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特許異議申立

2023-701203

コーティング材組成物、および積層体

審判番号
2023-701203
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-233395
登録番号
7293630
請求日
2023年11月14日
審決日
2025年03月11日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】DIC株式会社
  • 【権利者代理人】小川 眞治
  • 【権利者代理人】岩本 明洋
  • 【権利者代理人】大野 孝幸
  • 【異議申立人】浅野 幸義
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 光本 美奈子
  • 審判官 弘實 由美子
分類
P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7293630号発明「コーティング材組成物、および積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7293630号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第7293630号の請求項1及び3~6に係る特許を維持する。 特許第7293630号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7293630号(以下、「本件特許」という)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年12月13日に出願され、令和5年6月12日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年11月14日に特許異議申立人浅野 幸義(以下「申立人」という)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年6月25日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年8月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年11月27日付けで申立人に通知したが、その指定期間内に申立人から応答がなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 請求項1に係る「当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を含有する」を「当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3における「請求項1又は2に記載の」を「請求項1に記載の」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 請求項4における「請求項1~3のいずれか一項に記載の」を「請求項1又は3に記載の」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5,6も同様に訂正する。)。 2 一群の請求項について 訂正事項1~4は、訂正前に引用関係を有する請求項1~6に対して、請求されたものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されている。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1による訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は「当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を含有する」を「当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」に変更する訂正であって、数値範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」とすることは、本件特許明細書の段落【0017】に記載されていることから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2による訂正について 訂正事項2は訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項を追加するものでもない。 (3)訂正事項3による訂正について 訂正事項3は訂正前の請求項3において「請求項1又は2に記載の」を「請求項1に記載の」に訂正することで引用する請求項を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項を追加するものでもない。 (4)訂正事項4による訂正について 訂正事項4は訂正前の請求項4において「請求項1~3のいずれか一項に記載の」を「請求項1又は3に記載の」に訂正することで引用する請求項を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項を追加するものでもない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応して得られるポリエステルと硬化剤を含有するガスバリア材料用コーティング材組成物であって、 当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有することを特徴とするガスバリア材料用コーティング材組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 硬化剤がイソシアネート化合物である、請求項1記載のガスバリア材料用コーティング材組成物。 【請求項4】 請求項1又は3に記載のガスバリア材料用コーティング材組成物を含む積層体。 【請求項5】 さらに蒸着層を含有する、請求項4に記載の積層体。 【請求項6】 ガスバリア材料用コーティング材組成物と、樹脂フィルム又は紙基材を含む請求項4又は5に記載の積層体。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和6年6月25日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。以下、申立人の提示した甲第1号証、甲第2号証を甲1、甲2という。 取消理由1(進歩性):請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、または、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 取消理由で採用した甲号証 甲1:特開2017-110142号公報 甲2:特開2018-1540号公報 3 甲号証の記載 (1)甲1には、次の記載がある。 「【請求項1】 オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物を必須の成分とする酸成分と多価アルコールとの反応物を含有するポリエステルポリオール(A)であって、 多価アルコールが、2価アルコールと3価アルコールを含有するものであり、 前記ポリエステルポリオール(A)のガラス転移点が5~40℃、水酸基価が150~300mgKOH/gである、ポリエステルポリオール(A)。 【請求項2】 酸成分がさらにイソ配向芳香族ジカルボン酸を含有する請求項1に記載のポリエステルポリオール(A)。 【請求項3】 オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物が、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその無水物、2,3-アントラセンカルボン酸又はその無水物からなる群から選ばれる請求項1又は2に記載のポリエステルポリオール(A)。 【請求項4】 イソ配向芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸、又は2,5-フランジカルボン酸である請求項2又は3に記載のポリエステルポリオール(A)。 ・・・ 【請求項6】 請求項1~5の何れかに記載のポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応物を含有する樹脂組成物。 ・・・ 【請求項8】 請求項1~5の何れかに記載のポリエステルポリオール(A)を含有するコーティング材。 【請求項9】 請求項6又は7に記載の樹脂組成物を含有するコーティング材。 【請求項10】 請求項8又は9に記載のコーティング材が塗工されたバリア性フィルム。 【請求項11】 請求項10に記載のバリア性フィルムを用いた包装材料。」 「【0017】 また、本発明に用いられるイソ配向芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸を挙げることができるイソ配向芳香族ジカルボン酸を含有してもよい。イソ配向芳香族ジカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が規則的に配列することによる結晶性に起因する酸素分子、水分子の拡散が抑えられることによるガスバリア効果を有する。」 「【0022】 本発明で用いる硬化剤としては、フィルムへのコーティングであるためフィルムの耐熱性の観点からイソシアネート硬化系が好ましく、用いるコーティング材の樹脂成分としてはポリエステルポリオールが好ましい。本発明においては、コーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐ブロッキング性、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。 従って、本発明のコーティング材の使用の際の硬化剤は、これらの利点、欠点を踏まえた上で適宜決定すると良い。 【0023】 [ポリイソシアネート化合物] 本発明のコーティング材は、前述の通りポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応物である。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物は、ポリエステルが水酸基を有する場合、少なくとも一部が反応し、ウレタン構造を作ることで樹脂成分として高極性化し、ポリマー鎖間を凝集させることでガスバリア機能を更に強化できる。また、コーティング材の樹脂が直鎖型の樹脂である場合に、3価以上のポリイソシアネートで架橋することで、耐熱性や、耐摩耗性を付与することができる。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物としてはジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよいが、骨格の一部に芳香族環、または脂肪族環を含有するとガスバリア向上機能の観点から好ましい。・・・」 「【0033】 [蒸着フィルム] 本発明のコーティング材は、蒸着フィルムが持つガスバリア性を大幅に向上させるために使用する。そのためコーティング材を塗布する対象としては各種蒸着フィルムを用いる。本材料をコーティングしたフィルムは、通常の蒸着フィルムよりも更にガスバリア性に優れるため、ハイガスバリアフィルムとして使用できる。 【0034】 (蒸着層の種類) 本発明で用いるコーティング材が塗布される蒸着フィルムの蒸着層の種類としては、ガスバリア性を付与できるものであれば特に限定されない。現在包装用に広く用いられている金属蒸着、または金属酸化物蒸着が好適に例示される。」 「【0045】 (製造例1) 攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸1364部、エチレングリコール332.6部、グリセロール462.6部(及びチタニウムテトライソプロポキシド0.22部)を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を200℃に保持した。酸価が20mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価が206mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。 その他、製造例2~5は、以下の表1の組成に従って製造例1と同様にして行った。 また、製造例6では、イソフタル酸を添加した系を設けた。 【0046】 【表1】 [図:0001423442000001.jpg] 【0047】 (実施例1) 製造例1で合成したポリエステルを2-ブタノンに表2の硬化剤を除いた配合で添加し、常温にてスターラーで撹拌し溶媒に溶解した溶液を調製した。得られた溶液に引き続き表2の配合で硬化剤を添加し、常温にてスターラーで撹拌し均一のコーティング液を調製した。 得られたコーティング液を、透明蒸着PETフィルム(バリアロックス1011HG、東レフィルム加工株式会社製)の蒸着面側にバーコーター#2番で塗工し、120℃設定の乾燥機中に30秒間設置し、得られた塗膜のブロッキング試験を行った。 また、乾燥機から取り出したコーティング塗膜を、さらに40℃で3日間エージングすることで、硬化剤の反応を促進させたオーバーコートが施された蒸着フィルムを得た。これを各種評価(酸素透過率測定、水蒸気透過率測定)に供した。 【0048】 (ドライラミネート及びレトルト試験方法) 次に、上記オーバーコートが施されたエージング後のフィルムと未延伸PPフィルム(ZK-93KM、東レフィルム加工株式会社製)を接着剤(ディックドライLX703/KR90、DIC株式会社製)を使用してドライラミネートし、40℃で3日間エージングすることで、透明蒸着PETフィルム/オーバーコート層/接着剤層/未延伸PPフィルムの構成を有する積層体を得た。この積層体の酸素透過率を測定した。 【0049】 更に、上記積層体を150mm×200mmの大きさのパウチに製袋し、内容物として蒸留水250gを充填密封した。作製したパウチを121℃、30分間の蒸気レトルト殺菌処理をした後、酸素透過率を測定した。」 「【0053】 (実施例9~実施例15) 表3で示す配合を用いた以外は、実施例8と同様にしてコーティング液を調製し、アルミ蒸着CPPフィルムに塗工した。実施例8と同様の乾燥及びエージングを行い、得られたフィルムのブロッキング試験、酸素透過率測定を行った。 以上の結果を表2及び3に示す。 【0054】 【表2】 [図:0001423442000002.jpg] 【0055】 【表3】 [図:0001423442000003.jpg] 【0056】 <硬化剤> ・D-110N:三井化学(株)製「タケネートD-110N(NB)」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分:75%、NCO%:11.5%、溶媒:酢酸エチル) ・T-1890:EVONIC社製「VESTANATT-1890/100」(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、不揮発成分:100%を酢酸エチルで希釈し、不揮発成分:70%、NCO%:12.1%に調製したもの) ・D204EA:三井化学(株)製「タケネートD204EA-1」(トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、不揮発成分:50%、NCO%:、溶剤:酢酸エチル) ・KW75:DIC株式会社製「ディックドライKW75」(トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、不揮発成分75%、NCO%:11.5%、溶媒酢酸エチル)」 「【0064】 各測定は、以下の条件で行った。 (1)酸素透過率 各種実施例、比較例で得られたフィルム及び、参考例として未処理の蒸着フィルムを、モコン社製酸素透過率測定装置OX-TRAN2/21MHを用いてJIS-K7126(等圧法)に準じ、23℃0%RH、23℃90%RHの雰囲気下で測定した。なお、RHは湿度を示す。 (2)水蒸気透過率 各種実施例、比較例で得られたフィルム及び、参考例として未処理の蒸着フィルムを、Illinois社製水蒸気透過率測定装置7012を用いて、伝導度法「ISO-15106-3」に準じ、40℃90%RHの雰囲気下で測定した。 【0065】 (3)ブロッキング試験 ポリエステル樹脂が塗工されたガスバリア性フィルムを6cm×18cmの大きさに切出し、塗工面を内側にして三つ折りした後、40℃雰囲気下荷重2kg/cm2をかけ、24時間後に剥がす操作を行い、コート面とフィルム裏面が剥離するか否かで評価した。 ◎:剥離音の発生、剥離帯電、フィルムの汚れいずれもなし ○:剥離音の発生がなく、剥離帯電がややあり、フィルムの汚れなし ×:剥離音の発生、剥離帯電、フィルムの汚れのいずれか一つ以上が激しくあり (4)ガラス転移温度(Tg) 各種製造例で得られたポリエステルを示差走査熱量測定装置(DSC-60A)により-50℃~100℃の温度範囲で熱流量を検出することでガラス転移温度(Tg)の測定を行った。」 (2)甲2には、次の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも、紙層、ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含有するコート層、及びインキによる印刷層を有し、 ポリエステルポリオール(A)が、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物を必須の成分とする酸成分と多価アルコールとの反応物を含有するポリエステルポリオールである、建材用シート。 ・・・ 【請求項3】 酸成分としてさらにイソ配向芳香族ジカルボン酸を含有する請求項1又は2に記載の建材用シート。 ・・・ 【請求項5】 イソ配向芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸、又は2,5-フランジカルボン酸である請求項3に記載の建材用シート。 ・・・ 【請求項7】 ポリイソシアネート化合物(B)が、メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、及びトルエンジイソシアネートのヌレート体からなる群から選ばれる請求項1~6の何れかに記載の建材用シート。 【請求項8】 建材用シートが水蒸気を透過させないための防湿層として、低透湿シートを複合させたものでなく、印刷層を有する紙層にポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含有するコート層を塗工することを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の建材用シートの製造方法。 【請求項9】 請求項1~7の何れかに記載の建材用シートを用いた建材。」 「【0009】 本発明によれば、通常の木目等を印刷したグラビア化粧紙を、ドア等の表面化粧シートとして使用した場合、紙による透湿性の高さからドア等の表、裏の各面に接する部屋の湿度等の環境が異なった場合、湿度勾配によりドア等使用している基材の膨潤度合いの違いからそり等が発生するが、表面にバリア性能を有する建材用シートを使用することにより、構造材内部の湿度の移行が制限され、反り等の変形を防止する事が可能となる。 また、水蒸気バリア性能を上げるにはオレフィン等のプラスチックシートを使用する事により解決されるが、一般的に紙シートに比べて高価である。本発明による紙基材を用いた建材用シートは各種、塗工機や特にグラビア多色機を使用して、工程数を増やす事無く1工程で木目等の印刷をすると同時にバリア性能を高めることが可能となった。 これにより安価でオレフィン等のシートに近い性能を持たせた紙基材の化粧シートを得ることが出来た。」 「【0016】 また、本発明に用いられるイソ配向芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸を挙げることができるイソ配向芳香族ジカルボン酸を含有してもよい。イソ配向芳香族ジカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が規則的に配列することによる結晶性に起因する酸素分子、水分子の拡散が抑えられることによるガスバリア効果を有する。」 「【0021】 本発明で用いる硬化剤としては、フィルムへのコーティングであるためフィルムの耐熱性の観点からイソシアネート硬化系が好ましく、用いるコーティング材の樹脂成分としてはポリエステルポリオールが好ましい。本発明においては、コーティング層が架橋系になるため耐熱性や、耐ブロッキング性、耐摩耗性、剛性が向上する利点がある。従って、ボイルやレトルト包装にも使用しやすい。その一方で硬化剤を混合した後では液を再利用できない、塗工後に硬化(エージング)工程が必須になる問題点もある。 従って、本発明のコーティング材の使用の際の硬化剤は、これらの利点、欠点を踏まえた上で適宜決定すると良い。 【0022】 [ポリイソシアネート化合物] 本発明のコーティング材は、前述の通りポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応物である。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物は、ポリエステルが水酸基を有する場合、少なくとも一部が反応し、ウレタン構造を作ることで樹脂成分として高極性化し、ポリマー鎖間を凝集させることでガスバリア機能を更に強化できる。また、コーティング材の樹脂が直鎖型の樹脂である場合に、3価以上のポリイソシアネートで架橋することで、耐熱性や、耐摩耗性を付与することができる。本発明で用いられるポリイソシアネート化合物としてはジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよいが、骨格の一部に芳香族環、または脂肪族環を含有するとガスバリア向上機能の観点から好ましい。・・・」 「【0031】 以下、より詳細に本発明を説明する。 (製造例1) 攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸1364部、エチレングリコール332.6部、グリセロール462.6部(及びチタニウムテトライソプロポキシド0.22部)を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を200℃に保持した。酸価が20mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、水酸基価が206mgKOH/gのポリエステルポリオール「樹脂A」を得た。 【0032】 (製造例2) 有機溶剤可溶型のポリエステル樹脂「バーノック11-408/DIC株式会社製」を容器に投入し、酢酸エチルで希釈して不揮発分50%になるように調整し「樹脂B」とした。 【0033】 (製造例3)配合条件(A) 製造例1で得られた「樹脂A」を、硬化剤として「タケネートD-110N/XDI」を「OH/NCO比率=1.4」となるようにディスパーを用いて混合、さらに酢酸エチルで希釈し不揮発分40%になるように調整配合した。 【0034】 (製造例4)配合条件(B) 「樹脂A」をそれぞれ酢酸エチルで溶解して不揮発分40%になるように調整した。硬化剤を使用せず、攪拌、混合させ一液の塗工液を調製した。 【0035】 (製造例5)配合条件(C) 「樹脂B」を、硬化剤として「タケネートD-110N/XDI」([XDI系イソシアネート/三井化学株式会社製])を「OH/NCO比率=1.4」となるようにディスパーを用いて混合、さらに酢酸エチルで希釈し不揮発分40%になるように調整配合した。 【0036】 (製造例6)配合条件(D) 「樹脂A」を、硬化剤として「タケネートD-110N/XDI」を「OH/NCO比率=1.4」となるようにディスパーを用いて混合、さらに酢酸エチルで希釈し不揮発分50%になるように調整配合した。 【0037】 (塗工紙) 塗工紙(強化紙23g):通常使用されている未処理の23g強化紙を使用した。 塗工紙(強化紙30g):吸い込みや印刷ムラ、にじみ防止、強度向上を目的に、表面をアクリル処理した30g強化紙を使用した紙を使用した。 【0038】 (実施例1~3及び比較例1~4) 15μm膜厚:多色用グラビア印刷機の第1版目を使用して、強化紙23g又は強化紙30gを使用して、グラビアシリンダー/80線130μmのグラビア版により、乾燥ドライヤーの設定温度を150℃、ライン速度を80mで使用する事によりDRY膜厚が20μmになるように塗工を実施し15μm膜厚の塗工化粧紙を作製した。 又、同様に、グラビアの第2版目を使用して、140線75μmのグラビア版を使用して、「15+5μm」のサンプルを得た。 【0039】 (実施例4) 配合条件Dを使用し、溝を切ったゴムナチュラルロールコーターを使用して目的とする塗布量になるように塗布量を調整後、乾燥ドライヤーを同様に150℃で乾燥させることにより目的とするサンプルを得た。 【0040】 (実施例5) 配合条件Aを使用し、小径リバースロールコーター(ヒラノテクシード製)を使用して目的とする塗布量になるように塗布量を調整後、乾燥ドライヤーを同様に150℃、ライン速度50mで乾燥させることにより目的とするサンプルを得た。 その後、塗工基材を40℃で4日間エージング乾燥をさせ、試験サンプルとした。 比較の為、未塗工の紙を使用したサンプルを使用した。 【0041】 <評価方法> ・塗工膜厚 0.15m角で塗工したシートフィルムを切り出し、その重量を小数点以下4桁の電子天秤で測定した後、未塗装のシートの重量との差から塗工液の比重を換算して導いた 表面を酢酸エチルで綺麗にふき取り、その重量差に塗工液比重を加味して膜厚を換算した。 【0042】 ・シート基材及び吸い込み外観 樹脂を塗工したシートを、40℃で5日間養生させた後、表面状態の吸い込みによる凹凸、塗工ムラ、ハジキ等の表面欠陥を観察により3段階で評価した。 ○:表面のハジキ等の欠陥が無く、未塗工部分が散見されていない状態 △:若干の吸い込みによる表面欠陥や塗工ムラが見られる状態 ×:多くの表面欠陥、塗工ムラが散見される状態 【0043】 ・MVTR測定(水蒸気透過率) 各種実施例、比較例で得られたシートフィルム及び、未塗工のシートフィルムを、Illinois社製水蒸気透過率測定装置7012を用いて、伝導度法「ISO-15106-3」に準じ、40℃90%RHの雰囲気下で測定した。 又この際、レンジオーバーしてしまうサンプルにおいては、カップ法(JIS-Z-0208)40℃/90%RHにて測定した。 結果を、以下の表に示す。 【0044】 【表1】 [図:0001423442000004.jpg] 」 4 甲号証に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1の【0064】、【0065】の評価方法を参照し、【0045】~【0049】、【表1】の製造例6を用いた、【0053】~【0056】の実施例15に着目すると、甲1には、「攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸935部、イソフタル酸459部、エチレングリコール273部、グリセロール540部(及びチタニウムテトライソプロポキシド0.22部)を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を200℃に保持して得られた、酸価が21mgKOH/g、水酸基価が202mgKOH/gのポリエステルポリオール12.5部を、2-ブタノン75部に添加し、硬化剤D-110N12.5部(三井化学(株)タケネートD-110N(NB)、メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)を添加してコーティング液を調整し、得られたコーティング液」の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されているといえる。 (2)甲2に記載された発明 甲2の【0041】~【0043】の評価方法を参照し、【0031】の「樹脂A」を用いた【0033】の製造例3「配合条件(A)」による【0037】~【0040】、【0044】【表1】の実施例5に着目すると、甲2には、「無水フタル酸1364部、エチレングリコール332.6部、グリセロール462.6部(及びチタニウムテトライソプロポキシド0.22部)を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を200℃に保持して得られた、酸価が20mgKOH/g以下、水酸基価が206mgKOH/gのポリエステルポリオール樹脂Aを、硬化剤として「タケネートD-110N/XDI」を「OH/NCO比率=1.4」となるようにディスパーを用いて混合、さらに酢酸エチルで希釈し不揮発分40%になるように調整配合した塗工剤」の発明(以下、「甲2発明」という)が記載されているといえる。 5 当審の判断 (1)甲1を主引用例とした取消理由(進歩性)について ア 本件発明1についての対比・判断 甲1発明の「無水フタル酸」及び「イソフタル酸」は、本件発明1の「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体」に相当する。 甲1発明の「エチレングリコール」及び「グリセロール」は、本件発明1の「ポリオール」に相当する。 甲1発明の「ポリエステルポリオール」は、本件発明1の「ポリエステル」に相当する。 甲1発明の「オーバーコート層が施された蒸着フィルム」は、本件発明1の「ガスバリア材料」に相当する。 甲1発明の「コーティング液」は、本件発明1の「コーティング材組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有するといえる。 <一致点> 「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応して得られるポリエステルと硬化剤を含有するガスバリア材料用コーティング材組成物」 <相違点> 本件発明1では、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」のに対して、甲1発明はポリカルボン酸及びまたはその誘導体として「無水フタル酸」と「イソフタル酸」を含有し、2,5-フランジカルボン酸を含有していない点。 (ア)相違点についての検討 甲1発明の無水フタル酸(955質量部)、イソフタル酸(459質量部)の配合量を換算すると、無水フタル酸は955/148.12=6.447(質量部・mol/g)、イソフタル酸は459/166.14=2.762(質量部・mol/g)であるから、甲1発明はイソフタル酸をポリカルボン酸全量に対して30モル%含有している。 また、甲1の【0017】に記載のとおり、イソ配向芳香族ジカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が規則的に配列することによる結晶性に起因する酸素分子、水分子の拡散が抑えられることによるガスバリア効果を有し、イソ配向芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸が挙げられている。 そうすると、イソ配向芳香族ジカルボン酸を含有することによりガスバリア効果を有するのであるから、イソ配向芳香族ジカルボン酸として甲1発明のイソフタル酸に替えて2,5-フランジカルボン酸を使用し、ポリカルボン酸の全量に対して30モル%程度含有させることを想起するといえる。 (イ)効果についての検討 そこで、以下のとおり本件発明の効果について検討する。 本件明細書の実施例1~5について、2,5-フランジカルボン酸を本件発明1に含まれる範囲内で含有する実施例1~4と含有量が範囲外である実施例5を参照すると、耐ブロッキング性において「◎」(実施例1~4)、「○」(実施例5)であるから、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」ことで耐ブロッキング性が極めて優れるという顕著な効果が得られるものと認められる。 一方で、甲1では耐ブロッキング性について、イソ配向芳香族ジカルボン酸を配合したポリエステルである製造例6を使用した実施例15は評価が「○」となっており、イソ配向芳香族ジカルボン酸を配合していない実施例11,12,14の評価が「◎」であるのに対して相対的に評価が悪くなっているし、2,5-フランジカルボン酸等のイソ配向芳香族ジカルボン酸を配合することやその配合量と耐ブロッキング性を向上することとの関係性も記載されていないから、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」ことで耐ブロッキング性が極めて優れるという効果は、本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測し得た範囲を超える顕著なものである。 (ウ)小括 よって、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明3~6について 本件発明3~6は本件発明1をすべて包含する発明であるから、上記アに記載したとおり、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲2を主引用例とした取消理由(進歩性)について ア 本件発明1についての対比・判断 甲2発明の「無水フタル酸」は、本件発明1の「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体」に相当する。 甲2発明の「エチレングリコール」及び「グリセロール」は、本件発明1の「ポリオール」に相当する。 甲2発明の「ポリエステルポリオール」は、本件発明1の「ポリエステル」に相当する。 甲2発明の「塗工剤」は、本件発明1の「コーティング材組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有するといえる。 <一致点> 「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体とポリオールとを反応して得られるポリエステルと硬化剤を含有するコーティング材組成物」 <相違点1> 本件発明1では、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」のに対して、甲2発明はポリカルボン酸及びまたはその誘導体として「無水フタル酸」を含有し、2,5-フランジカルボン酸を含有していない点。 <相違点2> 本件発明1では、「ガスバリア材料用」であるのに対して、甲2発明はその点について明記していない点。 (ア)相違点についての検討 a 相違点1についての検討 甲2の【0016】に記載のとおり、イソ配向芳香族ジカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が規則的に配列することによる結晶性に起因する酸素分子、水分子の拡散が抑えられることによるガスバリア効果を有し、イソ配向芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸が挙げられている。 そうすると、イソ配向芳香族ジカルボン酸を含有することによりガスバリア効果を有するのであるから、イソ配向芳香族ジカルボン酸として2,5-フランジカルボン酸を使用する動機付けはあるといえる。 また、ガスバリア効果を目的としてイソ配向芳香族ジカルボン酸の含有量を30モル%以上程度に調整することは当業者が適宜なし得る設計的事項である。 b 相違点2についての検討 甲2の塗工剤を塗布して製造される建材シートは防湿性やバリア性を高めること、塗工剤中の硬化剤やカルボン酸類はガスバリア性能を考慮して添加されることが記載されていることからみて、甲2に記載の建材シートはガスバリア材料であると認められる。 (イ)効果についての検討 そこで、以下のとおり本件発明の効果について検討する。 本件明細書の実施例1~5について、2,5-フランジカルボン酸を本件発明1に含まれる範囲内で含有する実施例1~4と含有量が範囲外である実施例5を参照すると、耐ブロッキング性において「◎」(実施例1~4)、「○」(実施例5)であるから、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」ことで耐ブロッキング性が極めて優れるという顕著な効果が得られるものと認められる。 一方で、甲2では耐ブロッキング性について、実施例において特に評価していないし、2,5-フランジカルボン酸等のイソ配向芳香族ジカルボン酸を配合することやその配合量と耐ブロッキング性を向上することとの関係性も記載されていないから、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」ことで耐ブロッキング性が極めて優れるという効果は、本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測し得た範囲を超える顕著なものである。 (ウ)小括 よって、本件発明1は甲2に記載された発明及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明3~6について 本件発明3~6は本件発明1をすべて包含する発明であるから、上記アに記載したとおり、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由の概要 取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由は、次のとおりである。 取消理由(新規性):請求項1,3~6に係る発明は、甲1に記載された発明と相違しない。また、請求項1,3~6に係る発明は、甲2に記載された発明と相違しない。よって、請求項1,3~6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 取消理由(サポート要件):請求項1,3~6に係る特許は、以下の理由から、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。 本件発明の課題は、「食品包装用等の内容物の包装に使用でき、ガスバリア性に優れるポリエステルを主体とするコーティング材組成物を提供すること」(【0006】)である。 本件特許明細書の記載から、合成例1(PE1)に基づく実施例1から合成例5(PE5)に基づく実施例5のように、フランジカルボン酸の含有率が87モル%から22モル%に低下するに従って、評価1,2の結果が悪くなり、フランジカルボン酸を全く含有しない合成例6,7(PE6,7)に基づく比較例1,2は、評価1,2の結果がさらに悪くなることが理解できる。 そうすると、全酸成分中の2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体の含有率が一切規定されていない本件発明1及び3~6は、2,5-フランジカルボン酸の含有率が22モル%より明らかに低い場合(例えば0モル%に近い場合)をも包含するものであるから、本件発明の課題(効果)を達成できないことは明らかである。 取消理由(実施可能要件):請求項1,3~6に係る特許は、上記サポート要件と同様の理由から、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。 2 甲1を主引用例とした新規性について 前記第4の5(1)アにて記載したとおり、本件発明1と甲1発明は、本件発明1では、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」のに対して、甲1発明は、ポリカルボン酸及びまたはその誘導体として「無水フタル酸」と「イソフタル酸」を含有し、2,5-フランジカルボン酸を含有していない点が異なるから、申立人の主張は採用できない。 3 甲2を主引用例とした新規性について 前記第4の5(2)アにて記載したとおり、本件発明1と甲2発明は、本件発明1では、「ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」のに対して、甲2発明はポリカルボン酸及びまたはその誘導体として「無水フタル酸」を含有し、2,5-フランジカルボン酸を含有していない点が異なるから、申立人の主張は採用できない。 4 サポート要件について 本件発明1及び3~6は、訂正事項1により「当該ポリカルボン酸及びまたはその誘導体が、前記ポリカルボン酸及びまたはその誘導体全量に対し、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」ことが明確となったものである。 本件発明の課題は「食品包装用等の内容物の包装に使用でき、ガスバリア性に優れるポリエステルを主体とするコーティング材組成物を提供すること」(【0006】)であるところ、本件特許明細書の実施例1から実施例5の記載から、2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有することにより、上記課題は解決できることが理解できる。 したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明である。 上記1のサポート要件に関する申立人の主張は、「2,5-フランジカルボン酸及びまたはその誘導体を30~100モル%含有する」ことが特定されていない本件訂正前の請求項1及び3~6に係る発明に関するものであるから、当該主張は採用できない。 5 実施可能要件について (1)申立人の主張は、前記4での主張と同様であることから、申立人の実施可能要件についての主張も、前記4と同様に採用できない。 (2)また、申立人の実施可能要件についての主張は(1)に記載したようにサポート要件違反を主張するものであって、実施可能要件違反についての主張ではないし、本件特許明細書には本件発明を製造して使用できるように記載されているから、実施可能要件を満たしている。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1,3~6に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1,3~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、請求項2が訂正により削除されたことにより申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701203

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