特許異議申立
2022-700613
弾性ベルトを有する着用可能物品
- 審判番号
- 2022-700613
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-042967
- 登録番号
- 7009533
- 請求日
- 2022年07月11日
- 審決日
- 2023年03月10日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】朝倉 悟
- 【権利者代理人】出口 智也
- 【権利者代理人】村田 卓久
- 【権利者代理人】小島 一真
- 【権利者代理人】関根 毅
- 【異議申立人】本間 裕美
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 當間 庸裕
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.537-YAA(A61F) / P1651.536-YAA(A61F) / P1651.121-YAA(A61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7009533号発明「弾性ベルトを有する着用可能物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7009533号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7009533号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7009533号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)2月3日を国際出願日とする出願である特願2018-538590の一部を、令和2年3月12日に、新たな特許出願としたものであって、令和4年1月14日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年7月11日に特許異議申立人本間裕美(以下「申立人」という。)は、本件特許異議の申立てを行った。
当該特許異議の申立て以降の経緯は以下のとおり。
・令和4年 9月30日付け:取消理由通知
・令和4年12月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
・令和5年 2月 3日 :申立人による意見書の提出
以下、令和4年12月20日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、訂正箇所に下線を引いて示すと、以下のとおりである。
訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり、」と記載されているのを、「前記複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり、本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であり、」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~4も訂正する。)。
2 訂正要件の判断
(1)訂正の目的の適否
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であるように、複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さが調整されていることが特定された着用可能物品において、「本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であり、」との要件を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の有無(この段落においては、強調のため下線を付した。)
「本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であり、」について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)には、以下の記載がある。
「【0032】
本発明の物品は、好適な伸張時周囲力(Stretch Circumference Force)(N)を有し得る。伸張時周囲力とは、物品に手を挿入し、伸ばし開く際に着用者又は世話をする人が感じる初期伸張体験をシミュレーションすると考えられる一定の伸張レベルでの負荷力である。物品を伸ばし開く際に着用者又は世話をする人が感じると考えられる伸張レベルもまた、70%伸張時周長で表現される。本発明の物品は、6.0N以下、又は5.5N以下、又は5.0N以下の伸張時周囲力を有する。このような伸張時周囲力を有することにより、弾性ベルトを容易に開いて装着することができる。
【0033】
材料周長(mm)、全周長(mm)、70%伸張時周長(mm)、フィット時周囲力(N)、及び伸張時周囲力(N)は、以下の「材料周長の測定法」及び「物品全体力測定法」に従って得られる。」
「【0047】
物品全体力測定法
TestWorks 4 Software(MTS SYSTEMS(CHINA)CO.,LTDから入手可能)を実行するMTS Criterion C42などのコンピュータインターフェースを備えた電子引張試験機、又は同等の機器を使用して、力を測定する。試験される試料に対する力が、使用するロードセルの能力の10~90%になるように、ロードセルを選択する。機器は、メーカーの指示書に従って較正する。全ての試験は、23±2℃、相対湿度50±5%に維持された室内で行う。
【0048】
引張試験機に、図5に示されるような、ハンガータイプの試料保持固定具300を装着する。各固定具は、試験中に試料が滑るのを防ぐために、剛性で直線状の、ゴムでコーティングされた水平バー部分302を備える。水平なバー部のバーの外径(ゴムコーティングを含む)は10.0mmである。水平なバー部302の中央軸線は、全テスト過程を通して平行で同一鉛直面内に保たれるように構成されている。基準周長は、次式によって決定される。
基準周長=2×(H+D+πD/2)
式中、Hは水平バー部分302間の垂直方向ギャップ、Dはバーの外径である。
【0049】
機器は、以下の工程をこなすように設定する。
【0050】
【表1】
[図:0001398270000001.jpg]
【0051】
バーが物品の腰部開口部及び一方の脚部開口部を通るように、試料物品20を上側の水平バー部分302上に挿入する。試験片が下側のバーの上方でぶら下がり、下側のバー302に触れなくなるまで、クロスヘッドを持ち上げる。ロードセルの風袋を差し引き、物品を伸張させずに下側のバー302を腰部開口部及び他方の脚部開口部に挿通させることができるように、クロスヘッドを下降させる。物品を調節して、物品の長手方向中心線L1が上側及び下側のバー302の真ん中で水平面内にあるようにする。バー302と接触している側部部分の中央が、機器のロードセルと同じ垂直軸線上に位置するようにする。物品を必要に応じて手で適所に保持しつつ、不要な力が加わらないように注意しながら、力が0.05~0.1Nになるまでクロスヘッドをゆっくり持ち上げる。この時点での基準周長が初期基準周長である。試験を開始し、19.6Nの力が得られるまでクロスヘッドを254mm/分で上に移動させ、次いで同じ速度でクロスヘッドをすぐに初期基準周長に戻す。19.6Nでの最大周長、及び試験の延伸セグメント中に70%伸張時周長になったときの力を記録する。
【0052】
19.6Nでの最大周長が全周長(mm)として定義される。70%伸張時周長(mm)は、全周長×0.70として定義される。伸張時周囲力は、試験の負荷(延長)セグメント中に70%伸張時周長になったときの力として定義される。フィット時周囲力は、試験の除荷(収縮)セグメント中に70%伸張時周長になったときの力として定義される。
【0053】
5つの試料を分析し、それらの平均初期基準周長、平均全周長、平均伸張時周囲力、及び平均フィット時周囲力を計算し、それぞれ、1mm、又は0.01N単位で報告する。」
そうすると、本件明細書等には、本発明の物品が6.0N以下の伸張時周囲力を有すること、伸張時周囲力が「物品全体力測定法」に従って得られることが記載されている。
よって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、既に述べたように特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が本件訂正の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~4〕に対して請求するものである。
(5)小括
以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~4を「本件発明」と総称することもある。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に、それぞれ記載された次のとおりのものである。
【請求項1】
長手方向及び横断方向に連続している着用可能物品であって、本体と、前側ベルトと後側ベルトとを含む弾性ベルトと、を備え、前記本体が、前記前側ベルト及び前記後側ベルトと連続しており、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横断方向縁部が、シームによって接合されて腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、前記前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれが、内側シート、外側シート、及びその間に挟まれている複数の弾性体によって形成され、前記弾性体の少なくとも一部が、実質的に互いに平行に前記横断方向に延び、
前記複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり、
本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であり、
前記着用可能物品は、前記前側ベルトの前側遠位縁部と前記後側ベルトの後側遠位縁部とが一致するように、横断方向中心線に沿って折り畳むことによって形成され、同じ長さの側縁部が継ぎ合わされることにより、前記前側ベルトと前記後側ベルトを閉じる、着用可能物品。
【請求項2】
請求項1に記載の着用可能物品であって、前記前側ベルトのベルト側縁部の全長が、前記後側ベルトのベルト側縁部の特定の長さと継ぎ合わされて、シーム長さLSが画定され、前記横断方向に延在する4つの区域にそれぞれが分割された前記前側ベルト及び前記後側ベルトが、前記シーム長さLSの比率に対して遠位縁部から近位縁部までのその位置によって画定され、0~25%が腰部区域であり、25~50%が遠位腹部区域であり、50~85%が近位腹部区域であり、85~100%が脚部区域であり、
前記前側ベルトの腰部区域と前記後側ベルトの腰部区域に配設された弾性体の伸び率は、実質的に一致している、着用可能物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の着用可能物品であって、本明細書に記載の物品全体力測定法に基づく全周長が、660mm以上である、着用可能物品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の着用可能物品であって、前記前側ベルトの腰部区域、前記後側ベルトの腰部区域、前記前側ベルトの脚部区域、及び前記後側ベルトの脚部区域は、540dtexの弾性体で配設される、着用可能物品。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が特許権者に対して令和4年9月30日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(サポート要件)本件請求項1~4に係る特許は、本件請求項1~4に記載された発明が発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 当審の判断
1 特許権者に通知した取消理由(サポート要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある(この段落の下線は強調のため当審が付した。)。
「【0004】
着用者の股部領域を覆う本体と、腰部開口部及び脚部開口部を画定する別体の弾性ベルトとを有する、パンツタイプの着用可能物品は、PCT国際公開第2006/17718A(号)に記載されたもののように、当該分野においては周知である。かかるパンツタイプの着用可能物品は、ベルトタイプパンツと呼ばれることがある。他方で、特定のパンツタイプの着用可能物品は、着用可能な本体の外側カバーが物品の衣類に面する表面全体を完全に覆うように構成されている。かかるパンツタイプの着用可能物品は、一体型パンツと呼ばれることがある。一体型タイプであろうとベルトタイプであろうと、装着時に容易に伸ばし開かれ、装着後に物品がたるむのを防止するのに十分な力を有しながら肌に対する柔らかいフィット性を有して着用中に赤色の跡が付くのを避けるパンツタイプの着用可能物品を提供することが望まれている。一方、例えば、できるだけ少ない材料を使用することによってなど、経済的な方法でパンツタイプの着用可能物品を提供することが望まれている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に基づいて、装着しやすさ、フィット性、着用している間の快適性、ずり落ち防止、及び漏れ防止など、バランスが取れた性能を有するパンツタイプの着用可能物品が求められている。更に、かかる着用可能物品を経済的な方法で提供することが求められている。」
「【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の着用可能物品20の一実施形態の斜視図であり、図2は、シームが接合されておらず、平らな非収縮状態で衣類に面する表面を見せている、同じ物品の概略平面図である。着用可能物品20は、長手方向軸線としての役割も果たす長手方向中心線L1と、横断方向軸線としての役割も果たす横断方向中心線T1とを有する。本発明の着用可能物品20は、肌に面する表面、衣類に面する表面、前側領域26、後側領域28、股部領域30、及びシーム32を有し、このシームは、前側領域26及び後側領域28を接合して、2つの脚部開口部及び腰部開口部を形成する。着用可能物品20は、着用者の股部領域30を覆う本体38と、前側領域26及び後側領域28を覆う前側ベルト84及び後側ベルト86と、を備え、前側及び後側ベルト84、86並びに本体は、連続している。前側及び後側ベルト84、86は、横断方向に延在し腰部開口部を画定する環状弾性ベルト40(以下、「腰部ベルト」と呼んでもよい)を共同して形成してもよい。前側ベルト84及び後側ベルト86の横断方向縁部は、シーム32によって接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成する。前側及び後側ベルト84、86が環状弾性ベルト40を形成するとき、前側及び後側ベルト84、86、並びに本体38は、脚部開口部を共同して画定する。」
「【0024】
前側ベルト84及び後側ベルト86はそれぞれ、内側シート94、外側シート92(以下、まとめて「ベルトシート」とも呼ぶ)、並びにそれらの間に挟まれている複数の弾性体96を備えてもよく、その弾性体の少なくとも一部は、互いに対して実質的に平行な横断方向に延び、前側及び後側領域26、28に弾性を付与するよう構成されている。図2を参照すると、内側シートと外側シートとの間に挟まれている全ての弾性体は、実質的に互いに平行に横断方向に延びていてもよい(内側シート94は図示されていない)。かかる物品は経済的に作製することができる。」
「【0026】
後側ベルト86の全幅LWに沿った、後側ベルト86の後側遠位縁部88と後側近位縁部90との間の長手方向長さLBは、前側ベルト84の前側遠位縁部88と前側近位縁部90との間の長手方向長さLFとほぼ同じであってもよい。かかる実施形態では、シーム32が前側ベルト84及び後側ベルト86の同じ長さの側縁部89を閉じて、物品を形成している。かかる物品は経済的に作製することができる。
【0027】
後側ベルト86の横断方向における全幅LWに沿った、後側ベルト86の後側遠位縁部88と後側近位縁部90との間の長手方向長さLBは、前側ベルト84の前側遠位縁部88と前側近位縁部90との間の長手方向長さLFより長くてもよい(図1~図3)。かかる実施形態では、着用可能物品が組み立てられて、腰部開口部及び脚部開口部が形成されると、着用可能物品20は、前側遠位縁部88が後側遠位縁部88と位置合わせされるように、横方向中心線T1に沿って折り畳まれる。前側側縁部89も後側側縁部89の一部分と位置合わせされる。次に、前側ベルト84及び後側ベルト86が、前側及び後側側縁部89においてシーム32で接合される。しかしながら、前側及び後側近位縁部90は互いに位置合わせされなくてもよい。後側近位縁部90は、後側側部パネル82の近位部分が前側近位縁部90を超えて本体38の股部パネル56に向かって延在するように、横断方向中心線T1に対して長手方向に前側近位縁部90よりも近くに配設されてもよい。後側側部パネル82の近位部分の側縁部は、どこにも接合されず、付着されていなくてもよい。このようにして、後側側部パネル82の近位部分は、図1に示すような臀部カバー95を提供する。」
「【0030】
本発明の物品は、良好なベルト利用率を有し得る。ベルト利用率とは、材料周長(mm)と比較した全周長(mm)の寸法の割合、即ち、着用者又は世話をする人が着用のために物品を伸ばし開いたとき、伸張方向のベルトに使用される材料と比較して弾性ベルトがどのくらい有効に利用されるかである。材料周長は、物品を製造するために処理される前に、ベルトシート材料の元の寸法を測定することが想定されている。全周長は、物品が伸ばし開かれ得る最大の周長を測定することが想定されている。本発明の物品は、少なくとも92%のベルト利用率を有する。本発明の物品は、サイズ3(若しくはMサイズ、体重6~11kgの着用者用)では約610mm~約670mm、又はサイズ4(若しくはLサイズ、体重9~14kgの着用者用)では約660mm~約720mm、又はサイズ5(若しくはXLサイズ、体重12~17kgの着用者用)では約710mm~約760mmの全周長を有し得る。」
「【0032】
本発明の物品は、好適な伸張時周囲力(Stretch Circumference Force)(N)を有し得る。伸張時周囲力とは、物品に手を挿入し、伸ばし開く際に着用者又は世話をする人が感じる初期伸張体験をシミュレーションすると考えられる一定の伸張レベルでの負荷力である。物品を伸ばし開く際に着用者又は世話をする人が感じると考えられる伸張レベルもまた、70%伸張時周長で表現される。本発明の物品は、6.0N以下、又は5.5N以下、又は5.0N以下の伸張時周囲力を有する。このような伸張時周囲力を有することにより、弾性ベルトを容易に開いて装着することができる。
【0033】
材料周長(mm)、全周長(mm)、70%伸張時周長(mm)、フィット時周囲力(N)、及び伸張時周囲力(N)は、以下の「材料周長の測定法」及び「物品全体力測定法」に従って得られる。
【0034】
前側及び後側弾性ベルト84、86の引張応力(N/m)はそれぞれ、本発明の利益をもたらすためにプロファイリングされてもよい。前側及び後側ベルトが、環状弾性ベルトを形成し、内側シートと外側シートとの間に挟まれている全ての弾性体が実質的に互いに平行に横断方向に延び得るとき、引っ張り応力は、例えば、本明細書で以下に説明されるベルト区域引っ張り応力測定法によって測定され得る。前側及び後側弾性ベルト84、86の弾力性が、横方向に延びる複数の弾性体96によって供給される場合、引張り力は、次の方法のうちの1つ又は複数によって調整されてもよい。1)弾性体96の伸び率;2)弾性体96の密度(dtex);3)複数の弾性体96の長手方向間隔;及び4)弾性体96の横断方向における弾性の有効長さ。伸び率について言えば、「0%の伸び率」とは、弾性体の長さが元の長さであることを意味する。弾性体の一部がその弾力性を取り除かれている場合、残りの、影響を受けていない弾性体で、弾力性を付与する能力のある部分が、「弾性体の弾力性の有効長さ」として定義される。前側ベルト84及び/又は後側ベルト86に配置された弾性体96は、本体38の前側腰部パネル52及び/又は後側腰部パネル54に重なるエリアのある部分が、弾力性を取り除かれるように扱われる場合がある。本体38が吸収性コア62を備える場合に、少なくとも1つの弾性体の、前側腰部パネル52及び/又は後側腰部パネル54と重なるエリアの少なくとも一部から弾力性が取り除かれていることが有利な場合がある。前側及び/又は後側エリアにおける弾力性は、吸収性コア62を塊状に集め、本体38が着用者にぴったりとフィットするのを妨げる恐れがあるからである。一実施形態では、少なくとも1つの、少なくとも半数の、少なくとも3分の2の、又は全ての弾性体の弾力性の少なくとも一部、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも30%が、本体38の前側腰部パネル52及び後側腰部パネル54又は吸収性コア62と重なる領域において取り除かれている。」
「【0043】
得られた本発明の着用可能物品は、装着しやすさ、フィット性、着用中の快適性、ずり落ち防止、及び漏れ防止を提供してもよい。得られた本発明の着用可能物品は、良好なベルト利用率を有し、したがって経済的な方法で作製することができる。」
「【図1】
[図:0001398270000002.jpg]
」
「【図2】
[図:0001398270000003.jpg]
」
(2)判断
ア 上記(1)の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、装着しやすさ、フィット性、着用している間の快適性、ずり落ち防止、及び漏れ防止など、バランスが取れた性能を有するパンツタイプの着用可能物品を経済的な方法で提供することであると認められる(【0006】)。
また、当該課題を解決するための手段に関して、発明の詳細な説明には、着用可能物品が少なくとも92%のベルト利用率を有することで、良好なベルト利用率を有し、できるだけ少ない材料を使用することになり、経済的な方法でパンツタイプの着用可能物品を提供できることが開示されている(【0004】、【0030】、【0043】)。また、着用可能物品が6.0N以下の伸張時周囲力を有することで、弾性ベルトを容易に開いて装着できることが開示されているし(【0032】)、着用時にも過度に窮屈にならないことが予測でき、少なくとも装着しやすさや着用しているときの快適性に関してある程度バランスが取れた性能を達成できることが開示されているといえる。
そして、本件発明1は、「長手方向及び横断方向に連続している着用可能物品であって、本体と、前側ベルトと後側ベルトとを含む弾性ベルトと、を備え、前記本体が、前記前側ベルト及び前記後側ベルトと連続しており、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横断方向縁部が、シームによって接合されて腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、前記前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれが、内側シート、外側シート、及びその間に挟まれている複数の弾性体によって形成され、前記弾性体の少なくとも一部が、実質的に互いに平行に前記横断方向に延び、」「前記着用可能物品は、前記前側ベルトの前側遠位縁部と前記後側ベルトの後側遠位縁部とが一致するように、横断方向中心線に沿って折り畳むことによって形成され、同じ長さの側縁部が継ぎ合わされることにより、前記前側ベルトと前記後側ベルトを閉じる、着用可能物品」において、「前記複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり、本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であ」ることを特定するものであるから、本件発明1であれば、上記課題を解決できるものと当業者であれば理解でき、また、解決できないという証拠もない。
イ 小括
以上のとおり、本件発明1~4は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
(3)意見書における申立人の主張について
申立人は、令和5年2月3日提出の意見書において、以下の主張をしている。
「仮に、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、伸張時周囲力が6.0N以下である着用可能物品が本件訂正発明の所定の課題を解決できる性能を示す理論上の根拠が示されているとしても、ベルト利用率が92%を超える着用可能物品がこの課題を解決できる性能を示す理論上ないし実験上の根拠は依然として示されていない。」(意見書3ページ)
しかしながら、伸張時周囲力が6.0N以下であれば「弾性ベルトを容易に開いて装着することができる」(【0032】)ことが理解できるし、着用時にも過度に窮屈にならないことが予測でき、少なくとも装着しやすさや着用しているときの快適性に関してある程度バランスが取れた性能を達成できるといえる。また、本件明細書等において、ベルト利用率が92%以上である着用可能物品の実施例として記載されているのが「92%」の実施例1のみであるとしても、ベルト利用率が高いほど、「できるだけ少ない材料を使用すること」(【0004】)になり、「経済的な方法で作製することができる」(【0043】)ことが理解できる。したがって、本件発明1が「ベルト利用率が、92%以上であ」ることに加え、「伸張時周囲力が、6.0N以下であ」ることが特定されたことで、着用可能物品をバランスが取れた性能を有するものとすると共に着用可能物品を経済的な方法で提供するという発明の課題が解決できるものと当業者であれば理解できる。
よって、申立人の主張は採用できない。
2 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
ア 申立人の主張
申立人は、請求項1の「本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり」という記載に関し、「ベルト利用率」の算出に必要な「材料周長」の測定方法について、本件特許公報では、試験片に重りを付けた後、試験片のサイドシーム領域の内側の周長を測定するという手順で実施されるということであるが、測定のタイミング次第(例えば、重りを付けた直後か、試験片が重りによって完全に伸び切った時点か、両者の中間時点か)で測定値が変わり得るし、サイドシーム領域の測定部位次第で測定値が変わり得て、本件特許公報にはその実施に必要な情報が十分に記載されておらず、また、該測定方法は周知のものでもないから、当業者がその実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載されていない旨指摘する(申立書14~15ページ)。
イ 判断
「材料周長」の測定方法について、本件明細書等には、以下の記載がある(下線は当審が付した。)。
「【0044】
材料周長の測定法
前側及び後側ベルトが、サイドシーム領域を外さないで互いから剥がされるような方法で、試料物品を両サイドシームで開き、腰部開口部から約30~35mmの部分を、物品の前側及び後側の両方の横断方向に沿ってカットする。前側又は後側ベルトのいずれかのベルトシートに取り付けられた弾性体から弾性を除去するために、La Pointique Int’l Ltd.Cold spray 829などの医療用コールドスプレーを施す。コールドスプレーを施した直後に前側及び後側ベルトを手で伸張して、弾性を完全に緩めるように弾性体をベルトシートから取り外す。弾性体によるギャザーが残っている場合は、ギャザーが存在する部分にコールドスプレーを更に施し、ギャザーが除去されるまで再度伸張する。コア、バックシート又はトップシートなどの前側及び後側ベルト上に残存する本体要素がある場合は、本体要素も除去する。各試料物品について、前側ベルト及び後側ベルトを利用して2個の試験片をそれぞれ準備する。
【0045】
以上のようにして準備した各試験片について、サイドシーム領域を特定し、試験片の横断方向が垂直方向に一致するように、測定台から400~500mmに位置付けられた40mm幅の固定クリップを使用してサイドシーム領域のみをクランプしたスタンドに掛ける。合計200gになるように、したがって1.96N(200gf)の張力を試験片に加える適切な重りを使用して、同様にサイドシーム領域のみをクランプするように、試験片の下端を40mm幅の可動式クリップに取り付ける。試験片の一方のサイドシーム領域の内側と他方のサイドシーム領域の他方の内側との距離を、一般的な金属定規によって1mm単位まで測定する。これとは別に、サイドシーム領域の横断方向幅を、一般的な金属定規によって1mm単位まで測定する。
【0046】
前側ベルト試験片のサイドシーム領域の内側の長さ、前側ベルト試験片の左側及び右側サイドシーム領域の幅、後側ベルト試験片のサイドシーム領域の内側の長さ、並びに後側ベルト試験片の左側及び右側サイドシーム領域の幅を、総和し、このように得られたものを材料周長(mm)と定義する。各試料をそれぞれ3回測定し、平均を求める。」
このように、本件明細書等には、材料周長の測定法が記載されており、これらの記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。
申立人は、測定のタイミング次第で測定値が変わり得る旨主張する。
しかし、測定対象の試験片は、おむつなどの着用可能物品のベルトシートから弾性体及び本体要素が除去されたものであって、低厚不織布材料(【0029】)などで構成される。このような試験片が、200gの重りを使用して張力を試験片に加えた後、ある程度は伸張するとしても、完全に伸びきるまでのタイムラグが大きいものであるとは通常考えにくい。また、試験片の寸法の測定は、一般的な定規による測定であり(【0045】)、重りを付けた直後など試験片が変形する過渡期の寸法を測定することが想定された測定方法であるとも考えにくい。
また、材料周長は、物品を製造するために処理される前に、ベルトシート材料の元の寸法を測定することが想定されるものである(【0030】)。そのため、【0044】~【0046】に記載の材料周長の測定法において重りを使用して張力を試験片に加えるのは、試料物品からカットして準備した試験片に残り得るギャザーを除去して、ベルトシート材料の元の寸法を測定するためと考えられる。
そうすると、測定のタイミングは、重りを付けた直後や試験片が重りによって伸びている最中でなく、試験片が重りによって伸びきった時点と考えるのが自然である。
また、申立人は、サイドシーム領域の測定部位次第で測定値が変わり得る旨主張する。
しかし、本件明細書には、各試料をそれぞれ3回測定し、平均を求めることが記載されており(【0046】)、サイドシーム領域の測定部位次第で測定値が変わり得ることが想定された測定法が記載されているといえる。そうすると、サイドシーム領域の測定部位次第で測定値が変わり得るからといって、本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件明細書等の記載は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
したがって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 申立人の主張
申立人は、本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、請求項1~4に係る発明は、甲第1号証(特開2009-240694号公報)(以下「甲1」という。)又は甲第2号証(特開2009-240695号公報)(以下「甲2」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨指摘する(申立書7~14ページ)。
イ 判断
(ア)甲1記載事項及び甲1記載の発明
a 甲1記載事項
甲1には以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【0012】
図1は、おむつ10の着用状態を示す部分破断斜視図である。図2は、おむつ10をシーム部22において前後に剥離し、縦方向Xと横方向Yとに伸展したときの展開平面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。図4は、図2において吸収性シャーシ12を除去した状態を示す図である。
【0013】
図1に示すとおり、おむつ10は、環状の弾性ウエストパネル11と、環状の弾性ウエストパネル11の肌当接面側に取り付けられた吸収性シャーシ12と、前ウエスト域13と、後ウエスト域14と、前後ウエスト域13,14間を縦方向Xに延びるクロッチ域15とを含む。
【0014】
弾性ウエストパネル11は、前ウエスト域13を形成する矩形の前ウエストパネル16と、後ウエスト域14とクロッチ域15の一部とを形成するほぼ台形状の後ウエストパネル17とから構成されている。前ウエストパネル16と後ウエストパネル17の両側縁(前後ウエスト域の両側縁)19a,20aは、互いに重ね合わせられて、縦方向Xへ間欠的に並ぶシーム部22において公知の接合手段、たとえば、熱エンボス加工、ソニックなどによる各種の熱溶着手段で接合されることによって連結され、ウエスト開口23と一対のレッグ開口24とが画成されている。
【0015】
図1及び図4に示すとおり、前後ウエスト域13,14は、ウエスト開口縁部23aに沿って横方向Yへ延びる第1伸縮域25と、第1伸縮域25に隣接し、吸収性シャーシ12の前端部を横断する第2伸縮域26と、前後ウエスト域13,14の横方向Y中央部に位置する第1及び第2非伸縮域28A,28Bの両側において横方向Yへ離間対向する一対の第3伸縮域27とに区分されており、各伸縮域25,26,27には、ストランド状のウエスト弾性要素30,31,32が配置されている。
【0016】
具体的には、第1伸縮域25には、ウエスト開口縁部23aに沿って延びる複数条の第1ウエスト弾性要素30が配置されており、第2伸縮域26には、吸収性シャーシ12を横方向Yへ延びる複数条の第2ウエスト弾性要素31が配置されており、第3伸縮域27には、前後ウエスト域13,14の両側部13a,14において横方向Yへ延びる複数条の第3ウエスト弾性要素32が配置されている。これらウエスト弾性要素30,31,32の収縮により、おむつ10の表面には多数のギャザー33が形成されている(図1参照)。なお、第1及び第2非伸縮域28A,28Bのうちの少なくとも第1非伸縮域28Aのみが形成されていればよい。また、後ウエストパネル17のクロッチ域15の一部を構成する部位には、第2非伸縮域28Bの両側において横方向Yへ離間する一対の第4伸縮域34が形成されており、第4伸縮域34には、横方向Yへ延びる複数条の第4ウエスト弾性要素35が配置されている。
【0017】
図2及び図3に示すとおり、前後ウエストパネル16,17は、肌当接面側に位置する内層シート40と、非肌当接面側に位置する外層シート41とから形成されている。外層シート41は、縦方向Xにおいて、内層シート40の前後端縁40a,40bからそれぞれ延出する延出部43を有しており、延出部43は、前ウエストパネル16と後ウエストパネル31の内側に吸収性シャーシ12が配置された後に、おむつの肌当接面側へ折り返され、両側部13a,14aに接合されている。このように、外層シート41の延出部43が内層シート40の前後端縁40a,40bを覆っているので、前後端縁40a,40bから外部へ排泄物が漏出することを抑制することができる。
【0018】
内層シート40と外層シート41とには、疎水性繊維不織布、透湿性プラスチックフィルム、それらのラミネートシートが好適に使用される。
【0019】
内層シート40と外層シート41との間には、各ウエスト弾性要素30,31,32,35が介在されており、両シート40,41のうちの少なくとも内層シート40の内面にホットメルト接着剤(図示せず)を介して伸縮可能に取り付けられている。ただし、第1及び第2非伸縮域28A,28Bの内層シート40と外層シート41との間には、ウエスト弾性要素30,31,32,35が配置されていない。」
「【図1】
[図:0001398270000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001398270000005.jpg]
」
b 甲1記載の発明
上記aの記載事項を総合すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「おむつ10は、環状の弾性ウエストパネル11と、環状の弾性ウエストパネル11の肌当接面側に取り付けられた吸収性シャーシ12とを含み、
弾性ウエストパネル11は、前ウエストパネル16と、後ウエストパネル17とから構成され、
前ウエストパネル16と後ウエストパネル17の両側縁19a,20aは、互いに重ね合わせられて、縦方向Xへ間欠的に並ぶシーム部22において接合されることによって連結され、ウエスト開口23と一対のレッグ開口24とが画成され、
前後ウエストパネル16,17は、内層シート40と、外層シート41とから形成され、
内層シート40と外層シート41との間には、各ウエスト弾性要素30,31,32,35が介在されている、おむつ10。」
(イ)甲2記載事項及び甲2記載の発明
a 甲2記載事項
甲2には以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「【0012】
図1は、おむつ10の着用状態を示す斜視図である。図2は、おむつ10をシーム部22において前後に剥離し、縦方向Xと横方向Yとに伸展したときの展開平面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。図4は、図2の吸収性シャーシ12を除去(吸収性パネル46を除く)した状態の図である。なお、図4では、説明の便宜上、吸収性パネル46を仮想線で示している。
【0013】
図1に示すとおり、おむつ10は、環状の弾性ウエストパネル11と、弾性ウエストパネル11の肌当接面側に取り付けられたシャーシ12と、前ウエスト域13と、後ウエスト域14と、前後ウエスト域13,14間に位置するクロッチ域15と、ウエスト開口16及び一対のレッグ開口17を含む。ウエスト開口16は、環状の弾性ウエストパネル11で画成されている。
【0014】
図2及び図4に示すとおり、弾性ウエストパネル11は、前ウエスト域13を形成する前ウエストパネル18と、後ウエスト域14とクロッチ域15の一部を形成する後ウエストパネル19とから構成されている。前ウエストパネル18は、内端縁18aと、外端縁18bと、内端縁18aと外端縁18bとをつなぐ両側縁18cとによって横長方形状に画成されており、後ウエストパネル19は、外内端縁19aと,外端縁19bと、外端縁19bから内方に延びる両外側縁19cと、外側縁19bと内端縁19aとをつなぐ斜めの両内側縁19dとによってほぼ台形状に画成されている。前ウエストパネル18の両側縁18cと後ウエストパネルの両側縁19cとは互いに重ね合わせられて、縦方向Xへ間欠的に並ぶシーム部22において公知の手段、たとえば、熱エンボス加工、ソニックなどによる各種の熱溶着手段で接合されることによって連結され、弾性ウエストパネル11と協働して一対のレッグ開口17を画成している(図1参照)。
【0015】
前後ウエストパネル18,19は、内面に位置する内層シート22と、外面に位置する外層シート23とのラミネートから形成されている。外層シート23は、縦方向Xにおいて、内層シート22の前後端縁22a,22bからそれぞれ延出する延出部24を有しており、延出部24は前後ウエストパネル18,19の肌当接面側に吸収性シャーシ12が配置された後に、おむつ10の内側に向かって折り返され、その両側部が前後ウエスト域の両側部(前後ウエストパネルの両側部)18f,19fに固着されている。このように、外層シート23の延出部24が内層シート22の前後端縁22a,22bを覆っているので、前後端縁22a,22bから排泄物が外部へ漏出することを未然に防止することができる。
【0016】
内層シート22と外層シート23には、疎水性繊維不織布、透湿性プラスチックフィルム、それらのラミネートシートが好適に使用される。
【0017】
さらに、前後ウエストパネル18,19の外層シート23と内層シート22との間には、第1ないし第7ウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32が介在されており、少なくとも内層シート22の内面に取り付けられている。後記するように、これらウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32によって、前ウエスト域12には第1ないし第3伸縮域33,34,35、後ウエスト域14には、第4ないし第7伸縮域36,37,38,39が形成されている。また、おむつ10の表面には、これらウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32の収縮により、複数の皺25が形成されている(図1参照)。」
「【0027】
第1伸縮域33には、前ウエストパネル18の両側縁18c間を横方向Yへ延びる複数条の第1ウエスト弾性要素26が配置されており、第2伸縮域34には、側縁18cから吸収性パネル46の前端部47の側部まで延びる第2ウエスト弾性要素27が配置されており、第3伸縮域35には、第2ウエスト弾性要素27と同様に、側縁18cから吸収性パネル46の前端部47の側部にまで延びる第3ウエスト弾性要素28が配置されている。」
「【0041】
第4及び第5伸縮域36,37には、両外側縁19c間を横方向Yへ延びるストランド状の第4及び第5ウエスト弾性要素29,30が配置されており、各第6伸縮域38には、外側縁19cから吸収性パネル46の前端部47の側部まで延びる第6ウエスト弾性要素31が配置されており、各第7伸縮域39には、外側縁19cから吸収性パネル46の側縁46c近傍まで延びるストランド状の第7ウエスト弾性要素32が配置されている。」
「【図1】
[図:0001398270000006.jpg]
」
「【図2】
[図:0001398270000007.jpg]
」
b 甲2記載の発明
上記aの記載事項を総合すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「おむつ10は、環状の弾性ウエストパネル11と、弾性ウエストパネル11の肌当接面側に取り付けられたシャーシ12と、ウエスト開口16及び一対のレッグ開口17を含み、
弾性ウエストパネル11は、前ウエストパネル18と、後ウエストパネル19とから構成され、
前ウエストパネル18の両側縁18cと後ウエストパネルの両側縁19cとは互いに重ね合わせられて、縦方向Xへ間欠的に並ぶシーム部22において接合されることによって連結され、弾性ウエストパネル11と協働して一対のレッグ開口17を画成し、
前後ウエストパネル18,19は、内層シート22と、外層シート23とのラミネートから形成され、
前後ウエストパネル18,19の外層シート23と内層シート22との間には、第1ないし第7ウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32が介在されている、おむつ10。」
(ウ)対比・判断
a 本件発明1について
(a)甲1を主引用文献とした場合
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「おむつ10」は、本件発明1の「着用可能物品」に相当し、同様に、「吸収性シャーシ12」は「本体」に、「前ウエストパネル16」は「前側ベルト」に、「後ウエストパネル17」は「後側ベルト」に、「弾性ウエストパネル11」は「弾性ベルト」に、「側縁19a,20a」は「横断方向縁部」に、「シーム部22」は「シーム」に、「ウエスト開口23」は「腰部開口部」に、「レッグ開口24」は「脚部開口部」に、「内層シート40」は「内側シート」に、「外層シート41」は「外側シート」に、「ウエスト弾性要素30,31,32,35」は「弾性体」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「各ウエスト弾性要素30,31,32,35が介在されている」態様は、【0016】の複数条の各ウエスト弾性要素30,31,32,35が横方向Yへ延びるとの記載や図2を併せみれば、「前記弾性体の少なくとも一部が、実質的に互いに平行に前記横断方向に延び」る態様に相当する。
甲1発明の「おむつ10」において「前ウエストパネル16と後ウエストパネル17の両側縁19a,20aは、互いに重ね合わせられて、縦方向Xへ間欠的に並ぶシーム部22において接合されることによって連結され」る態様は、図1及び2を併せみれば、「前記着用可能物品は、前記前側ベルトの前側遠位縁部と前記後側ベルトの後側遠位縁部とが一致するように、横断方向中心線に沿って折り畳むことによって形成され、同じ長さの側縁部が継ぎ合わされることにより、前記前側ベルトと前記後側ベルトを閉じる」態様に相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
【一致点】
長手方向及び横断方向に連続している着用可能物品であって、本体と、前側ベルトと後側ベルトとを含む弾性ベルトと、を備え、前記本体が、前記前側ベルト及び前記後側ベルトと連続しており、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横断方向縁部が、シームによって接合されて腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、前記前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれが、内側シート、外側シート、及びその間に挟まれている複数の弾性体によって形成され、前記弾性体の少なくとも一部が、実質的に互いに平行に前記横断方向に延び、
前記着用可能物品は、前記前側ベルトの前側遠位縁部と前記後側ベルトの後側遠位縁部とが一致するように、横断方向中心線に沿って折り畳むことによって形成され、同じ長さの側縁部が継ぎ合わされることにより、前記前側ベルトと前記後側ベルトを閉じる、着用可能物品。
【相違点1】
本件発明1では、「前記複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり、本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であ」るのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点1について検討する。
甲1には、ウエスト弾性要素30,31,32の断面積及び伸長倍率が採り得る値が範囲をもって記載され(【0041】)、ウエスト弾性要素30,31,32の本数及び並列する各ウエスト弾性要素30,31,32間の離間距離(ピッチ)を適宜変更できることが記載されており(【0042】)、甲1発明は、複数の弾性体の伸び率、密度及び長手方向間隔が調整され得るといえる。
しかし、甲1には、複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本件明細書等に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率を92%以上とすることや、前記物品全体力測定法による伸張時周囲力を6.0N以下とすることは、記載も示唆もされておらず、ベルト利用率や伸張時周囲力に着目するところさえない。そのため、甲1発明において、ベルト利用率を92%以上とし伸張時周囲力を6.0N以下とする動機付けはない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(b)甲2を主引用文献とした場合
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「おむつ10」は、本件発明1の「着用可能物品」に相当し、同様に、「シャーシ12」は「本体」に、「前ウエストパネル18」は「前側ベルト」に、「後ウエストパネル19」は「後側ベルト」に、「弾性ウエストパネル11」は「弾性ベルト」に、「側縁18c」及び「側縁19c」は「横断方向縁部」に、「シーム部22」は「シーム」に、「ウエスト開口16」は「腰部開口部」に、「レッグ開口17」は「脚部開口部」に、「内層シート22」は「内側シート」に、「外層シート23」は「外側シート」に、「第1ないし第7ウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32」は「弾性体」に、それぞれ相当する。
甲2発明の「第1ないし第7ウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32が介在されている」態様は、【0027】、【0041】の複数条のウエスト弾性要素が横方向Yへ延びるとの記載や図2を併せみれば、「前記弾性体の少なくとも一部が、実質的に互いに平行に前記横断方向に延び」る態様に相当する。
甲2発明の「おむつ10」において「前ウエストパネル18の両側縁18cと後ウエストパネルの両側縁19cとは互いに重ね合わせられて、縦方向Xへ間欠的に並ぶシーム部22において接合されることによって連結され」る態様は、図1及び2を併せみれば、「前記着用可能物品は、前記前側ベルトの前側遠位縁部と前記後側ベルトの後側遠位縁部とが一致するように、横断方向中心線に沿って折り畳むことによって形成され、同じ長さの側縁部が継ぎ合わされることにより、前記前側ベルトと前記後側ベルトを閉じる」態様に相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
【一致点】
長手方向及び横断方向に連続している着用可能物品であって、本体と、前側ベルトと後側ベルトとを含む弾性ベルトと、を備え、前記本体が、前記前側ベルト及び前記後側ベルトと連続しており、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横断方向縁部が、シームによって接合されて腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、前記前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれが、内側シート、外側シート、及びその間に挟まれている複数の弾性体によって形成され、前記弾性体の少なくとも一部が、実質的に互いに平行に前記横断方向に延び、
前記着用可能物品は、前記前側ベルトの前側遠位縁部と前記後側ベルトの後側遠位縁部とが一致するように、横断方向中心線に沿って折り畳むことによって形成され、同じ長さの側縁部が継ぎ合わされることにより、前記前側ベルトと前記後側ベルトを閉じる、着用可能物品。
【相違点2】
本件発明1では、「前記複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本明細書に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率が、92%以上であり、本明細書に記載の前記物品全体力測定法による伸張時周囲力が、6.0N以下であ」るのに対して、甲2発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点2について検討する。
甲2には、各ウエスト弾性要素26,27,28,29,30,31,32の断面積及び伸長倍率が採り得る値が範囲をもって記載され(【0037】、【0046】)、各ウエスト弾性要素の本数又はピッチを調整できることが記載されており(【0038】、【0047】)、甲2発明は、複数の弾性体の伸び率、密度及び長手方向間隔が調整され得るといえる。
しかし、甲2には、複数の弾性体の伸び率、密度、長手方向間隔、及び、有効長さを調整して、本件明細書等に記載の材料周長の測定法、及び物品全体力測定法により、ベルト利用率を92%以上とすることや、前記物品全体力測定法による伸張時周囲力を6.0N以下とすることは、記載も示唆もされておらず、ベルト利用率や伸張時周囲力に着目するところさえない。そのため、甲2発明において、ベルト利用率を92%以上とし伸張時周囲力を6.0N以下とする動機付けはない。
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
b 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定した発明であるから、上記aと同様に、甲1発明又は甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1~4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
したがって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700613