特許異議申立
2024-700458
植物繊維強化樹脂組成物の製造方法
- 審判番号
- 2024-700458
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-186073外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7380969
- 請求日
- 2024年05月15日
- 審決日
- 2024年12月26日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社豊田中央研究所
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【権利者】トヨタ車体株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】佐々木 香織
- 分類
- P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第113条、特許法第120条の5第4項、特許法第36条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7380969号発明「植物繊維強化樹脂組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7380969号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2、4-8〕、〔3-8〕について訂正することを認める。
特許第7380969号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7380969号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2019-186073号)は、令和元年10月9日の出願であって、令和5年11月7日にその特許権の設定登録がされ、令和5年11月15日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である令和6年5月15日に特許異議申立人 佐々木 香織(以下「異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和6年 8月13日付け:取消理由通知書
令和6年10月11日 :意見書の提出(特許権者)
令和6年10月11日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和6年11月14日 :意見書の提出(異議申立人)
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7380969号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、前記混練する工程は、樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み、前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上である、植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。」とあるのを、「樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、前記混練する工程は、樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み、前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上である、植物繊維強化樹脂組成物の製造方法(ただし、前記植物繊維の含有率が50質量%以上であるものを除く)。」に訂正する。
請求項1の記載を引用して記載された、請求項2及び4~8についても、同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、「前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が80質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。」とあるのを、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるとともに、訂正前の請求項3に記載の植物繊維の含有率を80質量%以下から45質量%以下に限定し、「樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、前記混練する工程は、樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み、前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上45質量%以下である、植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。」に訂正する。
請求項3の記載を引用して記載された、請求項4~8についても、同様に訂正する。
2 別の訂正単位とすることの求め
請求項2及び4~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって連動して訂正される関係にあることから、請求項1~2及び4~8は、一群の請求項を構成する。
また、請求項4~8は、請求項3を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項2によって連動して訂正される関係にあることから、請求項3~8は一群の請求項を構成する。
そして、特許権者は、後者の一群の請求項に係る訂正事項2の訂正について、前者の一群の請求項に係る訂正事項1とは別の訂正単位とすることを求めている(訂正請求書6頁ウ)。
3 訂正の適否
(1)一群の請求項及び別の訂正単位とすることの求めについて
請求項2及び4~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1によって連動して訂正される関係にあることから、請求項1~2及び4~8は、一群の請求項を構成する。
また、請求項4~8は、請求項3を直接又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項2によって連動して訂正される関係にあることから、請求項3~8は、一群の請求項を構成する。
そして、前者の一群の請求項と後者の一群の請求項は、ともに請求項4~8を介して一体として特許請求の範囲の全部を形成するように連関している関係にあることから、結局、請求項1~8は、全体として特許法施行規則45条の4に規定される一群の請求項を形成するといえる。
したがって、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1~8に対してされたものである。
(2)別の訂正単位とすることの求めについて
上記2の別の訂正単位とすることの求めは、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて独立形式に改める訂正(訂正事項2)を行った上でなされたものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正を、一群の請求項1~8のうち他の請求項である請求項1~2、4~8に係る訂正(訂正事項1)と別の訂正単位とすることを認める。
(3)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された植物繊維強化樹脂組成物の製造方法から、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が50質量%以上であるものを除くものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
請求項2及び4~8についてみても、同じである。
イ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書の【0014】には、「混合物に充分なせん断応力を与える観点からは、少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における混合物に含まれる植物繊維の含有率が、最終的に得られる樹脂組成物に含まれる植物繊維の含有率よりも大きいことが好ましい。具体的には、例えば、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。混合物の粘度が高すぎて混練できなくなるのを回避する観点からは、上記含有率は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。」と記載されている。訂正事項1に係る植物繊維の含有率の数値範囲は、上記【0014】に記載された植物繊維の含有率の数値範囲内にあり、また、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
請求項2及び4~8についてみても、同じである。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、これらの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。よって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
請求項2及び4~8についてみても、同じである。
(4)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて独立形式に改めるとともに、訂正前の請求項3に記載の植物繊維の含有率を80質量%以下から30質量%以上45質量%以下に限定するものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。
請求項4~8についてみても、同じである。
イ 新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書の【0014】の記載は、上記(2)イに示したとおりである。そうすると、訂正事項2に係る植物繊維の含有率は、上記【0014】に記載された植物繊維の含有率の数値範囲内にあり、また、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
請求項4~8についてみても、同じである。
ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否
訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、これらの訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
請求項4~8についてみても、同じである。
(5)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和6年11月14日提出の意見書の3頁18行~22行において、「本件明細書の[0024]の記載は、最も上流側の投入口と、最終的な排出口との間のいずれかの位置における混合物の濃度を意味していると考えられ、本件段落[0014]及び実施例の記載を参照すれば、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における混合物に含まれる植物繊維の含有量を45質量%以下とすることについて、本件明細書には、記載も示唆もされていない。」と主張している。
上記主張について、上記(3)イで述べたとおりであって、上記主張は、採用できない。
(6)本件訂正請求についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-2、4-8〕、〔3-8〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明(以下、項番に従って「本件特許発明1」などといい、これらの発明を総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のものである。
「 【請求項1】
樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、
前記混練する工程は、樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み、
前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上である、
植物繊維強化樹脂組成物の製造方法(ただし、前記植物繊維の含有率が50質量%以上であるものを除く)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における混合物に含まれる植物繊維の含有率が最終的に得られる樹脂組成物に含まれる植物繊維の含有率よりも大きい、請求項1に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、
前記混練する工程は、樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み、
前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上45質量%以下である、植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの投入口のうち、最も下流側の投入口が前記押出機の中央部又は中央部よりも下流部に位置する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記押出機の中央部から上流部及び中央部から下流部のそれぞれに、輸送能力のないニーディングディスクが配置されたスクリューセグメントを備える、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂はポリオレフィン樹脂を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記植物繊維はセルロース繊維を含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記押出機のスクリュー長L/スクリュー径D(L/D)が36以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の植物繊維強化樹脂組成物の製造方法。」
第4 取消しの理由及び取消しの理由として採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要
1 当合議体が通知した取消しの理由
令和6年8月13日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
理由:(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
なお、令和6年8月13日付け取消理由通知書は、本件訂正請求により訂正する前の本件特許の請求項1~8に係る発明に対してなされたものである。
2 取消理由で通知しなかった申立ての理由
特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:(新規性)本件特許の請求項1~4、6及び7に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。
理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
理由3:(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~8の記載が、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法113条2号又は4号に該当し、取り消されるべきものである。
なお、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由は、本件訂正請求により訂正する前の本件特許の請求項1~8に係る発明に対してなされたものである。
3 特許異議申立人が提示した証拠方法
甲第1号証:特表2015-508114号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特公昭46-1104号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特許第5313521号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:小林昭美、「二軸押出機による複合化プロセス」、成形加工、第18巻第3号、2006年、166頁~173頁(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特許第6422540号公報(以下「甲5」という。)
なお、令和6年8月13日付け取消理由通知書において、甲2は、主引用例であり、甲3~5は、周知技術を示す文献である。
また、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由において、甲1及び甲2は、主引用例であり、甲3~5は、周知技術を示す文献である。
第5 取消しの理由についての当合議体の判断
1 甲2の記載
取消理由で引用された甲2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付した。
(1)「発明の詳細な説明
本発明は、ガラス繊維と熱可塑性樹脂を均一に混合する方法に関するものであり、補強効果のすぐれた熱可塑性樹脂をうることにある。
従来からガラス繊維と熱可塑性樹脂とを混合することによって、該樹脂を補強することが行なわれている。
・・・省略・・・
しかして本発明者等は、上記従来の方法を改善して、ガラス繊維の分散性を均一にし、補強効果35の著しい熱可塑性樹脂を得ようと鋭意研究した結果、下記の如き本発明の方法に到達したのである。
すなわち本発明は、2個以上の供給口を有する押出機を用いて、ガラス繊維と熱可塑性樹脂を第1の供給口に、ガラス繊維が50~80重量%となるごとく供給し、それらが溶融混練した状態で、第2以下の供給口より、同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を供給して、ガラス繊維含有率が0.5~50重量%となるように希釈混練することを特徴とするガラス繊維入り熱可塑性樹脂の製造法を提供するものである。
上記本発明の方法を図面によって説明すれば、まず直径2~30ミクロンのガラス繊維と熱可塑性樹脂を、ガラス繊維の含有率が50~80重量%になるように、ホッパー2からスクリュー押出機1に供給する。ガラス繊維の含有率が上記の範囲をはずれると、樹脂中のガラス繊維の分散性が悪くなるので好ましくない。この場合すくなくとも2mm以上の適当な長さに切断されたガラス繊維(いわゆるチョップトストランド)と樹脂粉末あるいはペレットをあらかじめ混合した状態で供給してもよいし、また多数本の単繊維を合糸したガラス繊維ロービングと樹脂を連続的に供給することも可能である。ホッパー2から供給されたガラス繊維と樹脂の混合物は、スクリュー3によって供給部Aから圧縮部B、計量部Cに移送される間に溶融され、剪断力を受けて樹脂とガラス繊維は混練される。繊維長の長いガラス繊維、とりわけロービングの形状で添加した場合などは、移送中の剪断力によって少なくとも2mm以下に粉砕され、さらに合糸された状態のロービングの場合は繊維の束がときほぐされ、均一な混合物となる。
計量部Cを経て移送された混合物に対し減圧部Dにて、供給口4より樹脂を定量供給し、ガラス繊維含有率を稀釈し、最終的にガラス繊維含有率が0.5~50重量%になるようにする。4から供給される樹脂は溶融状態でもよいし固形でもよい。固形の場合はB、Fを移送される間に溶融し、もとのガラス繊維-樹脂混合物と完全に混合する。またここで供給される樹脂は、先に添加された樹脂と同種のものが好ましいが、該樹脂と均一に混練されるものであれば異種のものでもよい。こうして作られた混合物は、押出機に適当なダイ5を取り付けることによって、ペレタイズして成形用材料とすることもできるし、あるいは直接、シート、丸棒等の押出し成形を行なうことも可能である。
本発明の大きな特徴は、あらかじめガラス繊維リッチな混合物をつくり、それを樹脂分によって稀釈することによってガラス繊維の分散性の均一な混合物を得ることにある。
・・・省略・・・
尚本発明でいう熱可塑性樹脂とは通常溶融成形に供される樹脂であって、例えば、ナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂など、溶融成形可能な樹脂であれば特に制限はない。」(1頁1欄19行~2頁3欄25行)
(2)「実施例 1
口径65mmのベントタイプ押出機を用いABSペレットと120エンドからなるガラス繊維ロービングを押出機ホッパーより、ガラス繊維添加率が60重量%になるごとく毎時15kg供給した。同時にベントポートよりABSペレットを毎時15kg供給し、ペレタイズ用ダイから押出し、最終的に、ガラス繊維含有率が約30重量%のペレットを得た。
繊維の分散状態はきわめて良好であり、ランダムに試料を抽出し、ガラス繊維含有率を分析したところ、標準偏差は0.2(重量%)程度であった。
実施例 2
口径40mmのベントタイプ押出機を用い、ナイロン6ペレツトに切断長6mmのガラス短繊維が60重量%になるようにブレンドしたものをホッパーから毎時5kg供給した。 ベントポートからナイロン6ペレットを毎時7kg供給し最終的な混合比を25重量%とし直径50mmの丸棒を成形した。繊維の分散性は良好であった。
実施例 3
従来法と本発明方法との比較
従来法:口径401mmのベントタイプ押出機を用い、ナイロン6ペレットとガラス繊維チョップトストランド(長さ6mm)を重量比で90:10となる様押出機ホッパーより毎時25kgで供給し、ペレタイズ用ダイから押出してガラス繊維含有率10重量%のペレットを得た。この場合、スクリューの回転数60rpm、ガラス繊維の平均帯留時間は4分30秒であった。得られたペレットから任意に50粒を採り、1粒ずつガラス繊維含有率を測定したところ平均含有率9.81%、標準偏差0.38%であった。
本発明方法:ナイロン6ペレットとガラス繊維チョップトストランド(長さ6mm)を4:6の重量比で混合して口径40mmのベントタイプ押出機の第1の供給口に供給し、第2の供給口からンナイロン6ペレットを供給して、ペレタイズ用ダイから最終的にガラス繊維含有率が10重量%のペレットを得た。この場合、スクリュー回転数60rpm、吐出量毎時25kg、ガラス繊維の平均帯留時間4分30秒であった。得られたペレットから上記と同様にガラス繊維含有率を測定したところ、平均含有率10.1%、標準偏差0.15%であった。
この結果から本発明の方法によれば、従来法に比してガラス繊維が樹脂中に極めて均一分散することが明らかである。」(2頁3欄27行~4欄30行)
(3)表1
「
[図:0001422433000001.jpg]
」(3頁)
(4)「この結果から、本発明の方法は従来法に比して、それぞれ物性の平均値が優れ、しかも最大値と最小値の差が少ない樹脂が得られることが確認された。実用に際しては平均値よりも最小値に信頼性を置くことは当然であることからして、表1の結果において最小値を比較すれば、本発明の方法が材料の信頼性の上で著しく優れることが明らかである。なおこの物性のバラツキは、樹脂とガラス繊維の混合の均一性に対応するものと考えられる。」(3頁5欄13行~22行)
(5)「特許請求の範囲1 ガラス繊維と熱可塑性樹脂との混練を、2個以上の供給口を有する押出機で行ない、且つ混練に際しては、第1の供給口ではガラス繊維の含有量が50~80重量%となる如く供給し、それらが溶融混練した状態で、第2以下の供給口より、同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を供給して、ガラス繊維含有率が0.5~50重量%となるように希釈混練することを特徴とするガラス繊維入り熱可塑性樹脂の製造法。」(3頁5欄23行~6欄19行)
(6)図
「
[図:0001422433000002.jpg]
」
2 甲2発明
甲2には、特許請求の範囲に記載された「ガラス繊維入り熱可塑性樹脂の製造法」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「ガラス繊維と熱可塑性樹脂との混練を、2個以上の供給口を有する押出機で行ない、且つ混練に際しては、第1の供給口ではガラス繊維の含有量が50~80重量%となる如く供給し、それらが溶融混練した状態で、第2以下の供給口より、同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を供給して、ガラス繊維含有率が0.5~50重量%となるように希釈混練することを特徴とするガラス繊維入り熱可塑性樹脂の製造法。」
3 本件特許発明1(1)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
ア 樹脂及び植物繊維について
甲2発明は、「ガラス繊維と熱可塑性樹脂との混練を、2個以上の供給口を有する押出機で行な」う工程を具備する。
上記工程からみて、甲2発明の「熱可塑性樹脂」は、本件特許発明1の「樹脂」に相当する。また、甲2発明の「ガラス繊維」は、本件特許発明1の「植物繊維」と、「繊維」の点で共通する。
イ 押出機について
上記アの工程からみて、甲2発明の「押出機」は、その文言どおり、本件特許発明1の「押出機」に相当する。
ウ 混合物を混練する工程について
上記アの工程からみて、甲2発明は、「ガラス繊維」と「熱可塑性樹脂」とを含む混合物を混練する「押出機」を用いて混練する工程を具備するといえる。
そうしてみると、甲2発明は、本件特許発明1の「樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程」と、「樹脂と」「繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程」の点で共通する。また、甲2発明は、本件特許発明1の「樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程」と、「樹脂と」「繊維とを含む混合してなる混合物を混練する工程」の点で共通する。
エ 投入口について
甲2発明は、「ガラス繊維と熱可塑性樹脂との混練を、2個以上の供給口を有する押出機で行ない、且つ混練に際しては、第1の供給口ではガラス繊維の含有量が50~80重量%となる如く供給し、それらが溶融混練した状態で、第2以下の供給口より、同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を供給」する工程を具備する。
上記工程からみて、甲2発明の「供給口」は、本件特許発明1の「投入口」に相当する。
オ 樹脂は2つの投入口から押出機に投入されることについて
上記エの工程からみて、甲2発明は、本件特許発明1の「前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され」との要件を満たす。
カ 混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程について
上記エの工程からみて、甲2発明は、本件特許発明1の「前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程」との要件を満たす。
キ 連続して実施することについて
上記エの工程からみて、甲2発明において、「第1の供給口ではガラス繊維の含有量が50~80重量%となる如く供給」する工程と、「第2以下の供給口より、同種もしくは異種の熱可塑性樹脂を供給」する工程とを連続して実施することは、明らかである。
そうしてみると、甲2発明は、本件特許発明1の「樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み」と、「樹脂と繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含み」の点で共通する。
ク 植物繊維強化樹脂組成物の製造方法について
甲2発明の「ガラス繊維」が樹脂を強化する機能を有することは、明らかである(当合議体注:このことは、甲2の1頁1欄23行~25行の記載からも確認できる。)。
そうしてみると、甲2発明の「ガラス繊維入り熱可塑性樹脂の製造法」は、本件特許発明1の「植物繊維強化樹脂組成物の製造方法」と、「繊維強化樹脂組成物の製造方法」の点で共通する。
(2)一致点
上記(1)によると、本件特許発明1と甲2発明は次の点で一致する。
「 樹脂と繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、
前記混練する工程は、樹脂と繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含む、
繊維強化樹脂組成物の製造方法。」
(3)相違点
本件特許発明1と甲2発明は次の点で相違する。
<相違点1>
「繊維」について、本件特許発明1は、「植物繊維」であるのに対して、甲2発明は、「ガラス繊維」である点。
<相違点2>
本件特許発明1は、「前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上であ」り、「ただし、前記植物繊維の含有率が50質量%以上であるものを除く」のに対して、甲2発明は、「第1の供給口ではガラス繊維の含有量が50~80重量%となる如く供給」するものである点。
(4)判断
事案に鑑み、上記相違点1及び2についてまとめて検討する。
甲2には、「ガラス繊維と熱可塑性樹脂を均一に混合する方法に関するものであり、補強効果のすぐれた熱可塑性樹脂をうる」(1頁1欄20行~22行)ために、「直径2~30ミクロンのガラス繊維と熱可塑性樹脂を、ガラス繊維の含有率が50~80重量%となるように、ホッパー2からスクリュー押出機1に供給する」(1頁2欄10行~13行)ものであって、「ガラス繊維の含有量が上記の範囲をはずれると、樹脂中のガラス繊維の分散性が悪くなるので好ましくない」(1頁2欄13行~15行)と記載されている。
上記記載から、甲2においては、ガラス繊維を植物繊維に置き換えた上で、植物繊維の含有率を50~80重量%の範囲外とするという動機付けはない。また、甲2には、上記記載以外にも、ガラス繊維を植物繊維に置き換えた上で、植物繊維の含有率を50~80重量%の範囲外とすることを窺わせる記載はない。
さらに、甲2発明において、ガラス繊維を植物繊維に置き換えた上で、植物繊維の含有率を50~80重量%の範囲外とすることは、甲3~5のいずれにも記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。
したがって、当業者であっても、甲2発明、甲3~5に記載された事項及び周知技術に基づいて上記相違点1及び2に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
(5)本件特許発明1についての小括
以上のことから、本件特許発明1は、当業者であっても、甲2発明、甲3~5に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
4 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明2も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明、甲3~5に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
5 本件特許発明3
本件特許発明3と甲2発明とを対比すると、本件特許発明3と甲2発明とは、
「 樹脂と繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され、
前記混練する工程は、樹脂と繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含む、
繊維強化樹脂組成物の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
「繊維」について、本件特許発明3は、「植物繊維」であるのに対して、甲2発明は、「ガラス繊維」である点。
<相違点4>
本件特許発明3は、「前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上45質量%以下である」のに対して、甲2発明は、「第1の供給口ではガラス繊維の含有量が50~80重量%となる如く供給」するものである点。
上記相違点について検討する。
上記相違点4は、本件特許発明1と甲2発明との相違点2における植物繊維の含有率の上限が50質量%未満が45質量%以下となるものであるから、上記3(4)で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明3は、当業者であっても、甲2発明、甲3~5に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
6 本件特許発明4~8
本件特許発明4~8は、本件特許発明1又は本件特許発明3の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明4~8も、本件特許発明1又は本件特許発明3と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明、甲3~5に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
7 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和6年11月14日提出の意見書において、8頁6行~7行には、「本件発明1と甲2発明とは、技術思想として同じであり、除くクレームとすることによって進歩性欠如の拒絶理由が解消されるものではありません。」、及び9頁7行~8行には、「本件発明1により奏される効果は、甲2発明により奏される効果と同質であり、また、効果の顕著性も示されていません。」と主張している。
上記主張について検討する。本件特許発明は、「植物繊維」を含むのに対して、甲2発明は「ガラス繊維」を含むものであって構成が相違するものであるから、技術思想として同じであるとはいえず、効果も必ずしも甲2発明と同質であるとはいえない。このことは、本件明細書の【0033】において「曲げ弾性率」及び「曲げ強度」を評価しているのに対して、甲2の3頁の表1において「引張り強さ」、「引張り破断のび」及び「アイゾット衝撃強さ」を評価していて、評価方法が異なることからも理解できる。また、本件特許発明の効果は、本件明細書の【0014】に記載されていることから認められるものである。その余の点は、上述したとおりである。
したがって、上記主張は、採用できない。
8 小括
以上のことから、本件特許発明1~8は、当業者であっても、甲2に記載された発明、甲3~5に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 取消しの理由以外の理由についての当合議体の判断
1 新規性及び進歩性
(1)甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、項目に付されたものを除いて当合議体が付したもので発明の認定に用いた。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合デバイスに、粒子の形態の木材パルプ繊維と熱可塑性ポリマーとを含む材料を提供すること、
ここでミキサーに提供される材料100重量パーセント毎に、該パルプ繊維は、該材料の65~90重量パーセントを構成し、
混合デバイス中で該繊維と該ポリマーとを混合して、該繊維が該ポリマー中に分散された繊維/ポリマーブレンドを形成すること、
ここで混合デバイスの出口面積は、混合デバイスの断面積の40~60%であり、
その後、繊維/ポリマーブレンドをペレットに形成することを含む、組成物の製造方法。
【請求項2】
前記木材パルプ繊維が粒子から分離して、ポリマー全体に分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーが、バイオポリマー、ポリ乳酸、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、塩化ビニル、および再利用プラスチックからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合デバイスが、2つの噛み合いローターを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレンドをペレットに形成する工程が、
第二の混合デバイスで繊維/ポリマー材料をさらに混合すること、
ここで第二の混合デバイスは、分流を使用してポリマー中に繊維を分散させ、
その後、ブレンドをペレットに形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記木材パルプ繊維が、漂白化学木材パルプ繊維である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーが、バイオポリマー、ポリ乳酸、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、塩化ビニル、および再利用プラスチックからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ブレンドをペレットに形成する工程が、
第二の混合デバイスで繊維ポリマーブレンドを混合すること、
ここで第二の混合デバイスは2つの噛み合いローターを有し、
その後、ブレンドをペレットに形成すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記木材パルプ繊維が、漂白化学木材パルプ繊維である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが、バイオポリマー、ポリ乳酸、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレンブロックコポリマー、塩化ビニル、および再利用プラスチックからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維/ポリマーブレンドが、混合デバイスから出口までの距離を移動し、移動の軌道の断面積は混合デバイスと出口との間で次第に小さくなる、請求項1に記載の方法。」
イ 「【0002】
発明の分野
本発明は、ポリマーマトリックスを化学木材パルプ繊維と溶融加工することにより誘導される高分子複合材料に関する。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、木材パルプ繊維および熱可塑性ポリマーを含む複合高分子材料を生産する経済的な手段を提供することを対象とする。一実施態様において、木材パルプ繊維は、化学木材パルプ繊維である。一実施態様において、木材パルプ繊維は、クラフト化学木材パルプ繊維である。一実施態様において、木材パルプ繊維は、漂白木材パルプ繊維である。一実施態様において、木材パルプ繊維は、漂白化学木材パルプ繊維である。簡単にするために、用語「木材パルプ繊維」が使用されるが、漂白化学木材パルプ繊維は、他のいくつかの繊維にはない特性を有することに留意されたい。
【0005】
本発明は、パルプ繊維源として多数の樹種を利用することができる。針葉樹および広葉樹種ならびにこれらの混合物を使用することができる。またこれらは、軟材および硬材としても知られている。典型的な軟材種は、様々なトウヒ(例えば、アラスカトウヒ(Sitka Spruce))、モミ(ダグラスファー)、様々なツガ(アメリカツガ)、アメリカカラマツ、カラマツ、様々なマツ(サザンパイン、ストローブマツ、およびカリビアンパイン(Caribbean pine))、ヒノキおよびアメリカスギまたはそれらの混合物である。典型的な硬材種は、トリネコ、アスペン、ハコヤナギ、シナノキ、カバノキ、ブナノキ、クリノキ、ゴム、ニレ、ユーカリ、カエデオーク、ポプラ、およびスズカケノキまたはそれらの混合物である。
【0006】
軟材種または硬材種のどちらを使用するかは、望ましい繊維長さによって部分的に決めることができる。硬材または広葉樹種は、1~2mmの繊維長さを有する。軟材または針葉樹種は、3.5~7mmの繊維長さを有する。ダグラスファー、アメリカオオモミ、アメリカツガ、西洋カラマツ(western larch)、およびサザンパインは、4~6mm範囲の繊維長さを有する。パルプ化および漂白およびダイシングにより、繊維が破断して平均長さが小さくなる可能性がある。
【0007】
セルロース木材パルプ繊維は、リグニンが除去されており、さらにヘミセルロースの一部が除去されている点で木材繊維とは異なる。木材繊維では、これらの材料は保持されたままである。木材パルプ繊維中に残存する材料の量は、その作製過程に依存すると予想される。
【0008】
機械パルプでは、例えば粉砕などの機械的な手段によって繊維が分離されるが、この過程は、蒸煮(steaming)および亜硫酸ナトリウムを用いた何らかの化学的な前処理を包含していてもよい。リグニンが柔らかくなると、繊維がばらばらになる。リグニンおよびヘミセルロース、加えてセルロースの多くが繊維に残る。収量、すなわちパルプ化の後に残る材料のパーセンテージは高い。繊維は過酸化物で漂白することができるが、この過程では材料の多くは除去されない。
【0009】
ケミカルパルプ化では、リグニンは、木材チップとパルプ化のための化学物質との化学反応の間に除去される。またヘミセルロースも、この反応の間に除去される場合がある。除去される材料の量は、パルプ化過程で使用される化学物質に依存すると予想される。クラフトまたは硫酸塩法で除去される材料の量は、前加水分解段階での亜硫酸塩法またはクラフト法よりも少ない。クラフト法における収量は、前加水分解による亜硫酸塩法またはクラフトにおける収量よりも高い。後者の2つの過程では、高いパーセンテージのセルロースを含み、ヘミセルロースまたはリグニンはわずかしか含まない生成物が生成する。
【0010】
漂白化学木材パルプは、より多くのリグニンおよびヘミセルロースが除去されている。パルプ製造において、木質材料は、ケミカルパルプ化過程で繊維に砕解される。次いで場合により繊維を漂白してもよい。次いでストックチェスト中で繊維と水とを合わせて、スラリーを形成する。次いでスラリーをヘッドボックスに通して、ワイヤー上に置き、脱水し、乾燥させて、パルプシートを形成する。ストックチェスト中、ヘッドボックス中またはその両方で、添加剤を繊維と合わせてもよい。脱水および乾燥の前に、その際に、またはその後に、パルプシート上に材料を噴霧してもよい。クラフトパルプ化過程は、典型的には、木材パルプの製造に使用される。
・・・省略・・・
【0021】
ポリマーは熱可塑性である。 溶融加工に好適であると当業界において慣習的に認められている多種多様のポリマーが、ポリマーマトリックスとして有用である。ポリマーマトリックスは、実質的に、特に妨害要素または他の不混和性ポリマーと組み合わされた場合に溶融加工しにくいと言われることもあるポリマーを包含する。これらは、炭化水素ポリマーと非炭化水素ポリマーの両方を包含する。有用なポリマーマトリックスの例としては、これらに限定されないが、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン-ブテン、エチレン-オクテン、エチレンビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、エポキシ、アルキド、メラミン、フェノール系樹脂、尿素、ビニルエステル、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。所定の実施形態において、最も好適なポリマーマトリックスは、ポリオレフィンである。
・・・省略・・・
【0030】
本発明の複合ポリマーは、熱可塑性ポリマーマトリックス中に均一に分散された木材パルプ繊維を有する。まず木材パルプ繊維を熱可塑性ポリマーマトリックス中に分散させるが、ここで木材パルプ繊維は、組成物全量の65?90重量%である。
・・・省略・・・
【0036】
ポリマーへのセルロースパルプ繊維の最初の添加は、2工程での操作である。
第一の工程では、混合操作でパルプ粒子をポリマーと混ぜ合わせる。混合は、サーモカイネティックミキサー(thermokinetic mixer)またはジェリマットミキサー(Gelimat mixer)で行ってもよい。
【0037】
材料中の化学セルロース木材パルプ繊維の量は、65~85重量%であり、ポリマーの量は、15~35重量%である。相溶化剤が使用される場合、ポリマーの量は、相溶化剤の量の分少なくなると予想される。5重量%の相溶化剤が使用される場合、ポリマーの量は、5重量%少なくなると予想される。例えばオレフィンなどの非極性ポリマーは、相溶化剤を使用すると予想される。典型的な相溶化剤は、例えば無水マレイン酸ポリプロピレン、または無水マレイン酸ポリエチレンなどのグラフトコポリマーである。ポリマーがポリプロピレンである場合、最大2重量%の酸化防止剤も使用されると予想される。一実施態様において、0.5重量%の酸化防止剤が使用されると予想される。繊維およびポリマーは、ふわふわした材料としてサーモカイネティックミキサーから出ると予想される。
【0038】
図6にミキサー30を示す。ミキサー30は、ホッパー32を有し、これを介して材料が供給される。材料は、スクリューフィーダー34によって、モーター40によりブレード38が急速に回転する混合チャンバー36に運搬される。ブレード38が混合物中で回転すると、ブレード38により生じた遠心力により材料が混合チャンバー壁42に向かって外側に移動する。摩擦熱により高分子材料、ポリマー、および相溶化剤が溶融し、繊維がポリマーに混合される。混合後、ドア44を介して混合チャンバー36からポリマーが取り出される。
【0039】
第一の工程で使用できる他の方法は、ダイプレートが開放型のツインスクリュー押出機である。ツインスクリュー押出機は、押出機からの材料の流れが妨げられないように出口端が開放型のダイプレートを有する。繊維、ポリマー、および相溶化剤の量は、上記で説明したのと同じである。材料は、塊がある材料としてツインスクリュー押出機から出ると予想される。ツインスクリューミキサーおよびその操作は、以下でより詳細に説明される。
【0040】
解決すべき問題は、高分子マトリックス中に繊維を実質的にばらけた形態で提供すること、および木材パルプ繊維/複合材料が複合材料全体に実質的に均一に分散された木材パルプ繊維が得られるように実質的に一定量で繊維を計量してポリマーに供給することである。本発明は、木材パルプシートからとった化学木材パルプのダイシングされた粒子を提供すること、さらに、それらを計量してポリマーに供給し、木材パルプとポリマーとを混合しながら木材パルプ繊維を実質的に単一化することである。
【0041】
他の実施態様において、例えば鉱油などの油が、複合材料成分に添加されてもよい。一実施態様において、鉱油の量は、複合ポリマー材料中の材料の総重量の0.1~5重量%であってもよい。一実施態様において、鉱油の量は、複合ポリマー材料中の材料の総重量の0.1~2%であってもよい。一実施態様において、鉱油の量は、複合ポリマー材料中の材料の総重量の1~2%であってもよい。一実施態様において、鉱油の量は、複合ポリマー材料中の材料の総重量の1~1.5%であってもよい。一実施態様において、鉱油の量は、複合ポリマー材料中の材料の総重量の1.15%であってもよい。鉱油は、ポリマー形成に使用される可能性がある押出機を通る複合材料の押出し量を増加させ、複合材料中の繊維の分散に役立つと考えられる。
【0042】
鉱油は、0.8~0.9の比重を有する粘性の油である。鉱油は、無色透明で無臭であり得る。一実施態様において、鉱油は、標準的な白色鉱油である。一実施態様において、鉱油は、ドラコール(Drakol)600、CAS番号8042-47-5である。
【0043】
鉱油は、第一のマスターバッチミキサーに添加され、それに続くミキサーにも添加されてもよい。鉱油は、パルプ粒子および熱可塑性ポリマーと共に添加され、材料の混合と処理速度を促進する。
【0044】
図10において、漂白化学木材パルプ繊維粒子24または24aは、ホッパー102を介してツインスクリュー押出機100に投入される。さらにポリマーペレットも、ホッパー104を介してツインスクリュー押出機100に投入される。ホッパー104は、ホッパー102の前にあってもよいし、またはその後にあってもよい。木材パルプ繊維粒子およびポリマーペレットは、同じホッパーを介してツインスクリュー押出機に投入されてもよい。
【0045】
一実施態様において、ツインスクリュー押出機は、開放型ダイフェースを有する。他の実施態様において、ツインスクリュー押出機は、レストリクター105を使用することによって部分開放型ダイフェースを有する。部分的な開口部106は、どのような形状であってもよい。一実施態様において、開口部は、開放型ダイフェースの面積の20~80%の面積を有する。他の実施態様において、開口部は、開放型ダイフェースの総面積の40~60%の面積を有する。部分開放型ダイフェースは、ポリマー中の繊維の分散を促進する。
【0046】
図11に、このダイフェースの一実施態様を示す。この実施態様において、ダイフェース領域から開口部領域への移行は段階的である。レストリクター105の上面および下面107および108は、開口部106への材料の流れが制限されるように内側に向かって伸長しており、それにより開放型ダイフェースよりも高さが低い開口部が提供され、側面109および110は、外側に向かって延びており、それにより開放型ダイフェースよりも幅広な開口部が提供される。レストリクターは、押出機に押し通される材料の圧力に耐えるものであり、単一の機械加工部品であってもよい。
【0047】
図12に他の実施態様を示す。開口部は、数個の開口部111に分割されている。この場合でも、一実施態様において、開口部は、開放型ダイフェースの面積の20~80%の面積を有する。他の実施態様において、開口部は、開放型ダイフェースの総面積の40~60%の面積を有する。
【0048】
ツインスクリュー押出機中でポリマーに添加される漂白化学木材パルプ繊維の量は、繊維、ポリマー、および添加剤の総重量の65~85重量%である。第一の段階の実施態様は、材料の65重量%~85重量%が繊維であるマスターバッチの複合材料と、材料の10重量%~50重量%が繊維である希釈複合材料(let-down composite)とで両方とも同じである。
【0049】
本発明はまた、10~50重量パーセントの化学木材パルプ繊維を包含する複合高分子材料を生産する経済的な手段を提供するための解決法も対象とする。一実施態様において、パルプ繊維は、ポリマーマトリックス中に均一に分散される。
・・・省略・・・
【0058】
一実施態様において、第一のツインスクリューミキサーは、第二のシングルスクリュー押出機と直接連結されていてもよく、材料は、第一のミキサーから第二のミキサーに直接受け渡されると予想される。同じモーターでこれら両方を稼働させてもよい。図14にこの実施態様を示す。
【0059】
マスターバッチのペレットは、65~85重量%の化学木材パルプ繊維と、15~35重量%のポリマーとを含有する。
図10は、50%またはそれ未満の化学木材パルプ繊維を有する高分子複合材料を製造するための方法および装置の実施態様である。
【0060】
ツインスクリュー押出機からの材料を第二のツインスクリュー押出機120に移し、ホッパー122を介して追加のポリマーを添加する。他の成分も同様に、スロートに添加してもよいし、またはサイドスタッファー(図には示さず)を介して添加してもよい。ポリマーは、第一のツインスクリュー押出機100で使用したものと同じである。添加されるポリマーの量は、複合材料中の望ましい木材パルプ繊維含量を達成するのに必要な量である。
【0061】
バッチ操作において、複合材を第一のツインスクリュー押出機に二度循環させて、この2回目の押出機通過時に追加のポリマーを添加することにより、第一のツインスクリュー押出機を第二のツインスクリュー押出機として使用することができる。この操作において、押出機のダイフェースは、開放型または部分開放型ダイフェースからダイ開口部を有するダイフェースに変化して、押出し物を形成すると予想される。
・・・省略・・・
【0068】
図14は、混合システムの他の実施態様を示す。ポリマー中により多くのセルロース木材パルプ繊維を分散させることが必要な場合がある。2つのツインスクリューミキサーの間に、例えば図9に示されるシングルスクリュー押出機などの混合デバイスを配置させる。シングルスクリュー押出機を使用して、さらに繊維を分散させることができる。
・・・省略・・・
【0071】
一実施態様において、10~50重量%の漂白化学木材パルプ繊維を有する希釈複合材料が提供される。その残りは、ポリマーおよび他の添加剤である。他の実施態様において、20~40重量パーセントの漂白化学木材パルプ繊維を有する希釈複合材料(let-down composite)が提供され、その残りは、上述したようにポリマーおよび他の添加剤である。」
エ 図6
[図:0001422433000003.jpg]
オ 図10
[図:0001422433000004.jpg]
カ 図14
[図:0001422433000005.jpg]
(2)甲1発明
上記(1)の図10と対応する【0036】~【0049】の記載から、スクリュー押出機100は、漂白化学木材パルプ繊維粒子をポリマーと混ぜ合わせる複合高分子材料の製造方法を具現化するものである。
そうすると、甲1には、「複合高分子材料の製造方法」の発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「漂白化学木材パルプ繊維粒子24は、ホッパー102を介してツインスクリュー押出機100に投入され、さらにポリマーペレットも、ホッパー104を介してツインスクリュー押出機100に投入され、漂白化学木材パルプ繊維粒子をポリマーと混ぜ合わせる複合高分子材料の製造方法。」
(3)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)樹脂及び植物繊維について
甲1発明の「ポリマーペレット」及び「漂白化学木材パルプ繊維粒子24」は、それぞれ、本件特許発明1の「樹脂」及び「植物繊維」に相当する。
(イ)押出機について
甲1発明の「ツインスクリュー押出機100」は、本件特許発明1の「押出機」に相当する。
(ウ)混合物を混練する工程について
甲1発明は、「ポリマーペレット」と「漂白化学木材パルプ繊維粒子24」とを含む混合物を混ぜ合わせる「ツインスクリュー押出機100」を用いて混練する工程を具備するといえる。
そうしてみると、甲1発明の「ポリマーペレット」と「漂白化学木材パルプ繊維粒子24」とを含む混合物を混ぜ合わせる「ツインスクリュー押出機100」を用いて混練する工程は、本件特許発明1の「樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程」に相当する。
(エ)投入口について
甲1発明の「ホッパー102」及び「ホッパー104」は、本件特許発明1の「投入口」に相当する。
(オ)樹脂は2つの投入口から押出機に投入されることについて
甲1発明は、本件特許発明1の「前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され」と、「前記樹脂は投入口から前記押出機に投入され」の点で共通する。
(カ)植物繊維強化樹脂組成物の製造方法について
甲1発明の「複合高分子材料」は、漂白化学木材パルプ繊維粒子をポリマーとの樹脂組成物であるといえる。
そうしてみると、甲1発明の「複合高分子材料の製造方法」は、本件特許発明1の「繊維強化樹脂組成物の製造方法」と、「繊維樹脂組成物の製造方法」の点で共通する。
イ 一致点
上記アによると、本件特許発明1と甲1発明は次の点で一致する。
「 樹脂と植物繊維とを含む混合物を押出機を用いて混練する工程を有し、前記樹脂は投入口から前記押出機に投入される、
植物繊維樹脂組成物の製造方法。」
ウ 相違点
本件特許発明1と甲1発明は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1は、「前記樹脂は少なくとも2つの投入口から前記押出機に投入され」るのに対して、甲1発明は、「ポリマーペレット」を「ホッパー104」を介して「ツインスクリュー押出機100」に投入される点。
<相違点2>
本件特許発明1は、「前記混練する工程は、樹脂と植物繊維とを混合してなる混合物を混練する工程と、前記混合物に樹脂を混合してなる混合物を混練する工程と、を連続して実施することを含」むのに対して、甲1発明は、そのような工程を含まない点。
<相違点3>
本件特許発明1は、「前記少なくとも2つの投入口のうち、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物に含まれる前記植物繊維の含有率が30質量%以上であ」り、「ただし、前記植物繊維の含有率が50質量%以上であるものを除く」のに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
エ 相違点についての補足
相違点1及び2の認定について以下に補足する。
甲1において、【0044】には、「漂白化学木材パルプ繊維粒子24」は、「ホッパー102を介してツインスクリュー押出機100に」、「ポリマーペレット」は、「ホッパー104を介してツインスクリュー押出機100に投入される」と記載されていることから、ポリマーペレットがツインスクリュー押出機100に投入されるのは、ホッパー104のみである。このことは、図10からも確認できる。なお、【0044】には、「木材パルプ繊維粒子およびポリマーペレットは、同じホッパーを介してツインスクリュー押出機に投入されてもよい。」と記載されている。しかしながら、この記載は、木材パルプ繊維粒子およびポリマーペレットを混ぜ合わせる順序は問わないことを意味するのであって、ポリマーペレットを2つのホッパー102及び104に投入するとまで読み取れない。木材パルプ繊維粒子及びポリマーペレットを同じホッパーを介して投入するのであれば、2つのホッパーを具備する必要はない。実際、図6は、1つのホッパー32のみが記載されている。
また、追加のポリマーを添加する際、甲1において、【0060】には、「ツインスクリューからの材料を第二のツインスクリュー押出機120に移し、ホッパー122を介して追加のポリマーを添加する」と記載されている。
さらに、甲1において、【0058】には、「一実施態様において、第一のツインスクリューミキサーは、第二のシングルスクリュー押出機と直接連結されていてもよく、材料は、第一のミキサーから第二のミキサーに直接受け渡されると予想される。同じモーターでこれら両方を稼働させてもよい。図14にこの実施態様を示す。」と記載されている。この記載は、単にモーターが同じであることにとどまり、第1のミキサーと第2のミキサーは異なる押出機であるといえる。このことは、【0068】及び図14の記載からも理解できる。
そうしてみると、甲1において、漂白化学木材パルプ繊維粒子24とポリマーペレットとの高分子複合材料に追加のポリマーを添加するのは、第一ツインスクリュー押出機100ではなくて、第二ツインスクリュー押出機120であるといえる。
甲1発明の認定に用いた箇所や上述した箇所以外にも、「ポリマーペレット」は「ホッパー102」及び「ホッパー104」から「第一ツインスクリュー押出機100」に投入される工程は記載されていない。また、「漂白化学木材パルプ繊維粒子24」と「ポリマーペレット」とを混合してなる「高分子複合材料」を混練する工程と、前記「、高分子複合材料」に「ポリマーペレット」を混合してなる「高分子複合物」を混練する工程と、を連続して実施することも記載されていない。
したがって、上記ウで示した上記相違点1及び2の認定をしたことに誤りはない。
オ 判断
(ア)新規性について
上記ウで示したとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえない。
(イ)進歩性について
事案に鑑み、上記相違点1及び2についてまとめて検討する。
上記エで示したとおり、甲1には、上記相違点1及び2に係る構成は、記載も示唆もされていない。また、甲1発明において、上記相違点1及び2に係る構成とすることは、甲4~5のいずれにも記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。
したがって、当業者であっても、甲1発明及び甲4~5に基づいて上記相違点1及び2に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たとはいえない。
カ 本件特許発明1についての小括
以上のことから、本件特許発明1は、甲1発明でなく、また、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1発明及び甲4~5に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同じ理由により、本件特許発明2も、甲1発明でなく、また、当業者であっても、甲1発明及び甲4~5に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)本件特許発明3
本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、本件特許発明3と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1及び2と同様の点で相違する。
そうすると、上記(3)オ(イ)で述べた理由と同様の理由により、本件特許発明3は、甲1発明でなく、また、当業者であっても、甲1発明及び甲4~5に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(6)本件特許発明4~8
本件特許発明4~8は、本件特許発明1又は本件特許発明3の構成を全て備えるものであるから、本件特許発明4、6及び7も、本件特許発明1又は本件特許発明3と同じ理由により、甲1発明ではなく、当業者であっても、甲1発明及び甲4~5に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。また、本件特許発明5及び8は、当業者であっても、甲1発明及び甲4~5に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(7)異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書の39頁5行~11行には、「本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、要件A~D(当合議体注:要件A~Dは、本件訂正請求により訂正する前の本件特許の請求項1に係る発明の構成を分節したものである。)が記載されている点で同一であり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものである。また、仮にそうではないとしても、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得るものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。」と主張している。
しかしながら、上記(3)で述べたとおりであり、上記主張は、採用できない。
(8)小括
以上のことから、本件特許発明1~4、6及び7は、甲1に記載された発明でない。また、本件特許発明1~8は、当業者であっても、甲1に記載された発明及び甲4~5に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
2 サポート要件
(1)異議申立人の主張の概要
異議申立人は、異議申立書において、50頁15行~20行には、「本件発明1は、樹脂が少なくとも2つの投入口から押出機に投入されたことを規定している。しかし、明細書全体の記載および実施例等を参酌しても、3つ以上の投入口から投入される態様については記載されておらず、出願時の技術常識に照らしても、3つ以上、例えば、10の投入口から樹脂が態様されるような態様についてまで、拡張ないし一般化することはできない。」(以下「主張1」という。)、及び、51頁1行~7行において、「本件発明5は、押出機の中央部から上流部及び中央部から下流部のそれぞれに、輸送能力のないニーディングディスクが配置されたスクリューセグメントを備えることを規定する。しかし、本件明細書において、押出機の中央部から上流部及び中央部から下流部のそれぞれに、輸送能力のないニーディングディスクが配置されたことが記載されておらず、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。」(以下「主張2」という。)、並びに、令和6年11月14日提出の意見書において、9頁10行~12行には、「本件実施例1では、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物における植物繊維の含有量は50質量%であり、本件発明1をサポートする実施例がないことも付言します。」(以下「主張3」という。)、及び、9頁23行~25行には「本件実施例1では、最も上流側の投入口と最も下流側の投入口との間における前記混合物における植物繊維の含有量は50質量%であり、本件発明3をサポートする実施例はありません。」(以下「主張4」という。)と主張している。
(2)当合議体の判断
ア 主張1について
本件明細書における2つの投入口についての記載から、樹脂と植物繊維の比率、シリンダー温度、及び供給速度等を調整するなどして3つ以上の投入口とすることで、本件特許発明に係る構成にまで拡張ないし一般化することは、当業者が当然なし得ることである。
イ 主張2について
本件明細書の記載から、輸送能力のないニーディングディスクが配置された場合であっても、輸送能力のあるニーディングディスクを配置するなどすることで、本件特許発明5に係る構成にまで拡張ないし一般化することは、当業者が当然なし得ることである。
ウ 主張3及び4について
本件明細書の【0014】の記載は、上記第2「2」(2)イで示したとおりであって、本件特許発明1及び本件特許発明3に係る植物繊維の含有率の数値範囲は、上記【0014】に記載された植物繊維の含有率の数値範囲内にあり、実施例に記載されていないからといって発明の詳細な説明に記載されていないとはいえない。
エ 小括
以上のことから、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
第7 むすび
本件特許発明1~8は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1~8を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700458