2020-700589
イソヘキシドグリシジルエーテルを生成する方法、それにより得られる生成物の使用
- 審判番号
- 2020-700589
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-543233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6650402
- 請求日
- 2020年08月12日
- 審決日
- 2021年09月30日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.536-ZB (C07D) / P1651.537-ZB (C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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特許第6650402号の請求項1~6に係る特許についての出願は、2015年1月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年1月21日 フランス(FR))を国際出願日とする出願であって、令和2年1月22日にその特許権の設定登録がされ、同年2月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年8月12日にその全請求項(請求項1~6)に係る特許に対して、特許異議申立人 高橋和秀(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年11月9日付けで取消理由を通知し、特許権者は同年12月24日に意見書及び訂正請求書を提出し、それに対し、当審は令和3年1月22日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
その後、当審は令和3年4月23日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
令和2年12月24日に特許権者が行った訂正請求に係る請求の趣旨は、「特許第6650402号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
令和2年12月24日に特許権者が行った訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~3からなるものである。
[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項1において、「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」とあるのを、「臭化トリエチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム又はヨウ化トリエチルアンモニウム」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~3、5~6も同様に訂正する)。
[訂正事項2]
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
[訂正事項3]
特許請求の範囲の請求項5~6の引用関係について、請求項5は請求項1~3のいずれか一項を引用するものに、請求項6は請求項1~3、5のいずれか一項を引用するものに、それぞれ訂正する。
3 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
(ア)特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正
訂正事項1が特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的としたものであるかについて、まず検討する。
訂正事項が誤記の訂正を目的としたものとして認められるためには、請求項中の記載が、それ自体で、又は特許された明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、特許がされた明細書又は特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まることが必要である。
まず、訂正前の請求項1における「相間移動触媒として、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムがステップa)中に添加され、」の「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」は、請求項1に係る方法において相間移動触媒になり得ないことが明らかであるなどの、それ自体で誤りであるといえる根拠を見出すことはできないので、訂正前の請求項1中の記載「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」がそれ自体で誤りであることが明らかであるとすることはできない。
次に、特許明細書には、
「【0037】相間移動触媒は、優先的にはハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、硫酸塩または硫酸水素塩から、さらに優先的には臭化テトラブチルアンモニウムおよびヨウ化テトラブチルアンモニウムから選択される。相間移動触媒の量は、ジアンヒドロヘキシトールに対して0.01重量%~5重量%、優先的には0.1重量%~2重量%、さらに優先的には1重量%である。エポキシ指数の非常に著しい低下が実現され、それは、媒体中のオリゴマーの量が大きく減少することを意味する。」との記載があり、相間移動触媒として、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが選択されることを示している。
特許明細書には、他に
「【0063】例3:相間移動触媒を用いた本発明による試験相間移動触媒の存在下で、イソソルビドとエピクロロヒドリンとを反応させ、水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら、共沸蒸留を部分真空下で実施する間に、本発明による6つの試験(試験11~16)を実施した。【0064】続きを表示(全15行)例として、試験番号11の方法を以下のように実施した。【0065】125gのイソソルビド(0.86モル、1モル当量)、395.6gのエピクロロヒドリン(4.27モル、5モル当量)、次に1.25gの臭化トリエチルアンモニウム(イソソルビドに対して1重量%)を1リットルのジャケット付き反応器に投入し、機械式パドル攪拌システム、反応媒体の温度を制御するシステム、およびコンデンサーを搭載した逆ディーン・スターク器具を備える恒温伝熱流体浴を用いて加熱する。……【0072】最後に、相間移動触媒を使用することを含む本発明の好適な変形例は、これらの影響を悪化させることを可能にする。1重量%の触媒を使用する試験番号11~15は、特に、エポキシ当量を非常に大きく低減させ、従ってオリゴマー含量を低下させることを可能にする。……【0074】【表2】[図:0001383231000001.jpg]」との記載もあるものの、この記載は、特定の条件下で相間移動触媒として臭化トリエチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウムを用いた試験例を示すものにとどまり、相間移動触媒としてハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが選択されることを示している特許明細書の段落0037の上記記載の内容が誤りであることの根拠になるものではなく、請求項中の記載「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」が特許された明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるとすることはできない。
したがって、請求項中の記載「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」が、それ自体で、又は特許された明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるとすることはできない。
以下では、念のために、仮に、請求項中の記載「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」が、それ自体で、又は特許された明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるとした場合に、特許がされた明細書又は特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるか否かを検討する。
特許明細書又は特許請求の範囲の記載のうち、相間移動触媒とされる化合物についての記載は、請求項1における上記記載、特許明細書の段落0037の上記記載及び同段落0063~0074の上記記載の他、
「【請求項4】前記相間移動触媒が、臭化テトラアルキルアンモニウムおよびヨウ化テトラアルキルアンモニウムから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。」との記載がある。
特許明細書又は特許請求の範囲の記載全体には、相間移動触媒とされる化合物として、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム(訂正前の請求項1、特許明細書の段落0037)、臭化テトラアルキルアンモニウム(訂正前の請求項4)、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム(訂正前の請求項4)、臭化テトラブチルアンモニウム(特許明細書の段落0037)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(特許明細書の段落0037)、臭化トリエチルアンモニウム(特許明細書の段落0065、段落0074の表2)、塩化トリエチルアンモニウム(特許明細書の段落0074の表2)、ヨウ化トリエチルアンモニウム(特許明細書の段落0074の表2)、との数多くの化合物が挙げられているにもかかわらず、特許権者が本来記載すべきであったものとする「ハロゲン化トリアルキルアンモニウム」との記載はなく、「ハロゲン化トリアルキルアンモニウム」が正しい記載であることが自明な事項といえる根拠を見出すことはできない。
したがって、仮に、請求項中の記載「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」が、それ自体で、又は特許された明細書の記載との関係で誤りであることが明らかであるとしたとしても、特許がされた明細書又は特許請求の範囲の記載全体から、「ハロゲン化トリアルキルアンモニウム」が正しい記載であることが自明な事項として定まるとはいえず、「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」を「臭化トリエチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム又はヨウ化トリエチルアンモニウム」に訂正することが、正しい記載であることが自明な事項として定まる「ハロゲン化トリアルキルアンモニウム」をさらに限定するものとすることもできない。
また、特許明細書又は特許請求の範囲の記載全体には、「臭化トリエチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム又はヨウ化トリエチルアンモニウム」が正しい記載であることが自明な事項として定まるといえる根拠を見出すこともできない。
以上のとおり、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に規定する特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものとは認められない。
(イ)明瞭でない記載の釈明
次に、訂正事項1が「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえるかについて、検討する。
訂正事項が明瞭でない記載の釈明を目的としたものとして認められるためには、それ自体記載内容が明らかでない記載や他の記載との関係において不合理を生じている記載を本来の意味に正すものである必要がある。
しかし、訂正前の請求項1における「相間移動触媒として、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムがステップa)中に添加され、」の「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」との記載が、それ自体記載内容が明らかでない記載であるとはいえず、他の記載との関係において不合理を生じている記載であってその本来の意味が「臭化トリエチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム又はヨウ化トリエチルアンモニウム」であるともいえない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものとは認められない。
(ウ)他の目的
訂正事項1が、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものでないことは明らかである。
(エ)小括
以上のとおり、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれかの事項を目的とするものではない。
イ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものであるかについて
訂正事項1は、訂正前の請求項1~6に係る発明において、「ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム」を「臭化トリエチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム又はヨウ化トリエチルアンモニウム」に変更するものであり、請求項に記載した事項を変更するものである。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を変更するものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。
(2)小括
以上のとおり、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項のいずれをも目的としておらず、また、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第6項の規定にも適合しない。
そして、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であるところ、訂正事項1はその一群の請求項を訂正するものであるから、その他の訂正事項の適否にかかわらず、請求項1~6に係る一群の請求項の訂正を認めることができない。
第3 本件特許発明
上記「第2 訂正請求について」「3 訂正の適否」で説示したとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する方法であって、a)ジアンヒドロヘキシトールを有機ハロゲン化合物と接触させるステップと、b)192mbar~568mbarの負圧が得られるように、ジアンヒドロヘキシトールと有機ハロゲン化合物とから得られる混合物を真空下に置くステップと、続きを表示(全22行)c)前記混合物を真空下で50℃~120℃の温度で加熱して、共沸蒸留を実施するステップと、d)次に1時間~10時間かけて前記混合物に塩基性試薬を添加した後、前記共沸蒸留を続けるステップと、e)濾過ステップの後、前記ビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を回収し、濾液を濃縮し、および任意選択で精製するステップとを含み、前記ジアンヒドロヘキシトールがイソソルビドであり、前記有機ハロゲン化合物がエピクロロヒドリンであり、相間移動触媒として、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムがステップa)中に添加され、前記相間移動触媒の量が、前記ジアンヒドロヘキシトールに対して0.01重量%~5重量%であることを特徴とする、方法。【請求項2】前記塩基性試薬が、任意選択で水溶液の形態で、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化ナトリウムから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。【請求項3】前記塩基性試薬が、水酸化ナトリウム水溶液であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。【請求項4】前記相間移動触媒が、臭化テトラアルキルアンモニウムおよびヨウ化テトラアルキルアンモニウムから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。【請求項5】前記相間移動触媒の量が、前記ジアンヒドロヘキシトールに対して0.1重量%~2重量%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。【請求項6】複合材料、コーティングおよび接着剤の製造における、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法により得られるビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物の使用。」
第4 取消理由の概要
令和2年11月9日付けで通知した取消理由は、
というものである。
第5 当審の判断
1 取消理由1について
本件特許発明1~本件特許発明6は、相間移動触媒としてハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを、ジアンヒドロヘキシトールに対して0.01重量%~5重量%の量で用いて、ビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する方法の発明、又はその方法により得られるビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物の使用の発明である。
発明の詳細な説明には、段落0020以降に発明を実施するための形態が記載され、段落0036~0037には相間移動触媒に関して、
「【0036】好適な一変形形態において、相間移動触媒が、第1のステップ(ステップa)中に添加される。このようにして、同時にイソソルビドのジエポキシ誘導体のイソソルビドのモノエポキシ誘導体に対する割合を非常に高く維持する間は、生成した生成物の流動性のより一層大きな増大が実現される。【0037】相間移動触媒は、優先的にはハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、硫酸塩または硫酸水素塩から、さらに優先的には臭化テトラブチルアンモニウムおよびヨウ化テトラブチルアンモニウムから選択される。相間移動触媒の量は、ジアンヒドロヘキシトールに対して0.01重量%~5重量%、優先的には0.1重量%~2重量%、さらに優先的には1重量%である。エポキシ指数の非常に著しい低下が実現され、それは、媒体中のオリゴマーの量が大きく減少することを意味する。」と記載されている。
しかし、発明の詳細な説明には、相間移動触媒としてハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを用いた実施例などの具体的な記載はない。
発明の詳細な説明における相間移動触媒を用いた方法についての具体的な記載は、段落0063~0074に記載される以下のとおりのものである。
「【0063】例3:相間移動触媒を用いた本発明による試験相間移動触媒の存在下で、イソソルビドとエピクロロヒドリンとを反応させ、水酸化ナトリウム水溶液を添加しながら、共沸蒸留を部分真空下で実施する間に、本発明による6つの試験(試験11~16)を実施した。【0064】続きを表示(全15行)例として、試験番号11の方法を以下のように実施した。【0065】125gのイソソルビド(0.86モル、1モル当量)、395.6gのエピクロロヒドリン(4.27モル、5モル当量)、次に1.25gの臭化トリエチルアンモニウム(イソソルビドに対して1重量%)を1リットルのジャケット付き反応器に投入し、機械式パドル攪拌システム、反応媒体の温度を制御するシステム、およびコンデンサーを搭載した逆ディーン・スターク器具を備える恒温伝熱流体浴を用いて加熱する。……【0072】最後に、相間移動触媒を使用することを含む本発明の好適な変形例は、これらの影響を悪化させることを可能にする。1重量%の触媒を使用する試験番号11~15は、特に、エポキシ当量を非常に大きく低減させ、従ってオリゴマー含量を低下させることを可能にする。……【0074】【表2】[図:0001383231000002.jpg]」
この記載に示される「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」、「ヨウ化トリエチルアンモニウム」はいずれも、ハロゲン化トリアルキルアンモニウムであって、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムではない。
また、本件特許発明1~6に係るビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する化学反応において、「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」又は「ヨウ化トリエチルアンモニウム」の相間移動触媒作用と同等の相間移動触媒作用を、同量のハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが奏することは、発明の詳細な説明には記載されておらず、技術常識であるとも認められない。
また、「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」又は「ヨウ化トリエチルアンモニウム」を相間移動触媒として用いる化学反応において、それらの触媒に代えて同量のハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを相間移動触媒として用いた場合に、同等の反応条件下で同等の化学反応が進行することが技術常識であるとは認められない。
したがって、たとえ、発明の詳細な説明に、「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」又は「ヨウ化トリエチルアンモニウム」を相間移動触媒として用いてビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する反応条件が示されていても、発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、本件特許発明1~6に係る化学反応において、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを相間移動触媒として用いてビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する反応条件を決定するためには、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要すると認められる。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~6を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に記載する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由2について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきといえる。
本件特許発明1~6の課題は、請求項1~6の記載及び発明の詳細な説明(特に、段落0001、0018、0037)から、
「イソソルビドのモノエポキシ誘導体と比べてイソソルビドのジエポキシ誘導体の割合が非常に高く、オリゴマー含量が低く、低いエポキシ当量を有する、ビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する方法」又は「その方法により得られるビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物の使用」を提供することと認められる。
一方、発明の詳細な説明には、上記「1 取消理由1について」に示したとおり、段落0020以降に発明を実施するための形態が記載され、段落0036~0037には相間移動触媒に関する記載があるが、相間移動触媒としてハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを用いた実施例などの具体的な記載はない。
発明の詳細な説明における相間移動触媒を用いた方法についての具体的な記載は、上記「1 取消理由1について」に示したとおり、段落0063~0074に記載され、相間移動触媒をイソソルビドに対して1重量%又は0.1重量%で用いることにより、相間移動触媒を用いない場合に比べてエポキシ当量が低減されたという効果が奏されたことが示されているものの、その相間移動触媒として用いられた「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」、「ヨウ化トリエチルアンモニウム」はいずれも、ハロゲン化トリアルキルアンモニウムであって、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムではない。
また、本件特許発明1~6に係るビス-アンヒドロヘキシトールエーテル組成物を生成する化学反応において、「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」又は「ヨウ化トリエチルアンモニウム」の相間移動触媒作用と同等の相間移動触媒作用を、同量のハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが奏することは、発明の詳細な説明には記載されておらず、技術常識であるとも認められない。
また、「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」又は「ヨウ化トリエチルアンモニウム」を相間移動触媒として用いる化学反応において、それらの触媒に代えて同量のハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを相間移動触媒として用いた場合に、同等の反応条件下で同等の化学反応が進行することが技術常識であるとは認められない。
したがって、たとえ、発明の詳細な説明に、「臭化トリエチルアンモニウム」、「塩化トリエチルアンモニウム」又は「ヨウ化トリエチルアンモニウム」を相間移動触媒としてイソソルビドに対して1重量%又は0.1重量%で用いることにより、相間移動触媒を用いない場合に比べてエポキシ当量が低減されたという効果が奏されたことが示されていても、それらの相間移動触媒とは、相間触媒作用、適合反応条件及び化学反応が同等であるとは認められないハロゲン化テトラアルキルアンモニウムを相間移動触媒として用いる本件特許発明1~6は、発明の詳細な説明の記載により当業者がその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また当業者が技術常識に照らしその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
よって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許に係る請求項1~6は、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件請求項1~6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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