2021-701017
インクジェット記録方法
- 審判番号
- 2021-701017
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-194847外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6881836
- 請求日
- 2021年10月22日
- 審決日
- 2022年11月22日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第2条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 8項目
第1 手続の経緯
折りたたみ中(クリックで表示)
特許第6881836号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成28年9月30日(優先権主張 平成27年10月7日 日本国)を国際出願日とするものであって、令和3年5月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月2日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についての異議申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和3年10月22日 特許異議申立人である平居博美による特許異議の申立て
令和4年3月30日付け 取消理由通知
同年5月31日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年6月7日付け 訂正請求があった旨の通知
同年7月5日 意見書の提出(特許異議申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の主旨及び内容
令和4年5月31日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の請求の主旨は、「特許第6881836号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項1~4を含むものである。(当審が、訂正箇所に下線を付した。)
訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、該酸化チタンの含有量が、水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、」
と記載されているのを、
「ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、該酸化チタンの含有量が、水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり、」
に訂正する。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~6、8及び9も同様に訂正する。
訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に 「請求項1~7のいずれかに記載のインクジェット記録方法」と記載されているのを、「請求項1~6のいずれかに記載のインクジェット記録方法」に訂正する。
訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に 「請求項1~8のいずれかに記載のインクジェット記録方法」と記載されているのを、「請求項1~6及び8のいずれかに記載のインクジェット記録方法」に訂正する。
2 訂正の適否
(1) 一群の請求項について
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されている。
(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「ルチル型酸化チタン」について、その平均一次粒子径が特定されていなかったところ、本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0012】の「酸化チタンの粉末形状は、粒状、針状など特に制限されないが、その平均一次粒子径は、白色度の観点から、100nm以上であり、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上であり、そして、再分散性の観点から、600nm以下であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下である。」との記載に基づき、「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下」であるものに限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記のとおりであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2~4について
訂正事項2は、請求項7を削除することを目的とするものであり、訂正事項3、4はいずれも、引用する請求項から請求項7を削除することを目的とするものである。
したがって、訂正事項2~4は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(3) 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明(以下、項番により「本件訂正発明1」などといい、まとめて、「本件訂正発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、該酸化チタンの含有量が、水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、続きを表示(全38行)該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下であり、該記録装置が該水系インク中の該酸化チタンを分散する分散手段を有し、下記工程1及び2を有する、インクジェット記録方法。工程1:該水系インクを分散手段により再分散する工程工程2:工程1で再分散した水系インクを吐出して記録媒体に記録する工程【請求項2】水系インクが、さらに沸点90℃以上250℃未満の1種以上の有機溶媒を含有する、請求項1に記載のインクジェット記録方法。【請求項3】水系インクが、さらにシリコーン系界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。【請求項4】ポリマー分散剤の含有量が、酸化チタン100質量部に対して1質量部以上4.0質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。【請求項5】ポリマー分散剤の酸価が、350mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下である、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。【請求項6】水系インクの32℃における粘度が、4.0mPa・s以上12.0mPa以下である、請求項1~5のいずれかに記載のインクジェット記録方法。【請求項7】(削除)【請求項8】水系インクが、ポリマー分散剤で分散された酸化チタンの粒子を含む酸化チタン分散体を含有し、該酸化チタン分散体の粒子の平均粒子径が、150nm以上500nm以下である、請求項1~7のいずれかに記載のインクジェット記録方法。【請求項9】分散手段が、インク充填容器内のインクを攪拌する機構、振とう機構、振動付与機構、及びインクを循環させる循環機構から選ばれる1種以上である、請求項1~8のいずれかに記載のインクジェット記録方法。【請求項10】ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクであって、該酸化チタンの含有量が、水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、インクジェット記録用水系インク。【請求項11】水系インクが、ポリマー分散剤で分散された酸化チタンの粒子を含む酸化チタン分散体を含有し、該酸化チタン分散体の粒子の平均粒子径が、150nm以上500nm以下である、請求項10に記載のインクジェット記録用水系インク。」
第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 取消理由の内容
当審が令和4年3月30日付けで通知した取消理由は、以下の取消理由1~2である。また、取消理由1は、引用文献として以下の甲1~3を引用するものである。
<取消理由>
取消理由1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6、8、9に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6、8、9の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
<引用文献>
甲1 国際公開第2013/021633号(特許異議申立人平居博美が提出した甲第1号証)
甲2 木村隆俊・中村雅彦、「カオリンスラリー及びガラスビーズモデルスラリーの曳糸現象と粒子凝集構造の評価」 Journal of the Ceramic Society of Japan, 1996年9月、第104巻、第9号、823~827頁(特許異議申立人平居博美が提出した甲第2号証)
甲3 特開2012-16824号公報(特許異議申立人平居博美が提出した甲第3号証)
(2) 取消理由1について
ア 上記(1)のとおり、本件訂正前の請求項7は、取消理由1の対象となっていない。また、本件訂正後の請求項1は、本件訂正前の請求項7に相当するものである。そうすると、本件訂正発明1を、取消理由1によって取り消すことはできない。
また、本件訂正後の請求項2~6、8、9は、本件訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明2~6、8、9も、取消理由1によって取り消すことはできない。
また、改めて検討しても、本件訂正発明1~6、8、9を、取消理由1によって取り消すことができないことは以下のとおりである。
イ 引用文献に記載されている事項
(ア) 甲1の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、原文に付されていない下線は、当審が付したものである。
「 請求の範囲[請求項1] 下記の(A)、(B)および(C)の条件を満たす金属化合物(1)を含有する水性インク用白色顔料。(A)前記金属化合物(1)は、二酸化チタンと、波長550nmにおける屈折率が1.60以上2.45以下である金属化合物(2)と、を含み、前記二酸化チタンと前記金属化合物(2)の合計を100重量%としたとき、前記二酸化チタンの含有率が50重量%以上99重量%以下であり、前記金属化合物(2)の含有率が1重量%以上50重量%以下である(B)前記金属化合物(1)の動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値が100~700nmの範囲にある(C)前記金属化合物(1)のBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出される細孔容積が0.1ml/g以上0.65ml/g以下である・・・[請求項5] 請求項1乃至4のいずれか一項に記載された水性インク用白色顔料を含有する水性インク組成物。[請求項6] 請求項5に記載の水性インク組成物において、当該水性インク組成物がインクジェット印刷用である水性インク組成物。」
「[0003]特許文献1: 特開平10-130527号公報特許文献2: 特開2008-200854号公報特許文献3: 特開2010-174100号公報発明の概要発明が解決しようとする課題[0004] しかしながら、二酸化チタンを始めとする無機顔料は比重が高いため、低粘度であるインクジェット用インクに用いる場合、顔料沈降の抑制が課題となる。顔料が沈降すると、インクジェットノズルからの吐出時に目詰まりを起こしたり、インクの貯蔵安定性が悪くなったりするなどの問題がある。」
「[0008] 特許文献3には、二酸化チタンより比重の小さなシリカを使用することで、白色度を保ち、貯蔵安定性を確保することができることが開示されている。しかしながら、シリカは二酸化チタンに比べて、白色度、隠蔽性ともに劣るため、二酸化チタンを併用する必要があり、結果として貯蔵安定性の確保が難しいという問題がある。[0009] 本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、水性インク媒体中で沈降しにくく、かつ白色の発色性が良好な水性インク用顔料、それを含有する水性インク組成物、その水性インク組成物を用いて得られる画像または印刷物を提供するものである。[0010] 本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の条件を満たす金属化合物を含有させると、水性インク媒体中で沈降しにくく、かつ白色の発色性が良好な水性インク用顔料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。[0011] すなわち、本発明によれば、以下に示す水性インク用顔料、それを含有する水性インク組成物、その水性インク組成物を用いて得られる画像または印刷物が提供される。[0012][1]下記の(A)、(B)および(C)の条件を満たす金属化合物(1)を含有する水性インク用白色顔料。(A)上記金属化合物(1)は、二酸化チタンと、波長550nmにおける屈折率が1.60以上2.45以下である金属化合物(2)と、を含み、上記二酸化チタンと上記金属化合物(2)の合計を100重量%としたとき、上記二酸化チタンの含有率が50重量%以上99重量%以下であり、上記金属化合物(2)の含有率が1重量%以上50重量%以下である。(B)上記金属化合物(1)の動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値が100~700nmの範囲にある。(C)上記金属化合物(1)のBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により算出される細孔容積が0.1ml/g以上0.65ml/g以下である。」
「[0015] 1.水性インク用白色顔料(金属化合物)本実施形態の水性インク用白色顔料は、特定の条件を満たす金属化合物(1)を含有している。本実施形態の金属化合物(1)は、二酸化チタンと、波長550nmにおける屈折率が1.60以上2.45以下である金属化合物(2)と、を含んでいる。二酸化チタンの屈折率は、アナターゼ型が2.52であり、ルチル型が2.71である。」
「[0016] 白色度は、屈折率が大きいものの方が、大きいことが知られている。また、屈折率は、加成性が成り立ち、屈折率の大きなものに、屈折率の小さなものを混ぜると、屈折率は低下することが知られている。本実施形態では、二酸化チタンの屈折率に対し、屈折率の低い金属化合物(2)を添加したにもかかわらず、白色度は同等かむしろ向上した。」
「[0021] さらに、本実施形態の金属化合物(1)をインクジェットの顔料として用いる場合には、インクジェットノズルから目詰まりを起こさず安定的に吐出させ、かつ塗膜の白色度、隠蔽性を保つために、動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値が100~700nmの範囲で、貯蔵安定性が確保されていることが好ましい。二酸化チタンなどの金属化合物の比重は一般的に高いが、それにもかかわらず、本実施形態においては、その粒径範囲でもインク中で顔料が沈降しにくい水性インク用白色顔料を形成することができる。[0022] 本実施形態の金属化合物(1)の動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値は100~700nmの範囲にあり、好ましくは150~400nmの範囲にある。金属化合物(1)の体積粒度分布のピーク値が100nm以上であると、可視光の散乱能力が向上するため、白色度をより向上させることができる。金属化合物(1)の粒径ピークが700nm以下であると、インクジェットノズルの目詰まりが起こるのを抑制することができる。」
「[0026] 本実施形態の白色顔料はCuKα線によるX線回折測定において、上記二酸化チタンおよび上記金属化合物(2)に由来する回折線の最強ピーク強度をそれぞれIaおよびIbとしたときに、その強度比Ib/Iaが0.02以下であることが、顔料の分散性の向上または再分散性の向上の観点から好ましい。[0027] これは、金属化合物(2)が非晶性であるためOH基が存在し、もしくは顔料を分散媒に分散させた際にOH基が生成しやすくなり、分散媒との親和性が向上するためと推測される。強度比Ib/Iaを低下させる方法としては、例えば、後述する工程(c)における焼成温度を低くする方法を挙げることができる。[0028](水性インク用白色顔料の製造方法)本実施形態の金属化合物(1)を含む水性インク用白色顔料は、以下の工程(a)、(b)および(c)を含む方法により製造することができる。さらに工程(c)の後に工程(d)をおこなってもよい。続きを表示(全11行)工程(a):下記の工程(a-1)、工程(a-2)あるいは工程(a-3)をおこなう。工程(a-1):金属化合物前駆体(Y)(以下、「成分(Y)」ということもある)のゾル-ゲル反応をおこなう。工程(a―2):金属化合物ナノ粒子および水系媒体を含有する混合物を調製する。工程(a-3):二酸化チタン粒子を金属化合物(2)またはその前駆体で表面処理する。工程(b):工程(a)において得られた反応液または混合物を乾燥し粉体を得る。工程(c):工程(b)で得られた粉体を焼成し金属化合物(1)を得る。工程(d):工程(c)で得られた金属化合物(1)を所望の粒径に湿式粉砕し、水中への分散化をおこない、水系ディスパージョンを得る。」
「[0064] 二酸化チタンの一次粒子径は特に限定されるものではないが、例えば10~200nmとすることができる。特に60nm以上の一次粒子径であると、白色度が一層向上するため好ましい。」
「[0091] 2.水性インク組成物本実施形態の水性インク組成物は上記の水性インク用顔料、水を含んでいる。さらに水溶性有機溶剤、潤滑剤、高分子分散剤、界面活性剤、他の着色剤、その他各種添加剤を含んでもよい。[0092] 本実施形態の水性インク用顔料の添加量は、インク全体に対して、好ましくは1重量%以上40重量%以下であり、より好ましくは3重量%以上30重量%以下である。本実施形態においては、このような高顔料濃度の場合であっても、顔料粒子の分散性や目詰まり信頼性に優れるとともに、インク中の顔料濃度を高くすることによって、隠蔽力の高い画像が得られる。」
「[0094] 本実施形態の水性インク組成物は、さらに高沸点有機溶媒などの湿潤剤を含むことが好ましい。湿潤剤の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。」
「[0096] ・・・さらに、高分子分散剤の好ましい例として合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸/アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム/アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体などのアクリル酸系樹脂、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/α-メチルスチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/α-メチルスチレン/アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン/アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン/マレイン酸共重合体、および酢酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/脂肪酸ビニル/エチレン共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体およびそれらの塩が挙げられる。」
「[0097] 本実施形態のインク組成物は、さらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、工程(d)で例示した界面活性剤を挙げることができる。」
「[0099] 本実施形態のインク組成物は、上記の各成分を適当な方法により分散、混合することによって製造することができる。各インク成分を加えた溶液を調製し、充分に撹拌した後に、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するために濾過をおこなって目的のインク組成物を得ることができる。例えば上記工程(d)で得られた水性ディスパージョンに必要に応じ添加剤などを適宜添加することにより製造することができる。[0100] 本実施形態の水性インク組成物の用途としては、例えばインクジェット印刷用、オフセット印刷用、グラビア印刷などが挙げられるが、とくにインクジェットプリンタでの印刷に適している。[0101] 3.画像、印刷物本発明の水性インク組成物を用いて基材(被印刷体)に印刷することにより画像、印刷物が得られる。」
「[0105](実施例1)(二酸化ジルコニウム含有二酸化チタンナノ粒子の合成と水分散体の調製)塩化チタン(IV)溶液(和光純薬、Ti:約15%)120g(Ti:3.76×10-1mol相当)をイオン交換水4000mlに添加し、70℃の温度で攪拌した。1時間後、青みを帯びた二酸化チタンコロイド水溶液を得た。このコロイド溶液に塩化酸化ジルコニウム8水和物を15.6g(Zr:4.83×10-2mol相当)添加し、コロイド水溶液の温度を70℃に保ち、1時間攪拌をおこなった。その結果、青白色を帯びたゾル液が得られた。イオン透析によりコロイド水溶液のpHを2.5付近になるように洗浄をおこなって、固形分濃度6重量%の二酸化ジルコニウム含有二酸化チタンナノ粒子の水分散体を得た。水分散体を乾燥させて得られた粉体のリガク社製X-Ray diffractometer Multiflex 2kW(CuKα線λ=1.5418Å)を用いてX線回折スペクトル測定より分析し、シェラー定数を0.9としてデバイ・シェラー法にて解析したところ、アナターゼ型二酸化チタンの結晶構造であり、結晶サイズが約3nmであることを確認した。[0106](二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体の形成)続きを表示(全33行)固形分濃度6重量%の二酸化ジルコニウム含有二酸化チタンナノ粒子の水分散体をスプレードライヤー装置に流し込み、ノズル出口温度200℃で加圧(0.2MPa)し、噴霧・乾燥することで、二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体を得た。得られた粉体を、電気炉を用いて、空気雰囲気下、室温から500℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに500℃で2時間焼成することによって二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体の焼結体を得た。この焼結体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察したところ、0.5~20μmの粉体であることを確認した。この焼結体を上記と同様にX線回折法により分析したところ、アナターゼ型二酸化チタンの結晶構造であり、その結晶サイズは5.6nmであった。[0107] (水系スラリーの調製)二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が10重量%となるように水中にて粉砕・分散処理をおこなった。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積粒度分布のピークが270nmになった時点でスラリーを回収した。[0108] (実施例2)実施例1と同様の方法で得られた二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が19重量%、pHが9付近になるように水酸化ナトリウム水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積粒度分布のピークが240nmになった時点でスラリーを回収した。[0109](実施例3)実施例1と同様の方法で得られた二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が14重量%となるように水酸化ナトリウムと分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を含む水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。分散剤は顔料重量に対して乾燥重量で2重量%になるように添加した。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積粒度分布のピークが240nmになった時点でスラリーを回収した。[0110](実施例4)実施例1と同様の方法で得られた二酸化ジルコニウム含有二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が18重量%となるように水酸化ナトリウムと分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を含む水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。分散剤を顔料重量に対して乾燥重量で10重量%になるように添加した以外は実施例3と同様におこなった。[0111](比較例1)(水系スラリーの調製)水酸化アルミニウム修飾二酸化チタン粉体(石原産業社製、TTO-51(A)、水酸化アルミニウム含有率20重量%)を、実施例1と同様にしてX線回折法により分析したところ、ルチル型二酸化チタンが主成分であり、結晶サイズは11.1nmであった。上記の水酸化アルミニウム修飾二酸化チタン粉体を湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が10重量%となるように水中にて粉砕・分散処理をおこなった。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積平均径のピークが260nmになった時点でスラリーを回収した。なお水酸化アルミニウムの屈折率は1.57、比重は2.42g/cm3である。[0112](比較例2)(水系スラリーの調製)水酸化アルミニウム修飾二酸化チタン粉体(石原産業社製、TTO-51(A)、水酸化アルミニウム含有率20重量%)を湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が17重量%となるように水酸化ナトリウム水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。粒度を確認しながら粉砕をおこない、スラリーを作製した。得られたスラリーは高粘度であり、インクとして調製するのは困難であった。これは水酸化アルミニウムが水酸化ナトリウム水溶液中で溶解したことで、ゲル状に溶液になったためと推測される。[0113](比較例3)塩化酸化ジルコニウム8水和物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして二酸化チタンナノ粒子を合成し、乾燥・焼成工程を経て二酸化チタン粉体を調製した。実施例1と同様にしてX線回折法により分析したところ、アナターゼ型とルチル型の二酸化チタンが混合しており、アナターゼ型の結晶サイズは18.8nm、ルチル型の結晶サイズは26.3nmであった。二酸化ジルコニウムを含んでいない二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が20重量%、pHが12.8付近になるように水酸化ナトリウム水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積粒度分布のピークが300nmになった時点でスラリーを回収した。[0114] (実施例5)イオン交換水480gに、市販の二酸化チタン粉体(アナターゼ/ルチル型、一次粒子径:80nm)160gを添加し、さらに、10wt%ヘキサメタリン酸水溶液160g添加し室温で攪拌した。このスラリー溶液に塩化酸化ジルコニウム8水和物83.7gを添加した。このスラリー溶液に、水酸化ナトリウム水溶液をゆっくり添加し、pHが4.0~4.5になるよう調整し、そのまま、2時間攪拌した。得られたスラリー溶液をろ過し、固形分を取り出し乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用いて、空気雰囲気下、室温から500℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに500℃で2時間焼成することによって二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を得た。[0115] (水系スラリーの調製)得られた二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が20重量%となるように水酸化ナトリウムと分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を含む水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。このとき、水酸化ナトリウムは、pHが8付近になるよう、分散剤は顔料重量に対して乾燥重量で2重量%になるように添加した。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積平均径のピークが309nmになった時点でスラリーを回収した。[0116] (実施例6)酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが226nmになった時点でスラリーを回収した。[0117] (実施例7)酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが348nmになった時点でスラリーを回収した。[0118] (実施例8)酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが267nmになった時点でスラリーを回収した。」
「[0127][表1][図:0001393987000001.jpg][0128][表2][図:0001393987000002.jpg]」
(イ) 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
「分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム塩(“シャロール”,AN-103P,第一工業製薬製,分子量10,000)を用い」(823頁左欄9~11行)
(ウ) 甲3の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【0008】本願発明者は上記課題を解決するため、液体吐出装置を具現化した一例であるインクジェット記録装置におけるインクの脱気手段について鋭意検討した。【0009】インクには、用いる色材に応じて顔料系インクと染料系インクとがある。顔料系インクは、染料系インクと比較して記録物の保存性により優れているため、ディスプレイ用インクとして好適である。ところが、顔料粒子の沈降という、顔料系インク特有の問題がある。特に顔料系インクがホワイトインクの場合、白色度を維持するために酸化チタンを使用することが多い。だが、酸化チタンは比重が大きいため、顕著に沈降が見られる(沈降速度が非常に大きい。)。このような沈降を防止する対策として、記録装置に攪拌機構が備えられている。」
ウ 甲1に記載された発明
甲1には、「水性インク用白色顔料」(請求項1)の水性ディスパージョンを水性インク組成物とすること([0099])、及び、当該水性インク組成物を印刷に用いること([0100])、が記載されている。
また、水性ディスパージョンの具体的な態様として、その実施例7に、「酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが348nmになった時点でスラリーを回収し」て二酸化チタンのスラリーを製造したことが記載されており、実施例5は、「イオン交換水480gに、市販の二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)160gを添加し、さらに、10wt%ヘキサメタリン酸水溶液160g添加し室温で攪拌した。このスラリー溶液に塩化酸化ジルコニウム8水和物83.7gを添加した。このスラリー溶液に、水酸化ナトリウム水溶液をゆっくり添加し、pHが4.0~4.5になるよう調整し、そのまま、2時間攪拌した。得られたスラリー溶液をろ過し、固形分を取り出し乾燥させた。得られた粉体を、電気炉を用いて、空気雰囲気下、室温から500℃まで毎分5℃の速度で昇温し、さらに500℃で2時間焼成することによって二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を得た。
得られた二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を、湿式型ビーズミルを用いて、固形分濃度が20重量%となるように水酸化ナトリウムと分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を含む水溶液中にて粉砕・分散処理をおこなった。このとき、水酸化ナトリウムは、pHが8付近になるよう、分散剤は顔料(当審注:二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕した粒子のことであると認める。)重量に対して乾燥重量で2重量%になるように添加した。粒度を確認しながら粉砕をおこない、体積平均径のピークが226nmになった時点でスラリーを回収した。」というものである。
そうすると、実施例7で製造した二酸化チタンのスラリーは、二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(以下、「二酸化チタン粒子」ともいう。)を含むものであると認められる。
以上を総合すると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)を固形分濃度で20重量%、分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%、及び、水酸化ナトリウムを、pHが8付近になるような量で含有する、二酸化チタン粒子が水に懸濁したスラリー、を含有する水性インクを用いる印刷方法」
エ 本件訂正発明1について
(ア) 本件訂正発明1と甲1発明の対比
本件訂正発明1の「ルチル型酸化チタン」について、発明の詳細な説明の段落【0011】には「酸化チタンは、未処理のものを用いることもできるが、水系インク中における良好な分散性を得る観点から、表面処理されたものが好ましい。酸化チタンの表面処理としては、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)等の無機物による表面処理や、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル等の有機物による表面処理等が挙げられるが、無機物による表面処理が好ましい。」と記載されていることも踏まえると、
甲1発明の「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)」は、本件訂正発明1の「ルチル型酸化チタン」に相当する。
甲1発明の「分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)」は、分子量10,000のポリアクリル酸ナトリウム塩である(上記イ(イ)参照。)から、甲1発明の「分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%」は、本件訂正発明1の「ポリマー分散剤」、「該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下であり」に相当する。
以上によれば、本件訂正発明1と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いる記録方法であって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、記録方法。」
<相違点1>
「記録方法」について、本件訂正発明1は、「インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって」、「該記録装置が該水系インク中の該酸化チタンを分散する分散手段を有し、下記工程1及び2を有する、インクジェット記録方法。」、「工程1:該水系インクを分散手段により再分散する工程」、「工程2:工程1で再分散した水系インクを吐出して記録媒体に記録する工程」と特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点2>
「酸化チタンの含有量」について、本件訂正発明1は、「水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明は、水系インク中の含有量が不明である点
<相違点3>
「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明1は、「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)」と特定されているものであって、その「平均一次粒子径」が不明である点
(イ) 検討
a 事案に鑑み相違点3について検討する。
一般に微粒子(一次粒子)は凝集して二次粒子になりやすい性質を有している。また、一般に粒径には分布があるので、その粒径として、何らかの方法で計算した平均粒径などが用いられるが、平均粒径の計算方法(粒径の定義)も複数存在する。
b 本件訂正発明1の「平均一次粒子径」は、本件明細書の記載によれば、「実施例に記載の方法により測定される」(段落【0012】)ものであり、具体的には、「(4)酸化チタンの平均一次粒子径の測定
酸化チタンの平均一次粒子径は、透過電子顕微鏡「JEM-2100」(日本電子株式会社製)を用いて、画像解析で500個の酸化チタン一次粒子を抽出してその粒子径を測定し、その平均を算出して数平均粒子径とした。なお、酸化チタンに長径と短径がある場合は、長径を用いて算出した。」(段落【0052】)というものであるから、その測定対象は一次粒子であり、その定義は、粒径分布に基づいて数平均を算出して平均粒子径とする、というものである。
c 一方、甲1発明の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した」ものであって「体積平均径のピークが348nm」というものであるから、甲1発明の「一次粒子径」は、甲1発明の「酸化チタン」を製造する原料に関するものであって、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径ではない。
d また、甲1発明の「体積平均径のピーク」という用語は、粒径分布の1点である平均値(平均径)にはピークが存在し得ない(粒径分布にはピークが存在する)点でその意味が不明である。そこで、甲1の特許請求の範囲の請求項1や、発明の詳細な説明の[0012]、実施例1([0106])、などを参照すると、「動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク」と記載されているので、「動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク」という意味であると認められる。
ここで、上記aのとおり、一般に微粒子(一次粒子)は凝集して二次粒子になりやすい性質を有しているから、動的光散乱法で測定する際にも酸化チタンの粒子が凝集して二次粒子になっている蓋然性が高い。したがって、甲1発明の「体積平均径のピーク」は、二次粒子の粒径であって、一次粒子に関するものではないと認められる。また、その計算方法は、粒子の体積に対する粒子の個数の分布を測定したときに最も個数が多い体積を、なんらかの換算式で粒径に換算した値であると認められる。
e 以上をまとめると、本件訂正発明1の「酸化チタン」と甲1発明の「酸化チタン」は、その粒径の測定対象が、本件訂正発明1は、一次粒子であるのに対し、甲1発明は、二次粒子である点で相違していることに加え、その粒径の定義が本件訂正発明1は、粒径分布に基づく数平均であるのに対し、甲1発明は、体積粒度分布において最も個数が多い体積を粒径に換算した値である点でも相違している。
f 甲1には「二酸化チタンの一次粒子径は特に限定されるものではないが、例えば10~200nmとすることができる。特に60nm以上の一次粒子径であると、白色度が一層向上するため好ましい。」([0064])と記載されているが、上記cのとおり、この記載における「一次粒子径」は、甲1発明の「酸化チタン」を製造する原料に関するものであって、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に関するものではない。したがって、この記載は、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得ない。
g 甲1には「さらに、本実施形態の金属化合物(1)をインクジェットの顔料として用いる場合には、インクジェットノズルから目詰まりを起こさず安定的に吐出させ、かつ塗膜の白色度、隠蔽性を保つために、動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値が100~700nmの範囲で、貯蔵安定性が確保されていることが好ましい。二酸化チタンなどの金属化合物の比重は一般的に高いが、それにもかかわらず、本実施形態においては、その粒径範囲でもインク中で顔料が沈降しにくい水性インク用白色顔料を形成することができる。」([0021])、「本実施形態の金属化合物(1)の動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値は100~700nmの範囲にあり、好ましくは150~400nmの範囲にある。金属化合物(1)の体積粒度分布のピーク値が100nm以上であると、可視光の散乱能力が向上するため、白色度をより向上させることができる。金属化合物(1)の粒径ピークが700nm以下であると、インクジェットノズルの目詰まりが起こるのを抑制することができる。」([0022])、とも記載されている。
しかしながら、上記dのとおり、この記載は、甲1発明の「酸化チタン」の二次粒子径の好ましい範囲について説明するものであって、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に着目した記載ではないし、「動的光散乱法により測定される体積粒度分布のピーク値」を一次粒子径に換算することができるわけでもない。
そうすると、この記載も、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得ない。
h 以上のとおり、甲1には、甲1発明において、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとなる記載をなにも見いだせないので、当業者といえども、甲1発明において、相違点3に係る事項を備えるものとすることを着想して、本件訂正発明1の「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」を充足するものに変更することを容易になし得たとはいえない。
また、甲2、甲3、及び技術常識(異議申立人が提出した甲4~17に記載されている事項を含む)をみても、せいぜい、微粒子の粒径について、その測定対象を一次粒子とする例が存在することや、粒径を粒径分布に基づく数平均とすることが周知であったといえる程度に留まるのであって、甲1発明において、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得るものはない。
(ウ) 効果について
本件訂正発明1は、ルチル型酸化チタンが沈降することを前提として、相違点1~3に係る事項を備えることにより、「隠蔽性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に、優れた抑泡性又は消泡性により速やかにインク物性が回復する水系インクを用いることにより、良好な吐出性を得ることができるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録用水系インクを提供することができる」(段落【0005】)という効果を奏するものであって、当該効果は、そもそも、酸化チタンが沈降したインクジェット記録用水系インクを攪拌により再分散して用いることを想定していない甲1発明に基づいて当業者が予測することのできない顕著なものであると認められる。
(エ) 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和4年7月5日提出の意見書(3頁17行~8頁19行)において、「訂正により追加された要件の「ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下である」ことにも進歩性がないことを詳細に説明する」、として、以下の主張をしている。
a 甲1には「二酸化チタンの一次粒子径は特に限定されるものではないが、例えば10~200nmとすることができる。特に60nm以上の一次粒子径であると、白色度が一層向上するため好ましい。」ことが記載されている(段落0064)。つまり、二酸化チタンの一次粒子径を大きくすれば白色度が向上することが教示されているといえる。具体的に、甲1の実施例において、一次粒子径が35nmの二酸化チタンを用いる(実施例7)よりも、一次粒子径が180nmとより大きな二酸化チタンを用いる(実施例6)方が、白色度がAAからAAAに向上することが示されている(表2)。よって、甲1に記載される発明において、白色度をさらに向上する観点から、酸化チタンの平均一次粒子径を180nmとすることには明らかに動機付けがある。(4頁7行~17行)
b 本件特許発明において、酸化チタンとしてルチル型を用いることによる効果・・・この点甲3には・・と記載されており(段落0009)、インクジェットインクに隠蔽性の高い酸化チタンを用いた場合には、酸化チタン沈降という課題が存在することは周知であった。(4頁18行~5頁5行)
c 酸化チタンとしてルチル型を用いることによる効果について、隠蔽性に関して・・・甲1には・・・が記載されている。つまり、甲1には酸化チタンとしてルチル型を用いる方が白色度を向上できることが教示されている。(5頁6~13行)
d 結晶の安定性に関しては・・・甲第9号証・・・甲第4号証・・・甲第15号証・・・が記載され、インクジェット記録用水系インクの白色顔料として、ルチル型酸化チタンを用いることは周知の技術である。(5頁14行~6頁2行)
e つぎに、酸化チタンの平均一次粒子径を特定の範囲内とすることによる効果について、異議申立書における甲第4号証には・・・甲第14号証・・・甲第15号証・・・甲第17号証・・・が記載されている。つまり、平均一次粒子径が小さすぎれば良好な隠蔽性(白色度)が得られないこと、及び平均一次粒子径が大きすぎればすぐに沈降するため分散性が悪いことは周知の事実である。(6頁3~7頁3行)
f なお本件特許発明においては・・・ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径を「100nm以上」とすることには臨界性がなく、単なる数値範囲の設定に過ぎない。(7頁4~9行)
g また、訂正発明1及び10を特定するための要件のうち、ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が100nm以上600nm以下という要件・・・比較例11と実施例6とでは、ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径のみでなく、インク粘度の点でも特性が大きく異なっている(表6)・・・甲1に記載される発明と比べて当業者が予測することのできない顕著な効果が奏されているとは、現在の記載からは認識することはできない。(7頁10~23行)
しかしながら、主張aについては、上記(イ)のとおりであるから、採用できない。
また、上記(ウ)のとおり、本件訂正発明1は、「隠蔽性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に、優れた抑泡性又は消泡性により速やかにインク物性が回復する水系インクを用いることにより、良好な吐出性を得ることができるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録用水系インクを提供することができる」という効果(以下、「再分散に係る効果」ともいう。)を奏するものであるところ、主張b~gは、いずれも「再分散に係る効果」に関するものではないから、上記(ウ)の判断を左右するものではない。
したがって、異議申立人の主張はいずれも採用できない。
(オ) 本件訂正発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1~3に記載された発明及び技術常識(異議申立人が提出した甲4~17に記載されている事項を含む)に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
オ 本件訂正発明2~6、8、9について
本件訂正発明2~6、8、9は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用し、さらに、有機溶媒の沸点(本件訂正発明2)、界面活性剤を含有する点(本件訂正発明3)、ポリマー分散剤の含有割合(本件訂正発明4)、ポリマー分散剤の酸価(本件訂正発明5)、水系インクの粘度(本件訂正発明6)、酸化チタンの平均粒子径(本件訂正発明8)、分散手段(本件訂正発明9)、を限定した発明に該当する。
また、上記のとおり、本件訂正発明1は、甲1~3に記載された発明及び技術常識(異議申立人が提出した甲4~17に記載されている事項を含む)に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明2~6、8、9も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1~3に記載された発明及び技術常識(異議申立人が提出した甲4~17に記載されている事項を含む)に基いて容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
カ 取消理由1についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8、9を取消理由1によって取り消すことはできない。
(3) 取消理由2について
ア 上記(1)のとおり、本件訂正前の請求項7は、取消理由2の対象となっていない。また、本件訂正後の請求項1は、実質的に、本件訂正前の請求項7に相当するものである。そうすると、本件訂正発明1を、取消理由2によって取り消すことはできない。
また、本件訂正後の請求項2~6、8、9は、本件訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明2~6、8、9も、取消理由2によって取り消すことはできない。
また、改めて検討しても、本件訂正発明1~6、8、9を、取消理由2によって取り消すことができないことは以下のとおりである。
イ 取消理由2は、要するに、「比較例11の態様は、「酸化チタンをMT―700HD(ルチル型:テイカ株式会社製、Al・Zr処理、平均一次粒子径50nm)にした以外は実施例6と同様」(段落【0078】)というものであって、本件発明1を特定するための全ての事項を備えていると認められる(本件発明1は、ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径を特定する事項を備えていないことに注意されたい。)ものであるが、「泡立ち性」、及び、「再分散性」の評価がいずれも「×」である。
そうすると、本件発明1は、その課題を解決することができない態様を包含していると認められる。また、本件発明2~6、8、9についても同様である。」というものである。
これに対し、本件訂正後の請求項1は、比較例11の態様を包含していない。
したがって、本件訂正発明1を、取消理由2によって取り消すことはできない。
また、本件訂正後の請求項2~6、8、9は、本件訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用しさらに限定したものであるから、本件訂正発明2~6、8、9も、取消理由2によって取り消すことはできない。
ウ なお、異議申立人は、令和4年7月5日提出の意見書(9頁23行~17頁2行)において、下記a~dの主張をしているが、これらはいずれも特許異議申立の理由であって取消理由通知において採用しなかったものを繰り返しているものであり、要するに、取消理由通知において採用されなかった理由を繰り返しているだけであって、取消理由2に対するのではないと認められる。したがって、これらの主張については、下記の「2 特許異議申立の理由のうち取消理由通知において採用しなかったものについて」でまとめて検討する。
a 実施例8は比較例9の結果と比して、泡立ち性は同程度であるところ、再分散性及び吐出性に関してはさらに不良な結果である。そして、比較例9の態様は、隠蔽性、再分散性、抑泡性、消泡性、及び吐出性を両立し得るという本件特許発明の課題を解決することができないものであるため、当然に実施例8の態様も本件特許発明の課題を解決することができていないといえる。(11頁9~14行)
b また各評価が良好な実施例3と比べ、実施例8は酸化チタン100質量部に対するポリマー分散剤の含有量が相違していることから、本件特許発明の課題(泡立ち性、再分散性、吐出性等)を解決するためには、酸化チタン100質量部に対するポリマー分散剤の含有量が2質量部であることが実証されている。よって、酸化チタン100質量部に対するポリマー分散剤の含有量が1質量部以上7質量部以下と規定している訂正発明1及び10は、その課題を解決することができない態様を包含している。また、訂正発明2~6、8、9及び211についても同様である。(11頁15~22行)
c 「まず、消泡性に関しては、異議申立書における甲第12号証・・・粘度が高ければ消泡性が悪化することは周知の事実である。また本件特許明細書では・・・インク粘度については再分散性の観点から好ましい範囲が規定されている(段落0038)・・・甲第11号証・・・甲第13号証・・・つまり、インク粘度が吐出性に影響することは周知の事実である。なお本件特許発明の実施例においても・・・表3~6に示される再分散性、泡立ち性、及び吐出性の評価結果は、下記図1~3に示すようにインク粘度と明らかに相関関係を有するものである。(12頁10~14頁)[図:0001393987000003.jpg][図:0001393987000004.jpg][図:0001393987000005.jpg]続きを表示(全137行)上述のとおり、インク粘度は本件特許発明の課題を解決するために重要な要件であり、実際に本件実施例においてはインク粘度が6.3mPa・s超で本件特許発明の効果を奏するものは得られていない。(12頁10~14頁3行)d 全実施例において使用される該インク粘度に影響を与えるポリマーエマルションについて、訂正発明1及び10では何ら規定されていない・・・ポリマーエマルションに由来するポリマー(固形分)の含有量や、ポリマーエマルションに由来する乳化剤の種類、及びその含有量等について何も特定していない。(15頁7行~16頁24行)エ 取消理由2についての小括以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8、9を取消理由2によって取り消すことはできない。2 特許異議申立の理由のうち取消理由通知において採用しなかったものについて(1) 特許異議申立書において、特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要特許異議申立人が申し立てた取消理由及び提出した証拠方法は、以下のとおりである。<取消理由>取消理由3本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。取消理由4本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。取消理由5本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。<証拠方法>甲第1号証 国際公開第2013/021633号(上記1の甲1)甲第2号証 木村隆俊・中村雅彦、「カオリンスラリー及びガラスビーズモデルスラリーの曳糸現象と粒子凝集構造の評価」 Journal of the Ceramic Society of Japan, 1996年9月、第104巻、第9号、823~827頁(上記1の甲2)甲第3号証 特開2012-16824号公報(上記1の甲3)甲第4号証 特開2014-196425号公報甲第5号証 甘利武司・鈴木健司、「インクジェット印刷の科学」 色材協会誌、1999年11月、第72巻、第11号、690~697頁甲第6号証 京セラ株式会社が製造する水系インク向け600dpiインクジェットプリントヘッドである「KJ4B-QA06NTB-STDB」のパンフレット 2013年 京セラ株式会社甲第7号証 特開2005-246860号公報甲第8号証 特開2007-126614号公報甲第9号証 特開2012-73301号公報甲第10号証 KYOCERA Printing Solutionsが販売するインクジェットプリントヘッドである「KJ4」のインターネット上のパンフレット(URL:http://doc.diytrade.com/docdvr/132165/25131978/1332328582.pdf) 令和3年9月1日印刷 07~08頁 KYOCERA Printing Solutions甲第11号証 特開2015-174876号公報甲第12号証 野口駿、「泡のはなし(1)」 化学と生物、公益社団法人日本農芸化学会、1972年、第10巻、第1号、39-43頁甲第13号証 特開2014-108523号公報甲第14号証 特開2002-348513号公報甲第15号証 特開2014-185236号公報甲第16号証 花王株式会社が製造する乳化重合用エーテルサルフェート型界面活性剤である「ラテムル E-118B」のパンフレット 2003年8月 花王株式会社甲第17号証 特開2002-348513号公報(令和4年7月5日提出の意見書に添付して提出)なお、以下、甲第4~17号証についても、証拠番号に基づいて「甲4」などともいう。(2) 取消理由3についてア 取消理由3の概要取消理由3は、具体的には、甲1の実施例6~8のいずれか1つに基づき引用発明を認定するとともに、本件特許に係る発明は、当該引用発明のいずれか1つ及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである(異議申立書14頁2~13行、23頁3行~43頁7行)。イ 証拠方法に記載されている事項(ア) 甲1~甲3に記載されている事項上記1(2)イ(ア)~(ウ)のとおりである。(イ) 甲14に記載されている事項「【0054】【実施例】以下に本発明の実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。【0055】[二酸化チタンスラリーの製造例](実施例1)チタン含有鉱石を硫酸で溶かして硫酸チタン溶液を得る。この硫酸チタン溶液を加水分解して得た含水酸化チタンに、TiO2の100質量部に対してリン酸アンモニウムを0.50質量部、硫酸カリウムを0.30質量部、硫酸アルミニウムを0.30質量部添加し、含水酸化チタンを生成物温度が1,020℃になるまで実験室用回転マッフル炉内で加熱した。生成した二酸化チタンを室温に冷却し、透過型電子顕微鏡写真で観測したところ、平均一次粒子径が0.13μmであるアナターゼ型であることが判った。この表面処理された二酸化チタン1500gと純水1000gを混合し、サンドミル(安川製作所製)でジルコニウムビーズ(1.0mm)をスラリーの1.5倍量を充填し、2時間分散させた後、ビーズを取り除きインクジェット用白色インクに用いる二酸化チタンスラリー(A)を得た。このスラリーの平均一次粒子径、濃度、粘度、pH、表面張力、粒度分布を表1に示した。」「【0059】[測定方法](1)スラリー濃度スラリー1~2gをアルミカップに秤量し、セーフティーオーブンSPHH-100(TABAI製)で110℃、4時間乾燥し、蒸発残分から固形分濃度を算出した。(2)粘度E型粘度計((株)トキメック製)を使用し、スラリー約1mlをローターカップに入れ、25℃、50rpmで測定を行った。(3)pHpHメーター「F-23」((株)堀場製作所製)を使い25℃で測定した。(4)表面張力表面張力計「CBVP-Z」(協和界面科学(株)製)を使い、25℃で測定した。(5)粒度分布マイクロトラックUPA(Honeywell製)を使い、前処理としての超音波分散なしで測定した。媒体は超純水を使用した。【0060】【表1】[図:0001393987000006.jpg]【0061】[インク製造例](実施例2、比較例4、5、6)下記組成のインク組成物を混合し、スリーワンモーターで20分間攪拌した後、5μmのメンブランフィルターで粗大粒子およびごみを除去してインクジェット記録用インクを得た。【0062】【表2】[図:0001393987000007.jpg]【0063】このインクをインクジェトプリンター「MJ-830C」(セイコーエプソン(株)製)のヘッドに充填し、黒色上質紙(薄口)(紀州製紙(株)製)にベタ印字を行い、下地の隠蔽性を比較した。また、インク組成物を印字ヘッドにつめたまま常温にて1日間放置した後、印字することを試み、保存安定性を評価した。また、インクジェトプリンター「MJ-830C」(セイコーエプソン(株)製)を用いて、長時間の連続印字を行い、ドット抜け及び飛び散りの有無を観察して吐出安定性を評価した。【0064】【表3】[図:0001393987000008.jpg]【0065】隠蔽性:・下地の黒色が完全に隠れている ;○・下地の黒色が完全に隠れていない;×保存安定性:・スラリーの沈殿なし。印字可能 ;○・スラリーが沈殿。印字不可能 ;×吐出安定性:・48時間経過(48<T:Tは時間)時にドット抜け又はインクの飛び散りの発生数が10回以下である。;A・24~48時間(24<T≦48)の間にドット抜け又はインクの飛び散りが10回以上発生した。;B・1~24時間(1<T≦24)の間にドット抜け又はインクの飛び散りが10回以上発生した。;C・1時間内(T≦1)にドット抜け又はインクの飛び散りが10回以上発生した。;D【0066】表3から明らかなように、本実施例の白色インクであれば、隠蔽性、保存安定性、吐出安定性のいずれもが優れている。」(ウ) 甲15に記載されている事項「【0259】〔白色インク組成物1~6および白色インク組成物101~102の調製〕次に示す要領で、実施例1~実施例6の白色インク組成物1~白色インク組成物6および比較例1~比較例2の白色インク組成物101~白色インク組成物102を調製した。【0260】(白色インク組成物1の調製)下記組成を混合し、ミリポア社製フィルター(PVDF膜、孔径5μm)でろ過を行い、白色インク組成物1を得た。【0261】~白色インク組成物1の組成~・二酸化チタン分散液1(二酸化チタンの濃度:20質量%)・・・・・・50.0質量%・サンニックスGP250〔三洋化成工業(株)製;親水性有機溶剤〕・・・・・10.0質量%・オルフィンE1010〔日信化学工業(株)製;界面活性剤〕 ・・・・1.0質量%・自己分散性樹脂粒子P-1(固形分) ・・・・・・・・・・・・・2.0質量%・イオン交換水 ・・・・・・・・・残部(合計で100.0質量%となる残量)」「【0282】【表2】[図:0001393987000009.jpg]」ウ 取消理由3のうち、甲1の実施例6に基づき引用発明を認定するものについて(ア) 甲1発明6、および、甲1インク発明6甲1には、上記1(2)イ(ア)に摘記した事項が記載されており、甲1の実施例7に基づいて認定した引用発明は、上記1(2)ウのとおりである。また、実施例7は、「酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが226nmになった時点でスラリーを回収した。」というものであり、実施例6は、「酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが226nmになった時点でスラリーを回収した。」というものである。そうすると、甲1の実施例6に基づいて認定した引用発明(以下、「甲1発明6」ともいう。)は、以下のとおりである。また、甲1には、甲1発明6の印刷方法に用いる水性インクの発明(以下、「甲1インク発明6」ともいう。)も記載されていると認められる。<甲1発明6>「二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが226nmである粒子(二酸化チタン粒子)を固形分濃度で20重量%、分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%、及び、水酸化ナトリウムを、pHが8付近になるような量で含有する、二酸化チタン粒子が水に懸濁したスラリー、を含有する水性インクを用いる印刷方法」<甲1インク発明6>「二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが226nmである粒子(二酸化チタン粒子)を固形分濃度で20重量%、分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%、及び、水酸化ナトリウムを、pHが8付近になるような量で含有する、二酸化チタン粒子が水に懸濁したスラリー、を含有する水性インク」(イ) 本件訂正発明1と甲1発明6の対比上記1(2)エ(ア)を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明6の一致点、相違点は、以下のとおりである。<一致点>「酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いる記録方法であって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、記録方法。」<相違点4>「記録方法」について、本件訂正発明1は、「インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって」、「該記録装置が該水系インク中の該酸化チタンを分散する分散手段を有し、下記工程1及び2を有する、インクジェット記録方法。」、「工程1:該水系インクを分散手段により再分散する工程」、「工程2:工程1で再分散した水系インクを吐出して記録媒体に記録する工程」と特定されているのに対し、甲1発明6は、そのような特定を備えていない点<相違点5>「酸化チタンの含有量」について、本件訂正発明1は、「水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明6は、水系インク中の含有量が不明である点<相違点6>「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明1は、粒径が「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明6の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが226nmである粒子(二酸化チタン粒子)」というものであって、「体積平均径のピーク」が「226nm」であると特定されている点<相違点7>「酸化チタン」の材質について、本件訂正発明1は、材質が「ルチル型」に特定されているのに対し、甲1発明6の「酸化チタン」は、材質が「アナターゼ型」に特定されている点(ウ) 検討事案に鑑み、相違点6について検討すると、相違点6は、上記(イ)のとおりであり、相違点3は、「 「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明1は、「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)」と特定されているものであって、その「平均一次粒子径」が不明である点」(上記1(2)エ(ア)参照。)というものである。そうすると、相違点6は、相違点3において、「甲1発明」を「甲1発明6」に変更し、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)」を「二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)」に変更するとともに、(「体積平均径のピーク」が)「348nm」」を「226nm」に変更したときの相違点に相当する。
以上を踏まえると、上記1(2)エ(イ)と同様の理由により、甲1には、甲1発明6の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得る記載をなにも見いだせない。
また、甲2、甲3、及び技術常識(異議申立人が提出した甲4~17に記載されている事項を含む)をみても、せいぜい、微粒子の粒径について、その測定対象を一次粒子とする例が存在することや、粒径を粒径分布に基づく数平均とすることが周知であったといえる程度に留まるのであって、甲1発明6において、甲1発明6の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得るものではない。
(エ) 効果について
上記1(2)エ(ウ)と同様の理由により、本件訂正発明1が奏する「再分散に係る効果」は、そもそも、酸化チタンが沈降したインクジェット記録用水系インクを攪拌により再分散して用いることを想定していない甲1発明6に基づいて当業者が予測することのできない顕著なものであると認められる。
(オ) 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書33頁「コ. 本件特許発明7について」の項で、甲1発明6の「二酸化チタン」の一次粒子径が180nmである(【0116】)から、新たな相違点とはならない旨主張しているが、上記1(2)エ(イ)cと同様の理由により、甲1発明6の「一次粒子径」と本件訂正発明1の「一次粒子径」は、その表記が一致しているものの、その意味内容が全く異なっている。異議申立人の主張は、誤解に基づくものであって採用できない。
(カ) 本件訂正発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1発明6及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(キ) 本件訂正発明2~6、8、9について
本件訂正発明2~6、8、9は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用し、さらに、有機溶媒の沸点(本件訂正発明2)、界面活性剤を含有する点(本件訂正発明3)、ポリマー分散剤の含有割合(本件訂正発明4)、ポリマー分散剤の酸価(本件訂正発明5)、水系インクの粘度(本件訂正発明6)、酸化チタンの平均粒子径(本件訂正発明8)、分散手段(本件訂正発明9)、を限定した発明に該当する。
また、上記のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明6及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明2~6、8、9も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明6及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(ク) 本件訂正発明10、11について
上記(イ)を踏まえて、本件訂正発明10と甲1インク発明6を対比すると、一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクであって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、水系インク。」
<相違点8>
「水系インク」について、本件訂正発明10は、「インクジェット記録用」と特定されているのに対し、甲1インク発明6は、そのような特定を備えていない点
<相違点9>
「酸化チタンの含有量」について、本件訂正発明10は、「水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1インク発明6は、水系インク中の含有量が不明である点
<相違点10>
「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明10は、粒径が「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明6の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(アナターゼ型、一次粒子径:180nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが226nmである粒子(二酸化チタン粒子)」というものであって、「体積平均径のピーク」が「226nm」であると特定されている点
<相違点11>
「酸化チタン」の材質について、本件訂正発明10は、材質が「ルチル型」に特定されているのに対し、甲1発明6の「酸化チタン」は、材質が「アナターゼ型」に特定されている点
また、相違点8~11は、それぞれ、実質的に相違点4~7に相当する。
そうすると、上記(ウ)~(カ)と同様の検討により、本件訂正発明10は、甲1インク発明6及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
また、本件訂正発明11は、本件訂正発明10を引用し、さらに、「水系インクが、ポリマー分散剤で分散された酸化チタンの粒子を含む酸化チタン分散体を含有し、該酸化チタン分散体の粒子の平均粒子径が、150nm以上500nm以下である」点を限定した発明に該当するところ、上記のとおり、本件訂正発明10は、甲1インク発明6及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明11も、本件訂正発明10と同様の理由により、甲1インク発明6及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(ケ) 取消理由3のうち、甲1の実施例6に基づき引用発明を認定するものについての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8~11を取消理由3のうち、甲1の実施例6に基づき引用発明を認定するものによって取り消すことはできない。
エ 取消理由3のうち、甲1の実施例7に基づき引用発明を認定するものについて
甲1の実施例7に基づき引用発明を認定する場合のうち、請求項1~6、8、9に係る発明の特許に関するものは、取消理由通知において採用したものである(上記1(2)を参照。)。また、上記第2のとおり、本件訂正によって請求項7が削除されている。 したがって、請求項10、11に係る発明の特許に関するものについて以下に検討する。
上記1(2)ウを参照すると、甲1には、甲1発明の印刷方法に用いる以下の水性インクの発明(以下、「甲1インク発明」ともいう。)も記載されていると認められる。
<甲1インク発明>
「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)を固形分濃度で20重量%、分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%、及び、水酸化ナトリウムを、pHが8付近になるような量で含有する、二酸化チタン粒子が水に懸濁したスラリー、を含有する水性インク」
上記1(2)エ(ア)を踏まえて、本件訂正発明10と甲1インク発明を対比すると、その一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクであって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、水系インク。」
<相違点12>
「水系インク」について、本件訂正発明10は、「インクジェット記録用」と特定されているのに対し、甲1インク発明は、そのような特定を備えていない点
<相違点13>
「酸化チタンの含有量」について、本件訂正発明10は、「水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1インク発明は、水系インク中の含有量が不明である点
<相違点14>
「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明10は、「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1インク発明の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)」と特定されているものであって、その「平均一次粒子径」が不明である点
また、相違点12~14は、それぞれ、実質的に相違点1~3に相当する。
そうすると、上記1(2)エ(イ)~(オ)と同様の検討により、本件訂正発明10は、甲1インク発明及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
また、本件訂正発明11は、本件訂正発明10を引用し、さらに、「水系インクが、ポリマー分散剤で分散された酸化チタンの粒子を含む酸化チタン分散体を含有し、該酸化チタン分散体の粒子の平均粒子径が、150nm以上500nm以下である」点を限定した発明に該当するところ、上記のとおり、本件訂正発明10は、甲1インク発明及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明11も、本件訂正発明10と同様の理由により、甲1インク発明及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(コ) 取消理由3のうち、甲1の実施例7に基づき引用発明を認定するものについての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明10、11を取消理由3のうち、甲1の実施例7に基づき引用発明を認定するものによって取り消すことはできない。
オ 取消理由3のうち、甲1の実施例8に基づき引用発明を認定するものについて
(ア) 甲1発明8、および、甲1インク発明8
甲1には、上記1(2)イ(ア)に摘記した事項が記載されており、甲1の実施例7に基づいて認定した引用発明は、上記1(2)ウのとおりである。また、実施例7は、「酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが226nmになった時点でスラリーを回収した。」というものであり、実施例8は、「酸化チタンを市販の二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)に変更した以外は実施例5と同様に実施し、体積平均径のピークが267nmになった時点でスラリーを回収した。」というものである。
そうすると、甲1の実施例8に基づいて認定した引用発明(以下、「甲1発明8」ともいう。)は、以下のとおりである。
また、甲1には、甲1発明8の印刷方法に用いる水性インクの発明(以下、「甲1インク発明8」ともいう。)も記載されていると認められる。
<甲1発明8>
「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが267nmである粒子(二酸化チタン粒子)を固形分濃度で20重量%、分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%、及び、水酸化ナトリウムを、pHが8付近になるような量で含有する、二酸化チタン粒子が水に懸濁したスラリー、を含有する水性インクを用いる印刷方法」
<甲1インク発明8>
「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが267nmである粒子(二酸化チタン粒子)を固形分濃度で20重量%、分散剤(第一工業製薬社製、シャロールAN103P)を顔料(二酸化チタン粒子)の重量に対して乾燥重量で2重量%、及び、水酸化ナトリウムを、pHが8付近になるような量で含有する、二酸化チタン粒子が水に懸濁したスラリー、を含有する水性インク」
(イ) 本件訂正発明1と甲1発明8の対比
上記1(2)エ(ア)を踏まえると、本件訂正発明1と甲1発明8の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いる記録方法であって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、記録方法。」
<相違点15>
「記録方法」について、本件訂正発明1は、「インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって」、「該記録装置が該水系インク中の該酸化チタンを分散する分散手段を有し、下記工程1及び2を有する、インクジェット記録方法。」、「工程1:該水系インクを分散手段により再分散する工程」、「工程2:工程1で再分散した水系インクを吐出して記録媒体に記録する工程」と特定されているのに対し、甲1発明8は、そのような特定を備えていない点
<相違点16>
「酸化チタンの含有量」について、本件訂正発明1は、「水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明8は、水系インク中の含有量が不明である点
<相違点17>
「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明1は、粒径が「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明8の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが267nmである粒子(二酸化チタン粒子)」というものであって、「体積平均径のピーク」が「267nm」であると特定されている点
(ウ) 検討
事案に鑑み、相違点17について検討すると、相違点17は、上記(イ)のとおりであり、相違点3は、「「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明1は、「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1発明の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが348nmである粒子(二酸化チタン粒子)」と特定されているものであって、その「平均一次粒子径」が不明である点」(上記1(2)エ(ア)参照。)というものである。
そうすると、相違点17は、相違点3において、「甲1発明」を「甲1発明8」に変更し「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:35nm)」を「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)」に変更するとともに、(「体積平均径のピーク」が)「348nm」」を「267nm」に変更したときの相違点に相当する。
以上を踏まえると、上記1(2)エ(イ)と同様の理由により、甲1には、甲1発明8の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得る記載をなにも見いだせない。
また、甲2、甲3、及び技術常識(異議申立人が提出した甲4~17に記載されている事項を含む)をみても、せいぜい、微粒子の粒径について、その測定対象を一次粒子とする例が存在することや、粒径を粒径分布に基づく数平均とすることが周知であったといえる程度に留まるのであって、甲1発明8において、甲1発明の「酸化チタン」の一次粒子径に着目し、その好ましい範囲を粒径分布に基づく数平均で「100nm以上600nm以下」とする動機付けとはなり得るものではない。
(エ) 効果について
上記1(2)エ(ウ)と同様の理由により、本件訂正発明1が奏する「再分散に係る効果」は、そもそも、酸化チタンが沈降したインクジェット記録用水系インクを攪拌により再分散して用いることを想定していない甲1発明8に基づいて当業者が予測することのできない顕著なものであると認められる。
(オ) 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書39~41頁「キ. 本件特許発明7について」の項で、概略、以下の主張をしている。
a 甲1の段落【0008】、【0064】の記載に基づき、実施例8のルチル型二酸化チタンの平均一次粒子径を大きくする(100nm以上)動機付けが存在し、甲1の段落【0012】の記載を勘案すれば平均一次粒子径を大きくすると「白色度が一層向上する」効果は予測可能である。
b インク粘度が高ければ、消泡性、再分散性、吐出性が悪化することは常識的(甲11~13)に明らかである。
c 甲14の実施例1、2に、平均一次粒子径0.13μm(130nm)の二酸化チタンを含有するインク組成物の隠蔽性(つまり白色度)や吐出安定性が優れることが開示されており、甲15の実施例1~38には、一次粒子径が0.24μm(240nm)や0.25μm(250nm)の二酸化チタンを含有する白色インク組成物の再分散性が良好であることが開示されているから、一次粒子径が100~600nm範囲において白色度だけではなく、吐出性や再分散性に優れることも周知のことであり、予測可能である。
しかしながら、上記aについては上記1(2)エ(イ)で検討したとおりであり、採用できない。
また、上記bは、本件訂正発明1が奏する「再分散に係る効果」に関するものではないから、上記(エ)の判断を左右するものではない。
また、上記cについては、甲14に係るインク組成物の再分散性は不明であり、甲15の白色インク組成物の隠蔽性も不明である。また、甲14の実施例1、2に係るインク組成物は、分散剤を含有せず、溶媒として水とグリセリンを含むのに対し、甲15の例えば実施例1に係るインク組成物は、分散剤を含有し溶媒として水のみを含むものである点で組成が大きく異なるものであって、これらのインク組成物の共通点は、単にインクジェットインクであるという程度に過ぎない。そうすると、これらの事例が個別に知られていたからといって、直ちに一次粒子径が100~600nm範囲において白色度だけではなく、吐出性や再分散性に優れることも周知であるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張はいずれも採用できない。
(カ) 本件訂正発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1発明8及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(キ) 本件訂正発明2~6、8、9について
本件訂正発明2~6、8、9は、本件訂正発明1を直接または間接的に引用し、さらに、有機溶媒の沸点(本件訂正発明2)、界面活性剤を含有する点(本件訂正発明3)、ポリマー分散剤の含有割合(本件訂正発明4)、ポリマー分散剤の酸価(本件訂正発明5)、水系インクの粘度(本件訂正発明6)、酸化チタンの平均粒子径(本件訂正発明8)、分散手段(本件訂正発明9)、を限定した発明に該当する。
また、上記のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明8及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明2~6、8、9も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明8及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(ク) 本件訂正発明10、11について
上記(イ)を踏まえて、本件訂正発明10と甲1インク発明8を対比すると、一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクであって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は、アクリル酸若しくはメタクリル酸と、マレイン酸、スルホン酸基含有ビニルモノマー、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種との共重合体であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下である、水系インク。」
<相違点18>
「水系インク」について、本件訂正発明10は、「インクジェット記録用」と特定されているのに対し、甲1インク発明8は、そのような特定を備えていない点
<相違点19>
「酸化チタンの含有量」について、本件訂正発明10は、「水系インク中、3.0質量%以上15質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1インク発明8は、水系インク中の含有量が不明である点
<相違点20>
「酸化チタン」の粒径について、本件訂正発明10は、粒径が「平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」と特定されているのに対し、甲1インク発明8の「酸化チタン」は、「二酸化チタン粉体(ルチル型、一次粒子径:15nm)から製造した二酸化ジルコニウム被覆二酸化チタン粉体の焼結体を粉砕して得た、体積平均径のピークが267nmである粒子(二酸化チタン粒子)」というものであって、「体積平均径のピーク」が「267nm」であると特定されている点
また、相違点18~20は、それぞれ、実質的に相違点15~17に相当する。
そうすると、上記(ウ)~(カ)と同様の検討により、本件訂正発明10は、甲1インク発明8及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
また、本件訂正発明11は、本件訂正発明10を引用し、さらに、「水系インクが、ポリマー分散剤で分散された酸化チタンの粒子を含む酸化チタン分散体を含有し、該酸化チタン分散体の粒子の平均粒子径が、150nm以上500nm以下である」点を限定した発明に該当するところ、上記のとおり、本件訂正発明10は、甲1インク発明8及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件訂正発明11も、本件訂正発明10と同様の理由により、甲1インク発明8及び甲1~甲6に記載されている事項及び参考として甲7~15に記載されている事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(ケ) 取消理由3のうち、甲1の実施例8に基づき引用発明を認定するものについての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8~11を取消理由3のうち、甲1の実施例8に基づき引用発明を認定するものによって取り消すことはできない。
カ 取消理由3についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8~11を、取消理由3によって取り消すことはできない。
(3) 取消理由4について
ア 取消理由4の概要
異議申立人が主張する取消理由4は、具体的には、以下のとおりである。
(ア) 実施例8の結果は、比較例9の結果よりも悪いものであり、本件特許発明において実施例8の評価結果は不合格と判断されるべきものである。よって、本件特許発明1及び本件特許発明10、並びにこれらに従属する本件特許発明2~9、11は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を包含していることが明らかである。(特許異議申立書43頁10行~44頁2行)
(イ) 本件特許発明の実施例の欄の記載によると、再分散性、吐出性の評価には、ポリマーエマルションEM-1やプロピレングリコール等の添加が必要であることを本件特許明細書は示唆しているが、本件特許発明1~11は、ポリマーエマルションEM-1やプロピレングリコール等について何ら特定していない。よって、本件特許発明1~11は、再分散性、吐出性の効果を奏するために必須の要件を欠いており、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。(特許異議申立書44頁3行~45頁1行)
(ウ) 本件特許発明の全ての実施例においては、表面処理された酸化チタンが使用されているが、表面処理は、水系インク中における良好な分散性を得る観点から行われるものであるため、再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性といった本件特許発明の効果を奏するために必須の要件であると思料される。この点、本件特許発明1~11は、酸化チタンの表面処理について何ら特定していない。よって、本件特許発明1~11は、本件特許発明の効果を奏するために必須な要件を欠いており、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。(特許異議申立書45頁2~17行)
(エ) 比較例11は、本件特許発明1の全ての要件を満たしているが、その評価結果は不合格と判定されている。よって、本件特許発明1~6は、その効果を奏することのできない発明を包含しており、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。(特許異議申立書45頁18行~46頁9行)
(オ) 再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性は、インク粘度に大きく依存する特性であり、このことは本件特許発明の実施例及び比較例の結果についても当てはまっていることが、表3~6に基づき、本件特許発明の実施例及び比較例におけるインク粘度と、再分散性、抑泡性・消泡性(泡立ち性)、吐出性の関係を示すために作成した図1~3をみれば理解できる。また、同様の傾向があることについて、甲12(粘度が高ければ消泡性が悪化することが開示されている)、甲11(粘度が3.0mPa・s以上12.0mPa・s未満で優れた吐出生徒、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できると記載されている)、甲13(増粘したインクはノズルで目詰まりを起こし、インクの吐出不良を発生させることなどが記載されている)が参考にできる。以上のとおり、インク粘度は本件特許発明の効果を奏するために重要な要件であり、ある程度以下の粘度でなければ、本件特許発明の効果は得られないことが予測でき、実際、インク粘度が6.3mPa・s超で本件特許発明の効果を奏するものは得られていない。この点、本件特許発明1~11は、インク粘度について何ら特定していない。よって、本件特許発明1~11は、再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性の効果を奏するために必須の要件を欠いており、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。
[図:0001393987000010.jpg]
[図:0001393987000011.jpg]
[図:0001393987000012.jpg]
(特許異議申立書46頁10行~49頁18行)
(カ) 本件特許発明の実施例の水系インクは、水系インク中のポリマーの含有量が多くなればインク粘度が上昇することは技術常識であるところ、本件特許発明1~11では、ポリマーエマルジョンEM-1に由来するポリマー(固形分)の含有量について何ら特定していない。さらに、ポリマーエマルジョンEM-1には乳化剤であるラテムルE-118Bが含有されているが、甲16によれば重合後のエマルションの粘度を低くする作用を有する乳化剤であり、インク粘度の上昇を抑制しているといえる。しかし、本件特許発明1~11は、乳化剤の種類、及びその含有量についても同様何ら特定していない。よって、本件特許発明1~11は、再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性の効果を奏するために必須の要件を欠いており、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。(特許異議申立書49頁19行~51頁11行)
(キ) 本件特許明細書の【0010】の記載によれば、未吸着ポリマー分散剤が存在すると、インク粘度が上昇することが開示されているといえる。また、インク粘度が上昇すると本件特許発明の効果を得られない可能性がある。しかしながら、本件特許発明1及び本件特許発明10では未吸着ポリマー分散剤をどの程度とするかについては一切規定されていない。よって、本件特許発明1~11は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。(特許異議申立書51頁12行~53頁2行)
(ク) 本件特許発明1では、再分散の条件については一切規定されていないが、再分散の条件によっては、多量に起泡しインク吐出までに吐出しきれない可能性がある。よって、再分散に関する条件が規定されていない本件特許発明1~9は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている」といえる。(特許異議申立書52頁3~18行)
イ 検討手法
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
ウ 発明の詳細な説明の記載
本件特許の願書に添付された明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、以下の記載がある。
「【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0005】しかしながら、酸化チタンは比重が高いため、低粘度であるインクジェット記録用インクに用いた場合、印刷の休止等により、記録装置内のインク流路中で流れが一旦停止すると、インク流路内で酸化チタンの沈降又は凝集が生じるという問題がある。続きを表示(全27行)特許文献1及び2に記載の顔料分散剤は、高粘度である塗料を主用途としており、インクジェット記録用水系インクに用いると、酸化チタンの沈降又は凝集後の十分な再分散性が得られないという問題があった。また、特許文献3では、再分散性の乏しい白色インクを用いると、インクの循環を定期的に行ってもノズルを詰まらせるおそれがあり、その上、印刷を休止した場合にはインクを循環させて沈降を防止する必要があった。さらに、インクを再分散させる際にせん断(循環、振とう、撹拌)を掛けることによってインクが起泡し、それが記録ヘッドへ悪影響を及ぼし吐出性が悪化するという問題もあった。このためインク組成自体の再分散性、抑泡性、消泡性の改善が求められている。本発明は、隠蔽性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に、優れた抑泡性又は消泡性により速やかにインク物性が回復する水系インクを用いることにより、良好な吐出性を得ることができるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。なお、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。また、本発明における「再分散」とは、水系インク中で分散している酸化チタンが、静置等により水系インク中で沈降又は凝集した状態となった後、この状態から、再度水系インク中で分散した状態に戻すことをいう。【課題を解決するための手段】【0006】本発明者は、ルチル型酸化チタン及び特定のポリマー分散剤を特定割合で含有させた水系インクを、分散手段により再分散する工程を有するインクジェット記録方法により、前記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。[1]ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクを用いて、インクジェット記録装置により記録するインクジェット記録方法であって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が3,000以上50,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタンに対して1質量%以上7質量%以下であり、該記録装置が該水系インク中の該酸化チタンを分散する分散手段を有し、下記工程1及び2を有する、インクジェット記録方法。工程1:該水系インクを分散手段により再分散する工程工程2:工程1で再分散した水系インクを吐出して記録媒体に記録する工程[2]ルチル型酸化チタンとポリマー分散剤を含有する水系インクであって、該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり、該ポリマー分散剤の重量平均分子量が3,000以上50,000以下であり、該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタンに対して1質量%以上7質量%以下である、インクジェット記録用水系インク。」
「【0010】本発明のインクジェット記録方法によれば、ルチル型酸化チタンの沈降又は凝集後の再分散性に優れると共に、抑泡性、消泡性に優れる水系インクを用いることにより、再分散時に発生する泡立ちを抑制、消泡することで良好な吐出性を得ることができるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。本発明で用いる水系インクは、顔料としてルチル型酸化チタンを用いるが、ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり、その重量平均分子量は3,000以上50,000以下である。ポリマー分散剤のアニオン性基は、酸化チタン表面に吸着する吸着基として働くだけでなく、負の電荷に帯電し、酸化チタン粒子間で電荷的な斥力により凝集及び沈降を抑制することができると考えられる。さらに、ポリマー分散剤はアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72重量%以上有するため、電気的な斥力により凝集及び沈降を抑制する効果が非常に高いと考えられる。この結果、印刷中又は印刷の休止により、酸化チタンが沈降又は凝集したとしても、攪拌等の簡単な機械力を付与すれば容易に再分散されるものと考えられる。ここでポリマー分散剤は、アニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有するため、殆どが吸着基として働き、酸化チタンに吸着しないポリマー量が少ない。また、重量平均分子量も比較的小さいので酸化チタンに吸着しないポリマーによる増粘作用も小さい。そのため、未吸着ポリマー分散剤によるインク溶媒の粘度上昇を抑制できること、吸着基成分以外の部位が少ないため空気の抱き込みを抑制できることにより、抑泡性、消泡性に優れることとなり、再分散時に発生する泡立ちを抑制、消泡する効果が優れると考えられる。水系インク液中の泡がなくなれば又は泡が少なくなれば、インク吐出時の泡によるノズル欠けがなくなり、吐出性が良好になると考えられる。」
「【0053】(ポリマー分散剤の製造)製造例1(ポリマー分散剤P1の製造)滴下ロートを備えたガラス製反応容器2Lに水233gを仕込み、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。次に、窒素ガス雰囲気下、滴下溶液1としてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMAA:エチレンオキシド(EO)平均付加モル数n=23、新中村化学工業株式会社製、商品名「NKエステルM-230G」)47.0g、スチレンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)70.0g、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)117.0gのモノマー溶液と、滴下溶液2として濃度15%の2-メルカプトエタノール水溶液(東洋紡績株式会社製)30.0gと、滴下溶液3として濃度6%の過硫酸アンモニウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)32.0gの3液を各々同時に90分かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、80℃で1時間熟成させた。その後、40℃まで冷却し、濃度48%NaOH水溶液(和光純薬工業株式会社製)45.5gを加えて中和度50%にし、固形分濃度が40%となるように水を加えて、ポリマー分散剤P1の溶液を得た。結果を表1に示す。」
「【0055】【表1】[図:0001393987000013.jpg]【0056】続きを表示(全151行)製造例3(顔料を含有しないポリマーエマルションの水分散体の製造)1000mLセパラブルフラスコ中にメチルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)145部、2-エチルヘキシルアクリレート(和光純薬工業株式会社製)50部、メタクリル酸(和光純薬工業株式会社製)5部、ラテムルE118B(花王株式会社製、乳化剤、有効分26%)18.5部、イオン交換水96部、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)を仕込み、撹拌羽根で撹拌を行い(300rpm)モノマー乳化液を得た。反応容器内に、ラテムルE118B 4.6部、イオン交換水186部、過硫酸カリウム0.08部を入れ窒素ガス置換を十分行った。窒素雰囲気下、撹拌羽根で攪拌(200rpm)しながら80℃まで昇温し、上記モノマー乳化液を滴下ロート中に仕込みのこのモノマー乳液を3時間かけて滴下、反応させた。この反応液にイオン交換水を加え有効分を20%とすることで顔料を含有しないポリマーエマルションEM-1を得た。このポリマーエマルションEM-1の平均粒径は100nmであった。【0057】実施例1(1)酸化チタン分散体の製造250mLのポリエチレン瓶に、予めポリマー分散剤としてポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業株式会社製:Mw5000)0.3gと5N-NaOH水溶液(和光純薬工業株式会社製)0.21gとイオン交換水1gを混ぜて溶解させていたものを投入し、次に酸化チタンKURONOS KR―380(ルチル型:チタン工業株式会社製、Al・Si処理、平均一次粒子径:355nm(カタログ値300~500nm))を15g、イオン交換水を14.3g加え、最後に2mmジルコニアビーズ369gを添加して、卓上型ポットミル架台(アズワン株式会社)にて250rpmで8時間の分散を行った。分散後メッシュを用いてジルコニアビーズを除去し、水で固形分濃度を調整して、表2に示したように平均粒子径325nmの酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。(2)水系インクの製造得られた酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を用いて、水系インク中に酸化チタンが10質量%となるように、以下の組成にて混合し、得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより水系インクを得た。<組成>酸化チタン分散体 34.2部プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)30.0部ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)5.0部製造例3で得られたポリマーエマルションEM-1 5.0部ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、KF-6011)0.1部イオン交換水 25.7部【0058】(3)隠蔽性の評価得られた水系インクの隠蔽性評価を以下の方法により行ったところ、印字濃度0.47となり、充分な隠蔽性を得ることができた。結果を表2示す。【0059】<水系インクの隠蔽性の評価>水系インクをコロナ放電処理PET(フタムラ化学製、太閤ポリエステルフィルムFE2001)にバーコーターNO2を用いて塗布し60℃の乾燥機で10分間乾燥させ測定物を得た。隠蔽率測定紙(JIS検定品、大佑機材株式会社)の黒色部にインクを塗布したOHPフィルムを、印刷面を上にして載せ、その上から分光光度計SpectroEye(GretagMacbeth社)にて黒の印字濃度を測定し、以下のように白色度を評価した。水系インクは調製直後の水系インクを用いた。黒の印字濃度が0.5以下であれば白色インクとして隠蔽性は十分であるが、0.5を超えると不十分である。【0060】比較例1(1)酸化チタン分散体の製造酸化チタンをKURONOS KA-20(アナターゼ型:チタン工業株式会社製、平均一次粒子径355nm)にし、卓上ポットミル架台での分散時間を6時間にした以外は実施例1と同様に行い、平均粒子径315nmの酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。(2)水系インクの製造、隠蔽性の評価実施例1と同様の方法でインクを得た製造し、隠蔽性評価を行ったところ、印字濃度0.58となり、隠蔽性が不十分であった。結果を表2示す。【0061】【表2】[図:0001393987000014.jpg]【0062】実施例2(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価酸化チタンをCR-80(ルチル型:石原産業式会社製、Al・Si処理、平均一次粒子径250nm)にした以外は実施例1と同様に行い、平均粒子径303nmの酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン(TiO2)分散体の泡立ち性評価を以下の方法で行った。結果を表3に示す。<酸化チタン分散体の泡立ち性の評価>酸化チタン分散体を50mLスクリュー管に30g入れ、スクリュー管を横にしてマルチシェーカーMMS-210(東京理化機械株式会社)にて150rpm、300秒間の条件で振とうし、その直後から目視により消泡するまでの時間を測定した。以下の評価基準により泡立ち性を評価した。この消泡までの時間が短い程、抑泡性又は消泡性が良好でありインクの吐出性が安定になることを意味する。(評価基準)◎:消泡までの時間が5秒未満○:消泡までの時間が5秒以上10秒未満△:消泡までの時間が10秒以上30秒未満×:消泡までの時間が30秒以上(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価ポリマー分散剤としてポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業株式会社製:Mw5000)を用いて、実施例1と同様の方法で粘度5.5mPa・sの水系インクを得た。得られた水系インクの再分散性と吐出性の評価を以下の方法で行った。結果を表3に示す。【0063】<水系インクの再分散性の評価>水系インクを50mLスクリュー管に30g入れ、70℃にて7日間静置した後、スクリュー管を横にしてマルチシェーカーMMS-210(東京理化機械株式会社)にて150rpm、60秒間の条件で振とうした。その直後、スクリュー管内の水系インクの上液面から2gをピペットで採取した。ここで用いた振とう条件はインクジェットプリンタ装置の簡易再分散手段を想定したものである。このようにして得られた採取サンプル1gにイオン交換水を加えて2500倍に希釈した。次いで、分光光度計U-3010(株式会社日立ハイテクサイエンス)を用いて、希釈したサンプルの波長500nmにおける吸光度(Abs値)を測定した。調製直後の各水系インクを蒸留水で2500倍に希釈したサンプルの吸光度から、下記式を用いて再分散率を求めた。再分散率(%)=100×(70℃で7日間静置及び振とう後の上澄みの吸光度/調製直後の吸光度)以下の評価基準により再分散性を評価した。この再分散率の値が大きい程、再分散性が良好であることを意味する。(評価基準)◎:再分散率が97%以上100%以下○:再分散率が95%以上97%未満△:再分散率が80%以上95%未満×:再分散率が80%未満【0064】<水系インクの吐出性の評価>コロナ放電処理PET(フタムラ化学製、太閤ポリエステルフィルムFE2001)に、水系インクを用いて、以下のインクジェット記録方式により画像を形成した。(インクジェット記録方式)温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、記録ヘッド(京セラ株式会社製、「KJ4B-HD06MHG-STDV」、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)を用いて吐出性評価をした。記録媒体の搬送台にA4サイズのフィルムヒーター(河合電器製作所製)を固定して、記録媒体を加温できるようにした。ヘッド電圧26V、周波数20kHz、吐出液適量5pl、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧-4.0kPaを設定し、記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、記録媒体をフィルムヒーターに固定した。この装置に、予め、50mLスクリュー管に水系インク30gを入れたスクリュー管を横にしてマルチシェーカーMMS-210にて150rpm、60秒間の条件で振とうした後、印刷装置へこの水系インクを速やかに充填した。その直後印刷評価装置に印刷命令を転送し、全てのノズルから吐出したかどうか判別できる印刷チェックパターンを紙上に印字した。この際のノズル欠け(正常に吐出していないノズル)数をカウントし、以下の評価基準により吐出性を評価した。閉塞数が少ないほど吐出性が良好である。(評価基準)5:ノズル欠けなし4:ノズル欠け1~23:ノズル欠け3~52:ノズル欠け6~101:ノズル欠け11以上【0065】実施例3(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価ポリマー分散剤をポイズ530(アクリル酸ポリマー:花王株式会社製:Mw38000:中和度100%)に変更し、5N-水酸化ナトリウム水溶液を添加しなかった以外は実施例2と同様に行い、酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表3に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表3に示す。【0066】実施例4(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価ポリマー分散剤をポイズ520(アクリル酸/マレイン酸共重合ポリマー:花王株式会社製:Mw20000:中和度100%)にした以外は実施例3と同様に行い、酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表3に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表3に示す。【0067】実施例5(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価ポリマー分散剤をアロン6012(アクリル酸/アクリルアミドt-ブチルスルホン酸共重合ポリマー:東亞合成株式会社製:Mw6000:中和度100%)にした以外は実施例3と同様に行い、酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表3に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表3に示す。【0068】実施例6(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価250mLのポリエチレン瓶に、ポリマー分散剤P1を0.75gとイオン交換水を15g、酸化チタンCR-80を15g入れて卓上型ポットミル架台にて250rpm・8時間の分散を行った以降は実施例1と同様に行い、酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表3に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表3に示す。【0069】実施例7、及び比較例2~5(1)酸化チタン分散体の製造と評価ポリマー分散剤を表3に示すものに変更した以外は実施例6と同様に行い、酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表3に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表3に示す。【0070】比較例6・・・【0071】比較例7・・・【0072】【表3】[図:0001393987000015.jpg]【0073】実施例8(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価ポリマー分散剤の量を0.75gにした以外は実施例3と同様に行い、酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表4に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価酸化チタン分散体35.0部、イオン交換水24.9部にした以外は実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表4に示す。【0074】比較例8・・・【0075】【表4】[図:0001393987000016.jpg]【0076】比較例9?10・・・実施例1と同様の方法で水系インクを得た。実施例6の結果と合わせて、結果を表5に示す。【0077】【表5】[図:0001393987000017.jpg]【0078】実施例9(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価酸化チタンをCR-834(ルチル型:Tronox社製、Al・Si・Zr処理、平均一次粒子径170nm)にした以外は実施例2と同様に行い、平均粒子径250nmの酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表6に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。結果を表6に示す。比較例11(1)酸化チタン分散体の製造と泡立ち性評価酸化チタンをMT―700HD(ルチル型:テイカ株式会社製、Al・Zr処理、平均一次粒子径50nm)にした以外は実施例6と同様に行い、平均粒子径200nmの酸化チタン分散体(固形分濃度30質量%)を得た。得られた酸化チタン分散体の泡立ち性評価結果を表6に示す。(2)水系インクの製造と再分散性、吐出性の評価実施例1と同様の方法で水系インクを得た。実施例6の結果と併せて、結果を表6に示す。【0079】【表6】[図:0001393987000018.jpg]【0080】表3から、実施例2~7は、比較例2~7に比べて、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなるポリマー分散剤を用いることで再分散性、吐出性に優れたインクジェット記録物を得ることができることが分かる。表4から、実施例3及び8は、比較例8に比べて、水系インク中のポリマー分散剤の含有量が酸化チタンに対して1質量%以上7質量%以下であるため、再分散性、吐出性に優れることが分かる。表5から、実施例6は、比較例9及び10に比べて、ポリマー分散剤の重量平均分子量が3,000以上50,000以下であるため、再分散性、吐出性に優れることが分かる。また、表6から、用いた酸化チタンの平均一次粒子径が170nmの実施例9、及び平均一次粒子径が250nmの実施例6は、平均一次粒子径が50nmの比較例11に比べて、泡立ち性、再分散性、吐出性に優れることが分かる。」
エ 本件訂正発明が解決しようとする課題
本件訂正発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の特に段落【0005】の記載に基づいて、「隠蔽性を有し、ルチル型酸化チタンが沈降しても簡易な攪拌により容易に再分散すると共に、優れた抑泡性又は消泡性により速やかにインク物性が回復する水系インクを用いることにより、良好な吐出性を得ることができるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録用水系インクを提供すること」であると認められる。
オ 検討
(ア) 上記イの検討手法に沿った検討
上記ウのとおり、発明の詳細な説明には「本発明のインクジェット記録方法によれば、ルチル型酸化チタンの沈降又は凝集後の再分散性に優れると共に、抑泡性、消泡性に優れる水系インクを用いることにより、再分散時に発生する泡立ちを抑制、消泡することで良好な吐出性を得ることができるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明で用いる水系インクは、顔料としてルチル型酸化チタンを用いるが、ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり、該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり、その重量平均分子量は3,000以上50,000以下である。
ポリマー分散剤のアニオン性基は、酸化チタン表面に吸着する吸着基として働くだけでなく、負の電荷に帯電し、酸化チタン粒子間で電荷的な斥力により凝集及び沈降を抑制することができると考えられる。さらに、ポリマー分散剤はアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72重量%以上有するため、電気的な斥力により凝集及び沈降を抑制する効果が非常に高いと考えられる。この結果、印刷中又は印刷の休止により、酸化チタンが沈降又は凝集したとしても、攪拌等の簡単な機械力を付与すれば容易に再分散されるものと考えられる。
ここでポリマー分散剤は、アニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有するため、殆どが吸着基として働き、酸化チタンに吸着しないポリマー量が少ない。また、重量平均分子量も比較的小さいので酸化チタンに吸着しないポリマーによる増粘作用も小さい。そのため、未吸着ポリマー分散剤によるインク溶媒の粘度上昇を抑制できること、吸着基成分以外の部位が少ないため空気の抱き込みを抑制できることにより、抑泡性、消泡性に優れることとなり、再分散時に発生する泡立ちを抑制、消泡する効果が優れると考えられる。水系インク液中の泡がなくなれば又は泡が少なくなれば、インク吐出時の泡によるノズル欠けがなくなり、吐出性が良好になると考えられる。」(【0010】)と記載されている。
また、本件訂正発明の実施例が9例記載されているとともに、「隠蔽性」、「泡立ち性」、「再分散性」、及び、「吐出性」の評価がいずれも優れていること、一方、「該ポリマー分散剤が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー由来の構成単位を72質量%以上含有してなり」を充足しない態様(比較例2~7)では再分散性及び吐出性に劣ること(【表3】)、「該ポリマー分散剤の含有量が該酸化チタン100質量部に対して1質量部以上7質量部以下であり」を充足しない態様(比較例8)では再分散性及び吐出性に劣ること(【表4】)、「該ポリマー分散剤の重量平均分子量が5,000以上40,000以下であり」を充足しない態様(比較例9、10)では再分散性及び吐出性に劣ること(【表5】)、及び、「該ルチル型酸化チタンの平均一次粒子径が、100nm以上600nm以下であり」を充足しない態様(比較例1、11)では隠蔽性、泡立ち性、再分散性及び吐出性に劣ること(【表2】、【表6】)も理解できる。
そして、上記理解は、段落【0010】に記載されている事項とも整合するものである。
そうすると、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
(イ) 上記アの異議申立人が主張する取消理由4についての検討
上記ア(ア)は、要するに実施例8の結果が比較例9の結果よりも悪いから、実施例8を比較例とすべきであり、そうであるならば、本件訂正発明は、その課題を解決することができない態様を含むといえる、というものであると解されるが、本件訂正発明が解決しようとする課題は、上記イのとおりであって、比較例9よりも優れたインクジェット記録方法等の提供ではないし、解決したといえる基準が定められているものではないから、実施例8の再分散性△(:再分散率が80%以上95%未満、【0063】)、吐出性2(:ノズル欠け6~10、【0064】)も、課題を解決しているものと理解できる。
また、上記ア(イ)、(ウ)、(オ)~(ク)は、要するに、本件訂正発明において特定されていない事項の中には、ポリマーエマルションEM-1やプロピレングリコール等の添加に関する事項(上記ア(イ))や、酸化チタンの表面処理に関する事項(上記ア(ウ))や、インクの粘度に関する事項(上記ア(オ))や、ポリマーの含有量に関する事項(上記ア(カ))や、未吸着ポリマー分散剤の存在に関する事項(上記ア(キ))や、再分散の条件に関する事項(上記ア(ク))などの、再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性の効果に関連する事項があり、これらの条件を変更すれば再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性の効果が劣るものになるので、本件訂正発明は、その課題を解決できない態様を含みうる、というものであると解される。しかし、それらの事項については条件を揃えた上で、本件訂正発明に該当する態様と該当しない態様とを比較すれば、当然、本件訂正発明に該当する態様のほうが再分散性、抑泡性・消泡性、吐出性の効果が優れたものとなり、その課題を解決することができると理解できると認められるし、本件訂正発明の構成を特定すれば課題を解決できるといえることは、上記(ア)のとおりである。
また、上記ア(エ)は、取消理由通知において採用した取消理由2である。
したがって、上記アの異議申立人が主張する取消理由4は、いずれも、採用できない
カ 取消理由4についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8~11を、取消理由4によって取り消すことはできない。
(4) 取消理由5について
ア 判断手法
特許法第36条第4項第1号は、実施可能要件として、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」と定めるところ、物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいい(特許法2条3項1号),方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をすることをいうから(同項2号),物の発明については,その物を製造する方法についての具体的な記載が,方法の発明については,明細書にその方法を使用できるような記載が,それぞれ必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造し,又はその方法を使用することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。
イ 検討
(ア) 上記アの検討手法に沿った検討
上記(3)ウのとおり、発明の詳細な説明には、本件訂正発明の実施例が9例も記載されていることや、インクジェット記録方法の技術分野における技術常識を勘案すれば、発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」と認められる。
(イ) 異議申立人の主張についての検討
異議申立人が主張する取消理由5は、要するに、サポート要件を満たしていない発明は当業者が実施できないため、実施可能要件を満たしていない、というものであり、サポート要件を満たしていない理由として上記(3)ア(ア)~(ク)を主張するものである(特許異議申立書(43頁8行~52頁18行)。
しかしながら、上記アの検討手法に照らすと、異議申立人が主張する取消理由5は、検討するまでもなく採用できない。
ウ 取消理由5についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1~6、8~11を、取消理由5によって取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6、8~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6、8~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項7に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2021-701017