特許異議申立
2021-700543
光湿気硬化型樹脂組成物
- 審判番号
- 2021-700543
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-098751
- 登録番号
- 6797420
- 請求日
- 2021年06月02日
- 審決日
- 2023年11月09日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サンユレック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】高橋 和秀
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 近野 光知
- 審判官 瀧澤 佳世
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6797420号発明「光湿気硬化型樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6797420号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5-7〕、2、3、4及び〔8、9〕について訂正することを認める。
特許第6797420号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6797420号に係る出願(特願2018-98751号、以下「本願」ということがある。)は、平成30年5月23日に出願人サンユレック株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、令和2年11月20日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、令和2年12月9日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許につき、令和3年6月2日に特許異議申立人高橋和秀(以下「申立人」という。)により、「特許第6797420号の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」という。)
上記申立ての趣旨からみて、特許第6797420号の特許請求の範囲の請求項1~9に記載された発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、審理の対象外とすべきものはない。
申立て以降の手続は、次のとおりである。
令和3年10月11日付け取消理由通知
同年12月 8日 意見書・訂正請求
令和4年 2月21日付け通知(申立人宛)
同年 3月23日 意見書(申立人)
同年 6月30日付け取消理由通知(決定の予告)
同年 9月 5日 意見書・訂正請求
同年 9月21日付け通知(申立人宛)
同年10月18日 意見書(申立人)
令和5年 3月27日付け取消理由通知(決定の予告)
同年 5月30日 意見書・訂正請求
同年 6月 8日付け通知(申立人宛)
同年 7月 6日 意見書(申立人)
なお、令和3年12月8日の訂正請求、令和4年9月5日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否について
1 訂正請求の内容
令和5年5月30日付け訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次の訂正事項を含むものである。
特許権者は、本件訂正において、請求項2と、請求項3と、請求項4と、請求項8及び9とは、それらに係る訂正が認められる場合には、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める別の訂正単位とする求めを行っている。
(1) 訂正の内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、訂正前の
「(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1000~50000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が1~10%であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%である、
光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1000~50000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が1~10%であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%である、
光湿気硬化型樹脂組成物。」にする。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を、訂正前の
「前記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(A2)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体である、請求項1に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1500~30000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が2~8%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり、且つ前記イソシアヌレート変性体(A2)が1種の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体である、光湿気硬化型樹脂組成物。」にする。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を、訂正前の
「前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して10~40質量%である、請求項1又は2に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「(1)水酸基含単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が2000~20000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が3~7%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり、
前記イソシアヌレート変性体(A2)が1種の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して10~40質量%である、コーティング用光湿気硬化型樹脂組成物。」にする。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を、訂正前の
「前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して25~35質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が2000~20000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が3~7%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり、
前記イソシアヌレート変性体(A2)が1種のヘキサメチレンジイソシアネートがイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して25~35質量%である、コーティング用光湿気硬化型樹脂組成物。」にする。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を、訂正前の
「さらにポリイソシアネート(D)を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「さらにポリイソシアネート(D)を含有する、請求項1に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」にする。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を、訂正前の
「コーティング用である、請求項1~5のいずれかに記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「コーティング用である、請求項1又は5に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」にする。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を、訂正前の
「コーティング対象が電子基板である、請求項6に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。」から、訂正後の
「(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1000~50000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が1~10%であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%である、光湿気硬化型樹脂組成物の、硬化物。」にする。
訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9は、一群の請求項である。そして、本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。
そして、訂正後の請求項2、3、4、8及び9については、各項の訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることが求められている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(A2)」を、本件明細書に記載されたヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体を用いたウレタンアクリレートA及びウレタンアクリレートB(【0076】、【0077】)を基に、「1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。そして、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件を満たすものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項2に係る発明を、請求項1の記載を引用せずに独立形式で記載し、さらに本件明細書の【0076】及び【0077】、「ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量は…好ましくは1500~30000」(【0038】)、並びに「ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量は…好ましくは2~8%」(【0039】)との記載を基にウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量及びNCO含量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。そして、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1及び2を引用する請求項3に係る発明を、請求項1及び2の記載を引用せずに独立形式で記載し、さらに本件明細書の【0076】及び【0077】、「ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量は…より好ましくは2000~20000」(【0038】)、並びに「ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量は…より好ましくは3~7%」(【0039】)との記載を基にウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量及びNCO含量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。そして、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1及び2を引用する請求項4に係る発明を、請求項1及び2の記載を引用せずに独立形式で記載し、本件明細書の【0076】及び【0077】、【0038】及び【0039】の記載を基にウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量及びNCO含量を特定し、さらに、請求項6の「コーティング用」との記載を基に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。そして、訂正事項4は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6は、訂正前の請求項5又は6が引用する請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項1~7のいずれかに記載の請求項8に係る発明を、請求項1を引用する請求項8にし、これを請求項1の記載を引用せずに独立形式で記載した上で、本件明細書の【0076】及び【0077】を基に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 本件訂正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、各訂正事項に係る訂正が、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる目的要件を満たすものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件も満たすものであるから、本件訂正を認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~9に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1000~50000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が1~10%であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%である、
光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(1)水酸基有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1500~30000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が2~8%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり、且つ
前記イソシアヌレート変性体(A2)が1重の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体である、光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(Al)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が2000~20000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が3~7%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり、
前記イソシアヌレート変性体(A2)が1種の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して10~40質量%である、コーティング用光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(1)水包基含有単官能(メタ)アクリレート(Al)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子が2000~20000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が3~7%であり、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり、
前記イソシアヌレート変性体(A2)が1種のヘキサメチレンジイソシアネートがイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して25~35質量%である、コーティング用光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
さらにポリイソシアネート(D)を含有する、請求項1に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
コーティング用である、請求項1又は5に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
コーティング対象が電子基板である、請求項6に記載の光湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物であり、且つ重量平均分子量が1000~50000であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)のNCO含量が1~10%であり、且つ
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%である、光湿気硬化型樹脂組成物の、硬化物。
【請求項9】
電子基板、及び前記電子基板上に配置されてなる請求項8に記載の硬化物を含む、樹脂コーティング電子基板。」
第4 申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由
1 申立書に記載した申立ての理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の(4)の証拠方法を提示し、概略、以下の理由があると主張する。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6及び8に記載された発明は、いずれも、甲第1号証に記載の発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1~6及び8に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第1号証及び甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項6~9に記載された発明は、いずれも、甲第1号証に記載の発明に基づいて甲第2号証の記載事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項6ないし9に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載は、その記載が不備であり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1~9についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
その具体的理由は、概ね次のとおりである。
発明の詳細な説明には、「ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ウレタン(メタ)アクリレートの公知の製造方法に従って製造することができる。例えば、全ての成分を一度に反応させる方法や、一部の成分を先に反応させた後に他の成分を反応させる方法等が挙げられる。」(【0041】)と記載されているが、具体的な調製方法については記載されていないし、実施例におけるウレタンアクリレートA及びBのポリプロピレンオキシドの分子量や各成分の質量比等が不明であると、本件発明で特定されるNCO含量及び重量平均分子量を持つウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤等が必要になるので、当業者が本件発明を実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されているとはいえない。
(4)申立人が提出した証拠方法
ア 特許異議申立書に添付した甲号証
甲第1号証 特開2008-31246号公報
甲第2号証 特開平5-239342号公報
(以下、甲第1号証及び甲第2号証を、「甲1」等という。)
イ 令和4年10月18日提出の意見書に添付した甲号証
参考文献1 特開2015-199921号公報
参考文献2 特開2010-83961号公報
参考文献3 特開2017-48345号公報
参考文献4 特開平6-73313号公報
参考文献5 特開2011-153204号公報
参考文献6 特開2010-31240号公報
(以下、参考文献1~6を、順に「参考1」等という。)
2 当審が令和5年3月27日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由
取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、いずれも、甲1に記載された発明に基づいて、甲2に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1~9に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審の判断
1 取消理由1(進歩性)について
申立理由1(甲1に基づく新規性及び進歩性)及び申立理由2(甲1及び甲2に基づく進歩性)は、甲1を主引用文献とする理由であるから、取消理由1と併せて検討する。
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が1,000~7,000のジオール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)と水酸基含有(メタ)アクリレート化(a3)とを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、エチレン性不飽和2重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする接着剤用硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、イソシアネート基を該ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量を基準として、0.7~5.0重量%含有するウレタン(メタ)アクリレートである請求項1記載の接着剤用硬化型樹脂組成物。
・・(中略)・・
【請求項8】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有率が該ウレタン(メタ)アクリレート(A)、エチレン性不飽和2重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)の合計重量に対して10~80重量%である請求項1記載の接着剤用硬化型樹脂組成物。
・・(後略)」
(イ)「【0001】
本発明は、建装材料、包装材料、印刷材料、表示材料、電気電子部品材料、光学デバイス、ディスプレイなどの分野において有用な接着剤用硬化型樹脂組成物に関し、更に詳しくはプラスチック基材、特にアクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、トリアセチルセルロースなどの材質からなる板やフィルムに対し特に優れた接着性を有し、組成物中に有機溶剤をあえて混合させずとも良好な塗布面が得られ、更に、接着時には紫外線などの活性エネルギー線の照射により被着体に仮接着することができ、被着体同士の位置決め、剥離が可能で、その後、常温あるいは加熱することにより接着性を増し被着体と強固に接着する接着剤用硬化型樹脂組成物に関する。」
(ウ)「【0005】
ところで、接着剤の類似分野として塗料分野がある。この塗料分野において紫外線硬化性塗料組成物として、例えば、a)(メタ)アクリロイル基と遊離イソシアネート基を含むウレタン- (メタ)アクリレートと、b)場合によりa)以外のポリイソシアネートと、c)遊離基重合を開始する紫外線開始剤と、d)イソシアネート反応性基を含む化合物を含有する塗料組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、該塗料組成物は塗布した支持体を取扱可能なように迅速に紫外線硬化し、所期用途に応じて性質を調節できると共に非照射領域や照射不良領域にも十分な硬化を得ることを目的として開示されており、「接着性に優れ、被着体同士を仮接着する事ができ、必要に応じて剥離も可能」な接着剤としては用いることはできない。
・・(中略)・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、組成物中に有機溶剤を用いた粘度調製無しに良好な塗布面が得られ、更に、接着時には紫外線などの活性エネルギー線の照射により被着体に仮接着することができ、被着体同士の位置決め、剥離が可能で、その後、常温あるいは加熱することにより接着性を増し最終的には被着体同士と強固に接着する接着剤用硬化型樹脂組成物を提供することにある。」
(エ)「【発明の効果】
【0010】
本発明の接着剤用硬化型樹脂組成物は、有機溶剤を用いた粘度調製無しに被着体に良好に塗布することができる。また、被着体に塗布した後、活性エネルギー線を照射し硬化させることにより、ある程度の接着力を保持しつつ、必要時には被着体の剥離、位置の微調整が可能ないわゆる仮接着の状態となる。更に、組成物中のイソシアネート基と系中の水分とが反応することによる硬化が徐々に進行し、例えば室温で3 ~ 7 日保持することにより最終的に必要とされる強力な接着力が得られる。」
(オ)「【0020】
本発明で用いるポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3′-ジメチル-4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4′-ビフェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、環式脂肪族系ジイソシアネート化合物を挙げることができる。また、イソシアネート基を3個以上有する化合物や、上記した芳香族、脂肪族、環式脂肪族系ジイソシアネート
化合物を3量体化させた化合物なども挙げられる。ポリイソシアネート化合物(a2)は、単独でも2種以上を併用してもよい。」
(カ)「【0069】
本発明の接着剤用硬化型樹脂組成物を用いて被着体同士を接着させる際に活性エネルギー線を照射することにより仮接着状態となる。仮接着状態では被着体をはがすことも可能である。そして、このような仮接着状態で、例えば室温で放置すると徐々に架橋構造が形成される。この架橋構造としては、具体的には、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート(A)中のイソシアネート基と空気中の水分や基材に吸着する水分との反応で得られる尿素結合による架橋構造、前記尿素結合とイソシアネート基との反応で得られるビウレット結合による架橋構造、ウレタン(メタ)アクリレート(A)中のウレタン結合とイソシアネート基との反応で得られるアロファネート結合による架橋構造等があり、このような架橋構造が徐々に増加し、3~7日後には最終的に必要とされる接着力、いわゆる最終接着力に到達すると発明者は考えている。」
(キ)「【実施例】
【0071】
次に、実施例、比較例により、本発明をより具体的に説明する。例中の部及び%は、特に記載のない限り、すべて重量基準である。
【0072】
合成例1〔イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成〕
温度計、攪拌器、及びコンデンサ-を備えたフラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量=2000、水酸基価(OH価)=56.1KOH-mg/g)300gとジ酢酸ジブチル錫0.09gとを仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、その後、イソホロンジイソシアネート65.8gを発熱に注意しながら30分かけて添加した。添加後、反応を2時間行い、その後、ヒドロキシエチルアクリレート17.1gを添加し、更に5時間反応を行い、イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A-1)を得た。(A-1)の数平均分子量は2600、イソシアネート含有量は1.7%であった。
【0073】
合成例2(同上)
温度計、攪拌器、及びコンデンサ-を備えたフラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量=1200、水酸基価(OH価)=93.5KOH-mg/g)500gとジ酢酸ジブチル錫0.18gとを仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、その後、イソホロンジイソシアネート183.2gを発熱に注意しながら30分かけて添加した。添加後、反応を2時間行い、その後、ヒドロキシエチルアクリレート47.4gを添加し、更に5時間反応を行い、イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A-2)を得た。(A-2)の数平均分子量は1800、イソシアネート含有量は2.4%であった。
・・(中略)・・
【0075】
合成例4〔イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成〕
温度計、攪拌器、及びコンデンサ-を備えたフラスコに、ポリエステルジオールとしてポリカプロラクトンジオール(数平均分子量=2000、水酸基価(OH価)=55.9KOH-mg/g)300gとジ酢酸ジブチル錫0.09gとを仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、その後、イソホロンジイソシアネート51.6gを発熱に注意しながら30分かけて添加した。添加後、反応を2時間行い、その後、ヒドロキシエチルアクリレート17.1gを添加し、更に5時間反応を行い、イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A-4)を得た。(A-4)の数平均分子量は2600、イソシアネート含有量は1.6%であった。」
・・(中略)・・
【0082】
実施例1
第1表に示す配合により、接着剤用硬化型樹脂組成物1を調整した。この接着剤用硬化型樹脂組成物1の粘度と屈折率、360nm透過率及び接着力の評価を行った。測定方法を下記に示す。また、測定結果を第1表に示す。
・・(中略)・・
【0088】
実施例2~5及び比較例1~3
実施例1と同様にして第1表に示す配合により接着剤用硬化型樹脂組成物2~5及び比較対照用接着剤用硬化型樹脂組成物1~3を調製した。実施例1と同様にして接着剤用硬化型樹脂組成物の粘度、屈折率及び接着力の評価を行った。また、測定結果を第1表及び第2表に示す。」
(ク)「【0090】
【化3】
[図:0001406657000001.jpg]
・・(中略)・・
【0092】
<第1表の脚注>
(B-1):フェノキシエチルアクリレート
(B-2):イソボロニルアクリレート
(C-1):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
(C-2):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
(D-1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート」
イ 甲1に記載された発明
甲1には、実施例1、実施例2及び実施例5に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。
「(A-1)温度計、攪拌器、及びコンデンサ-を備えたフラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量=2000、水酸基価(OH価)=56.1KOH-mg/g)300gとジ酢酸ジブチル錫0.09gとを仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、その後、イソホロンジイソシアネート65.8gを発熱に注意しながら30分かけて添加した後、反応を2時間行い、その後、ヒドロキシエチルアクリレート17.1gを添加し、更に5時間反応を行って得られたイソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(数平均分子量は2600、イソシアネート含有量は1.7%) 50重量部
(B-1):フェノキシエチルアクリレート 15重量部
(B-2):イソボロニルアクリレート 35重量部
(C-1):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 3重量部
からなる接着剤用硬化型樹脂組成物。」(以下「甲1発明1-1」という。)
「(A-2)温度計、攪拌器、及びコンデンサ-を備えたフラスコに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルジオール(数平均分子量=2000、水酸基価(OH価)=93.5KOH-mg/g)500gとジ酢酸ジブチル錫0.18gとを仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、その後、イソホロンジイソシアネート183.2gを発熱に注意しながら30分かけて添加した後、反応を2時間行い、その後、ヒドロキシエチルアクリレート47.4gを添加し、更に5時間反応を行って得られたイソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(数平均分子量は1800、イソシアネート含有量は2.4%) 50重量部
(B-1):フェノキシエチルアクリレート 15重量部
(B-2):イソボロニルアクリレート 35重量部
(C-1):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 3重量部
からなる接着剤用硬化型樹脂組成物。」(以下「甲1発明1-2」という。)
「(A-4)温度計、攪拌器、及びコンデンサ-を備えたフラスコに、ポリエステルジオールとしてポリカプロラクトンジオール(数平均分子量=2000、水酸基価(OH価)=55.9KOH-mg/g)300gとジ酢酸ジブチル錫0.09gとを仕込み、攪拌しながら80℃に昇温し、その後、イソホロンジイソシアネート51.6gを発熱に注意しながら30分かけて添加した後、反応を2時間行い、その後、ヒドロキシエチルアクリレート17.1gを添加し、更に5時間反応を行い、イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(数平均分子量は2600、イソシアネート含有量は1.6%) 50重量部
(B-1):フェノキシエチルアクリレート 15重量部
(B-2):イソボロニルアクリレート 35重量部
(C-1):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 0.2重量部
(C-2):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド 0.3重量部
からなる接着剤用硬化型樹脂組成物。」(以下「甲1発明1-5」という。)
「甲1発明1-1、甲1発明1-2又は甲1発明1-5の接着剤用硬化型樹脂組成物を硬化してなる硬化物。」(以下「甲1発明3」という。)
(2)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 一成分二重硬化組成物において、基本的に
(a)(i)遊離のイソシアナート基及び(ii)遊離の光重合性エチレン性不飽和基を持つイソシアナート付加物;
(b)反応性(メタ)アクリレート希釈剤;及び
(c)任意に光開始剤を含み、(a)のエチレン性不飽和基が該付加物上の遊離の官能基の合計の10-70%を成すことを特徴とする組成物。
【請求項2】 請求項1に記載の組成物において、
(a)が脂肪族イソシアナート付加物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物であることを特徴とする組成物。
【請求項3】 請求項2に記載の組成物において、該脂肪族イソシアナート付加物がイソシアナート環を持つ脂肪族イソシアナート三量体であることを特徴とする組成物。
【請求項4】 請求項3に記載の組成物において、該付加物がヘキサメチレンジイソシアナートの三量化生成物であることを特徴とする組成物。
・・(中略)・・
【請求項6】 イソシアナート環を持つ脂肪族イソシアナート三量体を含む一成分二重硬化組成物。
【請求項7】 請求項6に記載の組成物において、該三量体がヘキサメチレンジイソシアナートの三量化生成物であることを特徴とする組成物。
【請求項8】 請求項6に記載の組成物において、さらに反応性(メタ)アクリレート希釈剤及び任意に光開始剤を含むことを特徴とする組成物。
【請求項9】 請求項1-8のいずれかひとつに記載の組成物を含む二重硬化相似被覆組成物。
【請求項10】 製品に相似被覆を施す方法において、
(a)請求項1-8のいずれかひとつに記載の組成物を含む皮膜を該製品に適用し;
(b)(a)における該皮膜を放射線に暴露し;
(c)大気湿度により(b)における該皮膜の硬化を完結させる段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】 請求項10に記載の方法において、該製品が回路板であることを特徴とする方法。」
イ 「【0002】
【発明の背景】二重硬化組成物の適用範囲には、相似被覆、注封化合物及び接着剤などとしての利用が含まれるが、特にエレクトロニクスの領域における二重硬化相似被覆が特に有用である。例えば印刷回路板及び電子部品を保護フィルムで被覆すると汚染による電気的性能の劣化を避ける又は最小にすることができることは、周知である。U.S.特許4,424,252を参照。しかし回路板上の表面の形のために、UV硬化などの典型的な方法で皮膜を完全に硬化させるのが難しいことも周知である。通常これらの形、例えば埋め込んだ部品などがUV暴露の時に皮膜に影を投じ、保護フィルムの硬化を妨げる。」
ウ 「【0014】より熱安定性の高い組成物を得るために、イソシアヌレート環を持つ脂肪族イソシアナート三量体を含む一成分二重硬化組成物を使用することができる。
【0015】本発明の組成物は、エレクトロニクス製品上の皮膜ばかりでなく、他の製品でも同様に使用することができる。特に上記の組成物は、製品上に適用し、その後放射線に暴露して一次硬化を与える。二次硬化は組成物の遊離のイソシアナート基と水の反応により得られる。
【0016】
【詳細な説明】上記の通り本発明の組成物は、一成分組成物である。この言葉は、直接の使用に適しており、例えば室温で少なくとも30日などの保存に比較的安定な、1種類の調製剤として組成物を使用者に与えることを意味する。結局一成分組成物は、基本的に(a)-(c)を含み、例えばヒドロキシル基などの遊離のイソシアナート反応性官能基を実質的に含まないものでなければならない。前に議論した通り二成分系は、使用前に量り込み及び混合段階の必要な2つの調製剤として使用者に与えられる。そのような組成物は一般に混合後の保存安定性が悪い。」
エ 「【0020】好ましい脂肪族ポリイソシアナートは、イソシアヌレート環を有する脂肪族イソシアナート三量体である。三量体は、下記の構造を有するヘキサメチレンジイソシアナートの三量化生成物であることが好ましい:
【0021】
【化1】
[図:0001406657000002.jpg]
【0022】上記のポリイソシアナートは、MobayからDESMODURRN-3300ポリイソシアナートとして商業的に入手できる。
【0023】他の適した脂肪族イソシアナート三量体には、イソホロンジイソシアナートとジシクロヘキシルメタンジイソシアナートから製造したものが含まれる。
【0024】脂肪族イソシアナート三量体は、それから製造した相似皮膜が、ビレット結合を含むポリイソシアナート、例えばヘキサメチレンジイソシアナートと水から製造した上記のポリイソシアナートより熱及び耐候安定性が優れているので、好ましい。Noomen等の’682特許を参照。実際にこのような三量体は、基本的に(a)-(c)を含む相似皮膜ばかりでなく、他の相似皮膜にも同様に有用である。」
オ 「【0030】組成物を皮膜又は接着剤として使用する場合、それに定着剤を挿入するのが有用であるが、必要ではない。」
カ 「【0038】他のイソシアナート含有二重硬化組成物の場合と同様に、本発明の組成物は、2つの機構により硬化する。一次硬化は、皮膜を放射線、好ましくはUVに暴露し、遊離のエチレン性不飽和基の架橋を起こすことにより得られる。その後水分、好ましくは大気水分に暴露することにより、組成物中の遊離のイソシアナート基の架橋及び連鎖延長を起こす。この方法で皮膜の露出部分は“指触乾燥状態”になり」」、それによって被覆製品を直接取り扱うことができ、他の場合にはたるみやクリープを起こす皮膜の形を保持することができる。二次硬化は、周囲温度及び湿度下で、暴露しなかった皮膜の領域の硬化を実質的に完結させる。
【0039】本発明の組成物を、種々の部品をつけた電気回路板上の相似皮膜として使用する場合、被覆直後に被覆板にさらに加工を行うことができるという点で、“指触乾燥状態”硬化は、重要である。二次硬化は、取り付けた部品により放射線から影で隠された皮膜の部分を硬化する機構となる。同様の影の問題を起こす表面の形を持つ製品にも利点を与えるであろう。
【0040】本発明の皮膜は、熱安定性、耐候性及び加水分解安定性などの非常に優れた物理的性質も示す。実施例6を参照。これらの特徴は前に記載した通り、絶えず溶剤、フラックスにさらされ、手で取り扱われる電気回路板相似被覆の場合に特に重要である。これらの特徴は又、注封化合物及び接着剤を含むがそれらに限られない本発明の他の用途にも適している。」
キ 「【0042】
【実施例】
実施例1
ポリイソシアナート付加物の合成
【0043】
【表1】
[図:0001406657000003.jpg]
脚注:
a- Mobayからのポリイソシアナート(CAS28182-81-20);滴定により5.2ミリ当量イソシアナート(NCO)/gに基づく(21.8%NCO)。
【0044】b- Rohm and HaasからのROCRYLR420ヒドロキシエチリアクリレート(HEA)(CAS818-6-1)。8.6ミリ当量ヒドロキシ(OH)/gに基づき、化学量論量の20%を使用。使用前に4Aモレキュラーシーブ上で乾燥。
【0045】625gのDESMODURR N-3300ポリイソシアナートを、ガラス及びテフロンパドル撹拌機、ステンレススチールクラッド熱電対、ベント式滴下ロート及び乾燥空気ブランケットを備えた、乾燥した1リットルの重合がまに装填した。ポリイソシアナートは、空気中の水分との接触を最少にするような方法で装填した。ポリイソシアナートを、200rpmで撹拌しながら45-50℃(113-122°F)に加熱し、その時点で3.5gのトリフェニルホスファイト及び0.4gのp-メトキシフェノールをかまに加えた。混合物を5分間撹拌し、かまの温度を55℃(131°F)に上げた。撹拌機を400rpmに速め、75.6gのHEAを滴下ロートを経て反応混合物に、15分かけて滴下した(平均添加速度5g/分)。HEA添加の間に反応混合物は発熱し、55℃(131°F)から65℃(149°F)になった。HEA添加の後、発熱及び追加の加熱により混合物の温度は、85-90℃(185-194°F)に上昇した。その後、従来の滴定法により測定してイソシアナート値が3.65-3.75ミリ当量に安定するまで、混合物を85-90℃(185-194°F)でさらに撹拌した。
【0046】得られた生成物は透明からほんのわずか曇った無色の、室温で幾分粘性の液体であった。25℃(77°F)にて14スピンドル及びSC4-6R試料室を用いた典型的ブルックフィールドRVT粘度は、11,500センチポアズ(cps)である。
【0047】実施例2
相似皮膜組成物
実施例1で製造したポリイソシアナート/HEA付加物に基づく2種類の皮膜組成物、A及びBを、(メタ)アクリレートモノマー、光開始剤及び安定剤のマスターバッチを用いて調製した。モノマーマスターバッチの材料及び量、ならびに形成した皮膜A及びBは、以下を含む:
【0048】
【表2】
[図:0001406657000004.jpg]
[図:0001406657000005.jpg]
【0049】 【表3】
[図:0001406657000006.jpg]
モノマー及びMEHQを琥珀ガラスびんに装填し、MEHQが溶解するまで共に振った。IRGACURER651光開始剤を加え、安定剤及び光開始剤が溶解するまで混合物をさらに5分間振った。その後それぞれ40gの4Aモレキュラーシーブ(8-12メッシュ)を装填することによりモノマーマスターバッチを乾燥し、密封びん中で約4-6時間放置した。
【0050】その後水分との接触を最少にするためにドライボックス中で(相対湿度<15%)2種類の皮膜を製した。空気との接触を最少に保った。実施例1に従って製造した付加物を乾燥琥珀ガラス又はプラスチックびん中に入れ、続いて補正した乾燥モノマーマスターバッチを入れた。混合物を室温で5分間振り、オリゴマーを溶解させた。
【0051】両皮膜(A及びB)は、透明で基本的に無色の液体であった。A及びBのブルックフィールド粘度は、それぞれ115cpsであった。密封容器中で7週間保存した後、粘度は約125-130cpsであり、組成物が保存安定性であることを示した。
【0052】実施例3
硬化皮膜
錫-鉛ではんだ付けした“ダミー”表面埋め込みデバイス(SMD)を持つ1個の28.4g銅及び1.6mm心線FR-4から作った印刷回路板(PCB)を、エレクトロニクスの技術で普通に用いられる方法で清浄化し。その後PCBを、25.4cm/分の一定の速度で被覆浴に浸し、約10cm/分で被覆部分を取り出すことにより、実施例2からの皮膜A及びBを浸漬被覆した。
【0053】UV照射に暴露することにより被覆部分を硬化し、皮膜を指触乾燥状態とした。暴露法は、Colight硬化装置(2x200ワット/Hgランプ、ベルト速度30フィート/分)を用いたそれぞれのPCBのUVへの暴露を含む。各側(上部及び底部)を合計3回通過させた。SMDの下の皮膜は液体のままであったが、暴露された領域は不粘着性であった。その後これらの被覆UV硬化部品を相対湿度が100%の室内に48時間置いてから、相対湿度が30%の解放室に13日間置き、その時点で“A”及び“B”被覆板に関してSMDのひとつを除去した。いずれの場合もSMD部品の下の皮膜は、不粘着性であった。
【0054】実施例4
アルミニウムの秤量皿に入れた実施例2からの各皮膜A及びBのそれぞれ約0.8gを、相対湿度50%及び10%に保った室内に置いた。相対湿度100%の室に72時間置いた後、両皮膜は不粘着性であった。相対湿度50%に144時間保った試料も不粘着性であった。
【0055】実施例5
加速水分硬化
イソデシルアクリレート中1%(重量)のジブチル錫ラウレートの溶液0.15を、15gの各皮膜A及びBに加えることにより、加速水分硬化を行った。これらの混合物の水分硬化を、実施例4と同様の方法で試験した。ジブチル錫ラウレートを含むこれらの混合物の両方共、相対湿度が50%及び100%にて24時間後、透明の固体であり、48-72時間以内に不粘着性となった。相対湿度が30%にて水分硬化を調べると、これらの混合物の両方共48時間後に不粘着性となったが、錫化合物を含まない皮膜は、液体のままであった。密封プラスチックびん中で30日保存した後、この組成物の粘度は、25℃で125cpsから140cpsとなった。
【0056】実施例6
硬化皮膜の性質
実施例2に従って調製し、MIL-I-46058-Cに従う方法を含む以外は実施例3に記載と類似の方法で硬化した硬化相似皮膜につき、以下の性質に関する試験を行った。特に皮膜試験片(クーポン)は、10cm/分の浸漬及び取り出し速度で浸漬被覆し、片側当たり4回の通過によりUVで硬化した。硬化後、片を湿潤室(相対湿度100%)に72時間置いた。その後それを取り出し、試験前に少なくとも24時間解放室に置いた。A及びBの両方共試験に合格した。
【0057】(1)耐薬品性:メチルエチルケトンを含浸した綿棒で被覆片を前後にこする(1往復摩擦)ことにより測定;フレオン及びイソプロピルアルコールの混合物中に浸した棒を用いて同様の試験を繰り返した;A及びBの両方共、それぞれの溶剤の場合に100往復摩擦に耐えた。
【0058】(2)熱衝撃:米軍規格MIL-I-46058Cにより実質的に測定;A及びBの両方共、-55℃及び125℃での17サイクルならびに-65℃及び125℃での33サイクルを含む-55℃及び125℃への交互暴露50サイクルに合格した。
【0059】(3)防湿性:米軍規格MIL-I-46058Cにより測定;25℃から65℃の温度で電気負荷下、及び高湿度下(相対湿度90-95%)における抵抗の試験を含む試験の前、その間及びその後、A及びBの両方共少なくとも1010オーム又はそれ以上の絶縁抵抗測定値を示した。
【0060】(4)耐電圧:米軍規格MIL-I-46058Cにより測定;A及びBの両方共、60ヘルツの交流1500ボルトの試験電圧下で破裂放電がなく、漏れ電流が10マイクロアンペア以下であり、この試験に合格した。
【0061】(5)絶縁抵抗:米軍規格MIL-I-46058Cにより測定し、上記(3)の防湿性試験の前の絶縁抵抗として使用;A及びBの両方共、絶縁抵抗が2.0×1014オームであり、合格した。」
(ク)甲2には、上記記載によれば、印刷回路板及び電子部品を保護フィルムで被覆すると汚染による電気的性能の劣化を避けることができるが、回路板上の表面をUV硬化で皮膜を完全に硬化させるのは難しく、埋め込んだ部品などがUV暴露の時に皮膜に影を投じて保護フィルムの硬化を妨げることが周知の課題であること、この課題は、(a)(i)遊離のイソシアナート基及び(ii)遊離の光重合性エチレン性不飽和基を持つイソシアナート付加物;(b)反応性(メタ)アクリレート希釈剤;及び(c)任意に光開始剤を含み、(a)のエチレン性不飽和基が該付加物上の遊離の官能基の合計の10-70%を成す一成分二重硬化組成物(【請求項1】)により解決され、上記組成物を製品上に適用し、その後放射線に暴露して一次硬化を与え、上記組成物の遊離のイソシアナート基と大気水分との反応により二次硬化すること(【0015】【0038】【0039】)、上記イソシアナート付加物(a)は脂肪族イソシアナート付加物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物であり(【請求項2】)、脂肪族イソシアナート付加物としてヘキサメチレンジイソシアナートの三量化生成物などの脂肪族イソシアナート三量体を使用すること(【請求項7】)、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体生成物は、「DESMODURRN-3300」を商業的に入手でき、これを用いることにより熱安定性及び耐候安定性に優れ、絶縁抵抗が2.0×1014オームである相似皮膜が得られること(【0020】~【0024】、【0061】)が記載されているといえる。
2 本件の各発明についての検討
本件の各発明につき、それぞれ以下検討する。
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、甲1発明1-1、甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを併せて対比する。
まず、本件発明1と甲1発明1-1とを対比する。
(ア)甲1発明1-1における「ヒドロキシエチルアクリレート」及び「ポリエステルジオール」は、それぞれ、本件発明1における「水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)」及び「ポリオール(A3)」に相当し、甲1発明1-1における「イソホロンジイソシアネート」は、ポリイソシアネート化合物である限りにおいて、本件発明1における「1種のポリイソシアネート化合物が変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」に相当する。
このことから、甲1発明1-1における「ポリエステルジオール」と「イソホロンジイソシアネート」と「ヒドロキシエチルアクリレート」を反応させて得られた「イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート」は、水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、ポリイソシアネート化合物、及びポリオール(A3)の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)である限りにおいて、本件発明1における「水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)、及びポリオール(A3)の反応物」である「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」に相当する。
そして、甲1発明1-1の「イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート」の「イソシアネート含有量」は、本件発明1の「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」の「NCO含量」に相当する。
(イ)甲1発明1-1における「フェノキシエチルアクリレート」及び「イソボロニルアクリレート」は、いずれも水酸基を有さないアクリレート化合物であるから、本件発明1における「水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)」に相当すると共に、甲1発明1-1における「光重合開始剤」は、本件発明1における「光重合開始剤(C)」に相当する。
(ウ)甲1発明1-1における「接着剤用硬化型樹脂組成物」は、紫外線などの活性エネルギー線照射により硬化・仮接着し、ウレタン(メタ)アクリレートが有するイソシアネート基と空気中の湿分(水分)などが反応して架橋硬化するものである(甲1の【0069】)から、本件発明1における「光湿気硬化型樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明1-1とは、
「(1)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)、ポリイソシアネート化合物、及びポリオール(A3)の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、
(2)水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)、並びに
(3)光重合開始剤(C)、
を含有する、
光湿気硬化型樹脂組成物。」で一致し、以下の点で相違する。
相違点1a:ウレタン(メタ)アクリレート(A)におけるポリイソシアネート化合物、分子量及びNCO含量が、本件発明1では、「1種のボリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」、「重量平均分子量が1000~50000」及び「NCO含量が1~10%」であるのに対して、甲1発明1-1では、「イソホロンジイソシアネート」、「数平均分子量は2600」及び「イソシアネート含有量は1.7%」である点
相違点2a:本件発明1では「ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%である」のに対して、甲1発明1-1では「イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)50重量部、(B)成分としてのフェノキシエチルアクリレート15重量部及びイソボロニルアクリレート35重量部」を含有する点
また、本件発明1と甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを対比した場合も、相違点1a及び2aと同内容の相違点がある。
イ 検討
(ア)相違点1aについて検討すると、これは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
(イ)甲1には、ポリイソシアネート化合物における複数個のイソシアネート基は反応性が異なるものであることが、最終的に未反応のポリイソシアネート化合物が残存しにくいので好ましいことも記載され(【0021】)、甲1発明1-1のイソホロンジイソシアネートは2個のイソシアネート基の反応性が異なるものであると解される。
また、甲1には、ポリイソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネートの他、脂肪族系等のジイソシアネート化合物を3量体化させた化合物を用いることも記載されているが(【0020】)、1種類の脂肪族系ジイソシアネート化合物を3量体化させた化合物は、本件発明1の「1種のポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」と同じく、複数個のイソシアネート基は反応性が同じであると解されるから、甲1発明1-1において、最終的に未反応のポリイソシアネート化合物が残存しにくいので好ましいとされるイソホロンジイソシアネートに代えて、上記脂肪族系等のジイソシアネート化合物を3量体化させた化合物を用いることが動機付けられるとはいえない。
(ウ)また、甲1には、甲1発明1-1の接着剤用硬化型樹脂組成物の適用分野として、建装材料、包装材料、印刷材料、表示材料、電気電子部品材料、光学デバイス、ディスプレイなどが記載されているが(【0001】)、それ以外に、上記樹脂組成物の硬化物は高い電気絶縁性、特に陰部の電気絶縁性が求められることは記載されていないし、ましてや、上記脂肪族系等のジイソシアネート化合物を3量体化させた化合物が高い電気絶縁性を有することは記載も示唆もされていない。このことから、上記1(2)クで述べたように、甲2に、ヘキサメチレンジイソシアネートのみが三量化してなるイソシアヌレート環を有する化合物を用いることにより、熱安定性及び耐候安定性に優れ、絶縁抵抗が2.0×1014オームの相似皮膜が得られることが記載されていても、甲1発明1-1において、甲2に記載された事項を結びつけることが動機付けられるとはいえない。
(エ)そうすると、甲1発明1-1において、イソホロンジイソシアネートに代えて、1種のポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
また、甲1発明1-2又は甲1発明1-5を引用発明とした場合も、甲1発明1-1について述べたのと同じ理由により、1種のポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
ウ 本件発明1の効果について
本件発明1は、「光硬化及び湿気硬化性の両方に優れ、低粘度であり、且つ硬化時の電気絶縁性(特に、光が当たり難い影部における電気絶縁性)に優れた光湿気硬化樹脂組成物を提供することができる」(本件明細書の【0018】)という効果を奏するものである。そして、本件発明1の具体例である実施例1~7(表1)、及び、ウレタン(メタ)アクリレート(A)が本件発明1の範囲外である比較例1~2(表2)における光硬化部の電気絶縁性はいずれも「20.0×1012↑」Ωであるが、陰部の電気絶縁性に関しては、実施例1~7は比較例1~2よりも優れることが示されている。
そして、上記イ(ウ)で述べたように、甲1には、接着剤用硬化型樹脂組成物の硬化物における電気絶縁性については記載されていないし、甲2に記載された絶縁抵抗が2.0×1014オームの相似皮膜は、UVで硬化後、湿潤室(相対湿度100%)に72時間置いて硬化させたものであり(甲2の【0056】)、本件明細書の実施例及び比較例のように、「紫外線を照射することなく、23℃湿度25%に3日間遮光した状態で放置して硬化物を得た」(本件明細書の【0086】)ものではない。
そうすると、本件発明1の効果は、甲1及び甲2の記載から予測し得るものであるとはいえない。
エ 令和5年7月6日提出の意見書における申立人の主張について
(ア)申立人は、甲1には、イソホロンジイソシアネートと、ジイソシアネート化合物を3量体化させた化合物が列挙され、イソホロンジイソシアネートが好ましいことが記載されているが、「未反応のポリイソシアネートが残存しにくい」(甲1の【0021】)ことは副次的な目的にすぎず、強力な接着力を得るとの甲1の課題を解決する上では、両者は同列に記載されている旨を主張する。
しかしながら、甲1に記載された接着剤用硬化型樹脂組成物において、ポリイソシアネート化合物の複数個のイソシアネート基の反応性が異なることにより、最終的に未反応のポリイソシアネートが残存しにくいと、上記樹脂組成物の硬化物は十分に硬化して強力な接着力が得られると解されるから(甲1の【0010】を参照)、これは副次的な目的であるとは解されない。
そうすると、申立人の上記主張を採用することはできない。
(イ)また、申立人は、本件発明1の(A)成分における(A1)~(A3)には様々な化合物が包含されるが、実施例で具体的に効果が示されているのは、それぞれ特定の化合物を用いたもののみであり、陰部の電気絶縁性を向上するための作用機序が本件明細書で明らかにされていない本件発明の全体において、実施例と同様の効果が奏されると推認することはできない旨を主張する。
しかしながら、本件明細書の比較例2から、(A2)を含まない場合に陰部の電気絶縁性に劣ることを具体的に確認できる。そして、申立人は、本件発明1の全体で本件発明の効果を奏しない可能性があることを指摘するのみであり、その根拠を具体的に示していない。
そうすると、申立人の上記主張を採用することはできない。
オ 小括
したがって、相違点1aの重量平均分子量及びNCO含量、並びに相違点2aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と、甲1発明1-1、甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを、上記(1)アを参照して対比すると、以下の点で相違する。
相違点1b:ウレタン(メタ)アクリレート(A)におけるポリイソシアネート化合物、分子量及びNCO含量が、本件発明2では、「1種の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」、「重量平均分子量が1500~30000」及び「NCO含量が2~8%」であるのに対して、甲1発明1-1では、「イソホロンジイソシアネート」、「数平均分子量は2600」及び「イソシアネート含有量は1.7%」である点
相違点2b:本件発明2では「ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であ」るのに対して、甲1発明1-1では「イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)50重量部、(B)成分としてのフェノキシエチルアクリレート15重量部及びイソボロニルアクリレート35重量部」を含有する点
また、本件発明2と甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを対比した場合も、相違点1b及び2bと同内容の相違点がある。
イ 検討
相違点1bは、上記(1)アの相違点1aと同内容であり、本件発明1について上記(1)イで述べたのと同じ理由により、実質的な相違点であるし、甲1発明1-1において、イソホロンジイソシアネートに代えて、1種の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
また、甲1発明1-2又は甲1発明1-5を引用発明とした場合も、甲1発明1-1について述べたのと同じ理由により、相違点1bは実質的な相違点であるし、1種のポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
したがって、相違点1bの重量平均分子量及びNCO含量、並びに相違点2bについて検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と、甲1発明1-1、甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを、上記(1)アを参照して対比すると、以下の点で相違する。
相違点1c:ウレタン(メタ)アクリレート(A)におけるポリイソシアネート化合物、分子量及びNCO含量が、本件発明3では、「1種のポリイソシアネート化合物が脂肪族イソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」、「重量平均分子量が2000~20000」及び「NCO含量が3~7%」であるのに対して、甲1発明1-1では、「イソホロンジイソシアネート」、「数平均分子量は2600」及び「イソシアネート含有量は1.7%」である点
相違点2c:本件発明3では「ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり」、更に「前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して10~40質量%である」のに対して、甲1発明1-1では「イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)50重量部、(B)成分としてのフェノキシエチルアクリレート15重量部及びイソボロニルアクリレート35重量部」を含有する点
相違点3c:本件発明3は「コーティング用光湿気硬化型樹脂組成物」であるのに対して、甲1発明1-1は「接着剤用硬化型樹脂組成物」である点
また、本件発明3と甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを対比した場合も、相違点1c、相違点2c及び相違点3cと同内容の相違点がある。
イ 検討
相違点1cは、上記(1)アの相違点1aと同内容であり、本件発明1について上記(1)イで述べたのと同じ理由により、実質的な相違点であるし、甲1発明1-1において、イソホロンジイソシアネートに代えて、1種の脂肪族ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
また、甲1発明1-2又は甲1発明1-5を引用発明とした場合も、甲1発明1-1について述べたのと同じ理由により、相違点1cは実質的な相違点であるし、1種のポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
したがって、相違点1cの重量平均分子量及びNCO含量、相違点2c及び相違点3cについて検討するまでもなく、本件発明3は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と、甲1発明1-1、甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを、上記(1)アを参照して対比すると、以下の点で相違する。
相違点1d:ウレタン(メタ)アクリレート(A)におけるポリイソシアネート化合物、分子量及びNCO含量が、本件発明4では、「1種のヘキサメチレンジイソシアネートがイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体(A2)」、「重量平均分子量が2000~20000」及び「NCO含量が3~7%」であるのに対して、甲1発明1-1では、「イソホロンジイソシアネート」、「数平均分子量は2600」及び「イソシアネート含有量は1.7%」である点
相違点2d:本件発明4では「ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して7~45質量%であり」、更に「前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)及び前記水酸基非含有(メタ)アクリレート(B)の合計100質量%に対して10~40質量%である」のに対して、甲1発明1-1では「イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)50重量部、(B)成分としてのフェノキシエチルアクリレート15重量部及びイソボロニルアクリレート35重量部」を含有する点
相違点3d:本件発明4は「コーティング用光湿気硬化型樹脂組成物」であるのに対して、甲1発明1-1は「接着剤用硬化型樹脂組成物」である点
また、本件発明4と甲1発明1-2及び甲1発明1-5とを対比した場合も、相違点1c、相違点2c及び相違点3と同内容の相違点がある。
イ 検討
相違点1dは、上記(1)アの相違点1aと同内容であり、本件発明1について上記(1)イで述べたのと同じ理由により、実質的な相違点であるし、甲1発明1-1において、イソホロンジイソシアネートに代えて、1種のヘキサメチレンジイソシアネートがイソシアヌレート変性してなるイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
また、甲1発明1-2又は甲1発明1-5を引用発明とした場合も、甲1発明1-1について述べたのと同じ理由により、相違点1dは実質的な相違点であるし、1種のポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を用いることが当業者にとって容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
したがって、相違点1dの重量平均分子量及びNCO含量、相違点2d及び相違点3dについて検討するまでもなく、本件発明4は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明5~7について
本件発明5~7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(1)で述べたのと同じ理由により、本件発明5~6は甲1に記載された発明でないし、本件発明5~7は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1に係る光湿気硬化型樹脂組成物の硬化物であるから、本件発明8と甲1発明3とを、上記(1)アを参照して対比すると、相違点1a及び2aと同内容の点で相違し、本件発明1について上記(1)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7)本件発明9について
本件発明9は、本件発明8を引用するものであり、本件発明8について上記(6)で述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明、並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(8)取消理由1、申立理由1及び2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~6及び8は、甲1に記載された発明でないし、本件発明1~9は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、取消理由1、申立理由1及び2によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
3 令和5年3月27日付け取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった申立理由3(実施可能要件)について
申立理由3は、本件明細書の発明の詳細な説明には、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の具体的な調製方法については記載されていないし、実施例におけるウレタンアクリレートA及びBのポリプロピレンオキシドの分子量や各成分の質量比等が不明であると、本件発明で特定されるNCO含量及び重量平均分子量を持つウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤等が必要になる、というものである(第4の(3)を参照)。
申立理由3について検討する。
本件発明における「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」のNCO含量は、NCO基を有する「イソシアヌレート変性体(A2)」に由来し、このA2成分の量を増やしたり、NCO基と反応してウレタン結合を形成する水酸基を含む「水酸基含有単官能(メタ)アクリレート(A1)」や「ポリオール(A3)」の量を減らすことにより、A成分のNCO含量が増えることは、当業者にとって自明である。
また、本件発明における「ウレタン(メタ)アクリレート(A)」の分子量は、A1~A3成分間の重合の度合や、上記成分自身の分子量によって決定されるから、上記成分を重合させる時間を調節すること等により、A成分の重量平均分子量を調節できることも、当業者にとって自明である。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明で特定されるNCO含量及び重量平均分子量を持つウレタン(メタ)アクリレート(A)を得るために、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤等が必要になるとは解されず、申立理由3によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、令和5年5月30日提出の訂正請求は適法であるから、これを認める。
また、当該訂正後の本件発明1~9に係る特許は、令和5年3月27日付け取消理由通知(決定の予告)の理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700543