特許拒絶査定不服審判
2025-003854
生体組織成分の検出方法、装置及びウェアラブル機器
- 審判番号
- 2025-003854
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-548642
- 請求日
- 2025年03月11日
- 審決日
- 2026年02月03日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】先陽科技有限公司
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】岡部 博史
- 【請求人代理人】稲葉 和久
- 【請求人代理人】吉村 志聡
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P18 .537-Z (G01N) / P18 .121-Z (G01N) / P18 .572-Z (G01N) / P18 .575-Z (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-548642「生体組織成分の検出方法、装置及びウェアラブル機器」拒絶査定不服審判事件〔令和4年8月18日国際公開、WO2022/170880、令和6年2月28日国内公表、特表2024-508717〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)12月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2021年2月11日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和6年7月23日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和7年3月11日に審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、さらに、同年7月10日に上申書が提出されたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年3月11日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正前の請求項1に係る発明
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「 生体組織成分の検出方法であって、
少なくとも一つの所定の波長の入射光を検出領域に照射し、ここで、前記入射光は前記検出領域を通過した後に少なくとも一つの出射位置から出射して少なくとも一つの出射光を形成し、前記入射光の入射位置は少なくとも二つを含むことと、
M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得し、T個の出力光強度を取得し、ここで、各前記出力光強度は一つ又は複数の前記感光面により採集された出射光の光強度値に基づいて処理して得られ、各前記感光面は前記感光面に対応する所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ、各前記感光面の面積と前記感光面の周長との比率は比率閾値以上であり、前記所定のブレ防止範囲は、ブレによる検出結果に対する悪影響を抑制する必要がある範囲であり、1≦T≦Mであることと、
前記少なくとも一つの所定の波長に対応する少なくとも一つの出力光強度に基づいて、少なくとも一つの被測定組織成分の濃度を特定することと、を含む、
生体組織成分の検出方法。」
(2)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、次のとおりである。なお、下線部は補正箇所を示す。
「 生体組織成分の検出方法であって、
少なくとも一つの所定の波長の入射光を検出領域に照射し、ここで、前記入射光は前記検出領域を通過した後に少なくとも一つの出射位置から出射して少なくとも一つの出射光を形成し、前記入射光の入射位置は少なくとも二つを含むことと、
M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得し、T個の出力光強度を取得し、ここで、各前記出力光強度は一つ又は複数の前記感光面により採集された出射光の光強度値に基づいて処理して得られ、各前記感光面は前記感光面に対応する所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ、各前記感光面の面積と前記感光面の周長との比率は比率閾値以上であり、前記比率閾値は0.04mm以上であり、各前記感光面が受信した出射光の目標組織層における平均光路長が総光路長に占める割合は割合閾値以上であり、ここで、前記総光路長は前記出射光が前記検出領域内を伝送する総距離であり、前記割合閾値は、前記感光面の中心と入射光の中心との間の光源-プローブ距離及び組織光学パラメータに関連し、1≦T≦Mであることと、
前記少なくとも一つの所定の波長に対応する少なくとも一つの出力光強度に基づいて、少なくとも一つの被測定組織成分の濃度を特定することと、を含み、
前記所定のブレ防止範囲は、前記検出領域における前記感光面に対応する皮膚組織範囲を表し、前記所定のブレ防止範囲は、前記感光面が1つの検出期間内に出射光を受信する光強度値の相対変化量または標準偏差が第1の所定値未満であること、または、前記光強度値の信号対雑音比が第2の所定値より大きいことを満たす、
生体組織成分の検出方法。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「感光面」について、「各前記感光面の面積と前記感光面の周長との比率」の「比率閾値」を、「0.04mm以上であり、」とする限定を付加すると共に、「感光面」が「各前記感光面が受信した出射光の目標組織層における平均光路長が総光路長に占める割合は割合閾値以上であり、ここで、前記総光路長は前記出射光が前記検出領域内を伝送する総距離であり、前記割合閾値は、前記感光面の中心と入射光の中心との間の光源-プローブ距離及び組織光学パラメータに関連し、」との要件を満たすものとする限定を付加する補正事項と、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「所定のブレ防止範囲」について、「前記所定のブレ防止範囲は、ブレによる検出結果に対する悪影響を抑制する必要がある範囲であり、」とする要件を「前記所定のブレ防止範囲は、前記検出領域における前記感光面に対応する皮膚組織範囲を表し、前記所定のブレ防止範囲は、前記感光面が1つの検出期間内に出射光を受信する光強度値の相対変化量または標準偏差が第1の所定値未満であること、または、前記光強度値の信号対雑音比が第2の所定値より大きいことを満たす」とする要件に置き換える補正事項からなるものである。
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「感光面」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に記載したとおりのものである。
4 当審の判断
本件補正発明が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているか(第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否か)について検討する。
本件補正発明は、「生体組織成分の検出方法」に関する発明であって、「M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得」する工程、及び、「T個の出力光強度を取得」する工程を含むものである。そして、「各前記出力光強度は一つ又は複数の前記感光面により採集された出射光の光強度値に基づいて処理して得られ、各前記感光面は前記感光面に対応する所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ」ると定められている。そうすると、本件補正発明における「M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得」する工程は、「感光面」が、「所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ」るものであるとの要件を満たすことを特定している。そして、本件補正発明は、所定のブレ防止範囲について、「前記検出領域における前記感光面に対応する皮膚組織範囲を表し、前記所定のブレ防止範囲は、前記感光面が1つの検出期間内に出射光を受信する光強度値の相対変化量または標準偏差が第1の所定値未満であること、または、前記光強度値の信号対雑音比が第2の所定値より大きいことを満たす、」と特定している。
しかし、本件補正発明は、「第1の所定値」及び「第2の所定値」の値を具体的に特定していないため、これらの所定値を用いて定義される「光強度値の相対変化量または標準偏差」の範囲、及び、「光強度値の信号対雑音比」の範囲のいずれもが、これらの所定値が設定次第で変動することとなり、範囲が具体的に特定されていないこととなっている。そうすると、「所定のブレ防止範囲」の外縁を具体的に特定していないこととなるため、「所定のブレ防止範囲内の出射位置」に、どのような出射位置が包含されるかを判断することができず、「感光面」が、「所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ」るという要件を満たすものであるか否かを第三者が判断できない。
したがって、本件補正発明における「M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得」する工程は、その「感光面」の範囲の外縁が特定されていないため、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
5 請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書の請求の理由において、本願明細書の段落0034から0038に記載の内容から、「感光面が1つの検出期間内に出射光を受信する光強度値の相対変化量または標準偏差が小さいほど、又は、光強度値の信号対雑音比が大きいほど、脈拍の拍動によるブレの抑制、入射光が検出領域に照射されたスポットの強度分布の変化によるブレの抑制、入射光自体の伝送の不確定性によるブレの抑制等の効果が強くなることは、当業者であれば理解できる」、段落0031の記載から、「検出領域とは、具体的に人体の皮膚組織を指すことが理解される」とし、本件補正により、「所定のブレ範囲内」がどの程度の範囲内であるかは、当業者であれば理解できると主張している。
しかし、本件補正発明が、ブレの抑制等の効果が強い範囲を含むことを特定しているとしても、前記4に記載したとおり、本件補正発明は、「所定のブレ防止範囲」の外縁を特定していないため、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
したがって、請求人の上記主張を採用することができない。
イ また、請求人は、審判請求書の請求の理由において、補正によって、「大面積」及び「比率閾値」が更に具体的に特定され、記載が明確になったと主張している。
しかし、仮に「大面積」及び「比率閾値」が特定されたとしても、「所定のブレ防止範囲」は「大面積」や「比率閾値」により特定されるものではないことから、これにより本件補正発明が「所定のブレ防止範囲」の外縁を特定していないことを解消するものではないため、本件補正発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
したがって、請求人の上記主張も採用することができない。
ウ さらに、請求人は、上申書において、「前記所定のブレ防止範囲は、前記検出領域における前記感光面に対応する皮膚組織範囲を表し、前記所定のブレ防止範囲は、前記感光面が1つの検出期間内に出射光を受信する光強度値の相対変化量または標準偏差が第1の所定値未満であること、または、前記光強度値の信号対雑音比が第2の所定値より大きいことを満たす」との記載は、ブレ防止作用を果たすことができる感光面を規定し、「ブレ防止範囲」を明確に特定しており、請求項1に係る発明は明確であると主張している。
しかし、前記4に記載したとおり、本件補正発明は、「所定のブレ防止範囲」の外縁を特定していないため、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
したがって、請求人の上記主張も採用することができない。
エ なお、請求人は、上申書において、「審判官殿にご審理された結果、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものとして、令和7年3月11日に提出された手続補正書による補正が認められないと判断された場合、又は、前記補正が認められるが、補正後の請求項1~14に係る本願発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないと判断された場合には、どうか再度補正の機会をご許与いただけますと、幸甚でございます。その場合には、出願人は新たな補正を検討させていただきたいと考えております。」と述べている。
しかし、請求人は、「新たな補正」の内容を何も提示していないため、補正の機会を与えるべき理由を見出せない。
6 むすび
以上より、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本件発明
1 本件発明
本件補正は、前記第2の6に記載したとおり却下されることとなったので、本願の請求項1~15に係る発明は、令和6年10月28日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の特許請求の範囲の請求項1~15の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないという理由を含むものである。
3 当審の判断
本件発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、「比率閾値」について、「0.04mm以上であり、」とする限定を省くと共に、「感光面」が「各前記感光面が受信した出射光の目標組織層における平均光路長が総光路長に占める割合は割合閾値以上であり、ここで、前記総光路長は前記出射光が前記検出領域内を伝送する総距離であり、前記割合閾値は、前記感光面の中心と入射光の中心との間の光源-プローブ距離及び組織光学パラメータに関連し、」との要件を満たすものとする限定を省き、「所定のブレ防止範囲」について、「前記所定のブレ防止範囲は、前記検出領域における前記感光面に対応する皮膚組織範囲を表し、前記所定のブレ防止範囲は、前記感光面が1つの検出期間内に出射光を受信する光強度値の相対変化量または標準偏差が第1の所定値未満であること、または、前記光強度値の信号対雑音比が第2の所定値より大きいことを満たす」とする要件を、「前記所定のブレ防止範囲は、ブレによる検出結果に対する悪影響を抑制する必要がある範囲であり、」とする要件に置き換えたものである。
本件発明は、本件補正発明と同様に、「生体組織成分の検出方法」に関する発明であって、「M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得」する工程、及び、「T個の出力光強度を取得」する工程を含むものである。そして、「各前記出力光強度は一つ又は複数の前記感光面により採集された出射光の光強度値に基づいて処理して得られ、各前記感光面は前記感光面に対応する所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ、」ると定められている。ここで、本件発明は、所定のブレ防止範囲について、「前記所定のブレ防止範囲は、ブレによる検出結果に対する悪影響を抑制する必要がある範囲であり、」と特定している。
しかし、本件発明は、「ブレによる検出結果に対する悪影響を抑制する必要がある範囲」の外縁を特定していないため、「所定のブレ防止範囲内の出射位置」に、どのような出射位置が包含されるかを第三者が判断できず、「感光面」が、「所定のブレ防止範囲内の出射位置から出射された出射光の光強度値を取得することができ」るという要件を満たすものであるか否かを第三者が判断できない。
したがって、本件発明における「M個の感光面により採集された各前記出射光に対応する光強度値を取得」する工程は、その「感光面」の範囲の外縁が特定されていないため、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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