2022-001917
燃料電池システム及び設備管理方法
- 審判番号
- 2022-001917
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-557181外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月08日
- 審決日
- 2023年04月19日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】京セラ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人キュリーズ
- 分類
- P18 .113-WZ (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本願は、2018年(平成30年)11月21日(優先権主張 平成29年11月28日)を国際出願日とする出願であって、令和3年2月1日付けで拒絶理由通知が通知され、同年4月2日に意見書が提出され、さらに、同年7月2日付けで拒絶理由通知が通知され、同年9月3日に意見書が提出されたが、同年11月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和4年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、同年9月21日付けの拒絶理由通知に対し、同年11月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
1 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、令和4年11月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 燃料電池システムであって、前記燃料電池システムに対するユーザ操作を受け付けるインタフェースと、少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において、前記ユーザ操作の受け付け停止に関する所定処理を実行する制御部とを備える、燃料電池システム。」
第3 拒絶の理由
令和4年9月21日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次の理由を含むものである。
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-191383号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
第4 引用文献1の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
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当審が通知した拒絶理由で引用した引用文献1には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】パッケージ内に、燃料電池本体と、前記燃料電池本体に燃料を供給する燃料処理装置と、前記パッケージ内の可燃性ガスを検出する可燃性ガスセンサとを備えた燃料電池発電装置の制御装置であって、前記可燃性ガスセンサの検出結果に基づいて、可燃性ガスの漏洩を検知するガス漏洩検知手段と、前記ガス漏洩検知手段により可燃性ガスの漏洩が検知された場合に、当該燃料電池発電装置のシステムを停止させるとともに再起動不可の状態にする異常停止処理手段と、当該燃料電池発電装置のシステムが再起動不可の状態にされた後に再起動のための操作がなされた場合に、当該再起動不可の状態を解除せずに継続させる再起動抑制手段とを具備することを特徴とする燃料電池発電装置の制御装置。」
(2)「【0001】本発明の実施形態は、燃料電池発電装置の制御装置および運転方法に関する。【背景技術】【0002】燃料電池発電装置は、可燃性ガスを取り扱うため、安全には十分な考慮が必要である。【0003】そこで、一般には、燃料電池発電装置のパッケージ内には燃性ガスを検出する可燃性ガスセンサが設けられており、発電中に可燃性ガスが漏洩し、基準値を超える濃度が検出されると、システムが停止し、再起動不可能の状態にされるようになっている。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】【0005】従来、可燃性ガスが漏洩するといった異常発生時には、燃料電池発電装置のメンテナンスを行っている会社等に連絡して、修理を依頼することが前提となっている。また、取扱説明書にもその旨が明記されている。【0006】しかしながら、ユーザは、例えばこれを守らずにメインスイッチ(電源スイッチ)をオフの状態からオンの状態にする操作を行って再起動を試行する可能性がある。この場合、安全が確認されていなくても、再起動不可能の状態が解除され、再起動が可能となることから、パッケージ内に可燃性ガスが残留している場合は危険な事態が起こり得る。【0007】発明が解決しようとする課題は、可燃性ガスに対する安全対策が施された燃料電池発電装置の制御装置および運転方法を提供することにある。」
(4)「【0011】図1は、一実施形態に係る燃料電池発電装置の概略構成の一例を示す概念図である。【0012】図1に示される燃料電池発電装置は、パッケージ1、燃料供給部2、換気入口3、換気出口4、メインスイッチ5、燃料遮断弁6、燃料処理装置7、燃料電池本体8、換気ファン9、可燃性ガスセンサ10、制御装置11等から構成される。【0013】パッケージ1の外周には、燃料供給部2、換気入口3、換気出口4、メインスイッチ5等が設けられており、また、パッケージ1の内部には、燃料遮断弁6、燃料処理装置7、燃料電池本体8、換気ファン9、可燃性ガスセンサ10、制御装置11等が収納されている。」
(5)「【0023】制御装置11は、燃料電池発電装置全体の動作を司るものであり、例えば、ユーザの操作によりメインスイッチ5がオンにされた場合には、システムを起動し、電力をパッケージ1内の各部に供給して、各部を動作させ、発電のための制御を行う。その際、燃料遮断弁6を開にし、燃料処理装置7、燃料電池本体8、換気ファン9、可燃性ガスセンサ10などの機器を動作させる。一方、メインスイッチ5がオフにされた場合には、パッケージ1内の各部への電力供給を停止し、システムを停止させる。その際、燃料遮断弁6を閉にし、燃料処理装置7、燃料電池本体8、換気ファン9、可燃性ガスセンサ10などの機器の動作を停止させる。但し、制御装置11は、システム停止状態であっても、制御に必要な最小限の電力を自身が消費しており、必要な要素に電力を供給することができる。【0024】そのほか、制御装置11は、安全対策の観点から、パッケージ1内で可燃性ガスが漏洩している状態でメインスイッチ5をオフの状態からオンの状態にする操作がなされた場合に、当該操作の効力を無効にし、システムの再起動を阻止する機能を備えている。その機能の構成の一例を、図2に示す。続きを表示(全22行)【0025】図2に示される制御装置11は、記憶部(記憶媒体)20および制御部(制御機能)30を有する。【0026】記憶部20は、例えばEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリに相当するものであり、濃度基準値21やガス漏洩情報22など、制御部30により使用される各種の情報を記憶する。【0027】濃度基準値21は、パッケージ1内において可燃性ガスが漏洩しているか否かを判定するための判断基準となる値であり、例えば可燃性ガスの燃焼下限界の25%のレベルに設定される。可燃性ガスセンサ10により検出される可燃性ガスの濃度が、この濃度基準値21を超えた場合には、可燃性ガスが漏洩しているものと判断される。【0028】ガス漏洩情報22は、パッケージ1内において可燃性ガスが漏洩している状態にあるか否かを示す情報である。この情報は1ビットのデータで実現できる。例えば、可燃性ガスが漏洩している場合は、ガス漏洩情報22の値が「1」に設定され、可燃性ガスが漏洩していない場合は、ガス漏洩情報22の値が「0」に設定される。【0029】一方、制御部30は、例えばマイクロコンピュータで実現され、ガス漏洩検知部31、異常停止処理部32、再起動抑制部33などの各種の機能を備え、記憶部20に記憶される情報を用いて各種の制御を行う。【0030】ガス漏洩検知部31は、可燃性ガスセンサ10の検出結果に基づいて、可燃性ガスの漏洩を検知する。このガス漏洩検知部31は、例えば、可燃性ガスセンサ10の検出結果からパッケージ1内の現在の可燃性ガス濃度を求め、現在の可燃性ガス濃度と記憶部20内の濃度基準値21とを比較して、現在の可燃性ガス濃度が濃度基準値21を超えている場合に、パッケージ1内において可燃性ガスが漏洩しているものと判定し、記憶部20内のガス漏洩情報22の値を「1」に設定する。その際に、音声・光・表示等によりスピーカ・ランプ・表示器等を通じて可燃性ガスの漏洩を示す情報を発報してユーザに知らせる。なお、現在の可燃性ガス濃度が濃度基準値以下である場合は、パッケージ1内において可燃性ガスが漏洩していないものと判定し、記憶部20内のガス漏洩情報22の値を「0」に設定する。【0031】異常停止処理部32は、ガス漏洩検知部31により可燃性ガスの漏洩が検知された場合に、燃料電池発電装置のシステムを停止し、クールダウン状態に移行させるとともに、再起動不可の状態にする。その際に、例えば外部からの操作が不可能な場所に設置されるリレーやブレーカーのような接点式部品を用いて電気の供給経路を機械的に切断させることによって、システムを再起動不可の状態にするようにしてもよい。このようにすると、ユーザは容易にシステムを再起動可能状態に戻すことができない。また、パッケージ1内の電気回路への電力供給を停止させることにより、引火原因を無くすようにしてもよい。【0032】また、異常停止処理部32は、換気ファン9が停止していればこれを作動させ、一方、換気ファン9が作動中であればそのまま作動中の状態を維持し、一定時間以上その状態を継続することにより、可燃性ガスをパッケージ1の内側から外側へ排出させるようにすることが望ましい。これにより、パッケージ1内部の可燃性ガス濃度を爆発下限界以下に低下させることができ、危険な状態を回避することができる。【0033】再起動抑制部33は、システムが再起動不可の状態にされた後にメインスイッチ5等により再起動を試みる操作がなされても、当該操作の効力を無効にし、再起動不可の状態を解除せずに継続させる。すなわち、再起動抑制部33は、システムが再起動不可の状態にされた後にメインスイッチ5等により再起動のための操作がなされた場合、記憶部20内のガス漏洩情報22を参照し、ガス漏洩情報22が示している値「1」に基づき、可燃性ガスが漏洩してシステムが異常停止した状態にあることを認識する。これにより、再起動抑制部33は、再起動不可の状態を解除せず、再起動不可の状態をそのまま継続させる。その際、可燃性ガスが漏洩しており再起動が不可である旨や、修理が必要である旨など、注意を喚起するメッセージを発報してユーザに知らせるようにすることが望ましい。」
(6)引用文献1には、次に示す図1及び図3が記載されている。
[図:0001398810000001.jpg]
2 引用文献1の記載事項からわかること
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(1)上記1(5)の記載から、引用文献1には、燃料電池発電装置のシステムが記載され、このシステムは、メインスイッチ5をユーザが操作することにより、起動及び停止するものである。
(2)上記1(4)には、燃料電池発電装置は、制御装置11等から構成されることが記載され、上記1(5)には、制御装置11は、制御部30を有することと、この制御部30が異常停止処理部32、再起動抑制部33などの各種の機能を備えることが記載されている。そして、上記1(5)には、異常停止処理部32は、燃料電池発電装置のシステムを停止し、クールダウン状態に移行させるとともに、再起動不可の状態にし、再起動抑制部33は、システムが再起動不可の状態にされた後にメインスイッチ5等により再起動を試みる操作がなされても、当該操作の効力を無効にし、再起動不可の状態を解除せずに継続させることが記載されている。
そうすると、上記1(4)及び(5)の記載から、制御部30は、燃料電池発電装置のシステムを停止し、クールダウン状態に移行させるとともに、再起動不可の状態にし、再起動不可の状態にされた後にメインスイッチ5等により再起動を試みる操作がなされても、当該操作の効力を無効にし、再起動不可の状態を継続させるものであることが理解できる。
3 引用発明
上記1及び2から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
・引用発明
「燃料電池発電装置のシステムであって、前記燃料電池発電装置のシステムをユーザの操作により起動及び停止するメインスイッチ5と、前記燃料電池発電装置のシステムを停止し、クールダウン状態に移行させるとともに、再起動不可の状態にし、再起動不可の状態にされた後に、メインスイッチ5等により再起動を試みる操作がなされても、当該操作の効力を無効にし、再起動不可の状態を継続させる制御部30とを備える、燃料電池発電装置のシステム。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「燃料電池発電装置のシステム」は、本願発明の「燃料電池システム」に相当する。
引用発明の「燃料電池発電装置のシステムをユーザの操作により起動及び停止する」ことは、本願発明の「燃料電池システムに対するユーザ操作を受け付ける」ことに相当し、同様に、「メインスイッチ5」は、「インタフェース」に相当する。
引用発明の「前記燃料電池発電装置のシステムを停止し、クールダウン状態に移行させるとともに」は、本願発明の「少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において」に相当し、同様に、「再起動不可の状態にし、再起動不可の状態にされた後に、メインスイッチ5等により再起動を試みる操作がなされても、当該操作の効力を無効にし、再起動不可の状態を継続させる」ことは、「前記ユーザ操作の受け付け停止に関する所定処理を実行する」ことに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、次の一致点で一致し、相違点はない。
・一致点
「 燃料電池システムであって、前記燃料電池システムに対するユーザ操作を受け付けるインタフェースと、少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において、前記ユーザ操作の受け付け停止に関する所定処理を実行する制御部とを備える、燃料電池システム。」
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条第1項第3号に該当する。
請求人は、令和4年11月28日提出の意見書において、「引用文献1で、再起動を試みる操作が「再起動不可の状態にされた後」に行われるの対して、請求項1では、ユーザ操作の受け付け停止に関する所定処理が「少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において」行われる点で異なります。すなわち、引用文献1には、少なくとも燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において行われる操作については開示がありません。よって、引用文献1には、請求項1に記載した「少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において、前記ユーザ操作の受け付け停止に関する所定処理を実行する制御部」は何ら開示も示唆もなされておりません。」(改行及び空白を略した。)と主張している。
しかしながら、燃料電池システムにおいて、発電動作の停止後、システムが完全停止する前に、例えば高温であった部分を冷却するために冷却ファンを回したり冷却水を循環させたりする等の処理が行なわれることは技術常識であり、当該技術常識に鑑みれば、引用発明における「クールダウン状態」とは、燃料電池発電装置が発電動作をしている高温の状態から、停止中の低温の状態になるように冷却する状態を意味することは当業者にとって自明の事項である。
そして、引用発明は、「クールダウン状態に移行させるとともに、再起動不可の状態に」するものであるから、燃料電池発電装置のシステムがクールダウン状態に移行するタイミングで、再起動不可の状態にされるものである。
請求人は、上記意見書において、「このように、引用文献1で、再起動を試みる操作が「再起動不可の状態にされた後」に行われるの対して、請求項1では、ユーザ操作の受け付け停止に関する所定処理が「少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において」行われる点で異なります。」と主張しており、かかる主張は、引用発明における「再起動不可の状態にされた後」が、燃料電池発電装置のシステムが完全停止となった後であることを前提とした主張であると解されるが、上記したとおり、引用発明における「再起動不可の状態にされた」タイミングは、「クールダウン状態に移行」されたタイミングであるから、再起動を試みる操作がなされても、当該操作の効力を無効にし、再起動不可の状態を継続させるのは「再起動不可の状態にされた後」であって「クールダウン状態に移行」してからされるものである。そして、「クールダウン状態」とは、燃料電池発電装置のシステムが完全停止となっていない状態で、高温部分を冷却している状態であるから、「少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間」であることも上記したとおりである。
そうすると、上記第5に示したとおり、引用発明の「前記燃料電池発電装置のシステムを停止し、クールダウン状態に移行させるとともに」は、本願発明の「少なくとも前記燃料電池システムの停止動作の開始から終了までの間において」に相当し、引用発明が、「再起動不可の状態にされた後」が、燃料電池発電装置のシステムが完全停止となった後であることを前提とした請求人の上記主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、優先日前に、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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