出し、撮影時間の変更を促し、次に、指定されたフレーム数Nと動画撮影時間Tmとを用いて、動画のフレーム周期に相当する動画フレーム時間Tm/Nを算出し、この値が1/3秒か否かを判定し、1/3秒以下でない場合は、操作者に対して警告を出し、フレーム数の設定変更を促す」ものであるから、引用発明の「警報」を出す部分が、本件補正発明の「報知部」に相当する。
c 以上の検討結果を踏まえると、引用発明は、前記特定事項を備える。
(ウ) 本件補正発明の「前記動態画像の1フレームあたりの線量は、前記静止画撮影の線量よりも小さく、」の特定事項について
引用発明は、「動態撮影では、トータルの線量がその直前に行った静止画撮影と同じ」であり、静止画が、ある特定のX線量で1フレームの画像が撮影されたものであることは明らかであり、動画が、複数フレームの画像を撮影するものであることは明らかであるから、動態撮影の1フレームあたりの線量は、静止画撮影の線量よりも小さいといえる。
そうすると、引用発明は、前記特定事項を備える。
(エ) 本件補正発明の「前記動態撮影の1フレームのmAs値の下限値は、前記静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値よりも小さく、」の特定事項について
本件補正発明は、
「前記動態撮影の1フレームのmAs値の下限値は、前記静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値よりも小さ[い]」ものであるのに対して、
引用発明は、
そのようなものか明らかでない点で相違する。
(オ) 本件補正発明の「前記報知部は、前記静止画撮影時に当該静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、又は前記動態撮影時に当該動態撮影の1フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、設定不可である旨を報知する、」の特定事項について
報知部について
本件補正発明は、
「前記静止画撮影時に当該静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、又は前記動態撮影時に当該動態撮影の1フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、設定不可である旨を報知する」ものであるのに対して、
引用発明は、
「撮影時間Tmを受け付けると、その時間が5秒以上であるかどうかを判断し、5秒より少ない時間が指定された場合は、操作者に対して警告を出し、撮影時間の変更を促し、次に、指定されたフレーム数Nと動画撮影時間Tmとを用いて、動画のフレーム周期に相当する動画フレーム時間Tm/Nを算出し、この値が1/3秒か否かを判定し、1/3秒以下でない場合は、操作者に対して警告を出し、フレーム数の設定変更を促す」ものである点で相違する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「放射線による単一フレームからなる静止画を得るための静止画撮影と、放射線による複数フレームからなる動態画像を得るための動態撮影を行うことが可能な放射線撮影装置であって、
前記静止画撮影の単一フレームのmAs値及び動態撮影の1フレームのmAs値に関連する撮影条件を設定する設定部と、報知部とを有し、
前記動態画像の1フレームあたりの線量は、前記静止画撮影の線量よりも小さい、
放射線撮影装置。」である点。
(イ) 相違点
a 相違点1
放射線撮影装置について、本件補正発明は、「移動型」であるのに対して、引用発明は、そのようなものか明らかでない点。
b 相違点2
本件補正発明は、「前記動態撮影の1フレームのmAs値の下限値は、前記静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値よりも小さ[い]」ものであるのに対して、引用発明は、そのようなものか明らかでない点。
c 相違点3
報知部について、本件補正発明は、「前記静止画撮影時に当該静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、又は前記動態撮影時に当該動態撮影の1フレームのmAs値の下限値を下回る前記撮影条件の入力が行われた場合、設定不可である旨を報知する」ものであるのに対して、引用発明は、「撮影時間Tmを受け付けると、その時間が5秒以上であるかどうかを判断し、5秒より少ない時間が指定された場合は、操作者に対して警告を出し、撮影時間の変更を促し、次に、指定されたフレーム数Nと動画撮影時間Tmとを用いて、動画のフレーム周期に相当する動画フレーム時間Tm/Nを算出し、この値が1/3秒か否かを判定し、1/3秒以下でない場合は、操作者に対して警告を出し、フレーム数の設定変更を促す」ものである点。
(3) 判断
ア 相違点1について
引用発明は、「X線画像取得装置」であり、当業者は、「X線画像取得装置」を、どのように配置するか考えるといえる。
そして、前記(1)イ(ウ)の周知技術1で説示したように「放射線発生装置を搭載した回診車」は周知である。
そうすると、引用発明の「X線画像取得装置」を回診車に搭載し移動型のものとすること、すなわち、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
イ 相違点2及び相違点3について
(ア) 引用発明は、「X線画像取得装置」であり、当業者は、所定の画質のX線画像を取得しなければならないことを、理解するといえる。
そして、前記(1)ウ(オ)で説示したように、放射線撮影装置において、放射線画像の画質担保するために、照射線量(mAs)の下限値を設けることは、技術常識(技術常識1)であるから、引用発明の「X線画像取得装置」においても、当該技術常識1を考慮すれば、所定の画質のX線画像を取得するために、照射線量(mAs)の下限値を設けたものであるか、設けることは、当業者が適宜設計し得る程度の事項であるといえる。
これを踏まえて相違点2及び相違点3について検討する。
(イ) 相違点2について
引用発明は、「静止画と同じ受像装置で動態X線像を撮影し観察する場合に、静止画と同等の情報量を得るためには動態撮影のトータルの線量を静止画と同等」にするものであることから、動態撮影の1フレームの画質は、静止画の単一フレームの画質より低くなるように、すなわち動態撮影の1フレームの照射線量が静止画像の単一フレームの照射線量より小さくなるように設定するものであることが明らかである。そうすると、引用発明において、放射線画像の画質担保のために設ける照射線量の下限値についても、動態撮影の1フレームの照射線量(mAs値)の下限値は、静止画撮影の単一フレームの照射線量(mAs値)の下限値よりも小さいもの、すなわち、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(ウ) 相違点3について
前記(1)ウ(カ)で説示したように、放射線撮影装置において、照射線量(mAs)に関して入力する撮影条件が、照射線量(mAs)の下限値未満の場合に警告表示させることは、技術常識(技術常識2)である。ここで、引用発明の「X線画像取得装置」は、所定の撮影条件でない場合に「操作者に対して警告を出[す]」ものである。そうすると、引用発明の「X線画像取得装置」において、技術常識2を考慮して、静止画撮影時又は動態撮影時に、照射線量(mAs)の下限値未満の撮影条件が入力された場合に警告表示をすること、すなわち、相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の内容
引用文献1は、操作者に対して警告を出すことが記載されているが、本件補正発明の「動態画像の1フレームごとの画質を担保するために、報知部が、静止画撮影時に当該静止画撮影の単一フレームのmAs値の下限値を下回る撮影条件の入力が行われた場合、又は動態撮影時に当該動態撮影の1フレームのmAs値の下限値を下回る撮影条件の入力が行われた場合、設定不可である旨を報知する」という特徴点に到達したはずである示唆等は存在せず、本件補正発明は、「ユーザーに報知することで、放射線による複数のフレームからなる動態画像を得るための動態撮影を適切に行うことができる。」という引用文献1にはない、格別な作用効果を奏する旨主張する。
(イ) 請求人の主張についての検討
しかしながら、前記(3)イで説示したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。また、前記(3)ウで説示したとおり、本件補正発明が格別の作用効果を奏するとはいえない。
したがって、請求人の主張は失当である。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)オのとおり、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち理由5(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由5(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2010-179155号公報
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1~7に記載された事項並びに引用発明、周知技術1及び技術常識1、2は、前記第2の3(1)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から「前記動態画像の1フレームあたりの線量は、前記静止画撮影の線量よりも小さく」の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)において説示したとおり、引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、周知技術1及び技術常識1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001681