特許拒絶査定不服審判
2021-012907
インクジェットヘッドおよびインクジェット装置
- 審判番号
- 2021-012907
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-020412外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月27日
- 審決日
- 2022年11月16日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人光陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B41J) / P18 .575-Z (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016- 20412「インクジェットヘッドおよびインクジェット装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-136773〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月5日の出願であって、令和1年10月23日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年5月14日付けで拒絶理由(最後)が通知され、これに対して、同年7月14日に意見書が提出され、同年12月14日付けで拒絶理由(最後)が通知され、これに対して、令和3年2月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月17日付けで同年2月9日に提出された手続補正書でした補正が却下されると共に拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたのに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和3年9月27日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年9月27日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするとともに、合わせて明細書の記載について補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和1年12月24日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至8を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至7へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に充填されたインクの圧力を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータが駆動されることにより前記圧力室に充填された前記インクを吐出するノズルと、
前記圧力室と前記ノズルとを連結する連絡流路と、を備え、
前記連絡流路を有する構造体を前記アクチュエータに接着することにより前記圧力室と前記連絡流路とが接続され、
前記連絡流路は、前記圧力室側の端部が他の部分に比べて広くなっているインクジェットヘッドであって、
前記インクジェットヘッドの幅方向において、前記連絡流路の前記圧力室側端部の幅は前記圧力室の幅よりも広い、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室は、インクジェットヘッドの厚み方向である第1の方向の長さが前記第1の方向に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第2の方向の長さよりも長くなっており、
前記連絡流路は、前記圧力室側の前記端部の輪郭が前記第2の方向の幅よりも前記第1の方向の幅が広い長孔である、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室、前記連絡流路および前記ノズルの組が、前記第2の方向に並ぶように配置されている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記連絡流路は、前記圧力室側の前記端部が前記圧力室に向かうにつれて広くなっている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記構造体は、複数の板状体を積み重ねることにより構成され、
前記各板状体には前記連絡流路の一部を構成する孔が形成され、
前記圧力室側から少なくとも1つ目の前記板状体の前記孔がその他の前記板状体の前記孔よりも広くなっている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室側から複数番目までの前記板状体の前記孔が前記圧力室に向かうにつれて広くなっている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記端部以外の前記連絡流路は、円形且つ同じ広さであり、その中心が前記ノズルの中心に一致している、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給部と、を備えることを特徴とするインクジェット装置。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に充填されたインクの圧力を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータが駆動されることにより前記圧力室に充填された前記インクを吐出するノズルと、
前記圧力室と前記ノズルとを連結する連絡流路と、を備え、
前記連絡流路を有する構造体を前記アクチュエータに接着することにより前記圧力室と前記連絡流路とが接続され、
前記連絡流路は、前記圧力室側の端部が他の部分に比べて広くなっているインクジェットヘッドであって、
前記インクジェットヘッドの幅方向において、前記連絡流路の前記圧力室側端部の幅は前記圧力室の幅よりも広くなっており、
前記圧力室は、インクジェットヘッドの厚み方向である第1の方向の長さが前記第1の方向に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第2の方向の長さよりも長くなっており、
前記連絡流路は、前記圧力室側の前記端部の輪郭が前記第2の方向の幅よりも前記第1の方向の幅が広い長円形の長孔である、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室、前記連絡流路および前記ノズルの組が、前記第2の方向に並ぶように配置されている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記連絡流路は、前記圧力室側の前記端部が前記圧力室に向かうにつれて広くなっている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記構造体は、複数の板状体を積み重ねることにより構成され、
前記各板状体には前記連絡流路の一部を構成する孔が形成され、
前記圧力室側から少なくとも1つ目の前記板状体の前記孔がその他の前記板状体の前記孔よりも広くなっている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室側から複数番目までの前記板状体の前記孔が前記圧力室に向かうにつれて広くなっている、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記端部以外の前記連絡流路は、円形且つ同じ広さであり、その中心が前記ノズルの中心に一致している、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給部と、を備える
ことを特徴とするインクジェット装置。」
2 補正の適否について
(1)補正事項1
本件補正により、本件補正前の請求項1を削除する(以下「補正事項1」という。)。
本件補正前の請求項1の削除に伴い、本件補正前の請求項2乃至8の項番を順次1ずつ繰り上げる。
そうすると、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とするものに該当する。
(2)補正事項2
本件補正により、本件補正前の請求項2の「インクジェット」の発明特定事項である「長孔」について、「長円形の」と補正する(以下「補正事項2」という。)。
補正事項2により、「長孔」を「長円形の長孔」と限定するものである。
そして、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、補正事項2は、本願の願書の最初に添付した明細書の段落【0036】の「板状体411、412には、それぞれ、連絡流路54を形成するための長孔411a、412aが形成されている。長孔411a、412aは、X軸方向が長手方向である。平面視において、長孔411a、412aは、それぞれ、X軸方向に長い長円形の輪郭を有する。より詳しくは、長孔411aは、互いに向き合う2つの半円弧の端をそれぞれ直線で繋いだ輪郭を有する。長孔412aは、長孔411aと同様の2つの半円弧をそれぞれ長孔411aよりも短い直線で繋いだ輪郭を有する。」の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明(令和3年9月27日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】乃至【請求項7】(以下、それぞれ「本件補正発明1」乃至「本件補正発明7」という。))における本件補正発明1が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正発明1は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用例
ア 引用例1
本願の出願前に頒布された公開公報である特開2014-113796号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを複数備えるノズルプレートと、
底面に第1の開口を有し、第1方向に複数併設した圧力室と、該圧力室に隣接した圧電素子と、を有する流路形成基板と、
前記ノズルプレートと前記流路形成基板との間に位置し、前記各ノズルと前記圧力室の前記第1の開口とを連通させる連通孔を備えた連通板と、が接合されて構成される液体噴射ヘッドであって、
前記流路形成基板の前記第1の開口は、前記第1方向と交差する第2方向が長手方向となり、インク供給側から前記連通孔側にかけて形成されており、前記長手方向にそって、前記圧力室の前記第1方向の内幅は、前記連通孔に近い側が、前記インク供給側よりも狭くなる狭窄部を有し、
前記連通板の前記連通孔は、貫通方向に伸びた少なくとも3つ以上の稜線を有して形成され、 前記連通板は、前記流路形成基板側の前記稜線の端部が、前記狭窄部を区画する前記流路形成基板の該連通板側の面で塞がれるよう、前記流路形成基板と接合されている、液体噴射ヘッド。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドに関し、特に、液体が流れる流路を複数の基板を接合して構成する液体噴射ヘッドに関する。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流路内部の接着剤を、溶剤を用いて洗浄する場合、接着剤を完全に除去することが難しかった。また、流路内部の壁面に接着剤の這い上がりを防止する形状を設ける方法も考えられるが、使用する接着剤の粘性や塗布量に応じて形状の寸法を厳格に設計する必要がある。しかしながら、寸法を厳格に設計することは、流路の設計の自由度を制約する場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、その目的の1つとして、ノズルの詰まりに起因する吐出不良を低減することができる液体噴射ヘッド、液体噴射装置を提供する。」
(エ)「【0019】
本実施形態に示す液体噴射ヘッド1は、インク等の液体を吐出する液体噴射装置の一部として用いられる。図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、ノズルプレート25、連通板20、流路形成基板10、封止基板30を、備える。なお、図では、流路形成基板10の構造が理解され易いよう、流路形成基板10を2つに分けて示している。
【0020】
この液体噴射ヘッド1では、少なくとも、流路形成基板10と、連通板20と、ノズルプレート25とは接着剤を用いて接合される。そして、この接着剤を用いた各基板の接合により、流路形成基板10の内部に形成された圧力室12と、連通板20に形成された連通孔21と、ノズルプレート25に形成されたノズル26とが連通し、インクの流路が構成される。
以下、この実施形態中では、圧力室12が併設する方向を第1方向D1とし、この第1の方向と直交する方向を第2方向D2とする。そして、連通孔21が延びる方向を第3方向D3とする。
【0021】
流路形成基板10は、例えば、面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1~2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、複数の圧力室12がその幅方向(第1方向D1)に併設されている。また、流路形成基板10の圧力室12の第1方向D1と交差する第2方向D2外側の領域にはリザーバ部13が形成され、リザーバ部13と各圧力室12とが、圧力室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、圧力室12、リザーバ部13及びインク供給路14は、流路形成基板10を厚さ方向に貫通して設けられている。また、インク供給路14は、圧力室12よりも狭い幅で形成されており、リザーバ部13から圧力室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0022】
図2(a)は、流路形成基板10の内部を示す斜視図である。圧力室12の底面側開口(以下、第1の開口121とも記載する)は、第1方向D1と交差する第2方向D2に延びるよう流路形成基板10に形成されている。即ち、第1の開口121は、第2方向D2が長手方向となり、リザーバ部13(インク供給)側から連通孔21側にかけて形成されている。そのため、第1の開口121の図中左側の端部の位置は、連通孔21の直上付近まで位置する。また、第1の開口121の連通孔21の上部に位置する箇所には、第1方向D1の内幅が後述する第2の開口21eの第1方向D1の幅に比べて狭くなる(図中w1)狭窄部122が形成されている。本実施形態では、第1の開口121の端部側の内幅w1を狭くすることで狭窄部122を構成しているが、第1の開口121の第1方向D1の内幅の全てが、連通孔21の第1方向D1の内幅と比べて狭いものであってもよい。
【0023】
図1、図2(b)に示すように、流路形成基板10の底面側には、連通板20が接着剤を用いて接合されている。この連通板20は、該連通板20を貫通する連通孔21が第1方向D1に併設されている。また、連通板20には、流路形成基板10のリザーバ部13に対向する領域に、第3方向D3に貫通する連通部22が形成され、この連通部22は流路形成基板10のリザーバ部13と連通している。そして、これらリザーバ部13と連通部22とが、各圧力室12の共通のインク室であるリザーバ100を構成している。なお、この連通板20の材料は、特に限定されないが、本実施形態では、シリコン単結晶基板を用いた。
【0024】
図3、図4は、連通孔21の構成を示す図である。
図3(a)に示すように、連通孔21は、貫通方向(第3方向D3)に伸びた4つの壁面で覆われた矩形状の孔により構成される。また、壁面の交差部には、4つの稜線21a~21dが形成されている。この連通孔21は連通板20を貫通するため、連通板20のそれぞれの面には、第2の開口21eと第3の開口21fとが位置している。ここで、第2の開口21eは、連通板20の流路形成基板10と接合される側の面に位置する開口であり、流路形成基板10の第1の開口121と連通する。また、第3の開口21fは、連通板20のノズルプレート25と接合される側の面に位置する開口であり、ノズルプレート25のノズル26と連通する。本実施形態では、連通孔21の第3方向D3の長さを300μmとした。
【0025】
連通孔21の第2の開口21eを含む流路には、第1方向D1の内幅がw2となる広流路部211が設けられている。そして、広流路部211の直下には第1方向D1の内幅w3が広流路部211の第1方向の内幅w2と比べて狭くなる狭流路部212が設けられている。本実施形態では、連通孔21の第2の開口21eから第3方向D3に100μmの長さにおいて、広流路部211が設けられ、それ以外の部位で狭流路部212が設けれている。そのため、図4に示すように、連通板20の内部を第2方向D2から見た場合、広流路部211に該当する部位において各連通孔21を区画する連通板20の壁の厚みが狭くなり、狭流路部212に該当する部位において各連通孔21を区画する連通板20の壁の厚みが広くなる。即ち、連通孔21を区画する第1方向D1の壁の厚みが第3方向D3において変化することとなる。
【0026】
また、連通孔21の第3の開口21f側には、第2方向D2の内幅w4が連通孔21の他の部位の第2方向D2の内幅に比べて広くなる抵抗調整部213が設けられている。本実施形態では、抵抗調整部213は、連通孔21の第3の開口21fから第3方向D3に100μmの長さにおいて設けられている。
【0027】
説明を省略するが、連通板20に設けられた全ての連通孔21において図3、4に示す同様の形状となっている。
また、上記した連通孔21の形成方法としては、連通板20に対してマスクパターンを用いたウエットエッチングを用いて作成するが、これに限定されない。
【0028】
図3(b)は、連通板20の連通孔21と流路形成基板10の第1の開口121とが当接する境界を、流路形成基板10側から見た図である。連通板20の連通孔21と流路形成基板10の第1の開口121とが当接する境界において、連通孔21における第2の開口21e側の4つの稜線21a~21dの端部が、それぞれ流路形成基板10の狭窄部122を区画する底面101によって塞がれている。即ち、狭窄部122の第1方向D1の内幅w1が第2の開口21eの内幅w2に比べて狭くなっているため、連通板20と流路形成基板10とを狭窄部122と第2の開口21eを連通させるよう接合すると、稜線21a~21dの端部が第1の開口121の外周付近(底面101)と当接するからである。
【0029】
図1、図2に戻り、この連通板20の流路形成基板10と接合されない側の面には、ノズルプレート25が接着剤を用いて接合されている。このノズルプレート25には、各圧力室12に対応するノズル26が穿設されている。なお、ノズルプレート25は、厚さが例えば、0.05~1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5~4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。
【0030】
そして、流路形成基板10上には、各圧力室12に対応する圧電素子3が形成されている。この圧電素子3は、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜とが、積層形成されて、構成されている。一般的には、圧電素子3の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層を圧力室12毎にパターニングして構成する。そのため、圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子3と当該圧電素子3の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。
【0031】
また、このような各圧電素子3を構成する圧電素子3上には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されており、このリード電極90は、圧力室12に対向する領域からその外側の領域まで延設され、その先端部が後述する封止基板30の貫通孔内に露出されている。
また、流路形成基板10のリザーバ部13に対応する領域には、コンプライアンス部材33が設けられて、リザーバ部13の一方の開口はこのコンプライアンス部材33によって封止されている。
【0032】
なお、流路形成基板10の圧電素子3側の面には、封止基板30が、接着剤を用いて接合されている。この封止基板30は、圧電素子3に対向する領域に、圧電素子3の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部31を有する。また、この封止基板30には、リザーバ部13に対向する領域に、コンプライアンス部材33の変形を妨げない程度の深さを有する凹部32が設けられている。このような封止基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミック材料、金属、プラスチック等で形成されていることが好ましく、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、シリコン単結晶基板を用いて形成することがより好ましい。
【0033】
封止基板30上には、例えば、二酸化シリコンからなる絶縁膜を介して例えば、金(Au)の配線膜からなる配線パターンが形成され、この配線パターン上に圧電素子3を駆動するための駆動ICが実装されている。」
(オ)【図1】
[図:0001393619000001.jpg]
(カ)【図2】
[図:0001393619000002.jpg]
(キ)【図3】
[図:0001393619000003.jpg]
(ク)【図1】より、圧力室12は、液体噴射ヘッド1の厚み方向である第3方向D3の長さが前記第3方向D3に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第1方向D1の長さよりも長くなっていることが看取できる。
(ケ)【図2】及び【図3】より、連通孔21の第2の開口21eの第2方向D2の幅は、圧力室12の底面側開口である第1の開口121の連通孔21の上部に位置する狭窄部122の第2方向D2の幅よりも長いこと、及び連通孔21の広流路部211の第2方向D2の幅は、広流路部211の直下の狭流路部212の第2方向D2の幅よりも長いことが看取できる。
そうすると、上記記載事項(ア)乃至(キ)及び認定事項(ク)及び(ケ)より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ノズルプレート25、連通板20、流路形成基板10、封止基板30を、備え、インク等の液体を吐出する液体噴射装置の一部として用いられる液体噴射ヘッド1であって、
流路形成基板10と、連通板20と、ノズルプレート25とは接着剤を用いて接合され、
流路形成基板10の内部に形成された圧力室12と、連通板20に形成された連通孔21と、ノズルプレート25に形成されたノズル26とが連通し、インクの流路が構成され、
圧力室12は、液体噴射ヘッド1の厚み方向である第3方向D3の長さが前記第3方向D3に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第1方向D1の長さよりも長くなっており、
流路形成基板10上には、圧力室12に対応して圧電素子3が形成され、
圧力室12の底面側開口である第1の開口121の連通孔21の上部に位置する箇所には、第1方向D1の内幅(w1)が第2の開口21eの第1方向D1の幅(w2)に比べて狭くなる狭窄部122が形成され、
連通孔21の第2の開口21eの第2方向D2の幅は、圧力室12の底面側開口である第1の開口121の連通孔21の上部に位置する狭窄部122の第2方向D2の幅よりも長く、連通孔21の広流路部211の第2方向D2の幅は、広流路部211の直下の狭流路部212の第2方向D2の幅よりも長い、液体噴射ヘッド1。」
イ 引用例2
本願の出願前に頒布された公開公報である特開2014-156081号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、流路ユニットおよび流路ユニットの製造方法に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の流路ユニットを構成する複数の部材を互いに位置決めする際は、連通すべき各種流路が精度良く繋がるように位置決めする必要がある。しかしながら、各部材における圧力室の形成間隔やその他の流路の形成間隔等が必ずしも一致しない場合があり、そのような場合、複数の部材間の位置決めが非常に難しいという課題があった。特に、所定の素材を焼成(焼結)して各部材(あるいは各部材の一部)を生成する場合、焼成による素材の収縮率がばらつくことに起因して、上記形成間隔もばらつくことがあった。このような場合、各種流路が精度良く連通して正常に機能する流路ユニットを実現することが難しかった。また、上記文献1は、圧力室と圧電素子とを相対的に精度良く配置することを可能にするが、各種流路の相対的な配置精度を向上させる点においては課題を残していた。
【0006】
本発明は少なくとも上記課題を解決するためになされたものであり、各種流路が互いに正確に連通した流路ユニット、およびそのような流路ユニットを実現する製造方法を提供する。」
(ウ)「【0026】
図2は、液体噴射ヘッド10の断面であって、第二方向D2a、D2bに垂直(第一方向D1a、D1bに平行)な面を例示している。当該断面は、ノズル61を通過する断面である。図2に示すように、圧力室35は、連通孔36、第一連通孔41および第二連通孔51を介して、ノズル61に連通している。図2では、連通孔36の、ノズル61側(封止プレート40側)に連通する開口36a(第一開口)も示している。また、振動板20の流路プレート30と接する面と逆側の面には、圧電素子80が圧力室35に対応する位置に接合している。圧電素子80は、第一電極82、圧電体層81および第二電極83が順に積層されて構成される。例えば、第一電極82は、複数の圧電素子80に共通して設けられた(複数の圧電素子80が共有する)共通電極である。一方、第二電極83は、圧力室35に対応する圧電素子80毎に設けられた個別電極である。」
(エ)「【0030】
本実施形態の特徴の一つは、図4の上段に例示したような第一流路基板11の第二方向D2a(圧力室35の並び方向)における間隔P1と、第二流路基板13の第二方向D2b(第一流路の並び方向)における間隔P2とが異なる場合であっても、適切な流路を実現することにある。
本実施形態では、各プレートを製造するプレート製造工程と、出来上がったプレートを積層して互いの位置を調整する位置調整工程と、位置の調整ができたプレートを接合する接合工程とを含む工程を行うことによって、流路ユニットを含む液体噴射ヘッド10を製造している。 図4の下段は、流路ユニットを含む液体噴射ヘッド10の製造方法の一部工程である位置調整工程を、図4の上段と同様の視点により例示している。位置調整工程では、第一流路基板11と第二流路基板13との少なくとも一方の位置を変化させて第二方向D2aと第二方向D2bとを交差させることにより、第一流路を連通孔36と一対一で位置決めし、第一流路が連通孔36の開口36a内に開口した状態とする。図4の下段では、図4の上段の状態から第一流路基板11を回転させることにより、各連通孔36の内側に第一流路が開口するように調整した例を示している。
【0031】
図3、4から判るように、本実施形態では、連通孔36の開口36aの形状を第一方向D1aの幅が第二方向D2aの幅よりも長い長穴状としている。そのため、図4の下段に示すように第一流路基板11と第二流路基板13との相対的な傾きをある程度変化させても(上記調整を行っても)、流路31毎の連通孔36の開口36aが第一流路の開口を内側に含んだ状態を確保し易い。なお、位置調整工程における自由度(ノズル列62の両端のノズル61が各々対応する連通孔36の開口36a内に収まった状態を維持しつつ、第二方向D2aと第二方向D2bとが交差する角度が取り得る最大値)は、主に、開口36aの長さ(第一方向D1aにおける開口36aの幅)に依存する。つまり、開口36aが長い程、第二方向D2aと第二方向D2bとが交差する角度を大きくしてもより多くの開口36aにおいて各々第一流路の開口を収めることができ、間隔P1≠間隔P2である場合に、より長いノズル列62に関して圧力室35との連通を図ることができる。また、図1、3、4から判るように、第二流路としての共通供給孔42は、第二方向D2bに沿って連通する長穴である。そのため、間隔P1が間隔P2と同一であるか否かにかかわらず、また、位置調整工程が行われた場合であっても、流路31毎の供給孔32が共通供給孔42と連通した状態を確保し易い。ただし、間隔P1と間隔P2との差が大きすぎる場合には、連通した状態を確保できなくなるため、プレート製造工程において予め間隔P1や間隔P2に基づいて間隔P1と間隔P2との差が大きすぎないですむ良品と差が大きすぎることになる不良品の判別を行っている。なお、この判別では、第一流路基板11と第二流路基板13との相対的な傾きを変化させない場合に比べると、良品と判断できる許容範囲を広くできる。」
(オ)【図3】
[図:0001393619000004.jpg]
そうすると、上記記載事項(ア)乃至(オ)より、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「圧力室35、連通孔36、第一連通孔41および第二連通孔51を介して、ノズル61に連通する液体噴射ヘッド10であって、
連通孔36の、ノズル61側(封止プレート40側)は開口36a(第一開口)で連通し、
連通孔36の開口36aの形状を第一方向D1aの幅が第二方向D2aの幅よりも長い長穴状としている、
液体噴射ヘッド10。」
(3)当審の判断
ア 本件補正発明と引用発明1との対比
(ア)後者の「液体噴射ヘッド1」、「圧力室12」、「『圧力室12に対応して』形成された『圧電素子3』」、「ノズルプレート25に形成されたノズル26」、「連通板20に形成された連通孔21」及び「連通孔21の広流路部211」は、それぞれ、前者の「インクジェットヘッド」、「圧力室」、「アクチュエータ」、「ノズル」、「連絡流路」及び「『連絡流路』の『圧力室側の端部』」に相当する。
(イ)後者の「圧力室12」は、流路形成基板10の内部に形成され、インクの流路を構成するものであるから、「インクが充填される」ものであることは明らかである。してみると、後者の「『圧力室12に対応して』形成された『圧電素子3』」は「圧力室に充填されたインクの圧力を変化させる」ものといえる。
(ウ)後者の「液体噴射ヘッド1」は、圧力室12と、連通板20に形成された連通孔21と、ノズルプレート25に形成されたノズル26とが連通し、インクの流路が構成され、上記(イ)より、「『圧力室12に対応して』形成された『圧電素子3』」は「圧力室に充填されたインクの圧力を変化させる」ものといえるのであるから、後者の「ノズルプレート25に形成されたノズル26」は、「アクチュエータが駆動されることにより圧力室に充填されたインクを吐出する」ものといえる。
(エ)後者の「液体噴射ヘッド1」は、圧力室12と、連通板20に形成された連通孔21と、ノズルプレート25に形成されたノズル26とが連通し、インクの流路が構成されるのであるから、後者の、「連通板20に形成された連通孔21」は、「圧力室とノズルとを連結する」ものといえる。
(オ)後者の「液体噴射ヘッド1」は、圧力室12と、連通板20に形成された連通孔21と、ノズルプレート25に形成されたノズル26とが連通し、インクの流路が構成され、圧電素子3が形成され内部に圧力室12が形成された流路形成基板10と、連通孔21が形成された連通板20と、ノズルプレート25とが、接着剤を用いて接合されているから、前者の「インクジェットヘッド」と後者の「液体噴射ヘッド1」とは、「連絡流路を有する構造体をアクチュエータに接着することにより圧力室と連絡流路とが接続され」ているものとの概念で一致する。
(カ)後者の「液体噴射ヘッド1」は、連通孔21の広流路部211の第2方向D2の幅は、広流路部211の直下の狭流路部212の第2方向D2の幅よりも長いから、前者の「インクジェットヘッド」と後者の「液体噴射ヘッド1」とは、「前記連絡流路は、前記圧力室側の端部が他の部分に比べて広くなっている」ものとの概念で一致する。
(キ)後者の「液体噴射ヘッド1」は、連通孔21の第2の開口21eの第2方向D2の幅は、圧力室12の底面側開口である第1の開口121の連通孔21の上部に位置する狭窄部122の第2方向D2の幅よりも長いから、前者の「インクジェットヘッド」と後者の「液体噴射ヘッド1」とは、「インクジェットヘッドの幅方向において、連絡流路の圧力室側端部の幅は圧力室の幅よりも広くなって」いるものとの概念で一致する。
(ク)後者の「液体噴射ヘッド1」は、圧力室12は、液体噴射ヘッド1の厚み方向である第3方向D3の長さが前記第3方向D3に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第1方向D1の長さよりも長くなっているから、前者の「インクジェットヘッド」と後者の「液体噴射ヘッド1」とは、「圧力室は、インクジェットヘッドの厚み方向である第1の方向の長さが前記第1の方向に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第2の方向の長さよりも長くなって」いるものとの概念で一致する。
イ 本件補正発明と引用発明1の一致点と相違点について
上記アの対比を踏まえると、本件補正発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、相違点において相違する。
[一致点]
「インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に充填されたインクの圧力を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータが駆動されることにより前記圧力室に充填された前記インクを吐出するノズルと、
前記圧力室と前記ノズルとを連結する連絡流路と、を備え、
前記連絡流路を有する構造体を前記アクチュエータに接着することにより前記圧力室と前記連絡流路とが接続され、
前記連絡流路は、前記圧力室側の端部が他の部分に比べて広くなっているインクジェットヘッドであって、
前記インクジェットヘッドの幅方向において、前記連絡流路の前記圧力室側端部の幅は前記圧力室の幅よりも広くなっており、
前記圧力室は、インクジェットヘッドの厚み方向である第1の方向の長さが前記第1の方向に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第2の方向の長さよりも長くなっている、
インクジェットヘッド。」
[相違点]
本件補正発明の「インクジェットヘッド」が、「連絡流路は、圧力室側の端部の輪郭が第2の方向の幅よりも第1の方向の幅が広い長円形の長孔である」ものであるのに対し、引用発明1の「液体噴射ヘッド1」は、第1方向D1の内幅(w1)と第2方向D2の幅との長短比較は不明であるとともに、連通孔21の第2の開口21eは矩形である点。
ウ 上記相違点についての検討
(ア)引用発明2の「連通孔36」は、本件補正発明の「連絡流路」に相当する。
(イ)引用発明2の「連通孔36」の開口36aの形状を第一方向D1aの幅が第二方向D2aの幅よりも長い長穴状であるから、本件補正発明の「連絡流路」と引用発明2の「連通孔36」とは、「圧力室側の端部の輪郭が第2の方向の幅よりも第1の方向の幅が広い長円形の長孔である」点で一致する。
(ウ)そうすると、上記相違点に係る構成は、引用発明2に記載されているといえる。
(エ)ここで、引用発明1も引用発明2も、液体噴射ヘッドの技術分野に属する点で共通する。
(オ)引用発明1は、流路形成基板10と、連通板20と、ノズルプレート25とは接着剤を用いて接合されているところ、各部材が精度よく位置合わせされなければ、すなわち、前記各部材で形成されるインクの流路同士が精度よく位置決めされて、連通しないと流路抵抗が設計通りのものとはならず、結果として、吐出されるインクの適量に影響が及ぼされることは明らかであるから、引用発明1において、上記各部材で形成されるインクの流路同士を精度よく位置決めすることは、内在する自明の課題といえる。
(カ)引用発明2は、各種流路の相対的な配置精度を向上させ、各種流路を互いに正確に連通させるという課題を解決するものと認める。
(キ)そうすると、引用発明1と引用発明2とは、流路同士を互いに正確に位置決めし、連通させるという、共通する技術的課題を有するといえる。
(ク)してみると、引用発明1に、引用発明2を適用する動機付けがあるといえ、引用発明2の「連通孔36」は、引用発明1の「連通孔21」に相当することからすれば、引用発明1の「連通孔21の第2の開口21e」に、引用発明2の「連通孔36の開口36a」を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
(ケ)そして、引用発明1の「連通孔21の第2の開口21e」に、引用発明2の「連通孔36の開口36a」を適用すれば、「連通孔21の第2の開口21e」は、圧力室側の端部の輪郭が第2の方向の幅よりも第1の方向の幅が広い長円形の長孔となるから、上記相違点に係る本件補正発明は、当業者が容易に想到し得るものであるといえる。
エ 請求人の主張について
請求人は、“引用文献1に記載された発明おける連通孔21は、貫通方向(第3方向D3)に伸びた4つの壁面で覆われた矩形状の孔により構成されています。そして、当該壁面の交差部には、4つの稜線21a~21dが形成され(段落[0024])、当該4つの稜線21a~21dの端部を、それぞれ流路形成基板10の圧力室12の狭窄部122を区画する底面101により塞ぐことを前提とした構成であります(段落[0028])。したがいまして、連通孔21の圧力室12(狭搾部122)側の端部の輪郭は、矩形であることが必須であります。つまり、引用文献1に記載の発明では、連通孔21の狭搾部122側の端部の輪郭は、角を有さない円形や、引用文献3に記載されている(図3、図4における開口36a)ような長円形の輪郭を除外しているものであります。”旨、主張する。
しかし、引用発明1は、連通孔内部の各稜線を伝って這い上がる接着剤を狭窄部で塞ぐものであって、「連通孔内部の各稜線」は、引用発明1における課題の原因となるものでしかなく、仮に、連通孔断面が矩形以外の形状であっても、はみ出した接着剤は、連通孔壁面を這い上がり得るのであるから、引用発明1において、連通孔内部の各稜線は必須の構成要件とはいえない。
してみると、引用発明1に、引用発明2を適用し、長円形の長孔とすることの阻害要因とはなり得ない。
オ 小括
上記で検討したとおり、本件補正発明は、引用発明1に引用発明2を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)独立特許要件についての検討のまとめ
以上検討したように、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
5 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、本件補正発明は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、令和1年12月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に充填されたインクの圧力を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータが駆動されることにより前記圧力室に充填された前記インクを吐出するノズルと、
前記圧力室と前記ノズルとを連結する連絡流路と、を備え、
前記連絡流路を有する構造体を前記アクチュエータに接着することにより前記圧力室と前記連絡流路とが接続され、
前記連絡流路は、前記圧力室側の端部が他の部分に比べて広くなっているインクジェットヘッドであって、
前記インクジェットヘッドの幅方向において、前記連絡流路の前記圧力室側端部の幅は前記圧力室の幅よりも広い、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記圧力室は、インクジェットヘッドの厚み方向である第1の方向の長さが前記第1の方向に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第2の方向の長さよりも長くなっており、
前記連絡流路は、前記圧力室側の前記端部の輪郭が前記第2の方向の幅よりも前記第1の方向の幅が広い長孔である、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。」(以下「本願発明」という。)
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、令和2年12月14日付けの拒絶理由通知書により通知された次に示すものを含むものである。
(進歩性)この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された特開2014-113796号公報及び特開2014-156081号公報に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用例
令和2年12月14日付けの拒絶理由通知書で引用された引用例、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、実質的に、本願補正発明1の「長円形の」との限定を省くものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3 (3)ア 本件補正発明と引用発明1との対比」での検討を勘案すると、両者は、
「インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に充填されたインクの圧力を変化させるアクチュエータと、
前記アクチュエータが駆動されることにより前記圧力室に充填された前記インクを吐出するノズルと、
前記圧力室と前記ノズルとを連結する連絡流路と、を備え、
前記連絡流路を有する構造体を前記アクチュエータに接着することにより前記圧力室と前記連絡流路とが接続され、
前記連絡流路は、前記圧力室側の端部が他の部分に比べて広くなっているインクジェットヘッドであって、
前記インクジェットヘッドの幅方向において、前記連絡流路の前記圧力室側端部の幅は前記圧力室の幅よりも広くなっており、
前記圧力室は、インクジェットヘッドの厚み方向である第1の方向の長さが前記第1の方向に直交するインクジェットヘッドの幅方向である第2の方向の長さよりも長くなっている、
インクジェットヘッド。」
の点で一致し、次の相違点で相違する。
[相違点’]
本願発明の「インクジェットヘッド」が、「連絡流路は、圧力室側の端部の輪郭が第2の方向の幅よりも第1の方向の幅が広い長孔である」ものであるのに対し、引用発明1の「液体噴射ヘッド1」は、第1方向D1の内幅(w1)と第2方向D2の幅との長短比較は不明であるとともに、連通孔21の第2の開口21eは矩形である点。
そして、上記「第2 3(3)」における検討を踏まえれば、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-012907