特許異議申立
2024-700341
カバードステントおよびステントデリバリーシステム
- 審判番号
- 2024-700341
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-036338
- 登録番号
- 7363054
- 請求日
- 2024年04月12日
- 審決日
- 2025年09月18日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日本ゼオン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人有我国際特許事務所
- 【異議申立人】林 法子
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 栗山 卓也
- 審判官 麻川 倫広
- 分類
- P1651.113-ZAA(A61F) / P1651.121-ZAA(A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7363054号発明「カバードステントおよびステントデリバリーシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7363054号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第7363054号の請求項1、3に係る特許を取り消す。
特許第7363054号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7363054号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成31年 2月28日の出願であって、令和 5年10月10日にその特許権の設定登録がされ、同年10月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年 4月12日 :特許異議申立人林法子(以下「申立人」とい
う。)による請求項1~3に係る特許に対す
る特許異議の申立て
同 年 7月 1日付け:取消理由通知書
同 年 8月30日 :特許権者による訂正請求書の提出
同 年 9月 5日 :特許権者による意見書の提出
同 年 9月19日付け:訂正拒絶理由通知書
同 年10月24日 :特許権者による意見書及び手続補正書(方
式)の提出
同 年12月 5日 :申立人による意見書の提出
令和 7年 3月 5日付け:取消理由通知書(決定の予告)
当審は、上記取消理由通知書(決定の予告)において、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和 6年 8月30日提出の訂正請求書による訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「径方向外側への拡張変形が可能な円筒部と、
前記円筒部の周面を覆うシリコーン樹脂製のコーティング膜と、を備え、
前記コーティング膜に潤滑剤としてフッ素化シリコーンオイルが塗布されており、
前記潤滑剤として塗布される前記フッ素化シリコーンオイルは、25℃における粘度が300~3000cPのフッ素化シリコーンオイルであることを特徴とするカバードステント。」と記載されているのを、
「径方向外側への拡張変形が可能な円筒部と、
前記円筒部の周面を覆うシリコーン樹脂製のコーティング膜と、を備えるカバードステントであって、
前記コーティング膜に潤滑剤としてフッ素化シリコーンオイルが塗布されており、
前記潤滑剤として塗布される前記フッ素化シリコーンオイルは、25℃における粘度が350~1000cPのフッ素化シリコーンオイルであり、前記カバードステントの周面に前記潤滑剤を塗布する際の作業性を向上させることを特徴とするカバードステント。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載の」と記載されているのを、
「請求項1に記載の」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~3について、請求項2~3は、直接ないし間接的に、本件訂正により訂正される請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1~3について請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正後の請求項1に含まれる「前記カバードステント」との関係で、請求項1に係る発明の対象である「カバードステント」を「前記カバードステント」より前に記載して、記載の整合を図ることで請求項1の記載を明確にするとともに、フッ素化シリコーンオイルの25℃における粘度の範囲を「300~3000cP」から「350~1000cP」へと限定し、さらに、潤滑剤として塗布されるフッ素化シリコーンオイルの作用を「前記カバードステントの周面に前記潤滑剤を塗布する際の作業性を向上させる」と特定することで請求項1に係る発明を減縮する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、単に記載の整合を図るものであるとともに、フッ素化シリコーンオイルの25℃における粘度の上記限定については、願書に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0046】の「フッ素化シリコーンオイルは、例えば、25℃における粘度が300~3000cPのものが好ましく、350~1000cPのものが特に好ましい。」との記載に、潤滑剤として塗布されるフッ素化シリコーンオイルの作用の具体的な特定については、本願明細書の段落【0013】の「本発明に係るカバードステントによれば、コーティング膜に潤滑剤として塗布されるフッ素化シリコーンオイルに粘度300~3000cPのフッ素化シリコーンオイルを用いることにより、小さなカバードステントの周面に潤滑剤を均一に塗布することが容易となり、カバードステントに潤滑剤を塗布する作業性を向上させることが可能となる。」、段落【0046】の「過度に高い粘度を有するフッ素化シリコーンオイルは、その高い粘度のために小さなカバードステント100の外周面に均一に塗布することが容易ではなく、カバードステント100の外周面に塗布する際の作業性を更に考慮した場合には、適切な粘度のフッ素化シリコーンオイルを選択することが望ましい。」及び段落【0071】の「本発明の実施の形態におけるカバードステント100は、コーティング膜104に潤滑剤106として塗布されるフッ素化シリコーンオイルに25℃における粘度が300~3000cPのフッ素化シリコーンオイルが用いられることから、小さなカバードステント100の周面に潤滑剤106を均一に塗布することが容易となり、カバードステント100に潤滑剤106を塗布する作業性を向上させるものになっている。」との各記載に、基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、本願明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項1の記載を引用するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2のいずれか1項の記載を引用するものであるところ、請求項1の記載を引用するものに限定して、訂正前の請求項3が引用する請求項2との引用関係を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第5項に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、上記アのとおりであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する第126条第6項に適合する。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、それらをまとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
径方向外側への拡張変形が可能な円筒部と、
前記円筒部の周面を覆うシリコーン樹脂製のコーティング膜と、を備えるカバードステントであって、
前記コーティング膜に潤滑剤としてフッ素化シリコーンオイルが塗布されており、
前記潤滑剤として塗布される前記フッ素化シリコーンオイルが、25℃における粘度が350~1000cPのフッ素化シリコーンオイルであり、前記カバードステントの周面に前記潤滑剤を塗布する際の作業性を向上させることを特徴とするカバードステント。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
太径部と、前記太径部より遠位端側に配置されている細径部とを有するインナーシャフトと、
前記インナーシャフトが内挿可能な管形状を有し、前記細径部を覆う第1の位置と前記細径部を露出させる第2の位置との間で、前記インナーシャフトに対して軸方向に相対移動可能なアウターシースと、
前記細径部に挿入され、前記細径部と前記第1の位置に配置された前記アウターシースとの間に収容されている、請求項1に記載のカバードステントとを、備えることを特徴とするステントデリバリーシステム。」
第4 取消理由の概要
本件特許に対して、当審が令和 7年 3月 5日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)は、次の理由を含むものである。
1 取消理由1(新規性)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由2(進歩性)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
3 取消理由3(進歩性)
本件発明3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2、4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
[証拠方法]
甲第1号証:特表2016-515008号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:NuSil社のMED-400のカタログ,NuSil(ヌシ
ル社),2014年 5月15日改訂(以下「甲2」とい
う。)
甲第4号証:特表2003-518190号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2017-176666号公報(以下「甲5」という。)
第5 当審の判断
1 甲各号証の記載、甲1発明
(1)甲第1号証
甲1には、次の事項が記載されている。
ア「【0012】
図1は、一実施形態によるステント100の側面図である。例示の実施形態に示されるように、ステント100は、1つ以上の編まれた、ないしは別の方法で織られたストランド要素112(又はストランド112)からなる足場構造110を含んでよい。本明細書で使用されるとき、編組は、組み合わせパターンで配置された(例えば編まれた)1つ以上のストランド112を包含する。足場構造110は、近位端102、遠位端104、及び足場構造110のほぼ円筒形状によって形成される内腔101を有する、ほぼ円筒形状を画定し得る。内腔101は、近位端102と遠位端104との間を長手方向(長手方向軸線ALに沿った方向)に延在し得る。ステント100は、足場構造110に結合したカバー130と、縫合糸135と、弁150と、を更に含んでよい。」
イ「【0016】
図1のステント100は、足場構造110に結合したカバー130を更に含む。カバー130は、ステント100の内部を画定し得る。カバー130は、エラストマー、ポリマーであってよく、又は、当該技術分野において既知の任意の他の材料から構成されてよい。いくつかの実施形態では、カバーはシリコーンを含んでよく、一方特定の実施形態では、カバーはシリコーンのみから構成されてよい。」
ウ「【0018】
いくつかの実施形態では、カバー130は、複数のサブパーツ又は層を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、カバー130は、二部式デザインであってよい。かかる二部式カバーは、足場構造110を封入するベースカバー、及び、第1カバーが硬化した後に適用され得る第2カバーから構成されてよい。特定の実施形態では、第2カバーは、ステント100の外径のみに適用され得、第1カバー層に化学的に結合されてよい。例えば、ステントは、TSP-8021などの医療用グレードのシリコーンからなる第1層と、特にNusil MED-6670などの低摩擦シリコーンからなる外径に適用される第2層と、を備えるカバーを有してよい。別の実施形態では、第2層はパリレンを含んでよい。多層カバーは、一次層が弾性又は弾力性をステントに付与し、一方第2の外部層が外径に沿って摩擦を低減するように、構成されてよい。任意の層に任意の代表的な材料を使用することは、本開示の範囲内である。
【0019】
ステント100の外径上に特に低摩擦のカバー130を利用する実施形態では、外側カバーは、ステントのカテーテル内への充填、及び/又は、ステント100を納めるのに必要なカテーテルの寸法を小さくすることが、より容易に可能になるように構成され得る。具体的には、上で開示されるNusil MED-6670などの低摩擦外部層は、カテーテルとステントとの間の摩擦係数を、一部の用途では50%も低減できる。」
エ「【0020】
更に、Nusil MED-400などの追加の潤滑剤は、例えば、システムのエルゴノミクスを向上させるために利用でき、ステント100をカテーテル内により容易に充填、又はカテーテルからより容易に展開させる。いくつかの実施形態では、MED-400などのフッ素化ポリマーを含む、シリコーン潤滑剤が使用できる。フッ素化を利用すると、潤滑剤の一部のシリコーンエラストマーへの溶解性を低下させることができ、そのためフッ素化潤滑剤を使用することで、潤滑剤が経時的にシリコーンベース内に溶解する傾向を低減できる。」
オ「【0039】
…ループ402の形状及びデザインは、ステント100が展開されたときに体腔に作用する、ステント100の膨張力を分散できる。例えば、丸型形状のループ402は、ステント100の遠位端104が接する体内組織への外傷を減らすように構成できる。」
カ 上記エの「Nusil MED-400などの追加の潤滑剤」との記載における「追加の潤滑剤」は、上記ウの記載を参照すれば、ステント100のカバー130に追加的に塗布する潤滑剤を意味する。
キ 図1「
[図:0001432022000001.jpg]
」
上記ア~キを総合し、また、特に上記エの記載に基づき、甲1に記載されたシリコーン潤滑剤はMED-400であることを踏まえれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「ほぼ円筒形状を画定する足場構造110と、
足場構造110に結合し、エラストマー又はポリマーであってシリコーンを含むか又はシリコーンのみから構成されるカバー130と、
カバー130に塗布するシリコーン潤滑剤と、
を含み、
カテーテルから展開させたときに膨張するステント100であって、
当該潤滑剤は、MED-400である
ステント100。」
(2)甲第2号証
甲2には、次の事項が記載されている(付記した訳文は、申立人が特許異議申立書に添付した甲第2-1号証の記載に基づいて当審が作成した。)。
ア「MED-400 SILICONE FLUID」(第1ページ)
(MED-400 シリコーンオイル)
イ「・A clear liquid trifluoroprophylmethylsiloxane」
・Available in standard viscosities of: 350cP, 1,000cP, and 12,500cP.」(第1ページの「DESCRIPTION」の欄)
(・透明な液体のトリフルオロプロピルメチルシロキサン
・以下の標準粘度で入手可能:350cP、1,000cP、及び12,500cP)
(3)甲第4号証
甲4には、次の事項が記載されている。
ア「【0097】
本発明の具体例によれば、適切なフッ化シロキサンには、約200から約20,000までの重量平均分子量を有するもの、及び/又は25℃で測定されるように、約100から約100,000cPまでの粘度を有するものが含まれる。しかし、これらの範囲の外の分子量及び/又は粘度を有するフッ化シロキサンを用いることもできる。」
イ「【0098】
適切なフッ化シロキサンには、例えば、GE社(ニューヨーク州、ウォーターフォード)から入手できる、フルオロプロピル流体FF157,150-10M並びに同様の生成物;NuSil社(カリフォルニア州、カーピンテリア)から入手できる、MED-400、MED-420及びMED-460及び同様の生成物のようなMEDシリーズの生成物;及びUCT社〔ペンシルベニア州、ビストール(Bistol)〕から入手できる、PS181、PS182、PS1836、PS184.5、及びPS187及び同様の生成物のようなPSシリーズの生成物が含まれる。MED-400生成物は100%のフッ化シロキサンとされている;MED-420生成物はフルオロシロキサンとポリジメチルシロキサンとの共重合体とされており、その約20モル%がフルオロシロキサンである;及びMED-460生成物はフルオロシロキサンとポリジメチルシロキサンとの共重合体とされており、その約60モル%がフルオロシロキサンである。」
(4)甲第5号証
甲5には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
第1の外径を有する第1部分と、前記第1部分の遠位端に接続しており前記第1の外径より小さい第2の外径を有する第2部分と、を有するインナーシャフトと、
前記第1部分および前記第2部分に挿通されており、前記第2部分を覆う第1の状態から、前記第2部分を遠位端から露出させる第2の状態へ、前記インナーシャフトに対して軸方向に相対移動可能なアウターシースと、
前記第2部分と前記アウターシースとの間に収容される円筒部と、前記円筒部の近位端に接続しており前記軸方向からの力に対して前記円筒部より変形しやすい柔軟部と、を有するステントと、を有しており、
前記第1部分には、前記軸方向に沿って延びており、前記第2部分との接続位置に形成された前記第1部分の段差面および前記第1部分の外周面に開口し、前記柔軟部を収容する溝部が形成されていることを特徴とするステントデリバリーシステム。」
イ 図1「
[図:0001432022000002.jpg]
」
ウ 図3「
[図:0001432022000003.jpg]
」
2 取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について
(1)対比・判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「カテーテルから展開させたときに膨張するステント100」の「ほぼ円筒形状を画定する足場構造110」は、本件発明1の「径方向外側への拡張変形が可能な円筒部」に相当し、以下同様に、
「ほぼ円筒形状を画定する足場構造110」「に結合し、」「シリコーンを含むか又はシリコーンのみから構成されるカバー130」は、「前記円筒部の周面を覆うシリコーン樹脂製のコーティング膜」に、
「カバー130に」「シリコーン潤滑剤」「を塗布する」ことは、「前記コーティング膜に潤滑剤としてフッ素化シリコーンオイルが塗布されて」いることに、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「径方向外側への拡張変形が可能な円筒部と、
前記円筒部の周面を覆うシリコーン樹脂製のコーティング膜と、を備えるカバードステントであって、
前記コーティング膜に潤滑剤としてフッ素化シリコーンオイルが塗布されているカバードステント。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1は、「前記潤滑剤として塗布される前記フッ素化シリコーンオイルは、25℃における粘度が350~1000cPのフッ素化シリコーンオイルであり、前記カバードステントの周面に前記潤滑剤を塗布する際の作業性を向上させる」のに対し、甲1発明は、シリコーン潤滑剤がMED-400であり、その粘度が特定されていない点。
イ 判断
甲1発明において特定される「MED-400」は、甲2の記載(上記1(2)イ参照)によれば、350cP、1,000cP、及び12,500cPの3つの標準粘度で提供されるものであって、甲4の記載(上記1(3)ア参照)及び技術常識から、これらの粘度は、25℃での値として示されていると解される。
そして、コーティングにおいて、均一に塗布することは当然の課題であり、組成物の粘度は、概ね10000センチポイズを超えた値であると均一な塗布が困難になることが、本件特許に係る出願時の技術常識(必要であれば、特公平4-78661号公報の「このようにして得られた光硬化型組成物の粘度は被覆材として塗布面に均一に塗布するのに好ましい25℃で500~10,000センチポイズの範囲内にある。」(第5欄第15~18行)の記載及び特開平9-87363号公報の「分子量が小さすぎると脂環式エポキシ化合物の揮発性が高く、作業環境や塗布時の加工特性を著しく悪化させる。分子量が大きすぎると組成物の粘度が高くなるため、所定形状に均一に塗布することが困難となる。」(【0009】)の記載参照)であることを踏まえれば、上記3つの標準粘度のうち12,500cPのものは、コーティングの作業性等を考慮すれば、通常使用されない。
してみると、相違点1は実質的な相違点ではなく、本件発明1は甲1発明である。
仮に、上記相違点1に係る粘度の特定が実質的な相違点に当たるとしても、甲1発明のMED-400のうち、上記技術常識に照らして作業性を考慮して、350cP又は1000cPのものを採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本件発明1の奏する効果は、甲1発明及び甲2、4の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。
(2)小活
してみると、本件発明1は、甲1発明であるか、または、甲1発明、甲2、4の記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 取消理由3(進歩性)について
(1)対比・判断
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は、上記相違点1で相違するほか、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点2]
本件発明3は、
カバードステントに加えて、
「太径部と、前記太径部より遠位端側に配置されている細径部とを有するインナーシャフトと、
前記インナーシャフトが内挿可能な管形状を有し、前記細径部を覆う第1の位置と前記細径部を露出させる第2の位置との間で、前記インナーシャフトに対して軸方向に相対移動可能なアウターシースと、」「を、備え」、
カバードステントが「前記細径部に挿入され、前記細径部と前記第1の位置に配置された前記アウターシースとの間に収容されて」いる「ステントデリバリーシステム」
であるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲5(上記1(4)ア参照)に記載されているように、カバードステントを、太径部と細径部とを有するインナーシャフトと当該インナーシャフトを内挿可能なアウターシースとを用いて、これらの間に収容した構成により送達するステントデリバリーシステムは、本件特許の出願時の周知技術である。
そうすると、甲1発明に上記周知技術を適用することで、上記相違点2に係る本件発明3の事項とする程度のことは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本件発明3の奏する効果は、甲1発明及び甲2、4、5の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。
(2)小活
してみると、本件発明3は、甲1発明、甲2、4の記載事項、技術常識及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明であって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
また、本件発明1、3は、甲1発明、甲2、4の記載事項、技術常識及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1、3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、訂正前の請求項2は本件訂正により削除されたため、請求項2についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700341