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特許異議申立

2019-700973

眼底撮影装置

審判番号
2019-700973
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-264150外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年11月29日
審決日
2020年12月07日
公報発行日
2021年04月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6528933号発明「眼底撮影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【 結 論】
特許第6528933号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕について訂正することを認める。
特許第6528933号の請求項1~3、6に係る特許を維持する。
特許第6528933号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

目次 ▾ 22項目
【 理 由】

第1 手続の経緯

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特許第6528933号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成26年12月26日に出願され、令和元年5月24日にその特許権の設定登録がされ、同年6月12日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~6に係る特許に対し、令和元年11月29日に特許異議申立人 柴田隆史(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年2月20日付けで取消理由が通知され、令和2年4月27日に意見書の提出及び訂正請求がされ、当審よりその意見書及び訂正の請求に対して申立人に意見を求めたが、申立人から意見書の提出はなく、令和2年7月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和2年10月2日に意見書の提出及び訂正請求がされ、当審よりその意見書及び訂正の請求に対して申立人に意見を求めたが、申立人から意見書の提出はなかったものである。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

(1)特許権者が令和2年10月2日にした訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項1~5のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(訂正事項1)

特許請求の範囲の請求項1に「光出射部と、前記光出射部から発せられた光を眼底上で走査するために前記光の進行方向を変える走査部と、」と記載されているのを、「光を出射する光出射部と、前記光出射部から発せられた前記光を眼底上で走査するために前記光の進行方向を変える走査部と、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)

(訂正事項2)

特許請求の範囲の請求項1に「前記対物光学系は、更に、前記複数の波長の光に関して前記対物光学系で生じる倍率色収差を補正する接合レンズを少なくとも含むことを特徴とする」と記載されているのを、「前記対物光学系は、前記複数の波長の光に関して前記対物光学系で生じる倍率色収差を補正する接合レンズを備えると共に、少なくとも一方のレンズ面が非球面形状に形成されることによって前記旋回点における結像の球面収差を抑制する非球面レンズであって、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成される非球面レンズを、前記対物光学系において最も被検眼側に配置されたレンズとして備える」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)

(訂正事項3)

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(訂正事項4)

特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(訂正事項5)

特許請求の範囲の請求項6に「前記非球面レンズにおいて前記被検眼側レンズ面は、所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成されることを特徴とする請求項5又は6記載の眼底撮影装置。」と記載されているのを、

「 光を出射する光出射部と、前記光出射部から発せられた前記光を眼底上で走査するために前記光の進行方向を変える走査部と、被検眼と前記走査部との間に配置され、前記走査部から導かれた前記光が前記走査部の動作に伴って旋回される旋回点を形成する対物光学系と、を含み、前記旋回点を通過して被検眼眼底に導かれた前記光による眼底からの光を用いて被検眼の眼底の画像を撮像する眼底撮影装置において、
前記対物光学系は、前記走査部から導かれる前記光を前記対物光学系の光軸へ向けて折り曲げることによって、眼底における前記光の走査範囲を全角90°以上とするものであり、
前記対物光学系は、少なくとも一方のレンズ面が非球面形状に形成されることによって前記旋回点における結像の球面収差を抑制する非球面レンズを、前記対物光学系において最も被検眼側に配置されたレンズとして備え、
前記非球面レンズは、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成される眼底撮影装置。」に訂正する。

(2)訂正の単位について

訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1~3は、請求項2及び3はいずれも請求項1を引用しているから、訂正後の請求項1~3は一群の請求項である。また、訂正事項3~5に係る訂正前の請求項4~6は、請求項5及び6はいずれも請求項4を引用しているから、訂正後の請求項4~6は、一群の請求項である。

よって、本件訂正は、一群の請求項〔1~3〕、〔4~6〕に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項1は、訂正前の「光出射部」及び「走査部」における不明瞭な記載上の不備を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項1は、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書の【0019】には「説明の便宜上、第1実施形態において、レーザー光出射部11は、単色光のみを出射するものとして説明する。」、【0020】には「レーザー光出射部11からのレーザー光は、穴開きミラー12の開口を通り、レンズ13およびレンズ14を介した後、走査部15に向かう。」と記載されており、これらの記載から導き出される構成である。

よって、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項2は、訂正前の「対物光学系」をより具体的に特定し、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項2は、本件特許明細書等の【0062】には「第3実施形態における第2対物光学系230は、被検眼の近くに配置されるものから順に、第1対物レンズ231および第2対物レンズ232を有する(図7参照)。」、【0069】には「また、第3実施形態において、第2対物レンズ232には、波長が互いに異なる少なくとも2色のレーザー光に関して第2対物光学系230で生じる倍率色収差を補正(抑制)する接合レンズが使用される。」、【0063】には「第3実施形態において、第1対物レンズ231は、非球面レンズである。第1対物レンズ231は、第2旋回点Q(即ち、第2対物光学系230によって形成される旋回点)における結像の球面収差を補正する。」、【0066】には「図7に示すように、第1対物レンズ231は、少なくとも光源側のレンズ面231aが非球面に形成されていてもよい。この場合において、レンズ面231aは、球面収差を軽減するため、第1対物レンズ231の光軸L3から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面で形成されている。」、【0068】には「被検眼側レンズ面231bは、凹面,および凸面のいずれで形成される場合においても、所期する作動距離に対して10倍以上の曲率半径にて形成することが望ましい。」と記載されており、これらの記載から導き出される構成である。

よって、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載を削除するものである。

よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項5は、訂正前の、請求項4の記載を引用し請求項5の記載を引用する請求項6の記載を、独立形式請求項へ改めるとともに、「光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され」ることを発明特定事項とすることにより、レンズ面を具体的に特定し、さらに限定するものである。

よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること。」を目的とし、同条同項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項5の「光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され」ることは、本件特許明細書等の【0066】に「図7に示すように、第1対物レンズ231は、少なくとも光源側のレンズ面231aが非球面に形成されていてもよい。この場合において、レンズ面231aは、球面収差を軽減するため、第1対物レンズ231の光軸L3から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面で形成されている。」との記載から導き出される構成である。

よって、訂正事項5は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括

上記のとおり、訂正事項1~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4~6〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明

上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~3及び6に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に応じて「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3及び6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
光を出射する光出射部と、前記光出射部から発せられた前記光を眼底上で走査するために前記光の進行方向を変える走査部と、被検眼と前記走査部との間に配置され、前記走査部から導かれた前記光が前記走査部の動作に伴って旋回される旋回点を形成する対物光学系と、を含み、前記旋回点を通過して被検眼眼底に導かれた前記光による眼底からの光を用いて被検眼の眼底の画像を撮像する眼底撮影装置において、
前記光出射部は、互いに異なる複数色の可視光を前記光として出射し、
前記対物光学系は、前記走査部から導かれる前記光を前記対物光学系の光軸へ向けて折り曲げることによって、眼底における前記光の走査範囲を全角90°以上とするものであり、
続きを表示(全18行)
前記対物光学系は、前記複数の波長の光に関して前記対物光学系で生じる倍率色収差を補正する接合レンズを備えると共に、少なくとも一方のレンズ面が非球面形状に形成されることによって前記旋回点における結像の球面収差を抑制する非球面レンズであって、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成される非球面レンズを、前記対物光学系において最も被検眼側に配置されたレンズとして備える眼底撮影装置。
【請求項2】
前記接合レンズは、材料の分散が互いに異なる凹レンズと凸レンズとを1枚ずつ貼り合せて形成されており、凸レンズに対し、凹レンズが被検眼側に配置されることを特徴とする請求項1記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記接合レンズは、材料の分散が互いに異なる凹レンズと凸レンズとを1枚ずつ貼り合せて形成されており、凹レンズに対し、凸レンズが被検眼側に配置されることを特徴とする請求項1記載の眼底撮影装置。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
光を出射する光出射部と、前記光出射部から発せられた前記光を眼底上で走査するために前記光の進行方向を変える走査部と、被検眼と前記走査部との間に配置され、前記走査部から導かれた前記光が前記走査部の動作に伴って旋回される旋回点を形成する対物光学系と、を含み、前記旋回点を通過して被検眼眼底に導かれた前記光による眼底からの光を用いて被検眼の眼底の画像を撮像する眼底撮影装置において、
前記対物光学系は、前記走査部から導かれる前記光を前記対物光学系の光軸へ向けて折り曲げることによって、眼底における前記光の走査範囲を全角90°以上とするものであり、
前記対物光学系は、少なくとも一方のレンズ面が非球面形状に形成されることによって前記旋回点における結像の球面収差を抑制する非球面レンズを、前記対物光学系において最も被検眼側に配置されたレンズとして備え、
前記非球面レンズは、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成される眼底撮影装置。」

第4 取消理由(決定の予告)の概要

本件訂正前(令和2年4月27日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のもの)の請求項1~3、6に係る特許に対して、当審が令和2年7月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。なお、本件訂正前の令和2年4月27日付け訂正請求により、請求項4及び5は削除されている。

1 請求項1~3に係る発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献1、2、8、9に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 請求項6に係る発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献1、2、4~9に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

第5 引用文献等

特許異議申立書において、申立人が証拠として提出した甲第1~8号証をそれぞれ引用文献1~8とする。また、本件特許明細書の【特許文献1】を引用文献9とする。

引用文献1:「Handheld simultaneous scanning laser ophthalmoscopy and optical coherence tomography system」、Biomedical Optics EXPRESS、2013年11月、Vol.4、 No.11、2307-2321頁 (甲第1号証)

引用文献2:特開昭57-188234号公報(甲第2号証)
引用文献3:特表2001-512994号公報(甲第3号証)
引用文献4:特開平8-43730号公報(甲第4号証)
引用文献5:特公昭61-25372号公報(甲第5号証)
引用文献6:特表2006-522627号公報(甲第6号証)
引用文献7:特開昭61-85921号公報(甲第7号証)
引用文献8:「最近の内視鏡と眼底カメラの光学系」、光学、第10巻第5号、314-325頁、一般社団法人日本光学会、1981年10月発行(甲第8号証)
引用文献9:特開2009-11381号公報(【特許文献1】)

1 引用文献1について

(1)引用文献1の記載

引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。

(引1ア)

「In this paper, we present a handheld probe and system design that acquires high signal-to-noise ratio (SNR) SLO and OCT images simultaneously with patient exposures safely below the ANSI limit[18].」(第2309頁第43-45行)

(訳)

本稿では、ANSI限界以下の患者の被曝の安全性とともに、高いSN比のSLO及びOCT画像を同時に取得するハンドヘルドプローブおよびシステム設計を紹介する[18]。

(引1イ)

「The SLO and OCT sources were superluminescent diodes (SLDs)operating at 770 ± 8 nm (Inphenix, Livermore, CA) and840 ± 35 nm (Superlum, Moscow, Russia), respectively.」(第2310頁第12~13行)

(訳)

SLO光源及びOCT光源は、それぞれ770±8nm(インフェニックス社、リバモア、カリフォルニア州)及び840±35nm(スーパーラム社、モスクワ、ロシア)で動作するスーパールミネセントダイオード(SLD)であった。

(引1ウ)

「An overview of the optimized optical design of the handheld systemis shown in Fig.1. The SLO and OCT beam paths begin separately and are scanned with separate scanners. The beams were combined at a dichroic mirror just prior to the objective lens.」(第2310頁第47~49行)

(訳)

ハンドヘルドシステムの最適化された光学設計の概要を図1に示す。SLOとOCTの光線経路は別々に始まり、別々の走査部で走査される。対物レンズの直前で、光線はダイクロイックミラーにおいて結合された。

(引1エ)

「Since the f-numbers of the lenses are small given the 20°scan range and the bandwidths of the light sources are relatively wide, careful consideration was taken in choosing a combination of commercially available lenses to minimize both spherical and chromatic aberration. Our solution was to use achromatic doublet lenses to reduce chromatic aberration and split the lens with a 3 to 5 ratio in refractive power in order to gradually refract the scanned beams and thus reduce spherical aberration.」(第2311頁第9~15行)

(訳)

20°の走査範囲ではレンズのF値が小さく、光源の帯域幅が比較的広いので、球面収差と色収差の両方を最小限に抑えるために、市販のレンズの組み合わせを選択する際には慎重な考慮が払われた。我々の解決策は、色収差を減らすために色消しダブレットレンズを使用し、走査ビームを徐々に屈折させて球面収差を減らすためにレンズを屈折力の3:5の比率で分割する、というものだった。

(引1オ)第2311頁第1図

(訳)

凡例

青:SLOの光路

赤:OCTの光路

M1-4:ピアノミラー
DM:ダイクロイックミラー
BS:ビームスプリッター
L1:SLOコリメートレンズ
L2:SLO集光レンズ
L3:OCTコリメートレンズ
L4,5,6:複合レンズ
XY1:SLO走査部
XY2:OCT走査部
PH:SLO共焦点ピンホール
Eye:被検眼

(引1カ)

「Fig.1. A side view schematic of the handheld SLO-OCT design. All optical components are labeled and described in the legend. The SLO source is a 770 nm SLD with 15 nm bandwidth. The OCT source is an 840nm SLD with 70 nm bandwidth. The optical paths shown are the superposition of both the illumination and collection paths.」(第2311頁図1脚注)

(訳)

図1 ハンドヘルドSLO-OCT設計の側面概略図。すべての光学部品はラベルされており、凡例に記載されている。SLO光源は15nmの帯域幅を有する770nmのSLDである。OCT光源は帯域幅70nmの840nmのSLDである。示されている光路は、照明光路と集光路の両方の重ね合わせである。

(2)引用文献1に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献1には、次の技術的事項(以下「引用文献1に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 SLO及びOCT画像を同時に取得するハンドヘルドプローブにおいて、
SLO光源及びOCT光源は、それぞれ770±8nm及び840±35nmで動作するスーパールミネセントダイオード(SLD)であり、
SLOとOCTの光線経路は別々に始まり、別々の走査部により20°の走査範囲で走査され、対物レンズの直前で、光線はダイクロイックミラーにおいて結合され、
色収差を減らすために色消しダブレットレンズを使用し、走査ビームを徐々に屈折させて球面収差を減らすためにレンズを屈折力の3:5の比率で分割すること。」

2 引用文献2について

(1)引用文献2の記載

引用文献2には、次の事項が記載されている。

(引2ア)

「 本発明の目的は、非球面が1面のみの簡単な構成で極めて広画角を有しながら、優れた結像性能を有する眼底撮影用光学系を提供することにある。
本発明は、対物レンズを通して被検眼へ照明光を供給するための照明系と、該対物レンズを通して被検眼眼底を観察及び撮影するための観察開口とを有する眼底撮影用光学系において、前記対物レンズは被検眼側より順に、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズの第1群(G1)と、両凸レンズの第2群(G2)と、両凸レンズと両凹レンズとの貼合せからなり、前記観察開口側に凹面を向けた第3群(G3)とを有し、該第3群(G3)の前記凹面は曲率中心を該観察開口位置に有するとともに、前記第1群(G1)の凹面は該対物レンズに関して前記観察開口と共役な位置に曲率中心を有し、さらに、前記照明光学系は第1と第2の黒点を有し、該第1の黒点像を前記対物レンズ第1群(G1)の被検眼側近傍に投影するとともに、該第2黒点の像を前記第3群(G3)の両凸レンズ内に投影するものである。」(第1頁右下欄第13行~第2頁左上欄第14行)

(引2イ)

「 上記の条件を満すことのできる対物レンズの諸元値の例を示す。但し、r1、r2、r3・・・・・・は、被検者眼側から順次各レンズ面の曲率半径、d1、d2、d3……は、各レンズの中心厚及び空気間隔、nd及びVdは各レンズの屈折率、アッベ数をそれぞれ表わす。
ここで、第3群の被検眼側の面、すなわち第5面(r5)は、この対物レンズ(1)に関して、被検眼角膜と観察開口(7)とが共役になるという条件で、球面収差が最も良好に補正されるような非球面で形成され、上記のr5の値はその基準球面の曲率半径を表わしている。
上記実施例の対物レンズについて、被検眼(E)の角膜と観察開口(7)との共役関係における球面収差を第4図に示し、またこの対物レンズによる眼底像の歪曲収差を第5図に示す。これらの収差図から分るように、瞳の球面収差は十分良好に補正されており、歪曲収差も90°という超広画角にもかかわらず実用上十分に補正されている。
・・・
以上の如く、本発明によれば、90°という極めて広い画角を有しつつ、フレア光が十分除去されるとともに、優れた結像性を有する眼底撮影用光学系が達成される。しかもその対物レンズは3群4枚のレンズからなり、非球面を1つの面に採用するだけという簡単な構成であり、極めて有用である。」(第3頁左上欄第15行~左下欄第17行)

(引2ウ)図面

(2)引用文献2に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 対物レンズを通して被検眼へ照明光を供給するための照明系と、該対物レンズを通して被検眼眼底を観察及び撮影するための観察開口とを有する眼底撮影用光学系において、
前記対物レンズは被検眼側より順に、被検眼側に凹面を向けた正メニスカスレンズの第1群(G1)と、両凸レンズの第2群(G2)と、両凸レンズと両凹レンズとの貼合せからなり、前記観察開口側に凹面を向けた第3群(G3)とを有し、該第3群(G3)の前記凹面は曲率中心を該観察開口位置に有し、
第3群の被検眼側の面は、この対物レンズ(1)に関して、被検眼角膜と観察開口(7)とが共役になるという条件で、球面収差が最も良好に補正されるような非球面で形成され、
対物レンズが90°という超広画角を有すること。」

3 引用文献3について

(1)引用文献3の記載

引用文献3には、次の事項が記載されている。

(引3ア)

「(57)【要約】
広い視野をもつレーザ走査する検眼鏡(10)が、様々の深さでの患者の眼の内部のカラー像を提供する一方で、患者は、彼の視覚機能を検査するように作られた固定の目標物が、同時に提示される。レーザ走査する検眼鏡(10)は、照射装置(30)と、捕捉及び検出装置(32)と、目標物の像生成装置(38)とを含んでおり、これらの装置の各々の光路は、捕捉される像の輝度むらをなくすために、患者の眼からの主要な光線が阻止されるのを防ぐため、1つ又はそれ以上の光スプリッタによって別けられている。可動な反射面をもつ唯一つの走査器を含む単純化された走査装置が採用されている。光学要素上に衝突する光点から光線(76)を生成するために、受動的で、静止した光学要素(74)が採用されており、この光線は、1つの走査器によって、その光線に垂直な方向で走査される。」

(引3イ)

「【特許請求の範囲】
1.レーザ走査する検眼鏡において、この検眼鏡が、
レーザ光源と、
前記レーザ光から2次元領域の照明を発生する走査装置と、
続きを表示(全12行)
前記走査装置から前記照明を患者の眼の方に反射し、患者の眼から反射された光がそこを通過する第1の光スプリッタと、
前記患者の眼から反射された光を検出し、この検出された光から前記眼の内部の像を生成する像捕捉装置と、
前記患者の眼から反射され、前記第1の光スプリッタを通った光を受け、この光を前記像捕捉装置に反射する、前記第1の光スプリッタと共軸の第2の光スプリッタと、かつ
目標物の像を生成するビデオディスプレイであって、前記目標物の像が患者によって視覚できるよう、前記ビデオディスプレイからの光が前記第1と第2の光スプリッタを通って前記患者の眼に達するように、前記第1と第2の光スプリッタに対して置かれている前記ビデオディスプレイと、
を具備しているレーザ走査する検眼鏡。
2.前記ディスプレイから患者の眼に目標物の像の焦点を合わせるために、前記患者の眼と前記第1の光スプリッタとの間に配置された非球面レンズを含んでおり、前記非球面レンズが、前記照明光を前記第1の光スプリッタから患者の瞳孔にほぼ近い領域に焦点を合わせ、かつ前記非球面レンズが、患者の眼から反射された光をさえぎり、このさえぎられた光を、前記非球面レンズと前記第1の光スプリッタ間に配置された像平面上に焦点を合わせる請求項1に記載のレーザ走査する検査鏡。
・・・
7.前記レーザ光源が、前記走査装置によって同時に走査され、前記第1の光スプリッタによって患者の眼の方に反射される多数の波長を有するレーザ光を発生し、かつ前記像捕捉装置が、視野レンズの動きに応答して、様々の深さでの眼の異なる部分の像を自動的に捕捉し、生成するための前記可動な視野レンズを含んでいるところの請求項1に記載のレーザ走査する検眼鏡。」

(引3ウ)

「 患者の眼と第1の光スプリッタとの間に置かれたこの非球面対物レンズが、本発明のレーザ走査する検眼器の光学装置を非常に単純化しており、かつその光学要素を非常に少なくしている。」(第18頁第6行~第8行)

(引3エ)

「 異なった深さでの患者の眼12の内部のカラー像を捕捉し、検出するために、眼の像の捕捉及び検出装置32は、可動な視野レンズ34を含んでいる。その上特に図2と6に示されるように、患者の眼12の眼底66上の照明された点104は、光線106と108とによって示される光を反射し、反射された光は、非球面レンズ60によって像平面58上の点110に、捕捉され焦点を合わされる。患者の眼から反射された光は、光スプリッタ40を通って、患者の眼12からの光を眼の像の捕捉及び検出装置32の可動な視野レンズ34に反射する光スプリッタ42に行く。患者の眼から反射された光は、視野レンズ34を通過し、そこから偏光フィルム112を通って、電荷結合デバイス(CCD)カメラ118の1対のレンズ114と116よりなる光学装置で焦点を合わせる。レンズ114と116とが、患者の眼から反射された光線をCCDカメラ118の像平面上の一点120に集める。
視野レンズ34の位置を図6に示される位置から、図7の122で示される位置に変えること、それにより患者の眼から更に遠くに動かされることによって、実像平面58が、眼の像の捕捉及び検出装置32により近い位置に移動する。像平面のこの移動によって、レーザ走査する検眼鏡の焦点が、患者の眼の眼底66にもはやなく、眼の内部の位置に移る。視野レンズを位置122に動かすことによって焦点の移動をもたらす患者の眼の内部のこの点126は、移動された像平面上の位置124での点128に対応している。この点128は、CCDカメラ118上の点120で順に焦点を合わせられている。こうして、眼の像の捕捉及び検出装置32の視野レンズ34を異なった位置に単に動かすことによって、深さを変えた患者の眼12の内部の様々の像を得ることができる。」(第24頁第9行~第25頁第2行)

(引3オ)

「 前述の記載から明らかなように、本発明の非球面レンズ60は、LCD37からの目標物の像を患者の眼12に焦点を合わせる。非球面レンズ60は、照明装置30からの照明光を、ほぼ瞳孔近くの患者の眼の領域に焦点を合わせる。かつ非球面レンズ60は、患者の眼12から反射された光をさえぎり、このさえぎられた光を、非球面レンズと眼の像の捕捉及び検出装置32との間に配置されている像平面58上に焦点を合わせる。そのような非球面レンズを提供するために、レンズの各々の表面62と64は、好ましくは多項式の関数によって表わされる。
ここでA2,A4,A6は定数であり、Cは表面の曲率を表わし、ccは円錐の定数を表わしている。レンズ60の度の強い表面62に対しては、これらの数値は、以下の範囲内にある。
0.0<A2<0.003
-0.02<A4<0.02
続きを表示(全15行)
-0.01<A6<0.01
- 0.1<C<0.0
- 2.0<cc<0.0
レンズ60の度の弱い表面64に対しては、これらの数値は、以下の範囲内にある。
-0.003<A2<0.0
0.0<A4<0.001
-0.001<A6<0.001
0.03<C<0.06
-2.0<cc<0.0
更に弱い表面64の曲率Cは、強い表面62の曲率Cの-1/2倍よりは、好ましくは大きい。
本発明の好ましい実施の形態では、レンズ60の強い表面62は、以下の数値である。A2=0.000444,A4=0.000001,A6=0.0,C=-0.092,cc=-0.933これに対し、レンズ60の弱い表面64は、以下の数値である。A2=-0.00243,A4=-0.0000012,A6=0.0,C=0.045,cc=-1.213」(第25頁下4行~第26頁下3行)

(引3カ)

「 レンズ60の直径が変えられるが、好ましい直径は、35mmである。非球面レンズ60は、従来のレーザ走査する検眼鏡に比べて、レーザ走査する検眼鏡の極端に広い60°の視野を形成する。更に非球面レンズ60によって形成された実像は、実質的にひずみがない。」(第26頁下2行~第27頁第2行)

(引3キ)図2

(2)引用文献3に記載された発明

上記(引3オ)におけるレンズ設計を見ると、非球面レンズは、両面を光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成し、患者の目の方をレンズの度の強い表面とし、その反対の方をレンズの度の弱い表面としたことが理解でき、この点を含め上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「 多数の波長を有するレーザ光を発生するレーザ光源と、
前記レーザ光から2次元領域の照明光を発生する走査装置と、
前記走査装置から前記照明光を患者の眼の方に反射し、患者の眼から反射された光がそこを通過する第1の光スプリッタと、
前記患者の眼から反射された光を検出し、この検出された光から前記眼の内部のカラー像を生成する像捕捉装置と、
前記患者の眼と前記第1の光スプリッタとの間に配置され、前記照明光を前記第1の光スプリッタから患者の瞳孔にほぼ近い領域に焦点を合わせる非球面対物レンズと、
を具備しているレーザ走査する検眼鏡であって、
前記像捕捉装置が、眼底を含む様々の深さでの眼の異なる部分のカラー像を自動的に捕捉し、生成するための可動な視野レンズを含んでおり、
前記非球面対物レンズは、両面を光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成し、患者の目の方をレンズの度の強い表面とし、その反対の方をレンズの度の弱い表面とし、レーザ走査する検眼鏡の極端に広い60°の視野を形成し、更に、前記非球面対物レンズによって形成された実像には、実質的にひずみがない、
レーザ走査する検眼鏡。」

4 引用文献4について

(1)引用文献4の記載

引用文献4には、次の事項が記載されている。

(引4ア)

「【請求項1】単一の両凸レンズからなり、該両凸レンズの被検眼側の面および検者側の面のうち少なくとも一方の面は非球面に形成され、
前記両凸レンズのd線に対する屈折率およびアッベ数をそれぞれnd およびνd としたとき、
65<νd
nd <1.67
の条件を満足することを特徴とする倒像鏡。」

(引4イ)

「【0019】また、図1に示すように、図中破線で示す球面形状と比較すると、本発明の非球面形状では、レンズの周辺に向かって曲率が小さくなって行くのでプリズム偏向により色収差が減少すると共に、レンズの外径、有効径を大きくする事ができ、その結果として視界を大きくとることができる。よって、本発明の倒像鏡により、被検眼眼底を十分にむらなく照明すると共に、軸上色収差、倍率色収差が少なく像面湾曲、非点収差等が良好に補正された被検眼の眼底像を観察することができる。」

(引4ウ)図1

(2)引用文献4に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用文献4に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 単一の両凸レンズからなり、該両凸レンズの被検眼側の面および検者側の面のうち少なくとも一方の面は非球面に形成される倒像鏡において、
非球面形状では、レンズの周辺に向かって曲率が小さくなって行き、軸上色収差、倍率色収差が少なく像面湾曲、非点収差等が良好に補正された被検眼の眼底像を観察することができること。」

5 引用文献5について

(1)引用文献5の記載

引用文献5には、次の事項が記載されている。

(引5ア)

「1 対物レンズと、穴あき反射鏡を介して該対物レンズを通して被検眼へ照明光を導くための照明系とを有する眼底の観察及び撮影用光学系において、前記対物レンズは、被検眼側から順に前記穴あき反射鏡側へより強い凸面を向けた両凸レンズからなる1群と、両凸レンズと両凹レンズとの貼合せからなり前記穴あき反射鏡側に凹面を向けた第2群とを有し、前記対物レンズの被検眼側から数えて第1面、第2面及び第3面がそれぞれ収斂性の屈折力を有し、前記照明系中に第1の黒点と第2の黒点とを配置して、該第1黒点の像を前記対物レンズの第1群の前記被検眼側に形成すると共に、前記対物レンズの第2群の両凸レンズ中に前記第2黒点の像を形成し、該第1黒点によつて前記対物レンズの第2面で反射される有害光を防止すると共に、該第2黒点によつて前記対物レンズの第1面、第3面及び対物レンズ両凸レンズと両凹レンズとの貼合せ面で反射される有害光を防止し、前記対物レンズの合成焦点距離をf、前記対物レンズの第2面及び第3面の曲率半径をそれぞれ、r2、r3とするとき、
0.7f<|r2|<2.0f
0.6f<|r3|<2.0f
の各条件を満足することを特徴とする眼底観察及び撮影用光学系。
2 特許請求の範囲第1項記載の眼底観察及び撮影用光学系において、前記対物レンズの第3面を非球面としたことを特徴とする眼底観察及び撮影用光学系。」(特許請求の範囲の欄)

(引5イ)

「 以下に本発明による対物レンズの諸元値の例を示す。ここでr1,r2,r3…は被検眼側から順次の各レンズ面の曲率半径、d1,d2,d3…は各レンズの中心厚及び空気間隔、nd及びvdは各レンズの屈折率、アツベ数をそれぞれ表わす。
第3面r3は、この対物レンズに関して被検眼角膜と穴あき反射鏡の開口部2aとが共役になるという条件の下で球面収差が最も良好に補正されるような非球面で形成され、上記のr3の値はその基準球面の曲率半径を表わしている。尚、上記実施例における第1面頂点から被検眼角膜までの距離、即ち作動距離は40mmであり、対物レンズの合成焦点距離の1.3倍以上という大きな値である。」(第58頁右欄第42行~第59頁左欄17行)

(引5ウ)第1図

(2)引用文献5に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献5には、次の発明(以下「引用文献5に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 対物レンズと、穴あき反射鏡を介して該対物レンズを通して被検眼へ照明光を導くための照明系とを有する眼底の観察及び撮影用光学系において、
前記対物レンズは、被検眼側から順に前記穴あき反射鏡側へより強い凸面を向けた両凸レンズからなる1群と、両凸レンズと両凹レンズとの貼合せからなり前記穴あき反射鏡側に凹面を向けた第2群とを有し、前記対物レンズの被検眼側から数えて第1面、第2面及び第3面がそれぞれ収斂性の屈折力を有し、前記対物レンズの第3面を非球面とし、第1面の曲率半径が380.0mmであり、第1面頂点から被検眼角膜までの距離、即ち作動距離は40mmであること。」

6 引用文献6について

(1)引用文献6の記載

引用文献6には、次の事項が記載されている。

(引6ア)

「【請求項1】
少なくとも2つのレンズが、それらの光軸を基準として照明光路および結像光路に対し傾斜配置されていて、該レンズの光軸と照明光路および結像光路の光軸が1つの平面内にある、少なくとも4つのレンズから成るレンズ系で構成された、実質上同軸の照明光路と結像光路を有する、特に眼底カメラ用の光学システムであって、少なくともまた別な2つのレンズがそれらの光軸を基準として照明光路、結像光路に対し傾斜配置されていること、およびこの別な2つのレンズの光軸と照明光路、結像光路の光軸が、照明光路と結像光路の光軸に実質上沿うように第1の平面と交差する第2の平面内にあることを特徴とする光学システム。」

(引6イ)

「【0007】
図1には本発明に基づく光学システムが模式側面図として描かれている。簡易化のため、患者の眼、光源、撮像装置あるいは観察システムなど本発明にとって重要でない部分は図から省いてある。4つのレンズ1、2、3、4は、眼底カメラの照明光路および結像光路の定義付けをする光軸5に沿って配置されているが、その配置はレンズ1、2が図1の図平面6に対して傾斜するように、他方レンズ3、4が図平面6内にあって光軸5に対して傾斜するように、結果としてそれらの光軸7および8も同様に図平面6内に来るようになされている。
図2は光学システムの上面図を示しており、したがって、図平面9は図1の図平面6に対して垂直方向にある。レンズ1および2は図平面9内にあって、それらの光軸10および11が図平面9内に来るように傾斜配置されている。したがって、レンズ3および4は図平面9に対して傾斜配置されている。
その場合これらのレンズは、光軸5を持つ結像光路、照明光路の照明光線束がレンズ1、2、3、4のうちのいずれについてもその中央領域を通らないように、すなわちレンズ1、2、3、4の光軸10、11、7、8が図1および2に模式図解された光線束の外側に来るように配置されている。
次表には本発明の好ましい実施態様における光学データが列挙されている。表中、接尾符合νの付いたのがレンズ1、2、3、4の前側、接尾符合hの付いたのが後側である。
【表1】
」

(2)引用文献6に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用文献6に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 眼底カメラ光学システムにおいて、
対物レンズが、曲率半径が無限大、隣接面との距離が39.42477mmであること。」

7 引用文献7について

(1)引用文献7の記載

引用文献7には、次の事項が記載されている。

(引7ア)

「2.特許請求の範囲
1)被検眼へ照明光を供給するための照明光学系と、観察開口絞りを通して被検眼の眼底を観察・撮影する光学系と、該照明光学系と該観察・撮影光学系とに共用する対物レンズとを有する眼底観察撮影装置において、該対物レンズを、被検眼側に凹面を向けた貼合せ正メニスカスレンズの第1成分と、前記観察開口絞り側に凹面を向けた貼合せ正メニスカスレンズの第2成分とで構成し、該第1成分の前記被検眼側凹面の曲率中心は該対物レンズ全体に関して該観察開口絞りと共役な位置に一致し、該第2成分の観察開口絞り側凹面の曲率中心は該観察開口絞りの位置に一致し、該第1成分及び該第2成分各々の接合面による該観察開口絞りの反射共役位置をほぼ一致させると共に、該両成分の各接合面での反射による該観察開口絞り像の倍率をほぼ一致させ、前記照明光学系内に、該第1成分及び該第2成分各々の接合面による該観察開口絞りの反射共役位置へ第1黒点像を投影するための第1遮光部材を配置すると共に、前記第1成分の観察開口絞り側凸面による該観察開口絞りの反射共役位置へ第2黒点像を投影するための第2遮光部材を配置し、また前記第2成分の被検眼側凸面による該観察開口絞りの反射共役位置へ第3黒点像を投影するための第3遮光部材を配置したことを特徴とする眼底観察撮影装置。」

(引7イ)

(2)引用文献7に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献7には、次の発明(以下「引用文献7に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 被検眼へ照明光を供給するための照明光学系と、観察開口絞りを通して被検眼の眼底を観察・撮影する光学系と、該照明光学系と該観察・撮影光学系とに共用する対物レンズとを有する眼底観察撮影装置において、
該対物レンズを、被検眼側に凹面を向けた貼合せ正メニスカスレンズの第1成分と、前記観察開口絞り側に凹面を向けた貼合せ正メニスカスレンズの第2成分とで構成すること。」

8 引用文献8について

(1)引用文献8の記載

引用文献8には、次の事項が記載されている。

(引8ア)

「 従来の眼底力メラの撮影範囲は視界にして約30度であるが、診断上のニーズによりより広い視角を観察または撮影し得る眼底カメラが求められ、45度から最近は60度に及ぶものも開発されるようになった9)。・・・眼底像そのものに対する収差も、非点収差や歪曲が大きく、狭角ではあまり問題にならなかった色収差も、広角化には補正が必要となる。・・・以上のように、眼底カメラ用対物レンズの収差は、穴あき鏡開孔に対する収差と、眼の瞳孔を通してみえる眼底像に対する収差の両方を考える必要があるが、特に広角対物レンズは、従来の30度程度の標準型対物より厳しい収差補正が要求され、種々のタイプが開発されている。」(第321頁右欄第20行~第322頁左欄第10行)

(2)引用文献8に記載された技術的事項

上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献8には、次の発明(以下「引用文献8に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 眼底カメラ用対物レンズの収差について、狭角ではあまり問題にならなかった色収差も、広角化には補正が必要となること。」

9 引用文献9について

(1)引用文献9の記載

引用文献9には、次の事項が記載されている。

(引9ア)

「【請求項1】
レーザ光源から発せられたレーザ光を被検眼眼底に照射する照射光学系と、前記レーザ光源から発せられたレーザ光を眼底上で二次元的に走査するための走査手段と、被検眼眼底に照射されたレーザ光を受光素子にて受光する受光光学系と、を有し、被検眼の眼底画像を撮影する走査型レーザ検眼鏡において、
前記眼底画像の撮影画角を広角化させるために前記検眼鏡の検査窓近傍に装着可能な広角レンズアタッチメントであって、
少なくとも2枚の凸メニスカスレンズをその凹面側を被検眼側として直列配置することによりなる広角レンズ系を有し、前記検眼鏡の撮影光軸に対して前記広角レンズ系が傾斜された状態で配置される広角レンズアタッチメントを、備えることを特徴とする走査型レーザ検眼鏡。」

(2)引用文献9に記載された技術的事項

上記(1)の記載を総合すると、引用文献9には、次の発明(以下「引用文献9に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。

「 レーザ光源から発せられたレーザ光を被検眼眼底に照射する照射光学系と、前記レーザ光源から発せられたレーザ光を眼底上で二次元的に走査するための走査手段と、被検眼眼底に照射されたレーザ光を受光素子にて受光する受光光学系と、を有し、被検眼の眼底画像を撮影する走査型レーザ検眼鏡において、
前記眼底画像の撮影画角を広角化させるために前記検眼鏡の検査窓近傍に装着可能な広角レンズアタッチメントを備えること。」

第6 当審の判断

本件発明1は独立形式請求項であるが、本件発明6を減縮した発明であるから、まず、本件発明6から判断する。

1 本件発明6について

(1)対比

本件発明6と引用発明3とを対比する。

ア 引用発明3の「レーザ光を発生するレーザ光源」は、本件発明6の「光を出射する光出射部」に相当する。

イ 引用発明3の「前記レーザ光から2次元領域の照明光を発生する走査装置」は、前記「照明光」を「眼底」で「レーザ走査する」ために用いるから、本件発明6の「前記光出射部から発せられた光を眼底上で走査するために前記光の進行方向を変える走査部」とは、「前記光出射部から発せられた光を眼底上で走査する走査部」の点で共通する。

ウ 引用発明3の「前記患者の眼と」「前記走査装置から前記照明光を患者の眼の方に反射し、患者の眼から反射された光がそこを通過する」「第1の光スプリッタとの間に配置され」る「非球面対物レンズ」は、本件発明6の「被検眼と前記走査部との間に配置され」る「対物光学系」に相当する。

エ 引用発明3の「前記走査装置」が「走査」する「前記照明光を前記第1の光スプリッタから患者の瞳孔にほぼ近い領域に焦点を合わせる非球面対物レンズ」は、ここでの「焦点」が本件発明6の「旋回点」に相当するところ、本件発明6の「前記走査部から導かれた前記光が前記走査部の動作に伴って旋回される旋回点を形成する対物光学系」に相当する。

オ 引用発明3の「前記患者の眼から反射された光を検出し、この検出された光から前記眼の内部のカラー像を生成する」「検眼鏡」は、ここでの「眼の内部のカラー像」に「眼底」「のカラー像」を含むことから、本件発明6の「前記旋回点を通過して被検眼眼底に導かれた前記光による眼底からの光を用いて被検眼の眼底の画像を撮像する眼底撮影装置」に相当する。

カ 引用発明3の「非球面対物レンズは、」「レーザ走査する検眼鏡の極端に広い60°の視野を形成」することと、本件発明6の「前記対物光学系は、前記走査部から導かれる前記光を前記対物光学系の光軸へ向けて折り曲げることによって、眼底における前記光の走査範囲を全角90°以上とする」こととは、「前記対物光学系は、前記走査部から導かれる前記光を前記対物光学系の光軸へ向けて折り曲げることによって、眼底における前記光の走査範囲を極端に広くする」点で共通する。

キ 引用発明3において、「両面を」「非球面形状に形成し」、「前記非球面対物レンズによって形成された実像には、実質的にひずみがない」ことは、「非球面対物レンズ」の「両面を」「非球面形状に形成し」たことによって前記「焦点」における結像の球面収差を補正しているといえることから、引用発明3の「前記患者の眼と前記第1の光スプリッタとの間に配置され、前記照明光を前記第1の光スプリッタから患者の瞳孔にほぼ近い領域に焦点を合わせる非球面対物レンズ」は、本件発明6の「前記対物光学系は、少なくとも一方のレンズ面が非球面形状に形成されることによって前記旋回点における結像の球面収差を抑制する非球面レンズを、前記対物光学系において最も被検眼側に配置されたレンズとして備え」ることに相当する。

ク 引用発明3の「前記非球面対物レンズは、両面を光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成」することと、本件発明6の「前記非球面レンズは、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成される」こととは、「前記非球面レンズは、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所定の曲率半径で形成される」点で共通する。

(2)一致点・相違点

本件発明6と引用発明3とを対比すると、次の点で一致し、次の各点で相違する。

(一致点)

「 光を出射する光出射部と、前記光出射部から発せられた前記光を眼底上で走査する走査部と、被検眼と前記走査部との間に配置され、前記走査部から導かれた前記光が前記走査部の動作に伴って旋回される旋回点を形成する対物光学系と、を含み、前記旋回点を通過して被検眼眼底に導かれた前記光による眼底からの光を用いて被検眼の眼底の画像を撮像する眼底撮影装置において、
前記対物光学系は、前記走査部から導かれる前記光を前記対物光学系の光軸へ向けて折り曲げることによって、眼底における前記光の走査範囲を極端に広くするものであり、
前記対物光学系は、少なくとも一方のレンズ面が非球面形状に形成されることによって前記旋回点における結像の球面収差を抑制する非球面レンズを、前記対物光学系において最も被検眼側に配置されたレンズとして備え、
前記非球面レンズは、前記光出射部側のレンズ面が光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成され、且つ、前記被検眼側のレンズ面が所定の曲率半径で形成される眼底撮影装置。」

(相違点1)

走査部が、本件発明6では、「前記光の進行方向を変える」のに対し、引用発明3では、「2次元領域の照明光」の進行方向を変えることの特定はない点。

(相違点2)

対物光学系は、本件発明6では、全角「90°以上」とするのに対し、引用文献3では、「極端に広い60°」であるものの、90°以上とすることの特定はない点。

(相違点3)

非球面レンズは、本件発明6では、「被検眼側のレンズ面が所要作動距離に対して10倍以上の曲率半径で形成される」のに対し、引用発明3では、「患者の目の方を強い表面とし」た「非球面形状に形成し」た点。

(3)判断

事案に鑑み上記相違点3について検討する。

引用文献5に記載の技術的事項によれば、対物レンズの被検眼側レンズ面を、所要作動距離に対して9.5倍の曲率半径で形成することが理解できるものの、一方で、引用発明3の「非球面対物レンズは、両面を光軸から離れた位置ほど曲率半径が大きくなるような曲面による非球面形状に形成し、患者の目の方をレンズの度の強い表面とし、その反対の方をレンズの度の弱い表面とし、レーザ走査する検眼鏡の極端に広い60°の視野を形成し、更に、前記非球面対物レンズによって形成された実像には、実質的にひずみがない」ようにレンズ設計をしたもので、このようにレンズ設計されている引用発明3の非球面対物レンズにおいて、患者の目の方のレンズ面に対し、引用文献5に記載の技術的事項のごとく、所要作動距離に対して9.5倍の曲率半径で形成するという条件を適用した場合、該条件を満たし実像に実質的にひずみが生じない非球面対物レンズを設計することは、当業者といえども容易なことでないから、上記相違点3に係る本件発明6の構成を得ることは、当業者にとって容易なことでない。

また、引用文献1、2、4、6~9に記載の技術的事項を考慮しても、引用発明3において上記相違点3に係る本件発明6の構成とすることは容易なことでない。

そして、本件発明6は、上記相違点3に係る本件発明6の構成を採用することで、本願特許明細書の【0085】に記載されているように、最も被検眼側に設置された非球面レンズによって、作動距離の確保を容易できるという作用・効果を奏するものである。

(4)小括

したがって、本件発明6は、上記相違点1及び2を検討するまでもなく、引用発明3及び引用文献1、2、4~9に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

2 本件発明1~3について

本件発明1~3は、本願発明6を減縮した発明であるから、本件発明6と同様の理由により、引用発明3及び引用文献1、2、4~9に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

3 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について

特許異議申立人は、本件の請求項1~3に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)及び引用文献2(甲第2号証)から容易に想到し得る旨を主張している。しかし、上記1(3)で検討したとおり、相違点3は引用文献1の存在を前提としても容易であるとはいえない以上、引用文献1と引用文献2とを組み合わせても本件の請求項1~3に係る発明にはならない。

したがって、特許異議申立人の主張する特許異議申立の理由によっては、本件の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本件発明1~3、6に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件の請求項1~3、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

したがって、本件発明1~3、6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるとはいえない。

そして、本件の請求項4及び5に係る特許は、訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項4及び5に対してなされた特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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2019-700973

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