特許拒絶査定不服審判
2024-011252
液体吐出装置および液体吐出装置の制御方法
- 審判番号
- 2024-011252
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-091803
- 請求日
- 2024年07月08日
- 審決日
- 2025年11月26日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノン株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 川俣 洋史
- 審判官 門 良成
- 審判官 山本 一
- 分類
- P18 .572-WZ (B41J) / P18 .575-WZ (B41J) / P18 .113-WZ (B41J) / P18 .121-WZ (B41J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-91803「液体吐出装置および液体吐出装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和5年7月21日出願公開、特開2023-101789〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月6日(優先権主張 平成29年7月7日)に出願した特願2018-129324号の一部を、令和4年2月14日に新たな特許出願(特願2022-20280号)とし、その一部を令和5年6月2日に新たに出願したものであって、その経緯の概要は次のとおりである。
令和5年 7月 3日 :手続補正書、上申書の提出
同年 8月16日付け:拒絶理由通知
同年10月23日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月 5日付け:拒絶理由通知(最後)
令和6年 2月 9日 :意見書、手続補正書の提出
同年 4月 2日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
(同月 9日 :拒絶査定の送達)
同年 7月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 5月 2日付け:補正の却下の決定、拒絶理由通知(最後)
同年 7月 9日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年7月7日を以下「優先日」といい、令和7年5月2日付けの当審において通知した拒絶理由通知を以下「当審拒絶理由通知」という。
第2 令和7年7月9日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年7月9日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前の(令和5年10月23日に提出の手続補正書の)特許請求の範囲の請求項1~16を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~16へと補正するものであって、補正前後の請求項1の記載は、各々次のとおりである(下線部は、補正箇所を示すために合議体が付した。)。
(1)本件補正前の請求項1
「 液体を吐出して印字を行うヘッドに供給する液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部から前記ヘッドに液体を流すように構成された第1の流路と、
前記ヘッドからの液体を流すように構成された第2の流路と、
前記第1の流路から分岐する第3の流路と、
前記第3の流路に設けられ、液体の流れを規制する第1の弁と、
前記第1の流路から前記ヘッドへ、前記ヘッドから前記第2の流路へ液体を循環させるポンプと、を備え、
前記ポンプは、前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で液体を循環可能であり、
前記第1の弁は、前記ヘッドによる印字中に閉じていることを特徴とする液体吐出装置。」
(2)本件補正後の請求項1
「 液体を吐出して印字を行うヘッドに供給する液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部から前記ヘッドに液体を流すように構成された第1の流路と、
前記ヘッドからの液体を流すように構成された第2の流路と、
前記第1の流路から分岐する第3の流路と、
前記第3の流路に設けられ、液体の流れを規制する第1の弁と、
前記第1の流路から前記ヘッドへ、前記ヘッドから前記第2の流路へ液体を循環させるポンプと、を備え、
前記ポンプは、前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に液体を循環可能であり、
前記ポンプによる液体の循環は、液体が前記第1の流路から分岐する第4の流路を通った後に前記ヘッドを介さずに前記第1の流路を通ることを含み、
前記第1の弁は、前記ヘッドによる印字中に閉じていることを特徴とする液体吐出装置。」
2 補正の目的
(1)補正事項
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「二種類の流量で液体を循環」することについて、その方向を「前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向」に限定する補正事項(以下「補正事項1」という。)、及び、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「液体」の「循環」について、「液体が前記第1の流路から分岐する第4の流路を通った後に前記ヘッドを介さずに前記第1の流路を通ることを含」むことを追加する補正事項(以下「補正事項2」という。)を含むものである。
(2)本件補正前の請求項に記載した、発明を特定するために必要な事項(以下「発明特定事項」という。)を限定するものであるかの検討
ア 本件補正前の発明特定事項
特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」というためには、補正前の発明特定事項を限定するものでなければならないところ、補正前の「液体」の「循環」については、「前記第1の流路から前記ヘッドへ、前記ヘッドから前記第2の流路へ液体を循環させる」、「前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に液体を循環可能」であることが特定されている。
イ 発明特定事項の限定についての判断
補正事項2は、前記アで示した「液体」の「循環」に対して、「第1の流路から分岐する第4の流路」という新たな流路を付加し、「第4の流路を通った後に前記ヘッドを介さずに前記第1の流路を通る」という、ヘッドに対する循環とは別個の流れを追加するものであるから、補正前に特定された液体の循環を、概念的に、より下位の発明特定事項とする補正とはいえない。したがって、補正事項2は、本件補正前の発明特定事項を限定するものではない。
(3)解決しようとする課題の同一性の検討
ア 本件補正前の課題
本件補正前の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲と、明細書及び図面の全体からみて、【0005】~【0006】に記載される、バッファ室を設けることでさらに時間がかかってFPOTを短くできるように、液体の流量を二種類に制御することが可能な液体吐出装置を提供することが、解決しようとする課題であると認められる。
イ 本件補正後の課題
令和7年7月9日提出の意見書の3.(1)ア.における、請求人が本件補正後の請求項1に係る発明に対する、「この構成により、どちらの流量の場合もヘッドを通るように液体が循環するので、ヘッド内の固着したインクを循環することができ、さらに、循環において第4の流路を通ったインクを第1の流路に合流させることで攪拌性能を向上させるという格別なる効果を奏します。」との主張を踏まえれば、本件補正後の請求項1に係る発明は、液体の攪拌性能を向上させることも解決しようとする課題に含まれるものと認められる。
ウ 課題の同一性についての判断
前記ア及びイを踏まえると、本件補正後の請求項1に係る発明の解決しようとする課題は、本件補正前の請求項1に係る発明の解決しようとする課題を概念的に下位にしたものでもないし、当該本件補正前の課題と同種のものでもない。したがって、本件補正前後の発明の課題が技術的に密接に関連しているとはいえないから、本件補正前後において、発明の解決しようとする課題は同一ではない。
(4)小括
前記(2)及び(3)より、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれの事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれを目的としたものにも該当しない補正である。
3 独立特許要件
本件補正の目的は前記2のとおりであるが、仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとした場合に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1の(2)に示すとおりの事項から特定されるものである。
(2)各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由通知において引用し、本願の優先日前に発行された特開2011-212872号公報には、次のとおり記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置の制御装置、液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録装置の制御装置、インクジェット式記録装置及びインクジェット式記録装置のクリーニング方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようにフラッシング動作を行うことによってノズルの目詰まりといった液滴の噴射不良の発生を抑えることはできる。また、特許文献2に記載されているように、ポンプ等によって液体を循環させるようにすれば、無駄な液体を排出させることなく増粘等を抑えることはできる。
【0007】
しかしながら、既に流路に沈降物が堆積している場合、フラッシングやポンプによる液体の循環によっては、当該沈降物が除去しきれない虞がある。特に長時間に亘り液体噴射装置が未使用であると、上述のフラッシングや液体の循環では沈降物の除去がより困難となる。
【0008】
フラッシングの際に、より強力にインクを排出することで沈降物を排除することも可能ではあるが、この場合では、より多くの液体が無駄に排出されてしまう。また、循環流路の流速を速めるために、より圧送能力の高いポンプを用いることも可能ではあるが、この場合では、ポンプに係るコストが増大してしまう。
【0009】
なお、このような問題は、インクジェット式記録装置の制御装置だけではなく、インク以外の液体噴射装置の制御装置においても同様に存在する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、流路に堆積した液体の沈降物を確実に除去することができる液体噴射装置の制御装置、液体噴射装置及び液体噴射装置のクリーニング方法を提供することを目的とする。」
(イ)「【0018】
図示するように、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iは、インクジェット式記録ヘッド10を具備する。
【0019】
インクジェット式記録ヘッド10(以下、記録ヘッド10とも言う)は、インク滴を吐出するノズル開口11が設けられ、ノズル開口11に連通する流路(図示なし)が、フィルター15を介してマニホールド12に連通している。マニホールド12には、インクが貯留された液体貯留部20からのインクが供給されるインク導入路13と、マニホールド12内のノズル開口11から吐出されなかったインクが液体貯留部20に回収される排出路14とが連通するように設けられている。
・・・
【0024】
また、インクジェット式記録装置Iには、装置本体4に固定されて内部にインクが貯留された液体貯留部20が設けられている。この液体貯留部20には、記録ヘッド10にインクを供給する供給路21が設けられた供給管22と、記録ヘッド10からのインクを回収する回収路23が設けられた回収管24とからなる循環流路が接続されている。
【0025】
供給管22は、フレキシブルチューブ等の管状部材からなり、内部に供給路21が設けられている。供給管22は、一端部が液体貯留部20に接続され、他端部が記録ヘッド10のインク導入路13に接続されることで、液体貯留部20のインクを供給路21及びインク導入路13を介してマニホールド12に供給する。
【0026】
回収管24は、フレキシブルチューブ等の管状部材からなり、内部に回収路23が設けられている。回収管24は、一端部が液体貯留部20に接続され、他端部が記録ヘッド10の排出路14に接続されることで、マニホールド12内のインクを排出路14及び回収路23を介して液体貯留部20に回収する。
【0027】
また、供給路21の途中には、液体貯留部20のインクを記録ヘッド10に圧送する圧送手段である加圧ポンプ30が設けられている。加圧ポンプ30の圧送によって、液体貯留部20のインクは、記録ヘッド10に所定の圧力で供給される。
【0028】
さらに、液体貯留部20には、内部に貯留されたインクを負圧にする減圧手段が設けられている。本実施形態では、減圧手段として、液体貯留部20の内部のインクが貯留された空間の気体を吸引して外部に排出する吸引ポンプ31を設けた。
【0029】
このような吸引ポンプ31は、液体貯留部20内の圧力を、加圧ポンプ30によりインクを加圧する圧力よりも大きな負圧となるように減圧する。このように、吸引ポンプ31が、液体貯留部20内を加圧ポンプ30よりも大きな圧力で減圧することで、加圧ポンプ30によって圧送されたインクが記録ヘッド10のノズル開口11から流出することなく、回収路23を介して液体貯留部20に回収される。ちなみに、液体貯留部20に減圧手段である吸引ポンプ31を設けない場合、加圧ポンプ30によって圧送されたインクが記録ヘッド10に供給されることで、圧力発生手段を駆動しなくても記録ヘッド10のノズル開口11からインクが流出してしまう。
【0030】
また、液体貯留部20には、内部に貯留されたインクを加熱する加熱手段35が設けられている。本実施形態では、加熱手段35として、液体貯留部20の外面に、当該外面を介して内部のインクを加熱するヒーターを設けた。さらに液体貯留部20には、内部のインクの温度を測定する温度センサー36が設けられている。詳細は後述するが、温度センサー36で得られた温度は、加熱手段35を制御するクリーニング制御手段に送られ、クリーニング制御手段が液体貯留部20内部のインクの温度を所定温度にするために加熱手段35でどの程度加熱すればよいかを調整するために用いられる。
【0031】
また、供給路21には、加圧ポンプ30の上流と下流とを連通するバイパス路25を有するバイパス管26が設けられている。このバイパス路25は、詳しくは後述するが、ノズル開口11からインクを吸引する吸引動作を行った際に、加圧ポンプ30による加圧を行わずに液体貯留部20のインクを記録ヘッド10に供給するためのものである。
【0032】
このような供給路21、回収路23及びバイパス路25には、それぞれの流路を開閉するバルブ32~34が設けられている。詳しくは、供給路21の加圧ポンプ30の下流側であって、供給路21とバイパス路25との合流部より上流には、供給路21を開閉する第1バルブ32が設けられている。また、回収路23には、当該回収路23を開閉する第2バルブ33が設けられている。さらに、バイパス路25には、当該バイパス路25を開閉する第3バルブ34が設けられている。そして、詳しくは後述するが、これら第1バルブ32、第2バルブ33及び第3バルブ34を制御することによって、供給路21、回収路23及びバイパス路25を開閉して、液体貯留部20と記録ヘッド10との間でインクを循環させる循環状態、ノズル開口11からインクを吸引させる吸引状態に切り替える。」
(ウ)「【0039】
図3に示すように、インクジェット式記録装置Iでは、実際の印刷を行う機構部となる記録ヘッド10と、記録ヘッド10のノズル開口11からインクを吸引する吸引手段40と、キャップ部材41を移動する移動手段44と、第1バルブ32、第2バルブ33及び第3バルブ34と、これらの記録ヘッド10、吸引手段40、第1バルブ32、第2バルブ33及び第3バルブ34等の動作を制御する制御装置50と、を具備する。
【0040】
制御装置50は、記録ヘッド10の印刷を制御するほか、循環流路のクリーニング動作を制御する。ここで、本実施形態におけるクリーニング動作とは、(a)液体貯留部20のインクを加熱し、循環流路(供給路、回収路、記録ヘッド10のインク導入路13、マニホールド12及び排出路14)に高温のインクを循環させることで、循環流路に堆積したインク由来の沈降物や気泡を排出し、(b)液体貯留部20のインクを加熱し、高温になったインクと共にインク中の気泡や沈降物や増粘したインクを吸引手段40による吸引により排出することをいう。以降、(a)のクリーニングを循環クリーニング、(b)のクリーニングを吸引クリーニングと言う。
【0041】
具体的には、制御装置50は、印刷制御手段51、記録ヘッド駆動回路52、印刷位置制御手段53、クリーニング制御手段54及びバルブ制御手段55を具備する。
【0042】
印刷制御手段51は、記録ヘッド10の印刷動作を制御し、例えば、印刷信号の入力に伴って記録ヘッド駆動回路52を介して圧電素子に駆動パルスを印加して、記録ヘッド10からインクを吐出させる。
・・・
【0044】
バルブ制御手段55は、供給路21、回収路23及びバイパス路25のそれぞれに設けられた第1バルブ32、第2バルブ33、第3バルブ34を制御して、供給路21、バイパス路25及び回収路23の開閉を行わせる。
【0045】
ここで、バルブ制御手段55は、第1バルブ32、第2バルブ33及び第3バルブ34を制御することで、循環状態、吸引状態の2つの状態を作り出す。
【0046】
循環状態は、液体貯留部20と記録ヘッド10との間でインクを循環させるためのものである。印刷待機中や印刷中において循環状態にすることで、インクの成分の沈降を抑制すると共に、インクに含まれる気泡を記録ヘッド10から排出する。さらに、詳細は後述するが、この循環状態で循環クリーニングが行われる。
【0047】
循環状態では、第1バルブ32及び第2バルブ33を開き、供給路21及び回収路23を開口する。また、第3バルブ34を閉じることで、バイパス路25を閉口する。これにより、液体貯留部20のインクは、加圧ポンプ30の圧送によって記録ヘッド10に供給され、記録ヘッド10に供給されてノズル開口11から吐出されないインクは、液体貯留部20の吸引ポンプ31の吸引力によって回収路23を介して液体貯留部20に回収される。」
(エ)「【0050】
クリーニング制御手段54は、循環クリーニング及び吸引クリーニングを行うために加熱手段35、吸引手段40及びバルブ制御手段55を制御する。
【0051】
具体的には、循環クリーニングの実行時は、バルブ制御手段55に循環状態とする旨の信号を伝達し、バルブ制御手段により循環状態にさせる。一方、液体貯留部20内のインクの温度が通常のインクの吐出時におけるインクの温度よりも高くなるように加熱手段35の温度を制御する。以降、この「通常のインクの吐出時におけるインクの温度よりも高い温度」をクリーニング温度とも言う。本実施形態でいう「通常のインクの吐出時」とは、クリーニングを行っていないとき、すなわち記録シートSに所定の信号に基づいてインクを吐出するときをいう。
【0052】
加熱手段35によりインクがクリーニング温度になっているか否かは、温度センサー36から得た温度により判断する。すなわち、液体貯留部20内のインクの温度がクリーニング温度以下であるならば、加熱手段35の温度をより高くし、当該温度がクリーニング温度であるならば、加熱手段35の温度を維持し、当該温度がクリーニング温度を過度に上回っている場合などでは、加熱手段35の温度を低くする。なお、クリーニング温度としては、インクの粘性が充分に下がり、かつインクの溶媒が過度に蒸発しない程度の温度とすることが好ましい。
【0053】
循環クリーニングでは、循環流路を循環させるインクの温度をクリーニング温度にすることにより、当該インクの粘度が低下する。インクの粘度が低下することで、循環流路を流れるインクの流速は、通常のインクの吐出時における循環流路に流れるインクの速度よりも高速となる。
【0054】
このように、循環クリーニングにおいては、通常のインクの吐出時よりも高速の流速でインクが循環流路を流れるので、高速で流れるインクで、循環流路や記録ヘッド10内の流路、特にフィルター上に堆積した沈降物を、より強力に、排出することができる。これにより、循環流路に堆積した沈降物が、通常のインクの吐出時におけるインクの流速に影響を与えたり、フィルター上に沈降物が堆積して目詰まりを起こすことが防止され、信頼性が向上した液体噴射装置が提供される。なお、インクの流速により排出される沈降物は、液体貯留部20内に配設したフィルターなどで捕集される。
【0055】
また、インクを加熱して粘度を下げることによりインクの流速を向上させているので、加圧ポンプ30は、通常のインクの吐出時と同じ出力で運転させることができる。すなわち、インクの流速を向上するために高出力のポンプを設ける必要が無いので、ポンプに係るエネルギーやコストを低減することができる。
【0056】
また、循環クリーニングは、通常のインクの吐出時以外であれば、どのタイミングで実施してもよいが、特に、インクジェット式記録装置Iが長時間に亘り未使用であった場合、すなわち、循環流路にインクが循環していない時間が長い場合において、印刷に先立って行うことが好ましい。」
(オ)「【図2】
[図:0001431750000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
前記アより、引用文献1には、次のとおりの発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
[引用発明1]
「流路に堆積した液体の沈降物を確実に除去することができるインクジェット式記録装置であって、
記録ヘッド10及び制御手段50を具備し、制御手段50はクリーニング制御手段54及びバルブ制御手段55を具備し、記録ヘッド10は、インク滴を吐出するノズル開口11が設けられ(【0018】、【0019】、【0039】、【0041】)、
印刷信号の入力に伴って記録ヘッド駆動回路52を介して圧電素子に駆動パルスを印加して、記録ヘッド10からインクを吐出させ(【0042】)、
内部にインクが貯留された液体貯留部20が設けられ、液体貯留部20には、記録ヘッド10にインクを供給する供給路21が設けられた供給管22と、記録ヘッド10からのインクを回収する回収路23が設けられた回収管24とからなる循環流路が接続され、内部に貯留されたインクを加熱する加熱手段35が設けられ((【0024】、【0030】)、
供給路21の途中には、液体貯留部20のインクを記録ヘッド10に圧送する圧送手段である加圧ポンプ30が設けられ(【0027】)、
液体貯留部20の内部のインクが貯留された空間の気体を吸引して外部に排出する吸引ポンプ31を設け(【0028】)、
供給路21には、加圧ポンプ30の上流と下流とを連通するバイパス路25を有するバイパス管26が設けられ(【0031】)、
供給路21、回収路23及びバイパス路25には、それぞれの流路を開閉するバルブ32~34が設けられ(【0032】)、
循環状態は、液体貯留部20と記録ヘッド10との間でインクを循環させるためのものであり、印刷待機中や印刷中において循環状態にすることで、インクの成分の沈降を抑制すると共に、インクに含まれる気泡を記録ヘッド10から排出し(【0046】)、
循環状態では、第3バルブ34を閉じることで、バイパス路25を閉口し、これにより、液体貯留部20のインクは、加圧ポンプ30の圧送によって記録ヘッド10に供給され、記録ヘッド10に供給されてノズル開口11から吐出されないインクは、液体貯留部20の吸引ポンプ31の吸引力によって回収路23を介して液体貯留部20に回収され(【0047】)、
クリーニング制御手段54は、循環クリーニングを行うために加熱手段35及びバルブ制御手段55を制御し(【0050】)、
バルブ制御手段55は、第1バルブ32、第2バルブ33及び第3バルブ34を制御することで、循環状態を作り出し(【0045】)、
循環クリーニングの実行時は、循環状態にさせ、液体貯留部20内のインクの温度が通常のインクの吐出時におけるインクの温度よりも高くなるように加熱手段35の温度を制御し、循環流路を流れるインクの流速は、通常のインクの吐出時における循環流路に流れるインクの速度よりも高速となり、
「通常のインクの吐出時」とは、クリーニングを行っていないとき、すなわち記録シートSに所定の信号に基づいてインクを吐出するときをいう(【0051】、【0053】)、
インクジェット式記録装置」
ウ 引用文献3の記載事項
本願の優先日前に発行された特開2012-236334号公報には、次のとおり記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置およびインクジェット記録装置に関し、さらに詳細には、媒体に液体を吐出する液体吐出部を備えた液体吐出装置、および記録メディアにインクを吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。」
(イ)「【0022】
図2は、本実施形態に係る液体吐出装置(ここでは、インクジェットプリンタ)10におけるインクの流路およびその周辺構成の概略図である。
同図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、液体貯留部(ここでは、インクカートリッジ)17と液体吐出部(ここでは、記録ヘッド)22との間をインクが流通可能に連結された第1の液体流路31を備えている。
【0023】
また、第1の液体流路31の流路途中には流通ポンプ37が設けられている。当該流通ポンプ37は、第1の液体流路31内および後述の第2の液体流路32内にインクを流通させる駆動源である。なお、流通ポンプ37の例として、チューブポンプ等を用いることが考えられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、第1の液体流路31の流路途中には、流通ポンプ37を挟んで上流側に第1の分岐部34が設けられ、下流側に第2の分岐部35が設けられている。すなわち、第1の分岐部34は、第1の液体流路31の流路途中であって、インクカートリッジ17と流通ポンプ37との間に配設され、第2の分岐部35は、第1の液体流路31の流路途中であって、流通ポンプ37と記録ヘッド22との間に配設される構成である。
【0025】
また、同図2に示すように、インクジェットプリンタ10は、第1の分岐部34および第2の分岐部35に連結され、インクが流通可能に連通した第2の液体流路32を備えている。
ここで、第2の液体流路32には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブ36が設けられている。」
(ウ)「【0033】
ここで、流通ポンプ37と第2の開閉バルブ62との間における第1の流路31内の圧力が上昇すると、第2の分岐部35に連結されて第1の流路31から分岐している第2の流路32内(具体的には、第2の分岐部35と第1の開閉バルブ36との間)の圧力が上昇する作用が生じる。その結果、第1の開閉バルブ36に作用する圧力が所定値(あらかじめ定めた開放設定値)以上に上昇すると、当該第1の開閉バルブ36が開放状態となる。これによって、第1の流路31から第2の分岐部35を経由して第2の流路32内へインクが流通する。そのインクはさらに、第1の開閉バルブ36を通過して、第2の流路32内を第1の分岐部34へ向かって流通する。さらに、第1の分岐部34から第1の流路31内へ流通して、再度、流通ポンプ37に取り込まれることとなり、インクの還流作用が生じる。このように、インクを還流(循環)させる作用が得られることによって、インクに含まれる色材の沈降を防止することができる。」
エ 周知技術
前記ウより、以下の技術は、当該分野において、一般に広く知られた周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
[周知技術]
「液体吐出装置は、液体貯留部と液体吐出部との間をインクが流通可能に連結された第1の液体流路を備え(【0022】)、
第1の液体流路の流路途中であって、液体貯留部と流通ポンプとの間に第1の分岐部が配設され、第1の液体流路の流路途中であって、流通ポンプと液体吐出部との間に第2の分岐部が配設され(【0024】)、
第1の分岐部および第2の分岐部に連結され、インクが流通可能に連通した第2の液体流路を備えており(【0025】)、
第2の液体流路には、所定圧力以上で開放する第1の開閉バルブが設けられ(【0025】)、第1の開閉バルブに作用する圧力が所定値以上に上昇すると、当該第1の開閉バルブが開放状態となって、第1の液体流路から第2の分岐部を経由して第2の液体流路内へインクが流通し、そのインクはさらに、第1の分岐部から第1の液体流路内へ流通して、再度、流通ポンプに取り込まれることとなり、インクの還流作用が生じ、インクを循環させる作用が得られることによって、インクに含まれる色材の沈降を防止する(【0033】)技術。」
(3)本件補正発明と引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「インクジェット式記録装置」は、「インク滴を吐出するノズル開口11が設けられ」た「記録ヘッド10」を具備する装置であるから、本件補正発明の「液体吐出装置」に相当する。また、引用発明1の「インク」、「記録ヘッド10」、「液体貯留部20」は、それぞれ本件補正発明の「液体」、「ヘッド」、「貯留部」に相当する。
イ 引用発明1の「記録ヘッド10」は、「印刷信号の入力に伴って記録ヘッド駆動回路52を介して圧電素子に駆動パルスを印加して」、「インクを吐出させ」ているから、本件補正発明の「ヘッド」と引用発明1の「記録ヘッド10」は、「液体を吐出して印字を行う」ものである点で一致する。
ウ 引用発明1の「液体貯留部20」は、「記録ヘッド10にインクを供給する供給路21が設けられた供給管22」を含む「循環流路」が接続され、「内部にインクが貯留された」ものであるから、本件補正発明の「貯留部」と引用発明1の「液体貯留部20」は、「ヘッドに供給する液体を貯留する」ものである点で一致する。
エ 引用発明1の「供給路21」は、「液体貯留部20」に接続された「循環流路」の「供給管22」に設けられ、「記録ヘッド10にインクを供給する」ものであるから、前記アを踏まえると、本件補正発明の「前記貯留部から前記ヘッドに液体を流すように構成された第1の流路」に相当する。
オ 引用発明1の「回収路23」は、「記録ヘッド10からのインクを回収する」ものであるから、前記アを踏まえると、本件補正発明の「前記ヘッドからの液体を流すように構成された第2の流路」に相当する。
カ 引用発明1の「供給路21」の途中には、「加圧ポンプ30」が設けられ、「供給路21」には「加圧ポンプ30」の上流と下流とを連通する「バイパス路25」(を有する「バイパス管26」)が設けられるのであるから、引用発明1の「バイパス路25」は、「供給路21」から分かれた流路であり、前記エを踏まえると、本件補正発明の「第1の流路から分岐した第3の流路」に相当する。
キ 引用発明1の「供給路21、回収路23及びバイパス路25」には、それぞれの流路を開閉する「バルブ32~34」が設けられ、「循環状態では、第3バルブ34を閉じることで、バイパス路25を閉口」するのであるから、「バイパス路25」には、「第3バルブ34」が設けられているものと理解できる。したがって、引用発明1の「第3バルブ34」は、前記カを踏まえると、本件補正発明の「前記第3の流路に設けられ」る「第1の弁」に相当する。
また、引用発明1の「第3バルブ34」は、「流路を開閉する」ものであるから、本件補正発明の「第1の弁」と引用発明1の「第3バルブ34」は、「液体の流れを規制する」ものである点で一致する。
ク 引用発明1の「第3バルブ34」は、「循環状態」では「閉じる」ものであり、引用発明1の「インクジェット記録装置」は、「印刷中」において「循環状態」にするものである。また、引用発明1の「インクジェット記録装置」は、「印刷信号の入力に伴って」「記録ヘッド10からインクを吐出させ」ることから、「記録ヘッド10」により印刷が行われるものである。
したがって、本件補正発明の「第1の弁」と引用発明1の「第3バルブ34」は、前記イも踏まえれば、「前記ヘッドによる印字中に閉じている」ものである点で一致する。
ケ 引用発明1の「循環状態」では、液体貯留部20のインクは、「加圧ポンプ30」の圧送によって記録ヘッド10に供給され、一方、記録ヘッド10に供給されてノズル開口11から吐出されないインクは、液体貯留部20の「吸引ポンプ31」の吸引力によって回収路23を介して液体貯留部20に回収されるのであるから、引用発明1の「「加圧ポンプ30」及び「吸引ポンプ31」」は、本件補正発明の「ポンプ」に相当し、前記イ、エ及びオを踏まえれば、両者は「前記第1の流路から前記ヘッドへ、前記ヘッドから前記第2の流路へ液体を循環させる」ものである点で一致する。
コ 引用発明1の「インクジェット式記録装置I」は、「循環状態」では、「ノズル開口11から吐出されないインクは、液体貯留部20の吸引ポンプ31の吸引力によって回収路23を介して液体貯留部20に回収され」、かつ、「循環クリーニングの実行時」には、「循環流路」を流れるインクの流速は、「通常のインクの吐出時」における「循環流路に流れるインクの速度よりも高速とな」る。
したがって、引用発明1の「通常のインクの吐出時」と「循環クリーニングの実行時」では、吐出されないインクは、いずれも「回収路23」を介して、液体貯留部20に向かう同じ方向に回収され、両時点の「回収路23」を流れる流速は異なると理解できる。そして、流量は流速に比例するとの技術常識からすれば、引用発明1の「通常のインクの吐出時」と「循環クリーニングの実行時」では、「回収路23」の流量も異なると理解できる。
そうすると、前記ア、オ及びケを踏まえると、本件補正発明の「ポンプ」と引用発明1の「「加圧ポンプ30」及び「吸引ポンプ31」」は、「前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に液体を循環可能」なものである点で一致する。
サ 引用発明1の「インクジェット式記録装置」は、「液体貯留部20」、「加圧ポンプ30」、「吸引ポンプ31」が設けられ、「供給路21」が設けられた供給管22と「回収路23」が設けられた回収管24とからなる循環流路が「液体貯留部20」に接続され、第3バルブ34が設けられた「バイパス路25」を有するバイパス管26が設けられるから、前記ア~コを踏まえると、本件補正発明の「液体吐出装置」と引用発明1の「インクジェット記録装置」は、「貯留部」、「第1の流路」、「第2の流路」、「第3の流路」、「第1の弁」、及び「ポンプ」を備える点で一致する。
シ したがって、本件補正発明と引用発明1とは以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「液体を吐出して印字を行うヘッドに供給する液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部から前記ヘッドに液体を流すように構成された第1の流路と、
前記ヘッドからの液体を流すように構成された第2の流路と、
前記第1の流路から分岐する第3の流路と、
前記第3の流路に設けられ、液体の流れを規制する第1の弁と、
前記第1の流路から前記ヘッドへ、前記ヘッドから前記第2の流路へ液体を循環させるポンプと、を備え、
前記ポンプは、前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に液体を循環可能であり、
前記第1の弁は、前記ヘッドによる印字中に閉じている液体吐出装置。」
[相違点]
本件補正発明においては、「ポンプによる液体の循環」は、「液体が前記第1の流路から分岐する第4の流路を通った後に前記ヘッドを介さずに前記第1の流路を通ることを含」むものであるのに対し、引用発明1においては、「加圧ポンプ30」及び「吸引ポンプ31」によるインクの循環が、「供給路21」から分岐する流路を通った後にヘッドを介さずに「供給路21」を通ることを含むことは特定されていない点。
(4)判断
ア 前記(2)エに示した周知技術の「インク」、「液体吐出部」、「第1の液体流路」、「流通ポンプ」は、本願発明の「液体」、「ヘッド」、「第1の流路」、「ポンプ」に相当する。また、前記周知技術の「第1の液体流路から第2の分岐部を経由して」インクが流通する「第2の液体流路」は、本願発明の「第1の流路から分岐する第4の流路」に相当する。また、前記周知技術の「第2の液体流路」は、「流通ポンプと液体吐出部との間」の「第2の分岐部を経由して」インクが流通し、さらに、「第1の分岐部から第1の液体流路内へ流通」するものであるから、本願発明の「第4の流路」と、周知技術の「第2の液体流路」は、「液体が」「通った後に」「ヘッドを介さずに」「第1の流路を通る」ものである点で一致する。
そうすると、前記周知技術は、前記(3)シに示した相違点に係る構成を充足する。
イ そして、引用発明1は、「流路に堆積した液体の沈降物を確実に除去することができる」ものであり、周知技術は「インクに含まれる色材の沈降を防止する」技術であるから、両者は技術分野及び課題が共通するものであって、引用発明1の「流路に堆積した液体の沈降物を確実に除去する」との課題の解決をより一層図るために、前記周知技術を併せ用いる動機付けはあるといえる。
ウ したがって、引用発明1の「供給路21」の「加圧ポンプ30」の付近において、前記周知技術を適用し、前記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難かつ格別顕著な効果を認めることはできない。
(5)請求人の主張
請求人は、令和7年7月9日提出の意見書3.(1)ウ.において、「引用文献1には、補正後の請求項1の「前記ポンプは、前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に液体を循環可能であり、前記ポンプによる液体の循環は、液体が前記第1の流路から分岐する第4の流路を通った後に前記ヘッドを介さずに前記第1の流路を通ることを含み、前記第1の弁は、前記ヘッドによる印字中に閉じている」は、開示も示唆もされておりません。」と主張するが、前記(3)及び(4)のとおり、上記構成を備えたものは、引用発明1及び周知技術から、当業者が容易に想到し得ると判断されるものであって、引用文献1に開示も示唆もないという主張は、その容易想到性をなんら左右しない。
(6)小括
前記(1)~(5)のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明1及び周知技術より、当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定についてのむすび
前記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれを目的としたものにも該当しない補正であり、同項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条1項において読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正が仮に、同法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと解したとしても、前記3のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法同条第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反する。
したがって、同法第159条1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるとの結論に変わりはない。
第3 本願発明についての判断
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年10月23日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載される事項から特定されるものである。
2 当審拒絶理由通知の内容
当審拒絶理由通知において通知した拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
[理由1](新規性欠如)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2](進歩性欠如)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
引用文献1:特開2011-212872号公報
引用文献2:特開2012-152972号公報
3 対比・判断
(1)引用文献1の記載事項及び記載された発明
引用文献1の記載事項及び引用発明1は前記第2の3(2)ア~イに示したとおりである。
(2)引用文献2の記載事項及び記載された発明
当審拒絶理由通知において引用し、本願の優先日前に発行された特開2012-152972号公報には、次のとおり記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出型の画像形成装置に備えられた吐出液の循環型の流路ユニット、および、流路ユニットを備える画像形成装置に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルが形成されたヘッドが水平方向に複数並べて配置される場合、それらのヘッドにインクを供給する上流側の管において水平方向にインクを移送する区間が存在することが考えられる。水平方向にインクを移送する管内では、傾斜している管や鉛直方向にインクを移送する管と比較して沈降が解消されにくい。
本発明は、水平方向に吐出液を移送する管内における吐出液の沈降を解消することを目的とする。」
(イ)「【0014】
1.第一実施形態
図1は、本発明の第一実施形態にかかる画像形成装置としてのインクジェットプリンター1の主要な構成要素を示す模式図である。インクジェットプリンター1は、制御部10と、インクタンク20と、吐出ユニット30と、上流側主流路管41と、上流側分岐流路管42と、下流側分岐流路管43と、下流側主流路管44と、上流側バイパス流路管45と、下流側バイパス流路管46と、ポンプ50と、上流側バルブ61と、下流側バルブ62と、キャップ306と、を備えている。インクタンク20と吐出ユニット30と上流側主流路管41と上流側分岐流路管42と下流側分岐流路管43と下流側主流路管44と上流側バイパス流路管45と下流側バイパス流路管46とポンプ50と上流側バルブ61と下流側バルブ62とはインク(吐出液)の種類ごとに設けられる。
【0015】
制御部10は、図示しないCPUとRAMとROMとを備え、ROMに格納されている制御プログラムをCPUが実行することにより、後述するピエゾ素子やポンプやキャップやバルブの制御を行う。インクタンク20は、インクを貯留するタンクである。吐出ユニット30は水平方向に並べて複数配置されている。
【0016】
上流側主流路管41は上流側主流路410を構成している管であり、インクタンク20と接続している。複数の上流側分岐流路管42は、上流側主流路管41から下流側に分岐しそれぞれが複数の吐出ユニット30のそれぞれと接続している。上流側分岐流路管42は上流側分岐流路420を構成している。上流側分岐流路420の断面積(インクの移送方向と直交する断面の面積)は上流側主流路410の断面積よりも小さい。上流側主流路410は水平方向に配置される複数の吐出ユニット30にインクを供給するために、水平方向にインクを移送する水平区間410aを有する。
【0017】
複数の吐出ユニット30はそれぞれ下流側分岐流路管43のそれぞれと接続している。下流側分岐流路管43は下流側分岐流路430を構成している。各下流側分岐流路管43は下流側主流路管44と接続し、下流側主流路管44はインクタンク20と接続している。下流側主流路管44は下流側主流路440を構成している。下流側主流路440は、水平方向に配置された複数の吐出ユニット30と接続する下流側分岐流路430のそれぞれと合流するために、水平方向にインクを移送する水平区間440aを有する。下流側分岐流路430の断面積は下流側主流路440の断面積よりも小さい。
【0018】
吐出ユニット30から吐出されなかったインクは下流側分岐流路430と下流側主流路440を経てインクタンク20に帰還する。すなわち本実施形態においては、インクに含まれる個体成分であって、比重がインクを構成する液体成分よりも大きい固体成分が流路内において沈降することを防止するために、インクが循環するように循環流路が構成されている。
【0019】
上流側バイパス流路管45は、その上流側において上流側主流路管41の水平区間410aと接続し、下流側においてインクタンク20と接続している。上流側バイパス流路管45は上流側バイパス流路450を構成している。上流側バイパス流路管45には、上流側バイパス流路450におけるインクの流動可否を切り換える上流側バルブ61が設けられている。下流側バイパス流路管46は、上流側において上流側主流路管41と接続し、下流側において下流側主流路管44の水平区間440aと接続している。下流側バイパス流路管46は下流側バイパス流路460を構成している。下流側バイパス流路管46には、下流側バイパス流路460におけるインクの流動可否を切り換える下流側バルブ62が設けられている。上流側バイパス流路450および下流側バイパス流路460の断面積は分岐流路420,430の断面積よりも大きい。また、上流側バイパス流路450および下流側バイパス流路460は、吐出ユニット30と接続する必要がないため上流側分岐流路420や下流側分岐流路430と比較して単純な形状で構成することができる。そのため、分岐流路420,430等と比較して流路内抵抗が低い。上流側バルブ61と下流側バルブ62は、制御部10からの制御信号に応じて上流側バイパス流路450および下流側バイパス流路460を開放または閉鎖する電磁弁である。
【0020】
ポンプ50は、インクタンク20からインクを吸引し、上流側主流路管41にインクを移送し流路内のインクを循環させることができる。ポンプ50は、制御部10の制御に応じて出力すなわち流量を可変にすることができる。
制御部10とインクタンク20と上流側主流路管41と上流側分岐流路管42と下流側主流路管44と下流側分岐流路管43と上流側バイパス流路管45と下流側バイパス流路管46とポンプ50と上流側バルブ61と下流側バルブ62とが、流路ユニットに相当する。
【0021】
図2Aおよび図2Bは、吐出ユニット30の模式図である。吐出ユニット30には共通インク室305が形成されており、共通インク室305は上流側分岐流路420と下流側分岐流路430とに接続している。また、吐出ユニット30には複数のノズル302が形成されており、各ノズル302はノズル面301に開口を形成している。ピエゾ素子303とインク室304とは、ノズル302ごとに設けられている。各インク室304は共通インク室225に接続している。上流側主流路410と上流側分岐流路420と下流側主流路440と下流側分岐流路430と上流側バイパス流路450と下流側バイパス流路460と共通インク室305とインク室304とはインクタンク20から供給されたインクで満たされている。ピエゾ素子303に駆動電圧パルスが印加されるとピエゾ素子303が機械的に変形し、インク室304に満たされたインクが加減圧されノズル302からインク滴が吐出される。
【0022】
印刷実行状態においては、吐出ユニット30がインク滴を吐出することによりインクタンク20からインクが吸引されるとともに、ポンプ50によってもインクタンク20からインクが吸引され、上流側主流路410にインクが移送される。また吐出ユニット30にはキャップ306が備えられている。キャップ306は、インクジェットプリンター1の非印刷実行時(例えばイニシャライズ動作時やメンテナンス動作時)にノズル面301に密着しノズル面301を押圧する(図2B参照)。各吐出ユニット30には、ノズル面301をキャップ306で押圧し、また、キャップ306をノズル面301から離間させ待避位置に戻すための図示しない機構が備えられている。制御部10からの制御信号に従ってキャップ機構は前述の動作を実施することができる。
【0023】
次に、印刷実行状態(第一制御状態)と非印刷実行状態(第二制御状態)とにおける制御部10の制御について説明する。非印刷実行状態における水平区間410a,440aの流速が印刷実行状態における同区間の流速よりも大きくなるようにポンプ50やバルブ61,62の制御が行われる。本実施形態では、印刷実行状態のうち基準印刷時(詳細は後述する)における水平区間410a、440aの流速を基準にする。」
(ウ)「【0025】
図3は、各状態における水平区間の流速を示すグラフである。基準印刷時の水平区間410aまたは水平区間440aの流速を基準流速と呼ぶ。基準印刷時に対して通常印刷時は、ピエゾ素子303のポンプ機能に加えて補助的にポンプ50のポンプ機能を用いる。通常印刷時は印刷画像データによって吐出される量が一定ではないので、ピエゾ素子によるポンプ機能だけでは水平区間の流速も変動しうる。そこで制御部10は、ピエゾ素子の吐出動作に起因する一定でない流速を、ポンプ50のポンプ機能で可変に補うことによって、水平区間の平均的な流速が基準流速となるようにポンプ50を制御する。印刷実行状態に対して非印刷実行状態(例えば通常印刷が始まる前のイニシャライズ動作時や、メンテナンス動作時等であって、ノズル302からインク滴が吐出されない状態の場合)には、制御部10はポンプ50の出力値と後述するバルブの開閉とキャップによって水平区間での流速が、印刷実行状態における水平区間の流速(すなわち基準流速)より大きくなるように各部を制御する。
【0026】
図4は、図1に示す流路を示す模式図である。図4Aは印刷実行状態(第一制御状態)におけるインクの流路を示している。制御部10は通常印刷時(図3の通常印刷時に対応)においては、上流側バルブ61と下流側バルブ62の両方を閉鎖した状態でピエゾ素子303と補助的にポンプ50を作動させる。したがって図4Aに示すように、上流側バイパス流路450と下流側バイパス流路460にはインクは流れない。インクはインクタンク20から上流側主流路410と上流側分岐流路420を経由して吐出ユニット30に供給され、ノズルから吐出される。吐出されなかったインクは下流側分岐流路430と下流側主流路440を経由してインクタンク20に帰還する。水平区間の平均的な流速が基準流速と同等となるようにポンプ50の出力が制御される。なお、ポンプ50の制御については、具体的には例えば、図3に示す各流速とするためにポンプ50に与える情報と各場面との対応関係を規定したデータが予めROM等に記憶されており、制御部10はそのデータを用いて各場面においてポンプ50の出力を制御する。制御部10はその情報を用いて各状態においてポンプ50の出力を制御する。ポンプ50に与える情報は例えば、電圧値や、ポンプが備える回転体の回転数等である。」
(エ)「【図1】
[図:0001431750000002.jpg]
」
イ 引用文献2に記載された発明
前記アより、引用文献2には、次のとおりの発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
[引用発明2]
「インクジェットプリンター1であって、
制御部10と、インクタンク20と、吐出ユニット30と、上流側主流路管41と、上流側分岐流路管42と、下流側分岐流路管43と、下流側主流路管44と、上流側バイパス流路管45と、下流側バイパス流路管46と、ポンプ50と、上流側バルブ61と、下流側バルブ62と、キャップ306と、を備え(【0014】)、
制御部10は、ポンプやバルブの制御を行い、インクタンク20は、インクを貯留し(【0015】)、
上流側主流路管41は上流側主流路410を構成している管であり、インクタンク20と接続し、複数の上流側分岐流路管42は、上流側主流路管41から下流側に分岐しそれぞれが複数の吐出ユニット30のそれぞれと接続し、上流側分岐流路管42は上流側分岐流路420を構成し、上流側主流路410は、複数の吐出ユニット30にインクを供給するために水平方向にインクを移送する水平区間410aを有し(【0016】)、
複数の吐出ユニット30はそれぞれ下流側分岐流路管43のそれぞれと接続し、下流側分岐流路管43は下流側分岐流路430を構成し、各下流側分岐流路管43は下流側主流路管44と接続し、下流側主流路管44はインクタンク20と接続し、下流側主流路管44は下流側主流路440を構成し、下流側主流路440は、水平方向にインクを移送する水平区間440aを有し(【0017】)、
上流側バイパス流路管45は、その上流側において上流側主流路管41の水平区間410aと接続し、下流側においてインクタンク20と接続し、上流側バイパス流路450を構成しており、上流側バイパス流路管45には、上流側バイパス流路450におけるインクの流動可否を切り換える上流側バルブ61が設けられ、
下流側バイパス流路管46は、上流側において上流側主流路管41と接続し、下流側において下流側主流路管44の水平区間440aと接続し、下流側バイパス流路460を構成しており、下流側バイパス流路管46には、下流側バイパス流路460におけるインクの流動可否を切り換える下流側バルブ62が設けられ(【0019】)、
印刷実行状態においては、吐出ユニット30がインク滴を吐出し(【0022】)、
吐出ユニット30から吐出されなかったインクは下流側分岐流路430と下流側主流路440を経てインクタンク20に帰還し、インクが循環するように循環流路が構成され(【0018】)、
ポンプ50は、インクタンク20からインクを吸引し、上流側主流路管41にインクを移送し流路内のインクを循環させることができ(【0020】)、
非印刷実行状態における水平区間410a,440aの流速が印刷実行状態における同区間の流速よりも大きくなるようにポンプ50やバルブ61,62の制御が行われ(【0023】)、
制御部10は通常印刷時においては、上流側バルブ61と下流側バルブ62の両方を閉鎖した状態でピエゾ素子303と補助的にポンプ50を作動させる(【0026】)、
インクジェットプリンター1」
(3)本願発明と引用発明1との対比
本願発明は、前記第2の3で検討した本件補正発明の「前記ポンプは、前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に液体を循環可能」であることから「前記ヘッドから前記第2の流路に向かう同一方向に」なる循環させる液体の通過箇所と方向を省いて「前記ポンプは、前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で液体を循環可能」とするとともに、本件補正発明の「前記ポンプによる液体の循環は、液体が前記第1の流路から分岐する第4の流路を通った後に前記ヘッドを介さずに前記第1の流路を通ることを含」むことを省いたものである。
そうすると、本願発明は、前記第2の3(3)ア~サを踏まえると、引用発明1と全ての点で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明と引用発明1とは相違するところはないから、本願発明は、引用発明1と同一である。
また、本願発明は、引用発明1から当業者が容易になし得るものである。
(4)本願発明と引用発明2との対比
ア 本願発明と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「インクジェットプリンター1」は、「インク滴を吐出」する「吐出ユニット30」を備える装置であるから、本願発明の「液体吐出装置」に相当する。また、引用発明2の「インク」、「吐出ユニット30」、「インクタンク20」は、それぞれ本願発明の「液体」、「ヘッド」、「貯留部」に相当する。
(イ)引用発明2の「吐出ユニット30」は、「印刷実行状態」において「インク滴を吐出し」ているから、インク滴を吐出して印刷を実行していると理解できる。したがって、本願発明の「ヘッド」と引用発明2の「吐出ユニット30」は、「液体を吐出して印字を行う」ものである点で一致する。
(ウ)引用発明2の「インクタンク20」は、「インクを貯留し」、「インクタンク20」と接続する「上流側主流路管41」が構成する「上流側主流路410」が「複数の吐出ユニット30にインクを供給するため」の「水平区間410aを有」するから、前記(ア)を踏まえると、本願発明の「貯留部」と引用発明2の「インクタンク20」は、「ヘッドに供給する液体を貯留する」ものである点で一致する。
また、同様に、引用発明2の「上流側主流路410」は、前記(ア)を踏まえると、本願発明の「前記貯留部から前記ヘッドに液体を流すように構成された第1の流路」に相当する。
(エ)引用発明2の「下流側主流路440」は、「吐出ユニット30から吐出されなかったインク」が当該流路を経て「インクタンク20に帰還」するものであるから、前記(ア)を踏まえると、本願発明の「前記ヘッドからの液体を流すように構成された第2の流路」に相当する。
(オ)引用発明2の「上流側バイパス流路450」は、「上流側において上流側主流路管41の水平区間410aと接続し、下流側においてインクタンク20と接続」するから、「上流側主流路管41」が構成する「上流側主流路410」から分かれた流路である。一方、引用発明2の「下流側バイパス流路460」は、「上流側において上流側主流路管41と接続し、下流側において下流側主流路管44の水平区間440aと接続」するから、「上流側主流路管41」が構成する「上流側主流路410」から分かれた流路である。
以上より、引用発明2の「上流側バイパス流路450」又は「下流側バイパス流路460」は、前記(ウ)を踏まえると、本願発明の「第1の流路から分岐した第3の流路」に相当する。
(カ)引用発明2の「上流側バイパス流路管45」には、「上流側バイパス流路450におけるインクの流動可否を切り換える上流側バルブ61が設けられ」、「下流側バイパス流路管46」には、「下流側バイパス流路460におけるインクの流動可否を切り換える下流側バルブ62が設けられ」るのであるから、「上流側バイパス流路450」には、「上流側バルブ61」が設けられ、「下流側バイパス流路460」には、「下流側バルブ62」が設けられている。そうすると、引用発明2の「上流側バルブ61」又は「下流側バルブ62」は、前記(オ)を踏まえると、本願発明の「前記第3の流路に設けられ」る「第1の弁」に相当する。
また、引用発明2の「上流側バルブ61」又は「下流側バルブ62」は、バイパス流路におけるインクの流動可否を切り換えるものであるから、本願発明の「第1の弁」と引用発明2の「上流側バルブ61」又は「下流側バルブ62」は、「液体の流れを規制する」ものである点で一致する。
(キ)引用発明2の「制御部10」は、通常印刷時においては、「上流側バルブ61」と「下流側バルブ62」の両方を閉鎖するから、本願発明の「第1の弁」と引用発明2の「上流側バルブ61」又は「下流側バルブ62」は、前記(イ)も踏まえれば、「前記ヘッドによる印字中に閉じている」ものである点で一致する。
(ク)引用発明2の「ポンプ50」は、「インクタンク20からインクを吸引し、上流側主流路管41にインクを移送し流路内のインクを循環させることができ」るものであり、「上流側主流路管41から下流側に分岐しそれぞれが複数の吐出ユニット30のそれぞれと接続し」、「複数の吐出ユニット30はそれぞれ下流側分岐流路管43のそれぞれと接続し」、「各下流側分岐流路管43は下流側主流路管44と接続」するから、「上流側主流路管41」の「上流側主流路410」から「吐出ヘッド30」へ、「吐出ヘッド30」から「下流側主流路管44」の「下流側主流路440」へインクが循環するといえる。
そうすると、引用発明2の「ポンプ50」は、本願発明の「ポンプ」に相当し、前記(イ)~(エ)を踏まえれば、両者は「前記第1の流路から前記ヘッドへ、前記ヘッドから前記第2の流路へ液体を循環させる」ものである点で一致する。
(ケ)引用発明2の「インクジェットプリンター1」は、「非印刷実行状態における水平区間410a,440aの流速が印刷実行状態における同区間の流速よりも大きくなるようにポンプ50やバルブ61,62の制御が行われ」るところ、流量は流速に比例するとの技術常識からすれば、非印刷実行状態における流量は、印刷実行状態における流量と異なると理解できる。
そして、前記(ア)、(オ)及び(ケ)を踏まえると、本願発明の「ポンプ」と引用発明2の「ポンプ50」は、「前記第2の流路において、第1の流量と、前記第1の流量とは異なる第2の流量の二種類の流量で液体を循環可能」なものである点で一致する。
(コ)引用発明2の「インクジェットプリンター1」は、「インクタンク20」、「上流側主流路410」を構成する「上流側主流路管41」、「下流側主流路440」を構成する「下流側主流路管44」、「上流側バイパス流路450」を構成する「上流側バイパス流路管45」、「下流側バイパス流路460」を構成する「下流側バイパス流路管46」、「ポンプ50」、「上流側バルブ61」及び「下流側バルブ62」を備えるから、前記(ア)~(ケ)を踏まえると、本願発明の「液体吐出装置」と引用発明2の「インクジェットプリンター1」は、「貯留部」、「第1の流路」、「第2の流路」、「第3の流路」、「第1の弁」、及び「ポンプ」を備える点で一致する。
(サ)したがって、本願発明と引用発明2とは全ての点で一致し、相違するところはない。
イ 前記アのとおり、本願発明と引用発明2とは相違するところはないから、本願発明は、引用発明2と同一である。
また、本願発明は、引用発明2から当業者が容易になし得るものである。
(5)小括
前記(3)~(4)のとおり、本願発明は、引用発明1又は2と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明1又は2から当業者が容易に発明できたものであるから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-011252