特許拒絶査定不服審判
2020-014114
検出方法、検出装置および検査用キット
- 審判番号
- 2020-014114
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-551804外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月07日
- 審決日
- 2021年03月10日
- 公報発行日
- 2021年06月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人鷲田国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-551804「検出方法、検出装置および検査用キット」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月26日国際公開、WO2017/086128〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、2016年(平成28年)10月28日(優先権主張日:平成27年11月16日)を国際出願日とする特許出願であって、令和2年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年5月8日に意見書が提出され、同年6月29日付けで拒絶査定されたところ、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正について
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の発明
(1)本件補正は、補正前の請求項1、9、12において、その特定事項である「検出チップ」について「かつ外蓋を有しない」(以下「補正事項」という。)と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとともに、本願明細書には「外蓋」に関する記載・示唆がないものの、「外蓋を有しない検出チップ」が本願の優先権主張日前に周知である(例えば、後述する引用文献3参照)ことを考慮すると、新たな技術的事項を追加するものではない、といえる。
(2)そして、本件補正により補正された請求項1に記載された事項により特定された発明は、次のとおりである。
「検体中の被検出物質の存在または量を検出するための検出方法であって、
開口部を備え内部に液体を収容するための収容部と、前記開口部を覆うと共に前記収容部の内部および外部を連通する貫通部を備えた弾性シートとを有し、かつ外蓋を有しない検出チップに、前記貫通部を介して前記収容部に送液用のノズルを挿入し、前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように前記弾性シートに接している状態で前記収容部内に液体を提供する工程を含み、
前記貫通部は、孔または切れ込みで形成されており、
前記孔の開口の最大長さまたは前記切れ込みの最大長さは、前記収容部内に液体を提供する際に前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように挿入されたときの前記弾性シートに接する部分の前記ノズルの外径より小さい、
検出方法。」
(3)そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
2 引用文献及びその記載事項
(1)本願の優先権主張日前に頒布され、原審の拒絶理由において引用された刊行物である特開2012-159358号公報(以下「引用文献1」という。)には、「検査システム、及びこの検査システムに用いられる送液装置」について、図1~14とともに次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与する。以下同様。)
(1-ア)
「【0015】
本発明に係る検査システムにおいて、前記検査チップは、前記液体収容部を有し、この液体収容部の内部と外部とを連通するチップ開口がその表面に形成されるチップ本体と、前記チップ開口よりも小さな直径の前記挿入開口を残して前記チップ開口を覆う弾性部材と、を備え、前記ノズル部材の先端部は、その先端に向かって直径の小さくなるテーパー形状の外周面を有し、前記弾性部材は、前記ノズル部材の先端部が前記挿入開口を通じて前記液体収容部内に挿入されたときに、当該弾性部材の挿入開口の周縁部が前記ノズル部材の外周面と密着するような弾性を有してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、ノズル部材の先端部を液体収容部内に挿入することによってノズル部材の先端部の外周面と弾性部材の挿入開口周縁部とが密着するため、液体収容部内の圧力が変動しても、ノズル部材が挿入された挿入開口からの液漏れを防止することができる。しかも、ノズル部材が挿入される開口(挿入開口)の直径が弾性部材を備えない場合の開口(チップ開口)に比べてより小さくなるため、検査用液体が検査チップの挿入開口周縁部に付着することをより効果的に防止することができる。
【0017】
この場合、前記弾性部材は、前記チップ開口を封止するシート状の部材であり、前記挿入開口は、前記弾性部材によって封止されたチップ開口から前記ノズル部材の先端部が前記液体収容部内に挿入されることにより形成されるようにすることで、当該検査システムによって検査が行われるまで(弾性部材に挿入開口が形成されるまで)液体収容部内が封止された状態になるため、この液体収容部に収容された各検査用液体の蒸発や当該検査用液体への他の物質の混入を確実に防ぐことができる。又は、流路内の状態(例えば、湿度等)を維持することが可能となる。」
(1-イ)
「【0025】
本実施形態に係る検査システムは、複数の検査用液体を用いて抗原等の検体の検出や分析を行う生化学検査に用いられる。この検査システムは、図1に示されるように、検査チップ10と、検査装置2とを備える。検査装置2は、検査チップ10において生化学反応を生じさせてその結果を測定及び分析する装置であり、検査チップ10に検査用液体Lを注入及び吸引することにより生化学反応を生じさせる送液部(送液装置)30と、検査チップ10を所定位置に保持すると共に当該検査チップ10を所定位置に搬送可能な保持搬送部57と、検体等の検出を行う検出部60と、検査装置2の各部の制御を行う制御部70と、を有する。
【0026】
ここで、本実施形態における複数の検査用液体Lとしては、検出対象である検体等を含む試料溶液や、検査チップ10の流路22内を洗浄する際に用いられる洗浄液、バッファ液等が用いられるが、これらに限定されず、抗体液や標識抗体液、反応抑止液、生化学検査において用いられる他の薬液等も含まれる。
【0027】
検査チップ10は、抗原抗体反応等による生体物質の検査や分析等に用いられるチップである。本実施形態に係る検査チップ10は、表面プラズモン共鳴の共鳴角の変化に基づいて検体を分析する分析装置や、検体若しくは検体に標識された蛍光物質が表面プラズモン共鳴に基づく増強電場により励起されて発した蛍光を測定する分析装置等に用いられる、いわゆるクレッチマン配置のセンサーチップである。
【0028】
具体的に、検査チップ10は、図2(A)に示されるように、検査チップ本体(チップ本体)11と、検査チップ10に設けられた流路(液体収容部)22の端部開口(流路開口)25を封止する封止部材(弾性部材)12とを備える。」
(1-ウ)
「【0038】
封止部材12は、検査チップ本体11の表面において、流路開口25を覆って流路22内を密閉状態にするシート状の部材である。本実施形態では、封止部材12は、検査チップ本体11の上面15aにおいて、その全域を覆うように設けられているが、少なくとも、流路開口25を封止することができる領域に設けられていればよい。このような領域に封止部材12が設けられることにより、流路22内を密閉することができる。
【0039】
この封止部材12は、複数のシートが積層された多層シートである。この封止部材12において、積層方向に隣接するシート同士は、接着剤又は粘着剤によって接着されている。本実施形態の封止部材12は、第1シート(第1のシート)26と第2シート(第2のシート)27と第3のシート28とが順に積層された3層構造である。」
(1-エ)
「【0067】
また、Z軸方向制御部77は、検査チップ10の流路22内への検査用液体Lの注入及び吸引を行うために、又は封止部材12に空気穴29Aを穿孔するためにピペットチップ31がX軸方向に沿って流路開口25の上方位置に移動したときは、所定の位置までピペットチップ31を降下させてその先端部37を流路開口25を通じて流路22内へ差し込む。このとき、流路開口25が封止部材12で覆われていれば、ピペットチップ31の先端が押し当てられることによりこの封止部材12が穿孔され、ピペットチップ31の先端部37が流路22内に差し込まれる。一方、既に、封止部材12がピペットチップ31によって穿孔されている場合には、形成されている開口(挿入開口29)を通じてピペットチップ31の先端部37が流路22内に差し込まれる。そして、ポンプ制御部75によってポンプ32が制御されてピペットチップ31によって検査用液体Lが吐出及び吸引された後、Z軸方向制御部77は、ピペットチップ31を退避位置まで上昇させる。」
(1-オ)
「【0078】
〈送液工程〉工程 次に、制御部70は、ノズル位置制御部74とポンプ制御部75とによって、薬液容器から当該検査装置2における生化学シーケンスに必要な検査用液体L(本実施形態では検体等を含む試料溶液)をピペットチップ31に定量(即ち、所定の量の試料溶液を液体貯留部36内に吸引)し、このピペットチップ31を他方の流路開口25(封止部材12によって封止されている側の流路開口25)の上方位置に移動させる(図7(A)参照)。そして、制御部70は、ノズル位置制御部74によって、液体貯留部36内に試料溶液が貯留された状態のピペットチップ31を降下させて当該ピペットチップ31の先端部37によって流路開口25を封止している封止部材12を穿孔する。
【0079】
詳しくは、制御部70は、ピペットチップ31を降下させてその先端が封止部材12に接近したときにポンプ32を作動させて液体貯留部36内の試料溶液を吸引する。これにより、試料溶液が液体貯留部36内をゆっくりと上昇する(図7(A)の矢印A参照)。制御部70は、さらにピペットチップ31を降下させることにより、その先端面38が封止部材12に当接する。これにより、他方の流路開口25を覆っている封止部材12の部位がピペットチップ31の先端面38に押されて徐々に延び始める(図8(A)参照)。このとき、試料溶液は、液体貯留部36内をゆっくり上昇しているため、封止部材12と接触しない。そして、封止部材12において延性の低い第2シート27が延び限界に達し、ピペットチップ31からの力の集中するピペットチップ31先端の角部から破断し始める(図8(B)参照)。さらに、制御部70がピペットチップ31を降下させてピペットチップ31の先端部37を流路22内に押し込むと、封止部材12における第2シート27が破断した領域に対応する第1シート26がピペットチップ31の先端部37の外周面37aに密着するようにして延び、当該外周面37aに沿った筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成される。さらに制御部70がピペットチップ31を降下させると、第1シート26も延び限界に達して破断する(図8(C)参照)。これにより、封止部材12に挿入開口29が形成される。
(省略)
【0081】
そして、制御部70は、ピペットチップ31の先端が流路22の反応部23近傍(図7(B)に示す位置)まで挿入されると、ピペットチップ31の降下を停止する。このとき、封止部材12において所定の弾性を有する第1シート26によってピペットチップ31の先端部37の外周面37aに密着する筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成されているため、ピペットチップ31と封止部材12との間に十分な密着性が確保されている。
【0082】
次に、制御部70は、ポンプ制御部75によって、ピペットチップ31内の試料溶液を流路22内に吐出させる(図7(B)参照)。このとき、流路22内での気泡の発生を防ぐために、制御部70は、先ず、ゆっくりした送液を行い、流路22(詳しくは、反応部23)内が試料溶液で満たされた後に、反応部23を流れる試料溶液の流速を上げて、生理活性物質21と試料溶液に含まれる検体等との生化学反応(生理活性物質21による検体等の捕捉)を促進させる。・・・・・」
(1-カ)
【0092】
〈検査工程〉
次に、制御部70は、保持搬送部57によって検査チップ10を送液部30から検出部60に搬送させる。検査チップ10が検出部60に搬送されて所定位置で保持されると、制御部70は、検査制御部73によって励起光源61から検査チップ10に向けて励起光αを照射させる。このとき、検査チップ10の入射面18からプリズム部14内に入射した励起光αが金属膜13の反応膜20が設けられた(生理活性物質21が固定された)部位の裏側で全反射し、この全反射により金属膜13においてプラズモン共鳴が生じるような角度で励起光αが検査チップ10に対して照射される(図10参照)。このプラズモン共鳴により形成された増強電場によって、生理活性物質21に捕捉された検体(抗原)等に標識された蛍光物質が励起され蛍光を発する。制御部70は、励起蛍光測定部62によってこの励起蛍光の光量を測定し、この測定結果に基づいて検査制御部73において例えば単位面積あたりの励起蛍光の光量等を導出する。そして、制御部70は、導出した結果を外部(例えば、モニター等の表示装置やプリンター等の印字装置)や当該検査装置2の記憶手段(図示省略)等に出力して測定を終了する。」
(1-キ)
「【0106】
また、上記実施形態では、ノズル部材(ピペットチップ31)と検査チップ10との間から液漏れが生じないように、ノズル部材31の先端部37を貫通させることにより形成された挿入開口周縁部290とノズル部材31の外周面37aとが密着するように構成されているがこれに限定されない。例えば、図11に示されるように、ノズル部材の先端部37の外周面37aに流路開口25に対応した形状のゴム等の弾性部材12Bを設け、この弾性部材12Bによってノズル部材の外周面37aと検査チップ本体11の流路開口25の周縁部との間を密閉するように構成されてもよい。この場合、制御部は、ノズル部材の先端が検査チップ本体11における流路開口25を通過する間、液体貯留部内で検査用液体Lがゆっくり上昇するようにポンプによって検査用液体Lを吸引する。
【0107】
尚、弾性部材12Bは、流路開口25の周縁部に固着され、この弾性部材12Bの貫通孔にノズル部材の先端部37を挿入するように構成されてもよい。この場合、制御部は、ノズル部材の先端が弾性部材12Bの貫通孔を通過する間、液体貯留部内で検査用液体Lがゆっくり上昇するようにポンプによって検査用液体Lを吸引する。」
(1-ク)
図7(B)
図11
(2)本願の優先権主張日前に頒布され、原審の拒絶査定において引用された刊行物である特開平10-132713号公報(以下「引用文献2」という。)には、「汚染を伴わない熱化学反応工程の操作システム」について、図1~13とともに次の事項が記載されている。
(2-ア)
「【0003】密閉隔壁付き反応容器については、とくにPCRに関連して国際公開第WO 95/11083号明細書で説明されているが、これは反応容器の内容物を自動的に除去するばあいにのみ適するものであって、反応容器への流体の自動導入には適していない。試料を容器内に入れるばあいは、手動でスナップキャップを完全に開ける必要がある。さらにこの容器を採用するばあいは、必ず使い捨てのピペット端を使用しなければならない。これは、隔壁を侵入する際に要する力が大きく、一般的なプラスチック製のピペット端ではこうした力を提供できないためである。また、所望の反加温キャップ(cap counter-warming)は、隔壁のもつ熱的不安定さによって一定の状況下でしか使用することができない。こうした影響は並行して表出する。つまり、隔壁が薄いほど侵入しやすくなるが、熱的不安定性が高くなる。」
(2-イ)
「【0017】本容器の内蓋(シール要素2)は、流体が容器の開口部から不必要に漏れ出るのを防止する機能を有している。内蓋は、弾性のシール材、たとえばラテックスまたはシリコーンゴム製であることが好ましい。材質の硬度は20~100ショアが好適であり、30~60ショアであればより好適である。ここではとくに好適な材質として、弾性が40ショアであるエラストシルLR 3003/40(ドイツのバッカー ケミー(Wacker Chemie)社製)を使用している。内蓋の厚さは0.1~20mmであり、0.5~1.2mmであるのがとくに好ましい。これは、この厚さが外部部位のうちの最も薄い部分を基準にしていることを意味している。このことはたとえば、蓋の全体的強度を増すため、あるいはシール要素を容器開口部にはめ込むことができるように、シーリングリング15などにより蓋の端部に厚さをもたしうることを意味している。ピペット装置、たとえばプラスチック製のピペット端の挿入を容易にするため、内蓋に第2の薄肉部または開口部4を配置する。この開口部は、異なった幾何学形状(図7a~7d参照)にすることができる。これはたとえば1~15mm長さの、または好適には1~10mm長さのスリットにすることができる。開口部はまた、スリットが交差した十字形または星形にすることもできる。開口部は、流体が一滴ももれないように閉じておくことが重要である。こうした第1の蓋のスリットは、たとえばナイフなどで切開する、あるいはパンチすることができる。ばあいによっては、成形工程中に開けておくこともできる。」
(2-ウ)
「【0023】移送が可能な液体は、たとえば、成分である漿液、軟膜、血漿およびこれらから派生する流体などの存在を検出するための試料流体またはその派生流体や、核酸増幅法の結果である流体や、試料流体の成分の検出、調製または増幅を行うための試薬を含有する流体などである。
【0024】本発明におけるピペット装置は、流体を吸い込み、計量分配することのできる機器または装置を意味している。これはピペット装置の吸取部分において流体を吸引および放出して行なうものである。基本的に、これらは金属針のような再使用可能な吸取装置でも可能である。ただし、本発明では流体運搬用として1回だけ使用するプラスチック製のピペットチップ5がとくに好適である。こうしたプラスチック製ピペットチップは、通常、たとえばポリプロピレンのように機械的応力に対してさほど強靱でない材質で造られている。さらに、その先端はさほど鋭利ではなく、常備の蓋を不用意に貫通することがない。こうした理由から、本発明においては、内蓋の開口部に予めスリット形状などの切り込みを施しておくとよい。」
(2-エ)
「【0030】図1は、本発明の好適な流体移送方法を示している。容器1は、スリット状などの開口部4を有する内蓋2を使用して密閉されている。ピペット端5を挿入するときに、外蓋3は内蓋から分離される。ピペットユニットの挿入後は、流体の吸い上げ、または放出が可能である。
【0031】この段階でも外蓋は開いている。ピペットチップを取り出すと、容器は外部シール要素3で密閉され、温度処理の実行が可能となる。
【0032】図2は、図1で使用可能な反応容器であって寸法が現実よりも拡大されたものを示している。図1に記載された要素に加えて、内蓋2の構成要素であるシールリング15も示されている。
【0033】図3は、ピペットチップ5を内蓋2を通して容器1に挿入した状態であって寸法が現実よりも拡大されたものを示している。蓋3は取り外されている。」
(3)本願の優先権主張日前に頒布され、原審の拒絶査定において周知例として提示された刊行物である特開2007-263705号公報(以下「引用文献3」という。)には、「送液装置、測定装置、及び、密閉性確認方法」について、図1~14とともに次の事項が記載されている。
(3-ア)
「【0021】
本発明の測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、リガンドDとアナライトAとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0022】
図1に示すように、バイオセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、光学測定部54、及び、制御部60を備えている。
【0023】
トレイ保持部12は、載置台12A、及び、ベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、トレイTが載置される。トレイTには、センサースティック40が収納されている。センサースティック40は、リガンドDの固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げる、押上機構12Dが配置されている。
【0024】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48、及び、蒸発防止部材49、で構成されている。」
(3-イ)
「【0032】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Aを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。」
3 当審の判断
(1)引用発明
ア 上記記載事項(1-イ)の「【0025】本実施形態に係る検査システムは、複数の検査用液体を用いて抗原等の検体の検出や分析を行う生化学検査に用いられる。・・・・・【0026】ここで、本実施形態における複数の検査用液体Lとしては、検出対象である検体等を含む試料溶液や・・・・・」、同(1-オ)の「【0078】・・・・・薬液容器から当該検査装置2における生化学シーケンスに必要な検査用液体L(本実施形態では検体等を含む試料溶液)をピペットチップ31に定量(即ち、所定の量の試料溶液を液体貯留部36内に吸引)し」及び同(1-カ)の「【0092】〈検査工程〉次に、制御部70は、保持搬送部57によって検査チップ10を送液部30から検出部60に搬送させる。検査チップ10が検出部60に搬送されて所定位置で保持されると、制御部70は、検査制御部73によって励起光源61から検査チップ10に向けて励起光αを照射させる。・・・・・生理活性物質21に捕捉された検体(抗原)等に標識された蛍光物質が励起され蛍光を発する。制御部70は、励起蛍光測定部62によってこの励起蛍光の光量を測定し、この測定結果に基づいて検査制御部73において例えば単位面積あたりの励起蛍光の光量等を導出する。」からみて、引用文献1には「試料溶液中の検体(抗原)の存在または量を検出するための検出方法」が記載されているといえる。
イ 上記記載事項(1-ア)の「【0015】・・・・・前記検査チップは、前記液体収容部を有し、この液体収容部の内部と外部とを連通するチップ開口がその表面に形成されるチップ本体と、前記チップ開口よりも小さな直径の前記挿入開口を残して前記チップ開口を覆う弾性部材と、を備え・・・・・【0017】この場合、前記弾性部材は、前記チップ開口を封止するシート状の部材であり」、同(1-イ)の「【0028】具体的に、検査チップ10は、図2(A)に示されるように、検査チップ本体(チップ本体)11と、検査チップ10に設けられた流路(液体収容部)22の端部開口(流路開口)25を封止する封止部材(弾性部材)12とを備える。」及び同(1-ウ)の「【0038】封止部材12は、検査チップ本体11の表面において、流路開口25を覆って流路22内を密閉状態にするシート状の部材である。本実施形態では、封止部材12は、検査チップ本体11の上面15aにおいて、その全域を覆うように設けられているが、少なくとも、流路開口25を封止することができる領域に設けられていればよい」からみて、引用文献1には「チップ開口を備え内部に液体を収容するための液体収容部と、前記チップ開口を覆うと共に前記液体収容部の内部および外部を連通する挿入開口を備えたシート状の封止部材(弾性部材)とを有する検査チップ」が記載されているといえる。
ウ 上記記載事項(1-オ)の「【0078】・・・・・制御部70は、ノズル位置制御部74によって、液体貯留部36内に試料溶液が貯留された状態のピペットチップ31を降下させて当該ピペットチップ31の先端部37によって流路開口25を封止している封止部材12を穿孔する。」および同(1-オ)の「【0081】・・・・・このとき、封止部材12において所定の弾性を有する第1シート26によってピペットチップ31の先端部37の外周面37aに密着する筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成されているため、ピペットチップ31と封止部材12との間に十分な密着性が確保されている。
【0082】次に、制御部70は、ポンプ制御部75によって、ピペットチップ31内の試料溶液を流路22内に吐出させる(図7(B)参照)。」からみて、引用文献1には「検査チップに、ピペットチップの先端部によって封止部材を穿孔して挿入開口を形成し、該挿入開口を介して液体収容部に送液用のピペットチップを挿入し、前記ピペットチップが前記挿入開口を塞ぐように前記封止部材に密着している状態で前記収容部内に試料溶液を吐出する工程」が記載されているといえる。
エ 上記記載事項(1-オ)の「【0081】・・・・・ピペットチップ31の先端部37の外周面37aに密着する筒状の部位(挿入開口周縁部)290が形成されている」からみて、引用文献1には「挿入開口は、筒状に形成される」ことが記載されているといえる。
オ 上記ア~エを踏まえれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「試料溶液中の検体(抗原)の存在または量を検出するための検出方法であって、
チップ開口を備え内部に液体を収容するための液体収容部と、前記チップ開口を覆うシート状の封止部材(弾性部材)とを有する検査チップに、ピペットチップの先端部によって前記封止部材(弾性部材)を穿孔して挿入開口を形成し、該挿入開口を介して前記液体収容部に送液用の前記ピペットチップを挿入し、前記ピペットチップが前記挿入開口を塞ぐように前記封止部材(弾性部材)に密着している状態で前記収容部内に試料溶液を吐出する工程を含み、
前記挿入開口は、筒状に形成されている、
検出方法。」(以下「引用発明」という。)
(2)対比
補正発明と引用発明とを比較すると
ア 引用発明の「試料溶液」、「検体(抗原)」、「チップ開口」、「液体収容部」、「シート状の封止部材(弾性部材)」、「検査チップ」及び「ピペットチップ」は、その機能からみて、それぞれ、補正発明の「検体」、「被検出物質」、「開口部」、「収容部」、「弾性シート」、「検出チップ」及び「ノズル」に相当することは明らかである。
イ 引用文献1には「外蓋の有無」について記載がないものの、引用発明においては、弾性部材に挿入開口が形成されるまでは「チップ開口」が該「弾性部材」により密封されているのであり、前記「挿入開口」が形成され、該「挿入開口」に「ピペットチップ」が挿入される際には、「チップ開口」を覆う「外蓋」が存在していないことは、技術常識からみて、明らかである。
そうすると、引用発明の「検査チップ」は、補正発明の「検出チップ」と同様に、「外蓋を有しない」といえる。
ウ 引用発明の、ピペットチップ先端によって封止部材(弾性部材)を穿孔して形成した「挿入開口」は、チップ開口を覆うシート状の封止部材(弾性部材)の内側と外側とを連通するものであるから、ピペットチップ先端が挿入されている「挿入開口」は、補正発明のノズルが挿入された弾性シートの「貫通部」に相当する。
そして、引用発明の「封止部材(弾性部材)を穿孔して」「形成し」た「該挿入開口を介して前記液体収容部に送液用の前記ピペットチップを挿入し、前記ピペットチップが前記挿入開口を塞ぐように前記封止部材(弾性部材)に密着している状態で前記収容部内に試料溶液を吐出する工程」と、補正発明の「前記弾性シート」の「貫通部を介して前記収容部に送液用のノズルを挿入し、前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように前記弾性シートに接している状態で前記収容部内に液体を提供する工程」は、「前記弾性シートの貫通部を介して前記収容部に送液用のノズルを挿入し、前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように前記弾性シートに接している状態で前記収容部内に液体を提供する工程」の点で共通する。
エ そうすると、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「検体中の被検出物質の存在または量を検出するための検出方法であって、
開口部を備え内部に液体を収容するための収容部と、前記開口部を覆う弾性シートとを有し、かつ外蓋を有しない検出チップに、前記弾性シートの貫通部を介して前記収容部に送液用のノズルを挿入し、前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように前記弾性シートに接している状態で前記収容部内に液体を提供する工程を含む検出方法。」
の点で一致し、以下の点にて相違する。
(相違点1)
「弾性シート」について、補正発明では「前記収容部の内部および外部を連通する貫通部を備えた」であるのに対して、引用発明では「ピペットチップの先端部によって前記封止部材(弾性部材)を穿孔して挿入開口を形成」される点。
(相違点2)
「貫通部」について、補正発明では「孔または切れ込みで形成されており、前記孔の開口の最大長さまたは前記切れ込みの最大長さは、前記収容部内に液体を提供する際に前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように挿入されたときの前記弾性シートに接する部分の前記ノズルの外径より小さい」であるのに対して、引用発明では「ピペットチップの先端部によって穿孔」され、穿孔後「筒状の挿入開口」である点。
(3)相違点1及び2について
相違点1及び2は、いずれも貫通部に関するものであるから併せて検討する。
本願明細書の段落【0005】に「しかしながら、特許文献1に記載の検出装置では、弾性シートにノズルを押し当てて破膜する必要があるため、破膜時にノズルおよび検出装置に大きな負荷がかかる。したがって、ノズルおよび検出装置には、破膜時の負荷に耐えるために十分な剛性が必要となる。また、弾性シートは延性を有するため、ノズルが弾性シートに押し当てられても、弾性シートはすぐに破膜されることなく所定の距離だけ伸びてしまう。このため、特許文献1に記載の検出装置では、破膜されるために弾性シートが伸びうる空間を収容部に確保する必要がある。したがって、特許文献1に記載の検出チップには、小型化の観点から改善の余地がある。」および同段落【0096】に「以上の結果から、本実施の形態に係る検出チップでは、貫通距離が減少していることから、検出チップに求められる高さが減少するため、検出チップを小型化することができることがわかる。また、挿入力も減少していることから、ノズルおよび検出装置に加わる負荷を軽減できるため、ノズルおよび検出装置に求められる剛性を低減することができることがわかる。」と記載されていることからみて、補正発明において「貫通部」が予め形成される技術的意義は、「破膜時のノズルおよび検出装置の負荷を軽減するとともに、検出チップを小型化する」ことにあるといえる。
一方、引用文献2には、上記記載事項(2-ア)の「さらにこの容器を採用するばあいは、必ず使い捨てのピペット端を使用しなければならない。これは、隔壁を侵入する際に要する力が大きく、一般的なプラスチック製のピペット端ではこうした力を提供できないためである。・・・・・つまり、隔壁が薄いほど侵入しやすくなるが、熱的不安定性が高くなる」、同(2-イ)の「【0017】本容器の内蓋(シール要素2)は、流体が容器の開口部から不必要に漏れ出るのを防止する機能を有している。内蓋は、弾性のシール材、たとえばラテックスまたはシリコーンゴム製であることが好ましい。・・・・・ピペット装置、たとえばプラスチック製のピペット端の挿入を容易にするため、内蓋に第2の薄肉部または開口部4を配置する。この開口部は、異なった幾何学形状(図7a~7d参照)にすることができる。これはたとえば1~15mm長さの、または好適には1~10mm長さのスリットにすることができる。開口部はまた、スリットが交差した十字形または星形にすることもできる。」、同(2-ウ)の「【0023】移送が可能な液体は、たとえば、成分である漿液、軟膜、血漿およびこれらから派生する流体などの存在を検出するための試料流体またはその派生流体や、核酸増幅法の結果である流体や、試料流体の成分の検出、調製または増幅を行うための試薬を含有する流体などである。【0024】・・・・・本発明では流体運搬用として1回だけ使用するプラスチック製のピペットチップ5がとくに好適である。こうしたプラスチック製ピペットチップは、通常、たとえばポリプロピレンのように機械的応力に対してさほど強靱でない材質で造られている。さらに、その先端はさほど鋭利ではなく、常備の蓋を不用意に貫通することがない。こうした理由から、本発明においては、内蓋の開口部に予めスリット形状などの切り込みを施しておくとよい。」及び同(2-エ)の「【0030】図1は、本発明の好適な流体移送方法を示している。容器1は、スリット状などの開口部4を有する内蓋2を使用して密閉されている。ピペット端5を挿入するときに、外蓋3は内蓋から分離される。ピペットユニットの挿入後は、流体の吸い上げ、または放出が可能である。」からみて、「検出チップ(検査チップ)」を対象とするものではないが、補正発明あるいは引用発明と同様の、生体物質の検査(検出)技術分野において、「ピペットチップに対する機械的応力を軽減するために反応容器の開口を密閉する蓋に開口部あるいは十字のスリット(切り込み)を形成し、該開口部等にピペットチップの先端を挿入し、反応容器内に液体を入れる」ことが記載されているといえる。そして、該「蓋」および「開口部あるいは十字のスリット(切り込み)」が、その機能・構造からみて、それぞれ、補正発明の「弾性シート」および「孔または切れ込みが形成された貫通孔」に相当するといえる。
また、引用文献3の上記記載事項(3-ア)の「【0023】・・・・・センサースティック40は、リガンドDの固定されるチップであり」および同(3-イ)の「蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され」と記載されているように、引用発明あるいは補正発明の「検査チップ(検出チップ」と同一機能を有する「センサースティック」において、「ピペット挿入孔を覆う蒸発防止部材に十字状の切り込みであるスリットを形成する」ことは、本願の優先権主張日前周知の技術的事項であるといえる。そして、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2006-105607号公報に「【0045】蓋部材43は、流路16に通じる受け入れ口42bを覆うことで、流路16内の液体の蒸発を防止する。蓋部材43は、弾性部材、例えば、ゴムやプラスチックで形成されており、各受け入れ口42bに対応する位置に、十字形のスリット43bが形成されている。蓋部材43は、流路16内の液体の蒸発を防止するためのものであるから、受け入れ口42bを覆う必要があるが、完全に覆ってしまっては、ピペットを受け入れ口42bに挿入することができない。そこで、スリット43bを形成することで、ピペットの挿入を可能とするとともに、ピペットを挿入していない状態では、受け入れ口42bが塞がれるようにしている。スリット43bは、ピペットが押し込まれると、スリット43bの周辺が弾性変形(図1参照)して、スリット43bの口が大きく開いて、ピペットを受け入れる。そして、ピペットを抜くと、弾性力によってスリット43bが初期状態に復帰して、受け入れ口42bを塞ぐ。」と記載されていることからみて、上記引用文献3記載の「十字形のスリット」も「蒸発防止部材(蓋部材)へのピペットの挿入を可能とする」ためのものであって、「ピペットの挿入を可能」となるには、「ピペットへの負荷が小さい」ことが必須であることは、技術常識である。そして、引用文献3記載の「蒸発防止部材(蓋部材)」が、「シート状」ではないものの、その機能からみて、引用発明あるいは補正発明の「弾性シート(弾性部材)」に対応するものであることは、明らかである。
そうすると、上記周知の事項を考慮すると、引用発明において、その「破膜時のピペットチップへの負荷を軽減する」ために、少なくとも「切り込み(十字のスリット)を形成する」ことには当業者において十分動機付けが存在するといえる。
また、引用文献1の上記記載事項(1-キ)の「【0107】尚、弾性部材12Bは、流路開口25の周縁部に固着され、この弾性部材12Bの貫通孔にノズル部材の先端部37を挿入するように構成されてもよい」からみて、引用発明において「挿入開口をピペットチップの挿入により穿孔する」ことから「弾性部材に貫通孔を予め形成する」ことに変更したとしても、引用文献1に記載された「検査チップの液体収容部を除く部位への検査用液体の付着を防止する」という課題・効果を達成するのであるから、何ら阻害要因がないといえる。
してみると、引用発明の「封止部材(弾性部材)」において、上記引用文献2記載の技術および周知の事項を転用して、相違点における補正発明の構成とすることは、当業者において、十分動機付けが存在し、かつ、何ら阻害要因が存在しないというべきである。
また、引用文献1の上記記載事項(1-ア)の「前記ノズル部材の先端部は、その先端に向かって直径の小さくなるテーパー形状の外周面を有し、前記弾性部材は、前記ノズル部材の先端部が前記挿入開口を通じて前記液体収容部内に挿入されたときに、当該弾性部材の挿入開口の周縁部が前記ノズル部材の外周面と密着する」および図7(B)からみて、引用発明の「筒状の挿入開口」の内径は、密着するノズル部材の先端部の外径よりも小であるといえる。そして、「ノズルの負荷を軽減する」ために引用文献2記載の上記「開口部あるいは切り込み」あるいは上記周知の「十字のスリット」を形成する際に、引用文献1の「挿入開口」の内径が上記のように「密着するノズル部材の先端部の外径よりも小」となるためには、該「開口部あるいは切り込み」あるいは「十字のスリット」の最大長が「密着するノズル部材の先端部の外径よりも小」とする必要があることは、技術的に明らかであり、引用発明に引用文献2記載の事項あるいは上記周知の事項を適用した場合に、当業者ならば必然的に想到し得る事項あるいは、必要に応じて当業者ならば適宜選択し得る設計的事項というべきである。
(4)効果について
本願明細書に記載された相違点1および2による効果は、引用文献1、2の記載事項及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。
(5)したがって、補正発明は、引用発明、引用文献1、2の記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1~12に係る発明は、本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されたものであると認められ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「検体中の被検出物質の存在または量を検出するための検出方法であって、
開口部を備え内部に液体を収容するための収容部と、前記開口部を覆うと共に前記収容部の内部および外部を連通する貫通部を備えた弾性シートとを有する検出チップに、前記貫通部を介して前記収容部に送液用のノズルを挿入し、前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように前記弾性シートに接している状態で前記収容部内に液体を提供する工程を含み、
前記貫通部は、孔または切れ込みで形成されており、
前記孔の開口の最大長さまたは前記切れ込みの最大長さは、前記収容部内に液体を提供する際に前記ノズルが前記貫通部を塞ぐように挿入されたときの前記弾性シートに接する部分の前記ノズルの外径より小さい、
検出方法。」(以下「本願発明」という。)
2 引用刊行物およびその記載事項
本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献1~3及びその記載事項は、上記「第2 2 引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。
3 当審の判断
本願発明は、補正発明における前記補正事項の限定を除いたものである。
そして、本願発明の構成を全て備えた補正発明が、上記「第2 3 当審の判断」にて検討したとおり、引用発明、引用文献1,2記載の事項および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献1,2記載の事項および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献2の文脈で引用文献2に記載の技術事項を把握すれば、引用文献2に記載の技術は、正しくは、外蓋があるという前提のもとで開口がある内蓋を設けたという技術であり、引用文献2に記載の技術を正しく認定すれば、依然として、引用文献1の発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することに動機付けがなく、適用すれば引用文献1の発明の目的に反するという阻害要因が存在します」と主張している。
しかしながら、引用文献2の上記記載事項(2-エ)の「【0033】図3は、ピペットチップ5を内蓋2を通して容器1に挿入した状態であって寸法が現実よりも拡大されたものを示している。蓋3は取り外されている」からみて、引用文献2記載の「外蓋」は、「ピペットチップ」により「液体」を提供する際には、外されているのであるから、特に方法の発明においては、該「ピペットチップ」の挿入行程とは無関係であるといえる。
そもそも、該「外蓋」の技術的意義は「熱処理」の際の「試料漏れ」を防止することにあり、「ピペットチップの挿入負荷を軽減するため内蓋に開口部あるいは切れ込み」を形成するという独立した技術的事項を、該「外蓋」の存在に影響されることなく、発明として認定することが可能であるといえる。
また、引用文献1に記載された発明の「目的」は、「検査チップの液体収容部を除く部位への検査用液体の付着を防止する」というものであって、「シート状の弾性部材」に「開口部」が存在したとしても、それに影響されることなく該目的が達成されることは明らかであるとともに、前述したように「ピペットチップの挿入負荷を軽減する」という課題が本願の優先権主張日前において周知であるから、「引用文献1の発明に引用文献2に記載の技術事項を適用することに動機付けがなく、適用すれば引用文献1の発明の目的に反するという阻害要因が存在」するとはいえない。
したがって、上記請求人の主張は、採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-014114