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特許異議申立

2021-700762

立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置

審判番号
2021-700762
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-230487外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6825333
請求日
2021年08月03日
審決日
2022年06月16日
公報発行日
2022年09月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第115条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6825333号発明「立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6825333号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕及び〔10ないし12〕について訂正することを認める。 特許第6825333号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6825333号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成28年11月28日の出願であって、令和3年1月18日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年2月3日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月3日に特許異議申立人 エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされ、同年10月22日付けで取消理由が通知され、同年12月24日付け(受付日:同年同月27日)で特許権者 株式会社リコー(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、令和4年1月7日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月3日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月12日付けで特許権者に対し審尋がされ、同年同月24日付け(受付日:同年同月25日)で特許権者から回答書が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和3年12月24日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 請求項1において、 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」を「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」に、 「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」を「前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなり、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」に、それぞれ訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項10において、 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」を「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」に、 「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」を「前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなり、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」に、それぞれ訂正する。 併せて、請求項10を直接又は間接的に引用する他の請求項についても同様に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、本件訂正前において、「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」と記載されているように「立体造形用樹脂粉末」が「柱状粒子」以外の粉末を含むことを許容していたのを「柱状粒子からなる」ことに限定した上で、「柱状粒子」の材質を「結晶性樹脂」に限定し、さらにその寸法を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2ないし9についての訂正について 訂正事項1による請求項2ないし9についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項2ないし9についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項10についての訂正について 訂正事項2による請求項10についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、本件訂正前は「立体造形用樹脂粉末」が「柱状粒子」以外の粉末を含むことを許容していたのを「柱状粒子からなる」ことに限定した上で、「柱状粒子」の材質を「結晶性樹脂」に限定し、さらにその寸法を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項11及び12についての訂正について 訂正事項2による請求項11及び12についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項11及び12についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)本件訂正に関する特許異議申立人の主張について ア 本件訂正に関する特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、令和4年3月3日に提出された意見書において、本件訂正に関して、おおむね次のとおり主張する。 ・「「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」という発明特定事項を削除する訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張する訂正であるから、訂正要件に適合していない。」(上記意見書第4ページ第16ないし18行。他の主張を含め、摘記に際し改行は省略した。以下、「主張1」という。) ・「段落【0060】に記載されているポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は熱可塑性の結晶性樹脂の1種であり、本件特許明細書の段落【0025】、【0026】には、「結晶性熱可塑性樹脂」が記載されているものの、このような記載から「結晶性樹脂」という上位概念が本件特許明細書に記載されていたとは認めることができないし、本件特許明細書の記載から自明な事項であると認めることもできない。従って、「柱状粒子が、結晶性樹脂からなり」との発明特定事項を追加する訂正事項は、当初明細書の記載に基づくことなく、請求項1および10の発明特定事項を上位概念化するものであることから、訂正要件に適合していない。」(上記意見書第5ページ下から4行ないし第6ページ第5行。以下、「主張2」という。) ・「「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」を、「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」とする訂正につき、上記の段落には立体造形用樹脂粉末が柱状粒子からなるとの直接的な記載はない。【表1】には、使用した粒子の種類や形状等が記載されているものの、立体造形用樹脂粉末の組成、特に立体造形用樹脂粉末が柱状粒子からなるものであるか、または例えば段落【0031】に記載されているようなその他の成分(流動化剤、粒度化剤、強化剤、酸化防止剤など)を含むものであるかは何ら記載されていない。従って、「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」を「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」とする訂正事項は、当初明細書の記載に基づくことなく、訂正要件に適合していない。」(上記意見書第6ページ第6ないし15行。以下、「主張3」という。) イ 検討 そこで、検討する。 (ア)主張1について 本件訂正は、訂正前の請求項1及び10の「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」という発明特定事項を削除しているが、訂正前の請求項1及び10の「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」という発明特定事項を「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」とする訂正も行っており、実質上特許請求の範囲を拡張する訂正であるとはいえない。 したがって、主張1は採用できない。 (イ)主張2について 本件特許明細書の【0025】に「前記柱状粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性熱可塑性樹脂が特に好ましい。」と記載されており、また、「結晶性樹脂」が「結晶性熱可塑性樹脂」を意味することはその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)の技術常識であるから、請求項1及び10において、「柱状粒子が、結晶性樹脂からなり」との発明特定事項を追加する訂正事項は、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるといえ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 したがって、主張2も採用できない。 (ウ)主張3について 本件特許明細書の【0043】に「前記立体造形用樹脂粉末としては、前記柱状粒子のみで構成されることが好ましい」と記載されていることから、訂正前の請求項1及び10の「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」という発明特定事項を「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」と訂正する訂正事項は、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるといえ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 したがって、主張3も採用できない。 3 むすび したがって、訂正事項1による請求項1ないし9についての訂正及び訂正事項2による請求項10ないし12についての訂正は。いずれも特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし9及び請求項10ないし12は、それぞれ一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1による請求項1ないし9についての訂正及び訂正事項2による請求項10ないし12についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし12に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕及び〔10ないし12〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、 前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し、 前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなり、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2であることを特徴とする立体造形物の製造方法。 【請求項2】 前記柱状粒子の形状が、略円柱形状である請求項1に記載の立体造形物の製造方法。 【請求項3】 前記レーザーの波長が、1μm以上30μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。 【請求項4】 前記レーザーの波長が、5μm以上20μm以下である請求項3に記載の立体造形物の製造方法。 【請求項5】 前記レーザーの波長が、8μm以上13μm以下である請求項4に記載の立体造形物の製造方法。 【請求項6】 前記柱状粒子が、直径5μm以上100μm以下の略円形状の向かい合う面を有し、高さが5μm以上100μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。 【請求項7】 ISO 3146に準拠して測定した前記立体造形用樹脂粉末の融点が、100℃以上である請求項1から6のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。 【請求項8】 前記立体造形用樹脂粉末の50%累積体積粒径が、1μm以上200μm以下である請求項1から7のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。 【請求項9】 ISO 1302に準拠して測定される算術平均粗さが、0.5μm以上100μm以下である立体造形物を製造する請求項1から8に記載の立体造形物の製造方法。 【請求項10】 柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末の層を形成する手段と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる手段と、を有する立体造形物の製造装置であって、 前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し、 前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなり、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2であることを特徴とする立体造形物の製造装置。 【請求項11】 前記柱状粒子の形状が、略円柱形状である請求項10に記載の立体造形物の製造装置。 【請求項12】 前記エネルギー強度分布を、ガウシアン分布からトップハット形状の分布へと変換する手段をさらに有する請求項10から11のいずれかに記載の立体造形物の製造装置。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和3年8月3日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記(1)ないし(3)の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)請求項1及び10には、「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」と記載されているが、「柱状粒子」については、「柱状」の「粒子」であること以外何ら記載されておらず、その材質や大きさ等が不明であるから、「柱状粒子」の意味内容を当業者は理解することができない。 したがって、請求項1及び10に係る発明、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし9に係る発明並びに請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11及び12に係る発明は明確でない。 (2)請求項1及び10には、「レーザーの照射」及び「前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し」と記載されているが、「レーザー」とは通常、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字に由来しており、ほぼ単一波長の電磁波を発生させる装置であるから、そのような装置の照射や、そのような装置が特定の形状のエネルギー強度分布を有するという記載は不明確である。 したがって、請求項1及び10に係る発明、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし9に係る発明並びに請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11及び12に係る発明は明確でない。 (3)請求項1及び10には、「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」と記載されているが、「50%」は、体積を基準とするものであるのか、質量を基準とするものであるのかが不明であるし、「立体造形用樹脂粉末」は、柱状粒子以外にどのような成分をどのような割合で含有しているものであるのかも不明である。 したがって、請求項1及び10に係る発明、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし9に係る発明並びに請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11及び12に係る発明は明確でない。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・柱状粒子や立体造形用樹脂粉末の組成、レーザーの波長等について何らの特定もされていない本件特許発明1及び10、本件特許発明1に従属する本件特許発明2ないし9並びに本件特許発明10に従属する本件特許発明11及び12はいずれも、「発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を越えているため、本件特許発明1ないし12と発明の詳細な説明に発明として記載されたものとは、実質的に対応しているとはいえず、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。 5 証拠方法 甲第1号証:J.Wulfhorst,G.Seide,T.Gries,D.Rietzel,D.Drummer,SUBSTITUTION OF POWDERS BY ULTRA SHORT CUT FIBERS FOR SELECTIVE LASER SINTERING (SLS), 11th World textile Conference Autex 2011,Mulhouse,France,8-10th June 2011,BOOK OF PROCEEDINGS,Volume 1,p.13-18 甲第2号証:国際公開第2009/135521号 甲第3号証:米国特許出願公開第2013/0064706号明細書 甲第4号証:特開2017-148866号公報 甲第5号証:国際公開第01/91993号 甲第6号証:欧州特許出願公開第2875932号明細書 甲第7号証:Axel Bauer et. al. (ed.), Annual Report 2015, URL:https://www.ilt.fraunhofer.de/content/dam/ilt/en/documents/annual_reports/AR2015.pdf、"OPTICAL SYSTEM FOR HIGH-POWER LASER SINTERING", Fraunhofer Institute for Laser Technology ILT, 2016,p. 66 甲第8号証:A basic guide to particle characterization,Malvern Instruments Worldwide,URL:https://www.cif.iastate.edu/sites/defaults/files/uploads/Other_Inst/Particle%20Size/Particle%20Characterization%20Guide.pdf 甲第8号証は令和4年3月3日に提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 令和3年10月22日付けで通知した取消理由の概要 令和3年10月22日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由3の(3)とおおむね同旨である。 ・ 請求項1及び10には、「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」と記載されているが、「50%」は、体積を基準とするものであるのか、質量を基準とするものであるのかが、明細書の記載及び図面を考慮しても不明である。 また、甲1では「50質量%」と記載され、甲2では「50体積%」と記載されていることから、請求項1及び10の記載中の「50%」が体積及び質量のどちらを基準とするものであるのかが当業者の出願時の技術常識であったともいえない。 したがって、本件特許発明1及び10に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし9並びに請求項10を直接又は間接的に引用する本件特許発明11及び12に関しても、同様に、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。 2 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0005】の記載によると、本件特許発明1ないし9の解決しようとする課題(以下、「発明の課題1」という。)は「本発明は、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造方法」を提供することであり、本件特許発明10ないし12の解決しようとする課題(以下、「発明の課題2」という。)は「本発明は、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造装置」を提供することである。 本件特許の発明の詳細な説明の記載及び当業者の出願時の技術常識から、「結晶性熱可塑性樹脂からなる柱状粒子であって、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子」を用い、「トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザー」を用いた製造方法及び製造装置は、それぞれ、発明の課題1及び2を解決することができると当業者は認識できる。 しかし、本件特許発明1ないし9及び本件特許発明10ないし12における「柱状粒子」は、「結晶性熱可塑性樹脂からなる柱状粒子であって、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子」ではない。 したがって、本件特許発明1ないし9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題1を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題1を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 また、本件特許発明10ないし12は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題2を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、また、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題2を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 よって、本件特許発明1ないし12に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。 3 取消理由3(甲1に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由3は申立理由1とおおむね同旨である。 4 取消理由4(甲2に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由4は申立理由2とおおむね同旨である。 第6 取消理由について 1 証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、おおむね次の事項が記載されている。 なお、摘記に際し、他の文献を含め、外国語文献の場合は、図面を除き原文の摘記は省略し訳文のみを摘記した。また、下線は他の文献を含め当審で付したものである。 ・「概要 選択的レーザー焼結は、ポリマー粉末から複雑な形状の部品を直接作製するための新たな革新的な技術である。目下、選択的レーザー焼結用の標準的な熱可塑性粉末は、ポリアミド12である。このことは多くの適用にとっての制限となるため、付加製造を個別的な部材の連続的な製造へ応用するためには他のポリマーに関する調査が主要な役割を果たす。合成繊維を変換することによってポリマー粉末を製造する試みを示す。レーザー焼結法に関する物理的および熱分析学的特性が示され、その結果を市販のポリアミド12粉末と比較する。」(第13ページ左欄第1ないし15行) ・「製造の間、プラスチック粉末は層毎に適用される。部材の界面に存在する粉末は、CO2レーザーによって選択的に溶融されて、その下の溶融層と結合される。溶融しなかった周囲の粉末は、生成された溶融物を支持する。現在のモデルでは、加工された部分は、部材の全ての層が製造されるまで完全に溶融した状態で維持されることが想定されている。次いで粉末床は、その中に部材を含んだまま全体として冷却される[4]。製造プロセスの終わりには、溶融しなかった、熱により分解された粉末が、レーザー焼結部材から分離され、可能であればリサイクルされる。形成中の老化に基づいて粉末材料の特性は変化することが、再使用のためには残りの材料の50質量%までを新しい粉末と混合しなくてはならない理由である。」(第13ページ右欄第3ないし20行) ・「1.1 プラスチック粉末に対する要求 レーザー焼結された部品の特性、たとえば密度、表面形態、細部の精度、および寸法は、材料と相互作用するプロセスパラメータによって決定される。調査では、たとえば粒子の形状が部材のきめの粗さを実質的に決定する重要な要因であることが判明した[5]。粒子の粒径分布および形状は、焼結された部品の多孔度にとって主に重要である。他方、高い出力密度は、焼結された部品の高い部品密度、寸法精度、および強度につながるが、しかしその流動性を損なう可能性がある。良好な流動性を有する市販のレーザー焼結粉末は、一般に、d=60μmの狭いサイズ分布と、d=10μm未満の微細な粒子の低い割合とを有する球状粒子である。図1[6]。」(第13ページ右欄第24ないし41行) ・「2.理論的背景 マルチフィラメントヤーンの焼結粉末の製造を可能にするためには、製造方法に関して高い要求が存在する。これらは繊維の分散度、カット繊維の均ーな長さ分布、および0.1mm未満の長さである。異なった製造装置は、これらの要求の一部を満たすことができるが、全てのものを同時に満たすことができない。最も大きな問題は、1つの装置の適用において全ての特性を組み合わせることである。カット繊維の流動性を有するステープルファイバーの異なった変換技術が存在するが、0.1mm未満の長さ範囲ではない。従って、この要求に関しては、繊維変換装置が設定されている。 再現性のある特性を備えた粉末を作製するための非常の有望なアプローチは、スパンテキスタイルファイバーの変換である。紡糸プロセスのためには、幅広い種類の材料を入手することができる。この論文では、溶融紡糸により製造される製品に焦点を絞る。」(第14ページ右欄第11ないし31行) ・「3.紡糸法 この論文で調査される材料は、ポリプロピレンPP(Lyondell Basel)、ポリラクチドPLA(Boehringer Ingelheim)、ポリアミドPA6(BASF SE)およびPA6.6(BASF SE)である。フィラメントヤーンは、溶融紡糸装置で延伸される。これは、インラインで糸を延伸するための10個の加熱されるゴデットから構成されている。非常に長い冷却長さによって、大きなフィラメント直径が可能になる。最後の加熱ゴデットによって、低収縮糸につながる温度プロフィールが可能になる。溶融紡糸プロセスに引き続き、糸は非常に短い繊維へと変換されなくてはならない。このカットされた材料をレーザー焼結粉末として投影する。 4.溶融紡糸フィラメントヤーンの繊維変換 まず最初に変換プロセスを詳細に分析した。従って、このプロセスを以下のとおり、その基本的な機能に分割した: ・エンドレスファイバーの取り上げ ・ヤーンの確実でゆっくりした進行 ・ファイバーの輸送および縮れ防止 ・ファイバーの確実な切断 ・ファイバーの貯蔵 焼結粉末を製造するためには、再現可能な長さでスパンフィラメントを切断することが重要であった。 そのため、テキスタイル技術インスティテュート、RWTH アーヘンにおいてファイバーカッターを構築した(図3)。この回転ノズルコンバータ中で、フィラメントはステープルファイバーヘと切断される。そのため、フィラメントは空気流によって案内され、次いで回転ノズルとナイフによって切断され、ここでノズルの機能はローターと一体化され、ヤーンは90゜未満の角度で方向変換される[9]。投影された結果は、100μm未満満の長さを有する短い繊維からなり、高い流動性を有する粉末である。」(第15ページ左欄第11ないし52行) ・「最初に切断回転ノズルコンバータによるその後の試験により、0.1mmの範囲の繊維の切断の純粋な実現可能性が、単純な手動の切断実験によって証明され、これはできる限り遅いヤーンにつながる(図4)。 [図:0001388369000001.jpg] 図4: 回転ノズルコンバータのゆっくりした手動の供給により達成された切断長さ 従って、ローターコンバータの動作制御技術は満たされ、フィードと切断ロータとを同時に制御するための可能性を備えた新しいエンジンの実現により強化されたため、0.1mm未満の平均長さと均ーなクリッピング分散とを有する結果を達成することができる。」(第15ページ右欄第20行ないし第16ページ左欄第7行) ・「変換されたフィラメント 製造された粉末粒子のサイズ分布および形状をMorphologi G3、Malvern Instruments Ltd.において光学的に分析した。図12は、コンバータ中、ITAにより製造されたPA6.6ファイバー粒子の長さを示している。主要な長さは150~300μmであり、フィラメント直径は約5μmである。」(第18ページ左欄第3ないし10行) イ 甲1に記載された発明 甲1には、選択的レーザー焼結(SLS)による付加製造により、ポリマー粉末を含むプラスチック粉末から複雑な形状の部品を製造する方法が記載されており、前記ポリマー粉末として、マルチフィラメントヤーンを切断したカット繊維を使用することも記載されている。そして、このカット繊維は、溶融紡糸により得られたポリマー糸を切断して得られていることから、柱状若しくは略円柱状であることは明らかである。 また、甲1には、粉末を再使用する際にはリサイクルされる材料の50質量%までは新しい粉末と混合されることが記載されているから、リサイクル前の材料に含まれているポリマー粉末は、レーザー焼結に使用されるプラスチック粉末の全量に対して50質量%以上含まれていることは明らかである。 したがって、甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1方法発明」及び「甲1装置発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1方法発明> 「選択的レーザー焼結(SLS)による付加製造により、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリアミド又はPA6.6を材料とする溶融紡糸により得られたポリマー糸を切断して得た柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末を含むプラスチック粉末から複雑な形状の部品を製造する方法であって、 前記柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末が、レーザー焼結に使用されるプラスチック粉末の全量に対して、50質量%以上含まれている複雑な形状の部品を製造する方法。」 <甲1装置発明> 「選択的レーザー焼結(SLS)による付加製造により、ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリアミド又はPA6.6を材料とする溶融紡糸により得られたポリマー糸を切断して得た柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末を含むプラスチック粉末から複雑な形状の部品を製造する装置であって、 前記柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末が、レーザー焼結に使用されるプラスチック粉末の全量に対して、50質量%以上含まれている複雑な形状の部品を製造する装置。」 (2)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2に記載された事項 甲2には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「技術分野 本発明は、ごく一般的に、相互に接合された個々の層からなる成形体を製造するための繊維に関する。さらに、本発明は、繊維の製造方法、およびレイヤーバイレイヤー構造による成形体の製造方法に関する。さらに、本発明は、重ね合わせて相互に接合された複数の層を含む成形体、および成形体を製造するための繊維の使用に関する。」(第1ページ第3ないし9行) ・「公知の全てのSFFシステムに共通する特徴は、加工品の層構造である。近年、このようなSSFシステムでは、特に各層が粉体または粉体に近い材料から作製されるものが使用されている。特に、金属部材は、いわゆるレーザー焼結や電子ビーム溶融などの溶融段階を経て製造される。いわゆる選択的レーザー焼結(SLS法)も、この原理に基づいて行われる。選択的マスク焼結(SMS法)では、レーザービームの代わりに、赤外線工ミッターのアレイなどの広域放射源を使用して、特定の層領域を硬化または固化する。各層ごとに新たに生成されるマスクにより、層のどの領域を硬化または固化させるかが決定される。」(第1ページ第19ないし28行) ・「本発明の技術的課題は、上記の問題の1つまたは複数がそれほど深刻ではないか、または場合によっては排除された、個別の固化した層からなる成形体のための新しい基本材料を提供することである。 本発明の第1の態様によれば、冒頭に記載した技術的課題は、ソリッド・フリーフォーム・ファブリケーションプロセスによって相互に接合された個々の層からなる成形体を製造するために構成された繊維を基本材料として初めて使用することによって解決することができる。」(第4ページ第15ないし22行) ・「本発明の例示的な実施形態によれば、繊維は、好ましくは球形に近似した従来の粉末粒子とは対照的に、簡単な方法により正確に所定の寸法で製造することができ、それによって、繊維および該繊維からなる粉末は安価であり、目標とする特性を有している。 本発明の別の例示的な実施形態によれば、繊維は、異なった材料で作られていてもよく、および/または異なった寸法を有していてもよく、したがって、その都度の要求に合わせて正確に調整することができる。 例えば、繊維の直径は0.001~0.5mm、好ましくは0.01~0.1mmである。有利には、本発明の別の例示的な実施形態では、繊維の平均長さに対する平均直径の比は、0.1から1000の間、好ましくは0.5から3の間である。前記の寸法では、その厚さが、例えば、繊維寸法、好ましくは繊維直径の1から10倍の間である均質な薄層で繊維を塗布することが可能である。」(第5ページ第3ないし16行) ・「本発明の別の例示的な実施形態では、繊維は、以下の材料の少なくとも1つからなる:ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性プラスチック。 例えば、粒子からなる充填剤を本発明による繊維に添加してもよく、この場合、充填剤粒子は、相互に結合された繊維により存在する固化領域に繊維片にしつかりと結合されることにより封入されているか、またはそれ自体が互いに結合してもよいし、繊維片および相互の両方に結合してもよい。充填剤の割合は、繊維によって形成されたマトリックスが維持されるためには、好ましくは50体積%未満である。充填剤はたとえばカーボンブラック、カーボン、ガラス、金属酸化物、セラミックなどからなる。充填剤の好ましい作用に応じて、充填剤の粒子は繊維状または球状である。充填剤粒子の寸法は有利には0.05から0.5mmの間である。 本発明のさらなる態様によれば、冒頭に記載した技術的課題は場合により、ある材料を細長い繊維へと押し出し、次いでその繊維を長さ方向で切断し、ソリッド・フリーフォーム・ファブリケーションプロセスに従って結合された個々の層からなる成形体を製造するために適した繊維片を形成する、繊維の製造方法を提供することによって解決することができる。 本発明の例示的な実施形態では、少なくとも1つの回転する切断要素または衝撃要素を使用して、繊維を長さ方向で切断する。」(第5ページ第21行ないし第6ページ第14行) ・「整理すると、本発明の意味での繊維とは、直径が長さよりも小さい構造体、つまり、長さに対して細く、場合によっては柔軟性のある構造体であることに留意すべきである。例えば、繊維は一般的には、その幾何学的形状が押し出された断面により形成された構造体でもある。基本的には、繊維は基本的に柱状の構造体である。ただし、柱状の基本的な形状はどのようなものでも構わないが、好ましくは円柱形である。また、傾斜した円柱形も本発明による繊維の定義に該当する。」(第6ページ第27行ないし第7ページ第5行) ・「図1は、本発明による粉末に使用される繊維の斜視図である。 図2は、異なった繊維片から構成された繊維粉末である。 図3は、繊維の断面の例である。 図4は、繊維片および充填材粒子で構成された繊維粉末である。」(第8ページ第5ないし9行) ・「図1aは、楕円形の断面を有する繊維片509aを示し、図1bは円形の断面を有する繊維片509bを示し、図1cによる繊維片2cは、その直径に比べて軸方向の長さが短く、図1dおよび1eによる繊維片502d、5022eの場合は、それぞれの見える端面が破断または面取りされている。 図1に例示的に示す繊維片509a~509eは、押出機から出た繊維を、押出機から出た直後に冷却した後、所定の長さと所定の方法で設計された端面を有する繊維片509a~509eになるように、公知の方法で機械的に切断することによって製造される。」(第10ページ第3ないし10行) ・「本発明による粉末に使用される繊維片509の直径は、好ましくは0.01~0.5mm、特に好ましくは0.01~0.1mmである。繊維片509の直径と長さの比は、好ましくは 0.1~1000、より好ましくは0.5~3である。繊維の例示的な断面を図3に示すが、これは例えば円形511a、楕円形511b、または不定形511cなどである。 繊維片509の好ましい押し出し可能な材料としては、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。」(第10ページ第16ないし22行) ・「強度、収縮挙動などに影響を与えるなどの様々な理由から、本発明による粉末は、まだ説明していない粉末層519の固化領域の骨格を形成する繊維状片509に加えて、それ自体が繊維状であってもよいが、好ましくは球状、小板状、もしくは脆い粒子からなる補助剤および充填剤を含んでいてもよい。用途に応じて、これらの充填材や補助剤は、カーボンプラック、カーボン、ガラス、金属酸化物、セラミック、ポリマーなどで構成されている。その割合は、粉末の50体積%未満であることが好ましい。 図4は、図2の粉末と同様の異なった繊維片509からなり、かつさらに球状粒子511aの形の補助剤を含んでいる粉末を示す。」(第11ページ第1ないし9行) ・「続いて、層5195の領域に成形品を記載している、製造すべき成形品507のCADデータに応じて、照射装置523、例えば集束レーザービームを発するレーザーヘッドを制御し、これにより、粉末511は、成形品を形成する領域では、例えば溶融により固化し、他の領域では未固化のままである。層 5191~5194の固化領域5181~5184を斜線で示す。 以上のようにして、成形体517全体が層状に積み上げられ、完成すると型から取り外すことができ、その後、ルースな粉末の除去後にさらに使用可能となる。」(第12ページ第1ないし9行) ・「 [図:0001388369000002.jpg] [図:0001388369000003.jpg] [図:0001388369000004.jpg] [図:0001388369000005.jpg] 」 イ 甲2に記載された発明 甲2には、選択的レーザー焼結(SLS)によるレイヤーバイレイヤー構造による成形体の製造により、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性プラスチックからなる円柱形状を有する繊維を固化させて成形体を製造する方法が記載されている。 また、甲2には、前記繊維に充填剤が添加される場合、添加される充填剤の割合は、前記繊維が形成するマトリックスを維持するためには50体積%未満であること、つまり円柱形状を有する前記繊維の割合は50体積%以上であることが記載されている。 したがって、甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2方法発明」及び「甲2装置発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2方法発明> 「選択的レーザー焼結(SLS)によるレイヤーバイレイヤー構造による成形体の製造により、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性プラスチックからなる円柱形状を有する繊維及び充填材を固化させて成形体を製造する方法であって、 前記円柱形状を有する繊維が、前記円柱形状を有する繊維及び充填材全量に対して、50体積%以上含まれている成形体を製造する方法。」 <甲2装置発明> 「選択的レーザー焼結(SLS)によるレイヤーバイレイヤー構造による成形体の製造により、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性プラスチックからなる円柱形状を有する繊維及び充填材を固化させて成形体を製造する装置であって、 前記円柱形状を有する繊維が、前記円柱形状を有する繊維及び充填材全量に対して、50体積%以上含まれている成形体を製造する装置。」 (3)甲3に記載された事項 甲3には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[0007] 本発明の目的は、原料粉末の粉体層にレーザー光を照射してワークピースを製造するプラント用の光照射ユニット、ならびにプラント自体および関連する方法を提供することであり、これにより、特性が改善された効率的かつ最適なワークピースを製造することができる。」 ・「[0012] 例えば、回折光学素子を用いて生成されたそれぞれのレーザサブビームは、ガウス型の強度分布を有する円形のビームプロファイルを有している。このようなビームプロファイルでは、ビームの最高強度が円形のレーザサブビームプロファイルの中心に見られ、ガウス分布に従って外側に向かって減少する。また、各レーザサブビームが、均ーな強度分布を有する矩形状のビームプロファイル、特に正方形のビームプロファイル(いわゆるトップハット型のビームプロファイル)を生成することも考えられる。このような矩形、特に正方形のビームプロファイルでは、レーザ放射の強度は、少なくとも矩形のビームプロファイル内のすべての点でほぼ等しい。原料粉末の粉末層がこの均ーな強度分布にさらされると、すべての処理状況において、溶融または焼結の結果が均ーになる。サブビームプロファイル内で局所的に発生する強度ピークに起因するプロセスの不安定性は、それによって回避されるか、少なくとも低減される。」 ・「[0015] ガウス型の強度分布を有するレーザサブビームの場合、形成される第1のレーザビームの全体的なビームプロファイルは、不均ーな強度分布の結果として、最初は強度が低く照射される場所が繰り返し照射されるような方法で、原料粉末層上に案内されることが好ましい。例えば、形成される全体のビームプロファイルは、均一な照射を確保するために、粉体層の上に順次重ねて案内される。均ーな強度分布を持つ矩形のレーザーサブビームプロファイル(トップハットプロファイル)の場合、レーザーサブビームだけでなく、レーザーサプビームによって形成される全体のレーザービームプロファイルにも、少なくともほぼ均ーな強度分布が存在するため、全体のビームプロファイルを順次重ねることを省略することができる。その結果、粉体層の重ならない異なる領域を順次照射することができる。このようにして、粉体層の均ーな溶融や焼結をより早く行うことができ、ワークの生産をより迅速かつ効率的に行うことができる。」 ・「[0039] サブビームと、サプビームによって形成される全体のビームプロファイル220の両方において、より均質なビームプロファイルを生成するために、第1の回折光学素子62は、図4に示されている全体のビームプロファイル220(ガウス強度分布を有するサプビームプロファイル240で形成される)ではなく、サブビームプロファイル280を有する図5に模式的に示された全体のビームプロファイル260を生成するように設計することができる。図5のサブビームプロファイル280は、それぞれがいわゆるトップハットプロファイルの形をしており、サブビームプロファイル280の全体(レーザサブビームの断面)にわたって均ーな強度分布を有している。その結果、個々のサプビームプロファイル280によって形成される全体的なビームプロファイル260(図5に示すように)は、均ーな強度分布を有する。このようにして、SLMまたはSLSレーザビーム200を分割しない場合に比べて、粉末層のより大きな領域を同時に照射することができ、製造プロセスの速度が向上し、それに伴って生産性も向上する。また、SLMまたはSLSレーザビーム200の全体的な強度がより広い面に均ーに分布するため、強度のピークが低減または回避される。」 (4)甲4に記載された事項 甲4には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 柱状又は等軸もしくは一方向凝固又は非結晶質もしくは単結晶のミクロ組織を有する超合金物品を形成又は補修する方法であって、 物品の層のパターンに対応するダイオードレーザファイバーアレイの選択されたファイバーから複数のレーザビームを超合金の粉体床上に放射して溶融プールを形成するステップと、 溶融プールの温度勾配及び凝固速度を制御して、柱状又は等軸もしくは一方向凝固又は非結晶質もしくは単結晶のミクロ組織を形成するステップと を含む、方法。 ・・・(略)・・・ 【請求項12】 各レーザビームのエネルギー分布がトップハットである、請求項1に記載の方法。」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明の技術は、全体的に、部品、より詳細にはガスタービンエンジンの部品の製造又は補修で使用するレーザ粉体床溶融結合付加製造(例えば、直接金属レーザ溶融(DMLM))用のダイオードレーザファイバーアレイの使用に関する。 【背景技術】 【0002】 付加製造法は、金属、セラミックス及びプラスチックスを含む様々な材料の部品の「3Dプリンティング」を可能にする既知の技術である。付加製造法において、部材は、金属粉体を均して、高出力レーザ又は電子ビームを用いて層内で粉体を選択的に溶融することにより層状的に構築される。各層の後に追加の粉体が付加されて、レーザが次の層をパターン形成すると同時に、これを従前の層に溶融して、粉体床に埋設される完全な部品を製造する。付加製造システム及びプロセスは、デジタルモデルから精密な3次元部品を製造するのに使用される。」 ・「【0015】 光ファイバー109のアレイ(すなわち、光ファイバー109の端部)と粉体床130との間の距離Dは、支持体170をZ方向に移動させることにより制御することができる。距離Dは、光ファイバー109により放射されるレーザビーム120のタイプ(例えば、レーザビーム120がコリメートされるか又は発散されるかどうか、及び発散の量)、各ダイオードレーザ103の平均出力、各ダイオードレーザ103のパルスエネルギー、各ダイオードレーザ103のパルス幅、及び/又はビームモード(例えば、ガウス分布、トップハット分布、その他)に応じて決定することができる。光ファイバー109の端部は、所要のダイオードレーザ103を同時にターンオンすることによって、粉体床130の層の何れかの領域が同時に溶融できるように、粉体床130の上方で、例えば約5mm~約150mm、例えば約20mm~約80mmに配置することができる。」 ・「【0028】 単結晶の一方向性凝固した超合金ミクロ組織を生成するよう制御することができる他のパラメータには、レーザモード分布(例えば、トップハット又はガウス)レーザスポット直径、レーザ出力、レーザオン時間、レーザ効率(α)、及びレーザビーム間の中心線間隔が挙げられる。パラメータの値(例えば、範囲)は、材料によって決定することができる点を理解されたい。例えば、図5に示す単結晶の一方向性凝固ミクロ組織は、トップハットモード分布、0.05~0.2mmのレーザスポット直径、5~60Wのレーザ出力、5~50msのレーザオン時間、0.5のレーザ効率α、及び80μmの中心線間隔を用いて生成することができる。」 (5)甲5に記載された事項 甲5には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「本発明は、少なくともポリマー材料を含む層を基材に形成する方法、およびそのような層を連続的に互いの上に形成することによって目的物を製造する方法に関する。」(第1ページ第1ないし4行) ・「さらに、可視領域または赤外領域におけるレーザ装置、例えば、赤外領域、特に、約1064nmの波長で動作するNd:YAGレーザ装置を用いることもできる。この場合、レーザが供給する熱は、ここに記載した方法にとって有用なポリマーによって吸収されないため、上記のとおりカーボンブラックのような熱伝導物質を膜へ添加する必要が生じる。しかしながら、CO2レーザ装置のような、遠赤外で動作するレーザ装置に関しては、レザエネルギーが直接にポリマーによって吸収され得るので、カーボンブラックの添加を必要としない。」(第5ページ第16ないし24行) ・「レーザによる場合、レーザ光線は、その光線幅に対する一般的に用いられるガウス強度分布に従い放出され、活性化された薄膜層のスポットの端部が、そのスポットの中央部よりもわずかに厚くなることが頻繁にある。これを回避するために、光線エネルギーの断面にわたる強度は、この処理に適合される。これは、レーザ装骰の内部的で実現されるか、または、外部の光学システムなどの他の手段の補助を借りて実現することができる。」(第6ページ第4ないし10行) ・「図4A、Bは、レーザ光線の断面にわたるガウス分布強度プロファイルおよびその補助により得られた層を示す。 図5A、Bは、レーザ光線の断面にわたる、変更された「トップハット(tophat)」強度分布およびその補助により得られたより均ーな層を示す。」(第7ページ第15ないし19行) ・「実地ではしばしば、レーザ光線の断面にわたる強度プロファイルがガウス配置(Gaussian configuration)を有する。これは、図4Aに示されている。その影響によって、層は、中央部よりも端部において幾分高く形成される(図4B参照)。この影響を補うために、図5Aに示すように変更された「トップハット (tophat)」分布を有する光線が使用され、それによって、平坦な層(図5B参照)が得られる。」(第8ページ第28ないし30行) ・「23. 前記レーザ装置は、レーザ光の幅にわたって見たときに、“トップハット”分布強度プロファイルを有することを特徴とする請求項14から請求項22のいずれかに記載の方法。 ・・・(略)・・・ 25. 少なくともポリマー材料を含む層を基材に形成する装置、または層ごとに積層することによって目的物を製造する装置であって、 該装置は、レーザ装置と、基材を有する処理空間とが備えられており、該基材上には、請求項1から請求項24のいずれかに記載された方法を用いることによって、少なくとも1つのポリマー材料を含有する1つの層、または互いの上に連続して適用される少なくともポリマー材料を含有する複数の層を形成することができることを特徴とする装置。 26. 前記レーザ装置は、光線の断面にわたって強度プロファイルを設定する手段を備えていることを特徴とする請求項25に記載の装置。」(第15ページ第12ないし18行) (6)甲6に記載された事項 甲6には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[0001] 本発明は、情報コードを含む三次元ワークピースを生成するための方法および装置に関する。さらに、本発明は、情報コードを含む三次元ワークピースに関する。」 ・「[0002] 選択的レーザー溶融または選択的レーザー焼結は、付加的積層プロセスであり、これにより、粉体、特に金属および/またはセラミックの原材料を、複雑な形状の三次元ワークピースに加工することができる。このプロセスでは、原材料の粉末をキャリア上に塗布し、製造するワークピースの形状に応じて部位選択的にレーザー照射を行う。粉末層に照射されたレーザー光は加熱され、その結果、原料粉末粒子が溶触または焼結する。続いて、レーザー処理を行ったキャリア上の層に、さらに原料粉末の層を連続して塗布し、日的の形状とサイズのワークピースを作製する。選択的レーザー溶融や選択的レーザー焼結は、特にCADデータに基づいて、プロトタイプ、ツール、航空機のタービンブレードなどの交換部品、歯科用または整形外科用の人工器官などの医療用人工器官の作製や、そのような製品の修理に使用することができる。レーザー放射の代わりに、任意の適切な電磁放射または粒子放射も同様に使用することができる。」 ・「[0023] 積層プロセスによって作製された三次元ワークピースの微細構造を効果的に調整するために制御可能な照射装置の動作パラメータは、キャリア上に塗布された原料粉末に照射される放射線ビームのビームサイズ(例えば、約200μm、500μm、700μm以上)、キャリア上に塗布された原料粉末に照射される放射線ビームのビームプロファイル(例えば、ガウスプロファイルまたはトップハットプロファイル)、キャリア上に塗布された原料粉末に照射される放射線ビームの走査速度(毎秒約500mmなど)、キャリア上に塗布された原料粉末に放射線ビームを照射する走査パターン、放射線ビームが原料粉末上に導かれるハッチ間の距離(約1mm未満のハッチ間の距離など)、放射線源の出力(2000W未満の出力、例えば400Wや1000Wなど)、キャリアに塗布された原料粉末に照射される放射線の強度やエネルギーなどである。」 (7)甲7に記載された事項 甲7には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「課題 プラスチックの選択的レーザー焼結(SLS)は、特に複雑なプロトタイプを少数製造するための付加製造として確立された。しかしユーザーはますます、高い製造速度による高い生産性と部材特性のより高い再現性との両方を要求している。従って生産性およびSLSの一貫性のいずれをも改善するためには、CO2レーザー照射のための新規の光学システムが設計されるべきである。」(第66ページ左欄第一段落) ・「結果 フラオンホーファー ILTは、ビーム直径および強度分布をダイナミックに、かつ可変的に適合させるための光学システムの設計構想を完成させた。シミュレーションの結果に基づいてガウシアンビーム直径は(通常の30~70Wに代えて)レーザー出力600Wまでで0.5~4mmに変更することができる。さらにビーム形状を整える光学系をシステム全体と一体化させることで均ーな強度分布(トップハットまたは線状分布)を生みだすことができる。次のステップでは、このシステムが構築され、実験的な設定で特性決定される。」(第66ページ右欄第二段落) (8)甲8に記載された事項 甲8には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001388369000006.jpg] 図1:等価の球体の概念の図 等価の球体という概念は、規則的な形状の粒子については非常に有効である。しかし、針状や板状など、少なくとも1つの寸法が他の寸法と大きく異なる不規則な形状の粒子には、必ずしも適切でない場合がある。 [図:0001388369000007.jpg] 図2:針状粒子と等価の体積のロッド(柱体)および球の図」(第3ページ中段) 2 取消理由1(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 取消理由1は、訂正前の請求項1及び10の「前記柱状粒子が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている」という記載に起因するものであるところ、本件訂正により、該記載は削除された。 そして、改めて本件特許の請求項1及び10に記載された各発明特定事項について検討しても、それらの意味は明確であり、発明の詳細な説明の記載とも整合する。 したがって、本件特許発明1及び10に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし9並びに請求項10を直接又は間接的に引用する本件特許発明11及び12に関しても、同様に、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)取消理由1についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由1によっては、取り消すことはできない。 3 取消理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細な説明にはおおむね次の記載がある。 ・「【0001】 本発明は、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置に関する。 【背景技術】 【0002】 粉末床溶融(PBF:powder bed fusion)方式は、選択的にレーザーを照射して立体造形物を形成するSLS(selective leser sintering)方式や、マスクを使い平面状にレーザーを当てるSMS(selective mask sintering)方式などが知られている。 【0003】 前記PBF方式は、レーザー光線を金属やセラミックス、又は樹脂の薄層に選択的にレーザーを選択的に照射することにより粉末を溶融接着させ、成膜した後、前記成膜した膜の上に別の層を形成して同様の操作を繰り返すことにより順次積層して立体造形物を得ることができる(例えば、特許文献1~3参照)。 【0004】 前記PBF方式の樹脂粉末を使用する場合では、薄層間の内部応力を低く維持することと緩和(リラックス)しながら、供給槽に供給された樹脂粉末の層を樹脂の軟化点付近の温度まで加熱しておき、この層にレーザー光線を選択的に照射し、照射された樹脂粉末自身を軟化点以上の温度まで加熱して相互に融着させることにより立体造形が行われる。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0006】 前記課題を解決するための手段としての本発明の立体造形物の製造方法は、柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有する。」 ・「【発明の効果】 【0007】 本発明によると、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造方法を提供することができる。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0009】 (立体造形物の製造方法及び立体造形物の製造装置) 本発明の立体造形物の製造方法は、柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し、更に必要に応じてその他の工程を含む。 本発明の立体造形物の製造方法は、従来の立体造形物の製造方法では、PBF方式に採用されるレーザーのエネルギー強度分布は、ガウシアン分布であり、前記粉末層に照射される際、レーザー径の範囲内において粉末を構成する粒子の融解挙動にムラが生じる。具体的には、レーザー照射部中央が完全に融解するレーザー出力条件であっても、中央からレーザーの半径分離れた位置に存在する粒子は未溶融な状態となる現象が生じうるという問題があるという知見に基づくものである。その結果として、立体造形物の表面に粒子形状を維持したことに起因する表面のざらつきが残るという問題があるという知見に基づくものである。 また、本発明の立体造形物の製造装置は、柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する手段と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる手段と、を有する立体造形物の製造装置であって、前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。 また、本発明の立体造形物の製造装置としては、前記エネルギー強度分布を、ガウシアン分布からトップハット形状の分布へと変換する手段をさらに有することが好ましい。 本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の立体造形物の製造装置により好適に実施することができる。 【0010】 -レーザー- 前記レーザーは、トップハット形状のエネルギー強度分布を有する。前記トップハット形状のエネルギー強度分布を持つレーザー光線を使用することにより、立体造形用樹脂粉末を均一に融解し、立体造形物の表面に粒子形状が少なく、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を得ることができる。前記トップハット形状とは、略台形状、又は(一次元)ガウシアン分布のピークを平坦化した形状を意味する。」 ・「【0020】 --柱状粒子-- 前記柱状粒子の形状としては、略円柱状であることが好ましい。前記柱状粒子の形状が略円柱状であると、トップハット形状の強度分布を有するレーザーを照射することにより、得られる立体造形物の算術平均粗さを著しく低減することができる。 【0021】 前記柱状粒子は、略円形状の向かい合う面を有することが好ましく、向かい合う略円形状の直径が、1μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましく、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が、1μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましい。」 ・「【0025】 前記柱状粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性熱可塑性樹脂が好ましい。 【0026】 前記結晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM、融点:175℃)、ポリイミド、フッ素樹脂等のポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記結晶性熱可塑性樹脂としては、前記ポリマー以外に、難燃化剤や可塑剤、熱安定性添加剤や結晶核剤等の添加剤、非結晶性樹脂等のポリマー粒子を含んでいてもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記ポリマー粒子としては、前記ポリマー粒子を混合して使用しても、前記ポリマー粒子の表面にポリマー粒子を被覆してものを使用してもよい。 【0027】 前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP、融点:130℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 【0028】 前記ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド410(PA410)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66、融点:265℃)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12);半芳香族性のポリアミド4T(PA4T)、ポリアミドMXD6(PAMXD6)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、PA9Tは、ポリノナメチレンテレフタルアミドとも呼ばれ、炭素が9つのジアミンにテレフタル酸モノマーから構成され、一般的にカルボン酸側が芳香族であるため半芳香族とも呼ばれる。さらには、ジアミン側も芳香族である全芳香族として、p-フェニレンジアミンとテレフタル酸モノマーとからできるアラミドと呼ばれるものも本発明のポリアミドに含まれる。また、PA9Tのように融点ピークが2つあるものを用いてもよい(完全に溶融させるには2つ目の融点ピーク以上に樹脂温度を上げる必要がある)。 【0029】 前記ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点:260℃)やポリブチレンテレフタレート(PBT、融点:225℃)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。耐熱性を付与するため一部テレフタル酸やイソフタル酸が入った芳香族を含むポリエステルも本発明に好適に用いることができる。 【0030】 前記ポリエーテルとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、融点:334℃)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。前記ポリエーテル以外にも、結晶性ポリマーであればよく、例えば、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられる。」 ・「【0043】 前記立体造形用樹脂粉末としては、前記柱状粒子のみで構成されることが好ましいが、一般的に粉砕したものと組み合わせてもよく、前記柱状粒子が、立体造形用樹脂粉末全量に対して、50%以上含まれている方が密度を向上させる目的ではより好ましい。」 ・「【実施例】 【0056】 以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。 【0057】 なお、以下のようにして、「立体造形用樹脂粉末の50%累積体積粒径」、及び「立体造形用樹脂粉末の融点」を測定した。 【0058】 前記50%累積体積粒径は、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて測定した。 【0059】 (立体造形用樹脂粉末の融点) 前記融点は、ISO 3146(プラスチック転移温度測定方法、JISK7121)準拠して測定した。 【0060】 (立体造形用樹脂粉末の作製例1) <略円柱状のPBT粉末の作製> ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン5020、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、融点:225℃、ガラス転移温度:43℃)を押し出し加工機を用いて、融点より30℃高い温度にて撹拌後、ノズル口が円形状のものを用い、繊維状に立体造形用樹脂溶融物を押し出した。ノズルから出る糸の本数は100本で実施した。3倍程度延伸し、繊維直径が60μmで精度が±4μmの繊維にした後に0.08mmで押し切り方式の裁断マシーン(NJシリーズ1200型、株式会社荻野精機製作所製)を用いて裁断し、PBT粉末を得た。裁断後の断面を走査型電子顕微鏡(装置名:FlexSEM 1000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で、300倍の倍率で確認したところ、断面はきれいに裁断されており、切断面は互いに平行であった。また、円柱の高さを測定したところ60μmを中心に±10μmの精度で切断できていた。裁断時につぶれた様子もなかった。なお、PBT粉末の50%累積体積粒径は55μmであった。 【0061】 (立体造形用樹脂粉末の作製例2) <略円柱状のPA12粉末の作製> PA12粉末については、上市されているSLS用グレードの粉末(商品名:Vestsint 2162 natural、ダイセル・エボニック株式会社製、融点:約181℃)を用いた。なお、前記PA12粉末について、立体造形用樹脂粉末の作製例1と同様にして、粉体の形状を確認したところ、球状であった。また、PA12粉末の50%累積体積粒径は45μmであった。 【0062】 (立体造形用樹脂粉末の作製例3) <PA6粉末の作製> PA6粉末については、押し出し成形用の標準グレードの熱可塑性樹脂ペレット(商品名:ユニチカナイロン6 A1030BRT、ユニチカ株式会社製、融点:約225℃)を-200℃で凍結粉砕することにより得られる粉末を使用した。粉砕後の粉末は、5μm以上100μm以下の幅になるようにした。50%累積体積粒径は、20μm以上90μm以下であった。 粉末の流動性を改善するため、前記粉末に1質量%のヒュームドシリカ(エアロゾル社製、RA200H)と0.5質量%のステアリン酸亜鉛(川村化成工業株式会社製)をブレンドし、均質コンパウンドパウダーを得た。前記パウダーを未使用粉末とした。なお、PA6粉末の50%累積体積粒径は55μmであった。 【0063】 (実施例1~2、及び比較例1~5) [立体造形物の作製] SLS製造装置(装置名:AM S5500P、株式会社リコー製)を使用し、下記表1に示す立体造形用樹脂粉末を用いて立体造形物の製造を行った。設定条件は、層平均厚みを0.1mmとし、レーザー出力を約10ワット以上150ワット以下、レーザー走査間隔を0.48mmとし、造形温度(造形槽の粉末表面温度)を樹脂粉末の融点より3℃以上20℃以下低い温度で設定した。これら条件は樹脂粉末の熱物性や装置の設置環境(温度及び湿度)の影響を受けるため、SLS装置ごとに各パラメーターを適切に調整する必要がある。レーザー照射中は特に発煙なく、良好な解像度を示し、反りについては観察されなかったため、上記の条件を各実施例及び比較例において共に適切な造形条件と判断した。さらに、それら適切なレーザー造形条件にて造形できたことから、各粉体についてもSLS造形用の粉末に適していると考えられる。立体造形物の形状は10mm角の立方体とした。 【0064】 -トップハット形状のレーザー強度分布を有するレーザーの形成- レーザー光源は、CO2レーザー(装置名:Firestar Ti60、SYNRAD社製、レーザー波長:10.6μm)、又はNd-YAGレーザー(装置名:LOTIS TII、株式会社東京インスツルメンツ製、レーザー波長:1.06μm)を使用した。Firestar Ti60は常設設備である。一方、Nd-YAGレーザーを用いる際は、前記レーザー光源をLOTIS TIIに置き換えて使用した。どちらのレーザー光源も、出力されるレーザーの強度分布はガウシアン分布(図3)である。 【0065】 前記装置内部の光学系内のレーザー光源の先に、前記レーザーの強度分布をトップハット形状に変換させる機能を有するレンズシステム(装置名:piShaper、AdlOptica社製)を設置した。変換されたレーザーが、造形チャンバー内の粉末層に照射される際のエネルギー強度分布は、レーザープロファイル測定装置(装置名:StarLite、OPHIR社製)を用いて測定した。図1に、本手法で形成し、造形に用いたレーザーの強度分布を示す。レーザー径は、およそ240μmである。 【0066】 得られた立体造形物を用いて、以下のようにして、「立体造形物の算術平均粗さRa」を測定し、さらに、「造形精度」を評価した。 【0067】 (立体造形物の算術平均粗さRaの計測) 立体造形した立体造形物(立方体)の側面に対して、ISO 1302(JIS B 0031)に準拠した算術平均粗さRaの測定を行った。装置は、VR3200(株式会社キーエンス製)を用いた。なお、前記算術平均粗さRaは、5回の測定の平均値を実験値とした。また、前記算術平均粗さRaの値が小さいほど、立体造形物の表面のざらつきは少なくなる。 【0068】 (造形精度) 次に、得られた立体造形物について、目視にて観察し、下記評価基準に基づいて、「造形精度」を評価した。 [評価基準] ○:得られた立体造形物の表面が滑らかで美麗であり、反りも生じていない状態 △:得られた立体造形物の表面に若干の歪みと僅かに反りが生じている状態 ×:得られた立体造形物の表面に歪みが生じており、激しく反りが生じている状態 【0069】 【表1】 [図:0001388369000008.jpg] 」 (4)サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0005】の記載によると、本件特許発明1ないし9の解決しようとする課題(以下、「発明の課題1」という。)は「本発明は、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造方法」を提供することであり、本件特許発明10ないし12の解決しようとする課題(以下、「発明の課題2」という。)は「本発明は、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造装置」を提供することである。 そこで、本件特許の発明の詳細な説明をみると、【0010】には「前記レーザーは、トップハット形状のエネルギー強度分布を有する。前記トップハット形状のエネルギー強度分布を持つレーザー光線を使用することにより、立体造形用樹脂粉末を均一に融解し、立体造形物の表面に粒子形状が少なく、立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を得ることができる。」と記載され、【0020】には「前記柱状粒子の形状としては、略円柱状であることが好ましい。前記柱状粒子の形状が略円柱状であると、トップハット形状の強度分布を有するレーザーを照射することにより、得られる立体造形物の算術平均粗さを著しく低減することができる。」と記載され、【0021】には「前記柱状粒子は、略円形状の向かい合う面を有することが好ましく、向かい合う略円形状の直径が、1μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましく、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が、1μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましい。」と記載され、【0025】には「前記柱状粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性熱可塑性樹脂が好ましい。」と記載され、【0026】ないし【0030】には結晶性樹脂の種類が例示されている。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0056】ないし【0069】において、結晶性樹脂であるポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂からなる柱状粒子であって、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下の範囲内の60μm、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の範囲内の60μmの略円柱形状の粒子を用い、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを用いた実施例1及び2が、比較例1ないし5と比べて、算術平均粗さRaの値が小さく、造形精度の評価が良いことを確認している。 そうすると、これらの記載及び当業者の出願時の技術常識から、「結晶性樹脂からなる柱状粒子であって、向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子」を用い、「トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザー」を用いた製造方法及び製造装置は、それぞれ、発明の課題1及び2を解決することができると当業者は認識できる。 そして、本件特許発明1ないし9は上記製造方法をさらに限定したものであり、本件特許発明10ないし12は上記製造装置をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1ないし9は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題1を解決できると認識できる範囲のものであるといえるし、本件特許発明10ないし12は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題2を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件特許発明1ないし12に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由2によっては、取り消すことはできない。 4 取消理由3(甲1に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1方法発明を対比する。 甲1方法発明1における「溶融紡糸により得られたポリマー糸を切断して得た柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末を含むプラスチック粉末」と本件特許発明1における「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」は、「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」という限りにおいて一致する。 甲1方法発明における「選択的レーザー焼結(SLS)による付加製造」が「粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む」ことは明らかである。 甲1方法発明における「複雑な形状の部品」は本件特許発明1における「立体造形物」に相当する。 甲1方法発明における「ポリプロピレン、ポリラクチド、ポリアミド又はPA6.6」は本件特許発明1における「結晶性樹脂」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、 前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなる立体造形物の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」に関して、本件特許発明1においては、「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、「前記柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末が、レーザー焼結に使用されるプラスチック粉末の全量に対して、50質量%以上含まれている」と特定されている点。 <相違点1-2> 「柱状粒子」に関して、本件特許発明1においては、「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-3> 本件特許発明1においては、「前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し」と特定されているのに対し、甲1方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 そこで、事案に鑑み、相違点1-2及び1-3から検討する。 甲3ないし7には、レーザーの照射により粉末の層を固化させて立体造形物を製造する際に、より均質な層を得るために、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを用いることが記載されているものの、「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」「柱状粒子」を用い、その際に、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを用いることは記載されていないし、そうする動機付けとなる記載もない。 また、甲8にも、そのような記載はない。 したがって、甲1方法発明において、甲3ないし8に記載された事項を考慮しても、相違点1-2及び1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる」(本件特許明細書の【0007】参照。)という、甲1方法発明及び甲3ないし8に記載された事項からみて本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1方法発明及び甲3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし9について 本件特許発明2ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1方法発明及び甲3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲1装置発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲1方法発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する手段と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる手段と、を有する立体造形物の製造装置であって、 前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなる立体造形物の製造装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-4> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」に関して、本件特許発明10においては、「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」と特定されているのに対し、甲1装置発明においては、「前記柱状若しくは略円柱状であるポリマー粉末が、レーザー焼結に使用されるプラスチック粉末の全量に対して、50質量%以上含まれている」と特定されている点。 <相違点1-5> 「柱状粒子」に関して、本件特許発明10においては、「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」と特定されているのに対し、甲1装置発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-6> 本件特許発明10においては、「前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し」と特定されているのに対し、甲1装置発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点1-4ないし1-6は、相違点1-1ないし1-3と実質的に同じであるから、それらについての判断も同じである。 すなわち、甲1装置発明において、甲3ないし8に記載された事項を考慮しても、相違点1-5及び1-6に係る本件特許発明10の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明10は、「立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる」という甲1装置発明及び甲3ないし8に記載された事項からからみて本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点1-4について検討するまでもなく、本件特許発明10は甲1装置発明及び甲3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明11及び12について 本件特許発明11及び12は、請求項10を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に、甲1装置発明及び甲3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)取消理由3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものであるとはいえないので、取消理由3によっては取り消すことはできない。 5 取消理由4(甲2に基づく進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲2方法発明を対比する。 甲2方法発明における「選択的レーザー焼結(SLS)によるレイヤーバイレイヤー構造による成形体の製造」が「粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む」ことは明らかである。 甲2方法発明における「ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性プラスチックからなる円柱形状を有する繊維及び充填材」は本件特許発明1における「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」と、「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」という限りにおいて一致する。 甲2方法発明における「成形体」は本件特許発明1における「立体造形物」に相当する。 甲2方法発明における「ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリラクチド(PLA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性プラスチック」は本件特許発明1における「結晶性樹脂」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する工程と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、 前記柱状粒子が、結晶性樹脂である立体造形物の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」に関して、本件特許発明1においては、「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」と特定されているのに対し、甲2方法発明においては、「前記円柱形状を有する繊維が、前記円柱形状を有する繊維及び充填材全量に対して、50体積%以上含まれている」と特定されている点。 <相違点2-2> 「柱状粒子」に関して、本件特許発明1においては、「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」と特定されているのに対し、甲2方法発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-3> 本件特許発明1においては、「前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し」と特定されているのに対し、甲2方法発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 そこで、事案に鑑み、相違点2-2及び2-3から検討する。 上記4(1)イのとおり、甲3ないし8には、「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」「柱状粒子」を用い、その際に、トップハット形状のエネルギー強度分布を有するレーザーを用いることは記載されていないし、そうする動機付けとなる記載もない。 したがって、甲2方法発明において、甲3ないし8に記載された事項を考慮しても、相違点2-2及び2-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる」という甲2方法発明及び甲3ないし8に記載された事項からみて本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2方法発明及び甲3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし9について 本件特許発明2ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2方法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲2装置発明を対比する。 両者の間には、本件特許発明1と甲2方法発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末の層を形成する手段と、レーザーの照射により前記層の所定領域を固化させる手段と、を有する立体造形物の製造装置であって、 前記柱状粒子が、結晶性樹脂からなる立体造形物の製造装置。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-4> 「柱状粒子を含む立体造形用樹脂粉末」に関して、本件特許発明10においては、「柱状粒子からなる立体造形用樹脂粉末」と特定されているのに対し、甲2装置発明においては、「前記円柱形状を有する繊維が、前記円柱形状を有する繊維及び充填材全量に対して、50体積%以上含まれている」と特定されている点。 <相違点2-5> 「柱状粒子」に関して、本件特許発明10においては、「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」と特定されているのに対し、甲2装置発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-6> 本件特許発明10においては、「前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し」と特定されているのに対し、甲2装置発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点2-4ないし2-6は、相違点2-1ないし2-3と実質的に同じであるから、それらについての判断も同じである。 すなわち、甲2装置発明において、甲3ないし8に記載された事項を考慮しても、相違点2-5及び2-6に係る本件特許発明10の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明10は、「立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる」という甲2装置発明及び甲3ないし8に記載された事項からみて本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点2-4について検討するまでもなく、本件特許発明10は甲2装置発明及び甲3ないし8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明11及び12について 本件特許発明11及び12は、請求項10を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に、甲2装置発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)取消理由4についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものであるとはいえないので、取消理由4によっては取り消すことはできない。 第7 特許異議申立人の主張する新たな取消理由について 1 特許異議申立人の主張する新たな取消理由の概要 特許異議申立人は、令和4年3月3日に提出された意見書において、新たな取消理由として、おおむね次のとおり主張する。 (1)「訂正請求がされた請求項1、10には、柱状粒子が、Mv/Mn≦2あるという発明特定事項が追加されている。段落【0017】の記載によれば、Mv/Mnは、体積平均粒径/個数平均粒径であり、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて測定することができるとある。しかし、粒子の体積平均粒径や個数平均粒径といった平均粒径を測定する方法は、甲第8号証にも記載されているように、粒子のどのような特性に着目して測定するかに依存して多岐にわたるものであることは当業者にとって周知の事項である。粒子の体積平均粒径や個数平均粒径といった平均粒径を測定する方法は、甲第8号証にも記載されているように、粒子のどのような特性に着目して測定するかに依存して多岐にわたるものであることは当業者にとって周知の事項である。甲第8号証の図1は、1つの粒子の粒径を測定するにあたって、測定の基準となる特性が示されており、第3頁には、少なくとも1つの寸法が他の寸法と著しく異なる針状もしくは板状のような不規則な形状の粒子の場合には、同一の粒子であっても計測法次第で測定値に大きな違いが生じることが記載されている。とりわけ柱体、たとえば円柱状の粒子の場合、図2に記載されているように、長軸と短軸とでは径が大きく異なる上に、体積を基準とすれば同一であったとしても、球体として換算した場合には、柱体の長軸および短軸とは全く異なった粒径が得られることも当業者には周知の事項である。従って、訂正請求書に記載の請求項1、10における、柱状粒子がMv/Mn≦2であるという発明特定事項は不明確である。」(上記意見書第7ページ第1ないし19行。以下、「新たな理由1」という。) (2)「(i)本件特許発明により解決すべき課題は、「立体造形物の表面のざらつきを低減でき、複雑かつ精細な立体造形物を簡便かつ効率よく製造することができる立体造形物の製造方法を提供すること」である。(ii)しかし、本件特許の明細書において、上記課題を解決することができると当業者が認識できる範囲のものは、前記柱状粒子として、円柱形状で、直径60μm、高さ60μmのPBTを使用し、立体造形用樹脂粉末の50%累積体積粒径が55μm、融点が225℃のものをCO2レーザーまたはNd―YAGレーザーを使用してレーザーの波長を10.6としてトップハット形状のエネルギー強度分布でレーザー焼結を行った場合のみである。その一方で、レーザー焼結用の粉末材料として、請求項1、10に記載されているような、直径が、1μm以上200μm以下、高さが、1μm以上200μm以下の粒子、つまり実施例で使用された粒子と比較して直径および高さが60分の1のものから、直径および高さが3倍以上のものまでの極めて広い範囲の粒子を使用した場合であっても、実施例1および2の場合と同様に、上記の課題が解決できると当業者が理解することができるような説明は何らもなく、本件特許発明の出願時に、そのような技術常識が存在していたとも認められない。」(上記意見書第7ページ下から2行ないし第8ページ第14行。以下、「新たな理由2」という。) 2 検討 そこで、検討する。 (1)新たな理由1について 上記第3のとおり、本件特許発明1及び10においては、「柱状粒子」が「向かい合う略円形状の直径が1μm以上200μm以下、向かい合う略円形状間の距離(高さ)が1μm以上200μm以下の略円柱形状の粒子で、Mv/Mn≦2である」ものに特定されており、甲8に示されるような「少なくとも1つの寸法が他の寸法と著しく異なる針状もしくは板状のような不規則な形状の粒子」ではないから、計測法次第で測定値に大きな違いが生じるものではない。 そして、本件特許明細書の【0017】には、「Mv/Mn」の測定方法が記載されている。 そうすると、本件特許発明1及び10における「柱状粒子」が「Mv/Mn≦2である」という発明特定事項は不明確であるとはいえない。 したがって、新たな理由1は採用できない。 (2)新たな理由2について 新たな理由2は、本件訂正に付随して生じたものではなく、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して実質的に新たな内容を含むものである。 したがって、新たな理由2は特許法第115条第2項所定の特許異議申立書の要旨を変更する補正であるともいえることから、採用できない。 なお、本件特許発明1ないし12に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえるのは、上記第6 3(4)のとおりであり、新たな理由2により左右されるものではない。 第8 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由について 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由は、申立理由3(明確性要件)の(1)及び(2)並びに申立理由4(サポート要件)である。 以下、検討する。 1 申立理由3(明確性要件)の(1)及び(2)について (1)申立理由3の(1)について 上記第3のとおり、本件特許発明1及び10においては、「柱状粒子」の材質及び形状が特定されているし、そもそも、「柱状粒子」という記載自体でどのような物か当業者であれば理解できる。 したがって、本件特許発明1及び10、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし9並びに請求項10を直接又は間接的に引用する本件特許発明11及び12に係る発明は明確である。 (2)申立理由3の(2)について 本件特許発明1及び10における「レーザー」という発明特定事項が「レーザー光」を意味することは、請求項1及び10における「レーザー」という記載の前後の記載及び発明の詳細な説明の「レーザー」に関する記載から当業者に明らかである。 したがって、本件特許発明1及び10における「レーザーの照射」及び「前記レーザーが、トップハット形状のエネルギー強度分布を有し」という発明特定事項は不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明1及び10、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし9並びに請求項10を直接又は間接的に引用する本件特許発明11及び12に係る発明は明確である。 (3)申立理由3の(1)及び(2)についてのむすび したがって、本件特許発明1及び10に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないし、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし9並びに請求項10を直接又は間接的に引用する本件特許発明11及び12に関しても、同様に、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3の(1)及び(2)によっては、取り消すことはできない。 2 申立理由4(サポート要件)について 上記第6 3(4)のとおり、本件特許発明1ないし9は、当業者が発明の課題1を解決できると認識できる範囲のものであるし、本件特許発明10ないし12は、当業者が発明の課題2を解決できると認識できる範囲のものである。 なお、レーザー光の波長がどうであるかは当業者が発明の課題1及び2を解決できると認識できる範囲の特定には関係がない。 したがって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由4によっては、取り消すことはできない。 第9 結語 上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700762

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