特許異議申立
2020-700049
複合材およびラミネート物品ならびにこれらを作製するための重合系
- 審判番号
- 2020-700049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-503651外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6553505
- 請求日
- 2020年01月30日
- 審決日
- 2021年07月26日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】シラス・インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】特許業務法人川口國際特許事務所
- 【異議申立人】岡林 茂
- 【異議申立人代理人】特許業務法人太陽国際特許事務所
- 分類
- P1651.113-ZAA(C08L) / P1651.121-ZAA(C08L) / P1651.537-ZAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の5第2項特許法120条の5第9項特許法120条の8第1項特許法126条特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6553505号発明「複合材およびラミネート物品ならびにこれらを作製するための重合系」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6553505号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第6553505号の請求項1、4、5、7ないし11に係る特許を取り消す。
特許第6553505号の請求項2、3、6に係る特許についての異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6553505号(請求項の数11。以下、「本件特許」という。)は、平成25年3月29日(パリ条約による優先権主張 平成24年3月30日 アメリカ合衆国)を出願日とする特許出願(特願2015-503651号)に係るものであって、令和1年7月12日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、同年7月31日である。)。
その後、令和2年1月30日に、本件特許の全請求項(請求項1~11)に係る特許に対して、特許異議申立人である岡林茂(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
それ以降の手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 1月30日 特許異議申立書
同年 4月30日付け 取消理由通知書
同年 8月 7日 意見書、訂正請求書(特許権者)
同年10月30日 意見書(申立人)
令和3年 2月15日付け 取消理由通知書(決定の予告)
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和2年8月7日に提出した訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「メチレンマロネートモノマー」の記載を「多官能性メチレンマロネートモノマー」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「を含む」の記載を「を含み、当該多官能性メチレンマロネートモノマーが、メチレンマロネートとジオールまたはポリオールとのエステル交換生成物であり、」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項 1 において、「ことを特徴とする」の記載を「当該強化または充填材料が、粒状物、ガラス、天然および合成繊維、織布および不織布、ナノ粒子、カーボン、クレイ、繊維ガラス、カーボン繊維、木質粒子、かんなくず、木粉、アルミナ、シリカ、砂、プラスチック、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ベールマット、繊維ガラスマット、二軸クロス、剥離布、カーボン繊維クロス、ヒュームドシリカ、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、チタニアおよびアラミド繊維からなる群のうちの一種以上の構成員である、ことを特徴とする」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2及び3を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4において、「前記配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、充填材、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、スクラッチ防止添加剤、および不活性樹脂のうちの一種以上を含む」の記載を「前記配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、およびスクラッチ防止添加剤のうちの一種以上を含む」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1から3のいずれか一項」の記載を「請求項1」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1から4のいずれか一項」の記載を「請求項1または4」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1から6のいずれか一項」の記載を「請求項1、4および5のいずれか一項」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10において、「請求項1から4のいずれか一項」の記載を「請求項1または4」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11において、「請求項1から6および10のいずれか一項」の記載を「請求項1、4、5および10のいずれか一項」に訂正する。
(12)一群の請求項
訂正事項1~11に係る訂正前の請求項1~11について、請求項2~11はそれぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1~3について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「メチレンマロネートモノマー」を「多官能性メチレンマロネートモノマー」に限定するものであり、訂正事項2は、訂正事項1による「多官能性メチレンマロネートモノマー」を、更に「メチレンマロネートモノマーとジオールまたはポリオールとのエステル交換生成物」に限定するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項1の「強化または充填材料」を限定するものであるから、訂正事項1~3は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1は、訂正前の請求項6の「メチレンマロネートモノマーが、多官能性モノマーである」及び【0082】の記載に基づき、「多官能性メチレンマロネートモノマー」を特定するものであり、訂正事項2は、【0023】の「二重活性化ビニル化合物がメチレンマロネート」等の記載及び【0027】の「多官能性モノマーまたはオリゴマーが二重活性化ビニル化合物とジオールまたはポリオールとのエステル交換生成物である」との記載に基づき、「メチレンマロネートモノマーとジオールまたはポリオールとのエステル交換生成物」を特定するものであり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に基づき、「強化または充填材料」の選択肢を新たに限定するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(2)訂正事項4及び8について
ア 訂正の目的
訂正事項4は請求項2及び3を削除するものであり、訂正事項8は請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項4及び8は、請求項を削除するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、請求項4における配合添加剤の並列的選択肢の中から、「充填材」及び「不活性樹脂」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項5は、配合添加剤の並列的選択肢の一部を除くものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(4)訂正事項6、7、9~11について
ア 訂正の目的
訂正事項6、7、9~11は、訂正事項4及び8により請求項2、3及び6を削除することに伴って、請求項4、5、7、10及び11において引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項6、7、9~11は、引用する請求項を削除するものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~11による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6553505号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~11に記載される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
重合性材料;および
強化または充填材料;
を含み、
前記重合性材料が、
多官能性メチレンマロネートモノマー
を含み、当該多官能性メチレンマロネートモノマーが、メチレンマロネートとジオールまたはポリオールとのエステル交換生成物であり、
当該強化または充填材料が、粒状物、ガラス、天然および合成繊維、織布および不織布、ナノ粒子、カーボン、クレイ、繊維ガラス、カーボン繊維、木質粒子、かんなくず、木粉、アルミナ、シリカ、砂、プラスチック、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ベールマット、繊維ガラスマット、二軸クロス、剥離布、カーボン繊維クロス、ヒュームドシリカ、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、チタニアおよびアラミド繊維からなる群のうちの少なくとも1つの構成員である、
ことを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
さらに配合添加剤を含み、前記配合添加剤が、可塑剤、チキソトロープ剤、接着促進剤、酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、界面活性剤、湿潤剤、粘度調整剤、体質顔料、分散剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、脱気剤、垂れ落ち防止剤、凝結防止薬剤、つや消し剤、平滑化剤、ワックス、傷防止添加剤、およびスクラッチ防止添加剤のうちの一種以上を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
メチレンマロネートモノマーが、ジエチルメチレンマロネートモノマーである、請求項1または4に記載の複合材料。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1、4および5のいずれか一項に記載の複合材料を準備すること;
該複合材料に、重合活性剤を取り入れること;ならびに
該複合材料を成型すること
を含む、複合材物品の作製方法。
【請求項8】
重合活性剤が、塩基、塩基前駆体、塩基創出体または塩基向上体の形態である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合活性剤が、酢酸ナトリウム;酢酸カリウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、銅およびコバルトの酸の塩;テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリドおよびヒドロキシド;第1級、第2級または第3級のいずれかのアミン;アミド;ポリマー結合型酸の塩;安息香酸塩;2,4-ペンタン二酸塩;ソルビン酸塩;プロピオン酸塩;第2級脂肪族アミン;ピペリデン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジブチルアミン、モルホリン、ジエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメルピペラジン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン;アミンと有機モノカルボン酸との塩;ピペリジンアセテート;低級モノカルボン酸の金属塩;酢酸銅(II)、酢酸第二銅一水和物、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム;ならびにポリアクリル酸コポリマーの塩のうちの一種以上を含む、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
メチレンマロネートモノマーが、ジエチルメチレンマロネートと1,6-ヘキサンジオールとのエステル交換生成物である、請求項1または4に記載の複合材料。
【請求項11】
33%から89%の重合性材料および11%から67%の強化または充填材料を含んでなる、請求項1、4、5および10のいずれか一項に記載の複合材料。」
第4 特許異議の申立てについて
訂正された本件特許の請求項1、4、5、7~11に係る発明に対して、令和3年2月15日付けで、概略、以下の取消理由通知(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
理由1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、4、5、7~11の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2.(新規性)請求項1、4及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第6号証(以下、「甲6」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由3.(進歩性)請求項1、4及び5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲6:特開2000-199936号公報
そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件発明1、4、5、7~11は、この取消理由によって取り消すべきものである。
また、本件訂正により請求項2、3及び6が削除されたため、申立人による請求項2、3及び6に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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