特許異議申立
2023-701351
積層体およびそれを備える包装袋
- 審判番号
- 2023-701351
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-189671
- 登録番号
- 7296059
- 請求日
- 2023年12月21日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【異議申立人】古川 慎二
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 葛原 怜士郎
- 分類
- P1651.121-ZAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7296059号発明「積層体およびそれを備える包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7296059号の特許請求の範囲を、令和6年10月9日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7296059号の請求項1~4、6~8に係る特許を取り消す。
特許第7296059号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7296059号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成29年3月31日に出願した特願2017-71860号の一部を令和3年11月22日に分割して新たな特許出願とされ、令和5年6月14日に特許権の設定登録がされ、令和5年6月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月21日 :特許異議申立人古川慎二(以下「申立人」という)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 2月21日付け:取消理由通知書
令和6年 4月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 6月24日 :申立人による意見書の提出
令和6年 8月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年10月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年11月26日 :申立人による意見書の提出
なお、令和6年4月18日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年10月9日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7296059号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものであり、「・・・」は文章の省略を示すものである。以下同様。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「前記積層体が帯電防止性能を有し、」の次に、
「前記基材層が、延伸ポリプロピレンフィルムを用いたものであり、
前記基材層が、帯電防止剤を含み、」を加える(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6~8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1~5のいずれか一項」を、
「請求項1~4のいずれか一項」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項8に記載された「請求項1~7のいずれか一項」を、
「請求項1~4、6および7のいずれか一項」に訂正する。
(5)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、本件訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。
2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1で規定する基材層を限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0022】、【0025】、及び特許請求の範囲の【請求項5】の記載に基づく訂正であるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、4について
訂正事項3、4は、本件訂正前の請求項6、8について、訂正事項2によって請求項5が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2によって削除された請求項5を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3、4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~4、6~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記積層体が帯電防止性能を有し、
前記基材層が、延伸ポリプロピレンフィルムを用いたものであり、
前記基材層が、帯電防止剤を含み、
前記シーラント層が、前記基材層側から順に、内層、中間層、および外層の3層構成であり、
前記シーラント層の中間層を構成する樹脂が、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンおよび化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみであり、
前記シーラント層の内層を構成する樹脂が、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみであり、
前記シーラント層全体の厚みが40μm以上70μm以下である、積層体。
【請求項2】
前記シーラント層の外層が、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記シーラント層の中間層のバイオマス度が、50%以上95%以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記シーラント層全体のバイオマス度が、10%以上35%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体が、前記基材層と前記シーラント層の間に、印刷層をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層体が、前記印刷層と前記シーラント層の間に、接着層をさらに備える、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1~4、6および7のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装袋。
第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
当審が令和6年8月7日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)
請求項1~8に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
引用文献等一覧
引用文献1:特開2012-167172号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2013-136689号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2014-133337号公報(甲第4号証)
引用文献4:特開2011-168315号公報(甲第5号証)
引用文献5:特開2013-136405号公報(甲第7号証)
引用文献6:特開2013-177531号公報(甲第3号証)
第5 当審の判断
当審合議体は、上記取消理由通知(決定の予告)で通知した理由1によって、訂正後の請求項1~4、6~8に係る特許は取り消されるべきものと判断する。
1 引用文献に記載された発明等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような包装袋では、上述したように、包装袋を構成する樹脂組成物に石油由来原料以外の生分解性樹脂を含有させて石油由来原料の比率を下げているものの、石油系樹脂と比較して引裂強度やヒートシール強度などの加工適性が著しく劣り、生産性を向上させることができないという問題があった。
従って、この発明の目的は、再生可能資源である植物由来のポリエチレン系樹脂を原料に用いて、石油資源の節約を可能とするとともに、二酸化炭素の排出量削減による環境にやさしいフィルムおよび該フィルムを用いた加工適性に優れる包装袋を提供することにある。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0021】
この積層フィルムには、基材フィルムに、ヒートシール材として積層フィルムの内面に使用するシーラントフィルムを積層させるものがあり、基材フィルムの材質として、例えばポリエチレン系樹脂などが用いられるとともに、シーラントフィルムの材質には、積層体として例えば中間層を挟んで直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が用いられている。
・・・
【0028】
本願発明では、上記のようにして得られた植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を用いて容器や包装袋を構成した積層フィルムを形成するフィルムを製造することにより、積層フィルムに用いられる樹脂組成物(直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂など)において、石油由来樹脂組成物の使用比率を低下させて、石油資源の節約を可能とするとともに、二酸化炭素の排出量削減による環境向上に貢献するものである。
【0029】
本願では、上記気相重合法にて得られたサトウキビ(サトウキビに限定されず、その他直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の製造原料となる植物であればよい)由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物1を用いて、図2に示すようなフィルムF1とすることができる。
【0030】
また、上記サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂と同様に、コモノマー種がブテン-1(C4)、密度が910~925kg/m3、メルトフローレート(MFR)が0.5~4.0g/10分の範囲、より好ましくは0.7~3.5g/10分とした各物性を有することができ、そのエチレン-α-オレフィン共重合体が用いられる。このようなサトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなる樹脂組成物を石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂に対して90モル%を上限に適宜割合で含有させるものである。
【0031】
なお、上記物性評価では、密度(d、単位:kg/m3)として、150℃でプレス成形して得られた厚さ1mmのシートを用い、JIS K 6760(1981)に従って測定を行ったものである。また、メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)は、JIS K 7210(1995)に準じ、試験温度190℃の条件にて、試験荷重21.18Nで測定したものである。
【0032】
さらには、上記サトウキビ由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂には、放射性炭素年代測定14Cによるバイオマス度が、80~100%を有する上記エチレン-α-オレフィン共重合体が用いられる。
・・・
【0038】
次に、本願では、上述した樹脂組成物1と、後述する石油由来ポリエチレン系樹脂2とで、以下のようなフィルムに構成させることができる。図3は樹脂組成物と、石油由来のポリエチレン系樹脂とを混合した単層構成のフィルムを模式的に示す断面側面図、図4は中間層を樹脂組成物とした多層構造からなるフィルムを模式的に示す断面側面図、図5は中間層を樹脂組成物および石油由来ポリエチレン系樹脂を混合した層とした多層構造からなるフィルムを模式的に示す断面側面図である。
【0039】
この場合、上記樹脂組成物1を5~90モル%と、石油由来ポリエチレン系樹脂2を10~95モル%とを、下記の(A)または(B)あるいは(C)の要領にてフィルムを構成した。まず(A)のフィルムF2として、図3に示すように、樹脂組成物1と、石油由来のポリエチレン系樹脂2とを混合した単層構成にすることができる。
【0040】
また、(B)のフィルムF3として、図4に示すように、中間層を樹脂組成物1とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂2とした多層構成にすることもできる。
・・・
【0043】
次に、本願では、上記フィルムF1~F4を用いた積層フィルムにすることができる。図6は、積層フィルムの一例を模式的に示す断面側面図、図7は本願発明の積層フィルムを用いて形成した包装袋の一例としてのスタンディングパウチを示す斜視図である。
【0044】
まず、積層フィルム3は、この図6に示すように、上記フィルムF1~F4のいずれかをシーラントフィルム4として、基材フィルム5と積層させる。
【0045】
なお、基材フィルム5としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種樹脂フィルムまたはシートを使用することができる。
【0046】
このような構成にすることで、ヒートシールに用いるシーラントフィルム4においても、このシーラントフィルム4である各フィルムF1~F3を構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の節約とともに、積層フィルム3の製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。
【0047】
以上のような積層フィルム3を用い、積層フィルム3からなる2枚の側面シートのシーラントフィルム4面同士を対向して配置し、積層フィルム3の下端部に少なくとも片面にシーラントフィルム4が積層された積層体からなる底面シートを、シーラントフィルム4面を外面にして中央で山折りして挿入し、ガセット部を有する形式に形成されており、山折りされた底面シートの両側下端近傍には、略半円形の底面シートの切り欠き部が設けられ、ガセット部が、周縁部を含む船底形の底部シール部でヒートシールされ底部が形成される。
【0048】
次いで、表裏の2枚の側面シートの両側端縁部を側端縁シール部でヒートシールして胴部が形成され、上端部を残して内容物の充填口とする、図7に示すようなスタンディングパウチ形式に製袋されたパウチ(包装袋)が形成される。そして、上端部の充填口に設けた上部シール部は、この部分から内容物を充填した後、例えば、脱気シールなどによりヒートシールして密封するものである。なお、図示しないが、胴部の上部などにレーザーにて開封用切れ目線を設けた注出口部を形成させてもよい。
【0049】
このような構成にすることで、包装袋6を構成する積層フィルム3におけるポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させることができ、石油資源の節約とともに、包装袋6の製造および廃棄時の二酸化炭素排出量を抑制することができる。特にこの包装袋6が、詰め替え用スタンディングパウチであるので、使い捨てとして普及するこのような包装袋を構成するポリエチレン系樹脂の石油由来の使用比率を低下させるとともに、二酸化炭素排出量を大きく抑制することができる。
【0050】
なお、本願発明の樹脂組成物1からなるフィルムF1~F4や、これらフィルムF1~F4を用いた積層フィルム3を使用して、上述したスタンディングパウチに例示される包装袋6以外にも、ポリエチレン系樹脂を用いた樹脂組成物1から構成される、例えば、 飲食品・化粧品・薬品・雑貨品などの内容物を収容するラミネートチューブ、液体紙容器などを含む容器や、容器の蓋材、あるいは容器のラベルなどを構成することができ、いっそう石油由来の使用比率を低下させるとともに、二酸化炭素排出量を大きく抑制することができる。」
「【実施例3】
【0057】
第1層用および第3層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。同様に第2層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。なお、第1層:第2層:第3層の層比は1:1:1とした。次いで、二種三層の上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により、押出し温度200℃、回転数60rpmの加工条件において樹脂組成物を厚み130μmの図4に示すフィルムF3に成形し、そのバイオマス度を測定すると、約29%であった。」
イ 引用文献1に記載された事項
(ア)【0044】の「積層フィルム3は、この図6に示すように、フィルムF1~F4のいずれかのシーラントフィルム4として、基材フィルムと積層される」との記載からみて、引用文献1には、基材フィルム5に対して、実施例3 、図4のフィルムF3を積層した積層体が記載されているといえる。
(イ)【0057】の「三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)」が化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンであることは自明であり(引用文献2の【0069】等も参照。)、引用文献1の第1層及び第3層は化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンから構成されることが記載されているといえる。
ウ 引用文献1に記載された発明
上記ア及びイより、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材フィルム5と、シーラントフィルム4とをこの順に備える積層体であって、
シーラントフィルム4が、基材フィルム5側から順に、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンから構成される第1層、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレンから構成される第2層、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンから構成される第3層の3層構成であり、
シーラントフィルム4全体の厚みが130μmである、積層体。」
(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0069】
[実施例1]
石油由来のLLDPE(三井化学(株)製エボリュー(R)SP2020、密度0.916kg/m3、MFR2.3g/10分)と石油由来のLDPE(宇部丸善ポリエチレン(株)製LDPE-F120N、密度0.920kg/m3、MFR1.2g/10分)との混合物(質量比70:30)85質量部に対し、植物由来のLLDPE(ブラスケム社製C4-SLL118、密度0.916kg/m3、MFR1.0g/10分)15質量部を配合し、200℃で溶融混練して、樹脂組成物を得た。
次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成形し、厚み120μmの樹脂フィルムを製膜した。
フィルム全体のバイオマス度は13%であった。」
(3)引用文献6
引用文献6には、次の事項が記載されている。
「【0080】
本発明の更なる態様において、基材フィルム上またはシーラントフィルムと基材フィルムとの間に、文字、図形、記号、絵柄等の印刷層を設けてもよい。
上記で使用する接着剤や印刷インキとして、植物由来樹脂を含むものを使用することにより、バイオマス度をさらに高めることもできる。」
(4)特開2002-137323号公報(甲第13号証。以下「引用文献7」という。)
引用文献7には、次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】蒸着フイルムは、蒸着する金属、金属酸化物等の無機物を選択することにより、ガスバリアー性、水分不透過性、可視・紫外光の遮断性、熱線反射性、導電性、透明導電性、磁気記録性などの特性を種々に変更し得るため、各種の用途に利用されている。例えば、包装材料、装飾用材料、窓ガラスの遮断用材料、金・銀糸用材料、コンデンサー材料、表示材料、配線基板材料、磁気記録材料などに利用されている。かかる用途の一つとして、電子部品や粉体等の静電気を嫌う包装物の包装材料においては、通常、帯電防止剤が添加使用される。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、フィルム構成について鋭意検討を行った結果、帯電防止剤を含有するに基材フィルムに、異なる2つの特定アンカーコート層を設けて、その上に蒸着膜を形成させたものが良好な結果が得られることを見いだし、本発明に到達した。即ち、本発明は、帯電防止剤を含有する基材フィルムの少なくともに片面にアンカーコート層が形成され、該アンカーコート層が、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂の少なくとも一種類またはこれらの混合物からなる層(A)と、イソシアネート化合物及びポリエステル樹脂の混合物からなる層(B)の2層からなり、更に、該アンカーコート層上に無機物蒸着層を形成してなる帯電防止性ガスバリアフイルムに存する。」
「【0016】以上の本発明の帯電防止性ガスバリアフィルムでは、その無機物蒸着層に、更にシーラント層を設けることで各種の包装材料としての応用範囲が拡大する。このシーラント層は、無機物蒸着層に直接積層する方法、あるいは、無機物蒸着層の上にコーテイング層を設けて間接的積層してもよい。コーテイング層を設ける場合は、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤等が挙げられる。また、シーラント層としては、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン及びエチレン系共重合体等のオレフィン系樹脂フィルム、アイオノマー樹脂等のヒートシール性を有するフイルムなどが挙げられる。以上の積層は、ドライラミネート法、押出ラミネート法等の公知の方法により実施される。また、このシーラント層にも帯電防止剤を添加することにより帯電防止性を付与することができる。」
「【0018】実施例1
帯電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量%を含有した固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートを押出機により280~300℃の温度でダイから押し出し、静電密着法を併用しつつ冷却ドラム上にキャストし、厚さ約150μmの無定形ポリエステルシートを得た。上記のシートを95℃で縦方向に3.5倍延伸した後、110℃で横方向に3.5倍延伸し、230℃で熱処理して、表面固有抵抗1010Ω/□(温度23℃、湿度50%の条件にて測定)、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフイルム(帯電防止-PETフィルム)を得た。次いで、得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの片面にアクリル酸エチル40重量部、メタクリル酸メチル30重量部、メタクリル酸20重量部、グリシジルメタクリレート10重量部の混合物をエチルアルコール中で溶液重合して得た水性アクリル系樹脂60重量%と水性ポリエステル樹脂(日本合成化学工業社製ポリエスターWR-961)40重量%の混合樹脂をグラビアコートし、乾燥後の塗布厚みを0.1μmのアンカーコート層(A層)を形成した。
【0019】この表面にイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製 コロネートL)と飽和ポリエステル(東洋紡社製 バイロン300)を1:1の割合にて混合した樹脂をグラビアコートし、乾燥後の塗布厚みを0.1μmのアンカーコート層(B層)を形成した。更に、上記フィルムを真空蒸着装置に供給し、5×10-5Torrの真空下、10kwの電子ビーム加熱方式により、純度99.9%の一酸化珪素を加熱蒸着させて、アンカーコート層の上に厚さ200オングストロームの珪素酸化物薄膜層を形成させ、蒸着ポリエステルフィルムを得た。次に、この蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面にウレタン系接着剤(東洋モートン社製接着剤 AD-900とCAT-RT-85を10:1.5の割合で配合)を塗布後乾燥し、厚さ4μmの接着樹脂層を形成した。この接着樹脂層と厚さ50μmの未延伸ポリエチレンフィルム(東京セロファン製 TUX-TCS)を積層した。得られた積層フィルムを40℃、4日間のエージングを行った後、該積層フィルムのラミネート強度、酸素透過度、透湿度を測定評価した。この結果を表-1に示す。
【0020】・・・
実施例3
実施例1に使用したA層のアンカーコート剤をポリエステル樹脂のみに変えた以外は実施例1と同様の方法で得た積層フィルムの評価結果を表-1に示す。
・・・」
「【0022】・・・
実施例3に使用したA層のアンカーコート剤を、オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒社製 エポクロスWS-500)60重量%、同例の水性アクリル系樹脂20重量%、水性ポリエステル樹脂20重量%の混合樹脂に変えた以外は実施例3と同様の方法で得た積層フィルムの評価結果を表-1に示す。
・・・」
(5)特開2012-35624号公報(甲第14号証。以下「引用文献8」という。)
引用文献8には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性に優れ、かつ、透明性に優れる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」と呼ぶことがある。)は、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、二軸延伸積層フィルムに高分子帯電防止剤を添加して、表面の肌荒れのおそれがなく、透明性に優れかつ帯電防止性能も優れた積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は高分子帯電防止剤(A)とプロピレン系重合体(B)を含む帯電防止樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム層(I)及びプロピレン系重合体(C)からなるフィルム層(II)を有する積層フィルムであって、プロピレン系重合体(C)がプロピレン単独重合体の場合には高分子帯電防止剤(A)の配合比が15~35質量%(高分子帯電防止剤(A)とプロピレン系重合体(B)の合計で100質量%とする)、プロピレン系重合体(C)がランダム共重合体の場合には高分子帯電防止剤(A)の配合比が7~35質量%(高分子帯電防止剤(A)とプロピレン系重合体(B)の合計で100質量%とする)であり、二軸延伸フィルム層(I)が、当該積層フィルムの最表面に位置していないことを特徴とする積層フィルムに関する。」
「【0059】
なお、本発明の積層フィルムは、その最外層となるフィルム層には、積極的に高分子帯電防止剤を実質的に配合しない場合であっても、優れた帯電防止性を有している。なお、ここで実質的にとは、以下に説明するように、最外層となるフィルム層に、高分子量帯電防止剤が拡散、ブリードアウト等により移行する場合を含み、ニ軸延伸積層フィルムの透明性、帯電防止効果の持続性を損なうまでには至っていない場合が含まれるものとする。すなわち、実際の積層フィルム使用時において、高分子帯電防止剤が他のフィルム層に拡散したり、ブリードアウトすることも予想されるが、仮にそのような現象により、他のフィルム層に移行する高分子帯電防止剤が存在しても、それが微少量であれば、本発明で得られる透明性に優れ、かつ帯電防止効果の持続性に優れてた性能を実質的に損なうものではない。
【0060】
また、アクリル樹脂やアクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに各種顔料や染料を分散・溶解した水性インキや油性インキの印刷層を積層し、更には、ポリエチレン系やポリプロピレン系シーラントフィルムを積層しても良い。また。無機物やポリビニルアルコール等の酸素ガスバリア層やアクリル樹脂等の熱接着層、オレフィンやスチレンエラストマー等の感圧接着材層、更にはシリコーン樹脂等の離形材層を積層しても良い。」
「【0047】
<帯電防止樹脂組成物>
本発明に係る帯電防止樹脂組成物は、ブロックポリマー(A1)などの高分子帯電防止剤(A)とプロピレン系重合体(B)からなり、これらを混合したもので、好ましくは押出機で溶融混合したのちに、フィルムに成形されて、基材となるフィルム層(I)となる。高分子帯電防止剤(A)とプロピレン系重合体(B)との好ましい配合比の範囲は後述するようにプロピレン系重合体(B)の種類によって異なる。」
「【0073】
また、本実施例で使用した樹脂は次の通りである。
(1)ブロックポリマー(A-1)
無水マレイン酸変性ポリプロピレンブロック・ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体樹脂:
〔三洋化成工業(株)製、商品名 ペレスタットVH230〕:密度1.0g/cm3、融点163℃、体積固有抵抗値:3×107Ω・cm。MFR:7(190℃)。」
「【0078】
〔実施例1〕
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基材となるフィルム層(I)の原料に前記ブロックポリマー(A-1)とプロピレン系重合体(B-1)を20:80の質量比でドライブレンドした帯電防止性樹脂組成物層を用い、その表層及び裏層の原料にプロピレン系重合体(B-2)にAB剤としてポリメチルメタクリリレートを800ppm添加した樹脂を用い、それぞれ別の押出機に供給し、Tダイ法により多層シートを押出した。次いで、多層シートを縦延伸機で5倍に延伸し、テンター横延伸機で更に10倍延伸後、表層面にコロナ放電処理を施して20μmの二軸延伸積層多層フィルムを得た。各層の厚みは表層/フィルム層(I)/裏層=1.5/17/1.5ミクロンメータ(μm)であった。
得られた二軸延伸積層ポリプロピレンフィルムをサンプルとして、上記の方法で物性評価した。評価結果を表1に示す。」
(6)特開平11-115124号公報(甲第15号証。以下「引用文献9」という。)
引用文献9には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層ポリプロピレンフィルムに関するものである。更に詳しくは、帯電防止性、滑り性、透明性に優れた積層ポリプロピレンフィルムに関するものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、帯電防止性および滑り性に優れた積層ポリプロピレンフィルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アイソタクチックインデックス(II)が92%以上のポリプロピレン樹脂層(B層)の両面に、平均粒径4μm以下の架橋有機粒子を含有した結晶融解熱量が40~90J/gのポリプロピレン樹脂層(A層)が積層されたA層/B層/A層の構成フィルムであって、表面抵抗値が14.0logΩ以下であり、フィルムを重ねて摩擦したときの静摩擦係数が0.7以下であることを特徴とする積層ポリプロピレンフィルムによって、上記課題が達成された。」
「【0002】
【従来の技術】従来より、ポリプロピレンフィルムは、製膜性、透明性、および防湿性に優れていることから、広く包装用途に用いられてきている。包装用途の多くが帯電防止性を必要とし、ポリプロピレン樹脂に帯電防止剤を添加混合して帯電防止性を付与している。」
「【0023】また本発明のフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムのいずれであってもよいが、製袋品の内容物保護の点で二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0024】次に、本発明のフィルムの製造方法について一例を挙げて説明するが、本発明がこの例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0025】まず、B層樹脂としてアイソタクチックインデックス(II)が92%以上のポリプロピレン樹脂と結晶融解熱量が40~90J/gのポリプロピレン樹脂の混合樹脂に帯電防止剤と滑剤を添加して押出機に供給し、260℃の温度で溶融混合させ、A層樹脂として、実質的に帯電防止剤および有機滑剤を添加しないで、結晶融解熱量が40~90J/gのポリプロピレン樹脂に架橋有機粒子および/または無機機粒子を添加して別の押出機に供給して260℃の温度で溶融混合させ、それぞれ瀘過フイルターを経た後、スリット状の三層積層口金でA層/B層/A層に共押出積層してフィルム状に成形し、該フィルムを25~60℃に保った金属ドラムに巻き付けて冷却固化せしめ無延伸積層フィルムを得た。次いで、該無延伸積層フィルムを150℃に保たれたオーブンに通して予熱し、引き続き該積層フィルムを130℃以上にに保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に4倍以上に延伸してただちに50℃以下に冷却する。引き続き該延伸フィルムをテンターに導いて、170℃以上の温度で予熱し、引き続き160℃以上の温度で幅方向に7倍以上に延伸し、次いで幅方向に5%以上の弛緩を与えつつ、155℃以上の温度で熱固定をして二軸延伸積層フィルムを得た。次に該無延伸積層フィルムおよび二軸延伸積層フィルムを50℃以上に保たれたロールに通し、10W・分/m2以上で該B層表面にコロナ放電処理を施して巻き取る。」
(7)特開昭48-32938号公報(甲第16号証。以下「引用文献10」という。)
引用文献10には、次の事項が記載されている。
「1. 発明の名称
帯電防止された二軸延伸ポリプロピレンフイルム」(1ページ左欄2~4行)
「3. 発明の詳細な説明
本発明は帯電防止された二軸延伸ポリプロピレンフイルムに関するものである。すなわち二軸延伸ポリプロピレンフイルムの優れた特性を保持しながら、優れた帯電防止能を付与することに関するものである。
一般にポリプロピレンフイルムは疎水性であるために静電気の発生が著しく、そのため包装材料としては塵埃の付着による内容物の商品価値の低下、印刷不良、不揃い、電撃などによる作業性の低下などの弊害が大きいことは周知である。これらの欠点を取除くために帯電防止剤を塗布する方法、内部に練込む方法など多くの提案がなされているが、」(1ページ右欄5行~下から2行)
「本発明者らの多くの経験では二軸延伸ポリプロピレン用として何とか使用できる帯電防止剤はペタイン型両性界面活性剤である。」(2ページ右上欄11~13行)
「実施例1
ポリプロピレンペレツト(三井東圧化学、三井ノーブレンJS-957)に・・・ベタイン型両性界面活性剤とステアリン酸モノグリセドとを両者の合計がポリプロピレンに対して0.6重量%になるようにし、両者の比率を表1に示すように、種々変えて配合したものをTダイに連結する口径90mmの押出機で押出し、表面温度が20℃に調整された表面クロムメツキされた回転する金属ドラム上にキヤストし、厚さ700μのシートとし、縦方向に周速の異なるロール間で5倍、引続き横方向にクリツプテンタを用いて実質的に8倍延伸した。」(4ページ左下欄12行~右下欄6行)
(8)周知技術
ア 周知技術1
引用文献7(上記(4))、引用文献8(上記(5))、引用文献9(上記(6))に記載されるように、
「包装材料として用いられ、積層構造に樹脂材料を含む積層体において、帯電抑制を課題として、基材層に帯電防止剤を含有させることにより帯電防止性能を付加すること」
は、本件出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という)である。
イ 周知技術2
引用文献8(上記(5))、引用文献9(上記(6))、引用文献10(上記(7))に記載されるように、
「帯電抑制のため、帯電防止剤を含む延伸ポリプロピレンフィルムを用いること」
は、本件出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という)である。
ウ 周知技術3
引用文献6(上記(3))に記載されるように、
「基材層とシーラント層とから構成される積層体において、当該基材層とシーラント層との間に印刷層を設けること」
は、本件出願前に周知の技術(以下「周知技術3」という)である。
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「基材フィルム5」、「シーラントフィルム4」、「第1層」、「第2層」、「第3層」は、本件発明1の「基材層」、「シーラント層」、「内層」、「中間層」、「外層」に相当する。
引用発明の「サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン」は、本件発明1の「バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレン」に相当する。
引用発明の積層体は「基材フィルム5と、シーラントフィルム4とをこの順に備える」ものであるから、本件発明1の「少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体」に相当する。
シーラント層の内層を構成する樹脂に関して、引用発明の「シーラントフィルム4」の「第1層」は、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン単体で構成されるものであるから、本件発明1の「構成する樹脂が、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみ」である「シーラント層」の「内層」に相当する。
以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点1】
「少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
シーラント層が、基材層側から順に、内層、中間層、および外層の3層構成であり、
シーラント層の内層を構成する樹脂が、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみである、積層体。」
【相違点1】
本件発明1は、「積層体が帯電防止性能を有し」、「前記基材層が、帯電防止剤を含」むのに対して、引用発明は、積層体が帯電防止性能を有するかどうか不明である点。
【相違点2】
本件発明1は、「前記基材層が、延伸ポリプロピレンフィルムを用いたものであ」るのに対して、引用発明は、「基材フィルム5」の材料が特定されていない点。
【相違点3】
本件発明1の「シーラント層の中間層を構成する樹脂」は、「バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンおよび化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみ」であるのに対して、引用発明の「シーラントフィルム4」の「第2層」を構成する樹脂は、「サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン」である点。
【相違点4】
本件発明1は、「シーラント層全体の厚みが40μm以上70μm以下である」のに対して、引用発明は、「シーラントフィルム4全体の厚みが130μm」である点。
(2)判断
ア 相違点1について
周知技術1として示したように、包装材料として用いられ、積層構造に樹脂材料を含む積層体において、帯電抑制を課題として、基材層に帯電防止剤を含有させることにより帯電防止性能を付加することは周知の技術である。
そして、引用発明の基材フィルム5とシーラントフィルム4とからなる積層体は、包装材料に用いられるものであって、帯電抑制の課題については製品化する上で必要に応じて採用される一般的な事項であるから、引用発明に周知技術1を適用して、基材フィルム5に帯電防止剤を含有させることにより帯電防止性能を付加して、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
イ 相違点2について
引用文献1の【0045】には、基材フィルム5の材料として、「ポリプロピレン系樹脂」が例示されており、引用発明の基材フィルム5として、ポリプロピレン系樹脂を用いることは、当業者が適宜選択し得た事項である。加えて、包装袋に用いる積層体を構成する樹脂フィルムとして延伸したものを用いることが、例示するまでもない周知技術であることを踏まえれば、ポリプロピレン系樹脂を基材フィルム5とするに際して、延伸して用いることに格別の困難性はない。
したがって、引用発明の基材フィルム5として、延伸ポリプロピレン系樹脂を用いて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
ウ 相違点3について
引用文献1に記載されるように、石油由来の樹脂組成物の使用比率を低下させることで二酸化炭素の排出量削減を行うことは周知の課題であり、課題解決手段として、石油由来の樹脂組成物にサトウキビ由来の樹脂組成物を適宜割合で含有させることも一般的である(特に、【0004】、【0028】~【0030】等を参照。)。
引用発明は、第1、3層を化石燃料由来直鎖状低密度ポリエチレンとし、第2層をサトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレンとしたものであるが、積層体全体として必要とされるバイオマス度と、機械的強度や製造コスト等を考慮して、当該第2層を、引用文献1の【0030】の記載に基づき、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレンと石油由来樹脂組成物とを配合したものとすることは、当業者であれば適宜なし得た事項である。
そして、その際に第2層に配合する石油由来の樹脂組成物を、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレンと同種である直鎖状低密度ポリエチレンとすることは、引用文献1の【0030】にも示唆されており、機械的強度等の物性の維持を図るといった観点からも、石油由来、すなわち化石燃料由来樹脂組成物としてサトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレンと同種の直鎖状低密度ポリエチレンを配合することは、当業者であれば通常なし得た事項である。
エ 相違点4について
包装袋に用いられる積層体におけるシーラント層の厚みについて、シーラント層の材質、必要なシール強度、重量、又は、製造コスト等を考慮して定めることは、当業者が適宜なし得る事項であり、シーラントフィルム4の全体の厚みを相違点3に係る本件発明1の数値範囲とすることは、当業者が適宜になし得たことである。
なお、本件発明1のシーラント層の厚みについて、本件特許明細書の【0041】には、「好ましくは40μm以上80μm以下、より好ましくは45μm以上70μm以下である。シーラント層の厚さが上記範囲であれば、包装袋を製造した際に十分なシール適性を付与することができる。」と記載されているが、厚みを変化させた実施例等の試験結果については示されておらず、当該数値範囲に設定することの臨界的意義は認められない。
オ 作用効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
カ 特許権者の主張について
特許権者は、令和6年10月9日提出の意見書において、発明の技術的課題の解決の観点から、まとまりのある構成を単位として相違点を認定し、判断するのが相当であるから、相違点4(上記相違点2)と相違点5(上記相違点1の後段)の容易想到性を個々に判断したことが誤りである旨を主張している。
しかしながら、引用発明の基材フィルム5は、シーラントフィルムを積層し、ヒートシール材としての積層フィルムとするためものであって(上記1(1)アの【0021】)、帯電抑制とは別異の課題によるものであるから、引用発明の基材フィルム5の材料として何を用いるかということと、帯電防止性能を付加するかということは、それぞれ独立して検討できるものである。つまり、基材層として何を用いるかという点が、基材層に帯電防止剤を含ませることについて何らかの影響を及ぼすことを、本件明細書において説明しているわけではない。
この点、本件明細書においても、基材層に帯電防止性能を付与する方法については【0022】に、基材層として何を用いるかは【0023】に、それぞれ独立して記載されており、両者の関連について記載されていないこととも矛盾していない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
なお、周知技術2として示したように、帯電抑制のため、帯電防止剤を含む延伸ポリプロピレンフィルムを用いることは周知の技術であるから、当該周知技術2を参考にすることで、仮に、相違点1、2についてまとめて判断しても、これら相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものともいえる。
(3)小括
よって、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件発明2について
引用発明の「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンから構成される第3層」は、本件発明2の「化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含む」「シーラント層の外層」に相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明とは、本件発明1で検討した相違点1~4以外に相違する点はない。
したがって、本件発明2は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 本件発明3、4について
必要とされるバイオマス度を考慮して、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレンの配合割合を定めることは、当業者が適宜なし得た事項である。
また、中間層のバイオマス度及び全体のバイオマス度を、本件発明3、4の範囲に設定することに格別顕著な効果は認められない。
そうすると、本件発明3、4は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 本件発明6について
(1)対比
本件発明6と引用発明とを対比すると、相違点1~4に加えて以下の相違点で相違する。
【相違点5】
本件発明6は「積層体が、基材層とシーラント層の間に、印刷層をさらに備える」のに対して、引用発明は印刷層を有することを特定していない点。
(2)判断
ア 相違点1~4について
相違点1~4については、上記2(2)で説示したとおりである。
イ 相違点5について
周知技術3として示したように、基材層とシーラント層とから構成される積層体において、当該基材層とシーラント層との間に印刷層を設けることは、本願出願前に周知である。
引用発明に周知技術3を適用して、基材層とシーラント層との間に印刷層を設けることは、当業者が容易になし得たことである。
(3)小括
以上から、本件発明6は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 本件発明7について
上記5(2)イにおける、引用発明に対する周知技術3の適用に際し、接着層を介して印刷層を設けることも、当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、本件発明7は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 本件発明8について
引用文献1の【請求項6】等には、包装袋に用いられる積層体が記載されている。
そうすると、本件発明8は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~4、6~8に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項5は、本件訂正により削除されたため、請求項5に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701351