特許拒絶査定不服審判
2024-013137
反射型マスクブランク、反射型マスク、並びに反射型マスク及び半導体装置の製造方法
- 審判番号
- 2024-013137
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-520392
- 請求日
- 2024年08月14日
- 審決日
- 2026年01月26日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】HOYA株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人 津国
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 堀井 康司
- 分類
- P18 .121-Z (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-520392「反射型マスクブランク、反射型マスク、並びに反射型マスク及び半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月28日国際公開、WO2019/225737〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)5月24日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成30年5月25日及び平成30年9月4日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 5月20日 :手続補正書の提出
令和5年 6月 1日付け:拒絶理由通知書
同年 9月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月 7日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月 2日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月14日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月14日 :審判請求書の提出
同年 9月 9日 :手続補正書(方式)の提出
以下、2018年(平成30年)5月25日を「最先の優先日」という。
第2 本願発明について
1 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年3月11日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、第1の層と第2の層とを有し、
前記第1の層は、前記第2の層よりも多層反射膜が存在する側に配置され、
前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含み、
前記第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)及びタングステン(W)のうち少なくとも1以上の元素とを含むことを特徴とする反射型マスクブランク。」
2 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成B3までに分説する。また、参考図として、本願の【図1】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X 反射型マスクブランクであって、
A 基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有[し]、
B0 前記位相シフト膜は、第1の層と第2の層とを有し、
B1 前記第1の層は、前記第2の層よりも多層反射膜が存在する側に配置され、
B2 前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含み、
B3 前記第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)及びタングステン(W)のうち少なくとも1以上の元素とを含む
ことを特徴とする
X 反射型マスクブランク。
<参考図(【図1】)>
[図:0001433673000001.jpg]
3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。下線は、合議体による。
(1) 【背景技術】、【発明の表示】等(【0001】~【0012】)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク、並びに反射型マスク及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきている。より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィーが開発されている。EUVリソグラフィーでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクでは、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、当該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、所望の転写用パターンが形成されたマスク構造を基本構造としている。また、転写用パターンの構成から、代表的なものとして、バイナリー型反射マスク及び位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。バイナリー型反射マスクは、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターンを有する。位相シフト型反射マスクは、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180度の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターン(位相シフトパターン)を有する。この位相シフト型反射マスクは、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので解像度向上効果がある。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから、精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
【0003】
EUVリソグラフィーでは、光透過率の関係から多数の反射鏡からなる投影光学系が用いられている。そして、反射型マスクに対してEUV光を斜めから入射させて、これらの複数の反射鏡が投影光(露光光)を遮らないようにしている。入射角度は、現在、反射マスク基板垂直面に対して6度とすることが主流である。投影光学系の開口数(NA)の向上と共に8度程度のより斜入射となる角度にする方向で検討が進められている。
【0004】
EUVリソグラフィーでは、露光光が斜めから入射されるため、シャドーイング効果と呼ばれる固有の問題がある。シャドーイング効果とは、立体構造を持つ吸収体パターンへ露光光が斜めから入射されることにより影ができ、転写形成されるパターンの寸法や位置が変わる現象のことである。吸収体パターンの立体構造が壁となって日陰側に影ができ、転写形成されるパターンの寸法や位置が変わる。例えば、配置される吸収体パターンの向きが斜入射光の方向と平行となる場合と垂直となる場合とで、両者の転写パターンの寸法と位置に差が生じ、転写精度を低下させる。
【0005】
このようなEUVリソグラフィー用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクに関連する技術が特許文献1から特許文献3に開示されている。また、特許文献1には、シャドーイング効果についても、開示されている。EUVリソグラフィー用の反射型マスクとして位相シフト型反射マスクを用いることで、バイナリー型反射マスクの吸収体パターンの膜厚よりも位相シフトパターンの膜厚を比較的薄くすることにより、シャドーイング効果による転写精度の低下の抑制を図っている。
【0006】
【特許文献1】特開2010-080659号公報
【特許文献2】特開2004-207593号公報
【特許文献3】特開2009-206287号公報
【発明の表示】
【0007】
パターンを微細にするほど、及びパターン寸法やパターン位置の精度を高めるほど半導体装置の電気的特性及び性能が上がり、また、集積度向上やチップサイズを低減できる。そのため、EUVリソグラフィーには従来よりも一段高い高精度微細寸法パターン転写性能が求められている。現在では、hp16nm(half pitch 16nm)世代対応の超微細高精度パターン形成が要求されている。このような要求に対し、シャドーイング効果を小さくするために、更に吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を薄くすることが求められている。特に、EUV露光の場合において、吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を60nm未満、好ましくは50nm以下とすることが要求されている。
【0008】
特許文献1乃至3に開示されているように、従来から反射型マスクブランクの吸収体膜(位相シフト膜)を形成する材料としてTaが用いられてきた。しかし、EUV光(例えば、波長13.5nm)におけるTaの屈折率nが約0.943である。そのため、Taの位相シフト効果を利用しても、Taのみで形成される吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚の下限は60nmが限界である。より膜厚を薄くするためには、例えば、屈折率nの小さい(位相シフト効果の大きい)金属材料を用いることができる。波長13.5nmにおける屈折率nが小さい金属材料としては、特許文献1の、例えば図7にも記載されているように、Mo(n=0.921)及びRu(n=0.887)がある。しかし、Moは非常に酸化されやすく洗浄耐性が懸念され、Ruはエッチングレートが低く、加工や修正が困難である。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、反射型マスクのシャドーイング効果をより低減するとともに、微細で高精度な位相シフトパターンを形成できる反射型マスクブランク及びこれによって作製される反射型マスクの提供、並びに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0011】
(構成1)
本発明の構成1は、基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、第1の層と第2の層とを有し、
前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含む材料からなり、
前記第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなることを特徴とする反射型マスクブランクである。
【0012】
本発明の構成1によれば、反射型マスクパターンの開口部からの反射光と比べて、位相シフトパターンからの反射光が所定の位相差を得るために必要な膜厚が薄い位相シフト膜を得ることができる。そのため、反射型マスクにおいて、位相シフトパターンによって生じるシャドーイング効果をより低減することができる。また、本発明の構成1によれば、高い相対反射率(位相シフトパターンのない部分で反射されるEUV光を反射率100%としたときの相対的な反射率)の位相シフト膜を得ることができる。また、本発明の構成1の反射型マスクブランクから製造された反射型マスクを用いることにより、半導体装置製造の際のスループットを向上することができる。」
(2) 【発明を実施するための形態】(【0030】~【0125】、【図1】)
「【発明を実施するための形態】
【0030】
…(中略)…
【0031】
<反射型マスクブランク100の構成及びその製造方法>
図1は、本実施形態の反射型マスクブランク100の構成を説明するための要部断面模式図である。同図に示されるように、反射型マスクブランク100は、マスクブランク用基板1(単に、「基板1」ともいう。)と、多層反射膜2と、保護膜3と、位相シフト膜4(下層41及び上層42)とを有し、これらがこの順で積層されるものである。多層反射膜2は、第1主面(表面)側に形成された露光光であるEUV光を反射する。保護膜3は、当該多層反射膜2を保護するために設けられ、後述する位相シフト膜4をパターニングする際に使用するエッチャント及び洗浄液に対して耐性を有する材料で形成される。位相シフト膜4は、EUV光を吸収する。また、基板1の第2主面(裏面)側には、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。
【図1】
[図:0001433673000002.jpg]
…(中略)…
【0057】
<<位相シフト膜4>>
保護膜3の上に、EUV光の位相をシフトする位相シフト膜4が形成される。位相シフト膜4(位相シフトパターン4a)が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させる。一方、開口部(位相シフト膜4がない部分)では、EUV光が、保護膜3を介して多層反射膜2から反射する。位相シフト膜4が形成されている部分からの反射光は、開口部からの反射光と所望の位相差を形成する。位相シフト膜4は、位相シフト膜4からの反射光と、多層反射膜2からの反射光との位相差が、160度から200度となるように形成される。180度近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上にともなって解像度が上がり、露光量裕度、及び焦点裕度等の露光に関する各種裕度が拡がる。パターンや露光条件にもよるが、一般的には、この位相シフト効果を得るための位相シフト膜4の反射率の目安は、相対反射率で2%以上である。十分な位相シフト効果を得るためには、位相シフト膜4の反射率は、相対反射率で6%以上が好ましい。また、相対反射率が10%以上、より好ましくは15%以上と高い場合には、コントラストをより向上させるために、位相差を130度から160度、又は200度から230度とすることもできる。ここで、位相シフト膜4(位相シフトパターン4a)の相対反射率とは、位相シフトパターン4aのない部分での多層反射膜2(保護膜3付きの多層反射膜2を含む)から反射されるEUV光を反射率100%としたときの、位相シフトパターン4aから反射されるEUV光の反射率である。なお、本明細書では、相対反射率のことを、単に「反射率」という場合がある。
【0058】
また、十分な位相シフト効果を得るために、位相シフト膜4の絶対反射率は9%以上が好ましい。ここで、位相シフト膜4(位相シフトパターン4a)の絶対反射率とは、位相シフト膜4(又は位相シフトパターン4a)から反射されるEUV光の反射率(入射光強度と反射光強度の比)をいう。
…(中略)…
【0061】
本実施形態の位相シフト膜4は、第1の層と第2の層とを有する。第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含む材料からなる。第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる。
【0062】
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4は、所定の材料の第1の層及び第2の層を含むことにより、相対反射率が6%~40%の位相シフトパターン4aを得ることができる。本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4は、所定の材料を用いることにより、絶対反射率が4%~27%とすることができる。また、本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4は、所定の位相差(開口部からの反射光と位相シフトパターン4aからの反射光との位相差)を得るために必要な膜厚が薄い。そのため、反射型マスク200において、位相シフトパターン4aによって生じるシャドーイング効果をより低減することができる。また、本実施形態の反射型マスクブランク100から製造された反射型マスク200を用いることにより、半導体装置製造の際のスループットを向上することができる。
【0063】
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の第1の層について説明する。第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含む材料からなる。
【0064】
タンタル(Ta)を含む第1の層の材料としては、タンタル(Ta)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選らばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、第1の層の材料は、タンタル(Ta)に、窒素(N)を含有する材料であることが特に好ましい。このような材料の具体例としては、窒化タンタル(TaN)、酸化窒化タンタル(TaON)、ホウ化窒化タンタル(TaBN)、及びホウ化酸化窒化タンタル(TaBON)等が挙げられる。
【0065】
第1の層がTa及びNを含む場合、Ta及びNの組成範囲(原子比率、Ta:N)は、3:1から20:1が好ましく、4:1から12:1がより好ましい。また、膜厚は、2~55nmが好ましく、2~30nmがより好ましい。
【0066】
クロム(Cr)を含む第1の層の材料としては、クロム(Cr)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)及び水素(H)から選らばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、第1の層の材料は、クロム(Cr)に、炭素(C)を含有する材料であることが特に好ましい。このような材料の具体例としては、窒化クロム(CrC)、酸化窒化クロム(CrOC)、炭化窒化クロム(CrCN)、及び酸化炭化窒化クロム(CrOCN)等が挙げられる。
【0067】
第1の層がCr及びCを含む場合、Cr及びCの組成範囲(原子比率、Cr:C)は、5:2から20:1が好ましく、3:1から12:1がより好ましい。また、膜厚は、2~55nmが好ましく、2~25nmがより好ましい。
…(中略)…
【0071】
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の第2の層(以下、単に「所定のRu系材料」という場合がある。)について説明する。第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びレニウム(Re)のうち少なくとも1以上の元素とを含む金属を含む材料からなる。
【0072】
Ruの屈折率nは、n=0.886(消衰係数k=0.017)であり、高反射率の位相シフト膜4の材料として好ましい。しかしながら、RuO等のRu系化合物は、結晶化した構造になりやすく、また加工特性も悪い。すなわち、結晶化した金属の結晶粒子は、位相シフトパターン4aを形成する際に側壁ラフネスが大きくなりやすい。そのため、所定の位相シフトパターン4aを形成する際に悪影響を及ぼす場合がある。一方、位相シフト膜4の材料の金属がアモルファスである場合には、位相シフトパターン4aを形成する際の悪影響を低減することができる。Ruに所定の元素(X)を添加することにより、位相シフト膜4の材料の金属をアモルファス化するとともに、加工特性を向上させることができる。所定の元素(X)として、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1以上を選択することができる。
【0073】
なお、Niの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.948及びk=0.073である。また、Coは、n=0.933及びk=0.066であり、Crは、n=0.932及びk=0.039である。また、Vの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.944及びk=0.025、Nbの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.933及びk=0.005、Moの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.923及びk=0.007、Wの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.933及びk=0.033、Reの屈折率n及び消衰係数kは、n=0.914及びk=0.04である。Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、従来材料であるRuTaよりも位相シフト膜4の膜厚を薄くすることが可能である。また、Ni及びCoの方が、Crよりも消衰係数kが大きいため、元素(X)としてNi及び/又はCoを選択した方が、Crを選択するよりも位相シフト膜4の膜厚を薄くすることが可能である。
…(中略)…
【0078】
Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、従来材料であるRuTaと比べて、加工特性がよい。Taは酸化されると塩素系ガス及び酸素ガスでエッチングが困難である。特に、RuCrは、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスで容易にエッチングすることが可能であるため、加工特性に優れている。また、RuCrは、第1の層の材料がCrを含む場合には、第1の層と第2の層とを同じドライエッチングガスで加工することが可能となる。
【0079】
Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuCr、RuNi及びRuCo)は、アモルファス構造であり、また塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスにより、容易にエッチングをすることが可能である。また、これらの材料は、酸素ガスによるエッチングが可能である。三元系の材料(RuCrNi、RuCrCo及びRuNiCo)及び四元系の材料(RuCrNiCo)についても同様であると考えられる。
【0080】
また、上記の二元系の材料の他、RuにV、Nb、Mo、W又はReを添加した二元系の材料(RuV、RuNb、RuMo、RuW及びRuRe)は、従来材料であるRuTaと比べて加工性がよい。RuCrと同様、RuW、RuMoは特に加工特性に優れている。
【0081】
また、Ruに所定の元素(X)を添加した二元系の材料(RuV、RuNb、RuMo、RuW及びRuRe)は、アモルファス構造であり、また、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスにより、容易にエッチングをすることが可能である。また、これらの材料は、酸素ガスによるエッチングが可能である。三元系の材料及び四元系の材料についても同様であると考えられる。
…(中略)…
【0093】
上述のように、Ruと、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReの組成比が所定の範囲であることにより、薄い膜厚において、高い反射率及び所定の位相差の位相シフト膜4を得るための第2の層を得ることができる。
【0094】
上記の説明では、主に、二元系の所定のRu系材料について説明したが、三元系の材料(RuCrNi、RuCrCo、RuNiCo及びRuCrW)及び四元系の材料(RuCrNiCo及びRuCrCoW)についても、二元系の所定のRu系材料を同様の性質を有する。そのため、所定のRu系材料として、三元系又は四元系の材料を用いることができる。
【0095】
所定のRu系材料は、屈折率及び消衰係数に大きく影響を与えない範囲で、Ruと、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1以上の元素と、更にそれ以外の元素を含むことができる。所定のRu系材料は、例えば、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)又はホウ素(B)等の元素を含むことができる。例えば、所定のRu系材料に、窒素(N)を添加すると、位相シフト膜4の酸化を抑制することができるので、位相シフト膜4の性質を安定化することができる。また、所定のRu系材料に、窒素(N)を添加した場合、スパッタリングの成膜条件によらず、容易に結晶状態をアモルファスにすることが可能である。この場合には、窒素の含有量は、1原子%以上が好ましく、3原子%以上がより好ましい。また、窒素の含有量は、10原子%以下が好ましい。酸素(O)、炭素(C)及びホウ素(B)等についても、位相シフト膜4の安定化等のために、屈折率及び消衰係数に大きく影響を与えない範囲で、位相シフト膜4の材料に添加することができる。位相シフト膜4の材料が、Ruと、Cr、Ni、Co、V、Nb、Mo、W及びReのうち少なくとも1以上の元素と、それ以外の元素を含む場合において、上記それ以外の元素の含有量は、10原子%以下が好ましく、5原子%以下であることがより好ましい。
…(中略)…
【0098】
本明細書において、位相シフト膜4が二つの層からなる場合、多層反射膜2又は保護膜3に接する層を下層41といい、多層反射膜2又は保護膜3上とは反対側の位相シフト膜4の表面に配置される層を上層42という。位相シフト膜4が三つ以上の層からなる場合、一般的には、下層41は、上層42よりも多層反射膜2又は保護膜3が存在する側の任意の位置に配置される。なお、下層41は、位相シフト膜4の最下層(位相シフト膜4を形成する層のうち、多層反射膜2又は保護膜3に接する層)であることができ、上層42は、位相シフト膜4の最上層(位相シフト膜4を形成する層のうち、最下層から最も離れた位置にある層)であることができる。以下の説明において、第1の層及び第2の層のそれぞれは、上層42又は下層41のいずれか一方である。すなわち、所定の材料の第1の層が上層42である場合には、所定の材料の第2の層が下層41であり、所定の材料の第1の層が下層41である場合には、所定の材料の第2の層が上層42である。
【0099】
位相シフト膜4は、上述の第1の層及び第2の層の二つの層のみからなることができる。また、位相シフト膜4は、第1の層及び第2の層以外の膜を含むことができる。本実施形態では、位相シフト膜4は、上述の第1の層及び第2の層の二つの層のみからなることが好ましい。位相シフト膜4が、第1の層及び第2の層の二つの層のみからなる場合には、マスクブランク製造時の工程数を削減できるので、生産効率が向上する。
…(中略)…
【0103】
以下、まず、第1の層、第2の層及び保護膜3のエッチング特性について説明する。
【0104】
第1の層が、タンタル(Ta)を含む材料である場合、第1の層を、酸素ガスを含まないハロゲン系ガスを含むドライエッチングガスによってパターニングすることができる。
【0105】
第1の層が、クロム(Cr)を含む材料である場合、第1の層を、塩素系のドライエッチングガスによってパターニングすることができる。塩素系のドライエッチングガスは、酸素ガスを含むことができ、また、酸素ガスを含まなくても良い。
【0106】
所定のRu系材料である第2の層は、酸素を含むドライエッチングガスによってパターニングすることができる。ドライエッチングガスとして、例えば、酸素単体のガス、並びに、酸素ガス及び塩素系ガスを含むガスを用いることができる。
【0107】
保護膜3の材料が、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料である場合、保護膜3は、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガス、又は酸素ガスを用いたドライエッチングガスを用いたドライエッチングに対して耐性を有する。なお、このドライエッチングガスにより、所定のRu系材料である第2の層のエッチングが可能である。
【0108】
保護膜3の材料が、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料である場合、保護膜3は、酸素ガスを含まないハロゲン系ガスを用いたドライエッチングに対して耐性を有する。なお、このドライエッチングガスにより、タンタル(Ta)を含む第1の層のエッチングが可能である。
【0109】
保護膜3の材料が、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料である場合、保護膜3は、酸素ガスを含まない、又は酸素ガスを少なくした塩素系ガスを含むドライエッチングガスを用いたドライエッチングに対して耐性を有する。このドライエッチングガスにより、クロム(Cr)を含む第1の層のエッチングが可能である。
【0110】
以上述べた第1の層、第2の層及び保護膜3のエッチング特性から、保護膜3の材料の種類、及び第1の層及び第2の層の配置は、以下のようにすることが好ましい。
【0111】
保護膜3が、ルテニウム(Ru)を含む材料からなる場合、保護膜3の上に、第1の層及び第2の層がこの順に積層されていることが好ましい。ルテニウム(Ru)を含む保護膜3及び第2の層の間に、タンタル(Ta)及び/又はクロム(Cr)を含む第1の層が配置されることにより、位相シフト膜4の第1の層をエッチングする際に、ルテニウム(Ru)を含む保護膜3に対して耐性のあるエッチングガスを用いることができる。
【0112】
保護膜3が、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料からなるケイ素系材料の場合、保護膜3の上に、第2の層及び第1の層がこの順に積層されていることが好ましい。ケイ素系材料を含む保護膜3の上にルテニウム(Ru)を含む第2の層が配置されることにより、位相シフト膜4のルテニウム(Ru)を含む第2の層をエッチングする際に、ケイ素系材料を含む保護膜3に対して耐性のあるエッチングガスを用いることができる。
【0113】
位相シフト膜4の第1の層が、タンタル(Ta)を含む材料である場合、第1の層を、酸素ガスを含まないハロゲン系ガスを含むドライエッチングガスによってパターニングすることができる。また、第2の層を塩素系ガスと酸素ガスとを含むドライエッチングガスによってパターニングすることができる。タンタル(Ta)を含む第1の層の材料は、塩素系ガスと酸素ガスとを含むドライエッチングガスに対して耐性を有し、第2の層の材料は、酸素ガスを含まないドライエッチングガスに対して耐性を有するためである。この場合、第1の層と第2の層のどちらが保護膜3の上に接しているか(下層41であるか)により、保護膜3の材料を適切に選択する必要がある。すなわち、第1の層が下層41である場合には、保護膜3として、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料を用いることができる。また、第2の層が下層41である場合には、保護膜3として、ケイ素系材料、特にケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料を用いることができる。
【0114】
位相シフト膜4の第1の層が、クロム(Cr)を含む材料である場合、第2の層を酸素ガスを含むドライエッチングガスによってパターニングし、第1の層を酸素ガスを含まない塩素系ガスを含むドライエッチングガスによってパターニングすることができる。この場合、第1の層と第2の層のどちらが保護膜3の上に接しているか(下層41であるか)により、保護膜3の材料を適切に選択する必要がある。すなわち、第1の層が下層41である場合には、保護膜3として、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料を用いることができる。また、第2の層が下層41である場合には、保護膜3として、ケイ素系材料、特にケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料を用いることができる。クロム(Cr)を含む第1の層及びルテニウム(Ru)を含む第2の層を、互いに異なるドライエッチングガスによりエッチングすることにより、位相シフト膜4を微細で高精度にパターニングすることができる。
【0115】
位相シフト膜4の第1の層が、クロム(Cr)を含む材料である場合、第2の層及び第1の層を塩素系ガスと酸素ガスとを含むドライエッチングガスによってパターニングすることができる。この場合、第1の層及び第2の層の両方のエッチングを一回のエッチング工程により行うことができる。そのため、適切なスループットで、位相シフト膜4をパターニングすることができる。この場合、塩素系ガス:酸素系ガスの流量比率が3:1~10:1であることが好ましい。
【0116】
保護膜3としては、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガスのドライエッチングガスに対して耐性のあるケイ素系材料、特にケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料を用いることが好ましい。保護膜3として、ルテニウム(Ru)を主成分として含む材料を用いることもできるが、この場合には、このドライエッチングガスにより、保護膜3がエッチングされないように、混合ガス中の酸素ガスを少なくする必要がある。したがって、その場合には、塩素系ガス:酸素ガスの流量比率が10:1~40:1であることが好ましい。
【0117】
なお、保護膜3の材料は、上述の材料以外であっても、所定のドライエッチングガスを用いたドライエッチングにおける、保護膜3に対する位相シフト膜4のエッチング選択比(位相シフト膜4のエッチング速度/保護膜3のエッチング速度)が1.5以上、好ましくは3以上となる材料を選択することができる。
【0118】
上述のドライエッチングで用いるハロゲン系ガスとしては、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスを用いることができる。フッ素系ガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6、及びF2等を用いることができる。塩素系ガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、CCl4、及びBCl3等を用いることができる。また、必要に応じて、フッ素系ガス及び/又は塩素系ガスと、O2とを所定の割合で含む混合ガスを用いることができる。これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
…(中略)…
【0124】
本実施形態の反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の結晶構造は、アモルファスであることが好ましい。位相シフト膜4の結晶構造がアモルファスであることにより、金属などの結晶粒子による、位相シフトパターン4aを形成する際の悪影響を低減することができる。したがって、位相シフト膜4の結晶構造をアモルファスとすることにより、位相シフト膜4をエッチングする際のエッチング速度を速めたり、パターン形状を良好にしたり、加工特性を向上させることが可能となる。
【0125】
また、位相シフトパターン4aの断面形状を良好にすることに着目した場合には、第2の層と比較してエッチング速度が速い第1の層を下層41に配置する方が好ましい。」
(3) 実施例1、2、5、6(【0151】~【0261】、【図2】)
「【0151】
[実施例1]
図2は、反射型マスクブランク100から反射型マスク200を作製する工程を示す要部断面模式図である。
【図2】
[図:0001433673000003.jpg]
【0152】
反射型マスクブランク100は、裏面導電膜5と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、位相シフト膜4とを有する。実施例1の位相シフト膜4は、TaN膜の下層41(第1の層)と、RuCr膜(第2の層)の上層42とを有する。そして、図2(a)に示されるように、位相シフト膜4上にレジスト膜11を形成する。
【0153】
まず、実施例1の反射型マスクブランク100について説明する。
【0154】
第1主面及び第2主面の両主表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO2-TiO2系ガラス基板を準備し基板1とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
【0155】
SiO2-TiO2系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。
裏面導電膜5の形成条件:Crターゲット、ArとN2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)、膜厚20nm。
【0156】
次に、裏面導電膜5が形成された側と反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成した。基板1上に形成される多層反射膜2は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜2とするために、MoとSiからなる周期多層反射膜とした。多層反射膜2は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、Arガス雰囲気中でイオンビームスパッタリング法により基板1上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。まず、Si膜を4.2nmの膜厚で成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの膜厚で成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜2を形成した。ここでは40周期としたが、これに限るものではなく、例えば60周期でも良い。60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する反射率を高めることができる。
【0157】
引き続き、Arガス雰囲気中で、Ruターゲットを使用したイオンビームスパッタリング法によりRu膜からなる保護膜3を2.5nmの膜厚で成膜した。
【0158】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaN膜からなる第1の層を、位相シフト膜4の下層41として形成した。TaN膜は、Taターゲットを用いて、N2ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、15.5nmの膜厚になるように成膜した。TaN膜の含有比率(原子比)は、Ta:N=88:12であった。TaN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、TaN膜はアモルファス構造であった。
【0159】
上記のように形成した実施例1のTaN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
TaN膜:n=0.949、k=0.032
【0160】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuCr膜からなる第2の層を、位相シフト膜4の上層42として形成した。RuCr膜は、RuCrターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、22.8nmの膜厚になるように成膜した。RuCr膜の含有比率(原子比)は、Ru:Cr=90:10であった。RuCr膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuCr膜はアモルファス構造であった。
【0161】
上記のように形成した実施例1のRuCr膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuCr膜:n=0.890、k=0.019
【0162】
上記のTaN膜及びRuCr膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は、20.1%であった。また、位相シフト膜4の合計膜厚は38.3nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約41%薄くすることができた。
【0163】
次に、上記反射型マスクブランク100を用いて、反射型マスク200を製造した。
【0164】
反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(図2(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図2(b))。
【0165】
次に、レジストパターン11aをマスクにして、RuCr膜(上層42)のドライエッチングを、Cl2ガスとO2ガスの混合ガス(ガス流量比Cl2:O2=4:1)を用いて行うことで、上層パターン42aを形成した(図2(c))。
【0166】
次に、レジストパターン11a及び上層パターン42aをマスクにして、TaN膜(下層41)のドライエッチングを、ハロゲン系ガスを用いて行うことで、下層パターン41aを形成した(図2(d))。具体的には、CF4ガスを用いてTaN膜の表層の酸化膜をドライエッチングし、その後、Cl2ガスを用いてTaN膜をドライエッチングした。
【0167】
その後、レジストパターン11aをアッシングやレジスト剥離液などで除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、実施例2の反射型マスク200を製造した(図2(e))。なお、必要に応じてウェット洗浄後マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
【0168】
実施例1の反射型マスク200では、位相シフト膜4がTaN膜及びRuCr膜であるため、所定のエッチングガスを用いたドライエッチングでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの合計膜厚は38.3nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
【0169】
また、実施例1で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率(保護膜3付きの多層反射膜2の表面の反射率に対する反射率)は20.1%であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
【0170】
実施例1で作製した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0171】
[実施例2]
実施例2は、位相シフト膜4として、CrOC膜(第1の層)の下層41と、RuNi膜(第2の層)の上層42とを用い、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
【0172】
即ち、実施例2では、実施例1と同様に、SiO2-TiO2系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5を形成し、反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成し、多層反射膜2の表面にRu膜からなる保護膜3を成膜した。
【0173】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、CrOC膜からなる第1の層を、位相シフト膜4の下層41として形成した。CrOC膜は、Crターゲットを用いて、Arガス、CO2ガス及びHeガスの混合ガスを用いた反応性スパッタリングで、13.8nmの膜厚になるように成膜した。CrOC膜の含有比率(原子比)は、Cr:O:C=70:15:15であった。CrOC膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、CrOC膜はアモルファス構造であった。
【0174】
上記のように形成した実施例2のCrOC膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
CrOC膜:n=0.941、k=0.031
【0175】
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuNi膜からなる第2の層を、位相シフト膜4の上層42として形成した。RuNi膜は、RuNiターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、23.5nmの膜厚になるように成膜した。RuNi膜の含有比率(原子比)は、Ru:Ni=90:10であった。RuNi膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuNi膜はアモルファス構造であった。
【0176】
上記のように形成した実施例2のRuNi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuNi膜:n=0.891、k=0.022
【0177】
上記のCrOC膜及びRuNi膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は、20.2%であった。また、位相シフト膜4の合計膜厚は37.3nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約43%薄くすることができた。
【0178】
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、実施例2の反射型マスク200を製造した。
【0179】
実施例1と同様に、反射型マスクブランク100の位相シフト膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(図2(a))。そして、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図2(b))。
【0180】
次に、レジストパターン11aをマスクにして、RuNi膜(上層42)のドライエッチングを、O2ガスを用いて行うことで、上層パターン42aを形成した(図2(c))。
【0181】
次に、レジストパターン11a及び上層パターン42aをマスクにして、CrOC膜(下層41)のドライエッチングを、Cl2ガスを用いて行うことで、下層パターン41aを形成した(図2(d))。
【0182】
その後、実施例1と同様に、レジストパターン11aの除去、及び洗浄を行って、実施例2の反射型マスク200を製造した(図2(e))。
【0183】
実施例2の反射型マスク200では、位相シフト膜4がCrOC膜及びRuNi膜であるため、所定のエッチングガスを用いたドライエッチングでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの合計膜厚は37.3nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
【0184】
また、実施例2で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は20.2%であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
【0185】
実施例1の場合と同様に、実施例2で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
…(中略)…
【0217】
[実施例5]
実施例5は、保護膜3としてRuNb膜を用い、位相シフト膜4として、TaN膜(第1の層)の下層41と、RuNb膜(第2の層)の上層42とを用い、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
【0218】
即ち、実施例5では、実施例1と同様の多層反射膜2の表面にRuNb膜からなる保護膜3を形成した。RuNb膜は、RuNbターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、2.5nmの膜厚になるように成膜した。RuNb膜の含有比率(原子比)は、Ru:Nb=80:20であった。
【0219】
次に、RuNb膜上に、TaN膜からなる第1の層を、位相シフト膜4の下層41として形成した。TaN膜は、実施例1と同様の成膜方法で、16.5nmの膜厚になるように成膜した。TaN膜の波長13.5nmにおける屈折率n及び消衰係数kは、実施例1と同じであった。
【0220】
その後、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuNb膜からなる第2の層を、位相シフト膜4の上層42として形成した。RuNb膜は、RuNbターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、22.9nmの膜厚になるように成膜した。RuNb膜の含有比率(原子比)は、Ru:Nb=80:20であった。RuNb膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuNb膜はアモルファス構造であった。
【0221】
上記のように形成した実施例2のRuNb膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数kは、それぞれ以下の通りであった。
RuNb膜:n=0.897、k=0.014
【0222】
上記の位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は、19.6%(絶対反射率は13.1%)であった。また、位相シフト膜4の合計膜厚は39.4nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約39%薄くすることができた。
【0223】
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、実施例5の反射型マスク200を製造した。RuNb膜は、Cl2ガスとO2ガスの混合ガス(ガス流量比Cl2:O2=4:1)を用いてドライエッチングした。TaN膜は、CF4ガスを用いて表層の酸化膜をドライエッチングし、その後、Cl2ガスを用いてドライエッチングした。
【0224】
実施例5の反射型マスク200では、位相シフト膜4がTaN膜及びRuNb膜であるため、所定のエッチングガスを用いたドライエッチングでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの合計膜厚は39.4nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
【0225】
また、実施例5で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は19.6%(絶対反射率は13.1%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
【0226】
実施例1の場合と同様に、実施例5で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0227】
[実施例6]
実施例6は、保護膜3としてRuNb膜を用い、位相シフト膜4として、CrOC膜(第1の層)の下層41と、RuV膜(第2の層)の上層42とを用い、180度の位相差となるように膜厚を調節した場合の実施例であって、それ以外は実施例1と同じである。
【0228】
即ち、実施例6では、実施例1と同様の多層反射膜2の表面に、実施例5と同様のRuNb膜からなる保護膜3を形成した。
【0229】
次に、RuNb膜上に、CrOC膜からなる第1の層を、位相シフト膜4の下層41として形成した。CrOC膜は、実施例2と同様の成膜方法で、14.7nmの膜厚になるように成膜した。CrOC膜の波長13.5nmにおける屈折率n及び消衰係数kは、実施例2と同じであった。
【0230】
その後、DCマグネトロンスパッタリング法により、RuV膜からなる第2の層を、位相シフト膜4の上層42として形成した。RuV膜は、RuVターゲットを用いて、Arガス雰囲気で、24nmの膜厚になるように成膜した。RuV膜の含有比率(原子比)は、Ru:V=70:30であった。RuV膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、RuV膜はアモルファス構造であった。
【0231】
上記のように形成した実施例2のRuV膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下の通りであった。
RuV膜:n=0.903、k=0.020
【0232】
上記の位相シフト膜4の波長13.5nmにおける相対反射率は、20.1%(絶対反射率は13.4%)であった。また、位相シフト膜4の合計膜厚は38.7nmである。この膜厚は、位相シフト膜4をパターニングしたときの位相差が180度に相当する膜厚である。後述する比較例1におけるTaN膜の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約40%薄くすることができた。
【0233】
次に、実施例1と同様に、上記反射型マスクブランク100を用いて、実施例6の反射型マスク200を製造した。RuV膜は、Cl2ガスとO2ガスの混合ガス(ガス流量比Cl2:O2=4:1)を用いてドライエッチングした。CrOC膜は、Cl2ガスを用いてドライエッチングした。
【0234】
実施例6の反射型マスク200では、位相シフト膜4がCrOC膜及びRuV膜であるため、所定のエッチングガスを用いたドライエッチングでの加工性が良く、高い精度で位相シフトパターン4aを形成することができた。また、位相シフトパターン4aの合計膜厚は38.7nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、比較例1と比べて、シャドーイング効果を低減することができた。
【0235】
また、実施例6で作成した反射型マスク200は、位相シフトパターン4aの側壁ラフネスが少なく、断面形状も安定していることから、転写形成されたレジストパターンのLERや寸法面内バラつきが少ない、高い転写精度を持つものであった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率は20.1%(絶対反射率は13.4%)であるため、十分な位相シフト効果が得られ、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができた。
【0236】
実施例1の場合と同様に、実施例6で作製した反射型マスク200を用いて、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
…(中略)…
【0255】
[比較例1]
比較例1では、位相シフト膜4として単層のTaN膜を用いた以外、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク100、反射型マスク200を製造し、又、実施例1と同様の方法で半導体装置を製造した。
【0256】
単層のTaN膜(位相シフト膜4)は、実施例1のマスクブランク構造の保護膜3の上に形成した。このTaN膜の形成方法は、Taをターゲットに用い、XeガスとN2ガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングを行ってTaN膜を成膜した。TaN膜の膜厚は65nmであり、この膜の元素比率は、Taが88原子%、Nが12原子%である。
【0257】
上記のように形成したTaN膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
TaN膜:n=0.949、k=0.032
【0258】
上記の単層のTaN膜からなる位相シフト膜4の波長13.5nmにおける位相差は180度である。反射率は多層反射膜2面に対して1.7%であった。
【0259】
その後、実施例1と同様の方法で、レジスト膜11を単層のTaN膜からなる位相シフト膜4上に形成し、所望のパターン描画(露光)及び現像、リンスを行ってレジストパターン11aを形成した。そして、このレジストパターン11aをマスクにして、TaN単層膜からなる位相シフト膜4を、塩素ガスを用いたドライエッチングして、位相シフトパターン4aを形成した。レジストパターン11aの除去やマスク洗浄なども実施例1と同じ方法で行い、反射型マスク200を製造した。
【0260】
位相シフトパターン4aの膜厚は65nmであり、シャドーイング効果を低減することができなかった。加えて、前述のように、位相シフト面の相対反射率(保護膜付き多層反射膜面の反射率に対する反射率)は1.7%であったため、十分な位相シフト効果が得られず、露光裕度や焦点裕度の高いEUV露光を行うことができなかった。
【0261】
以上述べたように、実施例1~8の位相シフト膜4の合計膜厚は、比較例1の位相シフト膜4の膜厚65nmよりも約40%以上薄くできた。したがって、実施例1~8の反射型マスク200では、シャドーイング効果を低減できることが明らかとなった。」
第3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、最先の優先日前に発行された下記の引用文献1~13に記載された発明に基いて、最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
<主たる引用文献>
引用文献1.特開2011-29334号公報
<周知技術を示す文献>
引用文献2.特開2012-151368号公報
引用文献3.特開2012-256066号公報
引用文献4.特開2014-33221号公報
引用文献5.特開2018-31982号公報
引用文献6.韓国公開特許第10-2017-0021191号公報
引用文献7.国際公開第2010/7955号
引用文献8.特開2011-65113号公報
引用文献9.特開平10-319569号公報
引用文献10.特開平6-83034号公報
引用文献11.特開2009-271562号公報
引用文献12.特開2007-241136号公報
引用文献13.特開2011-211083号公報
第4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、最先の優先日前に発行された文献である引用文献1(特開2011-29334号公報)には、次の記載がある(なお、図は対応する説明がある箇所に適宜挿入して示した。また、当合議体により、後記3の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
(1) 【発明の概要】等(【0001】~【0012】)
「【0001】
本発明は、EUV(Extreme Ultra-Violet)露光に使用される反射型露光用マスクおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、素子のさらなる微細化のために、EUV露光技術の開発が進められている。EUV露光では、反射型露光用マスクが使用される。反射型露光用マスクは、一般に、EUV光を反射する多層反射膜と、この多層反射膜上に設けられ、EUV光を吸収する吸収体パターンとを備えている。この吸収体パターンは、ウェハ上に形成するべきパターンに対応したパターンを有する。
【0003】
反射型露光用マスクに対してEUV光は斜めに照射される。そのため、吸収体パターンが厚いと(アスペクト比が高いと)、シャドーイング(shadowing)効果と呼ばれる現象が生じる。シャドーイング効果は、転写パターンの寸法に影響を与える。シャドーイング効果による転写パターンの寸法誤差を低減するためには、吸収体パターンを薄くする必要がある。その方法の一つとして、ハーフトーン型位相シフトマスクを用いた方法が知られている(非特許文献1)。
【0004】
種々材料の光学定数(例えば、屈折率n、消衰係数k)をパラメータにした反射率シミュレーション、および、露光条件やマスク条件をパラメータにしたリソグラフィシミュレーションにより、以下のことが分かっている。
【0005】
すなわち、吸収体パターンの材料としてTa系材料やCr系材料を用いて、ハーフトーン型位相シフトマスクを実現する場合、多層反射膜で反射したEUV光(多層膜反射光)と吸収体パターンで吸収されずに反射したEUV光(吸収体反射光)との位相差が180度の時で、両者の反射率比(吸収体反射光の反射率/多層膜反射光の反射率)を、1~3%の範囲内に収める必要があることが分かっている。
【0006】
また、バッファ層の材料としてCrN系材料を用い、吸収体パターンの材料としてTaBN系材料を用いて、ハーフトーン型位相シフトマスクを実現する場合には、バッファ層と吸収体パターンとを足し合わせた厚さを従来標準の80nmから61nmへと薄くすれば良いことも分かっている。このようにハーフトーン型位相シフトマスクとなる様に吸収体パターン等を薄くすることにより、32nmHP~22nmHP前後のパターン寸法に対して、シャドーイング効果を低減でき、転写像を劣化させることなくパターニングすることが可能になる。
【0007】
しかし、ターゲット寸法がより微細な寸法領域に達すると、EUV光の入射方向に対して垂直の方向に延びたラインパターンは、上記入射方向に対して平行の方向に延びたラインパターンに比べて、ウェハ上に形成される光学像のコントラスト値が低下する傾向が顕在化する。すなわち、ターゲット寸法がより微細な寸法領域に達すると、従来の反射型露光用マスクでは、十分なコントラスト値を有する光学像をウェハ上に形成することが困難になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Proc. of SPIE2008 T. Kamo, “Effects of mask absorber thickness on printability in EUV Lithography with high resolution resist”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ウェハ上に形成される光学像のコントラスト値の低下を抑制できる反射型露光用マスクおよび半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の一態様による反射型露光用マスクは、露光光が照射される主面と、前記主面内に設けられ、前記露光光に対して高反射領域となる多層反射膜と、前記多層反射膜上に設けられ、前記露光光を吸収するとともに、前記露光光に対して低反射領域となる吸収体パターンとを具備し、前記多層反射膜からの前記露光光の反射光と、前記吸収体パターンからの前記露光光の反射光との位相差が180度±10度以内となる反射型露光用マスクであって、前記吸収体パターンは、長手方向が互いに90度異なる第1および第2のライン状パターンを含み、かつ、前記第1および第2のライン状パターンの長手方向の一方と、前記主面の上から見た場合の前記主面に対する前記露光光の入射方向とが一致する時に、前記ウェハ上に形成される前記第1および第2のライン状パターンの光学像のコントラスト値がともに0.6以上となることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様による半導体装置の製造方法は、本発明の一態様による反射型露光用マスクを用いて、半導体基板を含む基板上に形成されたレジストを露光する工程と、前記露光したレジストを現像してレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクに用いて前記基板をエッチングする工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウェハ上に形成される光学像のコントラスト値の低下を抑制できる反射型露光用マスクおよび半導体装置の製造方法を実現できるようになる。」
(2) 【発明を実施するための形態】(【0014】~【0053】)
「【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1(a)-図1(d)は、本実施形態の反射型露光用マスクの製造方法を説明するための断面図である。
【図1】
[図:0001433673000004.jpg]
【0016】
[図1(a)]
低熱膨張率のガラス基板1上にEUV(露光光)を反射する多層反射膜2(高反射領域)を形成する。多層反射膜2は、Mo膜とSi膜との対を複数積層したものである。本実施形態では、Mo膜とSi膜との対の積層数は40、Mo膜の厚さは2.8nm、Si膜の厚さは4.2nmである。また、本実施形態では、ガラス基板1の主面は、多層反射膜2が形成される側の面(図1に示されたガラス基板1の上面)となる。
【0017】
次に、多層反射膜2上に保護層(キャップ膜)3を形成する。ここでは、保護膜3として厚さ11nmのSi膜を使用する。保護膜3は多層反射膜2を構成するMo膜を酸化から保護する役割を有する。保護膜3上に、Ruを主成分とする厚さ30nmの吸収体層4を形成する。このようにして反射型露光用マスクブランクスを得ることができる。なお、吸収体層4は、露光光を完全には吸収するわけではなく、露光光の一部を反射する(低反射領域)。
【0018】
ここでは、反射型露光用マスクブランクス(ガラス基板1、多層反射膜2、保護膜3、吸収体層4)を形成したが、その代わりに、ガラス基板1上に多層反射膜2、保護膜3、吸収体層4が予め形成されている反射型露光用マスクブランクスを使用しても構わない。また、静電チャックによりガラス基板1を保持する場合には、ガラス基板1の裏面に静電チャック用の導電膜を形成する。
【0019】
[図1(b)]
吸収体層4上にレジストを塗布し、この塗布したレジストに対してEB(Electron Beam)描画および現像を行うことにより、吸収体層4上にレジストパターン5を形成する。
【0020】
[図1(c)]
レジストパターン5をマスクに用い、塩素と酸素を主成分としたガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)プロセスにより吸収体層4をエッチングして、Ruを主成分とする単層構造の吸収体パターン4Pを形成する。この時、保護膜3は、エッチングストッパとして機能し、多層反射膜2のエッチングを防止する。単層構造の吸収体パターン4Pを用いることの利点としては、マスクプロセスでの吸収体エッチング条件が簡略化できる点がある。ただし、後述する複数層で構成される吸収体であっても、適切な形状に吸収体エッチングすることができれば支障は無い。」
…(中略)…
【0025】
図2は、ガラス基板と、ガラス基板上に設けられたMo/Si多層反射膜と、Mo/Si多層反射膜上に設けられたSi膜からなる保護層と、保護膜上に設けられた吸収体パターンとを備えた反射型露光用マスク(図1(d)の構造)に関し、横軸を吸収体層の材料(吸収体材料)の屈折率nとし、縦軸を吸収体材料の消衰係数kとする二次元平面(n-k平面)において、Mo/Si多層反射膜で反射したEUV光と吸収体層で反射したEUV光との位相差が180度となる吸収体層の厚さの等高線を示している。図2には、吸収体材料の具体例として、Ru、Mo、TaN、Cr、Ta、Ta2O5、SiO2、Ge、Siが示されている。
【図2】
[図:0001433673000005.jpg]
【0026】
図3は、上記反射型露光用マスクにおいて、上記n-k平面上で位相差180度となる厚さを有する吸収体層を用いた場合の反射率比の等高線を示している。この反射率比は、保護層を含むMo/Si多層反射膜で反射するEUV光を反射率R1、吸収体層で反射するEUV光を反射率R2とすると、100・R2/R1で定義される。
【図3】
[図:0001433673000006.jpg]
【0027】
図2、図3より、吸収体材料としてRuを採用することにより、位相差180度を満足する吸収体層の厚さを40nm以下にできるとともに、反射率比の範囲を4~40%にでき、さらに図2および現在想定している光学定数の範囲内から位相差180度を満足する吸収体層の厚さの下限を見積もると20nmとなる。図4に、図2から得られる吸収体膜厚40nm以下を満足する光学定数n,kの領域と、図3から得られる反射率比4~40%を満足する光学定数n,kの領域との重なり領域20を示す。
[図:0001433673000007.jpg]
【0028】
一方、吸収体材料としてTa系材料やCr系材料を採用した場合、背景技術で述べた通り、ハーフトーン型位相シフトマスクのために利用可能な反射率比の範囲は1~3%である。
【0029】
このように本実施形態によれば、従来に比べて、ハーフトーン型位相シフトマスクのために利用可能な反射率比の範囲が広くなるので、ターゲット寸法が20nmHP代というより微細な寸法領域に達しても、ハーフトーン型位相シフトマスクを利用してシャドウイング効果を抑制できる反射型露光用マスクを容易に実現できるようになる。上記のように利用可能な反射率比の範囲が1~3%であれば、ターゲット寸法が16nmHP以下というさらに微細な寸法領域に達しても、また、ターゲット寸法が10nmHP代と極微細な寸法領域に達しても、ハーフトーン型位相シフトマスクを利用してシャドウイング効果を抑制できる反射型露光用マスクを容易に実現できるようになる。
【0030】
このように本実施形態によれば、従来に比べて、ハーフトーン型位相シフトマスクのために利用可能な反射率比の範囲が広くなるので、ターゲット寸法が現状よりも微細な寸法領域に達しても、ハーフトーン型位相シフトマスクを利用してシャドウイング効果を抑制できる反射型露光用マスクを容易に実現できるようになる。
…(中略)…
【0043】
本実施形態の反射型露光用マスクを用いた半導体装置の製造方法は以下の通りである。
【0044】
まず、半導体基板を含む基板上にレジストが塗布される。半導体基板は、例えば、シリコン基板や、SOI基板である。
【0045】
次に、上記基板の上方に実施形態の反射型露光用マスクが配置され、該反射型露光用マスクを介して上記レジストに光または荷電ビームが照射され、その後、現像が行われ、レジストパターンが作成される。
【0046】
次に、上記レジストパターンをマスクにして上記基板がエッチングされ、微細パターンが形成される。
【0047】
ここで、上記レジストの下地(基板の最上層)がポリシリコン膜や金属膜の場合、微細な電極パターンや配線パターンなどが形成される。上記レジストの下地(基板の最上層)が絶縁膜の場合、微細なコンタクトホールパターンやゲート絶縁膜などが形成される。上記レジストの下地が上記半導体基板の場合、微細な素子分離溝(STI)などが形成される。
【0048】
以上述べたレジストの塗布、レジストパターンの形成、被加工基板のエッチングを繰り返して必要な微細パターンを形成し、半導体装置を製造する。本実施形態の反射型露光用マスクを用いた半導体装置の製造方法は、例えば、微細なフラッシュメモリを製造するのに適している。
【0049】
なお、上記実施形態では、位相差180度を満足する厚さを有する吸収体パターン(吸収体層)の場合(最良な場合)について説明したが、位相差180度±10度以内の範囲であればよい。位相差180度±10度以内の範囲であればハーフトーンマスク効果は得られるからである。吸収体材料の主成分がRuの場合、図9に示すように、Ru吸収体パターン(Ru吸収体層)の厚さ(Ru thickness)を30nm±3nm以内の範囲に設定することにより、位相差(Phase shift)を180度±10度内の範囲に収めることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、像コントラスト値をシミュレーションにより取得したが、Aerial Image Measurement System と呼ばれる露光波長の光学像取得装置を用いて、実測により像コントラスト値を取得しても構わない。
【0051】
さらに、上記実施形態では、Ruを主成分とするRu膜で構成された単層構造の吸収体パターン4Pを使用したが、反射率比の値を調整するために、Ru膜と、このRu膜よりも薄く、Crを主成分とするCr膜との積層膜で構成された多層構造の吸収体パターン、または、Ru膜と、このRu膜よりも薄く、Taを主成分とする材料で形成された膜との積層膜で構成された多層構造の吸収体パターンを使用しても構わない。
【0052】
例えば、Ruを主成分とする吸収体パターンと、この吸収体パターンよりも薄く、TaN系材料(Taを主成分する材料)で形成された吸収体パターンとの積層構造のRu/TaN吸収体パターンを用いても構わない。このRu/TaN吸収体パターンの場合には、Ru吸収体パターンの厚さを21nm、TaN吸収体パターンの厚さを19nmに設定することにより、位相差180度において反射率比を20%にすることができる。
【0053】
なお、Ruを主成分とするとは、Ruの単体金属の他に、Ru合金(Ruを主成分とする合金)でも構わないことを意味している。Ru合金としては、例えば、CrRu合金、CrRuN合金があげられる。」
2 引用発明の認定
前記1に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「ガラス基板1、多層反射膜2、保護膜3、吸収体層4から構成される反射型露光用マスクブランクスであって、(【0018】)
低熱膨張率のガラス基板1上にEUV(露光光)を反射する多層反射膜2(高反射領域)を形成し、(【0016】)
多層反射膜2は、Mo膜とSi膜との対を複数積層したものであり、(【0016】)
多層反射膜2上に保護層(キャップ膜)3を形成し、ここでは、保護膜3として厚さ11nmのSi膜を使用し、保護膜3は多層反射膜2を構成するMo膜を酸化から保護する役割を有するものであり、(【0017】)
保護膜3上に、Ruを主成分とする厚さ30nmの吸収体層4を形成し、(【0017】)
レジストパターン5をマスクに用い、塩素と酸素を主成分としたガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)プロセスにより吸収体層4をエッチングして、Ruを主成分とする単層構造の吸収体パターン4Pを形成するためのものであり、(【0020】)
この時、保護膜3は、エッチングストッパとして機能し、多層反射膜2のエッチングを防止するものであり、(【0020】)
吸収体層4は、位相差180度を満足する厚さを有するものである、(【0049】)
反射型露光用マスクブランクス」
第5 技術常識等の認定
1 引用文献9、10に記載された事項及び周知の事情Aの認定
(1) 引用文献9
ア 引用文献9に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、最先の優先日前に発行された文献である特開平10-319569号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0094】石英基板からなる透光性基板上に、CrをターゲットとしArの希薄ガスによりスパッタリングを行い、遮光膜としてのCr膜として堆積させた。このCr膜の光学定数は屈折率n=1.85、消哀係数k=2.75で、堆積膜厚を20nmとした。続いて、このCr膜上に、CrをターゲットとしArと酸素の稀薄ガスによりスパッタリングを行い、遮光膜としてのCrOx膜を堆積させた。このCrOx膜の光学定数は屈折率n=2.73、消哀係数k=0.71で、堆積膜厚を107nmとした。このときの2層膜で得られる強度透過率と位相はそれぞれ0.019%と360度であった。そして、これらの膜上にカーボン膜を形成した。
【0095】この基板に対して、シリコン含有感光性樹脂膜を形成し、ウェハ上0.1μmパターンを作成するためのマスクパターンを形成するため、レーザによる描画を行った後に現像を施した。露出したカーボン膜を酸素ガスを用いた異方性エッチングで除去し、更にその下のCrOx/Cr膜を塩素と酸素を用いた異方性エッチングで除去した。」
イ 引用文献9の記載からの認定事項
前記アに摘記した引用文献9の記載から、当業者は次の事項を認識できる。
「引用文献9における「CrOx/Cr膜」との表記において、Crが透光性基板に近い側にあること。」
(2) 引用文献10
ア 引用文献10に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、最先の優先日前に発行された文献である特開平6-83034号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。
「【0175】実施例16
次に、この露光マスク用基板を用い前述した例と同様の方法で露光用マスクを形成する。ここでは前記実施例11で作成した露光マスク用基板を用いる。この露光マスク用基板は、KrFエキシマレーザ用位相シフトマスクを作成するための基板であり、厚さ2.5mmの酸化シリコン基板90上に、位相シフタとなる半透明膜として窒化シリコン膜SiN0.991を形成し、この上層に遮光膜としてCr膜92を形成しさらにこの上層を反射防止層としてのCrO膜93で被覆して構成されている。
【0176】まず、図10(a)に示すように露光マスク用基板表面に電子線レジスト94を膜厚500nmで形成し、さらに塗布性導電膜95を膜厚200nmとなるように形成する。光学定数n,kの領域との重なり領域20を示す。
…(中略)…
【0182】次いで、図10(g)に示すように、このレジストパタ-ンをマスクとしてCl2ガスによる反応性イオンエッチングにより、CrO膜93/Cr膜92をエッチング除去する。」
「図10
[図:0001433673000008.jpg]
」
イ 引用文献10の記載からの認定事項
引用文献10の【0182】の記載を踏まえつつ図10を参酌すると、当業者は、次の事項を認識できる。
「引用文献10における「CrO膜93/Cr膜92」との表記において、Cr膜92が酸化シリコン基板90側にあること。」
(3) 周知の事情Aの認定
前記(1)及び(2)に摘記した引用文献9、10は、共に出願人が株式会社東芝であり、株式会社東芝が出願人である露光用マスクに関する特許文献の記載において、次の事項は、当業者にとって周知の事情(以下「周知の事情A」という。)であったと認められる。
<周知の事情A>
「株式会社東芝が出願人である露光用マスクに関する特許文献において、基板を含む露光用マスクの積層体について「A層/B層」と表記された場合、B層が基板側にあることが多いこと。」
2 引用文献14、15に記載された事項及び技術常識B、Cの認定
引用文献の参照番号は、審査及び審判の手続において共通した表記とするため、この審決において新たに引用した文献は、「引用文献14」及び「引用文献15」の表記とした。
(1) 引用文献14に記載された事項
本願明細書の【0006】において特許文献2として引用された文献であって、本審決において新たに引用する、最先の優先日前に発行された文献である特開2004-207593号公報(以下「引用文献14」という。)には、次の記載がある。
「【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。図1(a)は本発明のEUV露光用マスクの実施形態の例を断面で示した説明図である。基板3上に、露光光の高反射領域となる多層膜2が形成され、前記多層膜2上に低反射領域となる薄膜のパターン1が形成されている。この薄膜は2層膜からなり、露光波長において、多層膜に対する2層膜の反射率が5乃至20%、2層膜からの反射光と多層膜からの反射光との位相差が175乃至185度となっている。
2層膜の反射率は、多層膜に対する反射率であり、多層膜からの反射光をRmとし、2層膜からの反射光をR2とすれば、R2/Rm×100(%)となる。以下、反射率は全て多層膜に対する反射率を意味する。
図1(b)は本発明の極限紫外線露光用マスクブランクの実施形態の例を断面で示した説明図である。基板3上に、露光光の高反射領域となる多層膜2が形成され、多層膜2上の全面に低反射領域となる2層膜1‘が形成されている。図1(b)のブランクをパターニングすることにより図1(a)のマスクが得られる。
【図1】
[図:0001433673000009.jpg]
」
「【0018】
<実施例1>
図2は、本発明の第1の実施例の、反射率と位相差を示した説明図である。この例では、薄膜の上層がRu、下層がTaである。図の横軸がRu膜厚、縦軸がTa膜厚をÅ単位で表している。aの線は、反射率が8%となる条件を満足する。bの線は、薄膜からの反射光(薄膜内の多重反射を総計した)と、多層膜からの反射光との位相差が180度となる条件を満足する。従って、両線の交点の膜厚で2層膜を作製すれば反射率8%、位相差180度のEUVハーフトーンマスクが得られる。尚、波長13nm(典型的なEUV露光の波長)における屈折率n,消衰係数kは表1の通りであった(消衰係数kは材料の光吸収の指標となる特性値である)。
【0019】
【表1】
[図:0001433673000010.jpg]
」
(2) 引用文献15に記載された事項
本願明細書の【0006】において特許文献1として引用された文献であって、本審決において新たに引用する、最先の優先日前に発行された文献である特開2010-80659号公報(以下「引用文献15」という。)には、次の記載がある。
「【0033】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスクブランク100を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスクブランク100は、低熱膨張ガラス基板10と、低熱膨張ガラス基板10上に形成された高反射性を有する多層膜20と、多層膜20上に形成された多層膜2を保護するキャッピング膜30と、キャッピング膜30上に形成された緩衝膜40と、緩衝膜40上に形成された低反射性を有し多層構造を有する下層吸収膜51、上層吸収膜52及び反射防止用吸収膜53を備えている。
【図1】
[図:0001433673000011.jpg]
【0034】
本発明の第1の実施の形態に係る低熱膨張ガラス基板10としては、シリコン基板やチタンを添加とした低熱膨張ガラスを使用することができるが熱膨張率の小さい材料であればいずれでも構わない。
【0035】
本発明の第1の実施の形態に係る多層膜20としては、例えば、Mo(モリブデン)膜とSi(シリコン)膜又はMo膜とBe(ベリリウム)膜を交互に、例えば40対成膜してなる積層体を用いることができる。多層膜20にMo膜とSi膜とを用いた場合、1層ずつの膜厚は、例えばMo膜が2.8nm、Si膜が4.2nmである。キャッピング膜30としては、例えば厚さ11nmのSi膜を使用することができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0036】
本発明の第1の実施の形態に係る緩衝膜40としては、下層吸収膜51、上層吸収膜52、反射防止用吸収膜53のパターンを形成する際に行われるドライエッチングに対して耐性を有する材質で形成されている。より具体的には、下層吸収膜51をエッチングする際に、キャッピング膜30へのダメージを防ぐエッチングストッパーとして機能するもので、CrN膜等で形成することができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。なお、下層吸収膜51、上層吸収膜52、反射防止用吸収膜53については後述する。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスク200を示す概略断面図である。図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスク200は、低熱膨張ガラス基板10と、低熱膨張ガラス基板10上に形成された高反射性を有する多層膜20と、多層膜20上に形成された多層膜20を保護するキャッピング膜30と、キャッピング膜30上に選択的に形成された緩衝膜パターン41と、緩衝膜パターン41上に選択的に形成された下層吸収膜パターン54と、下層吸収膜パターン54上に選択的に形成された上層吸収膜パターン55と、上層吸収膜パターン55上に選択的に形成された反射防止用吸収膜パターン56とを備えている。ここで、反射防止用吸収膜パターン56の反射防止性とは、遠紫外線(DUV)光による欠陥検査を可能にするために、いわゆる薄膜干渉を利用してDUV光に対する反射防止(Anti Reflection、以下、「AR」と略記する。)効果を用いることである。一方、露光光であるEUV光に対する低反射領域を形成するために、EUV光を吸収する機能を有するのは主として下層吸収膜パターン54と上層吸収膜パターン55である。
【図2】
[図:0001433673000012.jpg]
【0038】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスクブランク300を示す概略断面図である。図3に示す、本発明の第2の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスクブランク300は、図1に示す本発明の第1の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスクブランク100との違いである兼用膜34を備えている。なお、兼用膜34以外の説明は、第1の実施の形態と重複するために省略する。
【図3】
[図:0001433673000013.jpg]
【0039】
兼用膜34は下層吸収膜51と多層膜20との間に備え、第1の実施の形態に示している多層膜20を保護するためのキャッピング膜30と緩衝膜40との両方の役割を果たすことができる。このような兼用膜34の材料としては、例えばRuを用いることができるが本発明ではこれに限定されるわけではない。
【0040】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスク400を示す概略断面図である。図4に示す、本発明の第2の実施の形態に係るハーフトーン型EUVマスク400は、図2に示す、第1の実施の形態に示すハーフトーン型EUVマスク200との違いである兼用膜34を下層吸収膜パターン54と多層膜20との間に備えている。それぞれの材料の説明は第1の実施の形態と重複するために省略する。
【図4】
[図:0001433673000014.jpg]
」
「【実施例4】
【0090】
図3に示すように、はじめに、実施例3と同様、低熱膨張ガラス基板10上に、膜厚2.8nmであるMoと膜厚4.2nmであるSiとからなる40対の多層膜20をイオンビームスパッタリング法により成膜した。
【図3】
[図:0001433673000015.jpg]
【0091】
次に、多層膜20上にキャッピング膜と緩衝膜の兼用膜34としてSi膜を、Siをターゲットとし、Arガスを放電させるマグネトロンスパッタリング法により膜厚11nmで成膜した。
【0092】
次に、兼用膜34上に下層吸収膜51として、マグネトロンスパッタリング装置を使い、カソードにTaターゲットを取り付け、Arに窒素を添加したガスの放電により、TaN膜を膜厚25nmで成膜した。
【0093】
次に、下層吸収膜51上に上層吸収膜52として、マグネトロンスパッタリング装置を使い、カソードにRuターゲットを取り付け、Arに酸素を添加したガスの放電により、RuO膜を膜厚17nmで成膜した。
【0094】
次に、実施例3と同様、上層吸収層52上にSiをターゲットとし、Arガスに窒素を添加したマグネトロンスパッタリング法により、反射防止用吸収膜53として、SiN膜を膜厚16nmで成膜して、本発明のハーフトーン型EUVマスクブランク300を作製した。
【0095】
作製したハーフトーン型EUVマスクブランク30について、低反射部のEUV反射率測定を行ったが、高反射部に対し約6.1%であり、ハーフトーン型マスクとして好適な反射率であった。また、分光反射率の測定を行ったところ、欠陥検査で用いられる190nm~260nm付近で10%以下と、十分低反射になっていた。
…(中略)…
【0098】
次に、塩素ガスによる反応性イオンエッチングにより下層吸収膜51(TaN膜)のパターニングを行った。このエッチングにおいて、最上層である反射防止用吸収膜53(SiN膜)がエッチングガスに晒されるが、もともとSiN膜は塩素系ガスに対して耐性が高いうえに、TaN膜の塩素系ガスに対するエッチングレートは非常に大きいので、分光反射率の変化はなく、SiN膜(反射防止用吸収膜53)へのダメージは発生しなかった。また、TaN膜のエッチング終点到達後は、兼用膜34(Si)がエッチングガスに晒されるが、TaN膜のエッチングレートが高い分、オーバーエッチング時間は短くて済むので、Si膜へのダメージは特に発生しなかった。」
(3) 技術常識Bの認定
前記(1)及び(2)に摘記した引用文献14の記載事項及び引用文献15の記載事項(【実施例4】の記載)に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識(以下「技術常識B」という。)であったと認められる。
<技術常識B>
「半導体露光用マスクブランクにおいて、基板上に、基板側から順に、TaあるいはTaを含む合金からなる層、RuあるいはRuを含む合金からなる層、が積層された構成とできること。」
(4) 技術常識Cの認定
前記(2)に摘記した引用文献15の記載事項(第2の実施形態の記載)に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識(以下「技術常識C」という。)であったと認められる。
<技術常識C>
「半導体露光用マスクブランクにおける多層膜の保護層兼エッチングストッパーとして機能する層として、Ru層を用いることができること。」
第6 本願発明と引用発明の対比
1 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 構成Xの観点(反射型マスクブランク)
「反射型マスクブランク」の発明である本願発明と「反射型露光用マスクブランクス」の発明である引用発明は、「反射型マスクブランク」の発明である点において一致する。
(2) 構成Aの観点
ア 構成Aは、「基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有[する]」ことである。
イ 引用発明における「ガラス基板1」及び「多層反射膜2」は、それぞれ本願発明における「基板」及び「多層反射膜」に相当する。
ウ 引用発明における「多層反射膜2」は「EUV(露光光)を反射する」(【0016】)を踏まえると、引用発明における「吸収体層4」は、「位相差180度を満足する厚さを有するものである」(【0049】)ことから、本願発明における「EUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜」に相当する。
エ 引用発明においては、「低熱膨張率のガラス基板1上にEUV(露光光)を反射する多層反射膜2(高反射領域)を形成し」(【0016】)、「多層反射膜2上に保護層(キャップ膜)3を形成し」(【0017】)、「保護膜3上に、Ruを主成分とする厚さ30nmの吸収体層4を形成し[ている]」(【0017】)ことから、前記イ及びウも踏まえると、引用発明は、本願発明にいうところの「基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有[する]」ものであるといえる。
オ したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点である次の点において一致する。
「基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有[する]」点。
(3) 構成B0~B3の観点
ア 構成B0~B3は、それぞれ次のとおりである。
構成B0:「前記位相シフト膜は、第1の層と第2の層とを有し[ている]」こと。
構成B1:「前記第1の層は、前記第2の層よりも多層反射膜が存在する側に配置され[ている]」こと。
構成B2:「前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含[む]」こと。
構成B3:「前記第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)及びタングステン(W)のうち少なくとも1以上の元素とを含む」こと。
イ 引用発明における「吸収体層4」(「位相シフト膜」に相当する。)は「Ruを主成分とする」(【0017】)から、本願発明における「位相シフト膜」と、「位相シフト膜」は「ルテニウム(Ru)[を含む]」点において共通し、次の点において相違する。
<構成B0~B3の観点における相違点>
「位相シフト膜」が、
本願発明においては、
「前記位相シフト膜は、第1の層と第2の層とを有し、
前記第1の層は、前記第2の層よりも多層反射膜が存在する側に配置され、
前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含み、
前記第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)及びタングステン(W)のうち少なくとも1以上の元素とを含む」のに対して、
引用発明においては、
吸収体層4(「位相シフト膜」に相当する。)は、「Ruを主成分とする単層構造」である点。
2 一致点及び相違点の認定
前記1の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。
(1) 一致点
「基板上に、多層反射膜及びEUV光の位相をシフトさせる位相シフト膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、ルテニウム(Ru)を含む反射型マスクブランク」の発明である点。
(2) 相違点
「位相シフト膜」が、
本願発明においては、
(構成B0)「前記位相シフト膜は、第1の層と第2の層とを有し、」
(構成B1)「前記第1の層は、前記第2の層よりも多層反射膜が存在する側に配置され、」
(構成B2)「前記第1の層は、タンタル(Ta)及びクロム(Cr)のうち少なくとも1以上の元素を含み、」
(構成B3)「前記第2の層は、ルテニウム(Ru)と、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)及びタングステン(W)のうち少なくとも1以上の元素とを含む」のに対して、
引用発明においては、
吸収体層4(「位相シフト膜」に相当する。)は、「Ruを主成分とする単層構造」である点。
第7 相違点の評価
1 引用文献1の示唆
(1) 引用文献1の【0051】~【0053】に、設計変更に関する次の示唆の記載がある。
「【0051】
さらに、上記実施形態では、Ruを主成分とするRu膜で構成された単層構造の吸収体パターン4Pを使用したが、反射率比の値を調整するために、Ru膜と、このRu膜よりも薄く、Crを主成分とするCr膜との積層膜で構成された多層構造の吸収体パターン、または、Ru膜と、このRu膜よりも薄く、Taを主成分とする材料で形成された膜との積層膜で構成された多層構造の吸収体パターンを使用しても構わない。
【0052】
例えば、Ruを主成分とする吸収体パターンと、この吸収体パターンよりも薄く、TaN系材料(Taを主成分する材料)で形成された吸収体パターンとの積層構造のRu/TaN吸収体パターンを用いても構わない。このRu/TaN吸収体パターンの場合には、Ru吸収体パターンの厚さを21nm、TaN吸収体パターンの厚さを19nmに設定することにより、位相差180度において反射率比を20%にすることができる。
【0053】
なお、Ruを主成分とするとは、Ruの単体金属の他に、Ru合金(Ruを主成分とする合金)でも構わないことを意味している。Ru合金としては、例えば、CrRu合金、CrRuN合金があげられる。」
(2) 前記(1)に示した引用文献1の示唆を踏まえると、次のように設計変更すること(以下「自明の設計変更後の構成」という。)は自明である。
<自明の設計変更後の構成>
「吸収体層4を、CrRu合金又はCrRuN合金のRu合金の膜と、このRu合金膜よりも薄いTaN系材料の膜との積層膜で構成された2層構造の吸収体であるRu合金/TaN吸収体に変更すること。」
(3) 「自明の設計変更後の構成」は、「Ru合金の膜」及び「TaN系材料の膜」をそれぞれ本願発明の「第2の層」及び「前記第1の層」に対応付けると、構成B0、構成B2及び構成B3を充足する。
(4) 残る論点は、構成B1の「前記第1の層は、前記第2の層よりも多層反射膜が存在する側に配置され[る]」ことを充足すること、すなわち、「TaN系材料の膜」(「第1の層」に相当する。)は「Ru合金の膜」(「第2の層」に相当する。)よりも「多層反射膜2」側に配置されるのかという点である。この点について、続く2において検討する。
2 「Ru/TaN吸収体」における「多層反射膜2」側の膜
(1) 前記「自明の設計変更後の構成」を採用するに際しては、「TaN系材料の膜」(「第1の層」に相当する。)と「Ru合金の膜」(「第2の層」に相当する。)のいずれを「多層反射膜2」側に配置するのか選択しなければならないところ、引用文献1における「Ru/TaN吸収体」との示唆が、どの膜が「多層反射膜2」側の膜であると示唆しているのかについて検討する。
(2) 当業者は、引用文献1の筆者の趣旨を探ろうとするであろうところ、引用文献1の出願人は株式会社東芝であり、前記第5の1(3)において「周知の事情A」として認定したとおり、「株式会社東芝が出願人である露光用マスクに関する特許文献において、基板を含む露光用マスクの積層体について「A層/B層」と表記された場合、B層が基板側にあることが多い」という事情があるから、当業者は、「TaN吸収体」が「多層反射膜2」側の膜であると推測すると推察される。
(3) そして、実際、前記第5の2(3)において認定したとおり、「半導体露光用マスクブランクにおいて、基板上に、基板側から順に、TaあいはTaを含む合金からなる層、RuあるいはRuを含む合金からなる層、が積層された構成とできること」は、技術常識である(「前記技術常識B」)。
(4) 以上の事情に鑑みるに、自明の設計変更後の構成における「Ru合金/TaN吸収体」において、「多層反射膜2」側に配置されるものは、そもそも2とおりしかないところ、これをTaNとすることは、当業者には自明の設計事項というべきである。
3 相違点の評価まとめ
以上のとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては、自明の設計変更にすぎない。
第8 請求人の主張について
1 請求人の主張内容
請求人は、本願発明が進歩性を有することの根拠として、次の点(それぞれ「主張1」及び「主張2」という。)を主張する
(1) 主張1
引用文献1の記載は、全て基板側から始まって基板とは反対側の「吸収体パターン」が最後という順序である。
(2) 主張2
TaN膜をエッチングするためのエッチングガスとしてCl2ガスが用いられることが技術常識であることを考慮すると、Si膜を保護するために、Ru層が基板側に配置されると理解できる。
2 請求人の主張についての検討
(1) 主張1について
引用文献1における記載の順序が、基板側から始まって基板とは反対側の「吸収体パターン」が最後という順番であるのは、製造に際して、積層する順序が、基板側から離れる側に向かうからであって、「A層/B層」と表記された場合に、A層が基板側と理解する理由とはならないから、請求人の主張1は、根拠がなく、採用できるものではない。
(2) 主張2について
前記第5の2(4)において「技術常識C」として認定したとおり、「半導体露光用マスクブランクにおける多層膜の保護層兼エッチングストッパーとして機能する層として、Ru層を用いることができること」は技術常識であり、Ruエッチングストッパー、TaN系材料の膜、Ru合金の膜の順に積層した場合に、Ruエッチングストッパー層がTaN系材料の膜をドライエッチングするに際してのエッチングストッパー層として機能できることも、当業者には自明の設計事項にすぎない。
また、本願明細書の【0107】に「保護膜3の材料が、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)及び酸素(O)を含む材料、又はケイ素(Si)及び窒素(N)を含む材料である場合、保護膜3は、塩素系ガス及び酸素ガスの混合ガス、又は酸素ガスを用いたドライエッチングガスを用いたドライエッチングに対して耐性を有する」と記載されているように、「Si膜」はエッチングガスのCl2ガスに対してエッチング耐性があること、及び、引用文献14に「また、TaN膜のエッチング終点到達後は、兼用膜34(Si)がエッチングガスに晒されるが、TaN膜のエッチングレートが高い分、オーバーエッチング時間は短くて済むので、Si膜へのダメージは特に発生しなかった。」(【0090】)と記載される点を踏まえると、TaN膜をエッチングするためのエッチングガスによるSi層への影響を考慮したとしても、そのことを理由に、TaN層を基板側に設けることは排除されるものではなく、請求人の主張は前記第7の(3)の結論を左右するものではない。
第9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-013137