特許異議申立
2021-700644
吸収性物品
- 審判番号
- 2021-700644
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-053571
- 登録番号
- 6810765
- 請求日
- 2021年07月06日
- 審決日
- 2023年03月10日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユニ・チャーム株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人一色国際特許事務所
- 【異議申立人】真角 侑子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-YAA(A61F) / P1651.121-YAA(A61F) / P1651.536-YAA(A61F) / P1651.537-YAA(A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6810765号発明「吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6810765号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、7~15〕、6について訂正することを認める。
特許第6810765号の請求項1、3、5~15に係る特許を維持する。
特許第6810765号の請求項2、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6810765号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成31年3月20日の特許出願であって、令和2年12月15日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報令和3年1月6日発行)、その後、その請求項1~15に係る特許全てについて、令和3年7月6日に特許異議申立人真角侑子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年12月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和4年2月21日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和4年4月4日に申立人から意見書が提出され、令和4年9月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和4年11月14日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、この請求を「本件訂正請求」という。)がされ、令和5年1月11日に申立人から意見書が提出されたものである。
なお、令和4年2月21日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6810765号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されていることを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性コアと重複する領域に配置されていることを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、5、7、10~15も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の記載を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項1又は2に記載の吸収性物品であって、
前記複数の伸縮部材は、前記第1伸縮部材を複数有することを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記複数の伸縮部材は、前記第1伸縮部材を複数有することを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5、7、10~15も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4の記載を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1から4の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部と前記中央固定部の間において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有することを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1又は3に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部と前記中央固定部の間において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有することを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7、10~15も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1から5の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材が有する前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されていることを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて、独立請求項の記載形式に改め、
「展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、
前記少なくとも一方において、前記第1伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性本体と重複しない領域に配置されており、
前記少なくとも一方において、少なくとも1つの前記第2伸縮部材が有する前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されていることを特徴とする吸収性物品。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1から6の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第1伸縮部材が有する前記非固定部は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り配置されていること
を特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1、3又は5に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第1伸縮部材が有する前記非固定部は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り配置されていることを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項10~15も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項5に記載の吸収性物品であって、
前記複数の伸縮部材のうち、前記第1伸縮部材以外の伸縮部材は、前記第2伸縮部材であり、
全ての前記第1伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
全ての前記第2伸縮部材は、前記非固定部を有することを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項5を引用するものについて、独立請求項の記載形式に改め、
「展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部と前記中央固定部の間において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記複数の伸縮部材のうち、前記第1伸縮部材以外の伸縮部材は、前記第2伸縮部材であり、
全ての前記第1伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
全ての前記第2伸縮部材は、前記非固定部を有することを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9~15も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1から9の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記幅方向の一方側の前記端部固定部と他方側の前記端部固定部との間の領域の前記幅方向の長さは、前記吸収性本体の前記幅方向の長さよりも広いことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1、3、5、7、8又は9に記載の吸収性物品であって、
前記幅方向の一方側の前記端部固定部と他方側の前記端部固定部との間の領域の前記幅方向の長さは、前記吸収性本体の前記幅方向の長さよりも広いことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11~15も同様に訂正する。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1から10の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記一方の前記胴周り部は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において前記一対のシート同士が接合される第1シート接合部であって、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記伸縮部材を前記一対のシートに固定する部位と交差することなく配置される第1シート接合部を有さないことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1、3、5、7、8、9又は10に記載の吸収性物品であって、
前記一方の前記胴周り部は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において前記一対のシート同士が接合される第1シート接合部であって、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記伸縮部材を前記一対のシートに固定する部位と交差することなく配置される第1シート接合部を有さないことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12~15も同様に訂正する。)。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項1から10の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記一方の前記胴周り部は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシート同士が接合された第2シート接合部を有することを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1、3、5、7、8、9又は10に記載の吸収性物品であって、
前記一方の前記胴周り部は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシート同士が接合された第2シート接合部を有することを特徴とする吸収性物品。」(請求項12の記載を引用する請求項13~15も同様に訂正する。)。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項15に、
「請求項1から14の何れか1項に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のシートの少なくとも一方には、表裏に貫通する開孔が間隔を空けて複数設けられており、
前記胴周り部において、前記非固定部が設けられている領域と、前記開孔が設けられている領域と、が重複する部分を有することを特徴とするパンツ型吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項1、3、5、7、8、9、10、11、12、13又は14に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のシートの少なくとも一方には、表裏に貫通する開孔が間隔を空けて複数設けられており、
前記胴周り部において、前記非固定部が設けられている領域と、前記開孔が設けられている領域と、が重複する部分を有することを特徴とするパンツ型吸収性物品。」に訂正する。
(13)訂正事項13
明細書の段落【0006】に、
「上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されていることを特徴とする吸収性物品である。」と記載されているのを、
「上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性コアと重複する領域に配置されていることを特徴とする吸収性物品である。」に訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「第2伸縮部材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の特に図4等に示された態様から把握される事項といえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(2)訂正事項2、4について
訂正事項2、4は、特許請求の範囲の請求項2、4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2、4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(3)訂正事項6について
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項6の記載のうちの請求項1の記載を引用していたものについて独立請求項の記載形式とするものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項6のうち、「前記少なくとも一方において、前記第1伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性本体と重複しない領域に配置されており、前記少なくとも一方において、少なくとも1つの前記第2伸縮部材が有する前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されている」は、「第1伸縮部材」と「第2伸縮部材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6は、本件明細書等の特に図4等に示された態様から把握される事項といえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(6)訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項8の記載が請求項5の記載を引用し、さらに当該請求項5の記載が請求項1~4の何れか1項の記載を引用していたところ、間接的に引用していた請求項1の記載を引用していたものについて独立請求項の記載形式とするものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
訂正事項8は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(7)訂正事項3、5、7、9~12について
訂正事項3、5、7、9~12は、訂正事項2、4による請求項2、4の削除に伴い、請求項3、5、7、10~12、15が引用する請求項の記載の中から請求項2、4を除き、整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項7、9~12は、請求項7、10~12、15が引用する請求項の記載の中から請求項6を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
これらの訂正事項は、いずれも、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(8)訂正事項13について
訂正事項13は、明細書の記載を訂正事項1により訂正される特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項13は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
さらに、訂正事項13は、請求項1~15の全てに係る訂正である。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項2~15は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
特許権者は、令和4年11月14日の訂正請求書(「7(3)ウ」)において、「訂正後の請求項6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求め」ている。
(10)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げられた事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5、7~15〕、6について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められることから、本件特許の請求項1、3、5~15に係る発明(以下「本件発明1」等といい、それらを総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1、3、5~15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性コアと重複する領域に配置されていることを特徴とする吸収性物品。」
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記複数の伸縮部材は、前記第1伸縮部材を複数有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は3に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部と前記中央固定部の間において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有することを特徴とする吸収性物品。」
【請求項6】
展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、
前記少なくとも一方において、前記第1伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性本体と重複しない領域に配置されており、
前記少なくとも一方において、少なくとも1つの前記第2伸縮部材が有する前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されていることを特徴とする吸収性物品。」
【請求項7】
請求項1、3又は5に記載の吸収性物品であって、
少なくとも1つの前記第1伸縮部材が有する前記非固定部は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されており、
少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部と前記中央固定部の間において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記複数の伸縮部材のうち、前記第1伸縮部材以外の伸縮部材は、前記第2伸縮部材であり、
全ての前記第1伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
全ての前記第2伸縮部材は、前記非固定部を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8に記載の吸収性物品であって、
全ての前記第1伸縮部材、及び、全ての前記第2伸縮部材が、それぞれ有する前記中央固定部の前記幅方向の長さが等しいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項1、3、5、7、8又は9に記載の吸収性物品であって、
前記幅方向の一方側の前記端部固定部と他方側の前記端部固定部との間の領域の前記幅方向の長さは、前記吸収性本体の前記幅方向の長さよりも広いことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項1、3、5、7、8、9又は10に記載の吸収性物品であって、
前記一方の前記胴周り部は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において前記一対のシート同士が接合される第1シート接合部であって、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記伸縮部材を前記一対のシートに固定する部位と交差することなく配置される第1シート接合部を有さないことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1、3、5、7、8、9又は10に記載の吸収性物品であって、
前記一方の前記胴周り部は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシート同士が接合された第2シート接合部を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項12に記載の吸収性物品であって、
前記第2シート接合部は、前記長手方向よりも前記幅方向に長く延び、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において前記伸縮部材を前記一対のシートに固定する部位と、前記長手方向に間隔をあけて配置されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の吸収性物品であって、
前記第2シート接合部は、前記幅方向における前記吸収性コアの外側に配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項1、3、5、7、8、9、10、11、12、13又は14に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記一対のシートの少なくとも一方には、表裏に貫通する開孔が間隔を空けて複数設けられており、
前記胴周り部において、前記非固定部が設けられている領域と、前記開孔が設けられている領域と、が重複する部分を有することを特徴とするパンツ型吸収性物品。
第4 取消理由(決定の予告)について
1.取消理由(決定の予告)の概要
特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、3、5~7、10~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、3、5~7、10~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:国際公開第2016/203602号
甲第2号証:特許第6254625号公報
甲第3号証:国際公開第2018/235211号
以下、甲第1号証を「甲1」のようにいう。他も同様。
2.甲1の記載事項、甲1に記載された発明
(1)甲1の記載事項
ア 「請求の範囲
[請求項1] 縦方向と、前記縦方向と交差する横方向と、を有し、
二つのシートと、
前記二つのシートの間に挟まれ、かつ、前記横方向に沿った複数の弾性部材と、を備える使い捨て着用物品であって、
前記弾性部材として、
前記二つのシートのうちの少なくとも一方に前記シートの前記横方向における一端部から他端部に亘って接合された二つの接合弾性部材と、
前記縦方向において前記二つの接合弾性部材の間に設けられ、かつ、前記二つのシートのうちの少なくとも一方に前記一端部及び前記他端部において接合され、前記一端部と前記他端部との間に前記二つのシートのいずれにも接合しない非接合部を有する非接合弾性部材と、
を有することを特徴とする使い捨て着用物品。」
イ 「技術分野
[0001] 本発明は、使い捨て着用物品に関する。
背景技術
[0002]
従来、使い捨ておむつ等の使い捨て着用物品が広く用いられている。この使い捨て着用物品は、二つのシートと、当該二つのシートの間に挟まれ、かつ、横方向に沿った糸ゴム等の複数の弾性部材と、を備えている。」
ウ 「発明が解決しようとする課題
[0004] 使い捨て着用物品をユーザーが見た際に、使い捨て着用物品がずり落ちずしっかり身体にフィットするという印象をユーザーに持たせることが要請される。使い捨て着用物品がずり落ちる可能性があると思ったユーザーはこのことに対し不安な感情を抱くからである。
[0005] 一方で、使い捨て着用物品をユーザーが見た際に、当該使い捨て着用物品が柔らかいと言う印象をユーザーに持たせることも要請される。使い捨て着用物品は、身体に着用するものであるから、固い製品は敬遠されるからである。
[0006] 本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、しっかり身体にフィットし、かつ、柔らかいという印象をユーザーに与えることができる使い捨て着用物品を実現することにある。」
エ 「[0034]===本実施の形態に係る使い捨ておむつについて===
図1は、本実施の形態に係る使い捨て着用物品の一例としての使い捨ておむつ(以下、単に、おむつ1と呼ぶ)の斜視イメージ図である。図2は、展開状態のおむつ1の平面図である。図3は、おむつ1の断面図である。
本実施の形態に係るおむつ1は、所謂パンツ型おむつである。以下の説明では、おむつ1の縦方向、おむつ1の横方向のことを、それぞれ単に「縦方向」、「横方向」と言う。また、縦方向及び横方向と交差する方向を「厚み方向」とし、着用者の肌の側を「肌側」とし、その逆側を「非肌側」とする。また、図1において、縦方向における胴周り開口1a側を「上側」、その反対側を「下側」と呼ぶ。
・・・・
[0037] また、おむつ1は、吸収性本体10の一端側及び他端側に位置する胴回り部を有している。すなわち、おむつ1は、第2部品として、吸収性本体10の一端側に位置し、着用者の背側部を覆う背側胴回り部30を、第3部品として、吸収性本体10の他端側に位置し、着用者の腹側部を覆う腹側胴回り部40を有している。
[0038] 図2の展開状態では、背側胴回り部30と腹側胴回り部40とが互いに縦方向に間隔をあけて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体10が掛け渡されている。そして、吸収性本体10の一端部10aに背側胴回り部30が、他端部10bに腹側胴回り部40が、吸収性本体10の方が胴回り部よりも厚み方向において肌側に位置するように固定されており、その外観形状は平面視略H形状をなしている。換言すれば、吸収性本体10の一端側に背側胴回り部30が位置し、吸収性本体10の他端側に腹側胴回り部40が位置している。
・・・・
[0041] 吸収性本体10には、吸収体11が設けられている。この吸収体11は、液体吸収性素材を積層してなる部材(吸収性コア)であり、尿等の排泄物を吸収することができる。吸収体11は、パルプ(パルプ繊維)と吸収性ポリマー(SAP)とを有している。」
オ 「[0044] 腹側胴回り部40は、着用者の腹部に対応するシート状部材である。この腹側胴回り部40は、平面視長方形状を有しており、長手方向(長辺方向)が横方向に沿うように設けられている。この腹側胴回り部40は、図3に示すように、不織布製の二つのシート(便宜上、胴回り部シート28とする。肌側のシートはサイドトップ28a、非肌側のシートはアウターバック28bと呼ばれている)により形成されている。
・・・・
[0047] また、腹側胴回り部40には、横方向に沿った弾性部材(具体的には、糸ゴム。便宜上、腹側糸ゴム70と呼ぶ)が、縦方向に複数(15本)並ぶように配置されている。そして、このことにより、腹側胴回り部40には、横方向の伸縮性が付与され、おむつ1の胴周り開口1aに伸縮性を与えている。腹側糸ゴム70は、二つの胴回り部シート28の間に挟まれている。つまり、厚み方向においてサイドトップ28aとアウターバック28bの間に位置している。以下、15本の腹側糸ゴム70の各々について説明する。なお、以下では、15本の腹側糸ゴム70を、縦方向における上側から順に、第一腹側糸ゴム71乃至第十五腹側糸ゴム85と呼ぶ。
[0048] 図2に示すように、腹側糸ゴム70は、どの糸ゴムも、腹側胴回り部40(胴回り部シート28)の横方向における一端部(具体的には、前述した腹側両縁部40aよりもさらに外側の位置)から他端部(同様に、腹側両縁部40aよりもさらに外側の位置)に亘って設けられている。本実施の形態においては、腹側糸ゴム70が、腹側両縁部40aを超えて、腹側胴回り部40の最も外側の端まで至っている。
[0049] そして、第一腹側糸ゴム71乃至第五腹側糸ゴム75については、糸ゴムが前記一端部から前記他端部に亘って連続的に設けられている。
・・・・
[0053] また、腹側糸ゴム70は、二つの胴回り部シート28のうちの少なくとも一方(本実施の形態においては、双方)に接着剤により接合されている。
[0054] ここで、図4に着目する。図4は、図2に対応した図であり、糸ゴムの接合部分を表した平面図である。図4においては、糸ゴムが胴回り部シート28に接合されている部分(接合部)を実線で示し、接合されていない部分(非接合部)を白線(つまり、線が存在しない)で示している。図4から明らかなように、本実施の形態においては、二つの胴回り部シート28のうちの少なくとも一方(本実施の形態においては、双方)に胴回り部シート28の横方向における一端部から他端部に亘って接合された糸ゴム(接合糸ゴムと呼ぶ)と、二つの胴回り部シート28のうちの少なくとも一方(本実施の形態においては、双方)に前記一端部及び前記他端部において接合され、一端部と他端部との間に二つの胴回り部シート28のいずれにも接合しない非接合部(図4の白線部)を有する糸ゴム(このような非接合部を有する糸ゴムを非接合糸ゴムと呼ぶ)と、が設けられている。
[0055] 第一腹側糸ゴム71と第二腹側糸ゴム72は、腹側胴回り部40の縦方向における上側の端部(以下、上端部とする)に設けられた接合糸ゴムである。第十二腹側糸ゴム82、第十三腹側糸ゴム83、第十四腹側糸ゴム84、第十五腹側糸ゴム85は、腹側胴回り部40の縦方向における下側の端部(以下、下端部とする)に設けられた接合糸ゴムである。また、第六腹側糸ゴム76、第八腹側糸ゴム78、第十腹側糸ゴム80は、腹側胴回り部40の縦方向における中央部に設けられた接合糸ゴムである。
[0056] これらの糸ゴムは、腹側胴回り部40(胴回り部シート28)の横方向における一端部から他端部に亘って胴回り部シート28に接合されている。本実施の形態においては、これらの糸ゴムの全体が、胴回り部シート28に接合されている。
[0057] 一方で、残りの糸ゴム、すなわち、第三腹側糸ゴム73、第四腹側糸ゴム74、第五腹側糸ゴム75、第七腹側糸ゴム77、第九腹側糸ゴム79、第十一腹側糸ゴム81は、非接合糸ゴムである。
[0058] 図4から明らかなように、第三腹側糸ゴム73、第五腹側糸ゴム75、第七腹側糸ゴム77、第九腹側糸ゴム79、第十一腹側糸ゴム81の非接合部の位置(換言すれば、接合部の位置)は共通している。つまり、これらの糸ゴムは、腹側胴回り部40(胴回り部シート28)の横方向における一端部(図4に示すように、最外端から内側へ30mmまでの部分)と他端部(図4に示すように、最外端から内側へ30mmまでの部分)で胴回り部シート28に接合され、さらに、腹側胴回り部40(胴回り部シート28)の横方向における中央部(図4に示すように、腹側胴回り部40の真ん中から横方向へ左右65mmまでの部分。合計で130mm分)で胴回り部シート28に接合されている。そして、残りの部分、つまり、前記一端部と前記中央部の間と前記他端部と前記中央部との間に非接合部が位置している。本実施の形態においては、腹側胴回り部40の横方向における長さが340mmなので、当該非接合部の長さは、それぞれ75mm(=(340-130-30×2)/2)となっている。
[0059] 一方で、第四腹側糸ゴム74は、腹側胴回り部40(胴回り部シート28)の横方向における中央部(図4に示すように、腹側胴回り部40の真ん中から横方向へ左右50mmまでの部分。合計で100mm分)のみが非接合部となっており、他の部分(非接合部の横方向における両側)が接合されている。接合部の長さは、それぞれ120mmとなっている。」
カ 「[0060] 背側胴回り部30は、着用者の背部に対応するシート状部材である。この背側胴回り部30は、平面視長方形状を有しており、長手方向(長辺方向)が横方向に沿うように設けられている。この背側胴回り部30は、腹側胴回り部40と同様、図3に示すように、不織布製の二つの胴回り部シート28(サイドトップ28aとアウターバック28b)により形成されている。
・・・・
[0063] また、背側胴回り部30には、横方向に沿った弾性部材(具体的には、糸ゴム。便宜上、背側糸ゴム50と呼ぶ)が、縦方向に複数(15本)並ぶように配置されている。そして、このことにより、背側胴回り部30には、横方向の伸縮性が付与され、おむつ1の胴周り開口1aに伸縮性を与えている。背側糸ゴム50は、二つの胴回り部シート28の間に挟まれている。つまり、厚み方向においてサイドトップ28aとアウターバック28bの間に位置している。以下、15本の背側糸ゴム50の各々について説明する。なお、以下では、15本の背側糸ゴム50を、縦方向における上側から順に、第一背側糸ゴム51乃至第十五背側糸ゴム65と呼ぶ。
[0064] 図2に示すように、背側糸ゴム50は、腹側糸ゴム70と同様、どの糸ゴムも、背側胴回り部30(胴回り部シート28)の横方向における一端部(具体的には、前述した背側両縁部30aよりもさらに外側の位置)から他端部(同様に、背側両縁部30aよりもさらに外側の位置)に亘って設けられている。本実施の形態においては、背側糸ゴム50が、背側両縁部30aを超えて、背側胴回り部30の最も外側の端まで至っている。
[0065] そして、第一背側糸ゴム51乃至第九背側糸ゴム59については、糸ゴムが前記一端部から前記他端部に亘って連続的に設けられている。
[0066] 一方、第十背側糸ゴム60乃至第十五背側糸ゴム65については、糸ゴムが、横方向における背側胴回り部30の中央部に不連続部分(図2において、点線で示した部分)を備えている。つまり、この不連続部分においては、糸ゴムが細かく切断されており、その伸縮性が弱められている(弱伸縮域となっている)。
・・・・
[0069] また、背側糸ゴム50は、二つの胴回り部シート28のうちの少なくとも一方(本実施の形態においては、双方)に接着剤により接合されているが、本実施の形態においては、腹側糸ゴム70と同様、背側糸ゴム50として前記接合糸ゴム及び前記非接合糸ゴムが設けられている。
[0070] 第一背側糸ゴム51と第二背側糸ゴム52は、背側胴回り部30の縦方向における上端部に設けられた接合糸ゴムである。第十二背側糸ゴム62、第十三背側糸ゴム63、第十四背側糸ゴム64、第十五背側糸ゴム65は、背側胴回り部30の縦方向における下端部に設けられた接合糸ゴムである。また、第十背側糸ゴム60は、背側胴回り部30の縦方向における中央部に設けられた接合糸ゴムである。
[0071] これらの糸ゴムは、背側胴回り部30(胴回り部シート28)の横方向における一端部から他端部に亘って胴回り部シート28に接合されている。本実施の形態においては、これらの糸ゴムの全体が、胴回り部シート28に接合されている。
[0072] 一方で、残りの糸ゴム、すなわち、第三背側糸ゴム53、第四背側糸ゴム54、第五背側糸ゴム55、第六背側糸ゴム56、第七背側糸ゴム57、第八背側糸ゴム58、第九背側糸ゴム59、第十一背側糸ゴム61は、非接合糸ゴムである。
[0073] 図4から明らかなように、第三背側糸ゴム53、第五背側糸ゴム55、第七背側糸ゴム57、第九背側糸ゴム59、第十一背側糸ゴム61の非接合部の位置(換言すれば、接合部の位置)は共通している。つまり、これらの糸ゴムは、背側胴回り部30(胴回り部シート28)の横方向における一端部(図4に示すように、最外端から内側へ30mmまでの部分)と他端部(図4に示すように、最外端から内側へ30mmまでの部分)で胴回り部シート28に接合され、さらに、背側胴回り部30(胴回り部シート28)の横方向における中央部(図4に示すように、背側胴回り部30の真ん中から横方向へ左右75mmまでの部分。合計で150mm分)で胴回り部シート28に接合されている。そして、残りの部分、つまり、前記一端部と前記中央部の間と前記他端部と前記中央部との間に非接合部が位置している。本実施の形態においては、背側胴回り部30の横方向における長さが340mmなので、当該非接合部の長さは、それぞれ65mm(=(340-150-30×2)/2)となっている。
[0074] 一方で、第四背側糸ゴム54、第六背側糸ゴム56、第八背側糸ゴム58の非接合部の位置(換言すれば、接合部の位置)は共通している。つまり、これらの糸ゴムは、背側胴回り部30(胴回り部シート28)の横方向における中央部(図4に示すように、背側胴回り部30の真ん中から横方向へ左右60mmまでの部分。合計で120mm分)のみが非接合部となっており、他の部分(非接合部の横方向における両側)が接合されている。接合部の長さは、それぞれ110mmとなっている。」
キ 「[0103] また、本実施の形態においては、縦方向において第一非接合糸ゴム(例えば、第七腹側糸ゴム77)と第二非接合糸ゴム(例えば、第九腹側糸ゴム79)の間には、少なくとも一つの接合糸ゴム(例えば、第八腹側糸ゴム78)が設けられている。そのため、第一非接合糸ゴム(第七腹側糸ゴム77)の非接合部や第二非接合糸ゴム(第九腹側糸ゴム79)の非接合部が大きく縦方向へ移動するのを双方の間に位置する接合糸ゴム(第八腹側糸ゴム78)がブロックしてくれるため、非接合糸ゴムの非接合部が縦方向にずれる事象を適切に抑えることが可能となる。すなわち、非接合糸ゴムの非接合部が縦方向にずれ、着用者の動き等で着用時にゴムが厚み方向に重なってしまい、肌に強く当たりすぎる(跡が残る)というトラブルが発生しうるが、かかるトラブルを防ぐことが可能となる。」
ク「[図1]
[図:0001398213000001.jpg]
」
ケ「[図2]
[図:0001398213000002.jpg]
」
コ「[図3]
[図:0001398213000003.jpg]
」
サ「[図4]
[図:0001398213000004.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
上記記載から、甲1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「展開状態において、横方向と、縦方向とを有し、
一対の胴周り部30、40と、吸収体11を備える吸収性本体10とを有するおむつ1であって、
前記一対の胴周り部30、40は、不織布製の二つの胴回り部シート28と、前記二つの胴回り部シート28間に挟まれた前記横方向に伸縮する複数の弾性部材を有し、
各前記弾性部材は前記胴周り部30、40の前記横方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記横方向の両端部が前記胴回り部シート28に固定されており、
複数の弾性部材は、
前記横方向における端部に固定された部位よりも内側において、前記一対の胴回り部シート28に固定されていない部位を有する糸ゴム53~59、73~75と、
前記横方向における端部に固定された部位よりも内側において、前記一対の胴回りシート28に固定された中央の固定部を有し、かつ、前記一対の胴回り部シート28に固定されていない部位を有する糸ゴム53、55、57、59、73、75と、
前記横方向において前記吸収体11と重複する領域の全域に亘り、前記一対の胴回りシート28に固定された中央の固定部を有し、かつ、前記縦方向における吸収性本体10と重複する領域に配置されている糸ゴム57、59、72、73、75を有する、おむつ1。」
3.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「横方向」、「縦方向」、「一対の胴回り部30、40」、「吸収体11」、「吸収性本体10」、「おむつ1」、「二つの胴回り部シート28」、「弾性部材」は、各々、本件発明1の「幅方向」、「長手方向」、「一対の胴回り部」、「吸収性コア」、「吸収性本体」、「吸収性物品」、「一対のシート」、「伸縮部材」に相当する。
イ 引用発明の弾性部材の横方向の両端部が固定される胴回り部シート28の部位は、本件発明1の「一対の端部固定部」に相当する。
ウ 引用発明の「前記横方向における端部に固定された部位よりも内側において、前記一対の胴回り部シート28に固定されていない部位」は、本件発明1の「前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部」に相当し、引用発明の「前記横方向における端部に固定された部位よりも内側において、前記一対の胴回り部シート28に固定されていない部位」を有する「糸ゴム53~59、73~75」は、本件発明1の「前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部」を有する「第1伸縮部材」に相当する。
エ 引用発明の「前記横方向において前記吸収体11と重複する領域の全域に亘り、一対の胴回りシート28に固定された中央の固定部」は、本件発明1の「前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部」に相当し、引用発明の「前記横方向において前記吸収体11と重複する領域の全域に亘り、一対の胴回りシート28に固定された中央の固定部」を有し、かつ、「前記縦方向における吸収性本体10と重複する領域に配置されている」「糸ゴム57、59、72、73、75」は、本件発明1の「前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部」を有し、かつ、「前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されて」いる「第2伸縮部材」に相当する。
オ そうすると、本件発明1と引用発明は、
《一致点》
「展開状態において、幅方向と、長手方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、第1伸縮部材と、第2伸縮部材とを有し、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されている、吸収性物品。」で一致し、次の相違点1で相違する。
《相違点1》
本件発明1の「少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性コアと重複する領域に配置されている」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
ア 引用発明の「糸ゴム57、59、72、73、75」は、いずれも「前記長手方向において前記吸収性コアと重複する領域に配置されている」ものではなく、上記相違点1は実質的な相違点である。
この相違点1に係る本件発明1の構成を、記載あるいは示唆する証拠は提出されていない。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人は、令和5年1月11日の意見書において、「糸ゴム61、77、79、81はいずれも、本件訂正で新たに加わった「前記長手方向において前記吸収性コアと重複する領域に配置されている」に該当することは明らかです。」(13頁1~3行)と主張する。
しかし、上記「糸ゴム61、77、79、81」は、糸ゴムが細かく切断された不連続部分を有するものであり(甲1[0050]、[0066])、本件発明1の「各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され」たものに該当しないから、申立人の上記主張は採用できない。
4.本件発明6について
(1)対比
本件発明6と引用発明とを対比する。
本件発明6と引用発明の各事項の相当関係は、上記3.で述べたものと同様であり、本件発明6と引用発明とは、上記《一致点》で一致し、次の相違点2で相違する。
《相違点2》
本件発明6が、「前記少なくとも一方において、前記第1伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性本体と重複しない領域に配置されており、
前記少なくとも一方において、少なくとも1つの前記第2伸縮部材が有する前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されている」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
ア 引用発明の「糸ゴム53~59、73~75」のうち、「前記長手方向において前記吸収性本体と重複しない領域に配置されて」いるのは、甲1の図4を参照すると「糸ゴム53、54、55、56」のみである。
また、引用発明の「前記縦方向における吸収性本体10と重複する領域に配置されている」「糸ゴム57、59、72、73、75」のうち、「前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されている」のは、甲1の図4を参照すると「糸ゴム72」のみである。
ここで、引用発明の「糸ゴム53、54、55、56」は背側胴回り部30に、「糸ゴム72」は腹側胴回り部40に、それぞれ別に位置するから、甲1には、本件発明6の「前記少なくとも一方において、前記第1伸縮部材は、前記長手方向において前記吸収性本体と重複しない領域に配置されており、前記少なくとも一方において、少なくとも1つの前記第2伸縮部材が有する前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されている」ものは記載されておらず、上記相違点2は実質的な相違点である。
そして、この相違点2に係る本件発明6の構成を、記載あるいは示唆する証拠は提出されていない。
よって、相違点2に係る本件発明6の構成は当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明6は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人は、令和5年1月11日の意見書において、「同じ背側胴回り部30の糸ゴム60及び糸ゴム62は、・・・・「中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されている」に該当する」旨(14頁8~12行)主張する。
しかし、上記「糸ゴム60」、「糸ゴム62」は、糸ゴムが細かく切断された不連続部分を有するものであり(甲1[0066])、本件発明6の「各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され」たものに該当しないから、申立人の上記主張は採用できない。
5.本件発明8について
(1)対比
本件発明8と引用発明とを対比する。
本件発明8と引用発明の各事項の相当関係は、上記3.で述べたものと同様であり、本件発明8と引用発明とは、上記《一致点》で一致し、次の相違点3で相違する。
《相違点3》
本件発明8が、「少なくとも1つの前記第2伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部と前記中央固定部の間において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し、
前記複数の伸縮部材のうち、前記第1伸縮部材以外の伸縮部材は、前記第2伸縮部材であり、
全ての前記第1伸縮部材は、前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
全ての前記第2伸縮部材は、前記非固定部を有する」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
本件発明8が備える「全ての前記第2伸縮部材は、前記非固定部を有する」との事項に関し、引用発明の「前記横方向において前記吸収体11と重複する領域の全域に亘り、一対の胴回りシート28に固定された中央の固定部」を有し、かつ、「前記縦方向における吸収性本体10と重複する領域に配置されている」「糸ゴム57、59、72、73、75」のうち、「糸ゴム72」が、上記4.(2)アで述べたように「前記中央固定部は、前記幅方向の一方側の前記端部固定部から他方側の前記端部固定部まで連続して配置されている」ものであって、「全ての」糸ゴムが「非固定部」を有するものではないから、引用発明は上記事項を備えず、上記相違点3は実質的な相違点である。
そして、この相違点3に係る本件発明8の構成を、記載あるいは示唆する証拠は提出されていない。
よって、相違点3に係る本件発明8の構成は当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明8は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6.本件発明3、5、7、9~15について
本件発明3、5、7、9~15は、本件発明1あるいは本件発明8の発明特定事項を全て含むところ、本件発明1は上記3.で述べたように、本件発明8は上記5.で述べたように、いずれも引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3、5、7、9~15も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1.新規性要件に係る理由
申立人は、本件発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨主張する(特許異議申立書28~46頁)。
しかし、上記第4の3.~6.で述べたように、本件発明1、3、5~15と甲1に記載された発明(引用発明)とは、上記相違点1~3のいずれかで実質的に相違するから、本件発明1、3、5~15は、甲1に記載された発明(引用発明)ではない。
よって、申立人の新規性要件に係る理由は採用できない。
2.明確性要件に係る理由
(1)申立理由
本件発明では、第1伸縮部材と第2伸縮部材という2種類の伸縮部材を有することが必須の構成として規定されているが、その意味(特に両者の区別)が不明確であり、第1伸縮部材と第2伸縮部材は相当程度重複し、第三者において、具体的な製品に伸縮部材を配置する場合、どちらに該当するか判別できないという不測の事態が生じることになる。
よって、本件発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(特許異議申立書15~18頁)。
(2)判断
本件発明において、「第1伸縮部材」は「前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し」、「第2伸縮部材」は「前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されて」いる旨、それぞれ特定され、意味する内容が明確であり、区別もできる。
申立人は、第1伸縮部材と第2伸縮部材は相当程度重複する旨主張するが、本件発明は、第1伸縮部材と第2伸縮部材の、それぞれの要件を特定するものであって、それらの要件をいずれも満たすことを排除する記載はなく、このことをもって不明確になるともいえない。
よって、申立人の明確性要件に係る理由は採用できない。
3.サポート要件に係る理由
(1)申立理由
以下のア~エの事項が、本件発明に特定されていないため、本件発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(特許異議申立書18~28頁)。
ア 本件明細書等の実験データの記載が存在しない(特許異議申立書19~21頁)。
イ 伸縮部材の材質及び弾性力が特定されていない(特許異議申立書22~23頁)。
ウ 請求項6及び請求項8の構成が規定されていない請求項がある(特許異議申立書23~26頁)。
エ 胴回り部の一方についての伸縮部材のみが必須の構成とされている(特許異議申立書27~28頁)。
(2)判断
ア 本件発明の解決しようとする課題は、「吸収性物品の胴周り部の柔軟性を向上させつつ、吸収性コアの位置ずれを抑制すること」(本件明細書等の【0005】)である。
そして、本件明細書等の記載(【0010】)によれば、これらの課題のうち、胴周り部の柔軟性は「第1伸縮部材の非固定部により」、吸収性コアの位置ずれは「第2伸縮部材の中央固定部により」、それぞれ解決できるものと理解される。
イ 申立人は、本件発明の解決しようとする課題の解決には、上記(1)ア~エの事項の特定が必須であると主張する。
しかし、上記アで述べたように、本件発明の課題は、「第1伸縮部材の非固定部」と「第2伸縮部材の中央固定部」を設けることにより解決できるから、本件発明において、上記(1)ア~エの事項が特定されていないことをもって、サポート要件を満たさないとすることはできない。
よって、申立人のサポート要件に係る理由は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、3、5~15に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1、3、5~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件訂正により、請求項2、4に係る特許は削除されたため、請求項2、4に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700644