特許異議申立
2021-700674
吸収性物品
- 審判番号
- 2021-700674
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-053595
- 登録番号
- 6811278
- 請求日
- 2021年07月13日
- 審決日
- 2023年03月10日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユニ・チャーム株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人一色国際特許事務所
- 【異議申立人】真角 侑子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-YAA(A61F) / P1651.121-YAA(A61F) / P1651.536-YAA(A61F) / P1651.537-YAA(A61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6811278号発明「吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6811278号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3~12〕について訂正することを認める。
特許第6811278号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6811278号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成31年3月20日の特許出願であって、令和2年12月16日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報令和3年1月13日発行)、その後、その請求項1~12に係る特許全てについて、令和3年7月13日に特許異議申立人真角侑子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和3年12月17日付けで取消理由が通知され、令和4年2月21日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和4年4月4日に申立人から意見書が提出され、令和4年9月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和4年11月14日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、この請求を「本件訂正請求」という。)がされ、この本件訂正請求について、申立人に意見を求めたが、意見書は提出されなかった。
なお、令和4年2月21日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6811278号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品。」
と記載されているのを、
「前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記幅方向において、前記固定部は、前記非固定部と重複する全領域に亘って設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記第1伸縮部材は、
前記幅方向の中央部に、前記第1伸縮部材が前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
前記幅方向において前記中央固定部の両外側に、前記非固定部を有している、
ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、
「展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記第1伸縮部材は、
前記幅方向の中央部に、前記第1伸縮部材が前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
前記幅方向において前記中央固定部の両外側に、前記非固定部を有している、
ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~8、11、12も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において、前記一対の端部固定部の間の全体に前記固定部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、
「展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において、前記一対の端部固定部の間の全体に前記固定部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~8、11、12も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方に設けられた前記第1伸縮部材の数が、前記一対の胴周り部のうちの前記一方に設けられた前記第2伸縮部材の数よりも多い、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項3又は4に記載の吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方に設けられた前記第1伸縮部材の数が、前記一対の胴周り部のうちの前記一方に設けられた前記第2伸縮部材の数よりも多い、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7、8、11、12も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方に設けられた前記第2伸縮部材の数が、前記一対の胴周り部のうちの前記一方に設けられた前記第1伸縮部材の数以上である、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項3又は4に記載の吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方に設けられた前記第2伸縮部材の
数が、前記一対の胴周り部のうちの前記一方に設けられた前記第1伸縮部材の数以上である、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、11、12も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向において、隣り合って配置されている2つの前記第2伸縮部材の間に、少なくとも1つの前記第1伸縮部材が配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項3~6のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向において、隣り合って配置されている2つの前記第2伸縮部材の間に、少なくとも1つの前記第1伸縮部材が配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、11、12も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性本体と、前記固定部とが重複する部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、
「展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性本体と、前記固定部とが重複する部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記胴周り部の非肌側には、使用後の前記吸収性物品を廃棄する際に前記吸収性物品を丸めた状態に保持するための後処理テープが設けられており、
前記後処理テープは、前記後処理テープを前記胴周り部の非肌側に固定するテープ固定部を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記テープ固定部と、前記固定部とが重複する部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項3~10のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記胴周り部の非肌側には、使用後の前記吸収性物品を廃棄する際に前記吸収性物品を丸めた状態に保持するための後処理テープが設けられており、
前記後処理テープは、前記後処理テープを前記胴周り部の非肌側に固定するテープ固定部を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記テープ固定部と、前記固定部とが重複する部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項1~11のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記一対のシートの対向する面同士を接合するシート接合部を有し、
前記シート接合部と前記伸縮部材とは重複する部分を有していない、ことを特徴とする吸収性物品。」と記載されているのを、
「請求項3~11のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記一対のシートの対向する面同士を接合するシート接合部を有し、
前記シート接合部と前記伸縮部材とは重複する部分を有していない、ことを特徴とする吸収性物品。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0006】に、
「上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、前記複数の伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、を少なくとも一つずつ有し、前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品である。」と記載されているのを、
「上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、前記複数の伸縮部材は、前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、を少なくとも一つずつ有し、前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、前記幅方向において、前記固定部は、前記非固定部と重複する全領域に亘って設けられている、ことを特徴とする吸収性物品である。」に訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「第1伸縮部材」と「第2伸縮部材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0048】、【0049】及び図4から把握される事項といえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3の記載のうちの請求項1の記載を引用していたものについて独立請求項の記載形式とするものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2のうち、「前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、」は、「第1伸縮部材」と「第2伸縮部材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、本件明細書等の図4に示された態様から把握される事項といえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4の記載のうちの請求項1の記載を引用していたものについて独立請求項の記載形式とするものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項3のうち、「前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、」は、「第1伸縮部材」と「第2伸縮部材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、本件明細書等の図4に示された態様から把握される事項といえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(4)訂正事項7について
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項9の記載のうちの請求項1の記載を引用していたものについて独立請求項の記載形式とするものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項7のうち、「前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、」は、「第1伸縮部材」と「第2伸縮部材」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7は、本件明細書等の図4に示された態様から把握される事項といえるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものではない。
(5)訂正事項4~6、8、9について
訂正事項4~6、8、9は、請求項5~7、11、12が、それぞれ引用する請求項の記載の中から請求項1、2を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、いずれも本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでもない。
(6)訂正事項10について
訂正事項10は、訂正事項1により訂正される請求項1の記載と明細書の記載の整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
当該訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでもない。
また、訂正事項10は、一群の請求項1~12の全てに係る訂正である。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項2~12は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
特許権者は、令和4年11月14日の訂正請求書(「7(3)ウ」)において、「訂正後の請求項3~12については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求め」ている。
(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げられた事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3~12〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められることから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下「本件発明1」等といい、それらを総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記幅方向において、前記固定部は、前記非固定部と重複する全領域に亘って設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記第1伸縮部材は、前記幅方向において、前記一対の端部固定部の間の全体に前記非固定部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記第1伸縮部材は、
前記幅方向の中央部に、前記第1伸縮部材が前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
前記幅方向において前記中央固定部の両外側に、前記非固定部を有している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において、前記一対の端部固定部の間の全体に前記固定部を有している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方に設けられた前記第1伸縮部材の数が、前記一対の胴周り部のうちの前記一方に設けられた前記第2伸縮部材の数よりも多い、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方に設けられた前記第2伸縮部材の数が、前記一対の胴周り部のうちの前記一方に設けられた前記第1伸縮部材の数以上である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向において、隣り合って配置されている2つの前記第2伸縮部材の間に、少なくとも1つの前記第1伸縮部材が配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項7に記載の吸収性物品であって、
前記長手方向において、前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材とが交互に並んで配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有し、
前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性本体と、前記固定部とが重複する部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載の吸収性物品であって、
前記固定部は、前記厚さ方向に見たときに前記吸収性本体と重複する領域のうち、前記長手方向において、前記吸収性本体の上端と前記吸収性コアの上端との間の領域に設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項3~10のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記胴周り部の非肌側には、使用後の前記吸収性物品を廃棄する際に前記吸収性物品を丸めた状態に保持するための後処理テープが設けられており、
前記後処理テープは、前記後処理テープを前記胴周り部の非肌側に固定するテープ固定部を有し、
前記厚さ方向に見たときに、前記テープ固定部と、前記固定部とが重複する部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項3~11のいずれか一項に記載の吸収性物品であって、
前記一対のシートの対向する面同士を接合するシート接合部を有し、
前記シート接合部と前記伸縮部材とは重複する部分を有していない、ことを特徴とする吸収性物品。
第4 取消理由(決定の予告)について
1.取消理由(決定の予告)の概要
特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2、5~8、11、12に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1、2、5~8、11、12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲1:特開2005-212405号公報
甲3:特開2015-195800号公報
2.甲1の記載事項、甲1に記載された発明
(1)甲1の記載事項
ア 「【請求項1】
2枚のシート材と、これら両シート材間に配された複数本の弾性部材とからなる複合伸縮部材であって、
前記2枚のシート材が、前記弾性部材の伸縮方向及びその交差方向の両方向に間欠的に接合されて、前記両方向それぞれに沿って、それぞれ複数の接合部からなる接合ラインが複数本形成されており、
前記弾性部材の少なくとも2本が、前記伸縮方向に沿う接合ラインを構成する各接合部と重なるように配されて、該各接合部において前記両シート材間に固定されており、
前記両シート材それぞれが、前記伸縮方向の交差方向に沿う接合ライン同士間において襞を形成している複合伸縮部材。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟で感触が柔らかく、肌触りも良好なギャザーを形成し得る複合伸縮部材及びその製造方法に関する。
・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のシートにおいては、襞が複数本の前記弾性部材に亘っており、比較的見た目に美しいものではあるが、その一方で、シート材と弾性部材との接合部の存在に起因して、襞が肌に接触したときの感触があまりよくない。
他方、特許文献2記載の弾性伸縮部においては、シート材同士の線状の接合部分に起因して、その接合部分と平行な方向の柔軟性が劣り、肌に接触したときの柔らかさや感触の点において改善の余地がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、柔軟で感触が柔らかく、肌触りも良好なギャザーを形成し得る複合伸縮部材及びその好ましい製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2枚のシート材と、これら両シート材間に配された複数本の弾性部材とからなる複合伸縮部材であって、前記2枚のシート材が、前記弾性部材の伸縮方向及びその交差方向の両方向に間欠的に接合されて、前記両方向それぞれに沿って、それぞれ複数の接合部からなる接合ラインが複数本形成されており、前記弾性部材の少なくとも2本が、前記伸縮方向に沿う接合ラインを構成する各接合部と重なるように配されて、該各接合部において前記両シート材間に固定されており、前記両シート材それぞれが、前記伸縮方向の交差方向に沿う接合ライン同士間において襞を形成している複合伸縮部材を提供することにより前記目的を達成したものである。
・・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合伸縮部材は、柔軟で感触が柔らかく、肌触りも良好なギャザー(多数の襞を有する伸縮部)を有しており、吸収性物品等にそのようなギャザーを形成することができる。
本発明の複合伸縮部材の製造方法によれば、柔軟で感触が柔らかく、肌触りも良好なギャザー(多数の襞を有する伸縮部)を有する複合伸縮部材を容易に製造することができる。」
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明をその好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態としての複合伸縮部材1は、図1及び図2に示すように、2枚のシート材2,3と、これら両シート材間に配された複数本の弾性部材4とからなる。
複合伸縮部材1は、平面視して矩形状を有しており、弾性部材4が延びる方向の両端部には、端部シール部11(一方のみ図示)が、弾性部材4の伸縮方向(延在方向)の直交方向に連続的に形成されており、該端部シール部11においては、総ての弾性部材4が両シート材2,3に挟まれた状態で固定されている。複合伸縮部材1は、端部シール部11を除く部分が伸縮部10となっている。
【0011】
2枚のシート材2,3は、図2に示すように、弾性部材4の伸縮方向(X方向)及びその直交方向(Y方向)の両方向に間欠的に熱融着(接合)されている。弾性部材4の伸縮方向の交差方向とは、弾性部材4の伸縮方向に対して所定の角度をなす方向(非平行な方向)であり、本実施形態においては、弾性部材4の伸縮方向と直交する方向(Y方向)である。・・・・」
「【0037】
また、図5に示す複合伸縮部材1”のように、熱融着部(接合部)と重なるように配された弾性部材4Aに加えて、熱融着部(接合部)と重ならないように配された弾性部材4Bを有していても良い。図5に示す複合伸縮部材1”における弾性部材4Bは、端部シール部11(一方のみ図示)においてのみ両シート材に固定されている。
・・・・
【0039】
本発明の複合伸縮部材は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の伸縮部形成用に特に好ましく用いられる。その場合、複合伸縮部材の完成後に、それを吸収性物品に固定して伸縮部を形成しても良いが、吸収性物品の製造工程に、複合伸縮部材の製造工程を組み込み、複合伸縮部材が組み込まれた状態の吸収性物品が製造されるようにすることもできる。
図6は、複合伸縮部材を用いて形成する伸縮部の例を、ファスニングテープ21を有する使い捨ておむつ20の場合を例に示したものであり、例えば、ウエスト回り伸縮部22、ファスニングテープ21に連動して伸縮するテープ近傍伸縮部23、胴回り伸縮部24及び防漏壁の肌当接面に形成された伸縮部25等を、本発明の複合伸縮部材を用いて形成することができる。」
エ 「【図1】
[図:0001398214000001.jpg]
」
オ 「【図2】
[図:0001398214000002.jpg]
」
カ 「【図5】
[図:0001398214000003.jpg]
」
キ 「【図6】
[図:0001398214000004.jpg]
」
ク 甲1の図5より、弾性部材(4)は、接合部(5)と重なるように配された弾性部材(4A)と接合部(5)と重ならないように配された弾性部材(4B)を有し、それらが交互に配置されていることが看取できる。
ケ 甲1の図5の複合伸縮部材は、図6のウエスト回り伸縮部(22)に用い得ることは明らかである。また、使い捨ておむつの展開状態において、弾性部材(4)の伸縮方向と、伸縮方向と交差する方向と、厚さ方向を有することが技術常識である。
(2)甲1に記載された発明
上記記載及び認定事項から、甲1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「展開状態において、伸縮方向と、伸縮方向と交差する方向と、厚さ方向とを有し、一対のウエスト回り伸縮部(22)と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する使い捨ておむつ(20)であって、
前記一対のウエスト回り伸縮部(22)は、一対のシート材(2、3)と、前記一対のシート材間に配置された胴回り方向に伸縮する複数の弾性部材(4)とを有し、
前記一対のシート材が、前記弾性部材(4)の伸縮方向及びその交差方向の両方向に間欠的に接合されて、前記両方向それぞれに沿って、それぞれ複数の接合部(5)からなる接合ラインが複数本形成されており、
前記弾性部材(4)は、伸縮方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、それら両端部が前記一対のシート材に固定された一対の端部シール部(11)を有し、
前記弾性部材(4)は、接合部(5)と重なるように配された弾性部材(4A)と接合部(5)と重ならないように配された弾性部材(4B)を有し、それらが交互に配置されている、
使い捨ておむつ(20)。」
3.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「胴回り方向」、「伸縮方向と交差する方向」、「ウエスト回り伸縮部(24)」、「シート材」、「端部シール部(11)」、「使い捨ておむつ(20)」は、それぞれ、本件発明1の「幅方向」、「長手方向」、「胴周り部」、「シート」、「端部固定部」、「吸収性物品」に相当する。
引用発明の「一対のシート材間に配置された胴回り方向に伸縮する複数の弾性部材(4)」は本件発明1の「一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材」に相当する。
以上を踏まえると、本件発明1と引用発明は、
《一致点》
「展開状態において、幅方向と、長手方向と、厚さ方向とを有し、
一対の胴周り部と、吸収性コアを備える吸収性本体とを有する吸収性物品であって、
前記一対の胴周り部のうちの少なくとも一方は、一対のシートと、前記一対のシート間に配置された前記幅方向に伸縮する複数の伸縮部材とを有し、
各前記伸縮部材は、前記一方の前記胴周り部の前記幅方向の一端部から他端部まで連続して配置され、かつ、前記幅方向の両端部が前記一対のシートに固定された一対の端部固定部を有する、吸収性物品。」で一致し、次の相違点1で相違する。
《相違点1》
本件発明1が、「前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記幅方向において、前記固定部は、前記非固定部と重複する全領域に亘って設けられている」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
引用発明は、「2枚のシート材が、前記弾性部材の伸縮方向及びその交差方向の両方向に間欠的に接合されて、前記両方向それぞれに沿って、それぞれ複数の接合部からなる接合ラインが複数本形成されており、前記弾性部材の少なくとも2本が、前記伸縮方向に沿う接合ラインを構成する各接合部と重なるように配されて、該各接合部において前記両シート材間に固定されており、前記両シート材それぞれが、前記伸縮方向の交差方向に沿う接合ライン同士間において襞を形成」(甲1の【0007】)することにより、「本発明の複合伸縮部材は、柔軟で感触が柔らかく、肌触りも良好なギャザー(多数の襞を有する伸縮部)を有しており、吸収性物品等にそのようなギャザーを形成することができる。」(同【0009】)という効果を得ようとするものである。そのために、引用発明は、「前記一対のシート材が、前記弾性部材(4)の伸縮方向及びその交差方向の両方向に間欠的に接合されて、前記両方向それぞれに沿って、それぞれ複数の接合部(5)からなる接合ラインが複数本形成されており、」「前記弾性部材(4)は、接合部(5)と重なるように配された弾性部材(4A)と接合部(5)と重ならないように配された弾性部材(4B)を有し、それらが交互に配置されている」構成を備えるものである。
ここで、引用発明の「弾性部材(4A)」が接合部(5)と重なりシート材に接合される部分は、「弾性部材(4A)」の伸縮方向に間欠的に設けられており、両端部の間で「弾性部材(4B)」が一対のシート材に接合されていない全領域に亘って設けられていない。
そして、引用発明の弾性部材(4A)のシート材に接合される部分が伸縮方向で間欠的に設けられているものを、本件発明1のように「前記幅方向において、前記固定部は、前記非固定部と重複する全領域に亘って設け」られるものに換えると、シート材に襞、すなわち、肌触りも良好なギャザー(多数の襞を有する伸縮部)を形成することができなくなるから、引用発明においてそのように換える動機付けがなく、むしろ阻害事由にあたるものといえる。
よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.本件発明3について
(1)対比
本件発明3と引用発明とを対比する。
本件発明3と引用発明の各事項の相当関係は、上記3.で述べたものと同様であり、本件発明3と引用発明とは、上記《一致点》で一致し、次の相違点2で相違する。
《相違点2》
本件発明3が、「前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記第1伸縮部材は、
前記幅方向の中央部に、前記第1伸縮部材が前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、
前記幅方向において前記中央固定部の両外側に、前記非固定部を有している」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
引用発明の「接合部(5)と重ならないように配された弾性部材(4B)」は、接合部(5)で一対のシート材(2、3)に接合されていない「非固定部」を有するものであるが、使い捨ておむつ(20)の展開状態での伸縮方向(幅方向)の中央部に、一対のシート材に接合(固定)された部分を有しない。
そして、提出されたいずれの証拠にも、上記相違点2に係る本件発明3の構成について、記載も示唆もされていない。
よって、上記相違点2に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件発明3は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5.本件発明4について
(1)対比
本件発明4と引用発明とを対比する。
本件発明4と引用発明の各事項の相当関係は、上記3.で述べたものと同様であり、本件発明4と引用発明とは、上記《一致点》で一致し、次の相違点3で相違する。
《相違点3》
本件発明4が、「前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記第2伸縮部材は、前記幅方向において、前記一対の端部固定部の間の全体に前記固定部を有している」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
引用発明の「接合部(5)と重なるように配された弾性部材(4A)」は、接合部(5)で一対のシート材(2、3)に接合される「固定部」を有するものであるが、上記3.(2)で述べたように、「弾性部材(4A)」のシート材に接合される「固定部」は伸縮方向に間欠的に設けられており、本件発明4の「前記幅方向において、前記一対の端部固定部の間の全体に前記固定部を有している」構成を備えるものではない。
そして、提出されたいずれの証拠にも、上記相違点3に係る本件発明4の構成について、記載も示唆もされていない。
よって、上記相違点3に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件発明4は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6.本件発明9について
(1)対比
本件発明9と引用発明とを対比する。
本件発明9と引用発明の各事項の相当関係は、上記3.で述べたものと同様であり、本件発明9と引用発明とは、上記《一致点》で一致し、次の相違点4で相違する。
《相違点4》
本件発明9が、「前記複数の伸縮部材は、
前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有する第1伸縮部材と、
前記幅方向において少なくとも前記非固定部と重複する領域が、前記一対のシートに固定された固定部を有する第2伸縮部材と、
を少なくとも一つずつ有し、
前記第1伸縮部材と前記第2伸縮部材は、前記長手方向において、隣り合って配置されており、
前記幅方向において、前記非固定部の長さは、前記吸収性本体の長さよりも長く、
前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性本体と、前記固定部とが重複する部分を有する」のに対し、
引用発明は、そのように特定されていない点。
(2)判断
引用発明の「接合部(5)と重なるように配された弾性部材(4A)」は、接合部(5)で一対のシート材(2、3)に接合される「固定部」を有するものであるが、本件発明9の「前記厚さ方向に見たときに、前記吸収性本体と、前記固定部とが重複する部分を有する」構成を備えるものではない。
そして、提出されたいずれの証拠にも、上記相違点4に係る本件発明9の構成について、記載も示唆もされていない。
よって、上記相違点4に係る本件発明9の構成は、当業者が容易に想到することができたものではなく、本件発明9は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7.本件発明2、5~8、10~12について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むところ、本件発明1は上記3.で述べたように、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明5~8、10~12は、本件発明3、本件発明4あるいは本件発明9の発明特定事項を全て含むところ、本件発明3は上記4.で述べたように、本件発明4は上記5.で述べたように、本件発明9は上記6.で述べたように、いずれも引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明5~8、10~12も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1.新規性要件に係る理由
申立人は、本件発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当する旨主張する。
しかし、上記第4で述べたように、本件発明の各発明は、引用発明(甲1に記載された発明)と対比すると、相違点1~4のいずれかの相違点を少なくとも有し、それらの相違点は実質的なものであるから、本件発明の各発明は、甲1に記載された発明ではない。
よって、申立人の新規性要件に係る理由は採用できない。
2.明確性要件に係る理由
(1)申立理由
本件発明では、第1伸縮部材と第2伸縮部材という2種類の伸縮部材を有することが必須の構成として規定されているが、その意味(特に両者の区別)が不明確であり、第1伸縮部材と第2伸縮部材は相当程度重複し、第三者において、具体的な製品に伸縮部材を配置する場合、どちらに該当するか判別できないという不測の事態が生じることになる。
よって、本件発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(特許異議申立書16~19頁)。
(2)判断
本件発明において、「第1伸縮部材」は「前記幅方向における前記端部固定部よりも内側において、前記一対のシートに固定されていない非固定部を有し」、「第2伸縮部材」は「前記幅方向において少なくとも前記吸収性コアと重複する領域の全域に亘り、前記一対のシートに固定された中央固定部を有し、かつ、前記長手方向において前記吸収性本体と重複する領域に配置されて」いる旨、それぞれ特定され、何を意味するのか明確であり、区別もできる。
申立人は、第1伸縮部材と第2伸縮部材は相当程度重複する旨主張するが、本件発明は、第1伸縮部材と第2伸縮部材の、それぞれの要件を特定するものであって、それらの要件をいずれも満たすことを排除する記載はなく、このことをもって不明確になるともいえない。
よって、申立人の明確性要件に係る理由は採用できない。
3.サポート要件に係る理由
(1)申立理由
以下のア~エの事項が、本件発明に特定されていないため、本件発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(特許異議申立書20~28頁)。
ア 本件明細書等の実験データの記載が存在しない(特許異議申立書20~23頁)。
イ 伸縮部材の材質及び弾性力が特定されていない(特許異議申立書23~24頁)。
ウ 固定部が、幅方向において、一対の端部固定部の間の全体に設けられていることが特定されていない(特許異議申立書24~27頁)。
エ 胴回り部の一方についての伸縮部材のみが必須の構成とされている(特許異議申立書27~28頁)。
(2)判断
ア 本件発明の解決しようとする課題は、「吸収性物品の胴周り部の柔軟性を向上させつつ、胴周り部にたくれが生じることを抑制することにある」(本件明細書等の【0005】)である。
そして、本件明細書等の、「第1伸縮部材が非固定部を有することで、胴回り部のうち剛性の高い部位の面積が小さくなり、柔軟性を向上させることができる。そして、非第1伸縮部材の非固定部の上下方向の移動が固定部によって制限されるため、伸縮部材の位置ずれが生じ難く、胴周り部にたくれが生じたり、フィット性が悪化したりすることを抑制することができる。」(【0010】)の記載によれば、胴周り部の柔軟性は、第1伸縮部材が非固定部を有することで解決し、胴周り部にたくれが生じることは、第2伸縮部材が固定部を有することで解決できるものと理解できる。
イ 申立人は、本件発明の解決しようとする課題の解決には、上記(1)ア~エの事項の特定が必須であると主張する。
しかし、上記アで述べたように、本件発明の課題は、「第1伸縮部材の非固定部」と「第2伸縮部材の固定部」を設けることにより解決できるから、本件発明において、上記(1)ア~エの事項が特定されていないことをもって、サポート要件を満たさないとすることはできない。
よって、申立人のサポート要件に係る理由は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700674