特許異議申立
2025-700173
紙製バリア材料の製造方法
- 審判番号
- 2025-700173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-067119
- 登録番号
- 7531740
- 請求日
- 2025年02月07日
- 審決日
- 2026年02月03日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本製紙株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
- 【異議申立人】合同会社 SAS
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 長谷川 一郎
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7531740号発明「紙製バリア材料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7531740号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7531740号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7531740号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和6年4月18日の出願であって、令和6年8月1日にその特許権の設定登録がされ、令和6年8月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和7年 2月 7日 :特許異議申立人合同会社SAS(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和7年 3月25日付け:取消理由通知書
令和7年 5月23日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和7年 7月16日 :意見書(申立人)
令和7年 8月12日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年10月 9日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和7年11月13日 :意見書(申立人)
なお、令和7年5月23日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年10月9日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7531740号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審において訂正箇所に付したものであり、「・・・」は文章の省略を表す。以下同様。
特許請求の範囲の請求項1特許請求の範囲の請求項1に
「前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、」
とあるのを、
「前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設けるラミネート工程、」
とする訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、本件訂正の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
本件訂正は、訂正前の請求項1に記載のラミネート層に関し、
「融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなる」ラミネート層と、ラミネート層が融点90℃以上180℃以下の熱可塑性樹脂フィルムのみからなることを特定して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものである。
本件訂正は、本件特許の【0041】の熱可塑性樹脂フィルムとしては、「融点が90℃以上180℃以下であるものが好ましい。」との記載、【0052】の実施例においてラミネート層を融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみから形成したことに基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、本件訂正は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、
前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設けるラミネート工程、
を有し、
前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず、
前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工されることを特徴とする紙製バリア材料の製造方法(ただし、熱可塑性樹脂フィルムが蒸着層を有するものを除く)。
【請求項2】
前記紙基材の塗工面の算術平均高さ(Sap)が2.0μm以上30μm以下であり、
前記バリア塗工層の算術平均高さ(Sac)が3.0μm以上35μm以下、かつ、前記塗工面の算術平均高さ(Sap)より1μm以上大きいことを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料の製造方法。
【請求項3】
23℃・0%RH条件の酸素透過度が、20cc/m2・day・atm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤の塗工量(固形分)が2.0g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料の製造方法。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由(決定の予告)の概要
当審において令和7年8月12日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(新規性)(特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由1と同旨)
請求項1、3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2(進歩性)(特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由2と同旨)
請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
証拠一覧
甲第1号証:特開2024-16929号公報
甲第7号証:飯田俊男、「複合材料の変化とその技術動向」、紙パ技協誌、紙パルプ技術協会、1985年4月、第39号第4号、p.367-372
引用文献1:特開2013-57153号公報
引用文献2:特開2022-83995号公報
以下、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。
2 当審の判断
当審合議体は、以下のとおり、上記取消理由通知で通知した理由によっては、訂正後の請求項1~4に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用発明、引用文献記載事項
ア 引用発明
(ア) 甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した(以下同様)。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐屈曲性に優れた紙製バリア材料を提供することを目的とする。」
・「【0037】
保護層は、バリア原紙のバリア塗工層側に積層される。バリア塗工層の近くに保護層を配置することにより、屈曲した際のバリア塗工層の顔料周辺での破壊を防止することができ、紙製バリア材料の耐屈曲性が向上する。保護層の厚さは特に制限されないが、例えば、5μm以上20μm以下程度である。
保護層は、バリア塗工層上に直接積層することもでき、他の層を介して積層することもできる。他の層の一つとしては、バリア塗工層と保護層とを接続して界面での剥がれを防止することのできる接着剤層が好ましい。接着剤層の材質は、バリア塗工層と保護層の両方との接着性に優れていれば特に制限されず、マレイン酸変性ポリエチレン等の変性樹脂(固体)のほか、1液硬化型、2液硬化型の液体接着剤等を単独、または混合して使用することができる。
接着剤層等の他の層の形成方法は特に制限されず、塗工、押出ラミネート、サンドラミネート、ドライラミネート等の公知の方法で形成することができる。
【0038】
(熱可塑性樹脂層)
本発明の紙製バリア材料は、少なくとも一方の最表面に熱可塑性樹脂層を設けることができる。少なくとも一方の最表面に熱可塑性樹脂層を設けることにより、ヒートシール加工が可能となる。
熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂材料としては、ヒートシール用途に用いられているものを特に制限することなく用いることができ、例えば、ガラス転移温度が100℃以下である熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、-20℃以上85℃以下であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の融点は、80℃以上120℃以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のヒートシール用途に用いられる熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができる。・・・」
・「【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた紙製バリア材料について、以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。
【0043】
(評価方法)
(1)酸素透過度/耐屈曲性
MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃―0%RH条件にて測定した。
測定は、シートサンプルそのまま(折り無)と、塗工面側を山折りに折り曲げたシートサンプルに対し、370gのゴム製ローラーを自重で10往復転がして十字の折り目をつけたサンプル(折り有)について行い、折り有のサンプルは、その十字が治具の中央に位置するようにして測定した。
また、以下の基準で耐屈曲性を評価した。
OK:折り有サンプルの酸素透過度が、10cc/m2・day・atm未満
NG:折り有サンプルの酸素透過度が、10cc/m2・day・atm以上」
・「【0045】
[実施例1]
(紙基材の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量45g/m2の紙を得た。
次いで、得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面合計で1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量45g/m2の原紙を得た。得られた原紙に、チルドカレンダーを用いて、速度300m/min、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑処理を行い、紙基材を得た。
【0046】
(水蒸気バリア層用塗料の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径90μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)を100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度45%の水蒸気バリア層用塗料を得た。
【0047】
(ガスバリア層用塗料の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径90μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%のカオリンスラリーを調整した。ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるように調整し、PVA水溶液を得た。得られたカオリンスラリーと、PVA水溶液を固形分で顔料:PVA=100:100として固形分濃度が10%となるように混合し、ガスバリア層用塗料を得た。
【0048】
(バリア原紙の作製)
得られた紙基材上に、水蒸気バリア層用塗料を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、次いで、ガスバリア層用塗料を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥し、バリア原紙を得た。
【0049】
(紙製バリア材料の作製)
得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて1.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成し、80℃にて1sec乾燥の上、ポリエチレン/ナイロン6/ポリエチレン=10μm/10μm/10μmの積層フィルム(グンゼ社製 ヘプタックスBタイプ(#30)、二軸延伸)をポリエチレン(旭化成社製 サンテックL1850K)15μmでサンドラミネートし、積層フィルム側の最表面に更にポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)30μmを押出しラミネートにより積層して、保護層を有する紙製バリア材料を得た。
【0050】
[実施例2]
得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて3.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成し、80℃にて1sec乾燥の上、あらかじめ同じ接着剤、条件でドライラミネートによりナイロン6フィルム(興人フィルム&ケミカル社製 ボニールW(#15)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(#30))とを貼り合わせたフィルムのナイロン面側をドライラミネートにより積層した以外は実施例1と同様にして、保護層を有する紙製バリア材料を得た。
・・・
【0052】
[比較例1]
得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、実施例1と同様にして接着剤層を形成、乾燥の上、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)60μmを押出しラミネートにより積層して、紙製バリア材料を得た。
・・・」
・「【0054】
【表1】
[図:0001435176000001.jpg]
」
(イ) 甲1に記載されている事項
上記(ア)より、甲1から以下の事項(以下「甲1記載事項1」等という。)が把握できる。
[甲1記載事項1]
・【0037】より、保護層の厚さは5μm以上20μm以下程度であること。
[甲1記載事項2]
・【0038】より、熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂は、融点が80℃以上120℃以下であることが好ましく、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を使用することができること。
[甲1記載事項3]
・【0045】より、原料パルプを抄紙し、坪量45g/m2の紙を得て、紙にポリビニルアルコールを塗工、乾燥し、坪量45g/m2の原紙を得て、得られた原紙に、チルドカレンダーを用いて平滑処理を行い、紙基材を得ていること。
[甲1記載事項4]
・【0049】より、実施例1では、積層フィルム側の最表面に、30μmのポリエチレンを押出しラミネートにより積層して、保護層を有する紙製バリア材料を得ること。
[甲1記載事項5]
・【0054】、【表1】より、酸素透過度はシートサンプルそのまま(折り無)と、十字の折り目を付けたサンプル(折り有)について測定を行い、実施例2の保護層を有する紙製バリア材料の折り無の23℃-0%RH条件での酸素透過度は0.2cc/m2・day・atmであり、比較例1の紙製バリア材料の折り無の23℃-0%RH条件での酸素透過度は0.9cc/m2・day・atmであること。
[甲1記載事項6]
・【0050】より、実施例2において、バリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて3.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成すること。
[甲1記載事項7]
・【0049】、【0050】より、比較例1において、バリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて1.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成すること。
(ウ) 甲1発明1
上記(ア)、(イ)より、特に実施例2に着目すると、甲1には以下の発明が記載されている(以下「甲1発明1」という。)。
「カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとし、
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量45g/m2の紙を得て、
得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面合計で1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量45g/m2の原紙を得て、得られた原紙に、チルドカレンダーを用いて、速度300m/min、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑処理を行い、紙基材を得て、
得られた紙基材上に、水蒸気バリア層用塗料を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、次いで、ガスバリア層用塗料を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥し、バリア原紙を得て、
得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて3.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成し、80℃にて1sec乾燥の上、あらかじめ同じ接着剤、条件でドライラミネートによりナイロン6フィルム(興人フィルム&ケミカル社製 ボニールW(#15)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(#30))とを貼り合わせたフィルムのナイロン面側をドライラミネートにより積層して、保護層を有する紙製バリア材料を得て、
得られた紙製バリア材料の23℃-0%RH条件での酸素透過度は0.2cc/m2・day・atmである保護層を有する紙製バリア材料の製造方法。」
(エ) 甲1発明2
上記(ア)、(イ)より、特に比較例1に着目すると、甲1には以下の発明が記載されている(以下「甲1発明2」という。)。
「カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとし、
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量45g/m2の紙を得て、
得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面合計で1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量45g/m2の原紙を得て、得られた原紙に、チルドカレンダーを用いて、速度300m/min、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑処理を行い、紙基材を得て、
得られた紙基材上に、水蒸気バリア層用塗料を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、次いで、ガスバリア層用塗料を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥し、バリア原紙を得て、
得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて1.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成、乾燥の上、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)60μmを押出しラミネートにより積層して、紙製バリア材料を得て、
得られた紙製バリア材料の23℃-0%RH条件での酸素透過度は0.9cc/m2・day・atmである保護層を有する紙製バリア材料の製造方法。」
イ 周知技術
(ア) 引用文献1には、以下の記載がある。
・「【0061】
[表面粗さ(単位:μm)]
JIS-B0601(1998)「製品幾何学特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義及び表面性状パラメータ」に準拠して、株式会社小坂研究所製「粗さ解析装置サーフコーダーSE30K」を用いて、化繊紙の表面(印刷面)の算術平均高さ(Ra)を測定し、表面粗さとした。算術平均高さ(Ra)は、化繊紙の表面の横方向について、カットオフ値λc0.8mm、評価長さ5.0mmで測定した。」
・「【0071】
【表1】
[図:0001435176000002.jpg]
」
(イ) 引用文献2には、以下の記載がある。
・「【0064】
合紙の算術平均高さSaが大きい場合、合紙の平滑度は小さくなる傾向にある。しかし、合紙の平滑度が20秒未満であると、パーティクルが発生しやすくなる。合紙の算術平均高さSaを一定以上としつつ、かつ平滑度を20秒以上とすることで、パーティクルの抑制と傷の抑制を両立できる。
よって、合紙の平滑度が20秒以上であり、かつ合紙の少なくとも一方の主面の算術平均高さSaは2.5μm以上であることが好ましく、3.0μm以上であることがより好ましい。合紙の算術平均高さSaが前記下限以上であれば、合紙に存在する異物が埋没しやすくなり、異物が押圧されることに起因する傷の抑制が期待できる。合紙の算術平均高さSaの上限は8.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましく、4.0μm以下がさらに好ましい。算術平均高さSaが前記上限以下であれば、パーティクルの発生を抑制できる。」
(ウ) 甲7には、以下の記載がある。
・「
[図:0001435176000003.jpg]
」(p.371右欄)
(エ) 周知技術
上記(ア)~(ウ)より、以下の事項は周知の事項(以下「周知技術1」等という。)といえる。
[周知技術1]
・上記(ア)より、実施例8及び実施例9に着目すると、紙基材の算術平均高さ(Ra)として、16.8~27.7μmのものが知られていること、及び上記(イ)より、合紙の算術平均高さとして、2.5μm以上8.0μm以下とすることが知られていること。
[周知技術2]
・上記(ウ)より、複合加工技術として、押出しラミネーションやドライラミネーションが知られていること。
(2) 甲1発明1を主引例とする場合
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明1の「紙基材」は、本件発明1の「紙基材」に相当し、以下同様に、
「水蒸気バリア層用塗料」及び「ガスバリア層用塗料」をそれぞれ塗工、乾燥して得られた「バリア塗工層」は、「バリア塗工層」に、
「2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)」は、「接着剤」に、
「保護層を有する紙製バリア材料の製造方法」は、「紙製バリア材料の製造方法」にそれぞれ相当する。
甲1発明1では、「紙基材上に、水蒸気バリア層用塗料を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、次いで、ガスバリア層用塗料を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥し、バリア原紙を得て」いることから、本件発明1の「紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程」を備えている。
甲1発明1において、「ナイロン6フィルム(興人フィルム&ケミカル社製 ボニールW(#15)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(#30))」は、どちらも熱可塑性樹脂フィルムである。そして、甲1発明1では、これらを「貼り合わせたフィルム」を「バリア塗工層上」に設けられた「2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)」を介して「ドライラミネート」しているから、甲1発明1の当該事項と、本件発明1の「前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設けるラミネート工程」とは、「前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程」である限りで一致する。
甲1発明1の、「バリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて3.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成」は、本件発明1の「前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工される」に相当する。
甲1発明1における「ナイロン6フィルム(興人フィルム&ケミカル社製 ボニールW(#15)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(#30))」からなるフィルムは、蒸着層を備えていないことから、これらを「貼り合わせたフィルム」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂フィルムが蒸着層を有するものを除く」「熱可塑性樹脂フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、
前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、
を有し、
前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工される紙製バリア材料の製造方法 (ただし、熱可塑性樹脂フィルムが蒸着層を有するものを除く)。」
[相違点1-1]
バリア塗工層に関し、本件発明1は「前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず」と特定されているのに対し、甲1発明1ではバリア塗工層に対して、平滑化処理を行っているか不明な点。
[相違点1-2]
ラミネート層に関し、本件発明1は「融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなる」と特定されているのに対し、甲1発明1では「ナイロン6フィルム(興人フィルム&ケミカル社製 ボニールW(#15)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(#30))とを貼り合わせたフィルム」であり、その融点が不明な点。
(イ) 判断
事案に鑑み、まず相違点1-2について判断する。
a 相違点1-2について
本件発明1は「融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設ける」ことを特定している。
そして、ポリエチレンの融点は一般に95℃~130℃であるものの、ナイロン6樹脂の融点は一般的におおよそ220~225℃程度であることを踏まえると、甲1発明1は、「融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設け」たものではない。そして、当該事項については、甲1その他申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前における周知技術であったともいえない。
したがって、甲1発明1において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
b 申立人の主張について
申立人は意見書においておおむね以下のとおり主張する(令和7年11月13日提出の意見書第6ページ第14行~第9ページ第2行)
・本件発明1では、ラミネート層として特別の機能を特定しておらず、また、ラミネート層上に、例えばナイロン6または66からなる層をさらに設ける工程を排除したものではない。そうすると、甲1に記載された、バリア塗工層上に、接着剤を介して、接着剤層としてドライラミネートしたマレイン酸変性ポリエチレンの接着剤層(【0037】、【0039】)は、訂正後の本件特許発明1における「融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルム」に該当する。
よって、本件発明1の「前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設けるラミネート工程」は、甲1に記載されているか、甲1の記載から当業者が容易に想到し得たことである。
c 申立人の主張の検討
甲1の【0037】には、保護層をバリア塗工層上に積層する場合に、接着剤層を介して積層することは記載されているが、マレイン酸変性ポリエチレンの接着剤層を、バリア塗工層上に接着剤を介して、ドライラミネートすることは記載されていない。
また、甲1の【0037】、【0039】の記載を参考にしても、甲1発明1における「バリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて3.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成し」、「フィルムのナイロン面側をドライラミネートにより積層」する構成に替えて、マレイン酸変性ポリエチレンの接着剤層を、バリア塗工層上に、接着剤を介して、接着剤層として、フィルムのナイロン面側をドライラミネートする動機付けはない。
そうすると、甲1において、本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
d 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1ではなく、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記アと同様の理由により、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、上記相違点1-2は、実質的なものであるから、本件発明3は、甲1発明1ではない。
(3) 甲1発明2を主引例とする場合
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明2とを、上記2(1)アを踏まえ、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明2の「紙基材」は、本件発明1の「紙基材」に相当し、以下同様に、
「水蒸気バリア層用塗料」及び「ガスバリア層用塗料」をそれぞれ塗工、乾燥して得られた「バリア塗工層」は、「バリア塗工層」に、
「保護層を有する紙製バリア材料の製造方法」は、「紙製バリア材料の製造方法」にそれぞれ相当する。
甲1発明2では、「紙基材上に、水蒸気バリア層用塗料を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、次いで、ガスバリア層用塗料を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥し、バリア原紙を得て」いることから、本件発明1の「紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程」を備えている。
甲1発明2において、「ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)」は、熱可塑性樹脂フィルムである。そして、甲1発明2では、当該「ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)」を「バリア塗工層上」に「押出しラミネートにより積層して」いるから、甲1発明2の当該事項と、本件発明1の「前記バリア塗工層上に、接着剤を介したドライラミネートにより、融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなるラミネート層を設けるラミネート工程」とは、「前記バリア塗工層上に、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程」である限りで一致する。
甲1発明2の、「バリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて1.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成」は、本件発明1の「前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工される」に相当する。
甲1発明2の、「ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)」は、上記のとおり熱可塑性樹脂フィルムであるところ、蒸着層を備えていないことから、本件発明1の「熱可塑性樹脂フィルムが蒸着層を有するものを除く」「熱可塑性樹脂フィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「紙基材の少なくとも一面である塗工面上に、バリア塗工層を形成するバリア原紙製造工程、
前記バリア塗工層上に、熱可塑性樹脂フィルムからなるラミネート層を設けるラミネート工程、
を有し、
前記接着剤が、前記バリア塗工層に塗工される紙製バリア材料の製造方法 (ただし、熱可塑性樹脂フィルムが蒸着層を有するものを除く)。」
[相違点2-1]
バリア塗工層に関し、本件発明1は「前記バリア塗工層に対して、線圧20kg/cm以上の平滑化処理を行わず」と特定されているのに対し、甲1発明2ではバリア塗工層に対して、平滑化処理を行っているか不明な点。
[相違点2-2]
ラミネート層に関し、本件発明1は「融点が90℃以上180℃以下である熱可塑性樹脂フィルムのみからなる」と特定されているのに対し、甲1発明2では「ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)60μm」であり、その融点が不明な点。
[相違点2-3]
ラミネート層の形成に関し、本件発明1は「接着剤を介したドライラミネートによ」るのに対し、甲1発明2では「接着剤層を形成」し、押出しラミネートによる点。
(イ) 判断
事案に鑑み、まず相違点2-3について判断する。
a 相違点2-3について
本件特許明細書の【0005】に、発明が解決しようとする課題として、「紙と熱可塑性樹脂フィルムとをドライラミネートする場合、通常、接着剤はフィルム側に塗工される。これは、紙に接着剤を塗工すると、接着剤が紙に染み込むため、接着面表面に凹凸が生じて接着不良が生じやすいためである。」と記載されているように、ドライラミネートで紙とフィルムとを貼り合わせる場合、接着剤をより平滑なフィルム側に塗工することが、出願時の技術常識といえる。
そうすると、仮に、甲1発明2におけるポリエチレンの積層に当たり、押出しラミネートに代えて、周知のドライラミネートを採用し得たとしても、上記技術常識に反して、原紙側であるバリア塗工層に接着剤を塗工し、当該相違点2-3に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、相違点2-3に係る構成は、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、本件特許に係る出願前における周知技術であったともいえない。
したがって、甲1発明2において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
b 申立人の主張について
申立人は意見書においておおむね以下のとおり主張する(令和7年11月13日提出の意見書第9ページ第17行~第15ページ第2行)
・押出ラミネート、サンドラミネート、ドライラミネート等の方法は、包装材料の分野において既に40年以上前から複合材料を製造する複合加工技術として知られており、使用されており、特にドライラミネートはほとんどの基材同士の複合化が可能であることが知られているとともに、「バリア材料において、押出しラミネートに代えてドライラミネートを採用することに阻害要因が存在する」という事情や技術常識が、紙製バリア材料の分野において存在するとはいえないから、甲1の比較例1の紙製バリア材料の製造方法において、ポリエチレン層の積層のために押出ラミネート法に代えて接着剤を介したドライラミネート法を適用することに特に困難性はなく、本件特許発明に想到することは容易である。
c 申立人の主張の検討
甲1発明2において、仮にドライラミネートが採用し得たとしても、上記aのとおり、ポリエチレンフィルムをドライラミネートする際に、接着剤をバリア塗工層に塗工する点は容易想到ではない。また、甲1の実施例2は、ナイロン6フィルムとポリエチレンフィルムとを貼り合わせたフィルムのドライラミネートであり、甲1発明2とは、ラミネートしようとするフィルムの構成が異なるため、甲1の実施例2をもって、甲1発明2においてもこれを採用し得るとする請求人の主張は、採用できない。
d 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記アと同様の理由により、甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(甲1を主引例とした本件発明2の新規性)
本件特許の請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)申立人が提出した証拠
甲1:特開2024-16929号公報
甲2:国際公開第2018/062466号
甲3:特開2018-58360号公報
甲4:特開2023-23420号公報
甲5:中杤正明、カレンダーの変遷と今後、[online]、紙パルプ技術協会、2021年4月、[2024年12月16日検索]、
<https://www.japantappi.org/wp-content/uploads/2021/04/7_PaperindustryTechnicalarchivesPreservation_9-2.pdf>
甲6:国際公開第2017/111019号
甲7:飯田俊男、「複合材料の変化とその技術動向」、紙パ技協誌、紙パルプ技術協会、1985年4月、第39号第4号、p.367-372
2 当審の判断
(1)申立理由1(甲1を主引例とした本件発明2、4の新規性)について
上記第4の2(2)ア(イ)で判断したとおり、本件発明1は、甲1発明1ではない。
そして、本件発明2、4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、同様の理由により、甲1発明1ではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~4に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700173