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特許異議申立

2024-700989

鉄イオン供給用鉄基粉末およびそれを用いた植物育成改善材

審判番号
2024-700989
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-554710
登録番号
7468680
請求日
2024年10月09日
審決日
2026年04月06日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】JFEスチール株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】齋藤 恭一
  • 【権利者代理人】川原 敬祐
  • 【異議申立人】大橋 宏基
  • 【異議申立人】高橋 良和
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 門 良成
  • 審判官 殿川 雅也
分類
P1651.121-ZAA(A01G) / P1651.851-ZAA(A01G) / P1651.853-ZAA(A01G) / P1651.857-ZAA(A01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第126条第6項、特許法第126条第6号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第7468680号発明「鉄イオン供給用鉄基粉末を用いた稲育成改善材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7468680号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書及び請求項〔1-2〕、3及び4について訂正することを認める。 特許第7468680号の請求項3、4に係る特許を取り消す。 特許第7468680号の請求項1、2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。

理由

理 由 第1 本件特許発明について 特許第7468680号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和4年6月6日(優先権主張 令和3年6月7日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、令和6年4月8日付けでその特許権の設定登録がされ、同月16日付けで特許掲載公報が発行されたところ、令和6年10月9日に特許異議申立人 大橋 宏基及び高橋 良和(以下「申立人」という。)より本件特許の請求項1ないし3に対して特許異議の申立てがされた。 その後の手続の経緯は、概略以下のとおりである。 令和6年12月 6日付け:取消理由通知 令和7年 2月 5日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年 4月 9日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 同年 5月 1日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知 同年 6月 5日 :申立人による意見書の提出 同年 7月17日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 9月19日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年11月14日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 同年12月 5日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知 令和8年 1月 7日 :申立人による意見書の提出 なお、令和7年9月19日に訂正請求書が提出されたことにより、令和7年2月5日に提出された訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 本件請求の趣旨 令和7年9月19日に訂正請求書が提出され、同年11月14日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正請求書及び手続補正書(方式)の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第7468680号の明細書および特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書および訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」とするものである。 以下において、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、それぞれ「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」及び「本件特許図面」といい、これらを総称して「本件特許明細書等」という。 また、訂正箇所を示すため、当審において下線を付した。 2 訂正の内容 本件訂正の内容(以下「訂正事項」という。)は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 本件特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 本件特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 ア 訂正事項3-1 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、植物育成改善材」とあるうち、引用する訂正前の請求項1を訂正前の請求項3に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項に訂正する。 イ 訂正事項3-2 訂正請求書の趣旨からみて、特許請求の範囲の請求項3について、以下の事項のとおり訂正する。 (ア)「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」との記載を、「植物」を「稲」とすることにより、「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」に訂正する。 (イ)「植物育成改善材」との記載を、「稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)」に訂正する。 (4)訂正事項4 ア 訂正事項4-1 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、植物育成改善材」とあるうち、引用する訂正前の請求項2を訂正前の請求項3に組入れ、請求項間の引用関係を解消して独立請求項に訂正する。 イ 訂正事項4-2 訂正請求書の趣旨からみて、特許請求の範囲の請求項4について、以下の事項のとおり訂正する。 (ア)「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」との記載を、「植物」を「稲」とすることにより、「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」に訂正する。 (イ)「植物育成改善材」との記載を、「稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)」に訂正する。 (5)訂正事項A 明細書の【発明の名称】に、「鉄イオン供給用鉄基粉末およびそれを用いた植物育成改善材」とあるのを、「鉄イオン供給用鉄基粉末を用いた稲育成改善材」に訂正する。 (6)訂正事項B 明細書の段落【0001】において、「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末およびそれを用いた植物育成改善材」とあるのを、「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末を用いた稲育成改善材」に訂正する。 (7)訂正事項C 明細書の段落【0010】において、「二価の鉄イオンの溶出による植物(作物)の生育状態の改善や、かかる改善により得られる作物の収穫量の増大をもたらす、鉄イオン供給用鉄基粉末を、かかる鉄イオン供給用鉄基粉末を含む植物育成改善材と共に提供することを目的とする。」とあるのを、「二価の鉄イオンの溶出による稲(作物)の生育状態の改善や、かかる改善により得られる作物の収穫量の増大をもたらす、鉄イオン供給用鉄基粉末を含む稲育成改善材を提供することを目的とする。」に訂正する。 (8)訂正事項D 明細書の段落【0015】において、「植物」及び「鉄基粉末とそれを用いた植物育成改善材」とあるのを、それぞれ「稲」及び「鉄基粉末を用いた稲育成改善材」に訂正する。 3 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1、2、3について、請求項2及び3は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1ないし3について請求されたものである。 4 訂正の適否について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (3)訂正事項3 ア 訂正事項3-1 (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項3が請求項1を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項3-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項3-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 イ 訂正事項3-2 (ア)訂正の目的について a 訂正事項3-2の「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」との記載を、「植物」を「稲」とすることにより、「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」にする訂正は、訂正前の「植物」をその下位概念の「稲」に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 b 「植物育成改善材」との記載を、「稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)」にする訂正は、「植物育成改善材」を「稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)」に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3-2における、訂正前の請求項1、3の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること a 訂正事項3-2(上記2(3)イ(ア)の訂正)に関連して、願書に添付した明細書の段落【0020】に、「本発明における前記鉄還元細菌が生存している環境としては、水田の水、畑の土壌が例示される。」、「本発明における植物としては、稲、林檎、大根が例示される。」との記載がある。 よって、「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」との記載を「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」にする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 b 訂正事項3-2(上記2(3)イ(イ)の訂正)に関連して、願書に添付した明細書の段落【0035】に、「植物への鉄イオン供給能力の評価として、水田における稲の栽培を以下のとおり行った。比較例1~5、発明例1~28に記載した鉄基粉末を、それぞれ水田100m2あたり10kg散布して稲作を行い、収穫した籾の質量から稲に対する鉄イオンの供給能力を評価した。」と記載されているので、願書に添付した明細書に鉄基粉末単独で稲の栽培に用いる事項が記載されていたといえる。 よって、「植物育成改善材」との記載を、「稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)」にする訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3-1及び訂正事項3-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (4)訂正事項4 ア 訂正事項4-1 (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項3が請求項2を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項4-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項4-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 イ 訂正事項4-2 (ア)訂正の目的について 訂正事項4-2は、実質的に訂正事項3-2と同様の訂正であって、上記(3)イ(ア)a及びbのとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4-2における、訂正前の請求項2、3の発明特定事項を概念的により下位の内容とする訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4-2は、実質的に訂正事項4-2と同様の訂正であって、上記(3)イ(ウ)a及びbのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項4-1及び訂正事項4-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (5)訂正事項A ア 訂正の目的について 訂正事項Aは、訂正事項3-2及び訂正事項4-2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の【発明の名称】の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項Aは、特許請求の範囲の記載と明細書の【発明の名称】の記載との整合を図るための訂正であって、訂正後の特許請求の範囲の記載を拡張又は変更する訂正に該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6号に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項Aは、特許請求の範囲の記載と明細書の【発明の名称】の記載との整合を図るための訂正であって、上記(3)イ(ウ)aで検討したとおり、訂正事項Aは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされており、かつ、訂正事項Aは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、訂正事項Aに関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (6)訂正事項B ア 訂正の目的について 訂正事項Bは、訂正事項3-2及び訂正事項4-2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項Bは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であって、訂正後の特許請求の範囲の記載を拡張又は変更する訂正に該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6号に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項Bは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、上記(3)イ(ウ)a及びbで検討したとおり、訂正事項Bは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされており、かつ、訂正事項Bは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、訂正事項Bに関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (7)訂正事項C ア 訂正の目的について 訂正事項Cは、訂正事項3-2及び訂正事項4-2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項Cは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正後の特許請求の範囲の記載を拡張又は変更する訂正に該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6号に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項Cは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、上記(3)イ(ウ)a及びbで検討したとおり、訂正事項Cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされており、かつ、訂正事項Cは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、訂正事項Cに関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 (8)訂正事項D ア 訂正の目的について 訂正事項Dは、訂正事項3-2及び訂正事項4-2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項Dは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正後の特許請求の範囲の記載を拡張又は変更する訂正に該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6号に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項Dは、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、上記(3)イ(ウ)a及びbで検討したとおり、訂正事項Dは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし3について特許異議申立てがされており、かつ、訂正事項Dは、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるから、訂正事項Dに関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 5 別の訂正単位とする求め 特許権者は、訂正請求書の7(1)3)ウ、(2)3)ウ、(3)3)ウ、(4)3)ウにおいて、訂正後の請求項1ないし4の各々について、当該請求項についての訂正が求められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として訂正することを求めている。 しかしながら、請求の趣旨及び請求の理由からみて、訂正前の請求項1及び請求項2について請求項を削除する訂正を求めている一方で、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項3に係る訂正事項3-1、及び、訂正前の請求項2の記載を引用する請求項3に係る訂正事項4-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的として独立した訂正単位にする訂正であって、訂正が認められる場合には別の訂正単位とすることを求めているので、本件訂正前の一群の請求項(訂正単位)である請求項1ないし請求項4のうち、本件訂正後の請求項3及び請求項4について別の訂正単位とする旨を求めていると理解することにした。 6 まとめ 以上のとおり、本件訂正は、訂正事項3-1及び訂正事項4-1に関して特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項1、訂正事項2、訂正事項3-2、及び訂正事項4-2に関して特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項Aないし訂正事項Dに関して特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、全ての訂正事項は、同条第9号で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし4及び明細書について訂正を認める。 第3 訂正後の本件訂正特許発明 上記第2で検討したとおり、請求項1ないし4に係る訂正及び明細書に係る訂正を認めることができるから、請求項1ないし4に係る特許についての発明は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 以下において、訂正後の請求項1ないし4に係る発明を、それぞれ「本件訂正特許発明1」ないし「本件訂正特許発明4」といい。総称して「本件訂正特許発明」という。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末であって、全鉄分含有量が60.00質量%以上98.00質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上35.00質量%以下である、鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)。 【請求項4】 稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末であって、全鉄分含有量が60.00質量%以上98.00質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上35.00質量%以下であり、該鉄イオン供給用鉄基粉末のメジアン径D50が50μm以上10×103μm以下であって、かつ該鉄イオン供給用鉄基粉末が通過した篩目の最大値が80μm以上30×103μm以下である、鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、稲育成改善材(ただし、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く)。」 第4 取消理由 令和7年7月17日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)のうち、「第5 取消理由2(特許法第29条第2項)」は以下の理由を含む。 (進歩性)令和7年2月5日に提出された訂正請求書及び令和7年4月9日に提出された手続補正書(方式)により訂正された、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲1:特開2011-153353公報 甲2:特開2012-34661公報 周知例1:特開2015-119685号公報 周知例2:特開2004-123677号公報 周知例3:森川クラウジオ健治、ほか4名、“19-19 様々な鉄含有資材の接触施用によるアルカリ水田における水稲鉄欠乏症の改善ーポット試験を中心に一”、日本土壌肥料学会講演要旨集、2004年9月14日、p.146、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/dohikouen/50/0/50_146_1/_article/-char/ja> 第5 取消理由2(特許法第29条第2項)について 1 請求項3 (1)各甲号証 ア 甲第1号証 (ア)甲第1号証記載事項 本件特許の優先日前である平成23年8月11日に発行された刊行物である特開2011-153353公報(以下「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同じ。)。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 鉄粉と、酸化鉄と、炭素と、2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸と、を含有し、水中への鉄イオン供給用途であることを特徴とする鉄粉混合物。」 「【請求項5】 請求項1または2記載の鉄粉混合物において、 前記酸化鉄が、FeO、Fe3O4、Fe2O3、またはFeOOHのうちの1種または2種以上であることを特徴とする鉄粉混合物。」 「【請求項6】 請求項1または2記載の鉄粉混合物において、 前記鉄粉と前記酸化鉄からなる混合粉末の平均粒径が400μm以下であることを特徴とする鉄粉混合物。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、鉄粉混合物、鉄粉混合物の使用方法、鉄粉混合物の製造方法に関する。より詳細には、海、河川、干潟などの水域に鉄粉混合物を浸漬させることにより、鉄イオンを水中に供給し、藻場の再生と河口や運河の堆積物の有害物質を無害化して水質を改善する技術に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、藻場が大規模に消滅する「磯焼け」と呼ばれる現象が発生し問題となっている。磯焼けに関する最近の研究では、河川から流入する鉄イオンの欠乏が主要因と考えられている。鉄イオンは、藻などの植物の生育に欠かせないものであり、2価の鉄イオンとして吸収されることが有効であることが知られている。また、有害な有機ハロゲン化合物が、地下水、河川及び海洋等の水域に浸入したり、底泥中にヘドロと呼ばれる汚染された泥が堆積するといった水質汚染の問題も深刻化している。」 「【0009】 本発明の鉄粉混合物は、鉄粉と炭素とが接触することにより、電子の移動が生じ、鉄粉が局部アノード、炭素が局部カソードとして作用できる。これにより鉄粉の酸化反応が進行し、局部アノード側からの鉄の溶出が促進される。また、本発明では溶出した2価の鉄は有機酸とキレート反応し、安定して2価の鉄イオンの状態で維持できる。したがって鉄の溶出を抑制する水酸化鉄を形成しにくいことにより2価の鉄イオンとして安定して供給できるため、植物の生育に有効に作用できる。」 「【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、水中に鉄イオンを良好に供給して、藻場の再生を促進し、水質環境を改善することができる。」 「【0017】 本発明の鉄粉は、粉末状または粒子である。 本発明の鉄粉の含有量は、鉄粉混合物の含有量の合計を100重量%とした場合、10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、80重量%以下が好ましい。 また、鉄粉と酸化鉄の鉄含有量の合計を100重量%とした場合、25重量%以上、より好ましくは50重量%以上、95重量%以下が好ましい。下限値以上とすることにより、安定して長期に鉄イオンを供給でき、また上限値以下とすることにより、藻の再生と水質改善のバランスが良好となる。また、鉄粉と酸化鉄の鉄含有量の合計を100重量%とした場合、鉄粉と酸化鉄の平均粒径100μm以下を、50重量%以上が含有することが好ましい。 【0018】 本発明の酸化鉄は、粉末状または粒子であって、完全に酸化されたものに限られず、一部に未酸化の部分を有していてもよい。また、酸化鉄としては、鉄粉の表面が酸化されたもの、または鉄粉の表面近傍に酸化物が生成したものを用いることができる。これにより、鉄粉と酸化鉄が近接し、鉄粉側の局部アノード、酸化鉄側の局部カソードでの反応が促進される。また、鉄の粉体または粒子の表面が酸化され、酸化鉄で覆われたものであってもよい。なお、覆われるとは、連続的なものに限られず、非連続的であってもよい。 【0019】 本発明の酸化鉄としては、FeO(酸化鉄(II))、Fe3O4(酸化鉄(II),(III))、Fe2O3(酸化鉄(III))、またはFeOOH(オキシ水酸化鉄)のうちの1種または2種以上であることが好ましい。これにより、酸化鉄がカソードとなり鉄粉の溶出を促進できる。また、酸化鉄に接した有機酸が酸化鉄と反応又は還元し、2価の鉄イオンに還元することも可能で、これらの反応で生成された2価の鉄イオンが硫化水素を分解する。 【0020】 また、鉄粉と酸化鉄からなる混合粉末の平均粒径は、400μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。これにより比表面積が増大し、各々の反応が促進される。」 「【0025】 [鉄粉混合物の使用方法] 本発明は上述した鉄粉混合物を、水中に浸漬する鉄粉混合物の使用方法を提供する。水とは、海水であるか淡水であるかを問わないが、例えば、海、沿岸、干潟、河川、湖沼などがより好ましい。これらの水域に鉄イオンが供給されて藻場が形成されるようになることにより、水質環境の改善に繋がる。また、本発明の鉄粉混合物は海流、潮流、河川の流れ等によって移動しないよう水底に固定してもよい。」 「【0027】 本発明の効果について説明する。本発明の鉄粉混合物は、鉄粉と炭素とが接触することにより、電子の移動が生じ、鉄粉が局部アノード、炭素が局部カソードとして作用できる。これにより鉄粉の酸化反応が進行し、局部アノード側からの鉄の溶出が促進される。また、本発明では溶出した2価の鉄は有機酸とキレート反応し、酸化が抑制されて安定して2価の鉄イオンの状態で維持できる。このような2価の鉄イオンは、植物の生育に有効に作用できる。」 「【0037】 (実施例1) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)40g、活性炭30gを混合し、その中に水25gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸5gを添加し混ぜ合わせたのち加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶出後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 また、得られた鉄粉混合物について、以下の「鉄イオン溶出量試験」、「藻の成長試験」、「硫化水素の分解試験」を行った。 【0038】 [鉄イオン溶出量試験] 鉄イオンの溶出量は次の方法で測定した。トリムイオン製の浄水器で製造した浄水に市販の人工海水の素で製造した人工海水をビーカーに250ミリリットルはり、実施例1で製造した鉄粉混合物を25g入れ、4日間放置後、鉄粉混合物を取り出し、溶出した鉄イオンの量をフレーム原子吸光法で分析した。その結果を表2に示す。 【0039】 [藻の成長試験] トリムイオン製の浄水器で製造した浄水に市販の人工海水の素で製造した人工海水をビーカーに3リットルはり、実施例1で製造した鉄粉混合物を30g入れ、一日放置後、鉄粉混合物を取り出し、アオサを5mm角の正方形に切って、ビーカーに入れ2週間後に成長測定を行った。その結果を表2に示す。 アオサの成長がほとんど認められない : × アオサの各辺の成長が2倍以下の場合 : △ アオサの各片の成長が2倍から10倍未満: ○ アオサの各片の成長が10倍以上 : ◎ 【0040】 [硫化水素の分解試験] 硫化水素の分解性能は次の方法で評価した。河口の含水軟弱土の脱臭強度によって評価した。具体的には河口から採取した軟弱土を採取し、その中に含まれる硫化水素量を市販の酸素硫化水素濃度計(新コスモ電機製XOS326)を用いて測定し、同じ軟弱土をコニカルビーカーに200g採取し、その中に実施例1の鉄粉混合物を100g入れ密封1週間後に、臭いをかぐと同時に一部のサンプルは同一機器で硫化水素濃度を測定した。その結果を表2に示す。 不快な臭いが感知された : △ 不快な臭いがほとんど感知されない: ○ 【0041】 (実施例2) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)50g、活性炭25gを混合し、その中に水20gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでイソ-アスコルビン酸5gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表1に示す。 【0042】 (実施例3) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)60g、活性炭25gを混合し、その中に水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところで没食子酸5gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0043】 (実施例4) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)70g、活性炭15gを混合し、その中に水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでグルタミン酸5gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0044】 (実施例5) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭15gを混合し、その中にフルボ酸10%水溶液20gを添加し、10分間混ぜ合わせた。その後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0045】 (実施例6) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭15gを混合し、その中に3.5%食塩水18gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸2gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0046】 (実施例7) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭20gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸5gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0047】 (実施例8) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)60g、活性炭23gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸7gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0048】 (実施例9) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)60g、活性炭22gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸8gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0049】 (実施例10) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)60g、活性炭15gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸15gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0050】 (実施例11) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)55g、活性炭15gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸20gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0051】 (実施例12) 市販の金属鉄99重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)50g、活性炭15gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸25gを添加し混ぜ合わせた後、加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、鉄粉混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。」 「【0054】 (比較例1) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)50g、活性炭15gを混合し、その中に水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところで加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0055】 (比較例2) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)90gに水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところで加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。 【0056】 (比較例3) 市販の金属鉄92重量%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)60g、活性炭25gを混合し、その中に水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところで加圧容器に移し、加圧し、10分後器から取り出し3日間乾燥して、混合物をえた。乾燥後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。これらの結果を表1に示す。 鉄イオン溶出量試験、藻の成長試験、硫化水素の分解試験は実施例1と同じ実験を行い、その結果を表2に示す。」 「【0060】 【表1】 [図:0001438263000001.jpg] 」 「【0061】 【表2】 [図:0001438263000002.jpg] 」 上記摘記事項を以下のとおり整理する。 a 上記【請求項1】、【0009】及び【0027】の記載から、鉄粉混合物は植物(藻)に対して有効に作用するので、鉄イオンを直接的・(水中を介して)間接的のいずれかで植物(藻)に供給していることが理解でき、また、鉄イオンの供給源は鉄粉混合物中の鉄粉及び酸化鉄であることは明らかである。よって、甲1に「植物の生育に有効に作用する、2価の鉄イオンを安定して植物に供給する鉄イオン供給用途である鉄粉混合物に含有された鉄粉及び酸化鉄を含有する鉄粉混合物」が記載されている。 b 上記【請求項5】に、「酸化鉄は、FeO、Fe3O4、Fe2O3、またはFeOOHのうちの1種または2種以上」を含んでいる点が記載されている。 c 上記【請求項6】、【0017】、【0020】並びに【0037】ないし【0056】に、「鉄粉及び酸化鉄からなる混合粉末の平均粒径が400μm以下であり、より好ましくは、100μm以下であり、鉄粉及び酸化鉄の鉄含有量の合計を100重量%とした場合、鉄粉及び酸化鉄の平均粒径100μm以下を、50重量%以上が含有することが好ましいとされており、「平均粒径70~80μmの還元鉄粉を用い」ている点が記載されている。 (イ)甲1記載事項から認定できる事項 a 甲1記載の鉄粉及び酸化鉄について、全鉄含有量(質量%)と、酸素含有量(質量%)を、上記(ア)表1に記載された鉄粉中における金属鉄の含有量(g)と酸化鉄の含有量(g)に基づき算出する。なお、表1では「鉄粉」を「金属鉄」と表記しているので、「金属鉄」を「鉄粉」と表記することがある。 b 実施例1を例に挙げて、酸化鉄をFeOとして換算した場合の全鉄含有量(質量%)と酸素含有量(質量%)の計算手順は以下のとおりである。 c 段落【0037】の記載から、実施例1は初期鉄粉に用いた還元鉄粉が、金属鉄92質量%以上であるから、初期鉄粉の純度を便宜上92重量%とする。 d Feの原子量が55.85、Oの原子量が16として、FeO中の鉄の割合が、55.85/(55.85+16)=77.7(質量%)、酸素の割合が16/(55.85+16)=22.3(質量%)となる。 すると、実施例1の鉄粉及び酸化鉄中の全鉄量(g)は、27(g)+(13(g)×77.7(%))=37.10(g)である。 したがって、実施例1の全鉄分含有量は、初期鉄粉の純度が92%なので、37.10(g)/40(g)×92(%)=85.3(質量%)となる。 また、実施例1の鉄粉及び酸化鉄中の酸素含有量は、酸化鉄中の酸素の量であるので、13×22.3(%)=2.90(g)となる。 すると、実施例1の酸素含有量は、初期鉄粉の純度が92(%)であるので、2.90(g)/40(g)×92(%)=6.7(質量%)となる。 e 甲1の段落【0019】の記載に基づき、酸化鉄をFeO、Fe3O4、Fe2O3、及びFeOOHとして換算した場合のそれぞれについて計算した上で、それらの鉄粉及び酸化鉄中の鉄分及び酸素の割合を計算する。 f 酸化鉄Fe3O4の場合: 鉄分の割合:3×55.85/(3×55.85+4×16)=72.4(質量%) 酸素の割合:4×16/(3×55.85+4×16)=27.6(質量%) g 酸化鉄Fe2O3の場合: 鉄分の割合:2×55.85/(2×55.85+3×16)=69.9(質量%) 酸素の割合:3×16/(2×55.85+3×16)=30.1(質量%) h 酸化鉄FeOOHの場合: 鉄分の割合:55.85/(55.85+2×16+1)=62.9(質量%) 酸素の割合:2×16/(55.85+2×16+1)=36.0(質量%) i 上記dないしhを、下表のように表すことができる(下表では、「FeO」を「FeO」と、「Fe3O4」を「Fe3O4」と、「Fe2O3」を「Fe2O3」と、「FeOOH」を「FeOOH」と各々表記する。)。 [図:0001438263000003.jpg] j 上記iを踏まえて、上記【0037】ないし【0056】及び【0060】表1の実施例において、上記dと同様に各実施例における鉄粉(金属鉄)及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)を算出して下表を得る。ここで、最小値及び最大値は、酸化鉄をFeO、Fe3O4、Fe2O3、及びFeOOHとして換算した場合の各実施例及び各比較例における全鉄含有量の最小値及び最大値である。 [図:0001438263000004.jpg] k 上記iを踏まえて、上記dと同様に各実施例及び各比較例における鉄粉及び酸化鉄中の酸素含有量(質量%)を算出すると下表を得る。ここで、最小値及び最大値は、酸化鉄をFeO、Fe3O4、Fe2O3、及びFeOOHとして換算した場合の各実施例及び各比較例における酸素含有量の最小値及び最大値である。 [図:0001438263000005.jpg] l 上記j及びkから、甲1には、「鉄粉及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)及び酸素含有量(質量%)が、とりえる最大数値範囲として、全鉄含有量(質量%)が67.1~97.2(質量%)、酸素含有量(質量%)が1.8~24.1(質量%)」であることが記載されている。 m 上記j及びkから、甲1には、「鉄粉及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)及び酸素含有量(質量%)が、とりえる最小数値範囲として、全鉄含有量(質量%)が77.1~96.1(質量%)、酸素含有量(質量%)が2.9~14.9(質量%)」であることが記載されている。 (ウ)甲1発明 上記(ア)及び上記(イ)から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 植物の生育に有効に作用する、2価の鉄イオンを安定して植物に供給する鉄イオン供給用途である、鉄粉及び酸化鉄を含有する鉄粉混合物であって((ア)a)、 酸化鉄は、FeO、Fe3O4、Fe2O3、またはFeOOHのうちの1種または2種以上を含み((ア)b)、 鉄粉及び酸化鉄からなる混合粉末の平均粒径が400μm以下であり、より好ましくは、100μm以下であり、鉄粉及び酸化鉄の鉄含有量の合計を100重量%とした場合、鉄粉及び酸化鉄の平均粒径100μm以下を、50重量%以上が含有することが好ましいとされており、平均粒径70~80μmの還元鉄粉を用いており((ア)c)、 鉄粉及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)及び酸素含有量(質量%)が、とりえる最大数値範囲として、全鉄含有量(質量%)が67.1~97.2(質量%)、酸素含有量(質量%)が1.8~24.1(質量%)であり((イ)l)、 鉄粉及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)及び酸素含有量(質量%)が、とりえる最小数値範囲として、全鉄含有量(質量%)が77.1~96.1(質量%)、酸素含有量(質量%)が2.9~14.9(質量%)である((イ)m)、 鉄粉及び酸化鉄を含有する鉄粉混合物((ア)a)。 イ 甲第2号証 (ア)甲第2号証記載事項 本件特許の優先日前である平成24年2月23日に発行された刊行物である特開2012-34661公報(以下「甲2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物からなる鉄粉、及び有機酸を含む混合物を収容している本体部と、 前記本体部を密封し、開封可能に設けられた蓋体部と、を備えることを特徴とする海洋緑化用缶詰。」 「【0001】 本発明は、海洋緑化用缶詰、海洋緑化用缶詰の使用方法、及び海洋緑化用缶詰の製造方法に関する。 【0002】 より詳細には、海、河川、干潟などの水域に生息する植物にとって栄養源となる鉄粉を収容した海洋緑化用缶詰を開封し、缶とともに鉄粉を沈設させることにより、鉄イオンを水中に供給して藻場を再生し、海洋を緑化する技術に関する。」 「【0015】 本発明によれば、水中に二価の鉄イオンを安定して良好に供給でき、海洋植物の生育の育成を促進し、海洋緑化を実現することができる。」 「【0025】 本発明において、海洋緑化用とは、缶詰中の混合物に含まれる金属鉄および酸化鉄から鉄イオンを水中に供給するために用いられることを意味する。したがって、混合物の成分を限定するものではない。」 「【0028】 本発明の酸化鉄としては、FeO(酸化鉄(II))、Fe3O4(酸化鉄(II),(III))、Fe2O3(酸化鉄(III))、またはFeOOH(オキシ水酸化鉄)のうちの1種または2種以上であることが好ましい。これにより、酸化鉄がカソードとなり金属鉄の溶出を促進できる。また、酸化鉄に接した有機酸が酸化鉄と反応又は還元し、二価の鉄イオンに還元することも可能で、これらの反応で生成された二価の鉄イオンが硫化水素を分解する。 【0029】 また、金属鉄と酸化鉄からなる鉄粉の平均粒径は、400μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。これにより比表面積が増大し、各々の反応が促進される。比表面積(S)と粒子径(d)との関係は、一般に次の式(1)で示される。」 「【0032】 本発明の有機酸としては、二価の鉄イオンとキレート(錯体)を作成するものが好ましい。鉄が溶出すると周辺がカソード反応によりpHが上昇するが、本発明の有機酸によれば、このpH上昇を抑制して、安定して鉄の溶出を促進できる。例えば、フルボ酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸などのカルボキシル基をもつ酸、またはL-アスコルビン酸、イソ-アスコルビン酸(エリソルビン酸)、没食子酸、タンニン、などのカルボニル基及びヒドロキシル基をもち還元作用を有する酸が挙げられる。このような有機酸の還元作用により、金属鉄の酸化が抑制でき、長期にわたって2価の鉄イオンを水中に供給できるようになる。」 「【0035】 本発明の混合物は、炭素をさらに含んでもよい。これにより、鉄と炭素が接触して、鉄が局部アノード、炭素が局部カソードとして作用できる。そのため、水中への鉄イオンの溶出を促進できる。」 「【0038】 本発明の混合物は、肥料をさらに含んでもよい。これにより、植物に栄養分を供給し、植物の育成をさらに促進できる。 【0039】 肥料としては、植物の育成に効果的なものであればよく、例えば、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料などの無機質肥料、菜種油粕、大豆油粕、魚粕、骨粉などの有機質肥料、ピートモス、イネワラ、フミン酸を含む腐植質資材、腐葉土、堆肥などの有機質資材、ゼオライト、パーライト、バーミュキュライトなどの無機質資材が挙げられる。これを1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。」 「【実施例】 【0084】 以下、本発明について実施例を参照にして説明する。ただし、本発明はこれらの実施例の記載になんら限定されるものでない。 【0085】 (実施例1) 市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭20gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでL-アスコルビン酸5gを添加し、さらに混ぜ合わせて混合物を得た後、ツナ3号DR缶(ドロー&リドロー缶)容器に移し、加圧し、211アルミのFOE(フルオープンエンド)蓋を巻き締め海洋緑化用缶詰を作成した。得られた海洋緑化用缶詰を用いて、下記の試験を行い、その結果を表1に示した。 【0086】 [藻の成長試験1] トリムイオン製の浄水器で製造した浄水に市販の人工海水の素で製造した人工海水を、40リットルの水槽にはった。実施例1で得られた海洋緑化用缶詰を6ヶ月保管した後、海洋緑化用缶詰の蓋を開けてこの水槽に入れた。一日放置後、海洋緑化用缶詰を取り出し、テングサを20mmの長さに切って、3本づつ水槽の底に着床させ4週間後に成長の状態を観察し、評価した。下記の表記に従い、その評価結果を表1に示した。 ◎:非常に良好な繁殖 ○:良好な繁殖 △:僅かな繁殖 ×:繁殖がほとんど認められない 【0087】 [藻の成長試験2] 藻の成長試験1の水槽から海洋緑化用缶詰を取り出した後、水槽の3リットルの液をビーカーにはり、アオサを5mm角の正方形に切って、ビーカーに入れ2週間後に成長測定を行い、評価した。下記の表記に従い、その評価結果を表1に示した。 ◎:アオサの各片の成長が10倍以上 ○:アオサの各片の成長が2倍から10倍未満 △:アオサの各辺の成長が2倍以下 ×:アオサの成長がほとんど認められない 【0088】 [貯蔵後の鉄の酸化量試験] 海洋緑化用缶詰を6ヶ月保管した後、海洋緑化用缶詰より混合物を取り出した。この混合物を粉砕後、ガラスビード法により蛍光X線で全鉄分を分析した。また、金属鉄は臭化メタノールで溶解後、フレーム原子吸光法で分析した。全鉄分と金属鉄の差分を酸化した鉄分として求めた。これらの結果を表1に示す。 【0089】 (実施例2) 市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭20gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでグルコース5gを添加し、さらに混ぜ合わせて混合物を得た後、ツナ3号DR缶(ドロー&リドロー缶)容器に移し、加圧し、211アルミのFOE(フルオープンエンド)蓋を巻き締め海洋緑化用缶詰を作成した。得られた海洋緑化用缶詰を用いて、実施例1と同じ試験を行い、その結果を表1に示した。」 「【0092】 (比較例1) 市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭20gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところで加圧固化し、混合物の成形物を得た。海洋緑化用缶詰の代わりに得られた混合物の成形物を用い、海洋緑化用缶詰の蓋を開ける手順がない以外は、実施例1と同じ試験を行い、その結果を表1に示した。なお、混合物の成形物は、そのままの状態で6ヵ月保管したものを用いて、試験を行った。 【0093】 (比較例2) 市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)65g、活性炭20gを混合し、その中に3.5%食塩水10gを添加し、10分間混ぜ合わせた。発熱したところでクエン酸2gを添加し混ぜ合わせ加圧固化し、混合物の成形物を得た。海洋緑化用缶詰の代わりに得られた混合物の成形物を用い、海洋緑化用缶詰の蓋を開ける手順がない以外は、実施例1と同じ試験を行い、その結果を表1に示した。なお、混合物の成形物は、そのままの状態で6ヵ月保管したものを用いて、試験を行った。」 「【0094】 【表1】 [図:0001438263000006.jpg] 」 上記摘記事項を以下のとおり整理する。 a 上記【請求項1】、【0002】及び【0015】の記載から、混合物は海洋植物の育成を促進するものなので、鉄イオンを直接的・(水中を介して)間接的のいずれかで海洋植物に供給していることが理解でき、甲2に、「水中に二価の鉄イオンを安定して良好に海洋植物に供給でき、海洋植物の生育の育成を促進する、金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物を含む混合物」が記載されている。 b 上記【0028】に、「酸化鉄は、FeO(酸化鉄(II))、Fe3O4(酸化鉄(II),(III))、Fe2O3(酸化鉄(III))、またはFeOOH(オキシ水酸化鉄)のうちの1種または2種以上」を含む点が記載されている。 c 上記【0029】及び【0085】ないし【0093】に、「鉄粉は、金属鉄と酸化鉄からなる鉄粉の平均粒径は、400μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、実施例及び比較例として、市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)を用い」ている点が記載されている。 (イ)甲2記載事項から認定できる事項 a 上記ア(イ)iを踏まえて、上記ア(イ)及び上記(ア)【表1】から、上記ア(イ)dないしkと同様に計算して下表を得る。ここで、最小値及び最大値は、酸化鉄をFeO、Fe3O4、Fe2O3、及びFeOOHとして換算した場合の各実施例及び各比較例における全鉄含有量の最小値及び最大値である。 [図:0001438263000007.jpg] b 同様に、各実施例及び各比較例における酸素含有量の最小値及び最大値を下表に得る。 [図:0001438263000008.jpg] c 上記ア(イ)i及びkを踏まえると、上記a及びbから、甲2には、「鉄粉中の全鉄含有量(質量%)及び鉄粉中の酸素含有量(質量%)が、とりえる最大数値範囲として、鉄粉中の全鉄含有量(質量%)が66.2~97.0(質量%)、鉄粉中の酸素含有量(質量%)が2.0~31.8(質量%)」の鉄粉を用いた鉄粉混合物が記載されている。 d 上記ア(イ)i及びkを踏まえると、上記a及びbから、甲2には、「鉄粉中の全鉄含有量(質量%)及び鉄粉中の酸素含有量(質量%)が、とりえる最小数値範囲として、鉄粉中の全鉄含有量(質量%)が79.3~95.6(質量%)、鉄粉中の酸素含有量(質量%)が3.3~19.7(質量%)」の鉄粉を用いた鉄粉混合物が記載されている。 (ウ)甲2発明 上記(ア)及び上記(イ)から、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 水中に二価の鉄イオンを安定して良好に海洋植物に供給でき、海洋植物の生育の育成を促進する、金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物を含む混合物であって((ア)a)、 酸化鉄は、FeO(酸化鉄(II))、Fe3O4(酸化鉄(II),(III))、Fe2O3(酸化鉄(III))、またはFeOOH(オキシ水酸化鉄)のうちの1種または2種以上を含み((ア)b)、 鉄粉は、金属鉄と酸化鉄からなる鉄粉の平均粒径は、400μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)を用いており((ア)c)、 鉄粉中の全鉄含有量(質量%)及び鉄粉中の酸素含有量(質量%)が、とりえる最大数値範囲として、鉄粉中の全鉄含有量(質量%)が66.2~97.0(質量%)、鉄粉中の酸素含有量(質量%)が2.0~31.8(質量%)であり((イ)c)、 鉄粉中の全鉄含有量(質量%)及び鉄粉中の酸素含有量(質量%)が、とりえる最小数値範囲として、鉄粉中の全鉄含有量(質量%)が79.3~95.6(質量%)、鉄粉中の酸素含有量(質量%)が3.3~19.7(質量%)である((イ)d)、 金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物を含む混合物((ア)a)。 ウ 周知例1 (ア)周知例1記載事項 本件特許の優先日前である平成27年7月2日に頒布された刊行物である特開2015-119685公報(以下「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオンの供給源となる鉄イオン供給材料であって、 80質量%以上の鉄を含む鉄粉からなり、鉄粉全体の50質量%以上が100μm以上10mm以下の粒径を有することを特徴とする鉄イオン供給材料。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は鉄イオン供給材料に関し、特に、植物に対して鉄イオンを効率的に供給できる鉄イオン供給材料に関するものである。」 「【0018】 まず、鉄粉に含まれる鉄の含有量は80質量%以上とする。鉄粉に含まれる鉄の濃度は、植物に鉄イオンを供給する効率を左右する主因である。上述のように、特許文献1に記載された技術においては、スラグを用いることが前提となっており、これによって、イネに対して鉄イオンを効率的に供給することができなかった。この点、本発明においては、鉄粉に含まれる鉄の含有量を80質量%以上とするため、植物に対して十分な濃度を以て鉄イオンを供給することができる。また、従来のスラグを用いた場合には、鉄イオンの含有量が少ないために鉄イオン以外の成分が多く、鉄イオン供給材料自体の体積が大きくなる問題があったが、本発明に係る鉄イオン供給材料においては、鉄以外の成分が少ないため、このような問題は存在しない。好ましくは、99質量%、より好ましくは99.5質量%である。 【0019】 また、鉄粉の粒径は、100μm以上10mm以下とする。上述のように、鉄粉の粒径は、鉄粉を植物の根の近傍に配して鉄イオンを植物に効率的に供給する上で極めて重要な因子である。鉄イオン供給材料は、田畑に撒いたり、あるいは田畑を耕した際に土に混ぜることにより植物に供給するが、粒径が100μm未満の場合には、風で飛ばされたりして植物の根に鉄イオンを供給できる領域(具体的には、田畑の表面から0(地表)cm以上100cm以下の深さ領域までの領域)に定着しないおそれがあり、また、定着したとしても、植物の根から離れた田畑の表層域に定着してしまい、植物に鉄イオンを効率的に供給することができない。一方、粒径が10mmを超える場合には、植物の根の位置よりも深い位置に分布し、鉄粉が高い含有量で鉄を含んでいたとしても、鉄イオンを植物に効率的に供給することができなくなる。このような理由により、鉄粉の粒径を、100μm以上10mm以下とする。好ましくは100μm以上5mm以下、より好ましくは100μm以上1mm以下である。」 「【0031】 <収穫もみ重量の評価> このように用意した発明例1~15、比較例1~3、従来例1および2の鉄粉を田に撒いて稲作を行い、収穫したもみの重量を以て、イネに対する鉄イオンの供給能力を評価した。ここで、鉄粉を供給しないでイネを栽培した場合(従来例1)の収穫もみ重量を100として、各鉄粉に対する収穫もみ重量を数値化しており、値が大きい方が収穫もみ重量が多く、二価の鉄イオンの供給能力が高いことを示している。 表1を見ると、全ての発明例の鉄粉が、従来例1に比べて5%以上収穫もみ重量が増加していることが分かる。また、鉄粉がアトマイズ鉄粉である発明例2、3および9~14の場合には、鉄粉を使用しない従来例に比べて8%以上収穫もみ重量が増加していることが分かる。さらに、酸素濃度が0.4質量%以上1.5 質量%以下のアトマイズ鉄粉のばあいには、収穫もみ重量が10%以上増加し、特に、酸素濃度を0.6質量%以上1.2質量%以下の場合には、収穫もみ重量が15%以上増加することが分かる。このように、本発明により、植物に対して二価の鉄イオンを効率的に供給できていることが分かる。」 (イ)周知例1技術事項 上記(ア)から、周知例1に次の技術事項(以下「周知例1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [周知例1技術事項] 80質量%以上の鉄を含む鉄粉からなる鉄イオン供給材料を、田畑に撒いたり、田畑を耕した際に土に混ぜることにより供給して、植物に対して鉄イオンを効率的に供給できるとの技術事項、及び、当該鉄イオン供給材料を田に撒いて稲作を行うこと。 エ 周知例3 (ア)周知例3記載事項 本件特許の優先日前である2004年(平成16年)9月14日に発行された、森川クラウジオ健治、ほか4名、“19-19 様々な鉄含有資材の接触施用によるアルカリ水田における水稲鉄欠乏症の改善 -ポット試験を中心に-”、日本土壌肥料学会講演要旨集、2004年9月14日、p.146、<URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/dohikouen/50/0/50_146_1/_article/-char/ja>(以下「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 「本研究では様々な鉄含有資材の接触施用によるアルカリ水田における水稲鉄欠乏症の改善をポット試験において検討した。」(左欄第1行ないし同欄第3行) 「「結論」鉄含有資材の接触はアルカリ水田で稲へ2価鉄イオンを供給し、イネの鉄欠乏症を改善した。「2価鉄イオンの接触吸収メカニズム」が重要な役割を果たしていると考えられた。」(右欄第11行ないし同欄第14行) (イ)周知例3技術事項 上記(ア)から、周知例3に次の技術事項(以下「周知例3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 [周知例3技術事項] 鉄含有資材の接触施用によりアルカリ水田における水稲鉄欠乏症を改善できること。 オ 周知技術 上記ウ(イ)及びエ(イ)から、次の事項が周知の技術(以下「周知技術」という。)であったと認められる。 [周知技術] 稲の栽培において、田に鉄含有資材を施用して稲に鉄分を供給する栽培技術。 (2)対比・判断 ア 甲1発明を主引用発明とした場合 (ア)対比 本件訂正特許発明3と甲1発明を対比する。 a 甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」は、植物の生育に有効に作用する鉄イオンを植物に供給するから、植物の生育に寄与するイオンを供給する鉄イオン供給用途に使用されるものといえる。そして、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」が鉄イオンを供給する「農作物」と甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」が鉄イオンを供給する「植物」(藻)は、「植物」である点で共通する。すると、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」と甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」は、「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」である点で共通する。 b 甲1発明において、「鉄粉及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)及び酸素含有量(質量%)が、とりえる最小数値範囲として、全鉄含有量(質量%)が77.1~96.1(質量%)、酸素含有量(質量%)が2.9~14.9(質量%)」であるから、本件訂正特許発明3の「全鉄分含有量」及び「酸素含有量」と甲1発明の「全鉄分含有量」及び「酸素含有量」は、少なくとも「全鉄分含有量が77.1質量%以上96.1質量%以下」、かつ「酸素含有量が2.9%以上14.9%」の数値範囲で一致する。 c また、甲1発明の「酸化鉄」はFeO、Fe3O4、Fe2O3、またはFeOOHのうちの1種または2種以上を含むから、甲1発明は「とりえる最大数値範囲として、鉄粉及び酸化鉄中の全鉄含有量(質量%)が67.1~97.2(質量%)、酸素含有量(質量%)が1.8~24.1(質量%)」になる。 d 上記cから、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」と甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」は、ともに「全鉄分含有量が67.1質量%以上97.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上24.1質量%以下である」点で一致する。 e 上記aを踏まえると、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」と甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」は、「植物への鉄イオン供給用鉄基粉末」である点で共通する。 f 甲1発明の「鉄粉混合物」は、「鉄粉及び酸化鉄を含有」して植物の生育に有効に作用する混合物であって植物育成改善材といえるものであるから、上記eを踏まえると、本件訂正特許発明3と甲1発明は「植物への鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、植物育成改善材」である点で共通する。 すると、本件訂正特許発明3と甲1発明は、 「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末であって、 全鉄分含有量が77.1質量%以上96.1質量%以下、かつ酸素含有量が2.9質量%以上14.9質量%以下である、 又は、 全鉄分含有量が67.1質量%以上97.2質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上24.1質量%以下である、 植物への鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、植物育成改善材。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1-1] 本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」が、「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する」ものであって、「鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、稲育成改善材」の用途が「稲」に限定されているのに対して、甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」は鉄イオンを供給する対象が「植物」ではあるものの「稲」とまでは限定しておらず、「鉄粉及び酸化鉄を含有する鉄粉混合物」が適用される対象が「稲」に限定していない点。 [相違点1-2] 本件訂正特許発明3の「稲育成改善材」が、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く」ものであるのに対して、甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄を含有する混合物」は「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を除いたものとはいえない点。 (イ)相違点1-1の判断 上記(1)オの周知技術のとおり、「稲の栽培において、田に鉄含有資材を施用して稲に鉄分を供給する栽培技術」は周知の技術である。 そして、甲1発明と周知技術は、植物の生育に寄与する点で目的及び機能が共通するから、甲1発明の「鉄イオン」を「植物に供給する」「鉄粉及び酸化鉄」を、周知技術のように「田」に施用して「稲の栽培」に用いることにより、相違点1-1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。 (ウ)相違点1-2の判断 a 甲1発明の「鉄粉混合物」に含まれる鉄粉及び酸化鉄は、それ自体が2価の鉄イオンの供給源であることは技術常識から明らかであって、それ自体が植物に2価の鉄イオンを供給する植物育成改善材とみることができる。そうすると、相違点1-2は、鉄粉混合物のどの要素を植物育成改善材としてみるかの表現上の相違点にすぎず、実質的な相違点ではない。 b 仮に、本件訂正特許発明3の「稲育成改善材」を、田に直接施用する粉末に限定して解釈したとしても、甲1発明の「鉄粉混合物」に含まれる鉄粉及び酸化鉄自体が植物に2価の鉄イオンを供給することは技術常識から明らかなので、上記(イ)に鑑みると、甲1発明の「鉄粉及び酸化鉄」のみを植物である稲に施用することにより相違点1-2の構成とすることは当業者が容易に想到し得る程度のことである。 なお、上記(1)ア(ア)【0054】記載の比較例1は金属鉄を活性炭と混合した上で酸化させたものを用いていることから、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を用いない構成を採ることは、このことからも格別のものではない。 c また、農業において、農業従事者が異なる土壌改善材等を混合して田や土壌に施用することは通常行われていることであるから、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を含まない鉄粉及び酸化物を含有する混合物を植物改善材として提供し、農業従事者が適宜当該植物改善材と有機酸を混合して利用することにより、相違点1-2の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることにすぎない。 (本件特許明細書の実施例2(【0041】~【0044】)でも、鉄基粉末を窒化化合物、リン酸化合物及びカリウム化合物を基にした添加物を添加して施用している。) (エ)小括 本件訂正特許発明3は、当業者が甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものである。 イ 甲2発明を主引用発明とした場合 (ア)対比 本件訂正特許発明3と甲2発明を対比する。 a 甲2発明の「鉄粉」は、「海洋植物の生育の育成を促進する」効果を奏し、「水中に二価の鉄イオンを安定して海洋植物に良好に供給する」「金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物からなる鉄粉」である。そして、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」が鉄イオンを供給する「農作物」と甲2発明の「鉄粉」が低イオンを供給する「海洋植物」は、「植物」である点で共通する。すると、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」と甲2発明の「鉄粉」は、「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末」である点で共通する。 b 甲2発明において、「鉄粉中の全鉄含有量(質量%)及び鉄粉中の酸素含有量(質量%)が、とりえる最小数値範囲として、鉄粉中の全鉄含有量(質量%)が79.1~95.6(質量%)、鉄粉中の酸素含有量(質量%)が3.3~19.7(質量%)」であるから、本件訂正特許発明3の「全鉄分含有量」及び「酸素含有量」と甲2発明の「全鉄分含有量」及び「酸素含有量」は、少なくとも「全鉄分含有量が79.1質量%以上95.6質量%以下」、かつ「酸素含有量が3.3%以上19.7%」の数値範囲で一致する。 c また、甲2発明の酸化鉄はFeO、Fe3O4、Fe2O3、またはFeOOHのうちの1種または2種以上を含むから、甲2発明は「とりえる最大数値範囲として、全鉄含有量(質量%)が66.2~97.0(質量%)、酸素含有量(質量%)が2.0~31.8(質量%)」になる。 d 上記cから、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」と甲2発明の「鉄粉」は、ともに「全鉄分含有量が66.2質量%以上97.0質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上31.8質量%以下である」点で一致する。 e 上記aを踏まえると、本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」と甲2発明の「鉄粉」は、「植物への鉄イオン供給用鉄基粉末」である点で共通する。 f 甲2発明の「混合物」は、「金属鉄及び酸化鉄」を含んで海洋植物の生育の育成を促進する混合物であって植物育成改善材といえるものであるから、上記eを踏まえると、本件訂正特許発明3と甲2発明は「植物への鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、植物育成改善材」である点で共通する。 すると、本件訂正特許発明3と甲2発明は、 「植物の生育に寄与する鉄イオンを供給する鉄イオン供給用鉄基粉末であって、 全鉄分含有量が79.1質量%以上95.6質量%以下、かつ酸素含有量が3.3質量%以上19.7質量%以下である、 又は、 全鉄分含有量が66.2質量%以上97.0質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上31.8質量%以下である、 植物への鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、植物育成改善材。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点2-1] 本件訂正特許発明3の「鉄イオン供給用鉄基粉末」が、「稲の生育に寄与する鉄イオンを供給する」ものであって、「鉄イオン供給用鉄基粉末を含む、稲育成改善材」の用途が「稲」に限定されているのに対して、甲2発明の「金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物」が鉄イオンを供給する対象が「海洋植物」であって「稲」に限定されておらず、「鉄粉混合物」が適用される対象が「海洋植物」であって「稲」に限定されていない点。 [相違点2-2] 本件訂正特許発明3の「稲育成改善材」が、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く」ものであるのに対して、甲2発明の「金属鉄、酸化鉄及び不可避的不純物を含む混合物」は、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を除いたものとはいえない点。 (イ)相違点2-1の判断 上記(1)オの周知技術のとおり、「稲の栽培において、田に鉄含有資材を施用して稲に鉄分を供給する栽培技術」は周知の技術である。 そして、甲2発明と周知技術は、植物の生育に寄与する点で目的及び機能が共通するから、甲2発明の「鉄イオン」を「植物に供給する」「鉄粉」を、周知技術のように「田畑」に施用して「稲及び野菜等の栽培」に用いることにより、相違点2-1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。 (ウ)相違点2-2の判断 a 甲2発明の「混合物」に含まれる金属鉄及び酸化鉄は、それ自体が二価の鉄イオンの供給源であることは技術常識から明らかであって、それ自体が植物に二価の鉄イオンを供給する植物育成改善材とみることができる。そうすると、相違点2-2は、混合物のどの要素を植物育成改善材としてみるかの表現上の相違点にすぎず、実質的な相違点ではない。 b 仮に、本件訂正特許発明3の「稲育成改善材」を、田に直接施用する粉末に限定して解釈したとしても、甲2発明の「混合物」に含まれる金属鉄及び酸化鉄自体が植物に二価の鉄イオンを供給することは技術常識から明らかなので、上記(イ)に鑑みると、甲2発明の「金属鉄及び酸化鉄」のみを植物である稲に施用することにより相違点2-2の構成とすることは当業者が容易に想到し得る程度のことである。 なお、上記(1)イ(ア)【0092】記載の比較例1は金属鉄を活性炭と混合した上で酸化させたものを用いていることから、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を用いない構成を採ることは、このことからも格別のものではない。 c また、農業において、農業従事者が異なる土壌改善材等を混合して田や土壌に施用することは通常行われていることであるから、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を含まない鉄粉及び酸化物を含有する混合物を植物改善材として提供し、農業従事者が適宜当該植物改善材と有機酸を混合して利用することにより、相違点2-2の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることにすぎない。 (本件特許明細書の実施例2(【0041】~【0044】)でも、鉄基粉末を窒化化合物、リン酸化合物及びカリウム化合物を基にした添加物を添加して施用している。) (エ)小括 本件訂正特許発明3は、当業者が甲2発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものである。 (3)本件訂正特許発明3の数値範囲について 念のため、本件訂正特許発明3と甲1発明及び甲2発明における全鉄分含有量及び酸素含有量が異なる数値範囲について、進歩性の有無を以下に検討する。 ア 甲1発明を主引例とした場合 本件訂正特許発明3の「全鉄分含有量が60.00質量%以上98.00質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上35.00質量%以下」の全範囲について、当業者が甲1発明の数値範囲に基づいて適宜なし得る事項にすぎない。 イ 甲2発明を主引例とした場合 本件訂正特許発明3の「全鉄分含有量が60.00質量%以上98.00質量%以下、かつ酸素含有量が2.32質量%以上35.00質量%以下」の全範囲について、当業者が甲2発明の数値範囲に基づいて適宜なし得る事項にすぎない。 ウ なお、本件訂正特許発明3の数値範囲全体から甲1発明又は甲2発明の数値範囲内を除いた残りの数値範囲について、効果を確認する。 本件訂正特許明細書の表1は次のとおりである。 「【0036】 【表1】 [図:0001438263000009.jpg] 」 すると、本件訂正特許発明3の数値範囲全体から甲1発明又は甲2発明の数値範囲内を除いた残りの数値範囲と、甲1発明又は甲2発明の数値範囲において、顕著な効果を推認することができない。 したがって、仮に本件訂正特許発明3の数値範囲全体から甲1発明又は甲2発明の数値範囲内を除いた残りの数値範囲に限定しても、進歩性を推認できない。 (4)小括 本件特許発明3は、当業者が甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許発明3は、当業者が甲2発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 請求項4 (1)対比・判断 ア 甲1発明を主引例とした場合 本件訂正特許発明4と甲1発明を対比する。 本件訂正特許発明4は、「鉄イオン供給用鉄基粉末のメジアン径D50が50μm以上10×103μm以下であって、かつ前記鉄イオン供給用鉄基粉末が通過した篩目の最大値が80μm以上30×103μm以下」と特定しているのに対し、甲1発明は、「鉄粉と酸化鉄からなる混合粉末の平均粒径が400μm以下であり、より好ましくは、100μm以下であり、鉄粉及び酸化鉄の鉄含有量の合計を100重量%とした場合、鉄粉及び酸化鉄の平均粒径100μm以下を、50重量%以上が含有することが好ましいとされており、平均粒径70~80μmの還元鉄粉」と特定している点で両者は相違する。 しかしながら、甲1発明の鉄粉と酸化鉄からなる混合粉末の粒径は、その値からみて、本件訂正特許発明4の鉄イオン供給用鉄基粉末の粒径の数値範囲に含まれる蓋然性が極めて高く、甲1発明の粒径の特定に基づいて本件訂正特許発明4に特定された粒径にすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。 また、上記1(3)ウの表1を参照しても、本件訂正特許発明4の鉄イオン供給用鉄基粉末の粒径の特定による顕著な効果を推認することができない。 さらに、本件特許明細書を参照すると、段落【0011】の「なお、かかる全鉄分含有量と酸素含有量の組み合わせは、粒径による影響が小さいため、必ずしも鉄基粉末の粒径を規定しなくてよい範囲であることを併せて知見した。」との記載、及び、段落【0024】の「一方、D50が10×103μmより大きい、または、通過した篩目の最大値が30×103μmより大きいと全体的に過度に粗粒となり、鉄粉の単位質量あたりの表面積である比表面積が小さくなる。土壌中における鉄粉からの二価の鉄イオンの溶出や鉄粉の酸化は、いずれも鉄粉表面から進行するため、比表面積が過度に小さくなると二価の鉄イオンの溶出量が減少して本発明の効果が得られなくなるおそれがある。」、「よって、上記した粒径の規定を満足することが好ましい。」との記載からみても、本件訂正特許発明4に規定された粒径の数値範囲の規定に各別の意味を認めることができないから、本件訂正特許発明4の鉄イオン供給用鉄基粉末の粒径の特定による効果を推認することができない。 イ 甲2発明を主引例とした場合 本件訂正特許発明4と甲2発明を対比する。 本件訂正特許発明4は、「鉄イオン供給用鉄基粉末のメジアン径D50が50μm以上10×103μm以下であって、かつ前記鉄イオン供給用鉄基粉末が通過した篩目の最大値が80μm以上30×103μm以下」と特定しているのに対し、甲2発明は、「鉄粉は、金属鉄と酸化鉄からなる鉄粉の平均粒径は、400μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、実施例及び比較例として、市販の金属鉄99%以上の還元鉄粉(平均粒径70~80μm)を用いて」いることを特定している点で両者は相違する。 しかしながら、甲2発明の金属鉄と酸化鉄からなる鉄粉の粒径は、その値からみて、本件訂正特許発明4の鉄イオン供給用鉄基粉末の粒径の数値範囲に含まれる蓋然性が極めて高く、甲2発明の粒径の特定に基づいて本件訂正特許発明4に特定された粒径にすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。 また、上記1(3)ウの表1を参照しても、本件訂正特許発明4の鉄イオン供給用鉄基粉末の粒径の特定による顕著な効果を推認することができず、本件訂正特許発明4が顕著又は各別の効果を奏することを推認できないことは、上記アで検討したとおりである。 (2)小括 本件訂正特許発明4は、当業者が甲1発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件訂正特許発明4は、当業者が甲2発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 特許権者により令和7年9月19日に提出された意見書における主張について 1 特許権者は、令和7年9月19日に意見書を提出して、「5 意見の内容」(4)において、概略以下のとおり主張している。 (1)本件訂正特許発明3~4は、散布された鉄イオン供給用鉄基粉末の表面が酸化されて形成されるオキシ水酸化鉄や酸化鉄(三価の鉄)を、鉄還元細菌を利用して二価の鉄に還元し、二価の鉄イオンとして溶出させて稲へ供給するものである。そして、本件訂正特許発明3~4は、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質」を併用することなく、前記鉄イオン供給用鉄基粉末から二価の鉄イオンを稲に対して効率的、安定的かつ持続的に供給することができる点で、甲1発明、甲2発明及び周知例と異なる。 (2)本件訂正特許発明3~4は、稲について効果を立証している点で、甲1発明及び甲2発明と異なる。 2 特許権者の上記1の各主張について検討する。 (1)上記1(1)の主張について 「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く」「稲育成改善材」が、周知技術に鑑みれば甲1発明又は甲2発明に基づいて当業者が容易に想到できることは、上記第5の1(2)ア(ウ)及び上記5の1(2)イ(ウ)で検討したとおりである。 また、土中に鉄還元細菌が存在することは例示するまでもなく広く知られており、本件訂正特許発明3~4の鉄粉に含まれる鉄と酸素の質量%と同様の質量比である甲1発明及び甲2発明の鉄及び酸化鉄からなる混合物が、本件訂正特許発明3~4と同様の効果を奏することは当業者に自明である。そうすると、特許権者が主張する上記1(1)の効果は、甲1発明及び甲2発明が内在する効果にすぎない。 さらに、「2価の鉄イオンとキレートを形成する有機酸または還元作用によって自らが酸化され該有機酸となる還元性物質を含む場合を除く」「稲育成改善材」が、これらの有機酸を含む「稲育成改善材」よりも優れた効果を奏することが立証されているわけでもない。 (2)上記1(2)の主張について 甲1発明及び甲2発明を稲に適用することが当業者が容易に想到できることは、上記第5の1(2)ア(イ)及び上記5の1(2)イ(イ)で検討したとおりであって、上記第5の1(1)オの「稲の栽培において、田に鉄含有資材を施用して稲及び野菜に鉄分を供給する栽培技術」が周知の技術であったことからすると、水中の植物に対して適用される甲1発明及び甲2発明の「混合物」を、同様に水田で栽培される植物である「稲」に対して用いることは、当業者が容易になし得る程度のものである。 (3)よって、特許権者の上記1(1)及び(2)の主張はいずれも採用できない。 第7 むすび 上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第7468680号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲〔1-2〕、3及び4のとおり訂正することを認める。 上記第5のとおり、本件訂正特許発明3及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項3及び4に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項1及び2は、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700989

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同じ当事者の審決331件(JFEスチール株式会社、大橋 宏基、高橋 良和)
  • 2022-701156異議申立 / 2024-05-21 / 訂正認容地山固結剤およびそれを用いた地山の固結方法
    同じ当事者: 大橋 宏基、高橋 良和
  • 2022-701205異議申立 / 2023-05-16 / 維持構造接着剤用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた構造物
    同じ当事者: 大橋 宏基、高橋 良和
  • 2022-701207異議申立 / 2023-03-08 / 維持切削油剤組成物
    同じ当事者: 大橋 宏基、高橋 良和
  • 2022-700927異議申立 / 2022-12-23 / 維持毛髪を処置するためのキットおよび方法
    同じ当事者: 大橋 宏基、高橋 良和
  • 2026-700071異議申立
    同じ当事者: 大橋 宏基、高橋 良和
同じ論点・分野の審決(審決分類)187件(121・A01G、851・A01G、853・A01G ほか)
  • 2022-700911異議申立 / 2023-08-25 / 請求成立(取消)植物苗、育苗方法、培土、および植物育成方法
    共通の審決分類: 121・A01G、851・A01G、853・A01G
  • 2019-701054異議申立 / 2020-07-16 / 訂正認容照明アセンブリ
    共通の審決分類: 121・A01G、851・A01G
  • 2018-700266異議申立 / 2018-11-19 / 訂正認容農業用フィルム
    共通の審決分類: 121・A01G、851・A01G
  • 2017-700448異議申立 / 2018-02-05 / 訂正認容山林樹木の挿し木苗生産方法
    共通の審決分類: 121・A01G、851・A01G
  • 2021-390187訂正審判 / 2022-02-24 / 訂正認容苗の移植装置
    共通の審決分類: 851・A01G、853・A01G

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