2023-700089
レンズ鏡筒
- 審判番号
- 2023-700089
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-219544外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7112059
- 請求日
- 2023年01月30日
- 審決日
- 2023年04月24日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ヴイ・エス・テクノロジ-
- 【異議申立人】柴田 隆史
- 分類
- P1651.121-Y (G02B)
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 16項目
結論
特許第7112059号の請求項1~4に係る特許を維持する。
1 手続の経緯
特許第7112059号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年11月22日に出願され、令和4年7月26日にその特許権の設定登録がされ、令和4年8月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年1月30日に特許異議申立人 柴田 隆史(以下「申立人」という。)より請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
2 本件特許発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、本件特許発明1に対する分説は当審が付したものである。
「【本件特許発明1】A カメラ本体に着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒であって、B 前記レンズ鏡筒は、被写体の像を結合させる複数のレンズが光軸を一致させた状態で配置され、螺合して一体となる第1レンズ鏡筒と第2レンズ鏡筒で構成され、C 前記第1レンズ鏡筒は、本体部と、本体部の外周に螺合して移動可能な状態で周設されたナット部材及び固定リングで構成され、続きを表示(全16行)D 前記本体部は、基端側外周面にナット部材及び固定リングを回転移動するため雄ネジ部と、先端側内周面に前記第2レンズ鏡筒を螺合可能な雌ネジ部を備え、E 前記ナット部材は、基端側外周面にカメラ本体の雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を備え、前記カメラ本体と当接することによりカメラ本体と前記第1レンズ鏡筒との相対回転を抑制するように構成され、F 前記固定リングは、移動してナット部材と当接することにより、前記ナット部材の回転を抑制するように構成され、G 前記第2レンズ鏡筒は、基端側外周面に固定絞り板を螺合可能な雄ネジ部と、中央に前記第1レンズ鏡筒に螺合可能な雄ネジ部を備え、H 前記固定絞り板は、前記第2レンズ鏡筒から取り外すことにより交換可能に構成された、I ことを特徴とするレンズ鏡筒。【本件特許発明2】前記ナット部材は、外周形状がトルクレンチを当接して嵌合可能な六角筒または八角筒であることを特徴とする請求項1に記載したレンズ鏡筒。【本件特許発明3】前記固定絞り板は、内周面にネジ加工、外周面に滑り防止加工が施されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載したレンズ鏡筒。【本件特許発明4】前記固定絞り板は、絞り開口の異なる複数の取り替え用固定絞り板を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載したレンズ鏡筒。」
3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証、及び、従たる証拠として甲第2号証、甲第3号証の1、甲第3号証の2、甲第3号証の3、甲第4号証の1、甲第4号証の2及び甲第4号証の3を提出し、請求項1~4に係る特許は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである旨主張している。
<証拠方法>
4 文献の記載
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
(ア)「【請求項1】カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒において、基端側が前記カメラボディに装着されると共に先端側の内周面にネジ部(以下、「固定筒側ネジ部」とする)が形成されてなる固定筒部と、レンズを保持する筒状の部材であって、外周面にネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)が形成されると共に該可動筒側ネジ部が前記固定筒側ネジ部に螺合された状態で前記固定筒部の内側に移動可能な状態で配置されてなる可動筒部と、続きを表示(全12行)前記可動筒側ネジ部に螺合された状態で前記固定筒部の先端側に当接されることにより該固定筒部と前記可動筒部との相対回転を抑制するように構成されたナット部材と、を備え、前記可動筒部は、前記可動筒側ネジ部を有する基端側可動筒部と、該基端側可動筒部に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部と、該基端側可動筒部と該先端側可動筒部との間に挟持された状態で配置される固定絞り板と、を有し、前記固定絞り板は、前記先端側可動筒部を前記基端側可動筒部から取り外すことにより交換可能に構成された、ことを特徴とするレンズ鏡筒。【請求項2】前記固定絞り板の開口と異なる大きさの開口を持つ取り替え用固定絞り板、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。」
「【0022】この場合、前記可動筒部は、図2(a)(b)及び図3(a)に符号21で詳示するように、前記可動筒側ネジ部21bを有する基端側可動筒部210と、該基端側可動筒部210に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部211と、該基端側可動筒部210と該先端側可動筒部211との間に挟持された状態で配置される固定絞り板212と、を有するようにしても良い。例えば、前記先端側可動筒部211の内周面又は外周面にピッチネジ部(不図示)を形成すると共に、前記基端側可動筒部210の外周面又は内周面にピッチネジ部(不図示)を形成しておいて、該先端側可動筒部211を該基端側可動筒部210に着脱できるように構成しておくと良い。また、レンズA1,A2は2つのレンズ群に分けておいて、一方のレンズ群A1は前記基端側可動筒部210(図に示す例では、該基端側可動筒部210の内部に着脱自在に支持されている筒状の部材213)に保持させ、他方のレンズ群A2は先端側可動筒部211に保持させるようにすると良い。したがって、前記固定絞り板212は、これら2つのレンズ群A1,A2の間に配置されることとなる。このように構成することにより(すなわち、レンズを2つのレンズ群A1,A2に分けると共に、これら2つのレンズ群A1,A2の間に前記固定絞り板212を配置することにより)、フォーカス調整時の収差変動(つまり、フォーカス調整の影響でレンズ系の収差の変動(悪化))を抑えることができる。なお、該固定絞り板212は、開口(絞り開口)を有する円板状のものにすると良い。【0023】図4(a)~(c)に例示するような可変絞り312の場合、地震や他の要因に伴う振動によって絞り羽根どうしが擦れ、粉塵が発生して画像のノイズの原因になったりするおそれも考えられる。しかしながら、上述のような固定絞り板212を使用した場合にはそのような粉塵の発生やノイズの発生を抑制できるという効果を奏する。」
「【0027】次に、本発明に係るレンズ鏡筒2の設置方法について説明する。【0028】該レンズ鏡筒2の設置に際しては、前記固定筒部20の基端側20aを前記カメラボディBに装着して固定する。この際、該基端側20aと該カメラボディBとの間には接着剤を塗布しておいて振動に伴う前記固定筒部20の緩みを防止するようにすると良い。【0029】該固定筒部20を前記カメラボディBに取り付けた後は、カメラ(つまり、前記カメラボディB及び前記レンズ鏡筒2)を設置する場所を実際に見て、最適な大きさの開口の固定絞り板212,212A,212B又は212Cを選択し、該選択した固定絞り板212,212A,212B又は212Cを前記基端側可動筒部210と前記先端側可動筒部211との間に入れ込む。この際、該基端側可動筒部210と該先端側可動筒部211とが当接する部分(例えば、不図示のピッチネジ部)に接着剤を塗布しておいて、それらの可動筒部210,211が振動などで緩まないようにしておくと良い。そして、該基端側可動筒部210には前記ナット部材22を取り付けると共に、該基端側可動筒部210を前記固定筒部20に取り付けると良い。なお、緩み防止を目的とした接着剤の塗布は、前記カメラボディBや前記レンズ鏡筒2を設置する前の段階で行うことができることから、該接着剤を塗布し易いように該カメラボディBや該レンズ鏡筒2の姿勢を自由に動かすことができ、接着剤の塗布作業を効率良く行うことができる。また、上述した実施例では、・ 前記固定筒部20の前記カメラボディBへの取り付け・ 前記固定絞り板の前記可動筒部21への取り付け・ 該可動筒部21の前記固定筒部20への取り付けの順で各工程を実施しているが、各工程の実施順序を変えても良い。」
(イ)図1、図2及び図3は、次のとおりである。
「【図1】[図:0001397240000001.jpg]【図2】[図:0001397240000002.jpg]【図3】[図:0001397240000003.jpg]」
a 上記図2(b)及び図3(a)から、先端側可動筒部211の外周面は、基端側可動筒部210の内周面と当接する部分を有するとともに、先端側可動筒部211の当該当接部分は、先端側可動筒部211の構造のうち、光軸方向でみたときの中央部付近に存在していること、が見て取れる。
b 上記図2(a)及び(b)から、カメラボディBにレンズ鏡筒が取り付けられた際に、カメラボディBと固定筒部20が当接していること、が見て取れる。
イ 上記アの記載から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、括弧内は認定の根拠とした段落番号などを参考までに示す。以下同じ。)
「カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒において、基端側が前記カメラボディに装着されると共に先端側の内周面にネジ部(以下、「固定筒側ネジ部」とする)が形成されてなる固定筒部と、レンズを保持する筒状の部材であって、外周面にネジ部(以下、「可動筒側ネジ部」とする)が形成されると共に該可動筒側ネジ部が前記固定筒側ネジ部に螺合された状態で前記固定筒部の内側に移動可能な状態で配置されてなる可動筒部と、前記可動筒側ネジ部に螺合された状態で前記固定筒部の先端側に当接されることにより該固定筒部と前記可動筒部との相対回転を抑制するように構成されたナット部材と、続きを表示(全15行)を備え、前記可動筒部は、前記可動筒側ネジ部を有する基端側可動筒部と、該基端側可動筒部に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部と、該基端側可動筒部と該先端側可動筒部との間に挟持された状態で配置される固定絞り板と、を有し、前記固定絞り板は、前記先端側可動筒部を前記基端側可動筒部から取り外すことにより交換可能に構成され、(請求項1)前記固定絞り板の開口と異なる大きさの開口を持つ取り替え用固定絞り板を備え、(請求項2)先端側可動筒部211の外周面は、基端側可動筒部210の内周面と当接する部分を有するとともに、先端側可動筒部211の当該当接部分は、先端側可動筒部211の構造のうち、光軸方向でみたときの中央部付近に存在しており、(上記ア(イ)a)前記可動筒部は、前記可動筒側ネジ部21bを有する基端側可動筒部210と、該基端側可動筒部210に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部211と、該基端側可動筒部210と該先端側可動筒部211との間に挟持された状態で配置される固定絞り板212と、を有するようにしており、前記先端側可動筒部211の外周面にピッチネジ部を形成すると共に、前記基端側可動筒部210の内周面にピッチネジ部を形成しておいて、該先端側可動筒部211を該基端側可動筒部210に着脱できるように構成され、また、レンズA1,A2は2つのレンズ群に分けておいて、一方のレンズ群A1は前記基端側可動筒部210に保持させ、他方のレンズ群A2は先端側可動筒部211に保持させ、固定絞り板212は、これら2つのレンズ群A1,A2の間に配置され、(【0022】)カメラボディBにレンズ鏡筒が取り付けられた際に、カメラボディBと固定筒部20が当接している、(上記ア(イ)b)レンズ鏡筒。(請求項1)」
(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[0001] 本発明は、斜投写光学系を備えた投写映像表示装置に関し、特に、その斜投写光学系における投写レンズの組み立て方法に関する。」
「[0039] <投写レンズ系の組み立て方法>上記からも明なように、本発明になる投写レンズ系の組み立て方法によれば、製造される投写型映像表示装置に組み込まれるサイズ(対角線の寸法)の異なる複数の映像表示素子P1に対し、そのサイズに適合して設計・製造した複数の種類のレンズブロック、即ち、前群レンズブロックG1や中群レンズブロックG2を予め用意しておく。また、自由曲面ミラーM13についても、同様に、予め複数の種類のものを用意しておく。なお、上述した後群レンズブロックG3については、共通の部品として用意しておく。[0040] その後、投写レンズの組み立てに際しては、図10にも示すように、像表示装置に選択的に組み込まれた映像表示素子P1に対し適合する前群レンズブロックG1と中群レンズブロックG2を選択してこれらを組み立て、さらには、共通の後群レンズブロックG3と組み合わせてレンズ群を構成する。このように構成されたレンズ群を、投写型映像表示装置を構成する各種の部品と共に、上面カバー101と下面カバー102により形成される内部空間に搭載し、さらには、上記と同様に選択された自由曲面ミラーM13をミラーベースに取り付けて投写レンズの組み立てを完了する。[0041] なお、この時、前群レンズブロックG1と中群レンズブロックG2を組み立てる際には、図11にも示すように、絞りS1(20)の前後には鏡筒21、22が一体に延長して形成された部材を使用することにより、その前部21には上記前群レンズブロックG1の後方の鏡筒が、他方、その後部22には上記中群レンズブロックG2の前方の鏡筒が、それぞれ、羅合または挿入される。即ち、かかる組み立て構造によれば、絞りS1に対して前群レンズブロックG1と中群レンズブロックG2を、同一光軸上の所定の位置に、容易に固定して組み立てることが可能となる。なお、この鏡筒21、22を含む図10に示す絞り20も、上記前群レンズブロックG1や中群レンズブロックG2と同様に、選択的に組み込まれた映像表示素子P1に対し適合するように、予め複数のサイズのものを用意しておく。」
(イ) 図10は、次のとおりである。
「【図10】[図:0001397240000004.jpg]」
(3)甲第3号証の1について
甲第3号証の1には、以下の図が記載されている。
[図:0001397240000005.jpg]
(4)甲第3号証の2について
甲第3号証の2には、次の事項が記載されている。
「■50FLの主な特徴・・・(略)・・・◎ミニボーグの60φの鏡筒に接続できますから、軽量・コンパクトです。」
「■50FL使用上の注意◎50FL対物レンズの後端はM57オスネジです。」
(5)甲第3号証の3について
甲第3号証の3には、次の事項が記載されている。
「絞りM57【7057】」
「本製品の特徴・・・また、前後のネジをM57ネジとすることにより、ボーグシステムに簡単に接続が出来るようになりました。これにより、天体望遠鏡ではありえなかった被写界深度の調整機能が加わり、また一歩ボーグがカメラレンズの機能に近づくことが出来ました。・・・・」
(6)甲第4号証の1について
甲第4号証の1には、次の事項が記載されている。
[図:0001397240000006.jpg]
(7)甲第4号証の2について
甲第4号証の2には、次の事項が記載されている。
「VS-MCA SERIES」
「耐振/耐衝撃性に優れたトルク管理ヘキサゴンタイプレンズ特徴・6角のレンズ形状により締め付けがより簡単に、作業を均一化」
[図:0001397240000007.jpg]
(8)甲第4号証の3について
甲第4号証の3には、次の事項が記載されている。
[図:0001397240000008.jpg]
5 当審の判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比、一致点及び相違点の認定
(ア)本件特許発明1と甲1発明とを対比するに先立ち、甲1発明を本件特許発明1に倣って整理すると次のとおりとなる。
「A カメラボディに着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒であって、B レンズ鏡筒は、固定筒部20、ナット部材22及び基端側可動筒部210を一体としてみた構造(以下「一体構造」という。)と先端側可動筒部211とで構成され、一体構造は、固定筒部20に備わる固定筒側ネジ部20dと基端側可動筒部210に備わる可動筒側ネジ部21bとが螺合されるとともに、ナット部材22が可動筒側ネジ部21bに螺合することによって一体となっており、基端側可動筒部210はレンズ群A1を保持しており、続きを表示(全12行)C 一体構造は、基端側可動筒部210と、固定筒部20及びナット部材22で構成され、固定筒部20及びナット部材22は、基端側可動筒部210の外周面に形成された可動筒側ネジ部21bに螺合されており、D 基端側可動筒部210は、外周面に固定筒部20及びナット部材22を螺合させるため可動筒側ネジ部21bと、先端側可動筒部211の外周面に形成されたピッチネジ部に螺合する先端側可動筒部211の外周面に形成されたピッチネジ部を備え、E 固定筒部20は、基端側がカメラボディに装着されるとともに、基端側可動筒部210に螺合されており、F ナット部材22は、可動筒側ネジ部21bに螺合された状態で固定筒部20と当接することにより、固定筒部20の回転を抑制するように構成され、G 先端側可動筒部211は、中央に、一体構造の基端側可動筒部210の内周面に形成されたピッチネジ部に螺合する、外周面に形成されたピッチネジ部を備え、H 固定絞り板212は、先端側可動筒部211を基端側可動筒部210から取り外すことにより交換可能に構成されるとともに、基端側可動筒部210と先端側可動筒部211との間に挟持された状態で配置される、I レンズ鏡筒。」
(イ)上記(ア)によれば、甲1発明の「カメラボディ」は本件特許発明1の「カメラ本体」に相当し、以下同様に、「レンズ鏡筒」は「レンズ鏡筒」に、「一体構造」は「第1レンズ鏡筒」に、「先端側可動筒部211」は「第2レンズ鏡筒」に、「基端側可動筒部210」は「本体部」に、「基端側可動筒部210」に「保持」された「レンズ群A1」は「「被写体の像を結合させる複数のレンズ」であって「光軸を一致させた状態で配置され」たものに、それぞれ相当する。
甲1発明の「固定筒部20」は、「基端側が前記カメラボディに装着される」ものであるから、本件特許発明1の「基体側外周面にカメラ本体の雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を備え」ている「ナット部材」とは、カメラ本体装着部材である点で一致する。
甲1発明の「ナット部材22」は、「可動筒側ネジ部21bに螺合された状態で固定筒部20と当接することにより、固定筒部20の回転を抑制するように構成され」たものであるから、本件特許発明1の「固定リング」に相当するといえる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「カメラ本体に着脱可能となるように構成されたレンズ鏡筒であって、前記レンズ鏡筒は、被写体の像を結合させる複数のレンズが光軸を一致させた状態で配置され、螺合して一体となる第1レンズ鏡筒と第2レンズ鏡筒で構成され、前記第1レンズ鏡筒は、本体部と、本体部の外周に螺合して移動可能な状態で周設されたカメラ本体装着部材及び固定リングで構成され、前記本体部は、基端側外周面にカメラ本体装着部材及び固定リングを回転移動するため雄ネジ部と、先端側内周面に前記第2レンズ鏡筒を螺合可能な雌ネジ部を備え、前記ナット部材は、前記カメラ本体と当接することによりカメラ本体と前記第1レンズ鏡筒との相対回転を抑制するように構成され、前記固定リングは、移動してカメラ本体装着部材と当接することにより、前記カメラ本体装着部材の回転を抑制するように構成され、前記第2レンズ鏡筒は、中央に前記第1レンズ鏡筒に螺合可能な雄ネジ部を備え、固定絞り板を備えた、レンズ鏡筒。」
【相違点1】
カメラ本体装着部材が、本件特許発明1は「ナット部材」であり、また、「基端側外周面にカメラ本体の雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部」を備えるのに対して、甲1発明は「固定筒部」であり、また、「雄ネジ部」を有するのか不明である点。
【相違点2】
「固定絞り板」が、本件特許発明1は「第2レンズ鏡筒から取り外すことにより交換可能に構成され」ているとともに、「第2レンズ鏡筒」に備えられた「基端側外周面に固定絞り板を螺合可能な雄ネジ部」に螺合されているのに対して、甲1発明は、先端側可動筒部211を基端側可動筒部210から取り外すことにより交換可能に構成されているとともに、基端側可動筒部210と先端側可動筒部211との間に挟持された状態で配置されている点。
イ 判断
(ア)相違点2について
a 事案に鑑み、先に、相違点2について検討する。
相違点2について検討するにあたり、甲1発明をどのように変更すれば、相違点2に係る構成に至るかについて検討する。
甲1発明においては、「固定絞り板」は「該基端側可動筒部と該先端側可動筒部との間に挟持された状態で配置される」ものであるところ、前記「先端側可動筒部211(本件特許発明1の「第2レンズ鏡筒」に相当。)」に「固定絞り板を螺合可能な雄ネジ部」を形成することにより、相違点2に係る構成に至ることになる。
b そこで検討すると、本件特許発明1は、「レンズ鏡筒に収納されている固定絞り板については、振動防止を検討されていない」(【0002】)という課題を解決するために、相違点2に係る当該発明の構成を備えるようにして、「レンズ鏡筒に着脱可能に内接して交換可能とされる固定絞り板のゆるみを防止できる」(【0005】)ものと認められる。
しかしながら、甲1発明の「固定絞り板」は、上記のとおり、「該基端側可動筒部と該先端側可動筒部との間に挟持された状態で配置される」ものであるところ、このような構成であってもなお、固定絞り板が振動によってゆるむのが技術常識であることを認めるに足りる証拠はないから、当業者が、上記の課題を認識することができるとはいえない。よって、甲1発明から出発した当業者が、上記の課題を解決するために、相違点2に係る本件特許発明1の構成に至るとはいえない。
c そして、当業者が相違点2に係る構成を採用するに至るに足りる他の動機付けがあるともいえない。
この点、申立人は、甲第2号証(以下「甲2」という。)及び甲第3号証の1~3(以下、まとめて「甲3」という。)に記載されているとおり、レンズ鏡筒の外周面に雄ネジ部を形成し、当該雄ネジ部に螺合するように絞り板側に雌ネジ部を設けることにより、レンズ鏡筒に固定絞り板を取り付けることは周知技術であって、甲1発明にこの周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得るものである旨主張する。
しかしながら、甲1発明と甲2及び3に記載された技術的事項とは、それが適用される環境が異なる。すなわち、甲1発明は、甲1の【0013】のとおり、建物の屋内や屋外に長年固定される環境で使用されることが想定されており、そのため、固定絞り板が基端側可動筒部と、該基端側可動筒部に着脱可能に取り付けられる先端側可動筒部の間に挟持された状態で配置されることにより、基端側可動筒部と先端側可動筒部により覆われて外部に露出せずに固定されるものである。他方、甲2に記載された技術的事項は、投写型映像表示装置([0001])で用いられる投射レンズに関するものであって、前群レンズブロックG1と中群レンズブロックG2のそれぞれを、絞りS1の前後に形成された鏡筒21,22のそれぞれに螺合または挿入するものであるところ([0041]、図10)、この構成からすると、前記絞りS1は、2つのレンズブロックG1,G2の周囲の一部を覆っており、よって、当該2つのレンズブロックG1,G2からみて外部に露出しているといえる。また、甲3に記載された技術的事項は、天体望遠鏡での使用が想定される絞りM57(甲3の3の「本製品の特徴」の第3行目。)であって、一つのレンズの間に絞りM57が外に露出した状態で螺合して使用されるもの(甲3の1「■デジボーグ50FLで絞り【7057】を使用する場合の組み合わせ例」)といえる。
このように、甲2及び3に記載された固定絞りは、外部環境に接しやすい態様といえるものであって、甲1発明のような建物の屋内や屋外に長年固定されるがゆえに、外部環境に接しにくいことが求められる態様とは異なることから、甲1発明において、甲2及び3に記載された技術的事項を採用する動機付けの存在は認められない。
d さらに、甲第4号証の1~3(以下、まとめて「甲4」という。)に記載された技術的事項をみても、上記判断が左右されることはない。
(イ)したがって、相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲1発明及び甲2~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そうすると、本件特許発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件特許発明2~4について
本件特許発明2~4は、本件特許発明1をさらに減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲2~4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1~4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2023-700089