特許異議申立
2021-700339
フルオロラクトン及びその製造方法
- 審判番号
- 2021-700339
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-022993
- 登録番号
- 6766907
- 請求日
- 2021年04月13日
- 審決日
- 2022年02月24日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】所 智恵子
- 審判長/審判官
- 審判長 村上 騎見高
- 審判官 大熊 幸治
- 審判官 吉岡 沙織
- 分類
- P1652.537-ZDA(C07D) / P1652.536-ZDA(C07D) / P1652.113-ZDA(C07D) / P1652.121-ZDA(C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6766907号発明「フルオロラクトン及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6766907号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項13について訂正することを認める。
特許第6766907号の請求項12に係る特許を取り消す。
同請求項1、13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許第6766907号は平成31年2月12日に出願されたものであって、令和2年9月23日に特許権の設定登録がなされ、同年10月14日にその特許公報が発行され、その後、請求項1、12、13に係る特許に対して、令和3年4月13日に特許異議申立人 所智恵子(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月22日付け:取消理由の通知
同年 8月24日 :意見書の提出(特許権者)
同年 9月17日付け:取消理由の通知<決定の予告>
同年11月26日 :意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年12月16日付け:訂正請求があった旨の通知
令和4年 1月21日 :意見書の提出(申立人)
第2 訂正の可否
1 訂正の内容
令和3年11月26日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
訂正事項:特許請求の範囲の請求項13の
「前記式(5)で表される化合物100質量部に対して、
前記式(9)で表される化合物の含有量が0.00001~0.5質量部であり、
前記式(10)で表される化合物の含有量が0.00001~0.5質量部である、請求項12に記載の組成物。」を、
「式(5):
【化16】
[図:0001395171000001.jpg]
[式中、R1はフッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物を含有する組成物であって、
さらに、式(5)で表される化合物100質量部に対して、
式(10):
【化17】
[図:0001395171000002.jpg]
[式中、2つのR1は前記と同意義である。]
で表される化合物を0.00001~0.5質量部
含有する組成物。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項は、訂正前の請求項13において、請求項12を引用するものであったところ、その請求項12にあった文言により独立形式に改め、また、式(5)で表される化合物と共に存在する化合物が「式(9)で表される化合物…及び/又は式(10)で表される化合物」であったものを「式(10)で表される化合物」のみとしたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の各規定に適合するので、本件訂正を認める。
第3 本件訂正後の請求項1、12、13に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1、12、13に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、12、13に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
式(1):
【化1】
[図:0001395171000003.jpg]
[式中、2つのR1は同一であり、フッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
[図:0001395171000004.jpg]
[式中、R1は前記と同意義である。]
で表される化合物と、
式(3-1):
【化3】
[図:0001395171000005.jpg]
[式中、
R31、R32、及びR33は、同一又は異なって、水素原子又はC1-10アルキル基であるか、或いは2つが互いに結合して、1個以上の置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。]
で表される化合物
及び
式(3-2):
【化4】
[図:0001395171000006.jpg]
[式中、R34、R35、R36、及びR37は、同一又は異なって、水素原子又はC1-10アルキル基であるか、或いは2つが互いに結合して、1個以上の置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。]
で表される化合物
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(3)とを、
式(4-1):
MHnFm (4-1)
[式中、Mは金属原子であり、nは0又は1であり、Mの原子価数とnの和はmである。]
で表される化合物、
式(4-2):
LR414F (4-2)
[式中、Lは窒素原子又はリン原子であり、R41は、同一又は異なって、C1-5アルキル基である。]
で表される化合物、及び
フッ酸又はその塩
からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化合物(4)
並びに
有機溶媒(当該有機溶媒からは、前記式(3-1)で表される化合物及び式(3-2)で表される化合物は除外される。)の存在下に反応させる工程A
を含む製造方法。
…
【請求項12】
式(5):
【化13】
[図:0001395171000007.jpg]
[式中、R1はフッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物を含有する組成物であって、
さらに、式(5)で表される化合物100質量部に対して、
式(9):
【化14】
[図:0001395171000008.jpg]
[式中、2つのR1は前記と同意義である。]
で表される化合物を0.00001~1質量部、及び/又は
式(10):
【化15】
[図:0001395171000009.jpg]
[式中、2つのR1は前記と同意義である。]
で表される化合物を0.00001~1質量部
含有する組成物。
【請求項13】
式(5):
【化16】
[図:0001395171000010.jpg]
[式中、R1はフッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物を含有する組成物であって、
さらに、式(5)で表される化合物100質量部に対して、
式(10):
【化17】
[図:0001395171000011.jpg]
[式中、2つのR1は前記と同意義である。]
で表される化合物を0.00001~0.5質量部
含有する組成物。」
第3 本件発明12及び13に係る特許に対する取消理由通知について
当審は、令和3年9月17日付け取消理由通知<決定の予告>において、概要以下のとおり通知した。
「1 取消理由通知の概要
当審は、令和3年6月22日付け取消理由通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。
「A (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
B (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
C (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
…
2 理由Cについて
…
エ よって、本件発明12及び13は、いずれも明確でない。
3 理由A、Bについて
…
(2)理由Aについての検討
…
したがって、本件発明の詳細な説明の記載からは、GC法の検出限界以下の含有量の本件発明12及び13の組成物における化合物9及び化合物10の各含有量を特定することができず、本件発明12及び13のいずれも実施することができない。
よって、本件発明の詳細な説明は、本件発明12及び13のいずれも実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
(3)理由Bについての検討
上記(2)の検討を踏まえると、本件発明12及び13はどのようにすれば実施しうるのか明らかではない。
よって、本件発明12及び13は、いずれも本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。」
2 理由Cについて
(1)令和3年8月24日付け意見書(以下、「意見書A」という。)における特許権者の主張を勘案しても、依然として、
「「検出限界以下」の物質をどのようにして存在することが確認できるのか、何らかの手段で確認できるとしても、「0.0000095%以上」、ましてや請求項12における式(9)や式(10)の化合物につき「0.00001~1質量部」、請求項13における式(9)や式(10)の化合物につき「0.00001~0.5質量部」存在することがどのようにして確認できるのか見当がつかず、また、本件発明の詳細な説明におけるいかなる記載を参酌しても理解できない」
といえ、本件発明12及び13は明確でない。
(2)特許権者は、意見書Aにおいて、以下のように主張する。
ア 「化合物9aが存在したことは、GCで化合物9aに相当するピークが見られたため、化合物9aが存在していたことは確認できていました。…
このGCでは、検出下限が「0.0000095%以上」であったため、本件【0172】においてそのように記載していました。」
「前記意見書における「化合物9aの「1.0GC%以下」は検出限界以下を意味します」との主張は正確ではなく、より正確にはこの「検出限界以下」を「定量限界以下」あるいは「定量下限以下」と主張すべきであったことに気付きました。そうしますと、化合物9a含有量が1.0%以下であると、GCで正確に定量できないことを意味しますが、化合物9aが非存在であることを直ちに意味しません。」
「以上のことから、…化合物9aの含有量が0.0000095%以上且つ1.0%以下の範囲内の量であることが明確に理解されます。そうしますと、実施例4では化合物5aが「95GC%」含有されていますので、実施例4では請求項12に規定された化合物5の100重量部に対し、化合物9が「0.00001~1質量部」含有される蓋然性が非常に高いことが理解されます。」
イ 「次に、式(9)や式(10)の化合物につき「0.00001~1質量部」、「0.00001~0.5質量部」存在することがどのようにして確認できるのか見当がつかない、との点について、本件出願当時に分析化学の分野で汎用される手法でそれを確認できるものであったこと説明いたします。
組成物に含まれる微量成分を定量する方法としては、…。本件出願当時、これらの手法はいずれも分析化学の分野において汎用される手法でした。要すれば、乙第1号証~乙第5号証を参照…。
よって本件発明12及び13は明確です。」
「また、前記意見書における「化合物9aの「1.0GC%以下」を「検出限界以下」とする主張を「定量限界以下」あるいは「定量下限以下」へ変更することが容認されない場合が仮にあったとしても、「0.00001~0.5質量部」であることを、前記のように、本件発明の詳細な説明及び出願時に汎用された分析技術に基づいて決定できますので、やはり本件発明12および13は明確です。」
(3)上記主張について検討する。
ア 特許権者は「化合物9aが存在したことは、GCで化合物9aに相当するピークが見られたため、化合物9aが存在していたことは確認できていました。」と主張するが、本件明細書及び特許権者が提出したいずれの意見書からも、実施例4において化合物9aが存在したことを具体的に確認することはできない。「検出限界以下」が「定量限界以下」あるいは「定量下限以下」と主張されていたとしても、本件発明12の化合物9に相当するものが「0.00001~1質量部」含有されていたと解することはできない。
イ そして、微量成分の定量方法が本件出願当時に分析化学の分野で汎用される手法であるとしても、そのことによって、本件明細書及び特許権者が提出したいずれの意見書からも、本件発明12における式(9)に相当するものが「0.00001~1質量部」含有されていたと解することはできない。
ウ 同様に、本件発明12における式(10)に相当するものが「0.00001~1質量部」、本件発明13における化合物(9)及び(10)に相当するものがそれぞれ「0.00001~0.5質量部」含有されていたと解することはできない。
(4)よって、本件発明12及び13は、いずれも明確でない。
3 理由A、Bについて
(1)意見書Aにおける特許権者の主張を勘案しても、依然として、
「本件発明の詳細な説明の記載からは、GC法の検出限界以下の含有量の本件発明12及び13の組成物における化合物9及び化合物10の各含有量を特定することができず、本件発明12及び13のいずれも実施することができない」、また、
「本件発明12及び13はどのようにすれば実施しうるのか明らかではない」
といえ、本件発明の詳細な説明は、本件発明12及び13のいずれも実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、また、本件発明12及び13は、いずれも本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
(2)特許権者は、意見書Aにおいて、以下のように主張する。
「実施例4の化合物9aの含有量は0.0000095以上且つ1.0%以下の範囲内の量であり、化合物10aの含有量は0.0000095%以上且つ0.2以下の範囲内の量であることが本件発明の詳細な説明では確認されていますし、また、出願時に汎用されていた分析技術を適宜利用することによって、組成物に含まれる微量成分を定量することができます。そうしますと、本件発明12及び13を実施することができます。よって、本件発明の詳細な説明は実施可能要件を充足し、本件発明12及び13はサポート要件を充足するものです。」
(3)上記主張につき、上記2(3)ア及びイで検討したとおり、本件明細書及び特許権者が提出したいずれの意見書からも、実施例4において化合物9aが存在したことを具体的に確認することはできず、本件発明12の化合物9に相当するものが「0.00001~1質量部」含有されていたと解することはできない。
そして、本件発明12における式(9)及び(10)に相当するものが「0.00001~1質量部」含有されていた、あるいは、本件発明13における化合物(9)及び(10)に相当するものがそれぞれ「0.00001~0.5質量部」含有されていたと解することはできない。
(4)したがって、本件発明の詳細な説明の記載からは、本件発明12及び13の組成物における化合物9及び化合物10の各含有量を特定することができず、本件発明12及び13のいずれも実施することができない。
よって、本件発明の詳細な説明は、本件発明12及び13のいずれも実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
そして、本件発明12及び13はどのようにすれば実施しうるのか明らかではない。
よって、本件発明12及び13は、いずれも本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
4 まとめ
以上のとおり、本件発明12及び13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号、同法同条同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。」
第4 上記取消理由に係る当審の判断
当審は、本件訂正発明12に係る特許に関し、依然として、特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号、同法同条同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものと判断する。
1 本件訂正発明12について
(1)理由Cについて
ア 下記ウで示す令和3年11月26日付け意見書(以下、「意見書B」という。)における特許権者の主張を勘案すると、
請求項12における式(9)の化合物につき「0.00001~1質量部」存在することがどのようにして確認できるのか見当がつかず、また、本件発明の詳細な説明におけるいかなる記載を参酌しても理解できない
といえ、本件訂正発明12は明確でない。
イ 特許権者は、意見書Bの6~12頁において、化合物9a及び10aが本件実施例4によって得られた組成物を生成して得られたことのデータを示す。このデータからみて、本件実施例4で、化合物9a及び10aは合成されると解することができる。
そうすると、下記ウで示した特許権者の主張にもある【0172】における「%以下」の定義からみて、本件実施例4において、化合物9a及び10aが、化合物5a100質量部に対して少なくとも「0.00001」質量部存在することを意味すると解することができる。
ウ そして、特許権者は、意見書Bにおいて、以下のように主張する。
「明細書の段落【0176】には、実施例4の組成物中の各構成成分のGC測定結果について次のように記載されています。
「【0176】
実施例4:工程E
実施例3で得られた6.7gの化合物8aを反応器に加え、200℃で4時間、300℃で1時間加熱した。生成物を-78℃でトラップに回収しNMR、GCで解析したところ化合物5aを収率60%、純度95%で得た。
化合物5a:95GC%、
ヘキサフルオロプロピレン:0.01GC%、
化合物9a:1.0GC%以下、
化合物11a(H):0.1GC%、
化合物11b(Me):0.1GC%、
化合物12a:0.1GC%、
CsF:0.1%以下、
KF:0.1%以下、
化合物13a:0.1GC%、
化合物10a:0.2GC%以下、
ジグライム:4.0GC%以下、
水:0.1%以下
CsF及びKFの含有量は、イオンクロマトグラフィー法で測定した。イオンクロマトグラフィー法では、前処理として、サンプルを同容量の超純水によって液液抽出して得られた液を測定に供した。
水の含有量はカールフィッシャー電量滴定法で測定した。
その他の成分の含有量はGC法で測定した。」
そして、段落【0172】には、「%以下」との記載に関し、次のような記載があります。
「なお、ここで「%以下」とは、各種成分の含有量が、0.0000095%以上、且つ具体的に記載された数値の%以下の範囲内であることを意味する。以下の例でも同様である。」
これらの記載を基に、実施例4の組成物の各成分の測定値と、測定値から理解される含有量は、下記表のとおりとなります。下記表には、さらに、請求項12及び請求項13に規定された含有量の表記方法と 同様に、化合物5aの100質量部に対する各成分の含有量を「質量部」で表した量も、「請求項12/13に規定された含有量へ換算」欄に記載しています。なお、表中、「合計値」欄における「0.59%」は、100%から合計値「99.41%」を控除した数値です。
[図:0001395171000012.jpg]
「合計値」における「0.59%」は、100%から合計値「99.41%」を控除した数値である。
この表を用いて、化合物9a含有量について説明いたします。化合物9aの測定値「1.0GC%以下」は、段落【0172】の記載に基づき「0.0000095~1.0%」の範囲内です(上記表中の「「%以下」を考慮した範囲内」欄)。
しかし、上記表中の化合物5a~ジグライム(これらはGC測定値が明確です。)までの各成分の合計値は99.41%であること(上記表中の「合計値」欄)に照らせば、明細書において「%以下」と表記された、上記表中の化合物9a~水までの各成分の合計含有量は0.59%を超えないことが理解されます。
そうしますと、化合物9aの含有量も0.59%を超えず、したがって「0.0000095~1.0%」ではなく、「0.0000095~0.59%」の範囲内であることが理解されます。
この含有量を請求項12に規定された含有量の表記方法に従って表すと、つまり、化合物5aの100質量部に対する量として表すために100/95倍しますと、「0.00001~0.621重量部」の範囲内となります…。
この「0.00001~0.621重量部」の範囲内の含有量は請求項12に規定の範囲内です。したがって、実施例4の組成物における化合物9aの含有量は、請求項12に記載の範囲内です。
次に、化合物10aの含有量について同様に検討すると、化合物10aの測定値「0.2GC%以下」は、「%以下」なる記載の定義から、「0.0000095~0.2%」の範囲内であり、上限値の「0.2%」は合計値の「0.59%」以下であり、「0.0000095~0.2%」を請求項12及び請求項13に規定の含有量の表記方法に従って表すために100/95倍すると「0.00001~0.211質量部」となり、この範囲内の含有量は請求項12及び請求項13に規定の範囲内です。したがって、実施例4の組成物における化合物10aの含有量は、請求項12及び請求項13に記載の範囲内です。
…本願明細書(特に、段落【0172】、段落【0176】)の記載に基づいて、実施例4の組成物における化合物9aの含有量が請求項12に規定の範囲内であり、10aの含有量が請求項12及び請求項13の範囲内であることが理解できます。」
エ しかし、上記主張(特に上記の表)において、「ジグライム」が「4%」と記載され、これを加味して「化合物5a~ジグライム…までの各成分の合計値は99.41%」としているが、【0176】の記載からも明らかなように、「ジグライム」の存在量は「4.0GC%以下」である。【0172】における「%以下」の定義に鑑みると、「ジグライム」の存在量を専ら「4%」と解することはできない。
そうすると、「化合物5a~ジグライム…までの各成分の合計値」は、99.41%「以下」、すなわち最大値が99.41%となる。そして、「化合物5a~ジグライム…までの各成分の合計値」の最小値は、「化合物9a~水までの各成分の合計含有量」の最大値は「1.5%」であるから、98.5%となる。
この「98.5%」を用いて、化合物9aの本件訂正発明12に規定された含有量へ換算すると、
化合物9aの最大値:1.0×(100/95)=1.053
となり、これは本件訂正発明12の範囲外である。
そうすると、本件訂正発明12における「式(5)で表される化合物100質量部に対して、式(9)…で表される化合物を0.00001~1質量部」含有する組成物とはどのような組成物であるのか理解できない。
したがって、本件訂正発明12については、依然として明確でない。
(2)理由A及びBについて
上記(1)エで検討したとおり、本件実施例4における化合物9aは、化合物5a100質量部に対して「0.00001~1質量部」の範囲外であり、本件訂正発明12に規定される「式(5)で表される化合物100質量部に対して、式(9)…で表される化合物を0.00001~1質量部」含有する組成物は、どのようにすれば得られるのか、本件発明の詳細な説明の記載をみても明らかでない。
したがって、本件発明の詳細な説明の記載からは、本件訂正発明12の組成物における化合物9の含有量を満たすように実施できることが明らかでない。
よって、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明12を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
そして、本件訂正発明12は本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
2 本件訂正発明13について
上記1(1)イで検討したとおり、化合物10aは、化合物5a100質量部に対して少なくとも「0.00001」質量部存在することを意味すると解することができる。
そして、上記1(1)エと同様に化合物10aについて検討すると、
化合物10aの最大値:0.2×(100/95)=0.211
となり、これは本件訂正発明13の範囲内である。
したがって、本件訂正発明13において、明瞭でない点はない。
また、本件発明の詳細な説明の記載から、本件訂正発明13の組成物における化合物10の含有量を満たすように実施できることが明らかである。
したがって、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明13を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものといえ、本件訂正発明13は本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。
以上のことから、本件訂正発明13に係る上記取消理由には、理由がない。
3 まとめ
以上のとおり、本件訂正発明12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号、同法同条同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
第5 異議申立ての理由についての検討
1 申立人の異議申立ての理由について
申立人の異議申立ての理由は、概要、以下のとおりである。
<証拠方法>
甲第1号証:F.Mikes et al., Macromolecules, 2005, 38, 4237-4245
甲第2号証:特開昭52-142078号公報
甲第3号証:H.Millauer et al., Angewandte Chemie International
Edition in English, 1985, 24, 161-179
甲第4号証:特開昭51-138617号公報
甲第5号証:特開昭51-136686号公報
(以下、申立人が提出した甲第1~5号証を「甲1」~「甲5」という。)
・申立ての理由1
上記第3で示した取消理由Cと同旨である。
・申立ての理由2
上記第3で示した取消理由A、Bと同旨である。
・申立ての理由3
本件発明12及び13は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができないものである。
または、本件発明12及び13は、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明12及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由4
本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立ての理由1及び2について
上記第4で検討したとおりであるから、本件訂正発明12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号、同法同条同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。また、本件訂正発明13に係る申立ての理由1及び2には、理由がない。
3 申立ての理由3について
(1)甲1に記載された発明
甲1の4238頁右欄からの「Monomer Preparation.」の項、特に4239頁の「Scheme 2」及び4240頁左欄12~29行から、甲1には以下の甲1a発明が記載されているものと認められる。
「純粋なPFMMD(注:下記構造式参照)。」
また、特に4239頁の「Scheme 2」及び4238頁右欄下から10~6行から、甲1には以下の甲1b発明が記載されているものと認められる。
「PFMMD、化合物4及び5(注:いずれも下記構造式参照)の混合物。」
(2)甲1a発明に対する検討
ア 対比
甲1a発明のPFMMDは本件訂正発明12の式(5)の規定を満たすものであるから、本件訂正発明12と甲1a発明とを対比すると、両者は
「式(5):
【化13】
(略)
[式中、R1はフッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点a
本件訂正発明12は、式(5)で表される化合物100重量部に対して「式(9)…で表される化合物を0.00001~1質量部、及び/又は式(10)…で表される化合物を0.00001~1質量部含有する組成物」であるのに対し、甲1a発明は、式(5)で表される化合物単独である点。
イ 判断
甲1には、純粋なPFMMDを式(9)や式(10)に相当する化合物を含有させた組成物とすることについて記載も示唆もされていない。
このため、本件訂正発明12は甲1a発明であるとはいえない。
また、甲1の記載からは、純粋なPFMMDである甲1a発明において、式(9)や式(10)に相当する化合物を含有させて組成物を構成することについて、当業者が容易に想到することができるとはいえない。
そして、本件訂正発明13は、「式(10)…で表される化合物」に関し、上記相違点aと同様の相違点を有するものであることに鑑みると、本件訂正発明13は甲1a発明であるとはいえず、甲1a発明から当業者が容易に想到することができるとはいえない。
(3)甲1b発明に対する検討
ア 対比
甲1b発明のPFMMDと化合物5は、それぞれ本件訂正発明12の式(5)及び式(10)の規定を満たすものであるから、本件訂正発明12と甲1a発明とを対比すると、両者は
「式(5):
【化13】
(略)
[式中、R1はフッ素原子又はフルオロアルキル基である。]
で表される化合物を含有する組成物であって、
さらに、式(5)で表される化合物100質量部に対して、
式(10):
(略)
[式中、2つのR1は前記と同意義である。]
で表される化合物を含有する組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点b
本件訂正発明12は、式(5)で表される化合物100重量部に対して「式(9)…で表される化合物を0.00001~1質量部、及び/又は式(10)…で表される化合物を0.00001~1質量部含有する組成物」であるのに対し、甲1b発明は、式(5)で表される化合物と式(10)で表される化合物を含有する組成物」ではあるが、その組成比が明らかでない点。
イ 判断
甲1には、PFMMDと化合物5がどの程度の組成比で存在するのか、記載も示唆もされていない。
このため、本件訂正発明12は甲1b発明であるとはいえない。
また、甲1の記載からは、甲1b発明において、化合物5のみならず式(10)の規定を満たす化合物あるいは式(9)に相当する化合物を含有させて、本件訂正発明12と同様の組成比で組成物を構成することについて、当業者が容易に想到することができるとはいえない。
そして、本件訂正発明13は、「式(10)…で表される化合物」に関し、上記相違点bと同様の相違点を有するものであることに鑑みると、本件訂正発明13は甲1b発明であるとはいえず、甲1b発明から当業者が容易に想到することができるとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明12及び13は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件訂正発明12及び13は、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立ての理由3には理由がない。
4 申立ての理由4について
(1)甲2に記載された発明
甲2の特許請求の範囲並びに2頁左上欄下から3行~左下欄2行、更には実施例(有機溶媒として、本件訂正発明1の式(3-1)及び(3-2)のいずれにも該当しない「ジエチレングリコールジメチルエーテル」が使用されている。)から、甲2には以下の甲2発明が記載されているものと認められる。
「N-ホルミル化第二アミン及びトリスジメチルアミノジフルオロホスホランを有機溶媒の存在下、-40~+5℃の温度でヘキサフルオロプロペンエポキシドと反応させることを特徴とする、パーフルオロ-2-オキソ-3,6-ジメチル-1,4-ジオキサンの製造方法。」
(2)甲2発明に対する検討
ア 対比
甲2発明の「N-ホルミル化第二アミン」、「ヘキサフルオロプロペンエポキシド」、「パーフルオロ-2-オキソ-3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン」は、それぞれ本件訂正発明1の式(3-1)、式(2)、式(1)の規定を満たすものであるから、本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、両者は
「【請求項1】
式(1):
(略)
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
(略)
で表される化合物と、
式(3-1):
(略)
で表される化合物とを、
フッ素化合物
並びに
有機溶媒(当該有機溶媒からは、前記式(3-1)で表される化合物及び式(3-2)で表される化合物は除外される。)の存在下に反応させる工程A
を含む製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点c
使用されるフッ素化合物が、本件訂正発明1は
「式(4-1):
MHnFm (4-1)
[式中、Mは金属原子であり、nは0又は1であり、Mの原子価数とnの和はmである。]
で表される化合物、
式(4-2):
LR414F (4-2)
[式中、Lは窒素原子又はリン原子であり、R41は、同一又は異なって、C1-5アルキル基である。]
で表される化合物、及び
フッ酸又はその塩
からなる群から選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲2発明は
「トリスジメチルアミノジフルオロホスホラン」である点。
イ 検討
甲3には、ヘキサフルオロプロペンオキシドとケトンとの反応に関し、表6には、フッ素化ケトンであるヘキサフルオロアセトンとヘキサフルオロプロペンオキシドとの反応による酸性フッ化物の生成反応において使用される触媒として、「(Me2N)3PF2」(トリスジメチルアミノジフルオロホスホラン)や、本件訂正発明1の式(4-1)の規定を満たす「CsF」並びに「KF」が記載されている。また、表1においても、ヘキサフルオロプロペンオキシドのオリゴマー化に使用される触媒として、「(Me2N)3PF2」(トリスジメチルアミノジフルオロホスホラン)や、「CsF」並びに「KF」が記載されている。
しかし、甲3には、甲3に記載された触媒が、ラクトンの合成に何らかの関連があることについて記載も示唆もされていない。また、(Me2N)3PF2の代わりにCsF並びにKF等のフッ素化合物を用いて、ラクトン合成において本件訂正発明1と同様の反応性が期待できることの根拠はない。
したがって、甲2発明および甲3に記載された技術的事項からは、本件訂正発明1を当業者が容易に想到することができるとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立ての理由4には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項12に係る発明についての特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
また、異議申立ての理由並びに当審からの取消理由によっては、請求項1及び13に係る発明についての特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700339