特許異議申立
2021-700846
燃料電池システム
- 審判番号
- 2021-700846
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-042646外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6856043
- 請求日
- 2021年09月01日
- 審決日
- 2022年09月28日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社豊田中央研究所
- 【権利者代理人】畠山 文夫
- 【異議申立人】鶴亀 國康
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条2項特許法36条6項1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6856043号発明「燃料電池システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6856043号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6856043号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。
特許第6856043号の請求項3、4についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6856043号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年3月9日に出願され、令和3年3月22日にその特許権の設定登録がされ、同年4月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年9月 2日受付 : 特許異議申立人 鶴亀 國康(以下、「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年1月 7日付け : 取消理由通知
同年3月 9日付け : 特許権者による意見書の提出及び訂正請求
同年4月18日受付 : 申立人による意見書の提出
同年6月 1日付け : 取消理由通知(決定の予告)
同年7月27日付け : 特許権者による意見書の提出及び訂正請求
なお、令和4年3月9日付け訂正請求は、その後、同年7月27日に訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法(以下、単に「法」という。)第120条の5第7項)。
第2 令和4年7月27日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示すために当審で付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「…(4)前記捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、チタニア系酸化物を含む。」とあるのを、「…(3)前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む。(4)前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜であり、前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない。ここで、前記「ガス流路の内表面」とは、前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない。」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前記インターコネクタは、Fe-Cr系合金からなる請求項4に記載の燃料電池システム。」とあるのを、「前記インターコネクタは、Fe-Cr系合金からなる請求項1又は2に記載の燃料電池システム。」に訂正する。
(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0010】に「…(4)前記捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、チタニア系酸化物を含む。」とあるのを、「…(3)前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む。(4)前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜であり、前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない。ここで、前記「ガス流路の内表面」とは、前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない。」と訂正する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0011】に「…一方、コランダム構造を備えた酸化物、及びチタニア系酸化物は、いずれも、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」とあるのを、「…一方、コランダム構造を備えた酸化物は、Crを捕捉する作用があり、チタニア系酸化物は、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及び/又はSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」に訂正する。
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0025】に「コランダム構造を備えた酸化物(特に、アルミナ)は、Cr及びSの捕捉剤として機能する。…」とあるのを、「コランダム構造を備えた酸化物(特に、アルミナ)は、Crの捕捉剤として機能する。…」に訂正する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0044】に「…一方、コランダム構造を備えた酸化物、及びチタニア系酸化物は、いずれも、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」とあるのを、「…一方、コランダム構造を備えた酸化物は、Crを捕捉する作用があり、チタニア系酸化物は、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及び/又はSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1) 訂正事項1
ア 捕捉剤について
訂正事項1による訂正のうち、本件訂正前の請求項1に「・・・(4)前記捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、チタニア系酸化物を含む。」とあるのを、本件訂正後の請求項1の「・・・(3)前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む。」とする訂正は、訂正前の請求項1に記載された「コランダム構造を備えた酸化物」について「Crを捕捉する作用を有する」ものに限定するものであり、また、訂正前の請求項1に記載された「チタニア系酸化物」について、その下位概念である「TiO2」に限定すると共に、「前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有する」ものに限定するものであるから、法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書には、「コランダム構造を備えた酸化物(特にアルミナ)は、Cr・・・の捕捉剤として機能する」(【0025】)と記載され、「チタニア系酸化物(特に、チタニア系固溶体)は、Cr及びSの捕捉剤として機能する」(【0027】)と記載されると共に、「チタニア系酸化物としては、例えば、(a)TiOx(1.5≦x≦2.0)・・・などがある。」(【0026】 なお、改行を省略した。以下同様。)と記載されていることから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。
イ 燃料電池及び捕捉部材について
訂正事項1による訂正のうち、本件訂正後の請求項1の記載に「(4)前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜であり、前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない。ここで、前記「ガス流路の内表面」とは、前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない。」を付加する訂正は、訂正前の請求項1に記載された燃料電池が「固体酸化物形燃料電池であ」ることを特定して限定すると共に、訂正前の請求項1に記載された捕捉部材が「前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜であり、前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない」ことを特定して限定すると共に、「ガス流路の内表面」が「前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない」ことを特定して限定するものであるから、法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、願書に添付した特許請求の範囲の請求項4には、「前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜である請求項1から3までのいずれか1項に記載の燃料電池システム」と記載され、同じく願書に添付した明細書には、「捕捉剤は、インターコネクタ40a~40cのガス流路(燃料ガス流路42、酸化剤ガス流路44)の内表面に形成された捕捉剤からなる薄膜(被毒防止層)が好ましい。ここで、「ガス流路の内表面」とは、インターコネクタ40a~40cの表面の内、反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)が直接、接触する面をいい、カソード34又はアノード36と直接、接触する面を含まない。すなわち、インターコネクタ40a~40cの表面の内、カソード34又はアノード36と直接、接触している面には、被毒防止層は形成されない。」(【0042】)と記載されているから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 訂正事項1についてのまとめ
前記ア及びイに示すように、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3) 訂正事項3
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4を削除するものであるから、法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(4) 訂正事項4
訂正事項4による訂正は、本件訂正前の請求項4に記載されていた「前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜である」という事項が、本件訂正後は、請求項1に記載されることとなった(訂正事項1参照。)と共に請求項4が削除された(訂正事項3参照。)ことに伴って、本件訂正前の請求項5に記載されていた「前記インターコネクタは、Fe-Cr系合金からなる請求項4に記載の燃料電池システム。」を、本件訂正後は、「前記インターコネクタは、Fe-Cr系合金からなる請求項1又は2に記載の燃料電池システム。」とする訂正であるから、法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(5) 訂正事項5
訂正事項5による訂正は、訂正事項1による訂正により、請求項1の記載が訂正されたことに伴って、明細書の対応する記載を訂正するものであるから、法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(6) 訂正事項6
本件訂正前の明細書には、「・・・アルミナハニカムをそのまま試験に供した」(【0047】)実験の結果、「S量は増加したが、Cr量は比較例1の約1/3まで低下した」(【0052】)ことが記載されており、また、「コランダム構造を備えた酸化物は、特に、アルミナが好ましい」(【0024】)と記載されており、当該記載の実験結果によれば、コランダム構造を備えた酸化物にCrを捕捉する作用はあるが、Sを捕捉する作用があるとはいえないところ、本件訂正前の明細書【0011】の「コランダム構造を備えた酸化物、及びチタニア系酸化物は、いずれも、Cr及びSを捕捉する作用がある。」との記載、及び、「これを・・・設置すると、Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」との記載は、明細書の段落【0052】等に記載された実験結果との関係で不合理を生じ、不明瞭となっている。訂正事項6による訂正は、この不明瞭な記載を「コランダム構造を備えた酸化物は、Crを捕捉する作用があ」るとし、「これを・・・設置すると、Cr及び/又はSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる」として、不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。
そうすると、訂正事項6による訂正は、法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項6による訂正は、明細書の記載の訂正であり、この訂正により実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
さらに、願書に添付した明細書には、「被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材とを備えている」(【0010】)、「被毒物質は、Cr及び/又はSである」(【0010】)、「捕捉剤は、コランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、チタニア系酸化物を含む」(【0010】)、と記載され、前記のように、コランダム構造を備えた酸化物の例としてアルミナを用いた実験により、コランダム構造を備えた酸化物には、Sを捕捉する作用はないものの、Crを捕捉する作用があることが示されている(【0047】、【0052】参照)から、訂正事項6による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。
(7) 訂正事項7
訂正事項7による訂正は、本件訂正前の明細書に「コランダム構造を備えた酸化物(特に、アルミナ)は、Cr及びSの捕捉剤として機能する。・・・」(【0025】)とあるのを、「コランダム構造を備えた酸化物(特に、アルミナ)は、Crの捕捉剤として機能する。・・・」と訂正するものである。
前記「(6)訂正事項6」において示すように、本件訂正前の明細書【0047】、【0052】、【0024】の記載から、コランダム構造を備えた酸化物は、Sの捕捉剤として機能するということはできないから、本件訂正前の「コランダム構造を備えた酸化物(特に、アルミナ)は、Cr及びSの捕捉剤として機能する」の記載は、本件訂正前の明細書【0047】、【0052】、【0024】の記載との関係で、不合理を生じているために不明瞭となっている記載であり、これを「コランダム構造を備えた酸化物(特に、アルミナ)は、Crの捕捉剤として機能する」とする訂正事項7による訂正は、法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項7による訂正は、明細書の記載の訂正であり、この訂正により実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
さらに、前記「(6)訂正事項6」において示すように、願書に添付した明細書には、コランダム構造を備えた酸化物の例としてアルミナを用いた実験により、コランダム構造を備えた酸化物には、Sを捕捉する作用はないものの、Crを捕捉する作用があることが示されている(【0047】、【0052】参照)から、訂正事項7による訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。
(8) 訂正事項8
訂正事項8による訂正は、本件訂正前の明細書に「・・・一方、コランダム構造を備えた酸化物、及びチタニア系酸化物は、いずれも、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」(【0044】)とあるのを、「・・・一方、コランダム構造を備えた酸化物は、Crを捕捉する作用があり、チタニア系酸化物は、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及び/又はSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」に訂正するものである。
前記「(6)訂正事項6」において示すように、本件訂正前の明細書【0047】、【0052】、【0024】の記載から、コランダム構造を備えた酸化物は、Sの捕捉剤として機能するということはできないから、本件訂正前の「コランダム構造を備えた酸化物・・・は、・・・Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを・・・設置すると、Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる」の記載は、本件訂正前の明細書【0047】、【0052】、【0024】の記載との関係で、不合理を生じているために不明瞭となっている記載であり、これを「コランダム構造を備えた酸化物は、Crを捕捉する作用があり、チタニア系酸化物は、Cr及びSを捕捉する作用がある。そのため、これを燃料ガス供給経路、及び/又は、酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設置すると、Cr及び/又はSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる。」とする訂正事項8による訂正は、法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項8による訂正は、明細書の記載の訂正であり、この訂正により実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
さらに、前記「(6)訂正事項6」において示すように、願書に添付した明細書には、コランダム構造を備えた酸化物の例としてアルミナを用いた実験により、コランダム構造を備えた酸化物には、Sを捕捉する作用はないものの、Crを捕捉する作用があることが示されている(【0047】、【0052】参照)から、訂正事項8による訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2ないし5は、請求項1を引用する請求項であって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、請求項1ないし5は、一群の請求項である。
したがって、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5に係る本件訂正は、法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。
4 小括
上記のとおり、訂正事項1ないし8に係る訂正は、法第120条の5第2項ただし書第1号、同項ただし書第2号又は同項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許
本件訂正により訂正された訂正後の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、本件訂正請求により訂正された訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
以下の構成を備えた燃料電池システム。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、
前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路と、
前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材と
を備えている。
(2)前記被毒物質は、Cr及び/又はSである。
(3)前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む。
(4)前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、
前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜であり、
前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない。
ここで、前記「ガス流路の内表面」とは、前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない。
【請求項2】
前記コランダム構造を備えた酸化物は、アルミナである請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記インターコネクタは、Fe-Cr系合金からなる請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1、2及び5に係る特許に対して、当審が令和4年6月1日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 請求項1及び5に係る発明は、国際公開第2007/083627号(以下、「甲2」という。)に記載された発明であるから、請求項1及び5に係る特許は法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 請求項1及び5に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び5に係る特許は、法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
3 本件発明1、2及び5は、法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、本件発明1、2及び5に係る特許は、法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由1及び2について
(1)引用文献の記載
取消理由通知において引用した甲2には、次の事項が記載されている。
ア 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「[0001]
本発明は、Cr(クロム)を含有する合金又は酸化物(以下、「合金等」と呼ぶ場合がある。)と空気極とを接合した状態で焼成する焼成処理を行う固体酸化物形燃料電池(以下、適宜「SOFC」と記載する。)用セルの製造方法及びその製造方法により製造されたSOFC用セルに関する。」
(イ)「[0005]
上述したようにCrを含有する合金等と空気極とを接合してなるSOFC用セルでは、作動時等において合金等が高温にさらされることで、その合金等に含まれるCrが空気極側に飛散して、空気極のCr被毒が発生するという問題がある。
このような空気極のCr被毒は、空気極における酸化物イオンの生成のための酸素の還元反応を阻害し、空気極の電気抵抗を増加させ、更には合金等のCr濃度を減少させることにより合金等自体の耐熱性の低下などの問題を引き起こし、結果、SOFCの性能低下を招く場合がある。」
(ウ)「[0052]
本発明に係るSOFC用セル及びその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオン及び電子電導性の多孔体からなる空気極31を接合すると共に、同電解質膜30の他方面側に電子電導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
更に、SOFC用セルCは、この単セル3を、空気極31又は燃料極32に対して電子の授受を行うと共に空気及び水素を供給するための溝2が形成された一対の電子電導性の合金又は酸化物からなるインタコネクト1により、適宜外周縁部においてガスシ一ル体を挟持した状態で挟み込んだ構造を有する。そして、空気極31側の上記溝2が、空気極31とインタコネクト1とが密着配置されることで、空気極31に空気を供給するための空気流路2aとして機能し、一方、燃料極32側の上記溝2が、燃料極32とインタコネクト1とが密着配置されることで、燃料極32に水素を供給するための燃料流路2bとして機能する。」
(エ)「[0054]
更に、これまで説明してきたSOFC用セルCでは、インタコネクト1の材料としては、電子電導性及び耐熱性の優れた材料であるLaCrO3系等のぺロブスカイト型酸化物や、フェライト系ステンレス鋼であるFe-Cr合金や、オーステナイト系ステンレス鋼であるFe-Cr-Ni合金や、ニッケル基合金であるNi-Cr合金などのように、Crを含有する合金又は酸化物が利用されている。
[0055]
そして、複数のSOFC用セルCが積層配置された状態で、複数のボルト及びナットにより積層方向に押圧力を与えて挟持され、セルスタックとなる。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたインタコネクト1は、燃料流路2b又は空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたインタコネクト1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。尚、かかる積層構造のセルスタックでは、上記インタコネクト1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
[0056]
そして、このようなSOFC用セルCを備えたSOFCの作動時には、図2に示すように、空気極31に対して隣接するインタコネクト1に形成された空気流路2aを介して空気を供給すると共に、燃料極32に対して隣接するインタコネクト1に形成された燃料流路2bを介して水素を供給し、例えば800℃程度の作動温度で作動する。すると、空気極31においてO2が電子e-と反応してO2―が生成され、そのO2―が電解質膜30を通って燃料極32に移動し、燃料極32において供給されたH2がそのO2―と反応してH2Oとe-とが生成されることで、一対のインタコネクト1の間に起電力Eが発生し、その起電力Eを外部に取り出し利用することができる。」
(オ)「[0063]
〔第一実施形態〕 本第一実施形態では、上記Cr(VI)酸化物抑制状態を、焼成処理を行う前に、インタコネクト1の少なくとも空気極31に対する境界面1a(図2参照)を含む表面に、酸化力の小さなn型半導体被膜として機能するTiO2被膜(チタニア被膜)を形成することで実現している。
[0064]
即ち、インタコネクト1の境界面1aにTiO2被膜が形成されているSOFC用セルCでは、TiO2被膜が耐熱性に優れている上に緻密な構造を有することから、そのTiO2被膜を介したインタコネクト1側への酸化剤としての酸素や水蒸気の供給が阻止され、更には、同TiO2被膜を介した空気極31側へのCr(VI)の酸化物の移動が阻止されるので、結果、製造時の焼成処理や作動時において、インタコネクト1が高温にさらされた場合でも、空気極31のCr被毒が良好に抑制される。」
(カ)甲2には、図1及び図2として、下図が記載されている。
「
[図:0001392007000001.jpg]
」
(キ)前記(オ)に示す[0063]に記載された「インタコネクト1の少なくとも空気極31に対する境界面1a」は、空気が流れる流路であるから、前記(カ)に示す[図1]の記載より、インタコネクト1の空気流路2aに形成された面であるといえる。
イ 甲2発明
(ア)前記ア(ア)-(キ)の記載より、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されている。
・甲2発明1
「以下の構成を備えた燃料電池。
(1)前記燃料電池は、
セルスタックと、
前記セルスタックの燃料極32に水素を供給する燃料流路2bと、
前記セルスタックの空気極31に空気を供給する空気流路2aと、
前記空気流路2aとして機能する溝2が形成されたインタコネクト1の表面に
形成された、TiO2被膜と
を備えている。
(2)被毒を発生させる物質はCrである。
(3)前記TiO2被膜は、TiO2である。
(4)前記セルスタックは、固体酸化物形燃料電池のセルスタックであり、
前記TiO2被膜は、前記セルスタックのインタコネクト1の空気流路2aとして機能する溝2の空気極31に対する境界面1aに形成された被膜である。」
ウ 甲5の記載事項
取消理由通知において引用した甲5には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0012】
Cr(VI)含有高温気体を酸化チタン表面と反応させ、またはこれに捕捉させることによって、Cr(VI)のさらなる輸送は防止され、または少なくとも制限され得る。さらに、本発明による方法を用いれば、化学反応を起こさせるためのさらなる活性化エネルギーまたはエネルギー源を必要とすることなく、Cr(VI)の還元を高温プロセスの中に直接組み込むことができる。」
(イ)「【0015】
本発明による方法のいくつかの好ましい実施形態において、本方法は低減された量のCr(VI)含量を有する高温気体を燃料電池システム、好ましくは高温燃料電池システム、たとえばSOFCシステムなどに導くステップを含む。Cr(VI)含有高温気体中のCr(VI)が触媒エレメントの酸化チタン表面によって捕捉された後、酸化チタン表面を通過した高温気体は低減された量のCr(VI)を含む。低減された量のCr(VI)を含有するこの高温気体は、次いで触媒エレメントの下流に配置された燃料電池システムに導かれる。燃料電池システムは単一の燃料電池であってもよく、複数の燃料電池、たとえば燃料電池スタックであってもよい。燃料電池システムはまた、たとえばさらなる燃料電池部品、たとえばリフォーマーまたはアフターバーナーなどを含んでもよい。」
(2) 対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲2発明1とを対比すると、甲2発明1の「燃料電池」は、本件発明1の「燃料電池システム」に相当し、同様に甲2発明1の「セルスタック」は、本件発明1の「燃料電池」に相当する。
甲2発明1の「燃料極32」は、本件発明1の「アノード」に相当し、以下同様に、「水素」は、「燃料ガス」に、「燃料流路2b」は、「燃料ガス供給経路」に、「空気極31」は、「カソード」に、「空気」は、「酸化剤ガス」に、「空気流路2a」は、「酸化剤ガス供給経路」にそれぞれ相当する。
甲2発明1の「前記空気流路2aとして機能する溝2が形成されたインタコネクト1の表面」は、本件発明1の「前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位」に相当し、甲2発明1の「形成された」ことは、本件発明1の「設けられた」ことに相当する。また、甲2発明1の「TiO2被膜」と本件発明1の「被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材」あるいは「捕捉剤」、「捕捉部材」とは、「ガス流路被膜材」である限りで一致する。
甲2発明1の「被毒を発生させる物質」は、本件発明1の「被毒物質」に相当する。さらに、甲2発明1の「Cr」は、本件発明1の「Cr及び/又はS」の一方の選択肢である「Cr」であるから、甲2発明1の「Crである」ことは、本件発明1の「Cr及び/又はSである」ことにおける「Crである」限りにおいて一致する。
甲2発明1の「TiO2である」ことは、本件発明1の「TiO2を含む」ことに相当する。
甲2発明1の「固体酸化物形燃料電池のセルスタック」は、本件発明1の「固体酸化物形燃料電池」に相当する。
甲2発明1の「インタコネクト1の空気流路2aとして機能する溝2の空気極31に対する境界面1a」は、本件発明1の「インターコネクタのガス流路の内表面」に相当し、甲2発明1の「被膜」は、本件発明1の「薄膜」に相当するから、甲2発明1の「前記TiO2被膜は、前記セルスタックのインタコネクト1の空気流路2aとして機能する溝2の空気極31に対する境界面1aに形成された被膜である」ことと本件発明1の「前記捕捉部材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜である」こととは、「前記ガス流路被膜材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された薄膜である」という限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、次の一致点と相違点である相違点1及び2を有する。
・一致点
以下の構成を備えた燃料電池システム。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、
前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路と、
前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、ガス流路被膜材と
を備えている。
(2)被毒物質は、Crである。
(3)前記ガス流路被膜材は、TiO2を含む
(4)前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、
前記ガス流路被膜材は、前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された薄膜である。
・相違点1
本件発明1は、ガス流路被膜材に関し、「被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材」であって、「前記被毒物質は、Cr及び/又はSであ」り、「前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含」み、「前記捕捉部材は」、「前記捕捉剤からなる」薄膜であるのに対し、甲2発明1は、ガス流路被膜材に関し、「TiO2被膜」であり、薄膜ではあるものの捕捉剤からなる薄膜とはされていない点。
・相違点2
本件発明1は、捕捉剤からなる薄膜が形成される「ガス流路の内表面」が「前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない」ものであって、「前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない」のに対し、甲2発明1は、TiO2被膜が形成される面が「前記セルスタックのインタコネクト1の空気流路2aとして機能する溝2の空気極31に対する境界面1a」とされ、TiO2被膜が形成されない面については、特段の特定されていない点。
前記相違点について検討する。
(ア)相違点2について
事案に鑑み、相違点2から判断する。
本件発明1と甲2発明1との相違点である相違点2は、実質的な相違点であるといえる。
そして、甲2発明1は、TiO2被膜をセルスタックのインタコネクト1の空気流路2aとして機能する溝2の空気極31に対する境界面1aに形成したものであり、甲2の[図1]の記載から、インタコネクト1が空気極31と直接、接触している面も存在しているといえる。しかし、甲2には、このインタコネクト1が空気極31と直接、接触している面にTiO2被膜を形成しないことについては、記載も示唆もされておらず、また、技術常識からみてインタコネクト1が空気極31と直接、接触している面にTiO2被膜を形成してないことが明らかであるともいえない。
この点について、さらに検討すると、甲2発明1は、空気流路2aとして機能する溝2が形成されたインタコネクト1の空気極31との境界面1aを含む表面にTiO2被膜を形成することで、「TiO2被膜を介したインタコネクト1側への酸化剤としての酸素や水蒸気の供給が阻止され、更には、同TiO2被膜を介した空気極31側へのCr(VI)の酸化物の移動が阻止されるので、結果、製造時の焼成処理や作動時において、インタコネクト1が高温にさらされた場合でも、空気極31のCr被毒が良好に抑制される」(上記(1)ア(オ)参照)ものであり、甲2発明1において、インタコネクト1の表面の内、空気極31と直接、接触している面にTiO2被膜が形成されないと、インタコネクト1側への酸化剤としての酸素や水蒸気の供給が阻止できず、また、空気極31側へのCrの酸化物の移動を阻止できなくなる。
そうすると、甲2発明1において、インタコネクト1の表面の内、空気極31と直接、接触している面にTiO2被膜が形成されないものとすることには、阻害要因があり、甲2発明1において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者であっても容易に想到しえたことではない。
以上のことから、相違点1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとは、いえず、また、甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
イ 本件発明2及び5について
本件発明2及び5は、本件発明1に対して、さらに「コランダム構造を備えた酸化物」または「インターコネクタ」について限定した発明である。よって、上記アに示した理由と同様の理由により、本件発明2及び5は、甲2に記載された発明であるとはいえず、上記甲2に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものともいえない。
ウ 申立人の意見について
申立人は、令和4年4月18日受付の意見書において、「本件特許明細書や本件特許権者意見書等を参照しても、本件訂正後の本件特許発明1において、インターコネクタの表面の内、ガス流路の内表面にのみTiO2薄膜が形成され、インターコネクタの表面の内、ガス流路の内表面以外の領域にはTi02薄膜が形成されていない構成を採用することにより、甲第2号証に記載された発明のようにインターコネクタの表面の全面にTiO2薄膜が形成された構成と比較して、何らかの作用効果を奏することは記載されておらず、また、何らかの作用効果を奏することが自明であるとも言えない。そのため、インターコネクタの表面の全面にTiO2薄膜を形成するのではなく、インターコネクタの表面の内のガス流路の内表面にのみTiO2薄膜を形成するという技術事項は、何ら新たな作用効果を奏するものではない、単なる設計事項に過ぎない。」(9ページ17行ないし同ページ末行(空白行を含まず。))と主張している。
しかし、本件発明1は、「前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない」ことで、「単セル30a、30bとインターコネクタ40a~40cとを電気的に接続する」(本件明細書の【0042】)という効果を奏しているものであるから、「インターコネクタの表面の内のガス流路の内表面にのみTiO2薄膜を形成するという技術事項は、何ら新たな作用効果を奏するものではない、単なる設計事項に過ぎない」とする申立人の主張は、採用することができない。
2 取消理由通知(決定の予告)に記載した「2 訂正により新たに生じた取消理由について」について
「訂正により新たに生じた取消理由」は、本件訂正請求により取り下げたものとみなされる令和4年3月9日付け訂正請求により訂正された請求項1には、「前記Crを捕捉するためのコランダム構造を備えた酸化物」、及び「前記Cr及び/又は前記Sを捕捉するためのTiO2」と記載されているところ、この記載における、「前記Crを捕捉するための」とは、物の発明として、「コランダム構造を備えた酸化物」のどのような事項を特定するのか不明であり、同様に「前記Cr及び/又は前記Sを捕捉するための」とは、物の発明として、「TiO2」のどのような事項を特定するのか不明であるから、請求項1に係る特許は、法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであり、請求項1を引用する請求項2及び5に係る特許も同様に、法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるというものである。
これに対し、本件訂正により訂正された請求項1には、「前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物」及び「前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2」と記載されている。この記載は、請求項1に記載された「コランダム構造を備えた酸化物」が「Crを捕捉する作用を有する」ことを特定するものであり、また、請求項1に記載された「TiO2」が「Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有する」ことを特定するものであって、物の発明として明確である。
また、ほかに、本件発明1及び2、5が明確でないとする本件訂正後の請求項1及び2、5の記載はみあたらない。
よって、請求項1及び2、5に係る特許は、法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるとはいえない。
3 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立ての理由
本件特許異議申立ての理由であって、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立ての理由1ないし3の要旨は、次のとおりである。
・特許異議申立て理由1
本件特許査定時の請求項1ないし5に係る発明は、特表2008-544452号公報(以下、「甲1」という。)に記載された発明であるから、請求項1ないし5に係る特許は法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
・特許異議申立て理由2
本件特許査定時の請求項1ないし5に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし5に係る特許は、法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
・特許異議申立て理由3
本件発明1ないし5は、法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから、本件発明1ないし5に係る特許は、法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立て理由1及び2(甲1を主引例とした新規性及び進歩性)について
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
甲1には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
本開示は一般に、固体酸化物燃料電池(“SOFCs”)と共に使用するための、及び平坦な固体酸化物燃料電池(“PSOFCs”)において使用してよい相互接続、並びにSOFCsのための相互接続を形成するために使用してよいフェライト系ステンレス鋼に関する。」
(イ)「【0009】
PSOFCの設計に依存して、相互接続は、反応物ガスを分離し、含むこと及びセルを直列で電気的に接続するように電流のための低抵抗通路を提供することを含む幾つかの機能を提供できる。相互接続はまた、燃料電池における単数または複数のその機能に依存して“二極性プレート(bipolar plate)”または“セパレーター”と呼ばれることがある。一般に、相互接続材料は、セル内部の厳しい高温条件に耐えなければならず;適切に導電性がなければならず(材料の表面に形成される任意の酸化物または他の表面膜を含む);及びセル内部のセラミック電極のCTEと十分に同様の熱膨張率(CTE)を有して、燃料電池スタックの必要な構造健全性(structural integrity)及び気密性を確実にしなければならない。」
(ウ)「【0054】
ここから図1を参照すると、電流生成PSOFCsにおいて使用するための典型的な形状を有する相互接続(一般に図1に10として示す)の概略斜視図が示される。相互接続の正確な設計は、PSOFC及び含まれる個々のSOFCsの設計に依存しようということは、当業者であれば了解できよう。従って、図1に示す相互接続形状は、本発明に従う相互接続の可能な形状を限定することを意図されているのではなく、説明のためにのみ提供される。図1に示すように、相互接続10は、第1の側14及び第1の側と向かい合う第2の側16を有する。第1及び第2の側の両方は、少なくとも1つのガス流チャネル18及び少なくとも1つのバイア20を有する。本明細書において使用する“バイア”という用語は、導電性通路を意味する。PSOFCにおいて2つの隣接するSOFC同士の間に位置決めされた場合に、相互接続の1つの側の表面のバイアは、スタックにおけるSOFCsのうちの1つと電気的に接触し、一方、相互接続の向かい合う側の表面のバイアは、スタックにおける隣接するSOFCの反対に帯電した電極と電気的に接触し、1つのSOFCから隣のものへの電流の流れを可能にする。例えば、図2に示すように、PSOFC(一般に211として示す)の相互接続210を位置決めし、その結果、相互接続210の側214の表面のバイア220aは、1つのSOFC(一般に223として示す)のカソード222に隣接し、一方、相互接続210の側216の表面のバイア220bは、スタックにおける隣接するSOFC(一般に225として示す)のアノード224に隣接する。図2に示すように、SOFC223は、カソード222、電解質230及びアノード232を含み、SOFC225は、アノード224、電解質234及びカソード236を含む。
【0055】
引き続き図2に関連して、PSOFCの稼働の最中に、ガスは、相互接続210の両方の側(214、216)の表面のガス流チャネル218a、218bを通って流れる。アノード224に隣接する相互接続210の側216の表面のガス流チャネル218を通って流れるガスは、燃料に富んでいるガス、例えば水素に富んでいるガスであり;一方、カソード222に隣接する側214の表面のガス流チャネル218を通って流れるガスは、酸化剤に富んでいるガス、典型的に空気である。従って、相互接続210の側214は、PSOFCの稼働の最中にカソード222の近くの酸素に富んでいる環境にさらされ、側216は、PSOFCの稼働の最中にアノード224の近くの燃料に富んでいる環境にさらされる。相互接続に関連して本明細書において使用する“酸化剤側”という用語は、取り入れるPSOFCの稼働の最中にSOFCのカソードに隣接するかまたは隣接するであろう相互接続の側、例えば、図2の側214を指す。さらに、相互接続に関連して本明細書において使用する“燃料側”という用語は、取り入れるPSOFCの稼働の最中にSOFCのアノードに隣接するかまたは隣接するであろう相互接続の側、例えば、図2の側216を指す。
【0056】
本明細書において開示する様々な非限定具体例に従う相互接続をここから説明する。1非限定具体例は、SOFCsのための相互接続であって、相互接続は、フェライト系ステンレス鋼から形成され、少なくとも650℃の温度で酸化雰囲気にさらされた時に、表面の少なくとも一部分にマンガン-クロメートスピネルを含むスケールを成長させる少なくとも1つのバイアと、少なくとも650℃の温度で酸化雰囲気にさらされた時に、表面の少なくとも一部分にアルミニウムに富んでいる酸化物スケールを成長させる少なくとも1つのガス流チャネルとを含み、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、鉄及びクロムを含み、ヘマタイト構造を有する、相互接続を提供する。本明細書において使用する“スケール”という用語は、材料の表面におけるまたは表面の酸化生成物を指す。
【0057】
先に検討したように、フェライト系ステンレス鋼は、酸化雰囲気(例えばSOFCの稼働の最中に見られるもの)にさらされた時に、導電性のクロムに富んでいる酸化物スケールを形成するその能力及びその比較的に低いCTEが主として理由となって、SOFC相互接続用途において使用するために検討されてきた。しかしながら、SOFC相互接続用途におけるフェライト系ステンレス鋼の利用に対する1欠点は、SOFCの稼働の最中に形成するクロムに富んでいる酸化物スケールからのクロム移動(例えば、クロムを含む蒸気種の発生及び/または固体状態クロム拡散)が理由となる、SOFCにおいて使用する多孔質電極、特にカソードの毒作用の可能性である。先に検討したように、水蒸気はしばしば、稼働できるSOFCのガス流れ中に存在するので、特に相互接続のガス流チャネルにおける揮発性のクロムオキシヒドロキシドの形成は、この問題を悪化させることがある。
【0058】
クロムに富んでいる酸化物スケールとは異なり、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、稼働できるSOFCのガス流れ中に存在する水蒸気によって本質的に影響されない。さらに、フェライト系ステンレス鋼の表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成は、SOFCの稼働の最中にフェライト系ステンレス鋼の表面からのクロム移動を低減するかまたは防ぐことがある。しかしながら、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは高い抵抗率を有するので、電気的接触表面(例えば、バイア表面)のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成は一般に望ましくない。マンガン-クロメートスピネルを含むスケールは幾つかのステンレス鋼の表面に形成することができ、かなり良好な導電体であるが、先に検討したように、十分なクロムがスケール中に存在する場合、カソード毒作用を生じるクロム移動が依然として起きることがある。
【0059】
任意の特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、本明細書において開示する様々な非限定具体例に従う相互接続のガス流チャネルの少なくとも表面を選択的に処理し、その結果、少なくとも650℃の温度で酸化雰囲気にさらされた時に、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールが処理された表面の少なくとも一部分に形成できるようにすることによって、その表面からのクロム移動を、相互接続のASRを有害に生じることなく低減できると予測されている。すなわち、ガス流チャネルの表面は、隣接する電極と直接接触した状態になっていないので(例えば図2に示すように)、ガス流チャネルの表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成は、相互接続のASRを有害に生じないはずである。しかしながら、通って流れるガスの高水蒸気含量が部分的には理由となって、クロムを含む蒸気種の形成の傾向が最もある相互接続の領域はガス流チャネルであるので、こうした表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成は、SOFCの稼働の最中のこうした表面からのクロムを含む蒸気種の形成の量及び/または速度を低減することができ、その結果として、カソード毒作用の発生を低減することができると予測されている。
【0060】
少なくとも650℃の温度で酸化雰囲気にさらされた時に、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールを成長させる少なくとも1つの表面をガス流チャネルは含む、本明細書において開示する様々な非限定具体例によれば、相互接続を、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成を可能にするのに十分な合金含量を含むFe-Crフェライト系ステンレス鋼から形成してよい。例えば、様々な非限定具体例によれば、相互接続を、0.3~1重量%のアルミニウム、及び少なくとも1つの希土類元素(例えば、限定するものではなく、セリウム、ランタン、及びプラセオジム)を含むフェライト系ステンレス鋼から形成してよく、但し、フェライト系ステンレス鋼は、合計で少なくとも0.03重量%の希土類元素を含む。さらに、バイアの表面の少なくとも一部分でのマンガン-クロメートスピネルを含むスケールの形成に対処するために(上記に検討したように)、様々な非限定具体例によれば、フェライト系ステンレス鋼は、0.2~4重量%のマンガンをさらに含んでよい。」
(エ)「【0064】
先に検討したように、本明細書において開示する様々な非限定具体例に従う相互接続は、少なくとも650℃の温度で酸化雰囲気にさらされた時に、表面の少なくとも一部分にアルミニウムに富んでいる酸化物スケールを成長させる少なくとも1つのガス流チャネルを含むことができる。さらに、様々な非限定具体例によれば、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、鉄及びクロムを含んでよい。より詳細には、本明細書において開示する様々な非限定具体例によれば、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、アルミニウム、鉄、クロム及び酸素を含んでよい(ここで、鉄及びクロム陽イオンの少なくとも一部分は、酸化アルミニウム格子組織中のアルミニウム陽イオンの一部分に取って代わり、ヘマタイト構造を有してよい。特に、ヘマタイト構造は、格子パラメーターa0及びc0を有してよく、ここで、a0は4.95オングストローム{すなわち、10-10m)~5.04オングストロームの範囲にわたり、c0は13.58オングストローム~13.75オングストロームの範囲にわたる。」
(オ)「【0067】
例えば、本明細書において限定するものではないが、0.3~1重量%のアルミニウム及び少なくとも0.03重量%の単数または複数の希土類元素を含むFe-Crフェライト系ステンレス鋼は、電解研磨した後に、酸化条件(例えばPSOFCの稼働の最中に見られるもの)にさらされた時に、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールを形成できることが、本願発明者らによって観察されている。さらに、上記に検討したように、相互接続の特定の領域の表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成は、その領域からのクロム移動が理由となるカソード毒作用の速度を低減する際に有利かもしれないが、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは高い抵抗率を有するので、相互接続のバイア表面のこのようなスケールの存在はASRの増大を生じ得、相互接続の電気的性質を劣化し得る。従って、本明細書において開示する特定の非限定具体例によれば、相互接続の特定の表面、例えば、限定するものではなく、ガス流チャネル表面、マニホルド表面及び/またはシーリングフランジ表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成を可能にするが、他の表面、例えばバイア表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成を防ぐように、相互接続を処理してよい。例えば、1非限定具体例は、SOFCsのための相互接続であって、相互接続は、フェライト系ステンレス鋼から形成され、少なくとも650℃の温度で酸化雰囲気にさらされた時に、表面の少なくとも一部分にマンガン-クロメートスピネルを含むスケールを成長させる少なくとも1つのバイアと、少なくとも1つの電解研磨された表面を含む少なくとも1つのガス流チャネルとを含む、相互接続を提供する。本明細書において使用する“マニホルド”という用語は、相互接続の酸化剤側及び燃料側の表面のガス流チャネルをそれぞれ空気及び燃料ガス供給物に接続する相互接続の単数または複数の部分を指す。さらに、本明細書において使用する“シーリングフランジ”という用語は、一般に、シーリング材の例えば、限定するものではなく、アルカリガラスが、PSOFCのための気密シールを生成するために適用される、相互接続の外周における相互接続の部分を指す。」
(カ)「【0071】
上記に検討したように、SOFCの稼働の最中に、本明細書において開示する様々な非限定具体例に従うフェライト系ステンレス鋼相互接続は酸化を受け、その結果、相互接続は、少なくとも1つのバイアの表面の少なくとも一部分にマンガン-クロメートスピネルを含むスケール及び少なくとも1つのガス流チャネルの表面の少なくとも一部分にアルミニウムに富んでいる酸化物スケールを含もう。こうした様々なスケールの厚さは、幾つかのファクター、例えば鋼組成、暴露時間、稼働温度、湿度及びガス組成に依存しよう。本明細書において限定するものではないが、特定の具体例によれば、マンガン-クロメートスピネルを含むスケールは、厚さ10ミクロン未満を有してよく、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、5ミクロン未満である厚さを有してよい。さらに、本明細書において開示する様々な非限定具体例によれば、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールの厚さは、1ミクロン~5ミクロン未満の範囲にわたってよく、さらに2ミクロン~3ミクロンの範囲にわたってよい。」
(キ)「【0082】
例えば、図3aに示すように、本明細書において限定するものではないが、相互接続(一般に310aとして示す)は、フェライト系ステンレス鋼344aから形成され、ガス不浸透性である本体340aを含んでよく、その結果、相互接続310aのそれぞれ燃料側314a及び酸化剤側316aの表面を流れる燃料及び酸化剤ガスを分離する。さらに、この非限定例によれば、固体酸化物燃料電池の稼働の最中に相互接続310aの燃料側314aの最も近くの酸素の分圧を超える解離圧を有する酸化物を形成する金属材料342aを、本体340aの燃料側314aの表面のフェライト系ステンレス鋼344aの少なくとも一部分に接続して、燃料ガスとフェライト系ステンレス鋼との間の接触を低減するかまたは防いでよい。例えば、1非限定具体例によれば、金属材料342aは、本体340aの燃料側314aの表面でフェライト系ステンレス鋼344aに結合するガス不浸透性または固体層として存在してよい。このような層を形成する方法としては、めっき及びクラッディングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。」
(ク)甲1には、図1、図2、図3aとして、次の図が記載されている。
「
[図:0001392007000002.jpg]
」
(ケ)甲1には、「例えばバイア表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成を防ぐように、相互接続を処理してよい」(上記(オ))と記載され、ここでいう「バイア表面」とは、電気的接触表面である(上記(ウ)【0058】参照。)から、この電気的接触表面がアノード224及び、カソード222と接触する表面であると解されることをふまえると、甲1には、相互接続210のうち、アノード224と接触している電気的接触表面、及び、カソード22と接触している電気的接触表面には、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールが形成されないことが記載されているといえる。
以上のことから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
・甲1発明
以下の構成を備えた固体酸化物燃料電池。
(1)前記固体酸化物燃料電池は、
SOFC223,225と、
SOFC223,225のアノード224に燃料に富んでいるガスを流すガス流チャネル218と、
SOFC223,225のカソード222に酸化剤に富んでいるガスを流すガス流チャネル218と、
相互接続のガス流チャネル218表面に形成されたアルミニウムに富んでいる酸化物スケールと
を備えている。
(2)カソードの毒作用の可能性がある物質は、クロムに富んでいる酸化物スケールから移動するクロムである。
(3)前記アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、アルミニウム、鉄、クロム及び酸素を含み、ヘマタイト構造を有しており、
(4)前記SOFC223,225は、カソード222、236と固体酸化物の電解質230、234及びアノード232、224を含み、
前記アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、前記SOFC223,225の相互接続210が有する前記ガス流チャネル218の表面に形成された厚さ1ミクロン~5ミクロン未満の範囲のものであり、
前記相互接続210のうち、前記アノード224と接触している電気的接触表面、及び、前記カソード22と接触している電気的接触表面には、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールが形成されない。
イ 対比、及び一致点と相違点、判断
(ア)対比及び一致点と相違点について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「固体酸化物燃料電池」は、燃料電池の一種であるから本件発明1の「燃料電池システム」に相当する。
甲1発明の「SOFC223,225」は、本件発明1の「燃料電池」に相当し、以下同様に、「燃料に富んでいるガス」は、「燃料ガス」に、「流す」は、「供給する」にそれぞれ相当し、甲1発明の「アノード224に燃料に富んでいるガスを流すガス流チャネル218」は、本件発明1の「燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路」に相当する。
甲1発明の、「酸化剤に富んでいるガス」は、本件発明1の「酸化剤ガス」に相当し、甲1発明1の「カソード222に酸化剤に富んでいるガスを流すガス流チャネル218」は、本件発明1の「カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路」に相当する。
甲1発明の「相互接続のガス流チャネル218表面」は、本件発明1の「前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位」に相当し、同様に、「形成された」は、「設けられた」に相当する。また、甲1発明の「アルミニウムに富んでいる酸化物スケール」は、本件発明1の「捕捉剤」及び「捕捉剤を含む捕捉部材」と、アルミニウム酸化物である限りで一致する。
甲1発明の「カソードの毒作用の可能性がある物質」は、本件発明1の「被毒物質」に相当し、甲1発明1の「クロムに富んでいる酸化物スケールから移動するクロム」は、本件発明1の「Cr及び/又はS」に相当する。
甲1発明の「前記SOFC223,225は、カソード222、236と固体酸化物の電解質230、234及びアノード232、224を含」むことは、本件発明1の「前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であ」ることに相当する。
甲1発明の「前記SOFC223,225の相互接続210が有する前記ガス流チャネル218の表面」は、本件発明1の「前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面」に相当し、同様に、「厚さ1ミクロン~5ミクロン未満の範囲のもの」は、本件発明1の「薄膜」に相当する。したがって、甲1発明の「前記アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、前記SOFC223,225の相互接続210が有する前記ガス流チャネル218の表面に形成された厚さ1ミクロン~5ミクロン未満の範囲のものであ」ることは、本件発明1の「前記捕捉部は前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された前記捕捉剤からなる薄膜であ」ることと、アルミニウム酸化物は、燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成されたアルミニウム酸化物からなる薄膜である限りで一致する。
甲1発明の「前記相互接続210のうち、前記アノード224と接触している電気的接触表面、及び、前記カソード22と接触している電気的接触表面には、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールが形成されない」ことは、本件発明1の「前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない。ここで、前記「ガス流路の内表面」とは、前記インターコネクタの表面の内前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接接触する面をいい、前記アノードと直接接触する面、及び、前記カソードと直接接触する面を含まない」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点と相違点とを有する。
・一致点
以下の構成を備えた燃料電池システム。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給経路と、
前記燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給経路と、
前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、アルミニウム酸化物と
を備えている。
(2)前記被毒物質は、Cr及び/又はSである。
(4)前記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、
前記アルミニウム酸化物は前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記アルミニウム酸化物からなる薄膜であり、
前記インターコネクタの表面の内、前記アノードと直接、接触している面、及び、前記カソードと直接、接触している面には、前記薄膜は形成されない。
ここで、前記「ガス流路の内表面」とは、前記インターコネクタの表面の内、前記燃料ガス又は前記酸化剤ガスが直接、接触する面をいい、前記アノードと直接、接触する面、及び、前記カソードと直接、接触する面を含まない。
・相違点
アルミニウム酸化物が、本件発明1では、「被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材」であって、「前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む」のに対し、甲1発明では、「アルミニウムに富んでいる酸化物スケール」であって、「アルミニウム、鉄、クロム及び酸素を含み、ヘマタイト構造を有して」いるものの被毒物質を捕捉することに関しては、不明な点。
(イ)相違点についての判断
まず、甲1発明として認定したとおり、甲1には、クロムがカソードの毒作用のある物質であることは示されており(【0057】参照)、さらに甲1には、「ガス流チャネルの表面のアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成」によって、「SOFCの稼働の最中のこうした表面からのクロムを含む蒸気種の形成の量及び/または速度を低減することができ、その結果として、カソード毒作用の発生を低減すること」も記載されている(【0059】参照)。すなわち、甲1には、ガス流チャネルの表面からクロムを含む蒸気種が発生する量、発生する速度をアルミニウムに富んでいる酸化物スケールの形成によって低減することが記載されているといえる。
しかし、甲1には、アルミニウムに富んでいる酸化物のスケールにより、クロムを捕捉することまでは記載されていない。また、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールが「アルミニウム、鉄、クロム及び酸素を含み、ヘマタイト構造を有して」いることについては記載されているが、このようなアルミニウムに富んでいる酸化物がクロムを捕捉することが自明であるともいえない。また、ほかに申立人の提出した甲第2号証ないし甲第5号証を含む他の文献をみても、甲1に記載されたアルミニウムに富んでいる酸化物のスケールがクロムを捕捉することが技術常識あるいは周知技術であると認めるに足る証拠は見あたらず、甲1に記載されたアルミニウムに富んでいる酸化物のスケールがクロムを捕捉するようにすることが容易であるともいえない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者であっても容易に想到しえたことではない。
(ウ)効果について
本件発明1は、「捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む」ことで、Cr及び/又はSを捕捉し、「Cr及びSによる燃料電池用電極の被毒を抑制することができる」(本件明細書【0011】)という甲1発明及び甲1に記載された事項から当業者が予測しえない有利な効果を奏するものである。
以上のことから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとは、いえず、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
さらに、本件発明2及び5は、本件発明1に対して、さらに「コランダム構造を備えた酸化物」または「インターコネクタ」について限定した発明である。よって、同様の理由により、本件発明2及び5は、甲1に記載された発明であるとはいえず、上記甲1に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものともいえない。
ウ 申立人の意見について、
申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証における上述した「アルミニウムに富んでいる酸化物スケールは、アルミニウム、鉄、クロム及び酸素を含んでよい」との記載(段落0064)を参照すると、甲第1号証には、
・アルミニウムに富んでいる酸化物スケール(酸化アルミニウム)へのCrの固溶が起こること、すなわち、酸化アルミニウムがCrの捕捉機能を有すること、
が記載されていると言える。」(特許異議申立書17ページ3行ないし同ページ8行)と主張する。
しかし、申立人の指摘する甲1の【0064】の記載は、クロムだけでなく、「アルミニウム、鉄、クロム及び酸素を含んでよい」と記載されていることから、この記載におけるクロムは、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールが捕捉され、その結果、アルミニウムに富んでいる酸化物スケールに含まれることになったものと解することはできず、捕捉以外の手段(例えば、製造時より含まれているクロムが酸化したもの)により含まれるものと解されるから、申立人の主張は採用することができない。
(3) 特許異議申立て理由3(サポート要件)について
ア 被毒物質と捕捉剤との関係について
本件明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題として、「燃料電池用電極の被毒物質であるCr及び/又はSを捕捉することが可能な新規な燃料電池システムを提供すること」(【0009】)を発明が解決しようとする課題とし、この課題を解決するものとして、次のような事項が記載されている。
(ア)「【0045】
(実施例1~2、比較例1~2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
チタニア粉末(ルチル型、高純度化学研究所製)に、エタノール、分散剤(マリアリム(登録商標)、日油(株)製)、及びバインダー(エスレック(登録商標)、セキスイ化学工業(株)製)を加え、遊星ボールミル(フリッチジャパン(株)製)により混合し、チタニアスラリーを調製した。
【0046】
アルミナハニカムの表面にチタニアスラリーをディップコートし、アルミナハニカムの表面にチタニア薄膜を形成した。図3に、実験に使用したアルミナハニカム(通気性セッター、美濃窯業(株)製)の写真を示す。また、図4に、チタニアをコートしたアルミナハニカム(実施例1)の写真を示す。
【0047】
[1.2. 実施例2]
実施例1で用いたアルミナハニカムをそのまま試験に供した。」
(イ)【0050】
また、比較例1については、被毒源の上にアルミナハニカムと同じ高さのピラーを立て、その上にLSCF焼結体を載せた。これらをアルミナルツボに収めて、実施例1と同一条件下で熱処理した。
さらに、比較例2(リファレンス)については、被毒源を用いることなく、アルミナハニカムと同じ高さのピラーを立て、その上にLSCF焼結体を載せた。これをアルミナルツボに収めて、実施例1と同一条件下で熱処理した。」
(ウ)「【0052】
[3.2. XRF]
被毒試験後、LSCF焼結体の被毒源側の表面の蛍光X線(XRF)測定を行った。表1に、被毒試験後のLSCF焼結体の被毒源側の表面のXRF測定結果を示す。表1より、以下のことが分かる。
(1)実施例2(アルミナハニカム)は、比較例1に比べてS量は増加したが、Cr量は比較例1の約1/3まで低下した。
(2)実施例1(チタニアコートアルミナハニカム)は、S量及びCr量のいずれも増加せず、比較例2(リファレンス)と同レベルであった。
(3)アルミナは、バナジウムの捕集効果が大きく、鉛、銅、ビスマスの捕集効果は中程度であった。一方、チタニアは、ビスマスの捕集効果が大きく、亜鉛、鉛、銅の捕集効果は中程度であった。
【0053】
【表1】
[図:0001392007000003.jpg]
」
そこで、これらの発明の詳細な説明の記載を検討すると、【表1】の結果から、チタニアコートアルミナハニカムを用いた実施例1では、S及びCrとも、比較例1に対し、数値が低くなっており、被毒源を用いていない比較例2と同程度の値となっている。また、コランダム構造を備えた酸化物であるアルミナハニカムをそのまま試験に供した実施例2では、Sの数値は、比較例1より高いものの、Crについては、比較例1より低く、被毒源を用いていない比較例2と同程度の値となっている。
そうすると、発明の詳細な説明には、Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物とCr及びSを捕捉する作用を有するTiO2について記載されているといえる。
これに対し、本件訂正により訂正された請求項1には、「前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む」と記載されており、これは、発明の詳細な説明に記載された上記【表1】等に示される試験結果と整合するものである。
そして、「前記捕捉剤は、前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む」ことにより、「燃料電池用電極の被毒物質であるCr及び/又はSを捕捉することが可能な新規な燃料電池システムを提供すること」という本件発明が解決しようとする課題を解決できることは、明らかである。
以上のことから、本件発明1及び2、5は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人は、令和4年4月18日受付の意見書において、令和4年3月9日付け訂正請求書により訂正請求された本件の請求項1に係る発明は、被毒物質の各形態と捕捉剤の各形態との任意の組合せを包含しているところ、発明の詳細な説明の記載によれば、被毒物質と捕捉剤との組合せによっては、捕捉剤により被毒物質を捕捉することができず、課題を解決できないことは明らかである旨を主張している(4ページ7行ないし6ページ4行参照)。
しかし、本件発明1は、被毒物質については、「Cr及び/又はSである」とし、捕捉剤については、「前記Crを捕捉する作用を有するコランダム構造を備えた酸化物、及び/又は、前記Cr及び/又は前記Sを捕捉する作用を有するTiO2を含む」として、被毒物質と捕捉剤との組み合わせを特定しているから申立人の主張は、採用することができない。
イ 捕捉部材と熱源との関係について
本件明細書の発明の詳細な説明には、
「【0019】
燃料電池が固体酸化物形燃料電池である場合、捕捉部材は、燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された被毒防止層が好ましい。
捕捉剤を用いて被毒物質を吸着するためには、捕捉剤を適切な吸着温度に加熱する必要がある。一方、固体酸化物形燃料電池は、作動温度が高い。そのため、固体酸化物形燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に被毒防止層を形成すると、被毒防止層を適切な温度に維持するための熱源が不要となる。」
と記載され、さらに、
「【0042】
[2.2.3. 捕捉剤]
上述したように、捕捉剤は、インターコネクタ40a~40cのガス流路(燃料ガス流路42、酸化剤ガス流路44)の内表面に形成された捕捉剤からなる薄膜(被毒防止層)が好ましい。」
とも記載されている。
これらの記載から、発明の詳細な説明には、捕捉剤を用いて被毒物質を吸着するためには、捕捉剤を適切な吸着温度に加熱する必要があるという課題を解決するために、捕捉部材を燃料電池のインターコネクタの燃料ガス流路、酸化剤ガス流路の内表面に形成することが記載されているといえる。
これに対し、本件発明1は、捕捉部材を設ける部位について、「前記燃料ガス供給経路及び/又は前記酸化剤ガス供給経路のいずれかの部位に設けられた、被毒物質を捕捉するための捕捉剤を含む捕捉部材」と特定され、さらに「前記捕捉部材は前記燃料電池のインターコネクタのガス流路の内表面に形成された、前記捕捉剤からなる薄膜であり」とも特定されているから、本件発明1及び2、5は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
申立人の主張は、本件特許査定時の請求項1ないし5に係る発明を前提とするものであって、採用することができない。
また、ほかに、本件発明1及び2、5が発明の詳細な説明に記載されたものでないとする本件訂正後の請求項1及び2、5の記載はみあたらない。
よって、請求項1及び2、5に係る特許は、法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2、5は、甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、また、本件発明1及び2、5は、甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、さらに、本件発明1及び2、5は、法第36条第6項第1号及び同項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものとはいえないから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した理由及び特許異議申立書に記載された理由によっては、本件発明1及び2、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により請求項3及び4は削除され、特許異議の申立てをすることができないから、請求項3及び4に対する特許異議の申立てを却下する(法120条の8において準用する法135条)。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-700846