特許異議申立
2022-700146
吸収性物品
- 審判番号
- 2022-700146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-171317
- 登録番号
- 6922566
- 請求日
- 2022年02月18日
- 審決日
- 2023年07月31日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】王子ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人真田特許事務所
- 【権利者代理人】真田 有
- 【異議申立人】佐藤 惠一
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 筑波 茂樹
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(A61F) / P1651.121-YAA(A61F) / P1651.537-YAA(A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6922566号発明「吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6922566号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について、訂正することを認める。
特許第6922566号の請求項1~6、8~10に係る特許を維持する。
特許第6922566号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6922566号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成29年9月6日に出願され、令和3年8月2日にその特許権の設定登録がなされ、同年8月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 2月18日 :特許異議申立人 佐藤惠一(以下「申立人」
という。)による請求項1~10に係る特許
に対する特許異議の申立て
同年 6月 1日付け:取消理由通知
同年 8月 1日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年10月 3日 :申立人による意見書の提出
令和5年 2月 6日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 4月 7日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
なお、令和5年4月7日の訂正請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたところ、申立人から、意見等の提出はなかった。
第2 各甲号証
申立人が、特許異議申立書とともに提出した甲第1号証~甲第5号証及び令和4年10月3日の意見書とともに提出した甲第6号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」という。)は、次のとおりである。
甲1:特表2014-515981号公報
甲2:特開2009-61230号公報
甲3:特表2006-521166号公報
甲4:実願昭60-19254号(実開昭61-137607号)のマイクロフィルム
甲5:国際公開第2005/018694号及びその抄訳
甲6:特表平9-504206号公報
甲7:特開2017-12439号公報
第3 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年4月7日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
なお、本件訂正請求があったので、令和4年8月1日の訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「 高吸収性ポリマーを含む吸収性コアと、
前記吸収性コアを挟んで積層される2以上のシートとを備え、
前記吸収性コアに凹部が設けられ、
前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された、または、前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された接着部が設けられており、
前記吸収性コアの前記凹部が設けられた領域において、前記接着部と重畳する接着領域の方が、他の非接着領域よりも前記高吸収性ポリマーの含有量が少ない
吸収性物品。」
と記載されているのを、
「 高吸収性ポリマーを含む吸収性コアと、
前記吸収性コアを挟んで積層される2以上のシートとを備え、
前記吸収性コアに、長手方向に対して幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部と、前記幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部とによって格子形状をなす凹部が設けられ、
前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された、または、前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された、複数の接着部が断続的に設けられており、
前記吸収性コアの前記凹部が設けられた領域において、前記接着部と重畳する接着領域の方が、他の非接着領域よりも前記高吸収性ポリマーの含有量が少ない
吸収性物品。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に
「 前記接着部は、一定間隔をあけて設けられている
請求項1~7の何れか1項に記載された吸収性物品。」
と記載されているのを、
「前記複数の接着部は、前記凹部において前記第一傾斜部と前記第二傾斜部との各交点に設けられるとともに、前記交点どうしの間に一定間隔をあけて設けられている請求項1~6の何れか1項に記載された吸収性物品。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1~8の何れか1項に記載された吸収性物品。」
と記載されているのを、
「請求項1~6および8の何れか1項に記載された吸収性物品。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9の何れか1項に記載された吸収性物品。」
と記載されているのを、
「請求項1~6,8および9の何れか1項に記載された吸収性物品。」
に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項2~10は、訂正事項1に係る本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているところ、本件訂正前の請求項1~10は、一群の請求項であり、訂正事項1~5の訂正は、当該一群の請求項〔1~10〕に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「凹部」について、「長手方向に対して幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部と、前記幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部とによって格子形状をなす」と特定することで、「凹部」をより具体的に限定するものである。
また、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「接着部」について、接着部が「複数」であり、かつ「断続的に」設けられることを特定することで、「接着部」をより具体的に限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
凹部が、「長手方向に対して幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部と、前記幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部とによって格子形状をなす」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0046】の「凹部40には、長手方向に対して、幅方向一方(例えば右方)に傾斜して交差する複数の第一傾斜部41(一箇所のみに符号を付す)と、幅方向他方(例えば左方)に傾斜して交差する複数の第二傾斜部42(一箇所のみに符号を付す)とが設けられている。すなわち、これらの傾斜部41,42(外挿線)は、平面視で格子形状(グリッドパターン)をなす。」等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。
接着部が「複数」であり、かつ「断続的に」設けられることは、本件特許明細書等の請求項7(訂正前の請求項7)の「前記接着部は、断続的に設けられている」、段落【0055】の「接着部50が連続して複数個設けられる」、段落【0056】の「ドット状の接着部50が、一定間隔をあけて断続的に設けられている。」等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項8の「接着部」について、「前記接着部は、一定間隔をあけて設けられている」と特定されていたのを、接着部が「複数」であること、また、接着部の一定間隔をあけて設けられている態様について「前記凹部において前記第一傾斜部と前記第二傾斜部との各交点に設けられるとともに、前記交点どうしの間に」設けられていることを特定することで、接着部の構成をより具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項8が「請求項1~7」を引用していたところ、訂正事項2で請求項7を削除することに伴い、請求項7を引用することができなくなったことから、請求項7を引用しないものとするものであるから、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。また、複数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものでもあるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3のうち、接着部が「複数」であり、「前記凹部において前記第一傾斜部と前記第二傾斜部との各交点に設けられるとともに、前記交点どうしの間に」一定間隔をあけて設けられている点については、本件特許明細書等の段落【0055】に「連続して複数個設けられた接着部50が交差するように配置される」、「本実施形態では、格子形状をなす凹部40の交点に接着部50が設けられている。また、格子形状に含まれる各格子の一辺をなす第一傾斜部41及び第二傾斜部42に接着部50が設けられている。ここでは、各格子の一辺に2点の接着部50が設けられている。」等の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。
訂正事項3のうち、引用する請求項を「請求項1~6」に訂正する点については、訂正前の請求項8が「請求項1~7」を引用していたところ、請求項7を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、発明特定事項をより具体的に限定するものであり、また、引用する請求項の数を減少するものであるから、カテゴリーや対象を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(4)訂正事項4、5について
ア 訂正の目的
訂正事項4、5は、訂正前の請求項9、10が請求項7を含む複数項を引用していたところ、訂正事項2で請求項7を削除することに伴い、請求項7を引用することができなくなったことから、請求項7を引用しないものとするものである。
そうすると、訂正事項4、5は、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項4、5は、複数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4、5は、訂正前の請求項9、10が請求項7を含む複数項を引用していたところ、請求項7を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4、5は、引用する請求項の数を減少するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について、訂正することを認める。
第4 本件発明
上記「第3」で説示したように本件訂正請求は認められるから、本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~6、8~10に係る発明(以下、請求項に付した番号に応じて「本件発明1」・・・「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
高吸収性ポリマーを含む吸収性コアと、
前記吸収性コアを挟んで積層される2以上のシートとを備え、
前記吸収性コアに、長手方向に対して幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部と、前記幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部とによって格子形状をなす凹部が設けられ、
前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された、または、前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された、複数の接着部が断続的に設けられており、
前記吸収性コアの前記凹部が設けられた領域において、前記接着部と重畳する接着領域の方が、他の非接着領域よりも前記高吸収性ポリマーの含有量が少ない
吸収性物品。
【請求項2】
前記シートが、
前記吸収性コアの肌対向面側を被覆する上側コアラップシートと、
前記吸収性コアの肌非対向面側を被覆する下側コアラップシートとを有し、
前記上側コアラップシートと前記下側コアラップシートとが、前記接着部において互いに接着される
請求項1に記載された吸収性物品。
【請求項3】
前記シートが、
前記吸収性コアの肌対向面側の表面に配置されるトップシートと、
前記吸収性コアの肌非対向面側の表面に配置されるバックシートとを有し、
前記トップシートと前記バックシートとが、前記接着部において互いに接着される
請求項1または2に記載された吸収性物品。
【請求項4】
前記接着部において、前記シートが超音波溶着されている
請求項1~3の何れか1項に記載された吸収性物品。
【請求項5】
前記凹部が溝状に設けられている
請求項1~4の何れか1項に記載された吸収性物品。
【請求項6]
前記凹部が肌対向面側に少なくとも設けられている
請求項1~5の何れか1項に記載された吸収性物品。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記複数の接着部は、前記凹部において前記第一傾斜部と前記第二傾斜部との各交点に設けられるとともに、前記交点どうしの間に一定間隔をあけて設けられている
請求項1~6の何れか1項に記載された吸収性物品。
【請求項9】
前記凹部は、前記吸収性コアが圧搾された圧搾部である
請求項1~6および8の何れか1項に記載された吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収性コアにおいて、前記凹部が設けられた凹部領域の方が、他の非凹部領域よりも前記高吸収性ポリマーの含有量が少ない
請求項1~6,8および9の何れか1項に記載された吸収性物品。」
第5 取消理由の概要
取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
記
・請求項1、2、4~6、8~10について、甲1及び甲7
・請求項3について、甲1、甲3及び甲7
第6 各甲号証の記載
1 甲1
甲1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付加。以下同様。)。
(1)甲1の記載事項
・「【請求項1】
支持シート(16)及びその上に支持された吸収性層(17)を備えた、吸収性物品の吸収性構造体(13)であって、
前記吸収性層(17)は、少なくとも超吸収性ポリマー材料及び任意でセルロース材料を有する吸収性材料(50)を含んでおり、
当該吸収性構造体(13)及び前記吸収性層(17)は、長手方向の寸法及び平均の長さ、横方向の寸法及び平均の幅、並びに、高さを有しており、
前記吸収性層(17)は、長手方向の軸と、これに対して垂直な横方向の軸と、を有しており、
前記吸収性層(17)は、前記長手方向の軸の一方の側において第1の長手方向に延在する側部(20)と、前記長手方向の軸の他方の側において第2の長手方向に延在する側部(20)と、を有しており、
前記吸収性構造体(13)及びその前記吸収性層(17)は、前記長手方向の寸法において順に設けられた、前方領域と、後方領域と、その間の股部領域と、を有しており、
前記吸収性層(17)は、少なくとも、前記第1の側部内に存在する第1の実質的に長手方向に延在するチャンネル(26)と、前記第2の側部に存在する第2の実質的に長手方向に延在するチャンネル(26)と、を有しており、
前記チャンネル(26)は、前記超吸収性ポリマー材料を実質的に包含せず、前記吸収性層(17)の前記高さを通して延在しており、
当該吸収性構造体(13)は、少なくとも部分的に、前記支持シート(16)上へ前記吸収性層(17)を固定化させるように、1つ以上の接着材料(40;60)を備えている、吸収性構造体。」
・「【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性構造体(13)を備えた、吸収性コア(7)であって、
当該吸収性構造体は、第1の吸収性構造体(13)であり、
当該吸収性コアは、
i)更なる支持シート(16’)と、ii)捕捉材料層(70)と、iii)第2の支持シート(16’)及び第2の吸収性層(17’)を含む第2の吸収性構造体(13’)と、から選択される、前記吸収性層(17)に隣接して存在する更なる材料
を備えており、
前記第2の吸収性層(17’)と前記第1の吸収性構造体の前記吸収性層(17)とは、第1の吸収性構造体の前記支持シート(16)と前記第2の支持シート(16’)との間に挟まれており、
任意で、前記第2の吸収性構造体(13’)は、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性構造体である、吸収性コア。」
・「【請求項13】
第1の構造体の前記支持シート(16)及び/又は前記第2の支持シート(16’)は、第1の吸収性構造体(13)及び/若しくは任意で前記第2の吸収性構造体(13’)若しくは存在する場合、捕捉材料層(70)の前記チャンネル(26及び/又は26’)内に、又は、前記チャンネル(26,26’)の一部内に折り畳まれており、
前記1つ以上の接着材料は、少なくとも前記チャンネル(26、26’)又はその一部内に存在しており、
前記支持シート(16;16’)は、前記1つ以上の接着材料によって、前記チャンネル(26、26’)内で互いに接着されている、請求項9又は12に記載の吸収性コア(7)。」
・「【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の吸収性構造体(13)又は吸収性コア(7)を備え、
特に、前記吸収性物品はおむつ(1)である、吸収性物品。」
・「【0008】
予想外であったが、発明者により、超吸収性ポリマー粒子を包含しない又は超吸収性ポリマー材料を包含しない特定の永続的チャンネルを提供することで、向上した液体移動、即ちより迅速な捕捉及び吸収性構造体全体におけるより効率的な液体吸収性が得られ、また、・・・」
・「【0034】
吸収性層(17)は、少なくとも、実質的に前記超吸収性ポリマー粒子を包含しない(例えば含まない)第1のチャンネル(26)及び第2のチャンネル(26)を含んでおり、前記チャンネル(26)は、吸収性層(17)の厚さ(高さ)に延在する。(偶発的に、機能性全体に影響を及ぼすわけではない、チャンネル内に非常に少量の超吸収性ポリマー粒子が存在する可能性があることを理解すべきである)。吸収性層(17)がセルロース誘導体又はセルロースを含む場合、いくつかの実施形態において、前記第1及び第2のチャンネル(26)は、更に、かかるセルロース誘導体/セルロース材料を包含しないことが好適であってもよい。」
・「【0042】
永続的チャンネル(26)は、前記吸収性材料(50)及び/又は前記チャンネル(26)、例えば前記吸収性層(17)を固定化させる、及び/又は前記支持シート(16)を前記チャンネル(26)又はその一部内に固定化させる、1つ以上の接着材料の提供によって得られてもよい。本発明の吸収性コア(7)は、特に、例えば図7及び図13に例示的に示されるように、チャンネルによる第1の支持シート(16)及び第2の支持シート(16’)の結合によって形成される永続的なチャンネルを含んでもよい。典型的には、チャンネルを通る支持シートを結合するためにグルーを使用し得るが、他の周知の手段によって、例えば超音波結合、又は熱結合によって結合することも可能である。支持層は、連続的に結合できる、又はチャンネルに沿って断続的に結合できる。」
・図2A「
[図:0001403613000001.jpg]
」
・図7「
[図:0001403613000002.jpg]
」
・図13「
[図:0001403613000003.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「支持シート(16)及び第2の支持シート(16’)との間に挟まれた吸収性層(17)を備えた、吸収性物品の吸収性構造体(13)であって、
前記吸収性層(17)は、少なくとも超吸収性ポリマー材料及び任意でセルロース材料を有する吸収性材料(50)を含んでおり、
当該吸収性構造体(13)及び前記吸収性層(17)は、長手方向の寸法及び平均の長さ、横方向の寸法及び平均の幅、並びに、高さを有しており、
前記吸収性層(17)は、長手方向の軸と、これに対して垂直な横方向の軸と、を有しており、
前記吸収性層(17)は、前記長手方向の軸の一方の側において第1の長手方向に延在する側部(20)と、前記長手方向の軸の他方の側において第2の長手方向に延在する側部(20)と、を有しており、
前記吸収性構造体(13)及びその前記吸収性層(17)は、前記長手方向の寸法において順に設けられた、前方領域と、後方領域と、その間の股部領域と、を有しており、
前記吸収性層(17)は、少なくとも、前記第1の側部内に存在する第1の実質的に長手方向に延在するチャンネル(26)と、前記第2の側部に存在する第2の実質的に長手方向に延在するチャンネル(26)と、を有しており、
各チャンネル(26)は、前記超吸収性ポリマー材料を実質的に包含せず、前記吸収性層(17)の前記高さを通して延在しており、
当該吸収性構造体(13)は、少なくとも部分的に、前記支持シート(16)上へ前記吸収性層(17)を固定化させるように、1つ以上の接着材料(40;60)を備えており、
前記支持シート(16;16’)は、前記1つ以上の接着材料によって、各チャンネル(26)内で互いに接着されている
吸収性物品。」
2 甲2
甲2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)甲2の記載事項
・「【0010】
第1実施形態の尿とりパッド1は、液透過性の表面シート2と、液不透過性又は撥水性で且つ透湿性の裏面シート3と、これら両シート2,3間に介在された吸水性シート4を具備している。吸水性シート4は、平面視で縦長の矩形形状を有し、その長手方向を尿とりパッド1の長手方向Lと一致させて、表面シート2と裏面シート3との間に配されている。
【0011】
吸水性シート4は、第1シート41、第2シート42、及びこれら両シート41,42間に接着剤により固着された吸水性樹脂粉末43を具備している。吸水性シート4は、フラッフパルプ(開繊したパルプ)繊維等の繊維を含んでいない、いわゆるパルプレス構造の吸収体である。第1シート41は吸水性シート4の肌当接面を形成しており、第2シート42は吸水性シート4の非肌当接面を形成している。吸水性樹脂粉末43は、尿等の体液を吸液・膨潤する顆粒状(粉末表面に多数凸凹がある)のポリマー微粒子であり、第1シート41と第2シート42との間に多数存在している。
尚、本明細書において、「肌当接面」は、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、「非肌当接面」は、着用時に下着側(着用者の肌側とは反対側)に向けられる面である。また、「長手方向」は、吸収性物品又は各種部材の長手方向に沿う方向であり、「幅方向」は、長手方向と直交する方向である。
【0012】
第1シート41と第2シート42との間には、吸水性樹脂粉末43の存在域44が複数形成されており、これら複数の存在域44は、それぞれ吸水性シート4の長手方向に延び且つ該吸水性シート4の幅方向に所定間隔を置いて並列に配されている。隣接する存在域44,44の間、及び吸水性シート4の幅方向両端部4a,4aは、吸水性樹脂粉末43の存在しない非存在域45となっている。即ち、第1実施形態においては、図3に示すように、吸水性シート4の長手方向の全長に亘って延びる、直線状の存在域44と非存在域45とが、吸水性シート4の幅方向に交互に配されており、且つ吸水性シート4の幅方向両端部4a,4aに非存在域45が位置している。存在域44は6箇所、非存在域45は7箇所存在している。非存在域45において、第1シート41と第2シート42とが接合されている。吸水性樹脂粉末43の吸液・膨潤によって存在域44が膨張しても、非存在域45は膨張しないため、この膨張差によって、吸収性シート4の湿潤状態においては、非存在域45は、吸水性シート4の長手方向に伸びる溝となり、排泄された体液の導液路として作用する。」
・「【0018】
非存在域45において、第1シート41と第2シート42とは接着剤やヒートシール等の接合手段により接合されている。接合手段として接着剤を用いる場合、接着剤は、第1シート41及び第2シート42の両方に塗布されていても良く、あるいはこれら両シート41,42のどちらか一方にのみ塗布されていても良い。接着剤としては、上述した吸水性樹脂粉末43の固着に使用可能な接着剤を用いることができる。」
・図2「
[図:0001403613000004.jpg]
」
・図3「
[図:0001403613000005.jpg]
」
(2)甲2発明
上記(1)を踏まえると、甲2には、次の発明が記載されている。
「第1シート41、第2シート42、及びこれら両シート41,42間に接着剤により固着されたポリマー微粒子である吸水性樹脂粉末43を具備している吸水性シート4であって、
第1シート41と第2シート42との間には、吸水性樹脂粉末43の存在域44が複数形成されており、これら複数の存在域44は、それぞれ吸水性シート4の長手方向に延び且つ該吸水性シート4の幅方向に所定間隔を置いて並列に配されており、隣接する存在域44,44の間は、吸水性樹脂粉末43の存在しない非存在域45となっており、
非存在域45において、第1シート41と第2シート42とは接着剤やヒートシール等の接合手段により接合されている
吸水性シート4。」
3 甲3
甲3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)甲3の記載事項
・「【0001】
本発明は、おむつ、失禁ガード、衛生ナプキン又はそれらの類似物品の如き吸収物品であって、物品が液体透過性上部表面を有しかつ吸収構造体を含み、さらに横方向及び縦方向を有し、吸収構造体が取得層及び少なくとも一つの第一貯蔵層を含み、前記第一貯蔵層がセルロース繊維、及び貯蔵層の全重量について計算すると少なくとも50重量%の超吸収材を含む吸収物品に関する。」
・「【0012】
一実施態様によれば、開口/凹所は吸収構造体の縦方向に沿って延びる。従って、開口/凹所は第一貯蔵層において縦方向溝を作る。かかる縦方向溝での一つの利点はそれらが吸収構造体の端部分に向かう方向の液体輸送を案内することである。」
・「【0035】
図4は本発明による吸収物品400の代替実施態様の横方向に延びる中央線Iに沿った横断面を示す。吸収物品400は物品400の使用中使用者の最も近くに横たわることを意図される液体透過性上部シート401、実質的に液体不透過性の下部シート402、及びそれらの間に封入される吸収構造体403を有する。吸収構造体403は多量の液体を迅速に受容できることを意図される取得層404、及び多量の液体を迅速に貯蔵できることを意図される第一貯蔵層405を含む。貯蔵層405は液体透過性上部シート401の最も近くに配置され、取得層404は下部シート402の最も近くに配置される。第一貯蔵層405は二つの縦方向に配置された開口/凹所407を有する。第一貯蔵層405は第一貯蔵層405の全重量について計算すると少なくとも50重量%の超吸収材を含有する繊維構造体である。・・・
【0036】
湿潤すると、かかる超吸収材は材料の全ての方向において強く膨張する。中空空間414は吸収構造体403の形状を変更せずに超吸収フォーム材料のための空間を膨張させる。液体透過性上部シート401及び下部シートは互いに接合される。層間の接触は開口/凹所が作られたときに貯蔵層405に作られた中空空間において得られる。好ましくは、それは熱的接合であるが、接着剤を使用して両層を接合することもできる。」
・図4「
[図:0001403613000006.jpg]
」
(2)甲3発明
上記(1)を踏まえると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という)が記載されている。
「使用中使用者の最も近くに横たわることを意図される液体透過性上部シート401、実質的に液体不透過性の下部シート402、及びそれらの間に封入される吸収構造体403を有し、
吸収構造体403は二つの縦方向に配置された開口/凹所407を有する第一貯蔵層405を備え、第一貯蔵層405は、超吸収材を含有する繊維構造体であり、
液体透過性上部シート401及び下部シートは互いに接合され、それは熱的接合であるか、接着剤を使用して両層を接合する吸収物品400。」
4 甲4
甲4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・明細書第3ページ第18行~第4ページ第15行
「第2図に示すように、おむつは、透液性表面シート1と不透液性裏面シート2との間に吸収体3を介在固定してある。吸収体3の幅方向両端から外側へ延出する表裏面シート1,2の間にはおむつの長手力向に伸縮する弾性脚バンド4を、また吸収体3の縦方向端から外側へ延出する表裏面シート1,2の間には弾性腰バンド5をそれぞれ介在固定し、後方腰回りの幅方向端にはこれらと前方腰回りとを連結する締結テープ6を付設してある。
さらに弾性腰バンド5についていえば、これは、第2図、第3図(A)、第4図、第5図に示すように、断続的接着部7は、該バンドの長手方向に長くて断続的に、しかもその幅方向に間隔をおいて数列に並ぶとともにその幅方向外端へ向うにつれてその長手力向間隔が大きくなるように、また連続的接着部8はその長手方向に連続線状になるように表裏面シート1,2にそれぞれ接着してある。」
・明細書第7ページ第9行~17行
「第2に、弾性腰バンド5の断続的接着部7は、その幅方向外端に向うにつれてその長手方向間隔が大きくなっているので、換言すれば、該各接着部の間に位置し自由に伸縮する各非接着部がその幅方向外端に向うにつれて広くなっているので、着用者の腰回りに対する密着性を向上させるとともに圧迫力を調節し、そのため比較的長い時間にわたっておむつを着用しても腰回りに対する不快な圧迫感を与えることがない。」
・第2図及び第3図「
[図:0001403613000007.jpg]
」
5 甲5
甲5には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、記載事項を日本語翻訳文で示す。
・第9ページ第10行~第19行
「図4は、本発明の別の例示的な実施形態を示し、バリア層302、カバー層304、およびSAP306を含む吸収性物品301を示している。SAPは、接着剤310を使用して、物品の外縁(図示せず)の周りのカバー層304に結合されているバリア層302上に直接存在する。
図5は、図4の吸収性物品301のバリア層302の上面図であって、ストライプ状に配置されたSAP306は、本発明の1つの例示的な実施形態を示している。明確化のため、カバー層304は示されていない。SAPのない領域319は、前述したように、改善された流体流れと低減されたゲルブロッキングを与えるために存在する。コアを使用しないため、より薄く、より快適な構造を得ることができる。」
・図4及び図5「
[図:0001403613000008.jpg]
」
6 甲6
甲6には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・第23ページ第15行~23行
「図5~7に代表的に示されるように、保持部分48の少なくとも一部が標的ゾーン53中に位置され、そして吸収剤構造32の境界を実質的に形成するように形成し得る。更に特別には、保持部分は第一の液体透過性キャリヤー層98と少なくとも第二のキャリヤー層100とを含むことができる。水感受性付着手段、例えば、水感受性接着剤102を含む機構が、キャリヤー層98と100を一緒に固定してそれらの実質的に付着されたゾーン104と多数の実質的に付着されていないゾーン106とを与える。実質的に付着されていないゾーン106は複数のポケット領域108を与え、そして超吸収材料の粒子の如き高吸収性材料110がポケット108内に配置されて吸収剤ラミネート112を与える。」
・図5及び図7「
[図:0001403613000009.jpg]
」
7 甲7
甲7には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。」
・「【0008】
・・・吸収コアの液透過性シート側の面から貫通孔を介して長手方向溝部に到達した排泄液は、前記長手方向溝部に沿って長手方向に拡散されながら、前記長手方向溝部の側壁部から吸収されるため、吸収体の長手方向における広範囲の領域から排泄液を吸収することができ、吸収性物品としてより優れた吸収性(特に、吸収効率)及びリウェット性を得ることができる。
・・・」
・「【0022】
・・・吸収コアが第2の面に幅方向溝部を備えているので、前記吸収コアの第1の面に供給された排泄液が、前記貫通孔及び前記長手方向溝部を介して前記幅方向溝部に流れ込み、さらに、前記幅方向溝部を流れて、吸収体の幅方向に拡散するため、着用者から排出された排泄液を、吸収コアの広範囲の領域から前記吸収コアに吸収させることができる。その結果、吸収性物品としてより一層優れた吸収性やリウェット性を発揮することができる。」
・「【0052】
図1~図8に示すように、第1実施形態に示される吸収性物品1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、液透過性シート3と、液不透過性シート5と、液透過性シート3及び液不透過性シート5の間の吸収体7と、吸収体7及び液不透過性シート5の間の拡散シート13とを含む。
吸収体7は、液透過性シートに対向する第1面と、液不透過性シートに対向する第2面とを有していて、さらに、肌側面15(第1の面)及び着衣側面17(第2の面)を有する吸収コア9と、吸収コア9の肌側面15を覆うコアラップ11と、吸収コア9の着衣側面17を覆うコアラップ11’とを備えている。
そして、吸収コア9は、着衣側面17から吸収体コア9の厚さ方向Tに窪んだ、長手方向Lに延びる溝部であって、吸収コア9の平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域19aから成る長手方向溝部19と、着衣側面17から厚さ方向Tに窪んだ、幅方向Wに延びる溝部であって、吸収コア9の平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域21aから成る幅方向溝部21とを備えている。
なお、図2~図4に示すように、長手方向溝部19及び幅方向溝部21は、それぞれ吸収コア9の着衣側面17に複数本ずつ配置されていて、さらに、複数本の幅方向溝部21は、それぞれ複数本の長手方向溝部19と交差し、それらを連結するように配置されている。」
・図3及び図4
「
[図:0001403613000010.jpg]
」
第7 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
後者の「超吸収性ポリマー材料」は、その機能及び構造からみて、前者の「高吸収性ポリマー」に相当し、以下同様に、「支持シート(16)及び第2の支持シート(16’)」は「2以上のシート」に、「吸収性層(17)」は「吸収性コア」に、「チャンネル(26)」は「凹部」にそれぞれ相当する。
後者の「支持シート(16)及び第2の支持シート(16’)との間に挟まれた吸収性層(17)」は、吸収性層(17)が支持シート(16)及び第2の支持シート(16’)との間に挟まれていることを意味することから、前者の「前記吸収性コアを挟んで積層される2以上のシートとを備え」る構成に相当する。
後者の「吸収性層(17)」が「チャンネル(26)」を有していることを踏まえれば、後者の「前記支持シート(16;16’)は、各チャンネル(26、26’)内で互いに接着されている」構成は、前者の「前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された」構成に相当するとともに、選択肢の一つとして当該構成を含む、前者の「前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された、または、前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された」構成にも相当する。
後者の「前記支持シート(16;16’)は、」「各チャンネル(26、26’)内で互いに接着されている」構成と前者の「複数の接着部が断続的に設けら」る構成とは、「接着部が設けられ」る構成である点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「高吸収性ポリマーを含む吸収性コアと、
前記吸収性コアを挟んで積層される2以上のシートとを備え、
前記吸収性コアに凹部が設けられ、
前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された、または、前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された、接着部が設けられている
吸収性物品。」
[相違点1]
凹部について、本件発明1では「長手方向に対して幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部と、前記幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部とによって格子形状をなす」ものであるのに対し、甲1発明では、実質的に長手方向に延在するものである点。
[相違点2]
凹部に設けられた接着部及び凹部が設けられた領域について、本件発明1は、「複数の接着部が断続的に設けられ」たものであり、「前記吸収性コアの前記凹部が設けられた領域において、前記接着部と重畳する接着領域の方が、他の非接着領域よりも前記高吸収性ポリマーの含有量が少ない」構成であるのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
イ 検討
相違点1について検討する。
吸収性コアに設ける凹部について、長手方向に対して幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部と、前記幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部とによって格子形状をなすものとすることは、以下に示すように、いずれの証拠にも記載も示唆もされていない。
甲2は、複数の存在域44は、それぞれ吸水性シート4の長手方向に延び且つ該吸水性シート4の幅方向に所定間隔を置いて並列に配されており、隣接する存在域44,44の間は、吸水性樹脂粉末43の存在しない非存在域45となっていることを開示する。しかしながら、当該非存在域45は格子形状をなすものではない。
甲3は、吸収構造体403は二つの縦方向に配置された開口/凹所407を有することを開示する。しかしながら、当該開口/凹所407は、格子形状をなすものではない。
甲4には、吸収性コアに設ける凹部に関する開示はない。
甲5は、SAP、すなわち超吸収ポリマーが、ストライプ状に配置され、SAPのない領域319が、改善された流体流れを与えることを開示する。しかしながら、当該SAPのない領域319は、格子形状をなすものではない。
甲6は、第一の液体透過性キャリヤー層98と第二のキャリヤー層100が実質的に付着されたゾーン104と多数の実質的に付着されていないゾーン106とを与え、実質的に付着されていないゾーン106は複数のポケット領域108を与え、超吸収材料の粒子の如き高吸収性材料110がポケット領域108内に配置されることを開示する。そして、図5から長円状のポケット領域108が千鳥状に配置されていることが看取でき、当該長円状のポケット領域108の以外の部分が実質的に付着されていないゾーン106であると理解できる。しかしながら、図5から、当該実質的に付着されていないゾーン106は、格子形状をなすものではない。
甲7は、吸収コア9が、長手方向溝部19と幅方向溝部21を備えることを開示する。当該長手方向溝部19と幅方向溝部21は、格子形状を形成するものであるが、長手方向に対して幅方向一方及び幅方向他方に傾斜するものではない。
そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~6、8~10について
本件発明2~6、8~10は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである。そうすると、本件発明1が、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2~6、8~10についても同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲1を主引例とする新規性の理由について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1で相違する。また、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1及び本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである本件発明2~6、8~10は、甲1発明ではない。
(2)甲2を主引例とする新規性及び進歩性の理由について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1(第7の1(1)参照)と同じ点で相違する。また、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1及び本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである本件発明2~6、8~10は、甲2発明ではない。
また、相違点1については、第7の1(2)で説示したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件発明1及び本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである本件発明2~6、8~10は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲3を主引例とする新規性及び進歩性の理由について
本件発明1と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1(第7の1(1)参照)と同じ点で相違する。また、相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1及び本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである本件発明2~6、8~10は、甲3発明ではない。
また、相違点1については、第7の1(2)で説示したのと同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件発明1及び本件発明1の全ての発明特定事項を含み、さらに限定を付加したものである本件発明2~6、8~10は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)明確性要件違反の理由について
ア 特許異議申立理由の概要
本件発明1に規定された「前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された接着部」という用語の意味が不明確である。
本件特許明細書等には、上側コアラップシート31と下側コアラップシート32(ないしトップシート33とバックシート34)とが互いに接着されるという用語が、高吸収性ポリマーなどを介在する場合を含むことが記載されているのみで、具体的にどのような状態が「前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された接着部」に該当するのか、その定義となる記載は一切見当たらず、当業者といえども、高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着されたとは、具体的にどのような状態を指しているのか(例えばシート同士が向き合っている面に接着剤が塗られていたら足るのか、介された高吸収性ポリマーや繊維材料がどのような状態になっているのか)理解することができない。
イ 検討
本件発明1の「前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された」との記載は、日本語として明確であり、高吸収性ポリマーを含む層を介してシートが互いに接着されたものとして、技術的にも明確に理解することができる。また、本件特許明細書等に、上記本件発明1の記載に反する定義が記載されている等、本件発明1の記載を不明確とするような特段の事情も見いだせない。
よって、本件発明1~6、8~10は、明確である。
申立人は、特許異議申立理由において、上記アのとおり、シート同士が向き合っている面に接着剤が塗られていたら足るのか、介された高吸収性ポリマーや繊維材料がどのような状態になっているのかなど、具体的にどのような状態を指しているのか理解することができないと主張する。
しかしながら、本件発明1は、シートが高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着されたことを規定しているのであって、その際の、シート同士の面に接着剤が塗られているか否か、高吸収性ポリマーや繊維材料がいかなる状態であるかを具体的に特定することを要するものではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)サポート要件違反の申立理由
ア 特許異議申立理由の概要
(ア) 本件特許明細書の段落【0005】には、「吸収性コアに設けられた凹部を維持することができる吸収性物品を提供することを目的の一つとする」と記載されるが、なぜ凹部を維持しなければならないか理解できない。然るところ、段落【0042】の記載から、本件発明の課題は、吸収性コアに設けられた凹部を維持することをもって、吸収性物品のフィット性や吸収力及び保持力を高めることであると理解するのが合理的である。しかしながら、そのような課題解決は単に凹部が存在することのみによって達成し得るはずはなく、その配置や本数、パターン形状、長さなどに大きく依存することは自明である。
現に、段落【0046】~【0047】から、図1で示されるような形状(具体的には、平面視で格子形状(グリッドパターン)が吸収体(吸収性コア)の全域にわたって形成されている状態)を採用することが必要であることが読み取れる。
本件発明の凹部を採用することにより課題が解決できる原理は、導液路として作用する溝状の凹部により、体液が吸水性シート4の前後に拡散されるようになって液拡散性と吸収効率を向上させるというものであるから、吸収性コアに形成される凹部の配置や本数、パターン形状、長さや凹部の断面形状や深さに大きく依存するであろうことが容易に想像でき、これらに関して規定がなされていない本件発明の構成のみで、その課題を解決できると認識し得るとは到底考えられない。
(イ) さらに、本件発明は、「前記シートが高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された接着部」を含む態様もその権利範囲に含むところ、液体を吸うことで高吸収性ポリマーは大きく膨張し、凹部の形状が原型をとどめないほどに大きく変化することが容易に予測でき、凹部を維持することが極めて困難になるから、当該構成を採用する場合において、本件発明の技術的課題を解決できると認識し得ないことがより一層明らかといえる。
イ 検討
本件特許明細書の段落【0005】の発明が解決しようとする課題の欄には「本件は、吸収性コアに設けられた凹部を維持することができる吸収性物品を提供することを目的の一つとする。」と記載されている。
そして、本件発明1では「前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが互いに直接接着された、または、前記吸収性コアの前記凹部において前記シートが前記高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された、複数の接着部が断続的に設けられており」と規定されており、段落【0007】の「本件で示す吸収性物品によれば、吸収性コアの凹部において設けられる接着部によって、凹部を維持することができる。」と記載から、本件発明が凹部において設けられる接着部によって、解決しようとする課題を解決しているものといえる。
よって、本件発明1~6、8~10は、発明の詳細な説明に記載したものである。
申立人は、特許異議申立理由において、上記ア(ア)のとおり、本件発明の課題は、吸収性物品のフィット性や吸収力及び保持力を高めるということであると主張する。
しかしながら、本件特許明細書に記載された発明が解決しようとする課題は段落【0005】に記載されたとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人は、特許異議申立理由において、上記ア(イ)のとおり、本件発明1が選択的に含む「シートが高吸収性ポリマーを含む層を介して互いに接着された接着部」との構成では、液体を吸った高吸収性ポリマーが膨張し、凹部を維持することが困難になるから、課題を解決できないと主張する。
しかしながら、高吸収性ポリマーが膨張するとしても、接着部を設ける本件発明では、接着部を設けないものに比べて、凹部を維持できることは明らかであって、課題を解決できないものとはいえない。そうすると、申立人の上記主張も採用できない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~6、8~10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~6、8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項7に係る特許については、本件訂正請求により削除されたから、請求項7に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700146