特許拒絶査定不服審判
2025-004382
リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極材の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極材スラリー、リチウムイオン二次電池用負極、及びリチウムイオン二次電池
- 審判番号
- 2025-004382
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-172233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年03月19日
- 審決日
- 2025年11月19日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社レゾナック
- 【請求人代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-WZ (H01M) / P18 .121-WZ (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-172233「リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極材の製造方法、リチウムイオン二次電池用負極材スラリー、リチウムイオン二次電池用負極、及びリチウムイオン二次電池」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年11月24日出願公開、特開2023-168513〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)11月22日を国際出願日とする特願2020-557405号の一部を令和5年10月3日に新たな特許出願としたものであって、令和6年9月2日付けで拒絶理由が通知され、同年10月28日に意見書及び手続補正書が提出され、令和6年12月10日付けで令和6年10月28日にされた手続補正が却下されると共に拒絶査定されたところ、令和7年3月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和7年3月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年3月19日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の概要
令和7年3月19日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1及び請求項10を引用する請求項11に記載された発明特定事項により特定される、
「【請求項1】
酸素含有率が0.15質量%以下の炭素粒子を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。
・・・
【請求項10】
炭素粒子の温度が400℃~1300℃になるように加熱する工程と、前記加熱後の炭素粒子の温度が400℃未満になるまで冷却する工程とを含み、前記加熱及び冷却をそれぞれ非酸化雰囲気中で行う、リチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。
【請求項11】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材の製造のための、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。」
との発明を、
「酸素含有率が0.15質量%以下である天然黒鉛粒子を含むリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法であって、
天然黒鉛粒子の温度が400℃~1300℃になるように加熱する工程と、前記加熱後の天然黒鉛粒子の温度が400℃未満になるまで冷却する工程とを含み、前記加熱及び冷却をそれぞれ非酸化雰囲気中で行い、前記加熱後の天然黒鉛粒子のJIS K6217-4:2008に記載の方法で亜麻仁油を使用して測定される吸油量は44.3mL/100g以下である、リチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。」(下線部は、補正箇所を示す。)
との発明とするものである。
2 補正の適否
上記補正の内容は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1及び請求項10を引用する請求項11に記載されていた「炭素粒子」を「天然黒鉛粒子」と特定すると共に、「前記加熱後の天然黒鉛粒子のJIS K6217-4:2008に記載の方法で亜麻仁油を使用して測定される吸油量は44.3mL/100g以下である」と特定するものである。
ここで、本件補正により特定された天然黒鉛粒子の吸油量に関し、発明の詳細な説明には、「炭素粒子の吸油量は、例えば、100mL/100g以下であることがより好ましく、90mL/100g以下であることがより好ましく、80mL/100g以下であることがより好ましく、70mL/100g以下であることがより好ましく、60mL/100g以下であることがさらに好ましい」(段落【0029】)と記載されているものの、「44.3mL/100g以下」とすることは記載されていない。
また、発明の詳細な説明の段落【0088】には実施例3の吸油量が44.3mL/100gとの測定結果が記載されているが、段落【0028】には「炭素粒子の吸油量は、例えば、25mL/100g以上であることが好ましく、・・・45mL/100g以上であることがさらに好ましい」(下線は当審で付与)と記載されていること、及び、段落【0064】ないし【0094】に記載された実施例の測定結果(特に【表1】、【表2】)からみて吸油量が44.3mL/100g以下となる実施例がその他の実施例より優れたものであるとも認められないことからみると、天然黒鉛粒子の吸油量を44.3mL/100g以下とすることが、発明の詳細な説明に示唆されていたとも認められない。
したがって、「前記加熱後の天然黒鉛粒子のJIS K6217-4:2008に記載の方法で亜麻仁油を使用して測定される吸油量は44.3mL/100g以下である」と特定する補正を含む本件補正は、新たな技術事項を導入する補正である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本願発明について
1 本件発明
上記のとおり、令和7年3月19日の手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである
「【請求項1】
酸素含有率が0.15質量%以下の炭素粒子を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、引用文献1を主引例とする理由1および2の概略は次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
(1)
・請求項 1-2、4-5、7-11
・引用文献等 1
<引用文献等一覧>
1.特開2004-111110号公報
3 当審の判断
3-1 理由1(新規性)について
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
引用文献1(特開2004-111110号公報)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、球状化黒鉛粒子よりなる二次電池用電極材料として、特に初期効率とサイクル特性に優れた二次電池を実現するために有用な二次電池用電極材料を効率良く製造できる方法を提供することにある。」
「【0023】
ところで、上記の様な方法によって製造された球状化黒鉛粒子を電極材料として使用した場合、得られる二次電池の初期効率は意外にも低いことが明らかになってきた。そこで、二次電池の初期効率が低下する原因について追求したところ、球状化黒鉛粒子の表面に多量の官能基が存在すると、該官能基が初回充電時に電解液と反応して初期効率の低下を引き起こすことを突き止めた。そして、この官能基と電解液の反応についてさらに検討したところ、官能基の中でも特に酸性官能基が初期効率の低下に大きく影響を及ぼすことが分かった。すなわち、酸性官能基とは、カルボキシル基やフェノール基、ラクトン基、カルボニル基などの官能基を指し、これらの官能基は電解液と特に反応し易いことが判明した。」
「【0025】
そこで、本発明者らは、球状化黒鉛粒子表面に存在する酸性官能基量を所定量以下に抑制しつつ、黒鉛粒子表面の接点数を増やし、且つ、電解液が黒鉛粒子表面から内部へ浸透し易くなる様に表面形状を改質できれば、二次電池としての初期効率やサイクル特性を大幅に改善できるのではないかと考え、その線に沿って研究を進めた。その結果、球状化黒鉛粒子を非酸化性雰囲気下で急速加熱および/または急速冷却して得られた球状化黒鉛粒子を、電極材料として使用すると、二次電池の初期効率およびサイクル特性が飛躍的に向上することをつきとめた。」
「【0040】
上記方法で得られた加熱処理後の球状化黒鉛粒子の酸性官能基量を調べたところ、酸性官能基量が2ミリ当量/kg以下の球状化黒鉛粒子を二次電池用電極材料として使用すると、二次電池の初期効率が良好になることが判明し、サイクル特性の向上が期待される。すなわち、球状化黒鉛粒子表面に存在する酸性官能基量が2ミリ当量/kg以下であれば、この球状化黒鉛粒子を二次電池用電極材料として使用しても、初回の充電時に酸性官能基と電解液の反応が殆ど生じないので、初期効率を高めることができる。酸性官能基量は、好ましくは0.5ミリ当量/kg以下に抑制するのが望ましい。なお、当量とは、酸性官能基の酸としての化学当量を意味する。また、酸性官能基量を所望量以下に抑制する方法については後述する。」
「【0054】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
中国産の鱗片状天然黒鉛(平均粒子径:40μm、純度:99%以上)をホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFGで球状化した。
【0056】
図1は、ホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFG(球状化黒鉛粒子を製造する装置)の概略説明図である。槽1の内部は円筒状であり、槽1の下部側には三個の対向ノズル3(ノズル内径:2.5mm)が中心を向く様に対向して配置されている。槽1の頂部には分級機4の一例として高速回転分級機を配置している。フィーダー2は槽1の側壁に設けられており、槽1の底部には吹き上げノズル5を設けている。なお、図1では、対向ノズルを一個のみ図示した。
【0057】
前記鱗片状天然黒鉛200gをフィーダー2から導入して、次に示す条件で球状化した。球状化条件は、対向ノズル3のノズル吐出空気圧:0.13MPa、操作時間:20分間、槽1内温度:30℃である。
【0058】
得られた球状化黒鉛粒子の平均粒径は20μmであり、これを分級による粒度調整をして平均粒径30μmとした。」
「【0060】
実験例2
球状化した黒鉛粒子(平均粒子径:30μm、純度:99%以上)群を、前記図2に示す装置で急速加熱および急速冷却して加熱処理した。
【0061】
球状化黒鉛粒子を経路11からホッパー6へ供給すると共に、経路12から非酸化性ガスとして窒素ガスを0.4MPa(30NL/min)で吹き込んで球状化黒鉛粒子を電気炉7へ送給する。電気炉7内は加熱源10で800℃に加熱されており、電気炉7へ導入された球状化黒鉛粒子は昇温速度200℃/sで急速加熱される。球状化黒鉛粒子は螺旋管9内を移動しつつ加熱され、電気炉7の下方から水槽8に貯められている蒸留水内へ導入される。この蒸留水は窒素ガスでバブリングして予め脱酸素処理したものであり、30℃に維持されている。このとき、電気炉7出側から水面までの距離は30cmであり、球状化黒鉛粒子は28m/sの速度で蒸留水中へ導入されるので、降温速度は70000℃/sで急速冷却される。また、水槽8内は前記経路12から供給される非酸化性ガスと同じガス(窒素ガス)で充填されている。
【0062】
急速冷却した球状化黒鉛粒子を乾燥させて平均粒子径を測定すると、30μmであった。急速冷却後の球状化黒鉛粒子群を、日本電子社製電子顕微鏡(装置名:JXA-733)を用いて600倍で観察した。球状化黒鉛粒子群を電子顕微鏡で撮影した図面代用写真を図4に示す。
【0063】
実験例3
球状化した黒鉛粒子(平均粒子径:30μm、純度:99%以上)群を、前記図2に示す装置で急速加熱したあと冷却した。但し、水槽8内は窒素ガスで充填されているが、水槽8内に蒸留水は貯められておらず、図示しないヒーターで800℃に保持されている。
【0064】
前記実験例2と同じ条件で電気炉7内において急速加熱された球状化黒鉛粒子は、電気炉7の下方から水槽8内へ導入されて回収される。球状化黒鉛粒子回収後、ヒーターの電源を切断して室温まで冷却(放冷)した。
【0065】
室温まで冷却した球状化黒鉛粒子の平均粒子径を測定すると、30μmであった。また、冷却後の球状化黒鉛粒子群を、日本電子社製電子顕微鏡(装置名:JXA-733)を用いて600倍で観察した。球状化黒鉛粒子群を電子顕微鏡で撮影した図面代用写真を図5に示す。」
「【0069】
【表1】
[図:0001431947000001.jpg]
【0070】
次に、上記実験例1~4で得られた球状化黒鉛粒子を二次電池用電極材料として用いて、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製し、負極の性能として初期効率とサイクル特性を評価した。
【0071】
リチウムイオン二次電池(コイン型)用の負極は、次に示す様に作成した。上記実験例1~4で得られた球状化黒鉛粒子100質量部に対して、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース1質量部およびスチレンブタジエンゴム粉末1質量部を混合し、これに純水100質量部を加えてスラリー状にした。得られたスラリーを厚さ18μmの銅箔上に塗布し、乾燥機(100℃)で15分間乾燥した。乾燥後の膜を直径1.6cmの円形に打ち抜いたのち、銅箔を除く塗布量を測定すると20mgであった。この膜をローラープレス機で、銅箔上に塗布した塗布物の密度が1.6g/ccとなるようにプレスしてリチウムイオン二次電池用の負極を作製した。」
イ 引用文献1に記載された技術事項
上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
(ア)【0008】の記載によれば、引用文献1に記載された二次電池用電極材料は、初期効率とサイクル特性に優れた二次電池を実現するために有用な二次電池用電極材料である。
(イ)【0055】、【0058】の記載によれば、実施例の球状化黒鉛粒子は、中国産の鱗片状天然黒鉛(平均粒子径:40μm、純度:99%以上)をホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFGで球状化し、これを分級による粒度調整をして平均粒径30μmとしたものである。
(ウ)【0061】、【0063】、【0064】の記載によれば、実験例3の球状化黒鉛粒子は、球状化した黒鉛粒子が、800℃に加熱された電気炉へ導入され、昇温速度200℃/sで急速加熱され、蒸留水は貯められておらず800℃に保持されている水槽内へ導入されて回収され、回収後室温まで冷却(放冷)されてなるものである。
(エ)【0069】の【表1】の記載によれば、実験例3の球状化黒鉛粒子の酸性官能基量は0.52ミリ当量/kgである。
(オ)【0070】、【0071】の記載によれば、実験例3で得られた球状化黒鉛粒子は、リチウムイオン二次電池用の負極材料である。
ウ 引用発明
上記イ(ア)ないし(オ)の技術事項を総合勘案すると、引用文献1には、実験例3の球状化黒鉛粒子として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「初期効率とサイクル特性に優れた二次電池を実現するために有用な二次電池用電極材料であって、
中国産の鱗片状天然黒鉛(平均粒子径:40μm、純度:99%以上)をホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFGで球状化し、これを分級による粒度調整をして平均粒径30μmとし、
球状化した黒鉛粒子が、800℃に加熱された電気炉へ導入され、昇温速度200℃/sで急速加熱され、蒸留水は貯められておらず800℃に保持されている水槽内へ導入されて回収され、回収後室温まで冷却(放冷)されて得られた球状化黒鉛粒子であり、
該球状化黒鉛粒子の酸性官能基量は0.52ミリ当量/kgである、
リチウムイオン二次電池用の負極材料の二次電池用電極材料。」
(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「球状化黒鉛粒子」は、本願発明の「炭素粒子」に相当する。
イ 引用発明の球状化黒鉛粒子に含まれる酸性官能基量は0.52ミリ当量/kgである。ここで、引用発明における酸性官能基を引用文献1の【0023】に例示されたカルボキシル基(分子量を約45、うち酸素分子量を約32)として、引用発明における球状化黒鉛粒子の酸素含有率に換算すると、約0.00166重量%となる。仮に引用発明における酸性官能基が上記カルボキシル基以外(フェノール基、ラクトン基、カルボニル基)であったとしても、これら酸性官能基に含まれる酸素分子量からみて、引用発明の球状化黒鉛粒子の酸素含有率は0.15重量%以下であるといえる。
したがって、引用発明の酸素官能基量が0.52ミリ当量/kgである球状黒鉛化粒子の酸素含有率は、本願発明で特定する「0.15質量%以下」の範囲に含まれるものと認められる。
ウ 引用発明の「二次電池用電極材料」はリチウムイオン二次電池用の負極材料であるから、本願発明の「リチウムイオン二次電池用負極材」に相当する。
エ 以上のことより、本願発明と引用発明は、
「酸素含有率が0.15質量%以下の炭素粒子を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。」
である点で一致し、相違するところがない。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。
3-2 理由2(進歩性)について
上記「3-1」のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、引用発明の球状黒鉛化粒子の酸性含有率は、本願発明で特定する「0.15質量%以下」の範囲に含まれるが、本願発明のように「酸素含有率が0.15質量%以下」と特定することについて予備的に検討しておく。
上記「3-1(1)ア」に摘記したように、引用文献1の段落【0023】、【0025】には、球状化黒鉛粒子の表面に多量の酸性官能基が存在すると、該官能基が電解液と反応して初期効率の低下に大きく影響を及ぼすので、球状化黒鉛粒子表面に存在する酸性官能基を所定量以下に抑制し二次電池としての初期効率を改善することが記載され、また、段落【0040】には、球状化黒鉛粒子表面に存在する酸性官能基が2ミリ当量/kg以下であれば、二次電池用電極材として使用しても電解液の反応が殆ど生じないので初期効率を高めることができ、好ましくは0.5ミリ当量/kg以下に抑制するのが望ましいことが記載されており、当業者は、引用発明において球状化黒鉛粒子の酸性官能基量は可能な限り少なくするべきであると理解するものと認められる。
してみると、引用発明において球状化黒鉛粒子の酸性官能基量を可能な限り少なくし当該粒子の酸素含有率を0.15質量%以下とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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