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特許拒絶査定不服審判

2021-006236

導光板、画像表示装置

審判番号
2021-006236
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-127421外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年05月15日
審決日
2022年09月15日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-127421「導光板、画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月 7日出願公開、特開2019- 20723〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成30年7月4日(優先権主張 平成29年7月12日)の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 元年10月25日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月 7日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 2年12月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月 9日付け:令和2年12月15日の手続補正について

の補正の却下の決定、拒絶査定

令和 3年 5月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年5月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年5月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
画像表示素子から入射した画像光を導光して使用者の瞳に向かって出射する画像表示装置用の導光板であって、
前記画像光の波長436nmに対して屈折率2.04以上の鉛フリーガラスからなり、
板厚10mmにおける波長400nmの内部透過率が、0.6以上である
ことを特徴とする導光板。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載

本件補正前の、令和2年2月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
画像表示素子から入射した画像光を導光して使用者の瞳に向かって出射する画像表示装 置用の導光板であって、
前記画像光の波長に対して屈折率1.95以上の鉛フリーガラスからなり、
板厚10mmにおける波長400nmの内部透過率が、0.6以上である
ことを特徴とする導光板。」

2 補正の適否

本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項であるの鉛フリーガラスについて、「前記画像光の波長に対して屈折率1.95以上」を「前記画像光の波長436nmに対して屈折率2.04以上」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 引用文献1

本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-243787号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【0012】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成でありつつも画像の高輝度化、高コントラスト化、大画面化を同時に達成する映像表示装置、およびHMDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る映像表示装置は、画像を表示する表示素子と、表示素子に表示された画像が入射される導光部材と、導光部材に入射された画像を該導光部材内部で全反射させて使用者の瞳に向かって伝搬する伝搬手段とを有する。当該映像表示装置は、使用者の瞳を所定のアイポイントに位置させたときに該使用者に観察される画像の虚像画像に対する視野角が所定の視野角以上となるように、該画像の波長に対して屈折率1.6以上を有する硝材により導光部材が構成されている。なお、本明細書中、「有効視野角」と「視野角」は明確に区別して記載する。ここでの「視野角」は「見かけ視界」と同義である。
【0014】
このように、導光部材を高屈折率を有する硝材(別の側面によれば高分散材料)で構成したとき、表示素子の射出面から使用者の瞳に至るまでの空気換算距離が屈折率に依存して短くなり、見かけ視界が広角化することによって画像が大画面化すると同時に、導光部材の分散特性に依存して所定の光線(各主光線が属する同族光線(同族光束)をなす該主光線とベクトルが微少に異なる無数の光線)がより一層多く発生して、画像が高輝度化し、更にコントラストが向上する。本発明によれば、光学部品の追加等をするまでも無く簡易な構成で画像の高輝度化、高コントラスト化、大画面化が同時に達成される。」
「【0037】
本実施形態の導光板10には、使用波長に対する屈折率が1.6以上の高屈折率材料(例えばEFD15やEFD2、SF11、SF15など)が用いられている。そのため、HMDの導光板材料として一般的に使用される硝材(例えばBK7や石英など)を導光板10に適用した場合と比べて、表示素子24の射出面から使用者の瞳に至るまでの空気換算距離が屈折率の差に依存して短くなる。これによって見かけ視界が広がるため、表示素子24による生成画像は、より一層拡大された大画面画像の虚像Iとして使用者の網膜に結像することとなる。このように、本実施形態のHMD1においては、大画面化のための光学部品の追加や表示素子の大型化を伴うこと無く、導光板材料として高屈折率材料を採用するといった簡易な構成で表示画像の大画面化が達成される。
【0038】
別の表現によれば、使用者がHMD1を装着してアイポイントに瞳を位置させたときの表示素子24の虚像画像Iに対する視野角θVが±10.0(単位:deg)以上であるようにするため、使用波長に対する屈折率が1.6以上の高屈折材料が導光板10の材料として選択されている。表示素子24の虚像画像Iに対する視野角θVが±10.0(deg)以上であることは、表示画像が大画面であることと等価である。導光板10の材料が屈折率1.6を下回る材料である場合、表示素子24の虚像画像Iに対する視野角θVが±10.0(deg)以上にならないため、使用者は、大画面の画像を観察することができない。
続きを表示(全14行)
【0039】
別の側面によれば、使用波長に対する屈折率が1.6以上の高屈折材料を導光板10の材料として選択することにより、例えば導光板10の厚みを薄型化させた場合であっても、BK7等の硝材で導光板10を構成した場合と比べて、表示素子24の虚像画像Iに対する視野角θVを広角にし、或いは同程度の角度に維持することができる。
【0040】
人間が像を明瞭に観察できる視野の範囲は、眼球の中心を軸とした±16(deg)程度の範囲と考えられる。±16(deg)の範囲を越えた周辺部を観察するためには、眼球を動かして注視点(眼球の中心軸すなわち視線を向けて見ている対象の位置)を変える必要がある。つまり、表示素子24の虚像画像Iに対する視野角θVが±16(deg)の範囲を超える広角視野であるときには、表示画像の全体は、眼球を動かさない限り視界に収まり切らない。この場合、使用者は、視界に収まり切らない画像の全体を把握するために終始眼球を動かす必要があり、眼精疲労や視力低下を引き起こす問題が指摘される。従って、本実施形態においては、表示素子24の虚像画像Iに対する視野角θVが±10.0(deg)~±16(deg)の範囲に収まるように、導光板10の材料(ここでは屈折率)を選択することがより一層好適である。
【0041】
ところで、硝材は、一般に、屈折率と分散が比例関係にある。本実施形態の導光板10は、屈折率が1.6以上の硝材であることから、別の側面によれば高分散材料(例えばアッベ数40以下)で構成されているともいえる。ここで、表示素子24の射出面から射出された光軸に平行な各主光線は、導光板10に入射後、主に弾性散乱されてその前方散乱光が使用者の瞳に向かって導光板10内部を伝搬する。各主光線は、弾性散乱されて導光板10内部を伝搬される間、導光板10のアッベ数に依存して互いのベクトルが微少に異なる無数の光線を発する。この光線は、当該主光線が属する同族光線(同族光束)をなす光線であり、媒体のアッベ数が低いほど当該主光線と微少に異なるベクトルを持ってより多く発生する。なお、同族光線(同族光束)は、物体側の一点より発し像側で像点に集結すべき光線の集まり、すなわち共通波面を形成する光線群として定義される。
【0042】
すなわち、導光板10に入射された平行光束は、指向性を維持しつつも導光板10の分散特性に依存して、実質的にやや発散傾向を持った光束となり、導光板10内部を伝搬して使用者の瞳に向かう。従って、画像のコントラストは、HOE32R又は32Lの中心(画像の中心)を通る法線XR又はXL方向を中心としてある程度広がりを持った角度分布を有する。また、コントラスト分布は、広がりを持ちつつも伝搬光の指向性が失われていないため、広い角度範囲に亘って高い強度を持つ。そのため、使用者は、明るさとコントラストの高い画像を観察できるようになる。
【0043】
このように、本実施形態のHMD1においては、製造困難性や光学部品の追加等を伴うこと無く、導光板材料として高分散材料を採用するといった簡易な構成で表示画像の高輝度化と高コントラスト化が達成される。特に、眼前の光学ユニットが外界光を透過して外界視界に画像を重畳して表示するように構成された透過型HMDにおいては、外界光の影響により表示画像のコントラストが低下する問題があった。しかし、本実施形態のHMD1によれば、表示画像のコントラストが高いため、かかる問題が好適に改善される。」

イ したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「表示素子に表示された画像が入射され、入射された画像を導光板内部で全反射させて使用者の瞳に向かって伝搬する、映像表示装置が有する導光板であって、
使用波長に対する屈折率が1.6以上の高屈折率材料が用いられている導光板。」

(3)対比

本件補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「表示素子」は、本件補正発明の「画像表示素子」に、

引用発明1の「入射された画像」は、本件補正発明の「入射した画像光」に、

引用発明1の「全反射させ」は、本件補正発明の「導光して」に、

引用発明1の「使用者の瞳に向かって伝搬する」は、本件補正発明の「使用者の瞳に向かって出射する」に、

引用発明1の「映像表示装置」は、本件補正発明の「画像表示装置」に、

引用発明1の「導光板」は、本件補正発明の「導光板」に、

それぞれ相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】

「画像表示素子から入射した画像光を導光して使用者の瞳に向かって出射する画像表示装置用の導光板。」

【相違点】

導光板について、本件補正発明では、「前記画像光の波長436nmに対して屈折率2.04以上の鉛フリーガラスからなり、板厚10mmにおける波長400nmの内部透過率が、0.6以上である」のに対し、引用発明1では、「使用波長に対する屈折率が1.6以上の高屈折率材料が用いられている」点。

(4)判断

以下、上記相違点について検討する。

ア 相違点について

(ア)高屈折率材料として、板厚10mmにおける波長400nmの内部透過率が、0.6以上であり、波長436nmに対して屈折率2.04以上の鉛フリーガラスは、周知(必要ならば、特開2013-231827号公報(特に、【0263】のTAFD55(HOYA株式会社)参照)、特開2012-226014号公報(特に、【0100】等のTAFD55(HOYA)参照)、国際公開第2015/107579号(特に、[0078]のHOYA(株)製TAFD55参照)、特開2016-117598号公報(特に、特許請求の範囲参照)、特開2011-116621号公報(特に、特許請求の範囲参照)等を参照されたい。)である。

(イ)ここで、引用文献1の【0014】には、導光部材を高屈折率を有する硝材で構成したとき、見かけ視界(視野角)が広角化することによって画像が大画面化する旨記載され、引用発明1において、大画面化するためにできるだけ高屈折率の導光板を用いる動機があるといえる。

また、部材に鉛を使わないようにすること、画像を導光する導光板として内部透過率が高いものを用いるようにすることは、いずれも当業者が当然配慮する事項である。

(ウ)そうすると、上記(ア)及び(イ)を考慮すれば、引用発明1の導光板の高屈折率材料として、板厚10mmにおける波長400nmの内部透過率が、0.6以上であり、波長436nmに対して屈折率2.04以上の鉛フリーガラスを選択すること、すなわち、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。

したがって、引用発明1において、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

イ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について

ア 本件審判請求人は、令和3年5月15日付けで提出された審判請求書において、

(ア)「フルハイビジョンに対応したヘッドマウントディスプレイを構成できるといった作用効果を奏します。」、

(イ)「しかしながら、引用文献1、3、9、10、12、13には、請求項1に係る発明のように、「前記画像光の波長436nmに対して屈折率2.04以上の鉛フリーガラス」を用いる構成については開示も示唆もされておりません。」、

旨主張している。

イ 上記主張について、以下検討する。

(ア)本願優先日前にフルハイビジョンの映像を表示することは、一般的に行われており、引用文献1は、「映像表示装置は、使用者の瞳を所定のアイポイントに位置させたときに該使用者に観察される画像の虚像画像に対する視野角が所定の視野角以上となるように、該画像の波長に対して屈折率1.6以上を有する硝材により導光部材が構成されている」と記載されていることから、フルハイビジョンに対応した映像表示装置にしようとすることは、当業者が当然考慮することにすぎず、フルハイビジョンに対応したヘッドマウントディスプレイを構成できるといった作用効果は格別顕著なものということはできない。

さらに、フルハイビジョンに対応したヘッドマウントディスプレイにするためには、導光板を高屈折率の硝材とする以外に様々な要因(例えば、表示デバイスのサイズ、HOEのサイズ)も考慮する必要があり、導光板が高屈折率であることをもって、フルハイビジョンに対応したヘッドマウントディスプレイを構成できるとの作用効果を奏するとはいえない。

(イ)上記(イ)の主張については、前記(4)で説示したとおりである。

以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和3年5月15日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年2月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由の概略は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記

引用文献1.特開2010-243787号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)で記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「前記画像光の波長436nmに対して屈折率2.04以上」を「前記画像光の波長に対して屈折率1.95以上」としたものである。

そうすると、本願発明の数値範囲を、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由2]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-006236

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