特許拒絶査定不服審判
2023-010642
プリンタ装置
- 審判番号
- 2023-010642
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-114166
- 請求日
- 2023年06月27日
- 審決日
- 2024年06月11日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】FCLコンポーネント株式会社
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 審判長/審判官
- 審判長 藤本 義仁
- 審判官 桐山 愛世
- 審判官 殿川 雅也
- 分類
- P18 .121-Z (B41J) / P18 .55 -Z (B41J) / P18 .575-Z (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-114166「プリンタ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月26日出願公開、特開2019-217635〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年6月15日の出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和4年 2月22日付け:拒絶理由通知書
同年 6月28日:意見書、手続補正書の提出
同年10月24日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年12月23日:意見書、手続補正書の提出
令和5年 4月3日付け:補正の却下の決定、拒絶査定(以下、「原査定」という。)
同年 6月27日:審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年6月27日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和5年6月27日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものを含むものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和4年6月28日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1~5を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~5へと補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)(なお、令和4年12月23日にされた手続補正は、令和5年4月3日付けで補正の却下の決定がなされている。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
プリンタ本体と、
前記プリンタ本体に回動可能に取り付けられた蓋と、
印刷ヘッドを有するヘッドユニットと、
プラテンローラと、
前記プラテンローラを回転可能に支持する支持部を有するプラテンユニットと、
前記プラテンユニットに設けられ、記録紙の搬送に伴い前記記録紙と接して回転するローラ部を有するガイドローラと、を有し、
前記プラテンユニットは前記蓋に取り付けられていることを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記プラテンローラのプラテンシャフトに設けられたプラテンギアと、
前記ガイドローラのシャフトに設けられたローラギアと、
前記プラテンギア及び前記ローラギアと噛み合う伝達ギアと、を有し、
前記プラテンローラの回転は、前記プラテンギア、前記伝達ギア、前記ローラギアを順に介し、前記ガイドローラに伝達されることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記ローラ部は、前記ローラ部の回転軸側の根本部分よりも、前記回転軸より離れた先端部分の幅が狭くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記ローラ部は、前記記録紙と接触する面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリンタ装置。
【請求項5】
前記ガイドローラは、
前記プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに前記記録紙を供給する側に配置される第1のガイドローラと、
前記プラテンユニットの前記記録紙を排出する側に配置される第2のガイドローラと、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプリンタ装置。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された。
「 【請求項1】
プリンタ本体と、
前記プリンタ本体に回動可能に取り付けられた蓋と、
印刷ヘッドを有するヘッドユニットと、
プラテンローラと、
前記プラテンローラを回転可能に支持する支持部を有するプラテンユニットと、
前記プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、前記プラテンローラに隣接して設けられ、記録紙の搬送に伴い前記記録紙と接して回転する、回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けられたローラ部を有する第1のガイドローラと、を有し、
前記プラテンユニットは前記蓋に取り付けられていることを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記プラテンローラのプラテンシャフトに設けられたプラテンギアと、
前記ガイドローラの前記シャフトに設けられたローラギアと、
前記プラテンギア及び前記ローラギアと噛み合う伝達ギアと、を有し、
前記プラテンローラの回転は、前記プラテンギア、前記伝達ギア、前記ローラギアを順に介し、前記第1のガイドローラに伝達されることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記ローラ部は、前記ローラ部の回転軸側の根本部分よりも、前記回転軸より離れた先端部分の幅が狭くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記ローラ部は、前記記録紙と接触する面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリンタ装置。
【請求項5】
前記プラテンユニットの前記記録紙を排出する側に配置され、前記記録紙の搬送に伴い前記記録紙と接して回転する、回転軸となるシャフトに取り付けられたローラ部を有する第2のガイドローラをさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプリンタ装置。」
(3)本件補正の内容
上記(1)及び(2)によれば、本件補正は、次の補正事項を含むものである。
補正事項1:本件補正前の請求項1の「ガイドローラ」が有する「ローラ部」について、「回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けられた」と限定する補正。
補正事項2:本件補正前の請求項1の「ガイドローラ」を、「プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、前記プラテンローラに隣接して設けられ」る「第1のガイドローラ」と限定する補正。
2 本件補正の適否
(1)新規事項
補正事項2について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていた事項であるか検討する。
補正事項2に関連して、当初明細書等には以下の記載がある。
「【0015】
本実施の形態のプリンタ装置は、サーマルヘッド等の印刷ヘッド10、プラテンローラ20、プラテンローラ20を回転可能な状態で支持する支持部130を有している。印刷ヘッド10はヘッドユニット40に取り付けられており、プラテンユニット160は、プラテンローラ20、支持部130、ガイドローラ150を備える。本実施の形態では、ガイドローラ150は、支持部130に回転可能に取り付けられており、ガイドローラ150は、印刷ヘッド10とプラテンローラ20との間に入る前段、即ち、印刷ヘッド10及びプラテンローラ20の間に記録紙100が供給される側に配置されている。」
「図6
[図:0001412995000001.jpg]
」
当初明細書等には、「ガイドローラ150は、印刷ヘッド10とプラテンローラ20との間に入る前段、即ち、印刷ヘッド10及びプラテンローラ20の間に記録紙100が供給される側に配置されている。」(段落【0015】)と記載されている。また、当初明細書等の図6から、プラテンローラ20が、ガイドローラ150の隣に配置されていると認められる。
一方で、補正事項1の「第1のガイドローラ」について、「プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、前記プラテンローラに隣接して設けられ」ることについて、「隣接」とは、「隣あっているが接していない」ことと、漢字の意味からも「隣りあっていて接している」ことの両方を包含していると認められる。しかしながら、当初明細書等には、ガイドローラ150とプラテンローラ20が、隣りあっていて接しているものについては記載されていないし、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
そうすると、補正事項1の「第1のガイドローラ」について、「プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、前記プラテンローラに隣接して設けられ」るという事項のうち、「第1のガイドローラ」が「プラテンローラ」と「隣りあっていて接している」事項については、当初明細書等から自明な事項や技術常識から導かれる事項でもないため、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
以上のとおりであるから、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(2)補正の目的
上記(1)のとおり、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるところ、念のため、仮に、新たな技術的事項を導入するものでないとして、補正の目的について、以下、検討する。
ア 補正事項1
補正事項1は、本件補正前の請求項1の「ガイドローラ」について、「プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、前記プラテンローラに隣接して設けられ」る「第1のガイドローラ」と限定するものである。
また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 補正事項2
補正事項2は、本件補正前の請求項1の「ローラ部」について、「回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けられた」と限定するものである。
また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
3 独立特許要件について
上記2(1)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に本件補正に含まれる上記補正事項が当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとして補正されたとした場合には、上記2(2)のとおり、請求項1に係る補正は、同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の請求項1に係る発明(令和5年6月27日に提出された手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】(以下、「本件補正発明1」という。))が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正発明1は、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲」の【請求項1】に記載された事項により特定されるものと認められる。
(2)引用文献等
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前である平成1年10月27日に頒布された刊行物である特開平1-269573号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「・・・サーマルプリンタ装置10はケーシング12を含み、このケーシング12の上部には一端側を支点として開閉自在な蓋体14が装着される。また、前記ケーシング12の前部にはサーマルプリンタ装置10を操作するためのオペレーションパネル15が形成される。ケーシング12の内部には、第2図に示すように、ポリエステルをベースとした画像記録材料である光定着型感熱フィルムFを巻回収納するフィルム装填部16と、前記光定着型感熱フィルムFを加熱することで所定の画像を形成する画像記録部18と、この光定着型感熱フィルムFを所定長に切断するカッタ一部20と、前記光定着型感熱フィルムFに紫外線を照射して定着を行う画像定着部22と、所定長に切断された光定着型感熱フィルムFを排出トレー24に送り出す排出部26と、これらを制御するための制御部28とが設けられる。
・・・
蓋体14には、さらに、画像記録部18を構成する副走査搬送手段であるプラテンローラ36(実質的にはゴムローラ)が装着される。このプラテンローラ36は蓋体14の側部に係着されたパルスモータからなる回転駆動源38によりギヤトレイン40を介して、第2図中、矢印方向に回転可能に構成される。なお、この回転駆動源38は記録される画像の走査線本数等に応じて速度が可変である。また、蓋体14にはプラテンローラ36と平行にガイドローラ41が回転自在に支承されると共に、光定着型感熱フィルムFの有無等を検知するための検知手段43が装着される。
蓋体14をケーシング12に対し閉動すると、爪部材32、32により前記蓋体14が前記ケーシング12に固定され、また、プラテンローラ36がサーマルヘッド42に係合する。サーマルヘッド42には主走査方向く第2図に直交する方向)に対し数百の発熱素子が配列されており、このサーマルヘッド42はブラケット46に固着される。なお、前記ブラケット46はフィルム装填部16側の一端部にビン48を介してケーシング12内で揺動自在に支承されており、このブラケット46の下部側にコイルスプリング50の一端が係合すると共に、このコイルスプリング50の他端はケーシング12内の支持板52に係合している。
カッタ一部20は切断手段を構成する固定型の第1のカッター刃56aと可動型の第2のカッター刃56bとを有し、前記第2カッター刃56bは回転駆動源58に軸着される円板60と、この円板60に偏心して連結される第1のリンク片62aおよびこの第1リンク片62aに係合する第2のリンク片62bを介して揺動自在に構成される。なお、円板60の一端部には平坦部60aが形成されており、この平坦部60aに係合するリミットスイッチ64により第2カッター刃56bの位置が検出される。」(第2頁右下欄第11行~第3頁左下欄第15行)
(イ)「すなわち、先ず、蓋体14に設けられている取手30を把持しこれを引き上げると、ケーシング12に係合していた爪部材32、32が揺動し、これら爪部材32、32による蓋体14のロック状態が解除される。そして、前記蓋体14を鉛直方向に揺動させた状態でフィルム装填部16にロール状に巻回された光定着型感熱フィルムFを収容する。次いで、光定着型感熱フィルムFの端部を引き出しこれをカッタ一部20のカッター刃56a、56b間に挿入した後、蓋体14を閉動する。この結果、光定着型感熱フィルムFは蓋体14に支承されているプラテンローラ36とブラケット46に固着されているサーマルヘッド42とで挟持されるに至る。また、光定着型感熱フィルムFの上面部にはガイドローラ41とプラテンローラ36との間に配設された検知手段43が近接し、当該フィルムFの有無を常時監視し得る状態となる。」(第4頁左上欄第17行-右上欄第13行)
(ウ)「4. 【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法が適用されるサーマルプリンタ装置の斜視図、
第2図は第1図に示す装置の一部省略縦断説明図、
第3図a乃至eは本発明方法を説明するためのタイムチャートである。」(第5頁右下欄第2行-第8行)
(エ)第2図「
[図:0001412995000002.jpg]
」
(オ)上記(ア)の「ケーシング12の上部には一端側を支点として開閉自在な蓋体14」という記載及び(イ)より、蓋体14はケーシング12の上部には一端側を支点として回動可能に蓋体14が装着されていると認められる。
(カ)上記(ウ)の「第2図は第1図に示す装置の一部省略縦断説明図」との記載、及び上記(エ)の第2図より、蓋体14に取り付けられ、プラテンローラ36、回転駆動源38を有する筐体が看取できる。
(キ)上記(イ)の「蓋体14にはプラテンローラ36と平行にガイドローラ41が回転自在に支承される」との記載、上記(エ)の第2図及び(カ)より、ガイドローラ41は、筐体の、筐体サーマルヘッド42及びプラテンローラ36に光定着型感熱フィルムFを供給する側に、設けられていることが看取できる。
(ク)上記(ア)及び(エ)より、ガイドローラ41は光定着型感熱フィルムFの搬送時に光定着型感熱フィルムFに接して回転する光定着型感熱フィルムFに接する外周面を有すると認められる。
上記(ア)ないし(ク)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ケーシング12を含み、
このケーシング12の上部には一端側を支点として回動可能に蓋体14が装着され、
サーマルヘッド42はブラケット46に固着され、
プラテンローラ36は回転可能に構成され、
蓋体14に取り付けられ、プラテンローラ36、回転駆動源38を有する筐体を有し、
蓋体14にはプラテンローラ36と平行にガイドローラ41が回転自在に支承されると共に、光定着型感熱フィルムFの有無等を検知するための検知手段43が装着され、
ガイドローラ41は、筐体の、サーマルヘッド42及びプラテンローラ36に光定着型感熱フィルムFを供給する側に、設けられて、
ガイドローラ41は光定着型感熱フィルムFの搬送時に光定着型感熱フィルムFに接して回転する光定着型感熱フィルムFに接する外周面を有し、
光定着型感熱フィルムFの上面部にはガイドローラ41とプラテンローラ36との間に配設された検知手段43が近接し、当該フィルムFの有無を常時監視し、
光定着型感熱フィルムFは蓋体14に支承されているプラテンローラ36とブラケット46に固着されているサーマルヘッド42とで挟持される、
サーマルプリンタ装置10。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前である平成13年5月15日に頒布された刊行物である特開2001-130800号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0023】すなわち、巻き込み防止構造3でのガイドローラー3Aの外周面には、周方向に連続する突条20が突出しており、この突条20が粘着剤層Bに線接触するので、接触面積を大幅に減少することができる。また、突条20の接触が帯状シート2の進行方向に沿っているので、粘着剤層Bが掻き起こされることがなく、しかも突条20の表面がポリテトラフルオロエチレンなので剥離性の高い材質で形成されているため、帯状シート2の先端部は、ガイドローラー3Aに案内されて、プラテンローラー16に巻き込まれることなく下流側のカッター機構6に向かって円滑に移動する。尚、ガイドローラー3Aの材質は、前記したものの他にシリコン材やその他の剥離性を有する材質であれば勿論採用可能である。また、ガイドローラー3Aの突条20は、短いピッチで隣合わせに形成したものに限定されるものではない。例えば、図4に示すガイドローラー3Aの第2実施形態は、軸34に、所定の間隔をおいて突条20のボス部35を複数箇所固定し、各ボス部35の端部外周面に突条20を1つ形成してある。そして、ボス部35の間には、帯状シート2の先端部分をカッター機構6の所定位置に案内するガイド部材36を臨ませてある。」
(イ)「図4
[図:0001412995000003.jpg]
」
ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前である平成12年8月2日に頒布された刊行物である特開2000-211785号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0020】第二のガイド部8は、半円筒状凹面5に連続して設けられたガイド面15と、用紙Sの印字面の裏面を案内する範囲の全域に渡り用紙搬送方向に沿って複数本配設されたガイドコロ16とで形成されている。ガイドコロ16は、用紙Sの幅方向と略平行な軸17に、
複数個のリング部材18が回転自在に取り付けられて形成されている。また、ガイドコロ16は、リング部材18の外周をガイド面15から一部突出する位置に取り付けられている。
【0021】図3は、用紙Sとガイドコロ16との位置関係を示す模式図である。リング部材18は、用紙Sとリング部材18の外周とが微小面積をもって接触するように、ソロバンの珠のような形状に形成されている。
・・・
【0024】またここで、ロール紙Rが、長尺状のラベル用紙が台紙無しで巻かれたライナレスラベルロールである場合、ラベル用紙の糊面はガイドコロ16により案内されているので、ラベル用紙がバックフィードされて弛んだとき、ラベル用紙の糊面はリング部材18の外周で押さえられて、ガイド面15には貼り付くことがない。そして、リング部材18の外周と糊面との接触面積は小さいため、リング部材18に糊面が貼り付きにくく、剥がれ易いので、再度ラベル用紙が搬送されると、リング部材18はラベル用紙が搬送されるのに従って回転して、ラベル用紙の搬送を妨げない。したがって、ラベル用紙が用紙搬送路9に貼り付いて停滞することが防止される。」
(イ)「図3
[図:0001412995000004.jpg]
」
エ 周知技術
上記引用文献2ないし3より、以下の技術事項が、本願出願時点において、周知の技術事項(以下「周知技術」という。)であると認める。
「プリンタに設けられ、記録紙が付着することなく円滑に搬送するために記録紙との接触面積を小さくし、回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けられて用紙に接するローラ部を有するガイドローラ。」
(3)対比
本件補正発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「ケーシング12」、「蓋体14」、「サーマルヘッド42」、「プラテンローラ36」、「ガイドローラ41」、「サーマルプリンタ装置10」、「筐体」、「光定着型感熱フィルムF」は、本件補正発明1の「プリンタ本体」、「蓋」、「印刷ヘッド」、「プラテンローラ」、「第1のガイドローラ」、「プリンタ装置」、「プラテンユニット」、「記録紙」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明1の「ケーシング12の上部には一端側を支点として回動可能に」「装着され」た「蓋体14」は、本件補正発明1の「プリンタ本体に回動可能に取り付けられた蓋」に相当する。
ウ 引用発明1の「ブラケット46」は、「サーマルヘッド42」が「固着され」たものであるので、本件補正発明1の「ヘッドユニット」と引用発明1の「ブラケット46」とは、「印刷ヘッドを有する」ものとの概念で一致する。
エ 引用発明1の「蓋体14に取り付けられ、プラテンローラ36、回転駆動源38を有する筐体」において、プラテンローラ36を有する筐体が、「プラテンローラ36」を回転可能に支持しているものであって、「プラテンローラ36」を回転可能に支持する手段を有していることは明らかであるので、本件補正発明1の「プラテンユニット」と引用発明1の「筐体」とは、「プラテンローラと、前記プラテンローラを回転可能に支持する支持部を有する」ものとの概念で一致する。
オ 引用発明1の「ガイドローラ41」は、「筐体の、サーマルヘッド42及びプラテンローラ36に光定着型感熱フィルムFを供給する側に、設けられ」るので、本件補正発明1の「第1のガイドローラ」と引用発明1の「ガイドローラ41」は、「プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に」「設けられ」ている点で一致する。
カ 引用発明1の「ガイドローラ41」は、「光定着型感熱フィルムFの搬送時に光定着型感熱フィルムFに接して回転する光定着型感熱フィルムFに接する外周面を有し」ているので、本件補正発明1の「第1のガイドローラ」と引用発明1の「ガイドローラ41」は、「記録紙の搬送に伴い前記記録紙と接して回転する」「ローラ部を有する」ものとの概念で一致する。
キ 引用発明1の「第2のユニット」は、「蓋体14に係着される」点は、本館補正発明1の「プラテンユニットは前記蓋に取り付けられている」点に相当する。
ク 上記アないしキより、本件補正発明1と引用発明1とは、
「プリンタ本体と、
前記プリンタ本体に回動可能に取り付けられた蓋と、
印刷ヘッドを有するヘッドユニットと、
プラテンローラと、
前記プラテンローラを回転可能に支持する支持部を有するプラテンユニットと、
前記プラテンユニットの前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、設けられ、記録紙の搬送に伴い前記記録紙と接して回転するローラ部を有する第1のガイドローラと、を有し、
前記プラテンユニットは前記蓋に取り付けられていることを特徴とするプリンタ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件補正発明1の「第1のガイドローラ」は、前記プラテンローラに隣接して設けられているのに対して、引用発明1の「ガイドローラ41」は、「プラテンローラ36との間に」「検知手段43」が「配設され」ている点。
相違点2:本件補正発明1の「第1のガイドローラ」の「ローラ部」は「回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けら」ているのに対して、引用発明1の「ガイドローラ41」の「光定着型感熱フィルムFに接する外周面」は、そのような構成を有しているか否か不明である点。
(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用発明1において、「ガイドローラ41」は「蓋体14に取り付けられ、プラテンローラ36、回転駆動源38を有する筐体より、サーマルヘッド42及びプラテンローラ36に光定着型感熱フィルムFを供給する側に、設けられて」、「光定着型感熱フィルムFの上面部にはガイドローラ41とプラテンローラ36との間に」「検知手段43」が「配設され」ている。
「隣接」とは、一般的に、「隣りあっている」との意味であるところ、光定着型感熱フィルムFを搬送する手段としては、「光定着型感熱フィルムFを供給する側」から、「ガイドローラ41」、「プラテンローラ36」の順に隣りあって設けられており、「検知手段43」の有無に関わらず、「ガイドローラ41」、「プラテンローラ36」は「隣接して設けられている」搬送する手段といえる。
そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
イ 上記相違点2について検討する。
プリンタ装置において、記録紙を円滑に搬送するために、ガイドローラが、回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けられたローラ部を有することは、上記のとおり周知技術である。
そうすると、引用発明1に前記周知技術を適用して、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件補正発明1は、引用発明1及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)独立特許要件についての検討のまとめ
以上検討したように、本件補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、本件補正発明1は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年6月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される。すなわち、上記「第2 1(1)」【請求項1】に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年10月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の事項を含むものである。
(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1(特開平1-269573号公報)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3 引用文献
令和4年10月24日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献1、及びその記載内容は、上記「第2 3(2)ア」で認定したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明1において、「ガイドローラ」が「前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラに記録紙を供給する側に、前記プラテンローラに隣接して設けられ」、「ローラ部」が「回転軸となるシャフトに所定の間隔で複数取り付けられ」るとの特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2 3 (3)」での検討を勘案すると、両者は、
「プリンタ本体と、
前記プリンタ本体に回動可能に取り付けられた蓋と、
印刷ヘッドを有するヘッドユニットと、
プラテンローラと、
前記プラテンローラを回転可能に支持する支持部を有するプラテンユニットと、
前記プラテンユニットに設けられ、記録紙の搬送に伴い前記記録紙と接して回転するローラ部を有するガイドローラと、を有し、
前記プラテンユニットは前記蓋に取り付けられていることを特徴とするプリンタ装置。」
である点で一致する。
よって、本願発明の発明特定事項は、すべて引用発明1が備えているから、本願発明と、引用発明1とに差異はない。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載されたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-010642