特許拒絶査定不服審判
2023-006154
二次電池
- 審判番号
- 2023-006154
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-550491
- 請求日
- 2023年04月14日
- 審決日
- 2024年05月01日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【請求人代理人】弁理士法人つばさ国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 篠原 功一
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 小池 秀介
- 分類
- P18 .113-Z (H01M) / P18 .121-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-550491「二次電池」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日国際公開、WO2021/065334〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年9月4日(優先権主張2019年9月30日 日本国(JP))の国際出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月27日付け:拒絶理由通知
令和4年11月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12年27日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年 4月14日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年4月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年4月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「正極および負極を含む電池素子と、
前記電池素子を内部に収納すると共に前記電池素子が配置されない空間を内部に有し、かしめ部を有しない外装部材と、
前記正極および前記負極のうちの一方に接続され、前記外装部材から露出すると共に少なくとも一部が前記外装部材の内部に位置するように前記外装部材に設けられ、前記外装部材の内部に位置する部分において最大径を有する箇所が前記空間の内部に配置された電極端子と
を備え、
前記外装部材は、貫通孔を有し、
前記電極端子は、
前記貫通孔に配置されると共に、前記貫通孔の内径よりも小さい外径を有する第1端子部と、
前記電極端子が前記外装部材の内部に向かう方向における前記第1端子部の両端に連結されると共に、前記貫通孔の内径よりも大きい外径を有する第2端子部および第3端子部と
を含み、
前記第2端子部は、前記外装部材から露出し、
前記第3端子部は、前記外装部材の内部に位置し、
前記電池素子は、さらに、セパレータを含み、
前記正極および前記負極は、前記セパレータを介して巻回されており、
前記電池素子は、巻芯部に巻回中心空間を有し、
前記空間は、前記巻回中心空間であり、
前記外装部材は、
開口部を有すると共に前記電池素子を収納する収納部と、
前記開口部を遮蔽すると共に前記貫通孔を有する蓋部と
を含み、
前記蓋部は、板状であり、
前記第3端子部は、前記巻回中心空間の内部に配置されており、
前記第1端子部は、前記巻回中心空間の内部に配置されていない、
二次電池。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和4年11月30日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「正極および負極を含む電池素子と、
前記電池素子を内部に収納すると共に前記電池素子が配置されない空間を内部に有し、かしめ部を有しない外装部材と、
前記正極および前記負極のうちの一方に接続され、前記外装部材から露出すると共に少なくとも一部が前記外装部材の内部に位置するように前記外装部材に設けられ、前記外装部材の内部に位置する部分において最大径を有する箇所が前記空間の内部に配置された電極端子と
を備え、
前記外装部材は、貫通孔を有し、
前記電極端子は、
前記貫通孔に配置されると共に、前記貫通孔の内径よりも小さい外径を有する第1端子部と、
前記電極端子が前記外装部材の内部に向かう方向における前記第1端子部の両端に連結されると共に、前記貫通孔の内径よりも大きい外径を有する第2端子部および第3端子部と
を含み、
前記電池素子は、さらに、セパレータを含み、
前記正極および前記負極は、前記セパレータを介して巻回されており、
前記電池素子は、巻芯部に巻回中心空間を有し、
前記空間は、前記巻回中心空間である、
二次電池。」
2 補正の適否
請求項1に係る本件補正は、以下の補正事項を含むものである。
ア 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2端子部」について「外装部材から露出し」との限定を付加する。
イ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第3端子部」について、「外装部材の内部に位置し」、「巻回中心空間の内部に配置されており」との限定を付加する。
ウ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「外装部材」について、「開口部を有すると共に前記電池素子を収納する収納部と、前記開口部を遮蔽すると共に前記貫通孔を有する蓋部とを含み、前記蓋部は、板状であり」との限定を付加する。
エ 本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1端子部」について、「巻回中心空間の内部に配置されていない」との限定を付加する。
上記補正事項アないしエは、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を限定するものであって、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正による請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、請求項1に係る本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項、引用発明
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献(中国実用新案第204596910号明細書)には、図面とともに、次の記載がある。また、当審における仮訳を付記する。(下線は当審で付加した。)
「
[図:0001411953000001.jpg]
」
(当審仮訳:
[0001] 本実用新案はリチウムイオン電池の製造分野に関し、具体的にはボタン型リチウムイオン二次電池に関する。
「
[図:0001411953000002.jpg]
[図:0001411953000003.jpg]
」
(当審仮訳:
[0002] ボタン電池は金属の底部缶及び頂部缶を組み合わせることで構成されるチャンバ構造である。底部缶は通常は正極につながっており、頂部缶は通常は負極につながっている。底部缶と頂部缶との間は一層のプラスチックガスケット(通常はポリプロピレン)で隔てられる。ガスケットは密封と絶縁の機能を同時に果たす。密封すると、底部缶の縁が機械力の押圧を受けて内向きに反り、頂部缶と共に包み込むことで密閉缶体を形成する。具体的な例はUS6569564を参照されたい。
[0003] 通常は、ボタン電池の缶体内部は単層の正極板、セパレータ紙及び負極板で組成される「サンドイッチ」構造のセルであり、セルは缶体の上下の底面に対して平行となるように水平に配置される。この方法で製造されたボタン電池は容量が非常に限定される。特許US20120028110A1では小さい円柱形のロール状セルを有する高容量のボタン電池について記述しており、セルの電極板及びセパレータは缶体の上下の底面に対して垂直である。従来は、ボタン電池の密封過程で軸方向の機械力が加えられ、機械的な作用により小さい円柱形のセルの変形を引き起こし、それにより電池の不良品を生じさせる。改良後の密封方法では底部缶の側面底部で単純な径方向の機械力を加え、底部缶の側面と頂部缶の縁との間のガスケットを押圧して密封することで、この過程での機械力によるロール状セルへの破壊作用を効果的に回避する。
[0004] アルミ缶電池及び円柱状電池はいずれも金属の外装缶を採用し、ポリマーのソフトパック電池と比較して、電池内部にガスが生じることで引き起こされる外在的なサイズの変化を一定の程度で回避することができる。しかし、円柱形電池の頂部ユニットは一定の空間を占める必要があり、高さ方向にそれ自体の設計制限が存在する。アルミ缶電池は堅固な外装缶と大きいセル空間を兼ね備え、ソフトパック電池及び円柱形電池のそれぞれの欠点を効果的に回避することができ、その組み立て技術はボタン電池の設計及び製造の参考にされて応用され、高容量ボタン電池を製造する代替的な選択肢となる。」
「
[図:0001411953000004.jpg]
[図:0001411953000005.jpg]
」
(当審仮訳:
[0024] 本実用新案の有益な効果は以下のとおりである。柱状補助装置を設置し、柱状補助装置の頂部に予め残しておいた裂け目を有するようにするか、又はそれと同時に中間に沿ってスリットを下向きに設けることにより、様々なロール方式で、柱状補助装置をロール状セル内に挿入しやすくし、その材質はポリプロピレンなどの絶縁材料とすることができる。柱状補助装置は巻く前にロール針に被せてから巻き、巻き終わった後のセルを針から簡単に外すことができ、巻き終わった後に柱状補助装置をセルの中心に挿入することもできる。一方では、柱状補助装置はセルの構造を支持し、電池の組み立て過程でセルが緩んで脱落することを防止する。他方では、柱状補助装置の使用は頂部キャップと底部カップを合わせるのに有利であり、頂部キャップの底部の突出部分は柱状補助装置をセルの内部に容易に挿入すると同時に、セルを缶体内部の位置に一定の程度で固定することができる。柱状補助装置の頂部に予め残しておいた裂け目はセルの中心の導通片を、ホースを経由して電池の外装缶に接続させやすくするためのものであり、導通片は柱状補助装置の内部で折り畳むことができる。このようにすることで高さ空間に影響する対象を中央のホース内に導入し、高さ空間を最大限に活用することができる。
[0025] アルミ缶電池の組み立て技術を改良し、本実用新案が特殊な構造の内部設計を有することにより、セルのためにより大きな利用可能空間を生み出すことで、ボタン電池の容量を顕著に高めることができる。ボタン電池の頂部キャップと底部カップは非機械方式(レーザ溶接技術)で密封接続される。頂部キャップは、中央突出部分が電池である一方の極、外周の環状薄片が電池である他方の極という二つの部分で組成される。二つの部分の間は絶縁プラスチップフィルムで隔てられ、リベット構造で二つの部分を一体に緊密に接続することで頂部キャップが形成される。頂部キャップの外周の環状薄片に底部カップと同じ材料を使用することで、溶接密封を行いやすくする。)
「
[図:0001411953000006.jpg]
」
(当審仮訳:
[0027] 図1は本実用新案の柱状補助装置の構造模式図である。
[0028] 図2は本実用新案の実施例1の構造模式図である。
[0029] 図3は本実用新案の実施例2の構造模式図である。
[0030] 図中:1a.中心柱状部材、1b.絶縁パッド、1c.円形キャップ、2.底部カップ
[0031] 3.頂部キャップ配置位置、4.セル、5.頂部絶縁ガスケット、6.底部絶縁ガスケット
[0032] 7.注液孔、8.座ぐり穴構造、9.柱状補助装置、10.正極板
[0033] 11.負極板、12.バイメタル片)
「
[図:0001411953000007.jpg]
[図:0001411953000008.jpg]
」
(当審仮訳:
[0034] 実施例1:図1及び図2のとおり、本実施例ではボタン型リチウムイオン二次電池を提供し、電池外装缶、及び外装缶内部に設けられるセル4と電解液を含み、前記セル4は円柱形セルであり、且つセル4の中心に内部が中空の柱状補助装置9が設けられ、前記外装缶が頂部キャップアセンブリ及び底部カップ2を含み、且つ底部カップ2の開口箇所に頂部キャップ配置位置3が設けられ、前記頂部キャップアセンブリと底部カップ2が溶接により固定され、前記セル4の両極が導通片を介して頂部キャップアセンブリ及び底部カップ2にそれぞれ接続され、外装缶にさらに注液孔7が設けられる。
[0035] 前記頂部キャップアセンブリが中心柱状部材1a及び中央に貫通孔が設けられた円形キャップ1cを含み、前記中心柱状部材1aが円形キャップ1cの貫通孔の箇所に設けられ、且つ中心柱状部材1aと円形キャップ1cとの間に絶縁パッド1bが設けられ、前記中心柱状部材1aの中央部の直径が両端の直径よりも小さいか、又は上端と下端の大きさが同じであり、係止位置を形成し、且つ中心柱状部材1aの下端が前記柱状補助装置9内に位置し、前記円形キャップ1cの貫通孔の周囲に、前記係止位置に組み合わせる係止部材が設けられ、且つ該係止部材の上部に中心柱状部材1a及び絶縁パッド1b配置位置が設けられる。
[0036] 中心柱状部材1aに使用するのはステンレスである。円形キャップ1c及び底部カップ2には同じ金属材料を使用し、ステンレス又はアルミニウムとすることができ、好ましくはアルミニウムとする。円形キャップ及び底部カップに使用する材質により、正極と負極の導通片の配置及びそれらを電池外装缶に接続する方式が決定される。材質がアルミニウムである場合、負極の導通片がセルの中心にあり、中心柱状部材に上向きに接続され、正極の導通片がセルの外周又は中央部にあり、中心に向かって折れ曲がってから底部カップの底部に接続される。材質がステンレスである場合、正極と負極の導通片、及び導通片と缶体の接続方式がちょうど入れ替わりとなる。導通片と缶体との接続はスポット溶接、超音波又はレーザ溶接などの方法で実現される。
[0037] 前記柱状補助装置9が中空管であり、該柱状補助装置の一側に開口が設けられ、且つ該開口の上端が下端よりも大きく、前記導通片が上端の開口から柱状補助装置9内に入り込み、頂部キャップの中心柱状部材1aに接続される。
[0038] 前記セルが正極板10、負極板11及びセパレータをロール機で巻くことで形成され、ここで、前記セパレータが正極板10と負極板11との間に設けられ、且つセルの最外層がセパレータであり、セルの上下両端と外装缶との接触部にいずれも絶縁ガスケットが設けられ、且つ底部カップの底部又は頂部キャップにさらに座ぐり穴構造8が設けられる。)
「図1
[図:0001411953000009.jpg]
「図2
[図:0001411953000010.jpg]
(当審注:段落[0035]に記載によれば、図2における「1c」は「1b」の誤記であり、「1b」は「1c」の誤記と認める。)
イ 上記記載から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)段落[0001]によれば、引用文献には、ボタン型リチウムイオン二次電池についての発明が記載されている。
(イ)段落[0034]によれば、ボタン型リチウムイオン二次電池は、電池外装缶、及び外装缶内部に設けられるセル4と電解液を含む。
(ウ)段落[0034]によれば、セル4は円柱形セルであり、且つセル4の中心に内部が中空の柱状補助装置9が設けられ、[0038]によれば、セルは正極板10、負極板11及びセパレータをロール機で巻くことで形成され、セパレータが正極板10と負極板11との間に設けられる。
(エ)段落[0034]によれば、外装缶は頂部キャップアセンブリ及び底部カップ2を含み、且つ底部カップ2の開口箇所に頂部キャップ配置位置3が設けられ、前記頂部キャップアセンブリと底部カップ2は溶接により固定される。また、段落[0035]によれば、頂部キャップアセンブリは中心柱状部材1a及び中央に貫通孔が設けられた円形キャップ1cを含む。
そして、図2によれば、円形キャップ1cは板状の部材からなり、円形キャップ1cと底部カップ2が溶接により固定され、底部カップ2にはセル4が収納されていることが見て取れる。
してみると、外装缶は、板状の部材である円形キャップ1c、中心柱状部材1a及びセル4が収納された底部カップ2を含み、底部カップ2の開口箇所に頂部キャップ配置位置3が設けられ、前記円形キャップ1cと底部カップ2は溶接により固定されるといえる。
(オ)段落[0035]によれば、頂部キャップアセンブリが中心柱状部材1a及び中央に貫通孔が設けられた円形キャップ1cを含み、前記中心柱状部材1aが円形キャップ1cの貫通孔の箇所に設けられ、且つ中心柱状部材1aと円形キャップ1cとの間に絶縁パッド1bが設けられる。
してみると、円形キャップ1cは中央に貫通孔が設けられ、該貫通孔の箇所に中心柱状部材が設けられ、中心柱状部材と円形キャップ1cとの間に絶縁パッドが設けられるといえる。
(カ)段落[0035]によれば、中心柱状部材1aの中央部の直径が両端の直径よりも小さく、又は上端と下端の大きさが同じであり、中心柱状部材1aの下端が前記柱状補助装置9内に位置し、段落[0036]によれば、中心柱状部材1aはステンレスが使用される。
また、図2によれば、中心柱状部材1aは、円形キャップ1cの中央の貫通孔内に位置する中央部と、中央部の上端側に位置しその上面が外部に露出した上端部と、中央部の下端側に位置し、柱状補助装置内に配置された下端部とが一体に構成されていることが見て取れる。
そして、図2によれば、中心柱状部材の中央部の直径は、上端部と下端部との直径及び貫通孔の内径より小さく、上端部と下端部との直径は貫通孔の内径より大きいことが見て取れる。
(キ)段落[0034]によれば、セル4の両極が導通片を介して頂部キャップアセンブリ及び底部カップ2にそれぞれ接続されるところ、段落[0036]によれば、負極の導通片が中心柱状部材に接続され、正極の導通片が底部カップの底部に接続され、段落[0037]によれば、柱状補助装置の一側に開口が設けられ、導通片が該開口から柱状補助装置9内に入り込み、中心柱状部材1aに接続される。
(ク)段落[0038]によれば、セルの上下両端と外装缶との接触部にいずれも絶縁ガスケットが設けられる。
(ケ)段落[0034]によれば、円柱形セルであるセル4の中心に内部が中空の柱状補助装置9が設けられ、段落[0035]によれば、中心柱状部材1aの下端が柱状補助装置9内に位置するところ、図2によれば、柱状補助装置9内におけるセル4の上端に対応する位置からセル4の下端に対応する位置までの空間内に中心柱状部材1aの下端部及び中心部の一部が位置することが見て取れる。
ウ 上記イから、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電池外装缶、及び外装缶内部に設けられるセルと電解液を含むボタン型リチウムイオン二次電池であって、
セルは、正極板、負極板、及び、正極板と負極板との間に設けられるセパレータをロール機で巻くことで形成された円柱形セルであり、その中心に内部が中空の柱状補助装置が設けられ、
外装缶は、板状の部材である円形キャップ、中心柱状部材及びセルが収納された底部カップを含み、底部カップの開口箇所に頂部キャップ配置位置が設けられ、前記円形キャップと底部カップは溶接により固定され、
円形キャップは中央に貫通孔が設けられ、該貫通孔の箇所に中心柱状部材が設けられ、中心柱状部材と円形キャップとの間に絶縁パッドが設けられ、
前記中心柱状部材は、ステンレスが使用され、円形キャップの中央の貫通孔内に位置する中央部と、中央部の上端側に位置しその上面が外部に露出した上端部と、中央部の下端側に位置し柱状補助装置内に配置された下端部とが一体に構成され、
中心柱状部材の中央部の直径は、上端部と下端部との直径及び貫通孔の内径より小さく、上端部と下端部との直径は貫通孔の内径より大きく、
セルの負極の導通片が柱状補助装置の一側に設けられた開口から柱状補助装置内に入り込み中心柱状部材に接続され、正極の導通片が底部カップの底部に接続され、
セルの上下両端と外装缶との接触部にいずれも絶縁ガスケットが設けられ、
柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内に中心柱状部材の下端部及び中央部の一部が位置する、
ボタン型リチウムイオン二次電池。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「セルは、正極板、負極板、及び、正極板と負極板との間に設けられるセパレータをロール機で巻くことで形成された円柱形セルであ」ることから、本件補正発明の「正極および負極を含む電池素子」に相当する。
(イ)引用発明では、「外装缶内部に」「セル」が設けられ、「セル」の「中心に内部が中空の柱状補助装置が設けられ」ており、中空の柱状補助装置が設けられている空間には、セルが配置されていないといえることから、引用発明の「外装缶」は「セル」が配置されない空間を内部に有しているといえる。
また、引用発明の「外装缶」は、「円形キャップと底部カップ」が「溶接により固定され」たものであるから、かしめ部を有していないといえる。
してみると、引用発明の「外装缶」は、「内部に」「セル」が設けられ、「セル」が配置されない空間を「内部」に有し、「円形キャップと底部カップ」が「溶接により固定され」ており、当該「外装缶」は、本件補正発明の「前記電池素子を内部に収納すると共に前記電池素子が配置されない空間を内部に有し、かしめ部を有しない外装部材」に相当する。
(ウ)引用発明の「中心柱状部材」は「セルの負極の導通片」に接続される。
また、引用発明の「中心柱状部材」は、その「上端部」が「上面が外部に露出し」、「下端部」が「柱状補助装置内に配置され」るように、「円形キャップ」に設けられる。
そして、引用発明の「中心柱状部材」における「柱補助部材内に配置された下端部」は、「中心柱状部材」の「中央部」より大きい直径であり、「柱補助部材内」に位置する部分では最大径を有しているといえ、上記「柱補助部材内」は「セル」が配置されない空間であるといえる。
さらに、引用発明の「セルの負極の導通片」に接続される「中心柱状部材」は、ボタン型リチウムイオン二次電池の負極側端子であることは明らかである。
してみれば、引用発明において、「セルの負極の導通片」に接続され、「上端部」が「上面が外部に露出し」、「下端部」が「柱状補助装置内に配置され」るように、「円形キャップ」に設けられ、「柱補助部材内」に位置する部分において最大径を有する「下端部」が「セル」が配置されない空間内に配置される「中心柱状部材」は、本件補正発明の「負極」「に接続され、前記外装部材から露出すると共に少なくとも一部が前記外装部材の内部に位置するように前記外装部材に設けられ、前記外装部材の内部に位置する部分において最大径を有する箇所が前記空間(電池素子が配置されない空間)の内部に配置された電極端子」に相当する。
(エ)引用発明の「外装缶」に含まれる「円形キャップ」の「中央に貫通孔が設けられ」ることは、本件補正発明の「前記外装部材は、貫通孔を有」することに相当する。
(オ)引用発明における「中心柱状部材」の「円形キャップの中央の貫通孔内に位置」し、該「貫通孔の内径よりも小さ」い「直径」を有する「中央部」は、本件補正発明の「貫通孔に配置されると共に、前記貫通孔の内径よりも小さい外径を有する第1端子部」に相当する。
そして、引用発明における「中心柱状部材」の「上端部」は「中央部の上端側に位置しその上面が外部に露出し」、「下端部」は「中央部の下端側に位置し柱状補助装置内に配置され」、該「上端部」及び「下端部」は「中央部」と一体に構成されることから、該「上端部」及び「下端部」は「外部」から「柱状補助部材内」の方向において「中央部」の両端に連結されているといえる。
また、引用発明において、該「上端部と下端部との直径は貫通孔の内径より大き」い。
してみれば、「外部」から「柱状補助部材内」の方向において「中央部」の両端に連結され、「貫通孔の内径より大き」い「直径」を有する引用発明の「中心柱状部材」の「上端部」および「下端部」は、本件補正発明の「前記電極端子が前記外装部材の内部に向かう方向における前記第1端子部の両端に連結されると共に、前記貫通孔の内径よりも大きい外径を有する第2端子部および第3端子部」に相当する。
よって、引用発明における「中心柱状部材」が、「円形キャップの中央の貫通孔内に位置」し、該「貫通孔の内径よりも小さ」い「直径」を有する「中央部」と、「外部」から「柱状補助部材内」の方向において「中央部」の両端に連結され、「貫通孔の内径より大き」い「直径」を有する「上端部」および「下端部」とを含むことは、本件補正発明の「前記電極端子は、前記貫通孔に配置されると共に、前記貫通孔の内径よりも小さい外径を有する第1端子部と、前記電極端子が前記外装部材の内部に向かう方向における前記第1端子部の両端に連結されると共に、前記貫通孔の内径よりも大きい外径を有する第2端子部および第3端子部とを含」むことに相当する。
(カ)引用発明の「上端部」の「上面が外部に露出」することは、本件補正発明の「前記第2端子部は、前記外装部材から露出」することに相当する。
(キ)引用発明の「下端部」は「柱状補助装置内に配置され」、該「柱状補助装置」は「セル」の「中心に」「設けられ」、該「セル」は「外装缶内部に設けられる」から、該「下端部」は「外装缶内部」に位置しているといえ、本件補正発明の「前記第3端子部は、前記外装部材の内部に位置」することに相当する。
(ク)引用発明の「セル」は「正極板、負極板、及び、正極板と負極板との間に設けられるセパレータをロール機で巻くことで形成された円柱形セルであ」るから、該「セル」は、「セパレータ」を含み、「正極板」および「負極板」は「セパレータ」を介して巻回しているといえ、本件補正発明の「前記電池素子は、さらに、セパレータを含み、前記正極および前記負極は、前記セパレータを介して巻回されて」いることに相当する。
(ケ)引用発明では、「柱状補助装置内に」は「セルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間」が存在するところ、「柱状補助装置」は、「正極板、負極板、及び、正極板と負極板との間に設けられるセパレータをロール機で巻くことで形成された円柱形セルであ」る「セル」「の中心に」「設けられ」ているから、該「柱状補助装置」における「セルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間」は、「セルの巻芯部分の中心に存在するといえる。
また、該「セルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間」は、「セル」が配置されない空間といえる。
そして、本件補正発明の「巻回中心空間」に関し、本願明細書の段落【0037】には、「この電池素子20は、巻回中心空間20Kを有している。すなわち、電池素子20では、正極21、負極22およびセパレータ23が巻回されているため、巻芯部に正極21、負極22およびセパレータ23により巻回中心空間20Kが形成されている。この巻回中心空間20Kは、巻芯部であることに起因して正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれが存在していない空間である。」と記載され、また、審判請求人は、令和5年4月14日提出の審判請求書における「なお、第1端子部が巻回中心空間の内部に配置されておらずに第3端子部のみが巻回中心空間の内部に配置されていることは、出願当初の図面(図2および図4)の図示内容からも明らかである。」(3頁12ないし14行を参照)と主張しており、本願図2も参照すれば、該「巻回中心空間」とは、「電池素子20」の巻芯部における「電池素子20」の上端及び下端間の空間であるといえる。
してみれば、引用発明における「セル」の巻芯部分の中心に「セルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間」が存在し、該空間は、「セル」が配置されない空間であることは、本件補正発明の「前記電池素子は、巻芯部に巻回中心空間を有し、前記空間(電池素子が配置されない空間)は、前記巻回中心空間であ」ることに相当する。
(コ)引用発明の「開口」を有し「セルが収納された底部カップ」は、本件補正発明の「開口部を有すると共に前記電池素子を収納する収納部」に相当する。
また、引用発明の「底部カップの開口箇所に」「設けられ」「底部カップ」と「溶接により固定される」とともに「中央に貫通孔が設けられ」る「円形キャップ」は、本件補正発明の「前記開口部を遮蔽すると共に前記貫通孔を有する蓋部」に相当する。
してみると、「円形キャップ」及び「底部カップ」を含む引用発明の「外装缶」は、本件補正発明の「前記前記外装部材は、開口部を有すると共に前記電池素子を収納する収納部と、前記開口部を遮蔽すると共に前記貫通孔を有する蓋部とを含」むことに相当する。
(サ)引用発明の「円形キャップ」が「板状の部材からな」ることは、本件補正発明の「蓋部は、板状であ」ることに相当する。
(シ)引用発明において「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内に中心柱状部材の下端部」「が位置する」ことは、上記(オ)及び(ケ)も踏まえれば、本件補正発明の「前記第3端子部は、前記巻回中心空間の内部に配置されて」いることに相当する。
(ス)本件補正発明は、「第1端子部」は「前記巻回中心空間の内部」に「配置されていない」のに対し、引用発明は、「中心部」は「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内」にその「一部が位置する」点で相違する。
(セ)引用発明の「ボタン型リチウムイオン二次電池」は、本件補正発明の「二次電池」に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「正極および負極を含む電池素子と、
前記電池素子を内部に収納すると共に前記電池素子が配置されない空間を内部に有し、かしめ部を有しない外装部材と、
前記負極に接続され、前記外装部材から露出すると共に少なくとも一部が前記外装部材の内部に位置するように前記外装部材に設けられ、前記外装部材の内部に位置する部分において最大径を有する箇所が前記空間の内部に配置された電極端子と
を備え、
前記外装部材は、貫通孔を有し、
前記電極端子は、
前記貫通孔に配置されると共に、前記貫通孔の内径よりも小さい外径を有する第1端子部と、
前記電極端子が前記外装部材の内部に向かう方向における前記第1端子部の両端に連結されると共に、前記貫通孔の内径よりも大きい外径を有する第2端子部および第3端子部と
を含み、
前記第2端子部は、前記外装部材から露出し、
前記第3端子部は、前記外装部材の内部に位置し、
前記電池素子は、さらに、セパレータを含み、
前記正極および前記負極は、前記セパレータを介して巻回されており、
前記電池素子は、巻芯部に巻回中心空間を有し、
前記空間は、前記巻回中心空間であり、
前記外装部材は、
開口部を有すると共に前記電池素子を収納する収納部と、
前記開口部を遮蔽すると共に前記貫通孔を有する蓋部と
を含み、
前記蓋部は、板状であり、
前記第3端子部は、前記巻回中心空間の内部に配置されている、
二次電池。」
[相違点]
本件補正発明は、「第1端子部」は「前記巻回中心空間の内部」に「配置されていない」のに対し、引用発明は、「中央部」は「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内」にその「一部が位置する」点。
(4)相違点に対する判断
引用発明の「中心柱状部材」において、「中央部の下端側に位置し柱状補助装置内に配置された下端部」は、「中央部」より「直径」が大きく、「中央部」と「一体に構成され」、「中心柱状部材と円形キャップとの間に絶縁パッドが設けられ」ることから、「下端部」の面と「円形キャップ」の「底部カップの開口」側の面との間には「絶縁パッド」が介在し、その「絶縁パッド」の厚さ分に相当する「中央部」の一部が、「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内」に入り込むと解される。
しかし、引用文献の段落[0002]の「ガスケットは密封と絶縁の機能を同時に果たす。」、同段落[0003]の「通常は、ボタン電池の缶体内部は単層の正極板、セパレータ紙及び負極板で組成される「サンドイッチ」構造のセルであり、セルは缶体の上下の底面に対して平行となるように水平に配置される。この方法で製造されたボタン電池は容量が非常に限定される。」、同段落[0004]の「円柱形電池の頂部ユニットは一定の空間を占める必要があり、高さ方向にそれ自体の設計制限が存在する。アルミ缶電池は堅固な外装缶と大きいセル空間を兼ね備え、ソフトパック電池及び円柱形電池のそれぞれの欠点を効果的に回避することができ、その組み立て技術はボタン電池の設計及び製造の参考にされて応用され、高容量ボタン電池を製造する代替的な選択肢となる。」、同段落[0025]の「アルミ缶電池の組み立て技術を改良し、本実用新案が特殊な構造の内部設計を有することにより、セルのためにより大きな利用可能空間を生み出すことで、ボタン電池の容量を顕著に高めることができる。」との各記載及び技術常識を鑑みれば、引用発明における「セル」の上端の高さ、即ち、「セル」の幅や、「セルの上」「端と外装缶との接触部に」「設けられ」る「絶縁ガスケット」の厚み、及び、「下端部」と「円形キャップ」との間の「絶縁パッド」の厚みは、要求される電池容量やガスケットの絶縁性・封止性等に応じて適宜設定されるものといえる。
そして、引用発明において、「セルの上端」が「円形キャップ」の下面から「絶縁パッド」の厚さ以上に下に位置する程度に「セル」の幅を設定した場合、「中央部」は「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内」に位置することはなく、また、「絶縁ガスケット」の厚みを「絶縁パッド」の厚み以上とした場合も、「中央部」は「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内」に位置することはない。
よって、引用発明の「中央部」が「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間」に配置されないようにすることに格別な困難はなく、相違点に係る構成は、引用発明に基づいて当業者が容易になし得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果も、当業者が引用発明並びに引用文献の記載事項に基づいて予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。
ウ 以上から、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、令和5年4月14日提出の審判請求書において、「理由2(特許法第29条第2項の規定)」に対し、概略以下のように主張する。
蓋部が平坦な板状の部材ではなく、その蓋部に電極端子(第2端子部)を収容するための窪みを設けられているため、その蓋部の厚さが増加する。この場合には、蓋部の厚さの増加に応じて二次電池の高さHが増加するため、その高さHを一定とした場合において素子空間体積が減少する。これにより、素子空間体積が増加するという本願発明の作用が得られない。
しかも、電極端子のうちの第3端子部だけでなく第1端子部の一部まで巻回中心空間の内部に配置されているため、大外径の第3端子部が蓋部から遠ざかる。
この場合には、第3端子部が蓋部に押し付けられにくくなるため、その蓋部に対する第3端子部の押圧力を利用して電極端子が蓋部に固定されにくくなる。これにより、蓋部に対する第3端子部の押圧力を利用して電極端子が蓋部に固定されやすくなるという本願発明の作用も得られない。
(5頁16行ないし下から3行を参照)
イ 審判請求人の前記主張について検討する。
本件補正発明は、「蓋部」が「平坦な板状」の部材であるとは特定されていないことから、審判請求人の「蓋部」に係る主張は特許請求の範囲に基づくものとはいえない。
また、本願図面である図2、図4によれば、ガスケット40の厚さ分に相当する「第1端子部31」の一部が収納部11に入り込み、「第3端子部33」が蓋部12より遠ざかることが見て取れ、審判請求人の主張に基づけば、本件補正発明においても、「この場合には、第3端子部が蓋部に押し付けられにくくなるため、その蓋部に対する第3端子部の押圧力を利用して電極端子が蓋部に固定されにくくなる。これにより、蓋部に対する第3端子部の押圧力を利用して電極端子が蓋部に固定されやすくなるという本願発明の作用も得られない」こととなる。
一方、本願明細書の段落【0056】には「また、電池缶10に対する端子部32の押圧力および電池缶10に対する端子部33の押圧力を利用して、電極端子30が電池缶10に固定されるからである。これにより、電極端子30が電池缶10から脱落しにくくなる。」と記載されていることから、ガスケット40の厚さ分第1端子部31が収納部11に入り込み、第3端子部33が蓋部12より遠ざかるとしても、電極端子が蓋部に固定されにくくなるとは認められない。
以上のことより、引用発明においても、「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間内に中心柱状部材の」「中央部の一部」が入り込み、「下端部」が「円形キャップ」より遠ざかるとしても、「中心柱状部材」が「円形キャップ」に固定されにくくなるとは認められない。
なお、引用発明において、「絶縁パッド」の厚さ分に相当する「中央部」の一部が「柱状補助装置内におけるセルの上端に対応する位置からセルの下端に対応する位置までの空間」に入り込み、「中心柱状部材」の「下端部」が「円形キャップ」から遠ざかるとしても、該「下端部」が「円形キャップ」に押し付けられにくくなる理由が不明であるし、それを裏付ける証拠も提出されていない。
さらに、引用発明は「電池外装缶、及び外装缶内部に設けられるセルと電解液を含むボタン型リチウムイオン二次電池」であるところ、電解液の漏れ等を考慮すれば、引用発明においても「下端部」からの所定の押圧力を利用して「中心柱状部材」が「円形キャップ」に固定されていると解される。
よって、審判請求人の主張は採用できない。
(6)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上から、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年4月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和4年11月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりのものである。
「理由1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の引用文献1又は引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定 により特許を受けることができない。」というものである。
<引用文献等一覧>
1.中国実用新案第204596910号明細書
3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献、及び引用発明は、前記「第2 [理由2]2(2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記「第2 [理由]2」の「ア」ないし「エ」で検討した本件補正発明の発明特定事項である「第2端子部」について、「外装部材から露出し」との限定を省き、同じく発明特定事項である「第3端子部」について、「外装部材の内部に位置し」、「巻回中心空間の内部に配置されており」との限定を省き、同じく発明特定事項である「外装部材」について、「開口部を有すると共に前記電池素子を収納する収納部と、前記開口部を遮蔽すると共に前記貫通孔を有する蓋部とを含み、前記蓋部は、板状であり」との限定を省き、同じく発明特定事項である「第1端子部」について、「巻回中心空間の内部に配置されていない」との限定を省いたものに相当する。
そして、「第1端子部」についての「巻回中心空間の内部に配置されていない」との限定は、本件補正発明と引用発明との相違点に相当し、当該限定を省いた本願発明は、上記「第2 [理由]2(3)ア」も踏まえれば、引用発明であるといえる。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-006154