特許拒絶査定不服審判
2024-018705
試験標本のステージングを制御する方法及び装置
- 審判番号
- 2024-018705
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-501169
- 請求日
- 2024年11月25日
- 審決日
- 2026年03月25日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】渡辺 陽一
- 【請求人代理人】中村 和広
- 【請求人代理人】南山 知広
- 【請求人代理人】森本 有一
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 伊藤 幸仙
- 分類
- P18 .121-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-501169「試験標本のステージングを制御する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 1月21日国際公開、WO2021/011359、令和 4年 9月16日国内公表、特表2022-540617〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)7月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年7月12日(以下「優先日」という。)米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和6年 1月19日付け:拒絶理由通知書、通知書(先行技術文献情報開示要件)
同年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月 7日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
同年 7月 5日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月28日付け:令和6年7月5日提出の手続補正書でした補正に対する補正の却下の決定、拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年11月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年11月25日提出の手続補正書でした補正を以下「本件補正」という。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
本件補正は、以下のとおり、請求項1についての補正を含むものである。
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「【請求項1】
1つ以上の標本の自動試験を行うシステムであって、
1つ以上の試験標本を固定するように構成されたステージと、
前記ステージ及び前記1つ以上の試験標本を位置決めするように構成された1つ以上のアクチュエータと、
ユーザーインターフェースであって、
前記1つ以上の試験標本において試験される複数の点の試験シーケンスを定義する入力を受信し、前記1つ以上の試験標本上の前記複数の点の位置と、
前記試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路と、前記複数の点を定義する入力とを示すグラフィックを表示するように構成された、ユーザーインターフェースと、
前記複数の点及び前記1つ以上の経路に従って前記試験シーケンスの試験プロセスを制御するように構成された制御回路部と、
を備え、
前記制御回路部は、前記複数の点に基づいて試験効率を最大化するように前記1つ以上の経路を計算し、
前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む、システム。」(下線は補正箇所である。)
(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の令和6年4月4日提出の手続補正書における請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
1つ以上の標本の自動試験を行うシステムであって、
1つ以上の試験標本を固定するように構成されたステージと、
前記ステージ及び前記1つ以上の試験標本を位置決めするように構成された1つ以上のアクチュエータと、
ユーザーインターフェースであって、
前記1つ以上の試験標本において試験される複数の点の試験シーケンスを定義する入力を受信し、
前記1つ以上の試験標本上の前記複数の点の位置と、前記試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路とを示すグラフィックを表示するように構成された、ユーザーインターフェースと、
前記複数の点及び前記1つ以上の経路に従って前記試験シーケンスの試験プロセスを制御するように構成された制御回路部と、
を備え、
前記制御回路部は、前記複数の点に基づいて試験効率を最大化するように前記1つ以上の経路を計算する、システム。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
上記1で記載した請求項1についての補正は、発明を特定するための必要な事項である「グラフィック」が「示す」ものを「前記1つ以上の試験標本上の前記複数の点の位置と、前記試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路」に「前記複数の点を定義する入力」を追加して限定し、さらに「前記複数の点を定義する入力」を「前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、上記1で記載した請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記1(1)で記載した本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)独立特許要件について
ア 引用文献1について
(ア)記載事項
本願の優先日前に頒布され、下記第3の2で記載する原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2005-302906号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである(以下同様)。
(引1ア)「【請求項1】
制御可能な試料ステージを持ち、複数の検査個所を予め決定した順序で自動検査し、検査結果を出力する機能を有する電子線検査装置において、検査個所の移動順序を入れ替えることで総検査時間を短縮する計算機能を有することを特徴とする電子線検査装置。」
(引1イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記、電子線検査装置において、検査時間短縮を実現するために、検査順序を決める計算機能を実現する。計算時間は、実用可能な30秒以内が望ましい。検査順序の決定は、単純な移動距離のみを短縮するのではなく、移動時間,検査時間の合計の短縮を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、検査個所と検査順序を決定するレシピ作成時に、検査順序を最適化する機能を実現する。移動距離を短縮する順序を決定する機能だけでなく、移動距離に加えて、例えばウエハの帯電,そり,搬出位置など、状況に応じて検査点の検査順序を最適化する機能を備えることとする。検査点を決定後、順序入れ替え機能を用いて順序を入れ替える。順序入れ替えに用いる計算式は、検査点数の多少に応じて自動選択する。」
(引1ウ)「【0006】
本発明の基本フローを図1に示す。従来のレシピ作成手順では、検査点は、レシピ作成者が任意に決定し、決定された手順に従って装置は検査を行っていた。本発明では、レシピ作成開始(S0001),検査内容の決定(S0002),検査点の決定(S0003)した後、図16の最適経路計算選択画面(100)から最適経路計算メニュー(102)を選択(S0004)する。最適経路計算メニュー(102)を選択する(S0004)ことで、最適化経路の計算が開始される(S0005)。最適経路の計算は自動で行われる。最適化経路計算後、最適化経路の検査順序が検査点リスト(101)に表示され、その順序に置き換えを選択し(S0006)、経路情報保管確認画面(105)でOKボタン(106)を選択(S0007)することで最適化経路に決定される。なお、Cancelボタン(107)を選択すると経路情報は保存されない。S0004からS0007までが本発明での追加手順である。ここで最適経路計算開始メニューの選択,経路情報保管確認などは図15のCRT(53)を見ながら入力装置(52)を使って行う。経路情報はレシピ情報と合わせて記憶装置(51)に保存される。」
(引1エ)「【0015】
最適化経路の計算結果について、図5から図7の例を用いて説明する。図5に示す検査順序は、X座標の昇順かつY座標の昇順に検査する例であり、ユーザーが任意に検査順序を決定した場合に良く見られる例である。この順序は、検査点間の移動の総距離が最短にはなっていないため、順序変更することで総検査時間を短縮する余地がある。図6には、本発明の機能を用いて最適化経路を導き出した結果を示す。最適経路は一意とは限らないため、本経路は最適経路の一例である。移動距離の平均は、図5で示した経路で3.66チップであるのに対し、最適経路では2.31 チップと約4割の効果がある。ここでは、移動距離が検査時間に比例すると仮定して例を示しているが、実際の計算では、移動距離以外のパラメータを用いることも可能である。これについては、後述する。図7では、蛇腹式経路の例を示す。X座標の昇順に並べるのは、図5と同じであるが、Y方向については、昇順と降順を交互に繰り返す。これにより、Y方向の往復回数を減らすことが出来るため、総移動距離を減らし総測定時間を短縮することが可能である。図7で示した経路の移動距離の平均は、2.87 チップである。この例での効果は、図5と図7の比較より、約20%の短縮となる。
【0016】
本発明は、図8に示すような、制御可能なXテーブル2、およびYテーブル3を移動することで試料8を移動し、電子ビーム9を照射して検査を行う、測長SEM,レビューSEMに有効である。また、電子線による検査装置でなくても、検査範囲が狭く、試料8を移動しながら、検査点を移動する場合には有効である。また、試料8を移動させる方法は、ここではXYステージの例を示したが、ステージが移動する一軸と回転軸を持つRθステージである場合、また、ステージが一軸方向に移動し、電子ビームがそれと直行する軸に移動する様な場合でも有効である。」
(引1オ)上記図6、図8、図15として以下の図面が記載されているとともに、以下の符号の説明が記載されている。
「【符号の説明】
【0028】
・・・、25…ステージ、・・・、50…コンピュータ、51…記憶装置、52…入力装置、53…CRT、・・・。」
「【図6】
[図:0001438801000001.jpg]
【図8】
[図:0001438801000002.jpg]
【図15】
[図:0001438801000003.jpg]
」
(イ)図面からの看取事項
上記(引1オ)で摘記した図面から以下の事項が看取される。
a 上記図6には、複数の検査点の位置と、前記複数の検査点を結ぶ経路と、前記複数の検査点の(X、Y)座標が、視覚的な表記、すなわちグラフィックとして示されている。
b 上記図8には、Xテーブル2、Yテーブル3を移動する、X駆動モータ4、Y駆動モータが記載されている。
c 上記図15には、ステージ25、入力装置52及びCRT53等と接続するコンピュータ50が記載されている 。
(ウ)引用発明
上記(ア)において摘記した事項(特に下線部参照)、上記(イ)において図面から看取した事項を踏まえると、引用文献1には、以下の発明が記載されている。なお、「試料」と「試料8」、「試料ステージ」と「ステージ25」は同じものであることから、番号を削除して記載する。
「制御可能な試料ステージを持ち、複数の検査個所を予め決定した順序で自動検査し、検査結果を出力する機能を有する電子線検査装置において、検査個所の移動順序を入れ替えることで総検査時間を短縮する計算機能を有する電子線検査装置であって、
制御可能なXテーブル2、およびYテーブル3を移動することで試料を移動し、電子ビーム9を照射して検査を行うものであり、Xテーブル2、Yテーブル3を移動するX駆動モータ4、Y駆動モータがあり、ステージ、入力装置52及びCRT53等と接続するコンピュータ50があり、
上記装置は、以下の手順に従って検査を行うもので、
レシピ作成開始(S0001)、検査内容の決定(S0002)、検査点の決定(S0003)した後、最適経路計算選択画面(100)から最適経路計算メニュー(102)を選択(S0004)し、最適経路計算メニュー(102)を選択する(S0004)ことで、最適化経路の計算が開始され(S0005)、最適経路の計算は自動で行われ、最適化経路計算後、最適化経路の検査順序が検査点リスト(101)に表示され、その順序に置き換えを選択し(S0006)、経路情報保管確認画面(105)でOKボタン(106)を選択(S0007)することで最適化経路に決定され、ここで最適経路計算開始メニューの選択、経路情報保管確認などはCRT(53)を見ながら入力装置(52)を使って行うものであり、
そして、複数の検査点の位置と、前記複数の検査点を結ぶ経路と、前記複数の検査点の(X、Y)座標とがグラフィックとして示される、
電子線検査装置。」(以下「引用発明」という。)
イ 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「試料」は、補正発明の「1つ以上の標本」に相当し、そして、引用発明の「自動検査」する「電子線検査装置」は、補正発明の「自動試験を行うシステム」に相当する。
(イ)引用発明の「制御可能なXテーブル2、およびYテーブル3」である「試料ステージ」は、試料はステージに固定されるものであるから、補正発明の「1つ以上の試験標本を固定するように構成されたステージ」に相当する。
そして、引用発明の「Xテーブル2、およびYテーブル3を移動することで試料を移動」するところの「Xテーブル2、Yテーブル3を移動するX駆動モータ4、Y駆動モータ」は、Xテーブル2及びYテーブル3を移動することで試料の位置を決めているといえることから、補正発明の「前記ステージ及び前記1つ以上の試験標本を位置決めするように構成された1つ以上のアクチュエータ」に相当する。
(ウ)引用発明の「コンピュータ50」「と接続する」「入力装置52及びCRT53等」は、補正発明の「ユーザーインターフェース」に相当する。
(エ)入力について
a 引用発明の「複数の検査個所」である「検査点」は、補正発明の「1つ以上の試験標本において試験される複数の点」に相当し、そして、引用発明の「検査点リスト」の「最適化経路の検査順序」は、補正発明の「試験される複数の点の試験シーケンス」に相当する。
そうすると、引用発明の「検査点リスト」の「最適化経路の検査順序」の「決定」のために、「入力装置(52)を使って行う」「最適経路計算選択画面(100)から最適経路計算メニュー(102)を選択(S0004)する」ことは、補正発明の「1つ以上の試験標本において試験される複数の点の試験シーケンスを定義する入力」をすることに相当する。
さらに、引用発明の「最適経路計算開始メニューの選択」が「コンピュータに接続された入力装置を使って行」われることは、「入力装置」「に接続された」「コンピュータ」が「最適経路計算開始メニューの選択」を受信しているといえることから、補正発明の「入力を受信」していることに相当する。
b そして、(引1ウ)によれば「検査点は、レシピ作成者が任意に決定」するものであるから、引用発明の「複数の検査個所」である「検査点の決定」を「入力装置(52)を使って行う」「入力」は、補正発明の「複数の点を定義する入力」に相当する。
(オ)グラフィックについて
a まず、引用発明の「グラフィックとして示される」「複数の検査点の位置」は、補正発明の「グラフィック」が「示す」「1つ以上の試験標本上の前記複数の点の位置」に相当する。
b 次に、補正発明の「グラフィック」が「示す」「試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路」について検討するに、本願明細書及び図面では、以下のように説明されている。
「【0037】
例示的なグラフィック302は、1つ以上の試験標本における複数の点322(図3の例において1~25の番号を付される)の位置、及び試験シーケンスの試験中に複数の点1~25を横切るようにステージ104が取る1つ以上の経路(例えば、点1~25のうちの連続する点間の矢印)を示す。図3に示すように、ユーザーインターフェース300は、ステージ104を表すグリッドとしてグラフィック302を表示するように構成され、複数の点322がステージ上に重ね合わされ、1つ以上の経路324が複数の点322を接続する。例示的なグラフィック302は、点322が試験プロセス中に試験されることになる順序を示すように点322と関連付けて英数字シーケンス(例えば、1、2、3等、A、B、C等、A1、A2、B1、B2等)等の連続した印を表示する。」
「【0039】本明細書において用いられるとき、「経路」は、点1~25のうちの2つ以上の間に存在するルートを指す。換言すると、点1から点2までのルートは、単一の経路とみなすことができ、点1において開始し、点25において終了するルートは、単一の経路又は複数の経路(例えば2つ~24個の経路)とみなすことができる。」
そして、図3として、以下の図面が記載されている。
「
[図:0001438801000004.jpg]
」
上記本願明細書及び図面の記載を踏まえると、「試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路」とは、(試験)点同士を接続し、複数の(試験)点をたどる経路として把握されるものである。
一方、引用発明における「前記複数の検査点を結ぶ経路」は、「Xテーブル2、およびYテーブル3を移動することで試料を移動し、電子ビーム9を照射して検査を行う」「検査点リスト」の「検査順序」である「最適化経路」であるから、引用発明の「グラフィックとして示される」「前記複数の検査点を結ぶ経路」は、補正発明の「グラフィック」が「示す」「試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路」に相当する。
c さらに、補正発明の「グラフィック」が「示す」「複数の点を定義する入力」について検討するに、上記(エ)bで述べたように、引用発明の「複数の検査個所」である「検査点の決定」を「入力装置(52)を使って行う」「入力」は、補正発明の「複数の点を定義する入力」に相当し、ここで、引用発明の「複数の検査個所」である「検査点」は、「試料ステージ」上の「(X、Y)座標」であり「グラフィックとして示される」ものである。
一方、補正発明において、「グラフィック」が「示す」「複数の点を定義する入力」について、「前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む」と特定されるものである。
そうすると、引用発明の「グラフィックとして示される」「試料ステージ」上の「(X、Y)座標」であり「複数の検査個所」である「検査点」の「入力」は、補正発明の「グラフィック」が「示す」「ステージ上の前記複数の点の座標」である「複数の点を定義する入力」に相当する。
d 上記a~cを踏まえると、引用発明の「複数の検査点の位置と、前記複数の検査点を結ぶ経路と、前記複数の検査点の(X、Y)座標とがグラフィックとして示される」ことは、補正発明の「前記1つ以上の試験標本上の前記複数の点の位置と、前記試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路と、前記複数の点を定義する入力とを示すグラフィック」であり「前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む」ことに相当する。
e しかしながら、補正発明は「グラフィック」が「ユーザーインターフェース」において「表示するように」構成されているのに対し、引用発明では「グラフィック」が「入力装置52及びCRT53等と接続するコンピュータ50」においてどのような態様として構成されているのか不明であるから、両者は「グラフィック」が「ユーザーインターフェース」において構成されている点で共通するといえる。
(カ)制御回路部について
a コンピュータは制御回路を有するものであり、引用発明の「検査個所の移動順序を入れ替えることで総検査時間を短縮する計算機能を有」し、「検査点」の「最適経路の計算」を行い「最適化経路計算後、最適化経路の検査順序が検査点リスト(101)に表示され、その順序に置き換え」る「コンピュータ」は、本願発明の「前記複数の点及び前記1つ以上の経路に従って前記試験シーケンスの試験プロセスを制御するように構成された制御回路部」に相当する。
b そして、補正発明の「試験効率を最大化する」ことについて、本願明細書の【0046】に「経路の計算は、制御回路部238によって、例えば、試験効率を最大にし、総試験時間を低減する」と記載されているから、引用発明の「コンピュータ」が「検査個所の移動順序を入れ替えることで総検査時間を短縮する計算機能を有」し、「検査点」の「最適化経路」を「計算」することは、補正発明の「前記制御回路部は、前記複数の点に基づいて試験効率を最大化するように前記1つ以上の経路を計算」することに相当する。
(キ)一致点・相違点について
上記(ア)~(カ)を踏まえると、補正発明と引用発明とは、
(一致点)
「1つ以上の標本の自動試験を行うシステムであって、
1つ以上の試験標本を固定するように構成されたステージと、
前記ステージ及び前記1つ以上の試験標本を位置決めするように構成された1つ以上のアクチュエータと、
ユーザーインターフェースであって、
前記1つ以上の試験標本において試験される複数の点の試験シーケンスを定義する入力を受信し、
前記1つ以上の試験標本上の前記複数の点の位置と、前記試験シーケンスの試験中に前記複数の点を横切るように前記ステージが取る1つ以上の経路と、前記複数の点を定義する入力とを示すグラフィックが構成された、ユーザーインターフェースと、
前記複数の点及び前記1つ以上の経路に従って前記試験シーケンスの試験プロセスを制御するように構成された制御回路部と、
を備え、
前記制御回路部は、前記複数の点に基づいて試験効率を最大化するように前記1つ以上の経路を計算し、
前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む、システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
「グラフィック」が、補正発明では、「表示するように」構成されているのに対し、引用発明では、「表示するように」構成されているのか不明である点。
ウ 相違点の判断
(ア)引用発明は、「経路情報保管確認画面(105)でOKボタン(106)を選択(S0007)することで最適化経路に決定され、ここで最適経路計算開始メニューの選択、経路情報保管確認などはCRT(53)を見ながら入力装置(52)を使って行うもの」であるから、決定される「最適化経路」である「前記複数の検査点を結ぶ経路」についても「CRT(53)」に表示するように構成することは当業者が適宜になし得ることであり、そして、その際「前記複数の検査点を結ぶ経路」のみならず「複数の検査点の位置と、前記複数の検査点の座標、前記複数の検査点の数、前記複数の検査点のうちの最初の点の位置、前記複数の検査点のうちの最後の点の位置、前記複数の検査点のうちの連続した点間の位置の変化」を「示す」「グラフィック」を「CRT(53)」に表示するように構成することは当業者が容易になし得たことである。
(イ)この点、例えば、令和6年1月19日付け拒絶理由通知書において提示した特開2005-44912号公報(以下「公知文献」という。)には、以下aで摘記する事項が記載されている。
a「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置やフォトマスクの製造工程における回路パターンの検査装置に関する。」
「【0065】
図5は、ダイの検査順の設定を示す画面図である。オペレータは、図3に示したフローチャートのステップ312で、図2に示した画面を用いて検査ダイの順番を指定する。図2に示す画面内の検査領域指示領域110で「ランダム」を指定し、マップ部87に表示されたダイ501を図5に示すように順番にクリックしていく。指定されたダイはその順番の番号が表示される。さらに、指定された順番に図5に示すような矢印が表示されると、検査の順番がわかりやすい。検査はこの順番通りのダイ同士を比較して行われる。また、一連の順番を設定した後に、途中に追加指示のダイがあった場合には挿入処理が可能である。この場合は図5に示す途中追加ボタン502を押して挿入する順番の一つ前のダイをクリックし、挿入したいダイをクリックする。追加されたダイ以降のダイ番号は、全体的に番号が一個ずつ変化して再番号が付与される。」
「図5】ダイの検査順の設定を示す画面図。」
そして、図5として、以下の図面が記載されている。
「
[図:0001438801000005.jpg]
」
b 上記図5において四角囲いの1~5は、検査するダイ(ウエハ上の半導体チップ)の箇所、及び検査の順番を示し、四角囲いの1~5を結ぶ矢印は経路を示していることから、図5のマップ87には、検査するダイの箇所、順番、経路の「グラフィック」が示されているといえる。そして、図5は「画面」図であることから、検査するダイの箇所、順番、経路を示すグラフィックが「画面」に「表示」されているといえる。
そうすると、例えば、上記公知文献にも記載されているように、検査する箇所、順番、経路等を示すいわゆるグラフィックを「画面」に「表示」すること自体は、本願の優先日前に当業者において何ら格別な技術ではなく、周知技術ともいえるものである。
c したがって、引用発明において、「複数の検査点の位置と、前記複数の検査点を結ぶ経路と、前記複数の検査点の座標、前記複数の検査点の数、前記複数の検査点のうちの最初の点の位置、前記複数の検査点のうちの最後の点の位置、前記複数の検査点のうちの連続した点間の位置の変化とが」「示される」「グラフィック」を表示するように構成することは当業者が容易になし得たことである。
(ウ)よって、上記(ア)及び(イ)の点から、上記相違点に係る補正発明の構成は、当業者が容易になし得たことである。
エ 効果について
補正発明の効果は、補正発明において特定されている「試験効率を最大化する」ことであるといえる。ここで、当該補正発明の「試験効率を最大化する」との効果については、上記イ(カ)bでも摘記した本願明細書の【0046】に「経路の計算は、制御回路部238によって、例えば、試験効率を最大にし、総試験時間を低減する」ことと記載され、引用発明の「電子線検査装置」も「検査個所の移動順序を入れ替えることで総検査時間を短縮する計算機能を有する」ものであるから、当該補正発明の効果は先行技術である引用発明の効果と比して何ら格別顕著なものではない。
オ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、以下の主張をするのみである。
「(a)引用文献1には、本願の請求項1,12に係る発明の「前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む」構成が記載も示唆もされていません。
(b)したがいまして、本願の請求項1,12に係る発明は、当業者といえども引用文献1に記載された発明から容易に想到し得たものではありません。」
(イ)請求人の主張に対する当審の判断
まず、請求人がかぎ括弧で記載した補正発明(請求項1に係る発明)の上記構成について、「複数の点を定義する入力」には「前記」が付されているから、上記イ(オ)cで述べたように、補正発明においては「グラフィック」が「示す」「複数の点を定義する入力」であり、「前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む」と特定されるものである。
一方、同イ(オ)cで述べたが、引用発明の「複数の検査個所」である「検査点の決定」を「入力装置(52)を使って行う」「入力」は、補正発明の「複数の点を定義する入力」に相当し、ここで、引用発明の「複数の検査個所」である「検査点」は、「試料ステージ」上の「(X、Y)座標」であり「グラフィックとして示される」ものである。
そうすると、引用発明には、「グラフィック」が「示す」「複数の点を定義する入力」であり「前記複数の点を定義する入力は」少なくとも「前記ステージ上の前記複数の点の座標」であるものが記載されているのであるから、上記(ア)で記載した補正発明の構成が引用文献1には記載も示唆もされていないとの請求人の主張は失当である。
カ 小括
よって、補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)まとめ
以上のとおり、補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~19に係る発明は、令和令和6年4月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものであり、上記第2[理由]2(1)で述べたように、「グラフィック」が「示す」ものから「前記複数の点を定義する入力」との限定事項を削除し、さらに、その「前記複数の点を定義する入力」についての「前記複数の点を定義する入力は、前記ステージ上の前記複数の点の座標、該複数の点の行の数、該複数の点の列の数、該複数の点の数、前記1つ以上の試験標本の次元、前記複数の点のうちの最初の点の位置、該複数の点のうちの最後の点の位置、又は該複数の点のうちの連続した点間の位置の変化、のうちの少なくとも1つを含む」との限定事項を削除したものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、以下の理由である。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、具体的には、本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比して、本願発明では、試験シーケンスの試験中に複数の点を横切るようにステージが取る1つ以上の経路を示すグラフィックを表示するのに対し、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がないことを相違点に挙げ、当該相違点について、引用文献1の図5~図7のように複数の検査点を横切るようにステージが取る経路を示すグラフィックを表示することに、格別の困難性はないことを説示している。
<引用文献等一覧>
1.特開2005-302906号公報
3 引用文献
上記引用文献1の記載事項、及びそれから認定される引用発明については、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記1で記載したように補正発明から限定事項を削除したものであるが、上記第2[理由]2(2)イ(キ)で記載した相違点は、当該限定事項を削除しても、本願発明と引用発明とを対比したときに、相違点となるものである。そして、当該相違点については、上記第2[理由]2(2)ウで述べたように、当業者が容易になし得たものであるから、本願発明も、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-018705