特許異議申立
2024-700200
樹脂粉末、及び立体造形物の製造方法
- 審判番号
- 2024-700200
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-150795
- 登録番号
- 7338316
- 請求日
- 2024年03月04日
- 審決日
- 2025年02月28日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社リコー
- 【権利者代理人】山口 昭則
- 【権利者代理人】新川 圭二
- 【異議申立人】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【異議申立人代理人】遠藤 太介
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 関根 洋之
- 審判官 清水 康司
- 分類
- P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7338316号発明「樹脂粉末、及び立体造形物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7338316号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12について訂正することを認める。
特許第7338316号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7338316号(請求項の数12。以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2019-150795号。以下「本件出願」という。)は、令和元年8月21日(優先権主張 平成30年8月31日)の出願であって、令和5年8月28日にその特許権の設定登録がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、請求項1~12に係る特許について、令和6年3月4日に特許異議申立人(以下「申立人」という。)により本件特許異議の申立てがされ、当審において、同年8月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月11日に特許権者より訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書が提出され、同年12月13日に申立人より意見書が提出された。
第2 本件訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7338316号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」というものである。
本件訂正は、次の訂正事項からなる(下線は、訂正箇所を表す。)。
訂正事項1:
本件訂正前の請求項1に「微粉の含有率が30%以下であり、」とあるのを、「微粉の含有率が個数基準で30%以下であり、」に訂正する。(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項2~11も同様に訂正する。)
訂正事項2:
本件訂正前の請求項12に「微粉の含有率が30%以下であり、」とあるのを、「微粉の含有率が個数基準で30%以下であり、」に訂正する。
2 訂正の目的について
訂正事項1及び2は、請求項1~12において、「30%以下」とされた「微粉の含有量」がいかなる基準によるものか明らかでなかったものを、「個数基準」によるものであることを明らかにする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
3 新規事項の追加について
本件特許の願書に添付した明細書全体の記載からみて、「微粉の含有量」とは「個数基準」によると解するのが自然であるから、訂正事項1及び2による訂正によって、当業者が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。
よって、訂正事項1及び2による訂正は、新規事項を追加するものでないから、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
4 特許請求の範囲の実質拡張・変更について
訂正事項1及び2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることはないから、訂正事項1及び2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
よって、訂正事項1及び2による訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
5 小括
前記2~4で述べたとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12について訂正することを認める。
第3 本件特許の各請求項に係る発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれを「本件訂正発明1」~「本件訂正発明12」という。)は、本件訂正後の請求項1~12に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認められる。
「【請求項1】
個数基準平均円相当径Mnの40%以下である個数基準円相当径を有する微粉の含有率が個数基準で30%以下であり、柱体粒子であることを特徴とする樹脂粉末。
【請求項2】
前記微粉の含有率が20%以下である請求項1に記載の樹脂粉末。
【請求項3】
BET比表面積が0.50m2/g以下である請求項1から2のいずれかに記載の樹脂粉末。
【請求項4】
BET比表面積が0.30m2/g以下である請求項3に記載の樹脂粉末。
【請求項5】
BET比表面積が0.10m2/g以下である請求項4に記載の樹脂粉末。
【請求項6】
前記樹脂粉末の個数基準平均円相当径Mnが、3μm以上110μm以下である請求項1から5のいずれかに記載の樹脂粉末。
【請求項7】
前記樹脂粉末のMv/Mnが1.40以下である請求項1から6のいずれかに記載の樹脂粉末。
ただし、Mvは樹脂粉末の体積基準平均円相当径[μm]を表し、Mnは樹脂粉末の個数基準平均円相当径[μm]を表す。
【請求項8】
樹脂を含有し、前記樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1から7のいずれかに記載の樹脂粉末。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、及びポリエーテルから選択される少なくとも1種である請求項8に記載の樹脂粉末。
【請求項10】
前記ポリアミドが、ポリアミド410、ポリアミド4T、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド11、ポリアミド9T、ポリアミド10T、及びアラミドから選択される少なくとも1種である請求項9に記載の樹脂粉末。
【請求項11】
前記微粉の平均円形度が0.850以下である請求項1から10のいずれかに記載の樹脂粉末。
【請求項12】
個数基準平均円相当径Mnの40%以下である個数基準円相当径を有する微粉の含有率が個数基準で30%以下であり、柱体粒子である樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、
前記層を電磁照射し溶融させた後に冷却し、硬化させる硬化工程と、を繰り返すことを特徴とする立体造形物の製造方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~12に係る特許に対して通知された取消理由は、概略、次のとおりである。
取消理由1(進歩性欠如):本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願(以下「基礎出願」という)の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、基礎出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、当該請求項1~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2(明確性要件違反):本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
前記取消理由1(進歩性欠如)において引用された引用例は、次のとおりである。
甲2(主引用例):特表平10-505116号公報
甲3:欧州特許出願公開第3272787号明細書
甲4:欧州特許出願公開第3272788号明細書
第5 主引用例
1 甲2
(1)甲2の記載
甲2は、基礎出願の出願前に頒布された刊行物であるところ、次の記載がある(下線は、後述する甲2粉体発明及び甲2方法発明の構成の認定に用いた箇所等を示すために、当合議体が付したものである。なお、甲2において付されていた下線は省略した。)。
ア 「【特許請求の範囲】
・・・(中略)・・・
16.立体物製造方法において、・・・(中略)・・・前記粉体層をターゲット面に付ける工程及び前記エネルギを差し向けて粒子を融着する工程を繰り返し、層を次々に重ねる方法で物体を形成する工程・・・(中略)・・・を有する、方法」
イ 「発明の技術分野
本発明は、原型を迅速に製作する分野に関し、更に詳細には、選択的レーザー焼結法によって原型部品を製造するための材料に関する。
発明の背景
本発明は、DTM社が製造販売しているシンタステーション2000システム等の選択的レーザー焼結機でレーザー焼結される合成樹脂粉体製品に関する。レーザー焼結性粉体(本明細書申、「焼結性粉体」と呼ぶ)は、赤外領域の焼結レーザーが差し向けられる(粉体)ベッドを形成するための独特の特定の物理的性質を持つように「設計され」即ち「調製され」ている。
従来技術の焼結性粉体は、多くの目的について、等方性に型成形された部品の複製であるように見える焼結部品を生産できなかった。更に、従来技術の焼結性粉体が形成するベッドは、焼結部品がうまく完成したとしても、この焼結部品が歪むかどうかを決定する強制的熱伝達特性を提供する能力に欠けている。供給ベッドから転がり出て選択的レーザー焼結機の部品ベッド上に入る粒子層の厚さは、代表的には、約200μm(8ミル)であるため、使用されたこのような粉体の最大粒径は、粉体を所望のメッシュサイズに粉砕する際に「微粉」が形成されようとも、粉体における粒径分布に関わらず、200μmである。
非晶質ポリマー粉体に対して選択的レーザー焼結を行うと、代表的には、幾分多孔質の完成部品が形成されることが観察される。代表的な非晶質ポリマーは、一般に「ガラス転位」温度と呼ばれる温度で二次転位を示し、この温度よりも高い温度に加熱すると粘度が徐々に低下する。非晶質ポリマーの選択的レーザー焼結を行う場合には、部品ベッドをガラス転位温度近くの温度に維持し、部品の位置の粉体をレーザーでガラス転位温度以上の温度まで加熱し、有用な部品を製造する。これは、緻密化挙動が粘度で制御されるためである。非晶質ポリマーから完全に緻密(fully dense)な(即ち無孔質の)部品を形成することは、理論的には可能であるが、高出力レーザーを使用することによって生じる、熱の制御、材料の劣化、及び焼結膨らみ(growth)(走査領域の外側の粉体の望ましいからぬ焼結)といった実際上の懸念により、このような完全に緻密な部品は製造できない。更に、非晶質ポリマー粉体の選択的レーザー焼結を行う場合には、「固有カール(in-build curl)」が生じ易く、その場合、部品に次々に加えられる焼結層が固体の基材上で収縮し、部品を部品ベッドから反らせるということが観察された。
本発明の焼結性粉体は、多孔質であるけれども、所望の部品の正確な寸法を持ち、そればかりでなく、例えば等方性に型成形した完全に緻密な物品の曲げ弾性率及び最大降伏応力を持つようにほぼ完全に緻密(near-fully dense)な焼結物品(部品)の生産に関する。
更に、故意に繰り返し説明する焼結性粉体の性質は、冷却ガスを通して下方に流すのを可能にするのに十分多孔質なベッドを提供し、更に、焼結によって形成した部品が型成形品の性質を持つ静止ベッドを維持する、ベッドを提供する上で思いがけない程効果的であった。」(5ページ3行~6ページ14行)
ウ 「部品の製造は、焼結性粉体の第1部分を部品ベッドのターゲット面上に堆積し、差し向けられたレーザーをターゲット面に亘って走査し、ターゲット面上の粉体の第1部分からなる第1層を焼結し、第1スライスを形成することによって行われる。かくして、粉体の焼結は、粉体を焼結させるのに十分高いエネルギを持つ差し向けられたレーザービームを、第1スライスを構成する境界内で作動することによって行われる。第1スライスは、部品の第1断面領域と対応する。
粉体の第2部分を部品ベッドの表面上及び部品ベッド上の第1焼結スライスの表面上に堆積し、差し向けられたレーザービームで第1焼結スライス上の粉体を走査する。かくして、第2スライスを構成する境界内でレーザービームを作動することによって、粉体の第2部分からなる第2層を焼結する。第2焼結スライスの形成は、第2焼結スライスが第1スライスに焼結され、これらの二つのスライスが凝集マスを形成するのに十分な温度で行われる。以前に焼結したスライス上に粉体層を堆積し、各層を焼結してスライスを形成する。上述の工程を繰り返すことによって、ターゲット面を継続的に提供する粉体の「部品ベッド」内にレーザー-焼結品を形成する。」(8ページ13~27行)
エ 「粉体を部品ベッド内で焼結できるようになる前には、粉体を供給ベッドから部品ベッド上に送出し、選択的レーザー焼結機のローラーによって粉体を部品ベッド上に厚さが125μmの薄い均等な層をなして分布させなければならないということを思い起こす必要がある。・・・(中略)・・・粉体は、供給ベッドから部品ベッド上に自由に流動できなければならない。
・・・(中略)・・・自由に流動できる粉体は、粉体の「軟化点」であるTs近くの温度でも、粉体の「回転バンク」と呼ばれる動的な細長いマスをなして回転ローラーによって押圧できる性質を有する。
Tsでは、粉体は、回転ローラーに対して回転バンクとして流動的に輸送できなくなる寸前にある。「軟化点」という用語は、粉体の貯蔵弾性率(G’s)が室温でのその値G’から大きく低下する温度Tsに関する。温度Ts、又はこれよりも高い温度では、粉体の焼結スライスの貯藏弾性率G’sは十分低く、そのため、スライスを「カール」させない。・・・(中略)・・・・
高温のスライスが埋まった部品ベッドに粉体が供給ベッドから輸送され、スライスの高温の上面と新たに拡げた粉体との間の界面の温度Tiが、新たに拡げた粉体の温度をTs以上に上昇させる程高い場合には、この粉体は、高温のスライスにくっついてしまい、高温のスライス上に塗り付けられるため、高温のスライス上で転動によって分配することができない。スライスの温度が高過ぎるのである。
供給ベッド内の粉体の温度が低過ぎる場合、即ち非常に低いため、高温の埋まったスライスの表面の平衡温度が新たに拡げた粉体の温度をTs以下にする場合には、スライスはカールする。
スライスは、上に拡げた粉体が界面で平衡温度に達っする場合及びこの平衡温度がTs又はそれ以上である場合、カールしない。界面での正確な温度Tiは計測が困難であるが、互いに凝集するように焼結された連続スライスを形成するため、粉体の界面での温度は、Ts以上であるが、粉体の「粘着点」即ち「ケーキング温度」Tc以下でなければならない。ケーキング温度では、粉体それ自体は流動しない。」(9ページ末行~11ページ19行)
オ 「更に、明らかなように、2段分布における小径粒子の数が多くなればばる程(合議体注:誤記であり、正しくは「なればなる程」と認められる。)、部品が緻密になる。目的は、ほぼ完全に緻密な部品を提供することであるから、理論によれば、使用する粒子を全て小径粒子にし、これらの粒子をできるだけ小さくするのがよい。
しかしながら、このような均等な小径粒子からなるマスは、自由流動性がない。これを自由に流動させるためには、微細な食卓塩が入った容器内に米粒を散在させるのとほぼ同様の方法で大径粒子をマスに混入しなければならない。従って、調製粉体は、比較的非常に大径の粒子と比較的非常に小径の粒子とを、最も望ましい焼結性粉体についての所望の2段粒径分布で混合した混合物である。
以下に説明する2段分布における大きさの区分及び大径粒子の数に対する小径粒子の数の比は、両方とも、選択的レーザー焼結の必要条件によって決まる。
・・・(中略)・・・
更に、約1μm乃至180μmの適切な粒径範囲のレーザー焼結性粉体は、本発明の一つの特徴によれば、(i)粒径範囲が狭く、粒径が2段分布をなし、(ii)「選択的レーザー焼結領域」を構成するという点で特定できるということがわかっている。
・・・(中略)・・・
一次粒子が適切な粒径範囲内にあり、180μm以上のロックが除去してある2段分布の粉体からなる予熱した「部品ベッド」の独特の性質は、ベッドがそれ程密に充填されていないため、ベッドを通して冷却ガスを流すことができるということである。この性質により、部品焼結作業中、部品ベッドを特定の温度分布に維持できる。この温度分布により、焼結部品をスライスで形成するとき、及び更に、焼結部品の形成後、部品が加熱した部品ベッド内にある状態で、歪みのない焼結部品を形成できる。「歪みがない」という用語は、部品の線形寸法が仕様から±250μm以上狂わず、平面から±250μm(20ミル)以上外れた表面がないということを意味する。
・・・(中略)・・・
本発明のこの特徴による粉体で使用した粒子の2段分布における粒径範囲は、米国特許第5,185,108号に記載されたワックス粉体の2段分布の範囲とは異なっている。全く予期しなかったことであるが、ほぼ完全に緻密な焼結部品の形成には、ベッド内の全ての粒子の数の少なくとも80%が1μm乃至53μmであり、180μm(80メッシュ)以上の粒子が部品ベッド内に実質的にない(即ち5%以下)であることが必要とされる。焼結部品の形成中、形成される部品の密度に関わらず、(i)Ts近くでの自由流動性を維持し、(ii)部品ベッド内の所定の温度分布を維持する上での少数の「大径粒子」の重要性は、部品上での望ましからぬ「焼結膨らみ」をなくすことであるということも知られていなかった。」(17ページ1行~19ページ末行)
カ 「発明の概要
・・・(中略)・・・
本発明の第1の特徴によれば、粒子が2段粒径分布をなしており且つ53μmよりも小さい粒子の数平均比が80%以上、即ち粉体内の全ての粒子の80%以上が53μmよりも小さいため、選択的レーザー焼結領域でレーザービームに露呈されるように粉体が部品ベッド上に自由に流動でき、所望の多孔性を備えたベッドを形成できる。これによって、(i)低圧の不活性冷却ガスを通してベッドが過熱しないようにでき、(ii)レーザービームから赤外線エネルギを所望の通りに吸収し、ほぼ完全に緻密なスライスを形成することができる。部品ベッドでは、流通する不活性冷却ガス流により、特定の温度分布が維持されるが、調製した選択的レーザー焼結粉体は、従来の選択的レーザー焼結プロトコルで焼結される。粉体は、多孔質であるがほぼ完全に緻密な焼結品を提供する。多孔質焼結品は、等方性を持つように型成形した同じ粉体でできた完全に緻密な物品の強度特性と予期せぬ程似た(実質的に同じ)強度特性を有する。
従って本発明の主な目的は、選択的レーザー焼結機でほぼ完全に緻密な部品を提供することである。この部品は、目的に適うように性質を調節した半晶質又は実質的に結晶質の焼結性合成樹脂粉体から形成される。」(21ページ19行~22ページ13行)
キ 「図面の簡単な説明
・・・(中略)・・・
第3図は、特定の調製粉体、即ちナイロン11の数分布を示すグラフである。」(25ページ8~17行)
ク 「発明の詳細な説明
・・・(中略)・・・
多孔質であるがほぼ完全に緻密な物品を焼結時に形成するように独特に調製された好ましい半晶質の又は実質的に結晶質の粉体の必要条件を以下に列挙する。
自由流動性又は非凝結性
粉体は、そのケーキング温度よりも2℃乃至20℃低い温度範囲で最大24時間に亘って貯蔵される場合、自由に流動でき且つ凝結しない。詳細には、粉体は、供給ベッド内での貯蔵温度よりも僅かに高い温度Tsの部品ベッド内に1時間乃至8時間保持された場合でも凝結しない。供給ベッドの温度は、粉体の温度Tsよりも低い。粉体が自由流動性の必要条件を満たすかどうかは、上述の時間-温度ASTM流れ試験によって確認される。
最大粒径及び真球度
粉体は、真球度が0.5以上である。また、粉体は、公称直径が180μm以上の粒子を本質的に含まない。
第3図を参照すると、この図には、ナイロン11の数平均粒径分布がグラフの形態で示してある。この粉体は、数平均分子量が75000乃至80000の範囲であり、分子量分布が1.2乃至1.7である。
ナイロン11は、真球度が0.5以上の比較的粗い粒子と広い分布を示す小径粒子との混合物を製造する方法で粉砕してある。次いで、混合物を篩にかけ、180μm以上の粒子を実質的に全て除去し、第3図に示す数分布と一致するように残りの粒子を分級する。この粒径分布は、レーザービームで粒径を計測するマルヴァーン器具で得られる。
選択的レーザー焼結領域における流動性
レーザーで加熱したスライスの表面上でのポリマー粉体の溶融粘性流れは、温度のバランスを維持することによって決定される。ポリマー鎖の相互拡散を良好にする(粒子間付着及び層間付着を提供するのに十分)ため、溶融粘度が低いのが望ましい。しかしながら、顕著な溶融が起こった場合には、形成されるべき部品の境界が溶融体でぼけるため、部品の鮮鋭度が失われる。焼結は、部品の所望の特徴を際立たせるための手段なしに行われる。
選択的レーザー焼結領域は、この工程(即ち工程1)で重要である。これは、供給ベッド及び部品ベッドの両ベッドの温度が高められているためである。カールが起こらないようにするため、部品ベッドの温度が粉体の軟化点にまで高められているため、選択的レーザー焼結領域が広くなり、粉体が提供する加工寛容度が大きくなる。調製粉体における性質のバランスを維持することによって、必須の粒子間融着を層内で行うことができ、更に、層間融着を行うことができる。これらは、両方とも、多孔質であるがほぼ完全に緻密な部品を製作する上で必要である。
第4図を参照すると、この図には、粉体が自由に流動できる理由、及び「大径粒子」が占める粒子ベッドの体積を示すため、数分布が第3図に示してある粒子と同じ粒子の体積分布曲線が示してある。小径粒子が大径粒子とともに転がり出ること、及びベッドを通して不活性ガスを下方に本質的に障害なく透過させる上で、主に、少数の大径粒子が関与しているということがわかる。
焼結膨らみ
完成した(焼結した)立体部品が部品ベッド内で形成され、未焼結粉体が焼結部品に対し部品ベッド内で機械的支持を与えるため、部品には、焼結部品の存在による部品ベッドの熱変化が加わる。連続した粉体スライスを断熱環境内で順次突然に加熱することにより、ベッドの温度を上昇させる。断熱環境は、焼結部品が、良好な断熱体である多孔質粉体のマスによって包囲されているために形成される。焼結部品の周囲温度が十分に低くないか或いは高過ぎる場合には、焼結部品はベッド内での熱応力によって歪む。更に、高温の焼結部品の表面の温度が高過ぎる場合には、完成した部品の表面上に「焼結膨らみ」として付着し且つ散乱した融着粒子の凝集塊が形成される。この焼結膨らみは取り除かれなければならず、これは、通常は、焼結膨らみを機械で除去することによってしか行うことができない。調製粉体を使用した場合に「焼結膨らみ」が形成された場合には、焼結膨らみは非常に僅かであるため、部品の表面に損傷を与えずに取り除くことができる。そのため、表面は、触り心地が滑らかである。大量の焼結膨らみがある場合には、製作した部品を廃棄する。
2段分布における大径粒子の利点は、本発明のこの特徴によれば、小さ過ぎる粒子が、部品ベッド上で転がって堆積しない場合に、詰め込まれ且つ不活性ガスの流れを妨げることが起こったとき、理解されよう。転がすことによってベッドの表面上に次々に層をなして堆積させることによって、「ふわふわ」のベッドが形成される。このベッドは、動的に安定しているが、静止しており、比較的多孔質である。粉体ベッドの密度は、転がすことによって堆積させたのでない場合には、代表的には、転がすことによって堆積させた粉体からなるベッドよりも少なくとも20%高い。」(26ページ5行~28ページ下から2行)
ケ 「【図3】
[図:0001423473000001.jpg]
」
(2)甲2に記載された発明
前記(1)ア~ケで摘記した甲2の記載から、甲2には、図3に示された粒径分布を有する粉体に係る発明、及び、当該粉体を用いた立体物製造方法の発明として、次の発明が記載されていると認められる。(なお、甲2では、図3に示された粒径分布を「数分布」又は「数平均粒径分布」と称しているが、「個数基準粒径分布」と呼称するのが一般的であるから、当該一般的な呼称を用いて、各発明を認定した。)
「多孔質であるがほぼ完全に緻密な物品を焼結時に形成するように調製された半晶質の又は実質的に結晶質の粉体であって、
数平均分子量が75000乃至80000の範囲であり、分子量分布が1.2乃至1.7であるナイロン11を、真球度が0.5以上の比較的粗い粒子と広い分布を示す小径粒子との混合物を製造する方法で粉砕し、次いで、得られた混合物を篩にかけ、180μm以上の粒子を実質的に全て除去し、下記【図3】に示された個数基準粒径分布と一致するように残りの粒子を分級するという方法によって製造され、
前記個数基準粒径分布は、レーザービームで粒径を計測するマルヴァーン器具により得られる、
粉体。
【図3】
[図:0001423473000002.jpg]
」(以下「甲2粉体発明」という。)
「以前に焼結したスライス上に、甲2粉体発明の粉体の層を堆積し、各層を焼結してスライスを形成するという工程を繰り返すことによって、立体物を製造する立体物製造方法であって、
スライスの高温の上面と新たに拡げた粉体との間の界面での平衡温度が、粉体の軟化点であるTS以上、粉体のケーキング温度であるTC以下になるよう設定された、
立体物製造方法。」(以下「甲2方法発明」という。)
第6 当合議体の判断
1 取消理由1(進歩性欠如)について
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
甲2粉体発明の「粉体」はナイロン11からなるから、樹脂粉末といえ、本件訂正発明1の「樹脂粉末」に相当する。
したがって、本件訂正発明1と甲2粉体発明は、
「樹脂粉末。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:
本件訂正発明1の樹脂粉末では、個数基準平均円相当径Mnの40%以下である個数基準円相当径を有する微粉の含有率が個数基準で30%以下であるのに対して、
甲2粉体発明の粉体では、そのような微粉の含有率が定かでない点。
相違点2:
本件訂正発明1の樹脂粉末は、柱体粒子であるのに対して、
甲2発明の粉体は、粉砕・分級によって得られるものであって、柱体粒子とはいえない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
(ア) 甲2粉体発明における「レーザービームで粒径を計測するマルヴァーン器具」とは、マルバーン・パナリティカル社のレーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置を指していることが明らかであって、図3に示された個数基準粒径分布は、個数基準の等体積球相当径の分布と解するのが相当である(マルバーン・パナリティカル社ホームページのレーザー回折・散乱法(LD)の記事(URL:https://www.malvernpanalytical.com/jp/products/technology/light-scattering/laser-diffraction)を参照。)。
そこで、甲2粉体発明の図3における累積%を示す曲線グラフを適当な粒径区間で区切って、各区間の粒径の中央値と各区間における累積%の増加値の積を全区間分集計し、当該集計値を100(%)で除算するという方法によって、個数基準平均等体積球相当径(以下「平均球相当径」という。)を概算すると、13μm程度と算出されるから、個数基準平均等体積球相当径の40%は5.2μm程度であり、甲2粉体発明の粉体全体に対する個数基準平均等体積球相当径が40%以下の微粉の含有率は、図3の曲線グラフより個数基準で40%程度と推察される。
ここで、甲2発明における個数基準平均円相当径(以下「平均円相当径」という。)の40%以下の微粉の個数基準での含有率(以下「個数含有率」という。)を求めることはきわめて困難であるものの、仮に、平均球相当径が40%以下の微粉の個数含有率と同程度であるとすると、その値は40%程度であって、相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備していないことになるし、仮に、平均球相当径の40%以下の微粉の個数含有率と大きく異なるとすると、甲2粉体発明において、平均円相当径が平均球相当径に対してどの程度ずれるのかを推認できるような技術常識が存在するわけではないから、甲2粉体発明における平均円相当径が40%以下の微粉の個数含有率は不明であるといわざるを得ず、甲2粉体発明が相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備していると認めることはできない。
(イ) また、甲2粉体発明は、小径粒子の数が多くなるほど、緻密な部品を製造できるが、小径粒子が多くなりすぎると自由流動性が乏しくなることから、大径の粒子と小径の粒子とを混合して、図3の粒度分布を有する粉体とすることによって、ベッドを通して冷却ガスを流すことができ、部品の焼結作業中、部品ベッドを特定の温度分布に維持できて、歪みのない焼結部品を形成できるようにしたものであるところ(前記第5 1(1)オを参照)、図3の粒度分布を無視して、平均円相当径が40%以下の微粉の個数含有率が30%以下となるような粒度分布を採用することには、阻害要因が存在するから、たとえ、甲3や甲4にどのような技術的事項が記載されているとしても、甲2粉体発明において、相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではないといわざるを得ない。
ウ 小括
前記イで述べたとおり、甲2粉体発明において、相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではないから、相違点2について判断するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2粉体発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件訂正発明2~11について
本件訂正後の請求項2~11は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって、本件訂正発明2~11は、本件訂正発明1の発明特定事項を全て具備し、これを限定したものに該当するから、本件訂正発明1が、甲2粉体発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件訂正発明2~11も、同様の理由で、甲2粉体発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件訂正発明12について
本件訂正発明12と甲2方法発明を対比すると、少なくとも、両者は、相違点1及び2と同様の点で相違するから、本件訂正発明1と同様の理由で、本件訂正発明12は、甲2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)取消理由1(進歩性欠如)の判断のまとめ
取消理由1(進歩性欠如)によって、本件訂正発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(明確性要件違反)について
取消理由2(明確性要件違反)の具体的内容は、本件特許の請求項1、12に記載された「微粉の含有率が30%以下」とは、個数を基準とする30%以下なのか、体積を基準とする30%以下なのか、それ以外のパラメータを基準とする30%以下なのか、特定できないというものであるが、当該不備は、本件訂正によって解消された。
よって、取消理由2(明確性要件違反)によって、本件訂正発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、概略、次のような特許異議申立理由を主張している。
申立理由1(新規性・進歩性欠如):
本件特許の請求項1、2、8~10に係る発明は、基礎出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し、その特許は同項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1~5、7~10、12に係る発明は、基礎出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、基礎出願の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、当該請求項1~5、7~10、12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
申立理由2(サポート要件違反):
本件特許の請求項1~12に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
申立理由1に関して、申立人が提出した引用例は、次のとおりである。
甲1(主引用例):J.Wulfhorst,外4名,“SUBSTITUTION OF POWDERS BY ULTRA SHORT CUT FIBERS FOR SELECTIVE LASER SINTERING(SLS)”,AUTEX 2011 confernce“150 Years of Innovation and Research in Textile Science”,2011年6月,p13-p18
甲3、甲4:取消理由1で引用された甲3、甲4と同じ
甲5:特開2007-277546号公報
甲6:特表2007-537064号公報
2 申立理由1(新規性・進歩性欠如)について
(1)新規性欠如について
申立人は、特許異議申立書(40ページ11~19行)において、甲1の図12に示された粒度分布を有するナイロン66の粉末を甲第1発明とした上で、「ファイバーの長さは粒子の最大円相当径に相当し、分布は所定の粒子長に基づく数分布(%)であることがわかる。また、図12において、累積平均粒子長(50%相当の累積粒子長)は、本件特許発明1における「個数基準平均円相当径Mn」に相当し、約150μmであることが読み取れる。さらに、累積平均粒子長の40%以下に相当する累積粒子長を算出すると約60μmであり、60μmまでの粒子長を有する粒子の割合は約20%であることが読み取れる。」などと、主張する。
しかしながら、甲1には、図12が円相当径の個数基準での分布を示すことは、記載も示唆もされていないから、甲第1発明が、「個数基準平均円相当径Mnの40%以下である個数基準円相当径を有する微粉の含有率が30%以下」であるとの構成を有しているとは認められない。
また、仮に、甲1の図12が円相当径の個数基準での分布を示しているとしてみても、本件特許明細書等の記載からみて、本件訂正発明1の「個数基準平均円相当径」とは、各粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径の個数基準での平均値を意味すると解するのが相当であって、「個数基準平均円相当径」の値と50%相当の累積粒子長(いわゆるメディアン径)の値は一般に一致しないから、申立人の前記主張は、50%相当の累積粒子長が個数基準平均円相当径に相当するとしている点でそもそも失当である。
よって、本件訂正発明1、2、8~10は、甲第1発明ではない。
(2)進歩性欠如について
本件訂正発明1~5、7~10、12と甲第1発明は、少なくとも、個数基準平均円相当径Mnの40%以下である個数基準円相当径を有する微粉の個数基準での含有率に関して、本件訂正発明1~5、7~10、12では、30%以下であるのに対して、甲第1発明では、定かでない点で相違するところ、申立人が提出した他の証拠を検討してみても、当該相違点に係る本件訂正発明1~5、7~10、12の発明特定事項に相当する構成が開示されているものは見当たらないから、甲第1発明において、前記相違点に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することは、当業者にとって容易に想到し得たことではない。
よって、本件訂正発明1~5、7~10、12は、甲第1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由1(新規性・進歩性欠如)のまとめ
申立人が主張する申立理由1(新規性・進歩性欠如)によって、本件訂正発明1~5、7~10、12に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由2(サポート要件違反)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、その記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
これを本件についてみると、本件特許明細書等の記載からみて、本件訂正発明1~12が解決しようとする課題は、粉末の舞い上がりや、装置内への微粉付着及び堆積が少ない樹脂粉末を提供することにあると認められる。
これに対して、本件訂正発明1~12は、いずれも、個数基準平均円相当径Mnの40%以下である個数基準円相当径を有する微粉の個数基準での含有率が30%以下であるとの発明特定事項を有するところ、微粉の含有率が少なければ、粉末の舞い上がりや、装置内への微粉付着及び堆積を少なくできることは、明らかであるから、本件訂正発明1~12は、サポート要件に違反しない。
申立人は、特許異議申立書(52ページ2行~53ページ3行)において、本件特許明細書に実施例として、課題を解決しうることが実証されているのは、特定の樹脂を使用した場合のみであり、他の樹脂を使用した場合においても、課題を解決できることは示されておらず、また、微粉の含有率が0%である場合に、課題が解決できることは示されていないから、サポート要件に違反するなどと主張するが、たとえ実施例にて確かめられていない樹脂を用いた場合でも、また、微粉の含有率を0%とした場合でも、微粉の含有率が少なければ、粉末の舞い上がりや、装置内への微粉付着及び堆積を少なくできることは、当業者が容易に理解できることであるから、当該申立人の主張は採用できない。
よって、申立人が主張する申立理由2(サポート要件違反)によって、本件訂正発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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