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特許異議申立

2020-700073

使い捨ておむつ

審判番号
2020-700073
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-090572外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年02月12日
審決日
2021年09月30日
公報発行日
2021年12月24日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(A61F) / P1651.536-YAA(A61F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6560015号発明「使い捨ておむつ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6560015号の明細書、特許請求の範囲を令和3年2月4日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第6560015号の請求項1~6、8、11及び12に係る特許を維持する。
特許第6560015号の請求項7、9及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 10項目
【理 由】

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第6560015号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成27年4月27日(優先権主張 平成26年5月30日)に出願したものであって、令和元年7月26日に特許権の設定登録がされ、令和元年8月14日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和2年2月12日:特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人A」という。)による特許異議の申立て
令和2年2月13日:特許異議申立人岡林茂(以下「申立人B」という。)による特許異議の申立て
令和2年3月31日付け:取消理由通知書
令和2年5月29日:特許権者による意見書の提出
令和2年6月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年9月4日:特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和2年10月14日:申立人Aによる意見書の提出
令和2年10月30日:申立人Bによる意見書の提出
令和2年12月4日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年2月4日:特許権者による訂正請求書及び意見書の提出

なお、令和2年9月4日提出の訂正請求書は、令和3年2月4日に訂正請求書が提出されたことによって、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

また、令和3年2月4日に提出された訂正請求書について、特許法第120条の5第5項の規定により、申立人A及び申立人Bに対して、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。

第2 訂正の請求についての判断

1 訂正の内容

令和3年2月4日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6560015号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は,訂正箇所に当審で付した。)。

(訂正事項1)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に

「表面シート、裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を備えた縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを具備する使い捨ておむつであって、
前記外装体は、前記使い捨ておむつの外面を形成する外層シートを有しており、該外層シートがスパンボンド不織布からなり、
前記スパンボンド不織布は、その坪量が19g/m2以下であり、その表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下、そのMDバルクソフトネスが5.0cN以下である使い捨ておむつ。」とあるのを、
「着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シート、裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を備えた縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを具備する使い捨ておむつであって、
前記外装体は、前記使い捨ておむつの外面を形成する外層シートを有しており、該外層シートがスパンボンド不織布からなり、
前記スパンボンド不織布は、その坪量が19g/m2以下であり、その表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下、そのMDバルクソフトネスが3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmであり、
前記外装体は、着用者の腹側に配される腹側外装体と、背側に配される背側外装体とを有し、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記外層シートと、該外層シートの内面側に配され、前記使い捨ておむつの内面を形成する内層シートと、それらシート間に配された複数の弾性部材とを含んで構成されており、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記縦方向に沿う両外側縁に、前記外層シートと前記内層シートとの間が接合された一対の外側固定領域を有し、
前記複数の弾性部材は、前記一対の外側固定領域それぞれにおいては、前記外層シートと前記内層シートとの間に固定され、該一対の外側固定領域間においては、該外層シート及び該内層シートの何れにも固定されていない使い捨ておむつ。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2~6、8、11、12についても同様に訂正する。)

(訂正事項2)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に

「前記スパンボンド不織布は、その一面の表面積に占める該スパンボンド不織布を構成する複数の熱融着部の合計面積の割合(エンボス率)が、15%以下である請求項1に記載の使い捨ておむつ。」とあるのを、

「前記スパンボンド不織布は、その一面の表面積に占める該スパンボンド不織布を構成する複数の熱融着部の合計面積の割合(エンボス率)が、15%以下であり、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記一対の外側固定領域間に、前記横方向に伸縮性を有する伸縮部を有し、
前記伸縮部は、その表面粗さの平均偏差SMD2が6.0μm以下、そのKES圧縮試験機による圧縮率が70%以上、そのKES圧縮試験機による圧縮回復率が40%以下である請求項1に記載の使い捨ておむつ。」に訂正する。(請求項2を引用する請求項3~6、8、11についても同様に訂正する。)

(訂正事項3)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(訂正事項4)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に

「前記スパンボンド不織布は、構成する繊維の配向方向に直交する方向の破断強度が7.0N/50mm以上である請求項1~7の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。」

とあるのを、

「前記スパンボンド不織布は、構成する繊維の配向方向に直交する方向の破断強度が7.0N/50mm以上であり、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記吸収性本体よりも外方において、前記外層シートと前記内層シートとが部分的に接合された部分接合領域を有し、
前記部分接合領域は、前記外層シートと前記内層シートとを、前記縦方向及び前記横方向にて、熱融着によって間欠的に接合した複数の外装体熱融着部により形成されており、
前記部分接合領域においては、前記複数の弾性部材が前記複数の外装体融着部を通らないように横方向に伸長状態で配され、かつ伸長状態で配された該弾性部材の両端部が前記外層シートと前記内層シートとの間に固定されており、該外層シート及び該内層シートのそれぞれが、該複数の弾性部材に亘って連続して延びる複数本の襞を形成している請求項1~6の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。」に訂正する。(請求項8を引用する請求項11、12についても同様に訂正

する。)

(訂正事項5)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(訂正事項6)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(訂正事項7)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11に

「請求項10に記載の使い捨ておむつ。」とあるのを、

「請求項8に記載の使い捨ておむつ。」に訂正する。(請求項11を引用する請求項12についても同様に訂正する。)

(訂正事項8)

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に

「前記スパンボンド不織布は、その表面粗さの平均偏差SMDが2.945以上である請求項1~11の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。」とあるのを、

「前記スパンボンド不織布は、その表面粗さの平均偏差SMDが2.945以上であり、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記一対の外側固定領域間に、前記横方向に伸縮性を有する伸縮部を有し、
前記伸縮部は、その表面粗さの平均偏差SMD2が6.0μm以下、そのKES圧縮試験機による圧縮率が70%以上、そのKES圧縮試験機による圧縮回復率が40%以下である請求項1、3~6、8及び11の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。」に訂正する。

(訂正事項9)

本件訂正前の明細書の【0091】に

「以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例によって何ら制限されるものではない。」とあるのを、

「以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例によって何ら制限されるものではない。尚、実施例3、4及び6は参考例である。」に訂正する。

ここで、訂正前の請求項1~12は、請求項2~12が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~12〕について請求されている。

また、訂正事項9は、実施例4と参考例とを整理するものであるから、一群の請求項1~12に関係する訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。

2 訂正の適否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の「使い捨ておむつ」について「着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有」するものに限定し、「外装体」について「前記外装体は、着用者の腹側に配される腹側外装体と、背側に配される背側外装体とを有し、前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記外層シートと、該外層シートの内面側に配され、前記使い捨ておむつの内面を形成する内層シートと、それらシート間に配された複数の弾性部材とを含んで構成されており、前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記縦方向に沿う両外側縁に、前記外層シートと前記内層シートとの間が接合された一対の外側固定領域を有し、前記複数の弾性部材は、前記一対の外側固定領域それぞれにおいては、前記外層シートと前記内層シートとの間に固定され、該一対の外側固定領域間においては、該外層シート及び該内層シートの何れにも固定されていない」ものに限定し、さらに「スパンボンド不織布」について、そのMDバルクソフトネスが「5.0cN以下」から「3.0~3.3cN」にその範囲を狭め、「その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mm」のものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0013】、【0014】、【0018】、【0054】、【0056】及び【0101】の【表1】の実施例1及び2に係る記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的

上記訂正事項2は、訂正前の請求項2の「使い捨ておむつ」について、「前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記一対の外側固定領域間に、前記横方向に伸縮性を有する伸縮部を有し、前記伸縮部は、その表面粗さの平均偏差SMD2が6.0μm以下、そのKES圧縮試験機による圧縮率が70%以上、そのKES圧縮試験機による圧縮回復率が40%以下である」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0056】、【0067】、【0068】、【0070】及び【0072】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的

上記訂正事項3は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項3は、上記アのとおりであるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的

上記訂正事項4は、訂正前の請求項8の「使い捨ておむつ」について、「前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記吸収性本体よりも外方において、前記外層シートと前記内層シートとが部分的に接合された部分接合領域を有し、前記部分接合領域は、前記外層シートと前記内層シートとを、前記縦方向及び前記横方向にて、熱融着によって間欠的に接合した複数の外装体熱融着部により形成されており、前記部分接合領域においては、前記複数の弾性部材が前記複数の外装体融着部を通らないように横方向に伸長状態で配され、かつ伸長状態で配された該弾性部材の両端部が前記外層シートと前記内層シートとの間に固定されており、該外層シート及び該内層シートのそれぞれが、該複数の弾性部材に亘って連続して延びる複数本の襞を形成している」ものに限定し、さらに、上記訂正事項3で請求項7が削除されたことにより、引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項4は、本件特許明細書の【0052】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的

上記訂正事項5は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(6)訂正事項6について

ア 訂正の目的

上記訂正事項6は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項6は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(7)訂正事項7について

ア 訂正の目的

上記訂正事項7は、訂正事項1及び4により、請求項8に請求項9及び10の発明特定事項が限定されたことに伴い、請求項11が引用する請求項を請求項10から請求項8に変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項7は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項7は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(8)訂正事項8について

ア 訂正の目的

上記訂正事項8は、訂正前の請求項12の「使い捨ておむつ」について、「前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記一対の外側固定領域間に、前記横方向に伸縮性を有する伸縮部を有し、前記伸縮部は、その表面粗さの平均偏差SMD2が6.0μm以下、そのKES圧縮試験機による圧縮率が70%以上、そのKES圧縮試験機による圧縮回復率が40%以下である」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項8は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項8は、本件特許明細書の【0056】、【0067】、【0068】、【0070】及び【0072】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(9)訂正事項9について

ア 訂正の目的

上記訂正事項9は、訂正事項1に係る訂正に伴い明細書中の実施例3、4及び6が請求項1に係る発明の実施例でなくなったことから、明細書の記載を整合させるものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと

上記訂正事項9は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

上記訂正事項9は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

(10)小括

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~6、8、11、12に係る発明(以下「本件発明1~6、8、11、12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8、11、12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シート、裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を備えた縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを具備する使い捨ておむつであって、
前記外装体は、前記使い捨ておむつの外面を形成する外層シートを有しており、該外層シートがスパンボンド不織布からなり、
前記スパンボンド不織布は、その坪量が19g/m2以下であり、その表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下、そのMDバルクソフトネスが3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmであり、
続きを表示(全32行)
前記外装体は、着用者の腹側に配される腹側外装体と、背側に配される背側外装体とを有し、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記外層シートと、該外層ートの内面側に配され、前記使い捨ておむつの内面を形成する内層シートと、それらシート間に配された複数の弾性部材とを含んで構成されており、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記縦方向に沿う両外側縁に、前記外層シートと前記内層シートとの間が接合された一対の外側固定領域を有し、
前記複数の弾性部材は、前記一対の外側固定領域それぞれにおいては、前記外層シートと前記内層シートとの間に固定され、該一対の外側固定領域間においては、該外層シート及び該内層シートの何れにも固定されていない使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記スパンボンド不織布は、その一面の表面積に占める該スパンボンド不織布を構成する複数の熱融着部の合計面積の割合(エンボス率)が、15%以下であり、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記一対の外側固定領域間に、前記横方向に伸縮性を有する伸縮部を有し、
前記伸縮部は、その表面粗さの平均偏差SMD2が6.0μm以下、そのKES圧縮試験機による圧縮率が70%以上、そのKES圧縮試験機による圧縮回復率が40%以下である請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記スパンボンド不織布を構成する複数の熱融着部は、個々の面積が0.3mm2以下である請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記スパンボンド不織布は、起毛処理が施されている請求項1~3の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記スパンボンド不織布は、軟化剤として、界面活性剤、パラフィンオイルの内の少なくとも1を含んでいる請求項1~4の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記スパンボンド不織布は、捲縮長繊維の含有率が30質量%以上100質量%以下である請求項1~5の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記スパンボンド不織布は、構成する繊維の配向方向に直交する方向の破断強度が7.0N/50mm以上であり、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記吸収性本体よりも外方において、前記外層シートと前記内層シートとが部分的に接合された部分接合領域を有し、
前記部分接合領域は、前記外層シートと前記内層シートとを、前記縦方向及び前記横方向にて、熱融着によって間欠的に接合した複数の外装体熱融着部により形成されており、
前記部分接合領域においては、前記複数の弾性部材が前記複数の外装体融着部を通らないように横方向に伸長状態で配され、かつ伸長状態で配された該弾性部材の両端部が前記外層シートと前記内層シートとの間に固定されており、該外層シート及び該内層シートのそれぞれが、該複数の弾性部材に亘って連続して延びる複数本の壁を形成している請求項1~6の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項11】
前記外層シート及び前記内層シートを構成する繊維の繊維配向方向が、前記使い捨ておむつの横方向と同じ方向であり、
前記外装体融着部は、前記繊維配向方向に直交する方向に長い矩形状である請求項8に記載の使い捨ておむつ。
【請求項12】
前記スパンボンド不織布は、その表面粗さの平均偏差SMDが2.945以上であり、
前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記一対の外側固定領域間に、前記横方向に伸縮性を有する伸縮部を有し、
前記伸縮部は、その表面粗さの平均偏差SMD2が6.0μm以下、そのKES圧縮試験機による圧縮率が70%以上、そのKES圧縮試験機による圧縮回復率が40%以下である請求項1、3~6、8及び11の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。」

第4 当審の判断

1 取消理由(決定の予告)の概要

本件訂正前の本件発明1~8、11、12に対して通知した、令和2年12月4日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(進歩性)本件発明1~8、11、12は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例8に記載された発明及び引用例1~11に記載の事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~8、11、12係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

<刊行物>

申立人Aによる特許異議申立書に添付された証拠

引用例1:特開2013-5879号公報(甲第1号証)
引用例2:特開2010-273972号公報(甲第2号証)
引用例3:特開2011-224386号公報(甲第3号証)
引用例4:特開2009-120975号公報(甲第4号証)
引用例5:特開2011-67602号公報(甲第5号証)
引用例6:特開2013-176708号公報(甲第6号証)
引用例7:特開2009-56142号公報(甲第7号証)

申立人Bによる特許異議申立書に添付された証拠

引用例8:特開2012-92475号公報(甲第1号証)
引用例9:松平光男、’紙おむつトップシートの基本風合い及び総合風合い客観評価法’、日本衣服学会誌、2010、Vol.54、No.1、p.1~10(甲第2号証)
引用例10:特開2011-224386号公報(甲第3号証)
引用例11:特開2006-233364号公報(甲第4号証)

また、申立人A、Bより、以下の証拠が提出されている。

申立人Aによる令和2年10月14日の意見書に添付された証拠

引用例12:特開2012-148069号公報(甲第8号証)
引用例13:特開2013-116196号公報(甲第9号証)
引用例14:特開2013-128516号公報(甲第10号証)

申立人Bによる令和2年10月30日の意見書に添付された証拠

引用例15:特開2013-202056号公報(公知資料1)

2 取消理由(決定の予告)についての当審の判断

(1)本件発明1について

ア 引用例8記載の事項

引用例8には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維からなる不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、使い捨ておむつ等の吸収性物品には、破断強度が高く加工適正に優れ、しかも経済的であるとの理由からスパンボンド不織布が多用されている。しかし、スパンボンド不織布は、その製造法上、全体にふっくら感等が足らず、肌触り(風合い)を向上させることが難しかった。」
(イ)「【0006】
したがって、本発明の課題は、破断強度が高いにも拘わらず、全体にふっくら感があり、肌触りの向上した不織布を提供することにある。また、本発明の課題は、ループ状の繊維が少なく、肌に引っかかり難く肌触りの向上した不織布を提供することにある。」
(ウ)「【0037】
起毛している繊維の高さ、及び起毛している繊維に加えて不織布1のバルクソフトネスが8.0cN以下であることが、柔軟なものが得られ肌触りに優れる点で好ましい。さらに0.5~3.0cNであることが、乳児や幼児のうぶ着のようなしなやかなものになる点で好ましい。バルクソフトネスは、以下の測定法により測定する。」
(エ)「【0053】
不織布1の利用範囲は、主として使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品における構成部材に好適に用いられる。構成部材としては、例えば、表面シート、裏面シート、外装体を構成するシート等が挙げられる。不織布1の利用範囲は、その他、清掃用シートにも好適に用いられる。以下、不織布1を利用した使い捨ておむつを例に挙げ、具体的に説明する。
【0054】
パンツ型使い捨ておむつ100は、図7に示すように、吸収体40を含む吸収性本体50と、吸収性本体50の非肌当接面側に位置して該吸収性本体50を固定している外包材60とを備えている。
続きを表示(全11行)
吸収性本体50は、図8に示すように、液透過性の表面シート70、液不透過性(撥水性も含む)の裏面シート80及び両シート70,80間に介在された液保持性の吸収体40を有しており、実質的に縦長である。
外包材60は、着用者の背側に配される背側部A、腹側に配される腹側部B、それらの間に位置し股間部に配される股下部Cを有しており、背側部Aと腹側部Bの両側縁部6a,6b同士が接合されて、一対のサイドシール部(図示せず)、一対のレッグ開口部(図示せず)及びウエスト開口部(図示せず)が形成される。また、外包材60は、おむつの外面を形成する外層シート62、その肌当接面側に位置して部分的に該外層シート62と接合された内層シート61を有しており、ウエスト開口部及びレッグ開口部を形成するウエスト部及びレッグ部6dにおける両シート61,62間に、ギャザー形成用のウエスト部弾性部材63及びレッグ部弾性部材64が配されている。
【0055】
吸収性本体50は、図7に示すように、外包材60の背側部Aから腹側部Bに跨って配設されており、吸収性本体50の長手方向の両端部は、外包材60の長手方向の両端部よりも長手方向の内方に後退した位置にある。吸収性本体50は、図8に示すように、吸収性本体50の裏面シート80の非肌当接面が、接着剤、ヒートシール、超音波シール等による接合法によって外包材60の内層シート61の肌当接面に接合されている。
吸収性本体50の長手方向の両側部には、図7に示すように、液不透過性又は撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス55,55が設けられている。各側方カフス55の自由端部近傍には、側方カフス形成用の弾性部材56が伸長状態で配設固定されている。側方カフス55は、おむつの装着時に自由端部側が起立し、吸収性本体50の幅方向への排泄物の流出を阻止することができる。側方カフス55形成用シートは、図8に示すように、吸収性本体50の幅方向外方の所定幅の部分55aが、吸収体40の非肌当接面側に巻き込まれて、吸収体40と裏面シート80との間に固定されている。尚、所定幅の部分55aが、裏面シート30と外包材60との間に固定されていてもよい。
【0056】
本発明に係る不織布は、外層シート62として好ましく用いられる。また、表面シート70、裏面シート80、側方カフス55形成用シート、内層シート61として、本発明に係る起毛不織布を用いることもできる。本発明に係る不織布を使用しない場合の各部の部材には、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート70としては、液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、裏面シート80としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。側方カフス55形成用シートとしては、伸縮性のフィルム、不織布、織物またはそれらの積層シート等を用いることができる。内層シート61及び外層シート62としては、撥水性の不織布等を用いることができる。」
(オ)「【0062】
〔実施例1〕
繊維径14.7μmのエチレンプロピレン共重合体樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量15g/m2の不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布、以下SMSともいう)を使用した(この状態の不織布を比較例5とする。)。次に、このSMS不織布を、図3に示すスチールマッチングエンボスローラー43に通し、図4に示す凸ロール51により表面加工し、二段階処理して不織布を得た。用いたスチールマッチングエンボスローラー43のロール41における各凸部410は、その高さが2.8mmであり、ロール41の各凸部410とロール42の各凹部420との噛み合いの深さは、2.7mmであった。また、回転軸方向に隣り合う凸部410同士の距離(ピッチ)は、7mmであり、周方向に隣り合う凸部410同士の距離(ピッチ)は、7mmであった。また、用いた凸ロール51の各凸部510の高さは、0.6mmであり、回転軸方向に隣り合う凸部510同士の距離(ピッチ)は、1.4mmであり、周方向に隣り合う凸部510同士の距離(ピッチ)は、2.1mmであった。不織布の搬送方向に対して、逆方向に4倍の速度で凸ロールを回転させた。抱き角は130度であった。それぞれの搬送速度は10m/分であった。
【0063】
続きを表示(全21行)
〔実施例2〕
繊維径17.7μmのプロピレン樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量15g/m2の不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布、以下SMSともいう)を使用した。次に、このSMS不織布を、実施例1と同様の条件で二段階処理して不織布を得た。
【0064】
〔実施例3〕
繊維径12.9μmのプロピレン樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量18g/m2の不織布(スパンボンド-スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布、以下SSMSともいう。このSSMS不織布の両面のスパンボンドの層には、柔軟剤を練りこんである。)を使用した。次に、このSSMS不織布を、実施例1と同様の条件で二段階処理して不織布を得た。
【0065】
〔実施例4〕
繊維径14.6μmのプロピレン樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量12g/m2(スパンボンド-メルトブローン-メルトブローン-スパンボンド積層不織布、以下SMMSともいう)の不織布を使用した。次に、このSMMS不織布を、実施例1と同様の条件で二段階処理して不織布を得た。
【0066】
〔実施例5〕
繊維径14.9μmのエチレンプロピレン共重合体樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量18g/m2(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布、以下SMSともいう)の不織布を使用した。また、このSMSの不織布の片面のスパンボンドの層には柔軟剤を練りこんである。次に、このSMS不織布の柔軟剤を練りこんだ層側を、実施例1と同様の条件で二段階処理して不織布を得た。
【0067】
〔実施例6〕
繊維径15.0μmのエチレンプロピレン共重合体樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量18g/m2(スパンボンド-スパンボンド-スパンボンド積層不織布、以下SSSともいう)の不織布を使用した。また、このSSSの不織布には柔軟剤を練りこんである。次に、このSSS不織布を、実施例1と同様の条件で二段階処理して不織布を得た。
【0068】
〔実施例7〕
繊維径14.9μmのプロピレン樹脂からなるスパンボンドの層を有する、坪量18g/m2(スパンボンド-スパンボンド-スパンボンド積層不織布、以下SSSともいう)の不織布を使用した。次に、このSSS不織布を、実施例1と同様の条件で二段階処理して不織布を得た。」

イ 引用例8記載の発明

引用例8の【0053】~【0056】には、表面シート70、裏面シート80及び両シート70、80間に介在された吸収体40を有する吸収性本体50と、おむつの外面を形成する外層シート62とその肌当接面側に位置する内層シート61を有する外包材60とを具備するパンツ型使い捨ておむつ100であって、外層シート62に実施例1~7の不織布を用いることが記載されているから、特に、実施例1、4、6の不織布を用いるものに着目すると、引用例8には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「表面シート70、裏面シート80及び両シート70、80間に介在された吸収体40を有する吸収性本体50と、おむつの外面を形成する外層シート62とその肌当接面側に位置する内層シート61を有する外包材60とを具備するパンツ型使い捨ておむつ100であって、
外層シート62に坪量15g/m2、18g/m2、又は12g/m2の不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布)を使用したパンツ型使い捨ておむつ100。」

ウ 対比

本件発明1と引用発明とを対比すると、

(ア)引用発明の「不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布)」は、その機能から、本件発明1の「スパンボンド不織布」に相当し、同様に「表面シート70」は「表面シート」に、「裏面シート80」は「裏面シート」に、「吸収体40」は「吸収体」に、「吸収性本体50」は「吸収性本体」に、「外包材60」は「外装体」に、「おむつの外面を形成する外層シート62」は「吸収性本体の非肌対向面側に配された外層シート」に、「パンツ型使い捨ておむつ100」は「使い捨ておむつ」にそれぞれ相当する。

また、引用発明の「パンツ型使い捨ておむつ100」は、着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有することは、明らかである。

(イ)引用発明の「おむつの外面を形成する外層シート62」に「不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布)を使用した」ことは、本件発明1の「前記外装体は、前記使い捨ておむつの外面を形成する外層シートを有しており、該外層シートがスパンボンド不織布からな」ることに相当する。

(ウ)引用発明の「外層シート62」の「不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布)」が「坪量15g/m2、18g/m2、又は12g/m2」であることは、本件発明1の「前記スパンボンド不織布は、その坪量が19g/m2以下であ」ることに相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>

「着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シート、裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を備えた縦長の吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを具備する使い捨ておむつであって、
前記外装体は、前記使い捨ておむつの外面を形成する外層シートを有しており、該外層シートがスパンボンド不織布からなり、
前記スパンボンド不織布は、その坪量が19g/m2以下である使い捨ておむつ。」

<相違点1>

外層シートのスパンボンド不織布について、本件発明1は、「その表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下、そのMDバルクソフトネスが3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmであ」るのに対して、引用発明は、不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布)の表面粗さの平均偏差SMD、摩擦係数の平均偏差MMD、MDバルクソフトネス、微少荷重時の圧縮特性値が不明である点。

<相違点2>

本件発明1は、「前記外装体は、着用者の腹側に配される腹側外装体と、背側に配される背側外装体とを有し、

前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記外層シートと、該外層シートの内面側に配され、前記使い捨ておむつの内面を形成する内層シートと、それらシート間に配された複数の弾性部材とを含んで構成されており、

前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記縦方向に沿う両外側縁に、前記外層シートと前記内層シートとの間が接合された一対の外側固定領域を有し、

前記複数の弾性部材は、前記一対の外側固定領域それぞれにおいては、前記外層シートと前記内層シートとの間に固定され、該一対の外側固定領域間においては、該外層シート及び該内層シートの何れにも固定されていない」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

エ 判断

以下、相違点について検討する。

<相違点1について>

引用例1~3、5、9~11には、以下の記載がある。

(ア)引用例1

「【0044】
起毛している繊維の高さ、及び起毛している繊維に加えて立体ギャザー形成用シート24のバルクソフトネスが8.0cN以下であることが、柔軟なものが得られ肌触りに優れる点で好ましい。さらに0.5~3.0cNであることが、乳児や幼児のうぶ着のようなしなやかなものになる点で好ましい。バルクソフトネスは、以下の測定法により測定する。」

(イ)引用例2

「【0140】
さらに、吸収材59の偏在の影響を軽減するために、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分において、平均表面摩擦係数MIUを0.2以下、特に0.05~0.15とし、表面摩擦係数の変動偏差MMDを0.01以下、特に0.003~0.008とし、また表面粗さSMDを10マイクロメートル以下、特に3~7マイクロメートルとするのが好ましい。」

(ウ)引用例3

「【0135】
さらに、吸収材59の偏在の影響を軽減するために、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分において、平均表面摩擦係数MIUを0.2以下、特に0.05~0.15とし、表面摩擦係数の変動偏差MMDを0.01以下、特に0.003~0.008とし、また表面粗さSMDを10マイクロメートル以下、特に3~7マイクロメートルとするのが好ましい。」

(エ)引用例5

「【0091】
また、表面特性において、各パラメータの数値が大きいほどに、摩擦特性が高く、表面がざらついていたり、表面上の凹凸形状が大きいことを意味するが、本実施例のおむつの積層シートは、比較例のそれよりも、平均摩擦係数MIU、摩擦係数の平均偏差MMD及び表面粗さの平均偏差SMDのいずれとも小さく、これらのおむつよりも内面(肌対向面)がなめらかであって、肌触りが良好であることを示している。」

(オ)引用例9

「”なめらかさ”については、表面粗さ;SMDや、表面摩擦係数の変動:MMDが小さい程なめらかであることを意味している。」(3頁右欄14~16行)

(カ)引用例10

「【請求項6】
前記第2シートにおける前記セル内面に露出する部分は、平均表面摩擦係数MIUが0.2以下、表面摩擦係数の変動偏差MMDが0.01以下、且つ表面粗さSMDが10マイクロメートル以下である、請求項5記載の吸収性物品。」
「【0135】
さらに、吸収材59の偏在の影響を軽減するために、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分において、平均表面摩擦係数MIUを0.2以下、特に0.05~0.15とし、表面摩擦係数の変動偏差MMDを0.01以下、特に0.003~0.008とし、また表面粗さSMDを10マイクロメートル以下、特に3~7マイクロメートルとするのが好ましい。なお、これらはいずれもセルの延在方向に関する数値とする。このように、第2シート58におけるセル56C内面に露出する部分と吸収材59との摩擦がある程度弱いと、吸収材59はセル56C内で偏在していても、吸収膨張の際、第2シート58に接触した後に第2シート58の内面に沿って移動し、吸収材59が広がり易くなり、偏在が低減されるようになる。」

(キ)引用例11

「【請求項1】
一方の表面を含む第1層と、他方の表面を含む第2層とを有し、第2層の密度が第1層の密度よりも低くなっている、エアスルー法によって製造された不織布であって、
少なくとも第1層に含まれる繊維はその横断面が扁平になっており、該繊維はその横断面の長軸方向が前記不織布の平面方向に概ね配向しており、
第1層側の表面は、その表面粗さの平均偏差SMDが2.5μm以下で且つ摩擦係数の平均偏差MMDが0.008未満であり、
前記不織布の圧縮特性の線形性LCが0.3以下で且つ曲げ剛性Bが0.03cN・cm2/cm以下である不織布。」
「【0018】
第1層が以上の構成を有することで、不織布における第1層側の表面は、その表面粗さの平均偏差(以下SMDという)が2.5μm以下、好ましくは2.3μm以下という極めて低い値となる。SMDの下限値に特に制限はなく0に近ければ近いほど好ましいが、下限値が1.0μm、特に0.5μm程度に低くなれば、不織布に十分ななめらかさが付与される。
【0019】
また不織布における第1層側の表面は、その摩擦係数の平均偏差(以下MMDという)が0.008未満、好ましくは0.006以下という極めて低い値となる。MMDの下限値に特に制限はなく0に近ければ近いほど好ましいが、下限値が0.004、特に0.003程度に低くなれば、不織布に十分ななめらかさが付与される。」

そうすると、以上の摘記事項から、不織布において、摩擦係数の平均偏差MMD及び表面粗さの平均偏差SMDのいずれもが小さいほど、肌触りが良好となることは技術常識であるといえ、さらに、摩擦係数の平均偏差MMDを0.0085以下、表面粗さの平均偏差SMDを3.20μm以下とすることは、通常採用される程度の範囲のものであるといえる。

しかし、引用例8には、「起毛している繊維の高さ、及び起毛している繊維に加えて不織布1のバルクソフトネスが8.0cN以下であることが、柔軟なものが得られ肌触りに優れる点で好ましい。さらに0.5~3.0cNであることが、乳児や幼児のうぶ着のようなしなやかなものになる点で好ましい。」(【0037】)と記載されており、引用例1の上記(ア)の記載を踏まえても、そのMDバルクソフトネスを3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmとすることを示唆する記載はない。

また、引用例2~7、9~11にも、 そのMDバルクソフトネスを3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmとすることを示唆する記載はない。

そうすると、本件発明1は、本件特許明細書の【0101】の【表1】の記載から、そのMDバルクソフトネスを3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmとすることで、MDバルクソフトネス及び微少荷重時の圧縮特性値が他の範囲のものより、「肌触りの評価結果」の高いものを得ることができたものであるところ、引用発明の不織布(スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド積層不織布)のMDバルクソフトネスを3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmとする理由はない。

したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本件発明1の事項とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

オ 小括

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び引用例1~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2~6、8、11、12について

本件発明2~6、8、11、12は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を加えるものであるから、本件発明2~6、8、11、12と引用発明とを対比すると、少なくとも上記<相違点1>及び<相違点2>で相違する。

そして、相違点1については、上記(1)エで検討したとおりであるから、本件発明2~6、8、11、12は、引用発明及び引用例1~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断

(1)引用例1を主引用発明とした進歩性について

ア 引用例1に記載された発明

引用例1の【請求項1】、【0020】、【0021】、【0026】、【0029】、【0030】、【0044】、【0046】及び【図1】の記載を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「表面シートと、裏面シートと、これらシート間に配された縦長の吸収体とを備え、縦方向に沿う両側部に、一対の立体ギャザーが、弾性部材を配することによって形成された吸収性物品であって、
一対の前記立体ギャザーそれぞれは、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布の少なくとも一部を起毛しているシートを用いて形成されており、
立体ギャザー形成用シートは、その坪量が、5~25g/m2であり、バルクソフトネスが0.5~3.0cNであり、
スパンボンド不織布の圧縮特性値は、15.0(gf/cm2)/mm以下であり、肌触りのよいエアスルー不織布に近い肌触りになる観点から、10.0(gf/cm2)/mm以下になることがさらに好ましく、下限が、1.00(gf/cm2)/mm程度である吸収性物品。」

イ 対比

本件発明1と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「表面シートと、裏面シートと、これらシート間に配された縦長の吸収体」は、図1を参照すると、本件発明1の「着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シート、裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を備えた縦長の吸収性本体」に相当する。

(イ)引用発明1の「吸収性物品」は、本件発明1の「使い捨ておむつ」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。

<一致点>

「着用者の前後方向に相当する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、表面シート、裏面シート、これら両シート間に配された吸収体を備えた縦長の吸収性本体を具備する使い捨ておむつ。」

<相違点3>

本件発明1は、「該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体」を具備し、「前記外装体は、前記使い捨ておむつの外面を形成する外層シートを有しており、該外層シートがスパンボンド不織布からなり、

前記スパンボンド不織布は、その坪量が19g/m2以下であり、その表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下、そのMDバルクソフトネスが3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmであり、

前記外装体は、着用者の腹側に配される腹側外装体と、背側に配される背側外装体とを有し、

前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記外層シートと、該外層シートの内面側に配され、前記使い捨ておむつの内面を形成する内層シートと、それらシート間に配された複数の弾性部材とを含んで構成されており、

前記腹側外装体及び前記背側外装体は、それぞれ、前記縦方向に沿う両外側縁に、前記外層シートと前記内層シートとの間が接合された一対の外側固定領域を有し、

前記複数の弾性部材は、前記一対の外側固定領域それぞれにおいては、前記外層シートと前記内層シートとの間に固定され、該一対の外側固定領域間においては、該外層シート及び該内層シートの何れにも固定されていない」のに対して、引用発明1は、そもそも外装体を有していない点。

ウ 判断

外装体に、MDバルクソフトネスが3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmのスパンボンド不織布を用いることは、引用例2~11に記載されていない。

したがって、外装体を有していない引用発明1において、MDバルクソフトネスが3.0~3.3cN、その微少荷重時の圧縮特性値が8.0~12.4(gf/cm2)/mmのスパンボンド不織布の外装体を用いる動機付けはない。

ゆえに、本件発明1は、引用発明1及び引用例2~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 小括

したがって、本件発明1は、引用発明1及び引用例2~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

また、本件発明2~6、8、11、12は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに限定を加えるものであるから、本件発明2~6、8、11、12と引用発明とを対比すると、少なくとも上記<相違点3>で相違する。

そして、相違点3については、上記ウで検討したとおりであるから、本件発明2~6、8、11、12は、引用発明1及び引用例2~11記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)実施可能要件違反について

申立人Aは、本件特許明細書には、いかにして、「その表面粗さの平均偏差SMDが3.20μm以下、その摩擦係数の平均偏差MMDが0.0085以下、」に調整するのかが開示も示唆もされていないから、本件特許明細書は、当業者が実施することができる程度に記載されていない旨主張する。

しかし、本件特許明細書には、実施例1及び2として、【0092】、【0093】に具体的な製造方法が記載されており、その結果、SMDとMMDが、それぞれ、2.945と0.0071、3.0325と0.0067となったことが記載されている。

そうすると、本件発明は、【0092】及び【0093】の製造方法により製造できると、当業者であれば、理解できるから、本件特許明細書は、当業者が実施することができる程度に記載されている。

第5 むすび

以上のとおり、本件発明1~6、8、11及び12は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人A及びBがした特許異議の申立理由によっては、本件発明1~6、8、11及び12に係る特許を取り消すことはできない。

また、請求項7、9及び10に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項7、9及び10に対して、申立人A及びBがした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700073

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