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特許異議申立

2021-700409

眼内レンズ挿入器具および眼内レンズ挿入システム

審判番号
2021-700409
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-206690
登録番号
6777132
請求日
2021年04月28日
審決日
2022年09月14日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ニデック
  • 【権利者代理人】水越 邦仁
  • 【権利者代理人】武藤 広晃
  • 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 一浩
  • 審判官 倉橋 紀夫
  • 審判官 安井 寿儀
分類
P1651.16 -YAA(A61F) / P1651.121-YAA(A61F) / P1651.537-YAA(A61F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第184条の13、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6777132号発明「眼内レンズ挿入器具および眼内レンズ挿入システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6777132号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-2〕、3、4について訂正することを認める。 特許第6777132号の請求項1-4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6777132号(以下「本件特許」という。)の請求項1-4に係る特許についての出願は、平成26年2月25日に出願した特願2014-34619号の一部を、平成30年11月1日に新たな特許出願とした特願2018-206690号であって、令和2年10月12日にその特許権の設定登録がなされ、令和2年10月28日に特許掲載公報が発行されたものである。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 4月28日 :特許異議申立人山▲崎▼浩一郎(以下「申立 人」という。)による請求項1-4に係る特 許に対する特許異議の申立て 令和3年 9月21日付け:取消理由通知書 令和3年12月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年 2月 3日付け:訂正請求があった旨の通知書(特許法第12 0条の5第5項) 令和4年 3月 9日 :申立人による意見書の提出 令和4年 4月14日付け:取消理由通知(決定の予告)書 令和4年 6月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 上記令和4年6月17日提出の訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、訂正自体を、「本件訂正」という。本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を引いて示すと以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記係止部によって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている、」とあるのを、「前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の「ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。」という記載の前に「前記係止部には、先端方向を向き前記支持部を係止する基端面と、前記基端面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されており、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している、」との記載を追加する訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載の眼内レンズ挿入器具であって、 前記係止部は、前記押出軸中心に向かって陥没する陥没形状で形成されており、前記係止部のうち押出軸の先端方向を向く基端面は、前記押出軸の軸方向に対して左右一方向に傾斜していることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。」とあるのを、「光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズを、先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部と、 前記押出部より基端側に設けられ前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部と、 を備え、 前記前面側とは反対側である前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、前記開口部は係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面を有し、 前記開口部の基端には押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、前記切り込み部全体が前記挿入筒部よりも先端側にて形成されており、 前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、 前記係止部は、前記押出軸中心に向かって陥没する陥没形状で形成されており、前記係止部のうち押出軸の先端方向を向く基端面は、前記押出軸の軸方向に対して左右一方向に傾斜していることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記係止部によって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入システムを眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている、」とあるのを、「前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入システムを眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4の「ことを特徴とする眼内レンズ挿入システム。」という記載の前に「前記係止部には、先端方向を向き前記支持部を係止する基端面と、前記基端面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されており、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している、」との記載を追加する訂正を行う。 2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記係止部によって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」との記載について、令和3年9月21日付け取消理由通知書で「具体的にどのような構成で、押圧部材が支持部に引っ掛かり難くしているのか明確でない。また、「引っ掛かり難く」との記載は、その比較の基準や程度が不明確である。」との指摘に対し、押出部材が支持部に引っ掛かり難くするための構成を具体的に特定することによって釈明するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0071】―【0076】、【0090】の記載から導き出される事項であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項1についての訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「係止部」の構造をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0042】、【0044】-【0047】、【0092】、【0104】、【図5】の記載から導き出される事項であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項3についての訂正は、請求項2を引用する請求項3を削除し、特許請求の範囲の請求項3について請求項1との引用関係を解消し、さらに、特許請求の範囲の請求項3が引用していた請求項1の「前記係止部によって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」との記載について、令和3年9月21日付け取消理由通知書で「具体的にどのような構成で、押圧部材が支持部に引っ掛かり難くしているのか明確でない。また、「引っ掛かり難く」との記載は、その比較の基準や程度が不明確である。」との指摘に対し、押出部材が支持部に引っ掛かり難くするための構成を具体的に特定することによって釈明するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、第3号に規定する明瞭でない記載の釈明、及び第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものである。 そして、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0071】―【0076】、【0090】の記載から導き出される事項であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る請求項4についての訂正は、特許請求の範囲の請求項4の「前記係止部によって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入システムを眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」との記載について、令和3年9月21日付け取消理由通知書で「具体的にどのような構成で、押圧部材が支持部に引っ掛かり難くしているのか明確でない。また、「引っ掛かり難く」との記載は、その比較の基準や程度が不明確である。」との指摘に対し、押出部材が支持部に引っ掛かり難くするための構成を具体的に特定することによって釈明するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項4に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0071】―【0076】、【0090】の記載から導き出される事項であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る請求項4についての訂正は、特許請求の範囲の請求項4の「係止部」の構造をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0042】、【0044】-【0047】、【0092】、【0104】、【図5】の記載から導き出される事項であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1ないし5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 さらに、訂正前の請求項1-3について、請求項2及び3は、それぞれ請求項1を直接的に引用しているものであって、上記訂正事項1及び2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、請求項1-3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 そして、訂正後の請求項3については、特許権者は、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 したがって、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、3、4について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズを、先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部と、 前記押出部より基端側に設けられ前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部と、 を備え、 前記前面側とは反対側である前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、前記開口部は係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面を有し、 前記開口部の基端には押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、前記切り込み部全体が前記挿入筒部よりも先端側にて形成されており、 前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、 前記係止部には、先端方向を向き前記支持部を係止する基端面と、前記基端面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されており、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している、 ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。 【請求項2】 請求項1に記載の眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部の基端側に接続され、前記進行前の前記眼内レンズが前記係止部によって前記支持部が係止された状態で載置される載置部と、 前記眼内レンズの載置方向を誘導する指標であって、前記支持部の前面側と前記係止部とが面するように前記眼内レンズを前記載置部に載置するための指標と、 を備えたことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。 【請求項3】 光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズを、先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部と、 前記押出部より基端側に設けられ前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部と、 を備え、 前記前面側とは反対側である前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、前記開口部は係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面を有し、 前記開口部の基端には押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、前記切り込み部全体が前記挿入筒部よりも先端側にて形成されており、 前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、 前記係止部は、前記押出軸中心に向かって陥没する陥没形状で形成されており、前記係止部のうち押出軸の先端方向を向く基端面は、前記押出軸の軸方向に対して左右一方向に傾斜していることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。 【請求項4】 光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズが予め充填され、前記眼内レンズを先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入システムであって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ、前記光学部を押し出す押出部と、 前記押出部より基端側に設けられ、前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部と、 を備え、 前記前面側とは反対側である前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、前記開口部は係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面を有し、 前記開口部の基端には押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、前記切り込み部全体が前記挿入筒部よりも先端側にて形成されており、 前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入システムを眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、 前記係止部には、先端方向を向き前記支持部を係止する基端面と、前記基端面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されており、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している、 ことを特徴とする眼内レンズ挿入システム。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 当審が令和4年4月14日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1(拡大先願) 請求項1及び4に係る発明は、本件特許の出願をしたとみなす日前の日本語特許出願であって、本件特許の出願をしたとみなす日の後に国際公開がされた日本語特許出願の国際出願日における国際出願に係る甲第1号証の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が本件特許の出願をしたとみなす日前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記甲第1号証の出願人と同一でもないので、特許法第184条の13の規定により読み替える同法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 <甲号証一覧> 甲第1号証:国際公開第2014/084355号 (PCT/JP2013/082183) 甲第2号証:国際公開第2005/070341号 甲第3号証:国際公開第2008/149795号 第5 取消理由1(拡大先願)に対する判断 1 先願明細書に記載された事項及び先願発明 甲第1号証は、本件特許の出願をしたとみなす日(平成26年2月25日)前を国際出願日(2013年(平成25年)11月29日)とする出願であって、本件特許の出願をしたとみなす日の後に国際公開(2014年(平成26年)6月5日)がされたPCT/JP2013/082183の公開公報である。また、本件特許に係る出願の出願人及び発明者は、上記甲第1号証に係る出願の出願人及び発明者と同一でない。 そして、甲第1号証には、以下の記載事項がある。なお、下線は当審が付した。 (1)「[0002] 従来から、白内障等の手術においては、眼球における角膜(鞏膜)や水晶体前嚢部分などの眼組織に切開創を設け、この切開創を介して、嚢内の水晶体を摘出、除去し、その後に、水晶体に代替する眼内レンズを、前記切開創より眼内に挿入して嚢内に配置させる処置が行われている。 [0003] 特に近年においては、眼内レンズを切開創より眼球内に挿入する際に、以下に示すような挿入器具が用いられる場合が多い。すなわち、 器具本体の先端部に設けられた挿入筒部の先端開口を上述の切開創を通じて眼球内に挿し入れると共に、眼内レンズを器具本体内で小さく変形せしめた状態で挿入筒部の先端開口から棒状のプランジャによって押し出すことにより、眼内レンズを眼球内に挿入する。このような挿入器具を用いることにより、水晶体の摘出除去のために形成した切開創を利用して眼内レンズを簡単に眼球内に挿入できるので、手術を簡略化することができ、手術後の乱視の発生や感染症の発生を抑制することができる。」 (2)「[0017] また、本発明においては、前記眼内レンズの挿入器具は、製造工程で予め眼内レンズが前記収納部に収納され、該眼内レンズが収納された状態で流通する、プリセット型挿入器具としてもよい。」 (3)「[0022] <実施例1> 図1には、従来の眼内レンズの挿入器具1(以下、単に、挿入器具1ともいう。)の概略構成を示す。図1(a)は平面図、図1(b)は側面図を示している。挿入器具1は、断面略矩形の筒状に形成されており片側は大きく開口し(以下、大きく開口した側を後端部10bという。)、別の片側端部には細く絞られた挿入筒部としてのノズル部15及び斜めに開口した先端部10aを備える器具本体としてのノズル本体10と、ノズル本体10に挿入され往復運動可能なプランジャ30とを備えている。なお、以下において、ノズル本体10の先端部10aから後端部10bへ向かう方向またはその逆方向を前後方向、図1(a)において紙面に垂直方向を上下方向、図1(b)において紙面に垂直方向を左右方向とする。 [0023] ノズル本体10の後端部10b付近には、板状に迫り出し、使用者がプランジャ30をノズル本体10の先端側に押し込む際に指を掛けるホールド部11が一体的に設けられている。また、ノズル本体10におけるノズル部15の後端側には、眼内レンズ2をセットする収納部としてのステージ部12が設けられている。このステージ部12は、ステージ蓋部13を開蓋することでノズル本体10の上側(図1(a)における紙面垂直手前側であって、眼内レンズの光軸前側に相当する。)が開放されるようになっている。また、ステージ部12には、ノズル本体10の下側(図1(a)における紙面垂直奥側であって、眼内レンズの光軸後側に相当する。)から位置決め部材50が取り付けられている。この位置決め部材50によって、使用前(輸送中)において、ステージ部12内で眼内レンズ2が安定して保持されている。 [0024] すなわち、挿入器具1においては、製造時に、ステージ蓋部13が開蓋し位置決め部材50がステージ部12に取り付けられた状態で、眼内レンズ2がステージ部12に、光軸前側が上になるようにセットされる。そして、ステージ蓋部13を閉蓋させた後出荷、販売される。さらに、使用時には使用者がステージ蓋部13を閉蓋したままで位置決め部材50を取り外し、その後プランジャ30をノズル本体10の先端側に押し込む。このことで、プランジャ30によって眼内レンズ2を押圧し、ノズル部15まで移動させた上で、先端部10aより眼内レンズ2を押し出す。なお、挿入器具1におけるノズル本体10、プランジャ30、位置決め部材50はポリプロピレンなどの樹脂の素材で形成される。ポリプロピレンは医療用機器において実績があり、耐薬品性などの信頼性も高い素材である。」 (4)「[0025] 図2は、眼内レンズ2の概略構成を示した図である。図2(a)は平面図、図2(b)は側面図を示す。眼内レンズ2は、所定の屈折力を有するレンズ本体2aと、レンズ本体2aと一体に設けられ、レンズ本体2aを眼球内で保持するためのヒゲ状の2本の支持部2b、2bとから形成されている。レンズ本体2a及び支持部2bは可撓性の樹脂材料から形成されている。 [0026] 図3にはノズル本体10の平面図を示す。前述のようにノズル本体10においては、眼内レンズ2はステージ部12にセットされる。そして、その状態でプランジャ30によって押圧されて先端部10aから眼内レンズ2が放出される。なお、ノズル本体10の内部にはノズル本体10の外形の変化に応じて断面形状が変化する貫通孔10cが設けられている。そして、眼内レンズ2が放出される際は、眼内レンズ2は、ノズル本体10内の貫通孔10cの断面形状の変化に応じて変形し、患者の眼球に形成された切開創に入り易い形に変形した上で放出されることになる。また、先端部10aは、上側が下側より前側(収納された眼内レンズ2の光軸後側から前側にいくに従って、端面の位置が眼内レンズ挿入方向のより前側)になるように斜めにカットされた形状となっている。なお、この先端部10aの斜めにカットされた形状については、左右方向から見て平面、すなわち直線的に斜めにカットされていてもよいし、外側に膨らみを持つように、すなわち曲面形状となるように斜めにカットされていてもよい。」 (5)「[0049] 図8は、眼内レンズ2がノズル部15の先端部10aから放出される際の状態を説明するための図である。図8(a)は従来のプランジャ30によって押し出す場合、図8(b)は本実施例におけるプランジャ60によって押し出す場合を示している。なお、図8において眼内レンズ2は、貫通孔10cの断面形状の変化に伴って変形しており、上下方向の幅寸法が大きくなっている。 [0050] 図8(a)に示す従来の場合には、先端部10aから眼内レンズ2が放出される際には、下側(レンズ本体2aの光軸後側)に眼内レンズ2を保持するものがないため、眼内レンズ2は自重によるモーメントが働き、図の矢印の方向に前転する傾向があった。これにより、眼内レンズ2を眼球内に放出する際に、レンズ本体2aの姿勢を維持することが困難で、放出後に眼内レンズ2の姿勢を大幅に調整し直さなければならない場合があった。 [0051] それに対し、図8(b)に示す本実施例においては、レンズ本体2aは突起61eの上面と貫通孔10cの上側内壁によって上下から挟まれるように保持されている。従って、本実施例においては、眼内レンズ2は図8(b)に示すように、プランジャ60による押圧方向に姿勢を維持したまま放出され得る。」 (6)「[0054] ところで、本実施例における貫通孔10cは、図8に示すように、ステージ部12側からノズル部15側に行くに連れて底面および上面の幅寸法が小さくなるように断面形状が変化する。この変化により、眼内レンズ2は、先端部10cから眼内レンズ2が放出される際には、上側に凸または下側に凸となるように、移動方向の軸を囲む形で変形する。これにより、小さな切開創からでも眼内レンズ2を眼球内に挿入することができる。 [0055] この場合、本実施例のプランジャ60を使用することを考慮すると、眼内レンズ2が下側に凸となるように変形した方が、凸部をより確実に突起61eの上面に保持させることができる。また、放出直後に眼内レンズ2のレンズ本体2aが元の形状に復元したとしても、下側に凸となるように変形させた方が、突起61eによる保持状態を維持し易い。そこで、本実施例においては、プランジャ60を使用することに合わせ、ノズル本体10には、眼内レンズ2が下側に凸となるような変形を促進する機構を採用した。 [0056] 図9には、本実施例におけるノズル本体10の断面図を示す。図9(a)は、プランジャ60で眼内レンズ2を押圧して移動を開始した直後の断面図、図9(b)は、その後、図3に示すようにステージ部12側からノズル部15側に行くに連れて底面および上面の幅寸法が小さくなっていく途中の断面図、図9(c)は、眼内レンズ2がノズル部15を通過している時点における断面図を示す。また、各断面図には当該断面を通過する際の眼内レンズ2のレンズ本体2aの形状を併せて示している。図9(a)を見て分かるように、本実施例においてステージ部12の直前方で断面形状が変化する前の貫通孔10cには、レンズ本体2aの左右の外周部分に下側から接触するガイド10t、10tが形成されている。 [0057] 少なくとも眼内レンズ2が貫通孔10cの断面がテ―パ状に小さくなる領域を通過する前に、ガイド10t、10tが、レンズ本体2aの左右の外周部分が下側に変位しないようにガイドすることで、眼内レンズ2が、図9における下側に凸になることを促進することができる。すなわち、レンズ本体2aをより確実に、図9(b)及び図9(c)に示すように、図9における下側に凸になるように変形させることができる。」 (7)「[0060] <実施例2> 次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2においては、プランジャにおいて眼内レンズの後側の支持部を支持する切欠部が、プランジャの下側(眼内レンズの光軸後側)に設けられた例について説明する。 [0061] 図10は、本実施例におけるプランジャ70の作用部71の先端付近の図である。本実施例と実施例1におけるプランジャ60との相違点は、実施例1のプランジャ60においては、支持部2bを支持する切欠部61cが、従来例と同様に上側(眼内レンズ2の光軸前側)に配置されているのに対し、本実施例における切欠部71cは下側(眼内レンズ2の光軸後側)に配置されている点である。 [0062] 図10において、図10(a)、(c)は各々左右方向から見た側面図、図10(b)は眼内レンズ2の光軸前側から見た平面図、図10(d)は眼内レンズ2の光軸後側から見た底面図、図10(e)は正面図である。図10から分かるように、本実施例のプランジャ70においては、作用部71の先端71dに突起71eが設けられているとともに、眼内レンズ2の支持部2bを保持する切欠部71cは作用部71の、眼内レンズ2の光軸後側に設けられている。 [0063] 図11は、本実施例におけるプランジャ70と眼内レンズ2との位置関係について説明するための図である。図11(a)は眼内レンズ2の挿入作業を開始する前の状態における側面図、図11(b)は同様の状態を下側から見た底面図を示す。図に示すように、本実施例においても、眼内レンズ2の挿入作業を開始する前の状態、すなわち、位置決め部材50がステージ部12に取り付けられ、ノズル本体10に設けられた図3に示す係止孔10eとプランジャ70の図示しない爪部とが係合している状態では、突起71eの上面は眼内レンズ2のレンズ本体2aより下側に位置し、突起71eの先端はレンズ本体2aの外周側から中心に向かって若干入り込んだ状態となっている。そして、本実施例においては、眼内レンズ2の後側の支持部2bは、プランジャ70の作用部71の下側に設けられた切欠部71cを貫通する形で保持されている。」 (8)「[0065] さらに、プランジャ70がノズル本体10内に押し込まれた際には、眼内レンズ2のレンズ本体2aが突起71eの上面に載置されたままプランジャ70が前方(図11左側)に移動して先端71dがレンズ本体2aの外周部に当接する。そして、さらにプランジャ70がノズル本体10内に押し込まれることにより、先端71dがレンズ本体2aの外周部を押圧して眼内レンズ2をノズル部15まで移動させる。その際、眼内レンズ2の後側の支持部2bは、切欠部71cにおいて、不用意な変形が生じないように保持されながら移動する。 [0066] 本実施例では、さらにプランジャ70が押し込まれることにより、眼内レンズ2はノズル部15の先端部10aに到達する。そして、実施例1と同様、眼内レンズ2が先端部10aより放出される際には、眼内レンズ2のレンズ本体2aは、上側が貫通孔10cの壁面に、下側は突起71eに支持された状態で、前方に真直ぐに放出される。 [0067] そして、その後、プランジャ70の作用部71は、先端部10aから突出し、切欠部71cも、先端部10aから外部に露出する。そうすると、切欠部71cに保持されていた眼内レンズ2の支持部2bは円滑にプランジャ70から自重で離脱する。これにより、支持部2bがプランジャ70に引っかかるなどの不都合を生じず、より円滑に眼内レンズ2を眼球内に放出することが可能となる。」 (9)「[0070] 図12は、このような場合の挿入器具のノズル本体80におけるステージ部82付近を示す、下側(レンズ光軸後側)の斜め方向から見た斜視図である。図からも分かるように、この構成例では、ステージ蓋部83はノズル本体80における下側(眼内レンズの光軸後側)に設けられている。従って、ステージ部82に眼内レンズ2をセットする際には、ノズル本体80の上下を反転させ、ステージ蓋部83が上方向(地面と反対方向)に来るようにしてから、眼内レンズ2をセットする。この状態では下方向(地面方向)に位置決め部材90の保持部93が突出した状態となる。」 (10)「[0073] 以上、説明したように、本実施例によれば、ノズル部15、85の先端部10a、80aから眼内レンズ2が放出される際に、眼内レンズ2が前転方向に回転したり、先端部10a、80a付近の貫通孔10c、80cとプランジャ70の作用部71の外壁との間に挟まるなどの不都合を抑制し、より円滑に眼内レンズ2を眼球内に放出することが可能となる。また、本実施例では、プランジャ70の切欠部71cが下側(眼内レンズ2の光軸後側)に設けられているために、眼内レンズ2を眼球内に挿入した際に、後側の支持部2aがプランジャ70から、より確実に離脱し、眼内レンズ2を眼球内により確実に解放することができる。また、支持部2bの弾性変形及び復元の動作を抑制できるため、そのことによる眼内レンズ2の姿勢変化など位置調整への影響を抑制することができる。」 (11)図1-2 [図1] [図:0001391989000001.jpg] [図:0001391989000002.jpg] (12)図7-9 [図7] [図:0001391989000003.jpg] [図:0001391989000004.jpg] [図:0001391989000005.jpg] (13)図10-12 [図10] [図:0001391989000006.jpg] [図11] [図:0001391989000007.jpg] [図12] [図:0001391989000008.jpg] (14)上記(4)の[0025]-[0026]の記載及び上記(12)の[図2]からみて、眼内レンズ2は、レンズ本体2aと前記レンズ本体2aの周辺部から外側に伸びる支持部2bとを有し、変形可能であるものと認められる。 また、上記(3)の[0024]に「眼内レンズ2がステージ部12に、光軸前側が上になるようにセットされる。」と記載されている、さらに、上記(1)の[0003]、上記(3)の[0024]、上記(5)の[0049]-[0051]の記載、及び、上記(11)の[図1]、上記(12)の[図7]-[図8]の記載、特に、[図1]の先端部10aの傾斜面の向きと[図8]の同傾斜面の向きとから、眼内レンズ2の光軸前側が上になるようにセットされた向きのまま、眼内レンズ2が眼内に挿入されることが明らかである。よって、眼内レンズ2の光軸前側は眼内で角膜側に向けられるものと認められる。 (15)上記(3)の[0022]、上記(9)の[0070]、上記(10)の[0073]の記載及び上記(11)の[図1]、上記(13)の[図12]からみて、眼内レンズの挿入器具1における筒状のノズル本体80は、先端方向に伸びる筒状のノズル部85、及び当該ノズル部85の後端側に接続されるノズル本体80のテーパ部を備えるものと認められる。 (16)上記(6)の[0054]-[0056]の記載及び上記(12)の[図9]、上記(14)の[図12]からみて、上記(15)で認定したノズル本体80のテーパ部には貫通孔80cが形成されており、当該貫通孔80cは、眼内レンズ2を上側に凸または下側に凸となるよう変形するために、テーパ状に形成されているものと認められる。 (17)上記(10)の[0073]の記載及び上記(13)の[図12]からみて、ノズル本体80におけるノズル部85の先端には、眼内レンズ2を排出する開口部が設けられているものと認められる(ノズル本体80の先端に開口を有するともいえる。)。また、上記(13)の[図12]からみて、この開口部は、挿入方向に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されているものと認められる。さらに、上記(7)の[0063]の記載及び上記(13)の[図11]-[図12]からみて、この開口部は、切欠部71cによって保持された支持部2bの光軸後側が向く方向に傾斜して形成される開口端面が設けられているものと認められる。 (18)上記(7)の[0060]-[0063]、(8)の[0065]の記載及び上記(13)の[図10]-[図11]からみて、プランジャ70は棒状であって、先端側に設けられレンズ本体2aを押し出す先端71dと、前記先端71dより後端側に設けられ支持部2bの光軸前側と面して支持部2bを係止する切欠部71cを備えるものと認められる。 (19)上記(6)の[0054]の「眼内レンズ2は、先端部10cから眼内レンズ2が放出される際には、上側に凸または下側に凸となるように、移動方向の軸を囲む形で変形する。」との記載、上記(8)の[0065]及び[0067]の記載からみて、プランジャ70を移動方向の軸の先端側に押し込むことで、眼内レンズ2は眼内に挿入されるものと認められる。 (20)上記(13)の図12の先端部80aの形状からみて、開口部の後端側には、移動方向の軸の後端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されているものと認められる。 (21)上記(7)の[0060]-[0063]の記載及び上記(13)の[図11]からみて、切欠部71cは支持部2bの光軸前側と面して支持部2bを係止していると認められ、よって、先端71dより後端側に形成される切欠部71cは光軸後側に向いていると認められる。さらに、上記(17)で認定したとおり、開口部の開口端面は、切欠部71cによって保持された支持部2bの光軸後側が向く方向に傾斜して形成されており、開口端面の傾斜方向と先端71dに切欠部71cが形成される向きとは略同方向であると認められる。 (22)上記(8)の[0067]の「切欠部71cに保持されていた眼内レンズ2の支持部2bは円滑にプランジャ70から自重で離脱する。これにより、支持部2bがプランジャ70に引っかかるなどの不都合を生じず、より円滑に眼内レンズ2を眼球内に放出することが可能となる。」との記載、上記(10)の[0073]の「本実施例では、プランジャ70の切欠部71cが下側(眼内レンズ2の光軸後側)に設けられているために、眼内レンズ2を眼球内に挿入した際に、後側の支持部2aがプランジャ70から、より確実に離脱し、眼内レンズ2を眼球内により確実に解放することができる。」との記載から、上記(21)で認定した構成によって、眼内レンズ2を眼内に挿入した際に、支持部2bがプランジャ70からより確実に離脱し、プランジャ70が支持部2bに引っかかるなどの不都合を生じなくされているものと解される。 (23)上記(13)の[図10]-[図11]から、切欠部71cには、先端方向を向く第1の面と、前記第1の面よりも先端側において後端方向を向く第2の面と、が形成されており、プランジャ70の側面視において、前記第1の面は、先端方向かつ下側方向を向くように傾斜しており、前記第2の面は、後端方向かつ下側方向を向くように傾斜していることが看て取れる([図11]に基づく下図参照。)。 [図:0001391989000009.jpg] 以上の記載事項(1)-(13)及び認定事項(14)-(23)を総合すると、甲第1号証に係る国際出願PCT/JP2013/082183には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。 (先願発明) 「レンズ本体2aと前記レンズ本体2aの周辺部から外側に伸びる支持部2bとを有し光軸前側が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズ2を、先端に開口を有する筒状のノズル本体80に、棒状のプランジャ70を移動方向の軸の先端側に押し込むことで眼内に挿入する眼内レンズの挿入器具1であって、 前記ノズル本体80は、 先端方向に伸びる筒状のノズル部85と、 前記ノズル部85の後端側に接続されるノズル本体80のテーパ部であって、貫通孔80cが眼内レンズ2を上側に凸または下側に凸となるよう変形するためにテーパ状で形成されたノズル本体80のテーパ部と、 眼内レンズ2を排出するために前記ノズル部85の先端に設けられる開口部であって、挿入方向に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記プランジャ70は、 移動方向の軸の先端側に設けられレンズ本体2aを押し出す先端71dと、 前記先端部71dより後端側に設けられ支持部2bの光軸前側と面して支持部2bを係止する切欠部71cと、 を備え、 前記開口部は切欠部71cによって保持された前記支持部2bの光軸後側が向く方向に傾斜して形成される開口端面を有し、 前記開口部の後端側には移動方向の軸の後端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、 前記切欠部71cが前記支持部2bの光軸前側と面して前記支持部2bを係止し、前記開口端面が前記支持部2bの光軸後側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記先端71dより後端側に前記切欠部71cが形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズ2を眼内に挿入した際に前記支持部2bが前記プランジャ70からより確実に離脱し、前記プランジャ70が前記支持部2bに引っかかるなどの不都合を生じなくされていると共に、 前記切欠部71cには、先端方向を向く第1の面と、前記第1の面よりも先端側において後端方向を向く第2の面と、が形成されており、前記プランジャ70の側面視において、前記第1の面は、先端方向かつ下側方向を向くように傾斜しており、前記第2の面は、後端方向かつ下側方向を向くように傾斜している、 眼内レンズの挿入器具1、及び、眼内レンズの挿入器具1に眼内レンズが予め収納されたプリセット型挿入器具。」 2 甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、以下の記載事項がある。なお、下線は当審が付した。 (1)「[0038] 図1~図4は、本実施形態の眼内レンズ挿入装置のカートリッジ10を示す図である。図1(a)はカートリッジ10の上面図、図1(b)はカートリッジ10の側面図、図1(c)はカートリッジ10の前面図、図1(d)はカートリッジ10の後面図である。 [0039] カートリッジ10は、略長尺円筒状に形成されたカートリッジ本体12を備えている。力ートリッジ本体12の先端部には、切開された眼球の創口へ挿入される挿入筒14が設けられている。挿入筒14の先端には、眼内レンズを外部に排出する排出口16が設けられている。排出口16は、挿入筒14の先端を斜めにカットした楕円状に形成され、この楕円状の排出口16の長軸は、前面視で挿入筒14の上端から反時計回り方向へ40~50°回転した位置で挿入筒14と交差している。そして、排出口16は、その長軸が挿入筒14と交差した位置を先端として、この先端力も後方に向けて傾斜している。挿入筒14の排出口16の長軸と交差する下側の部位には、挿入筒14の軸方向に後方が頂点となるように三角形状に切欠部18が形成されている。 [0040] カートリッジ本体12の後端部には、眼内レンズを挿入する挿入口20が形成されている。カートリッジ本体12には、挿入口20から挿入筒14内を通過して排出口16まで眼内レンズが移動可能に、挿入口20から排出口16へ貫通する貫通孔22が形成されている。また、カートリッジ本体12の後端部には、挿入口20から貫通孔22内へ鑷子で眼内レンズを挿入した後に貫通孔22から鑷子を抜くための切欠部24,26が、貫通孔22の上下方向に貫通して形成されている。また、カートリッジ本体12の後端部には、上端に平面部28が形成されている。」 (2)「[0050] 図4は、カートリッジ本体12に形成されている貫通孔22の挿入口20と排出口16との間の断面形状を示す図である。カートリッジ本体12の後端部の挿入口20は、左右方向を長軸及び上下方向を短軸とする長円状に形成されている。カートリッジ本体12の挿入筒14の排出口16と挿入筒14の基端部との間の断面は円状に形成されている。挿入口20と挿入筒14の基端部との間の断面は、挿入口14の上端直線部が挿入筒14の基端部断面の上端に直線状に収束すると共に、挿入口14の下端直線部が挿入筒14の基端部断面の下端に直線状に収束するように長円状に形成されている。」 (3)[図1] [図:0001391989000010.jpg] (4)[図4] [図:0001391989000011.jpg] 以上の記載事項(1)-(4)を総合すると、甲第2号証には、以下の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されている。 (甲2技術) 「カートリッジ10を備えた眼内レンズ挿入装置であって、 前記カートリッジ10は、 挿入筒14と、 挿入筒14の基端部に接続されるカートリッジ本体12であって、内壁が先細り形状で形成されたカートリッジ本体12と、 挿入筒14の先端に設けられる排出口16であって、斜めにカットした楕円状に形成されている排出口16と、 を備え、 前記排出口16の長軸と交差する下側の部位には挿入筒14の軸方向に後方が頂点となるように三角形状に切欠部18が形成されており、前記切欠部18全体が前記カートリッジ本体12よりも先端側にて形成されている、 眼内レンズ挿入装置。」 3 甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、以下の記載事項がある。なお、下線は当審が付した。 (1)「[0028] 以下図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。 1.全体構成 図1に示す眼内レンズ挿入装置1は、眼内レンズ挿入器具2及びケース3からなり、予め眼内レンズ4を設置した眼内レンズ挿入器具2をケース3に装着して構成される。このように眼内レンズ挿入器具2をケース3に装着することにより、眼内レンズ挿入装置1は、製造工場からの出荷後、搬送や、手術の準備などの手術前において、眼内レンズ挿入器具2に予め設置された眼内レンズ4の不意な飛び出しや、損傷を防止し得るように構成されている。また、眼内レンズ挿入装置1は、主に合成樹脂で全体を構成することにより、容易に大量生産をすることができるように構成され、ディスポーザブル(使い捨て)としての用途に好適に用いられる。尚、以下の説明において、レンズ進行方向としてのレンズ進行軸の前方を単に「前方」といい、レンズ進行軸の後方を単に「後方」ということとする。 (1)眼内レンズ挿入器具 眼内レンズ挿入器具2は、図2に示すように、本体6、スライダー7、プランジャー8、及びロック機構9を備える。スライダー7及びプランジャー8は、本体6内を前方及び後方へ移動可能に設けられている。ロック機構9は、前方へプランジャー8が動くのを制限する。このロック機構9は、スライダー7を前方へ移動することにより解除され、これにより、プランジャー8が前方へ移動可能となる。このように構成された眼内レンズ挿入器具2は、最初にスライダー7で眼内レンズ4を押し出して確実に所定形状に折り畳み、次いで、前記眼内レンズ4をプランジャー8で押し出して小さく折り畳んで、眼内レンズ4を眼内へ挿入し得るように構成されている。従って、眼内レンズ挿入器具2は、ロック機構9により、スライダー7で眼内レンズ4を押し出す前に、プランジャー8で眼内レンズ4を押し出してしまうことを確実に防いで、本体6内に設置された眼内レンズ4を、スライダー7、プランジャー8の順で2段階に分けて前方へ移動させながら、折り畳むように構成されている。 (a)本体 本体6は、筒状の基端部材11と、先細形状の先端部材12とからなる。この基端部材11と先端部材12とは、第1連結手段13によって着脱自在に連結され、一体化されている。」 (2)「[0036] 先端部材12は、図5に示すように、第1連結手段13、移行部31及びノズル部32を備え、本体6から押し出された眼内レンズ4を小さく折り畳んで、先端のノズル部32から放出し得るように構成されている。この先端部材12は、基端の外縁に本体6と連結する第1連結手段13が形成されており、レンズ進行軸Aに沿って前方に向かって順に移行部31及びノズル部32が設けられている。」 (3)「[0040] 移行部31は、図6に示すように、内腔40と、移行部底面41と、レールとしての先端レール42とを備え、レンズ設置部15に設置された眼内レンズ4が移動しながら所定形状に折り畳まれるように形成されている。ここで、レールとは、眼内レンズ4の光学部の外縁4cのうちレンズ進行軸Aに平行な部分を下から支え得るように形成されたものとする。」 (4)「[0044] このように構成された移行部31は、先端において、ノズル部32に連通している。ノズル部32は、断面が円形で、先端が前方へ行くに従って下方へ傾斜する形状に形成されてなり、上側にスリット32aが形成されている。」 (5)「[0047] さらに保護部35には、レンズ進行軸Aと移行部底面41とに直行する方向に開口する貫通穴36を備える。該貫通穴36は、基端部材11を先端部材12に組み付けた場合に、レンズ設置部15の先端が当接する位置に設けられている。 (b)スライダー スライダー7は、図7に示すように、レンズ制御手段45と、ロック手段46とを備え、ロック手段46によりプランジャー8が不意に動作するのを防止すると共に、レンズ制御手段45により、レンズ設置部15に設置された眼内レンズ4に対し、第1段階の移動と、変形とを行う。 [0048] レンズ制御手段45は、レンズ押出部47、ガイド溝48、翼部49,49、操作部50,50、ループガイド51、レンズ押え部52、制止片53とを有する。 [0049] レンズ押出部47は、レンズの外形と略同形状の曲率半径を有する円弧の一部により構成され、眼内レンズ4と面接触するように形成されている。」 (6)「[0053] ループガイド51は、スライダー7の先端側であって、前記ガイド溝48が形成されていない他面側に形成されており、眼内レンズ4のループ部(後述する)に相似した平面形状を備える溝で構成されている。ループ部は、ガイド溝48の内部に実質的なストレスがかからない状態で保持される。 [0054] レンズ押え部52は、図8に示すように、レンズ押出部47の上方にヒンジ60を介して傾動可能に設けられている。このレンズ押え部52は、平面視が略矩形状の部材で構成され、上面に摺動体61を一体的に備える。摺動体61は、レンズ進行軸Aに直行する方向に延びたかまぼこ型の部材からなり、湾曲面が上方を向くように配置されている。」 (7)「[0058] 延長部67,67は、係止部66,66からさらに後方へ突出して形成されてなり、レンズ進行軸Aに近づく方向に突設された付勢片69を備える(図7)。付勢片69は、延長部67,67の前方から後方へ行くに従って内側、すなわちレンズ進行軸Aに近づくように傾斜した接続面69aを有し、延長部67,67の後方において、レンズ進行軸Aに平行な保持面69bに接続している。 (c)プランジャー プランジャー8は、図10に示すように、ロッド体71、プランジャー体72、及び、グリップ体73からなり、スライダー7である程度移動させ所定形状に変形させた眼内レンズ4に対し、第2段階の移動及び変形を行い、眼内レンズ4を小さく折り畳んだ状態で、眼内に挿入し得るように構成されている。」 (8)「[0085] このようにして、プランジャー8及びスライダー7がロックされた状態で、レンズ設置部15に眼内レンズ4を設置する(図24)。眼内レンズ4は、一対のループ部4aの一方をスライダー7のループガイド51の溝に位置するように設置して、光学部4bの外縁4cをレンズ設置部15の基端レール28,28上に載置して設置される。基端レール28,28は、設置部底面25より上方へ突出して形成したことにより、眼内レンズ4の光学部の中心付近を設置部底面25に接触させずに載置することができる。従って、眼内レンズ挿入装置1によれば、眼内レンズ4に負荷をかけずに眼内レンズ4を保管することができる。」 (9)図1-2 [図:0001391989000012.jpg] (10) [図:0001391989000013.jpg] (11)[図6] [図:0001391989000014.jpg] (12)[図7] [図:0001391989000015.jpg] (13)[図8] [図:0001391989000016.jpg] (14) [図:0001391989000017.jpg] 以上の記載事項(1)-(14)を総合すると、甲第3号証には、以下の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されている。 (甲3技術) 「先端部材12を備えた眼内レンズ挿入器具2であって、 前記先端部材12は、 ノズル部32と、 ノズル部32の基端部に接続される移行部31であって、眼内レンズ4を小さく折り畳んで先端のノズル部32から放出し得るように構成された移行部31と、 を備え、 ノズル部32の先端が前方へ行くに従って下方へ傾斜する形状に形成されてなり、上側にスリット32aが形成され、前記スリット32a全体が前記移行部31よりも先端側にて形成されている、 眼内レンズ挿入器具2。」 4 本件発明1について (1)対比 本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の「レンズ本体2a」は本件発明1の「光学部」に相当し、以下同様に、「支持部2b」は「支持部」に、「光軸前側が眼内で角膜側に向けられる」は「前面が眼内で角膜側に向けられる」に、「眼内レンズ2」は「眼内レンズ」に、「光軸前側」は「前面側」に、「光軸後側」は「後面側」に、「ノズル本体80」は「挿入部」に、「ノズル部85」は「先端部」に、「ノズル本体80のテーパ部」は「挿入筒部」に、「プランジャ70」は「押出部材」に、「移動方向の軸」は「押出軸」に、「眼内レンズの挿入器具1」は「眼内レンズ挿入器具」に、「後端側」は「基端」又は「基端側」に、「先端71d」は「押出部」に、「切欠部71c」は「係止部」に、「保持」は「係止」に、「傾斜部」は「移行部」に、「後端方向」は「基端方向」に、「第2の面」は「解除斜面」に、「下側方向」は「押出軸から遠ざかる方向」に、それぞれ相当する。 そして、先願発明における「棒状のプランジャ70を移動方向の軸の先端側に押し込む」ことは、本件発明1における「押出部材を押出軸の先端方向に進行させる」ことに相当する。 また、先願発明における、ノズル本体80のテーパ部において「貫通孔80cが眼内レンズ2を上側に凸または下側に凸となるよう変形するためにテーパ状で形成」されることは、本件発明1における、挿入筒部において「その内壁が眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成」されることに相当する。 また、先願発明の眼内レンズ2の挿入方向とプランジャ70の移動方向とは同じであることは明らかであるから、先願発明における「挿入方向に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている」ことは、本件発明1における「押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている」ことに相当する。 また、先願発明における「切欠部71cによって保持された前記支持部2bの光軸後側が向く方向に傾斜して形成される開口端面」は、本件発明1における「前記前面側とは反対側である前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面」に相当する。 さらに、先願発明における「前記眼内レンズ2を眼内に挿入した際に前記支持部2bが前記プランジャ70からより確実に離脱し、前記プランジャ70が前記支持部2bに引っかかるなどの不都合を生じなくされている」と、本件発明1における「前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」とは、「眼内レンズを眼内に挿入した場合に、押出部材が支持部に引っ掛かり難くされている」という限りで一致する。 そして、先願発明の「先端方向を向く第1の面」は、上記1(13)の[図12]よりその近傍に支持部2bが配置されていることが看て取れるから、当該「先端方向を向く第1の面」であって「先端方向かつ下側方向を向く様に傾斜して」いる第1の面と本件発明1の「先端方向を向き前記支持部を係止する基端面」であって「前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されて」いる基端面とは、「先端方向を向き前記支持部が近傍に配置される面」という限りで一致する。 そうすると、両者は、 「光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズを、先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部と、 前記押出部より基端側に設けられ前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部と、 を備え、 前記前面側とは反対側である前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、前記開口部は係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面を有し、 前記開口部の基端には押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、 前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した場合に、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされていると共に、 前記係止部には、先端方向を向き前記支持部が近傍に配置される面と、前記面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している、 眼内レンズ挿入器具。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ア 相違点1 本件発明1が「切り込み部全体が挿入筒部よりも先端側にて形成されて」いるのに対して、先願発明の切り込み部はそのような形状を有していない点。 イ 相違点2 「眼内レンズを眼内に挿入した場合に、押出部材が支持部に引っ掛かり難くされている」に関し、本件発明1が「前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」のに対し、先願発明は眼内レンズ2を眼内に挿入した際に支持部2bがプランジャ70からより確実に離脱し、前記プランジャ70が前記支持部2bに引っかかるなどの不都合を生じなくされている点。 ウ 相違点3 「先端方向を向き支持部が近傍に配置される面」に関し、本件発明1は「前記支持部を係止する基端面」であって「前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されて」いるのに対し、先願発明は先端方向を向く第1の面であって先端方向かつ下側方向を向く様に傾斜している点。 (2)判断 ア 相違点3について 事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。 甲第1号証には、上記1(8)に示したとおり、 「[0066] 本実施例では、さらにプランジャ70が押し込まれることにより、眼内レンズ2はノズル部15の先端部10aに到達する。・・・ [0067] そして、その後、プランジャ70の作用部71は、先端部10aから突出し、切欠部71cも、先端部10aから外部に露出する。そうすると、切欠部71cに保持されていた眼内レンズ2の支持部2bは円滑にプランジャ70から自重で離脱する。これにより、支持部2bがプランジャ70に引っかかるなどの不都合を生じず、より円滑に眼内レンズ2を眼球内に放出することが可能となる。」 と記載されており、すなわち、プランジャ70によって眼内レンズ2を移動させ、プランジャ70の切欠部71cがノズル本体10の先端部10aから外部に露出すると、切欠部71cに保持されていた眼内レンズ2の支持部2bが円滑にプランジャ70から自重で離脱することが記載されている。 ここで、甲第1号証に記載された先願発明は、切欠部71cに形成される第1の面であって、先端方向を向き支持部2bが近傍に配置され、プランジャ70の側面視において、先端方向かつ下側方向を向くように傾斜している第1の面を備えている。そして、上記1(13)の図11から、プランジャ70を押し込んで切欠部71cを先端部10aから外部に露出する過程において、支持部2bが第1の面に接した場合、支持部2bに下方向、すなわち、プランジャから離脱する方向へ力がかかることは、力学上自明である。 よって、先願発明の第1の面が、プランジャ70の側面視において先端方向かつ下側方向を向くように傾斜していることは、「眼内レンズ2の支持部2bは円滑にプランジャ70から自重で離脱する。これにより、支持部2bがプランジャ70に引っかかるなどの不都合を生じず、より円滑に眼内レンズ2を眼球内に放出することが可能となる」ことに資するものといえるから、先願発明の「第1の面」と本件発明1の「基端面」とは、その作用及び構造において異なるものである。 そして、先願発明の「第1の面」を、上記のように作用及び構造が異なる本件発明1の「基端面」とすることは、課題解決のための具体化手段における微差ではなく、両者は実質同一でもない。 よって、上記相違点3は実質的な相違点である。 なお、申立人が主張する周知技術について検討すると、支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部を押出部材が備え、前記係止部に形成された基端面が、先端方向を向いて前記支持部を係止し、かつ、前記押出部材の側面視において、眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように押出軸に対して垂直に形成されていることは、甲第2号証にも甲第3号証にも記載されておらず、本件発明1の相違点3に係る構成は、周知技術とはいえない。 よって、本件発明1の相違点3に係る構成は、先願発明に対する単なる周知技術の付加又は転換であるともいえない。 甲第3号証には、上記3の(甲3技術)の他に、上記3(5)、(6)、(8)に示したとおり、スライダー7にループ部4aを設置するループガイド51が設けられていることが記載されているが、当該スライダー7は、眼内レンズ挿入器具2の内部で眼内レンズ4を移動させるものであり、眼内レンズを眼内に挿入する「押出部材」であるとはいえない。また、当該ループガイド51はループ部4aの「前面側」と面しているか不明である。 よって、甲第3号証に記載された「ループガイド51」は、本件発明1の「係止部」であるとはいえず、本件発明1の相違点3に係る構成が甲第3号証に記載されているとはいえない。 イ まとめ 上記アのとおり、上記相違点3は、実質的な相違点であるから、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明と実質同一ではない。 5 本件発明4について 本件発明4は、本件発明1の眼内レンズ挿入器具に眼内レンズをあらかじめ充填した眼内レンズ挿入システムである。 これに対し、先願発明も眼内レンズの挿入器具1に予め眼内レンズ2が収納されたプリセット型挿入器具である。 よって、本件発明4と先願発明とを対比すると、上記4(1)ア-ウに記載したのと同様に、上記相違点1-3で相違し、その余の点で一致する。 そして、上記相違点1-3についての判断は、上記4(2)のとおりであるから、本件発明4は、先願発明と同一ではない。 6 小括 以上より、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第184条の13の規定により読み替える同法第29条の2の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 (1)理由2 本件発明1及び4は、甲第4号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)理由3 本件発明1及び4は、甲第5号証に記載された発明及び甲第3号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)理由4 本件発明1ないし4は、明確ではないから、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 <甲号証一覧> 甲第4号証:特表2012-517322号公報 甲第5号証:特開2008-12016号公報 2 甲第4号証に記載された事項及び甲4発明 甲第4号証には、以下の記載事項がある。なお、下線は当審が付した。 (1)「【0013】 図1~図3において描かれた例示的な実施形態において見られるように、使い捨て用の、予め装填された眼内レンズの注入器カートリッジ10が、中に長手方向のボア18を有するチューブ状本体11を含む。眼内レンズ20が、レンズと接触するプランジャー30と一緒に長手方向のボア18内に配置されるように予め設置される。レンズと接触するプランジャー30は、眼内レンズと、カートリッジ10の近位端部16との間において少なくとも実質的に長手方向のボア18内において保持され、且つ、いくつかの実施形態では、注入器ハンドピース(図示せず)の注入器ロッド40と結合するためのソケット32を含むことができる。レンズと接触するプランジャー30は、注入器ハンドピースによってカートリッジの近位端部16内に導入される注入器ロッド40によって係合されると、長手方向のボア18に沿って並進し、且つ、眼内レンズがカートリッジのテーパー部12を通過するように眼内レンズ20を折り畳んで、カートリッジの遠位端部15から患者の眼内に眼内レンズ20を放出する。図3において見られるように、チューブ状本体11の内部は、レンズと接触するプランジャーロッド30を適切な向きに保つべく、(いくつかの実施形態ではチューブ状本体と、又は他の実施形態では、別個に設置された要素と一体形成されうる)プランジャーガイド要素35を含むことができ、プランジャーガイド要素35は、例えば、カートリッジ10内においてプランジャーロッド30の最も内側の端部を「捕捉する」ことによって、又はプランジャーロッド30がカートリッジ10から容易に落下するのを避けるべく単純に十分な摩擦を提供することによって、カートリッジ10内において、レンズと接触するプランジャーロッド30を保持するようにも機能することができる。 【0014】 チューブ状本体11は、眼の手術における使用に適した任意の材料から概して形成され、いくつかの実施形態では、ポリプロピレンのような適切な熱可塑性材料から一個取り又は複数個取りで鋳造されうる。いくつかの実施形態では、熱可塑性材料は、潤滑向上剤、例えば米国特許第5716364号明細書において開示された潤滑向上剤を含むことができる。ノズル14が、様々な実施形態では、丸みを帯び、すなわち、断面において長円又は楕円であり、且つ、遠位先端部15において約1平方ミリメーターほどの小さな断面積を有することができるので、遠位先端部15は眼内における非常に小さな切開創内に挿入されることができる。図1~図3において示される実施形態では、カートリッジ10は、チューブ状本体11から突出する一対の把持部17を含み、これら把持部は、カートリッジ10の容易な取扱いを可能とし、且つ、カートリッジ10が所定の位置にロックされうるように注入器ハンドピースと係合するための機構を提供する。狭い注入部11が、眼内レンズ20が、レンズと接触するプランジャーロッド30によって長手方向のボア18に沿って押されるように、眼内レンズ20を折り畳むように特別に成形されうることが当業者によって理解されるであろう。注入器部分11について多様な適切な設計が可能であり、多様な適切な設計には、これらに限定されるものではないが、米国特許第5947976号明細書(Van Noy等)及び米国特許第6143001号明細書(Brown等)において示されるものが含まれ、これら両方の特許文献の全内容は参照によって本明細書の一部を構成する。 【0015】 上記されたように、いくつかの実施形態では、予め装填されたカートリッジ10のチューブ状本体11は一部品として形成されうる。斯かる実施形態では、眼内レンズ20と、レンズと接触するプランジャーロッド30とは、装置の出荷前に、カートリッジの製造業者によってカートリッジの近位端部16からカートリッジ10内に予め設置されることができる。しかしながら、図4A及び図4Bにおいて描かれたカートリッジ10の実施形態のような他の実施形態では、眼内レンズ20と、レンズと接触するプランジャーロッド30とがより容易に設置されうるように、カートリッジ本体11の一方の面上に配置された開口42が含まれてもよい。これら構成部品が設置された後、開口42は、開口42を覆ってカバー44を設置することによって閉じられることができる。いくつかの実施形態では、カバー44及びチューブ状本体42は、カバー44が所定の位置にスナップ嵌合する(snap into)ように形成されることができ、カバー44は、いくつかの実施形態では、一方の端部においてチューブ状本体11に対するヒンジ連結を形成してもよい。他の実施形態では、カバー44は、レンズと接触するプランジャーロッド30及び/又は眼内レンズ20が設置された後、所定の位置において接着され又は融合されてもよい。 【0016】 図5A及び図5Bは本操作のいくつかの実施形態の基本操作を示す。図5Aでは、注入器ロッド40が、レンズと接触するプランジャーロッド30のソケット32と結合するように注入器ハンドピースによってチューブ状本体11の近位端部16内に導入される。注入器ロッド40の更なる移動によって、レンズと接触するプランジャーロッド30が眼内レンズ20と係合し、いくつかの実施形態では、眼内レンズ20は、予め僅かに折り畳まれた状態で予め設置されることができる。あらゆる場合において、レンズ20が、カートリッジ本体のテーパー部12及びノズル14を通って進むように更に折り畳まれる。最後に、図5Bにおいて示されるように、眼内レンズ20が、ノズル14の遠位先端部15から眼内に絞り出されて、眼内において、折り畳まれた状態からその自然な形状に開く。」 (2)【図1】 [図:0001391989000018.jpg] (3)【図2】 [図:0001391989000019.jpg] (4)【図3】 [図:0001391989000020.jpg] (5)【図5A】 [図:0001391989000021.jpg] (6)【図5B】 [図:0001391989000022.jpg] (7)上記(2)の【図1】ないし(6)の【図5B】からみて、眼内レンズ20は、光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有するものと看て取れ、また、(1)の【0016】の記載から当該眼内レンズ20は、眼内に絞り出されて、眼内において、折り畳まれた状態からその自然な形状に開くものであるから、角膜側に向けられる前面を備え、変形可能なものであると認められる。 (8)上記(1)の【0013】、【0016】の記載から、遠位先端部15から患者の眼内に眼内レンズ20を放出するから、当該遠位先端部15は開口を有するものと認められる。 (9)上記(4)の【図3】から、テーパー部12は、ノズル14の近位端に接続され、その内壁が先細り形状で形成されていると看て取れる。さらに、上記(1)の【0013】の「眼内レンズがカートリッジのテーパー部12を通過するように眼内レンズ20を折り畳んで、カートリッジの遠位端部15から患者の眼内に眼内レンズ20を放出する。」という記載、上記(1)の【0016】の「レンズ20が、カートリッジ本体のテーパー部12及びノズル14を通って進むように更に折り畳まれる。」という記載から、当該テーパー部12の内壁は、眼内レンズ20を折り畳むのに資するものと認められる。 (10)上記(3)の【図2】及び(8)で認定した事項から、遠位先端部15に設けられた開口は、長手方向に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されていることが看て取れる。 (11)上記(1)の【0014】の「眼内レンズ20が、レンズと接触するプランジャーロッド30によって長手方向のボア18に沿って押される」という記載、及び、上記(7)の認定事項、(2)の【図1】、(4)の【図3】ないし(6)の【図5B】からみて、プランジャーロッド30は、先端側に設けられ光学部を押す接触部を備えていると認められる。 以上の記載事項(1)-(6)及び認定事項(7)-(11)を総合すると、甲第4号証には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。 (甲4発明) 「光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズ20を、遠位先端部15に開口を有するチューブ状本体11でプランジャーロッド30によって長手方向のボア18に沿って押されることで眼内に放出する注入器カートリッジ10であって、 前記チューブ状本体11は、 ノズル14と、 ノズル14の近位端に接続されるテーパー部12であって、その内壁が前記眼内レンズ20を折り畳むのに資する先細り形状で形成されたテーパー部12と、 前記眼内レンズ20を放出するために前記ノズル14の遠位先端部15に設けられる開口であって、長手方向に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口と、 を備え、 前記プランジャーロッド30は、 先端側に設けられ前記光学部を押す接触部と、 を備える、 注入器カートリッジ10。」 3 甲第5号証に記載された事項及び甲5発明 甲第5号証には、以下の記載事項がある。なお、下線は当審が付した。 (1)「【0030】 (実施例1) (1)眼内レンズ挿入用器具の基本構成 図1(A)及び(B)において、1は全体として実施例1の眼内レンズ挿入用器具を示し、この眼内レンズ挿入用器具1は、変形可能な眼内レンズ2を眼内に安全かつ速やかに送り出すために使用されるものであり、主に眼内レンズ2が眼内レンズ挿入用器具1内に予めセットされているプリセット型眼内レンズ挿入用器具1である。実際上、この眼内レンズ挿入用器具1は、眼内レンズ2が設置されたレンズ設置部3aを内部に有する本体3と、レンズ設置部3aに設置された眼内レンズ2を押し出すレンズ押出機構4とから構成されている。因みに、本実施例で示す眼内レンズ2は、図2に示すように、上面にフロントカーブFCが形成されているとともに、下面にベースカーブBCが形成された光学部2aと、当該光学部2aと一体成形された2つのループ部2bとから構成されている。 【0031】 図1(A)及び(B)に示したように、本体3は、筒状の基端部材5と、この基端部材5に対し先細の先端部材6とからなる。これら基端部材5及び先端部材6は、係合部7において着脱自在に一体化された構成を有する。尚、本体3の材質は種々のものを用いることができ、例えばステンレス鋼、チタン等の金属だけでなく、合成樹脂等も用いることができる。」 (2)「【0033】 先端部材6は、レンズ設置部3aに設置された眼内レンズ2を眼内へ挿入するノズル部11と、ノズル部11及び基端部材5を接続する移行部12とからなる。移行部12は、先端に向かって先細のすり鉢形状でなり、その先端がノズル部11と連通し、レンズ設置部3aからノズル部11の開口部11aまで眼内レンズ2が通る通路5aを構成し得るようになされている。なお、通路5aには例えば親水性コーティング材によりコーティングが施されており、先端部材6に潤滑液を注入することによりノズル部11から眼内レンズ2をスムーズに放出し得るようになされている。 【0034】 ノズル部11は、その外径が切開創口と略同径に形成される。なお、先端部材6には後述するスライダーを所定位置で停止させるストッパ13が設けられている。このストッパ13は、スライダーの操作部に係止する突起からなる。 【0035】 レンズ押出機構4は、眼内レンズ2を挿入する初期動作を行うスライダー15と、眼内レンズ2を眼内に挿入するプランジャー16とからなり、レンズ設置部3aから眼内レンズ2を押し出すことにより、移行部12を通過させて折り畳み、この状態のままレンズをノズル部11から放出させ得る。 【0036】 図3(A)及び(B)に示すように、スライダー15は、プランジャー16より大きな面積で眼内レンズ2に合わせて円弧状に形成され、当該眼内レンズ2に当接するレンズ当接部20と、前記プランジャー16をレンズ進行軸Aに沿って支持するガイド溝21と、スリット9に係合してスライダー15の押出及び戻し操作を行なうための操作部22(図1(A)及び(B))と、眼内レンズ2のループ部2bを係止することにより当該眼内レンズ2を固定するループガイド23と、レンズ押え部24とを有する。 【0037】 ガイド溝21は、プランジャー16が摺動可能、かつレンズ当接部20よりプランジャー16の先端部分が突出可能に形成される。このガイド溝21は、スライダー15の一面における略中央部分において、長手方向の全長に亘って形成されており、レンズ進行軸Aに沿って平行に延びる溝状の構成を有する。このガイド溝21の断面は、プランジャー16の外形と略同形状に形成される。プランジャー本体25(後述する)は、ガイド溝21の基端から挿通され、ガイド溝21内をスライダー15の長手方向(すなわちレンズ進行方向X)に摺動する。なお、ガイド溝21はレンズ進行軸Aに平行な貫通孔であってもよい。 【0038】 レンズ押え部24は、スライダー15の先端において、ヒンジ機構26を介して側面視で上下方向に揺動自在に設けられており、眼内に眼内レンズ2を挿入する際、当該眼内レンズ2の一面(すなわちフロントカーブFCが形成された面)を押すことにより眼内レンズ2をノズル部11内で一面中央軸を中心に両端部が上側に折り畳まれ、当該眼内レンズ2を水晶体嚢内に挿入し得る形状に変形させ得る。なお、レンズ押え部24は、その先端がヒンジ機構26によって眼内レンズ2から遠ざかる方向に付勢されており、眼内レンズ2が移行部12内を移動する際、眼内レンズ2の一側を押えて眼内レンズ2を一定方向に折り畳むように構成されている。 【0039】 プランジャー16は、スライダー15で折り畳まれた眼内レンズ2を眼内へ挿入するもので、図3(B)に示すように、眼内レンズ2を押し出す角柱状のプランジャー本体25と、このプランジャー本体25の基端に設けられたグリップ部26(図1(A)及び(B))とから構成されている。因みに、グリップ部26は、雌ネジ19aが形成された穴19が設けられおり、雌ネジ19aが係合突起10に螺合することによりグリップ部26が押し込まれ、プランジャー本体25をレンズ進行方向Xに押し込むように構成されている。このようにして眼内レンズ2は、プランジャー16の先端部分に設けた接触部30を介して押され、細いノズル部11を通ることによって折り畳まれた状態で眼内へ挿入され得る。 【0040】 なお、本実施例の場合では、眼内レンズ2のベースカーブBCをレンズ設置部3aの下面側にし、眼内レンズ2のフロントカーブFCをレンズ設置部3aの上面側にして眼内レンズ2をレンズ設置部3aに設置するようにしたが、眼内レンズ2の構造によっては、眼内レンズ2の上面下面を反転させ、眼内レンズ2のフロントカーブFCをレンズ設置部3aの下面側にし、眼内レンズ2のベースカーブBCをレンズ設置部3aの上面側にして眼内レンズ2をレンズ設置部3aに設置するようにしても良い。 【0041】 (2)プランジャー本体の詳細構成 次にプランジャー本体25の詳細構成について以下説明する。プランジャー本体25は、全体が硬化性樹脂材からなる角柱状に形成され、その先端部分に眼内レンズ2と直接接触して当該眼内レンズ2を押し出す四辺状の接触部30が一体成形された構成を有する。実際上、図4(A)に示すように、プランジャー本体25は、下面部31と通路5aの下側内壁33との間に隙間Gを有し、眼内レンズ2の押し出し動作開始前の動作開始位置において接触部30及び下面部31が下側内壁33に非接触となるように配置されている。なお、通路5aは、通路内壁としての下側内壁33が水平面状に形成されているとともに、上側内壁34が基端部材5側からノズル部11側へゆくに従って次第に傾斜しており、基端部材5側の径よりもノズル部11側の径が縮径された構成を有する。」 (3)「【0044】 ところで、プランジャー本体25は、図4(A)~(D)に示すように、レンズ進行方向Xに向かって通路5a内を移動可能に設けられ、これにより接触部30を介して眼内レンズ2を押し出すように構成されている。なお、図4(A)~(D)においては、プランジャー本体25によって眼内レンズ2を押し出す一連の押し出し動作と、当該押し出し動作に応じた接触部30の状態とを分かり易くするために、便宜上、上述したスライダー15については図示せずに、通路5a内におけるプランジャー本体25の先端部分と、当該通路5a内でスライダー15により折り畳まれた状態の眼内レンズ2とのみを示したものである。 【0045】 実際上、図4(B)に示すように、接触部30は、プランジャー本体25がレンズ進行方向Xへ押されると、先ず始めに傾動突起部38の一面部が眼内レンズ2の端部に当接し、さらにプランジャー本体25がレンズ進行方向Xへ押されてゆくと、図4(C)に示すように、眼内レンズ2からの反力によって傾動突起部38が撓るようにして折れ曲がり、これにより先端が通路5aの下側内壁33に当接するとともに、当該傾動突起部38の他面部が下面切り欠き部37の壁部40に当接し得るようになされている。 【0046】 ここで、この実施例の場合においては、下面切り欠き部37の壁部40がほぼ鉛直方向に延びる平面形状に形成され、傾動突起部38が当該壁部40に当接することにより当該傾動突起部38の移動を規制し、図5(B)に示すように、傾動突起部38をほぼ鉛直方向に支持し得るようになされている。かくして傾動突起部38は、プランジャー本体25の下面部31と通路5aの下側内壁33との間に形成された隙間Gを接触部30において確実に塞ぐことができるようになされている。 【0047】 また、凸部36の下側傾斜面は、仮に眼内レンズ2が浮き上がり始めたとしても、当該眼内レンズ2の上側に当接するように構成されており、レンズ進行方向Xに眼内レンズ2を押し込むときに当該下側傾斜面が眼内レンズ2を下方へ押し付けることにより眼内レンズ2が浮き上がることを防止し得るようになされている。 【0048】 そして、図4(D)に示すように、接触部30は、さらにプランジャー16がレンズ進行方向Xに押されることにより、傾動突起部38に対して下側内壁33との間で摺動抵抗が生じるとともに、眼内レンズ2からの反力が加わり、図5(C)に示すように、当該傾動突起部38の先端が僅かに隙間Gに入り込み、この状態のまま当該傾動突起部38の先端を通路5aの下側内壁33に対して摺動させ得るようになされている。」 (4) [図:0001391989000023.jpg] (5) [図:0001391989000024.jpg] (6) [図:0001391989000025.jpg] (7) [図:0001391989000026.jpg] (8)上記(1)の【0030】の「光学部2aと一体成形された2つのループ部2b」という記載及び(5)の【図3】から、2つのループ部2bは、光学部2aの周辺部から外側に伸びていることが認められる。また、(1)の【0016】の記載から当該眼内レンズ2は、眼内に送り出されるものであるから、角膜側に向けられる前面を備えると認められる。 (9)上記(4)の【図1】から、開口部11aは、レンズ進行軸Aに直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されていることが看て取れる。 (10)上記(2)の【0039】の「眼内レンズ2は、プランジャー16の先端部分に設けた接触部30を介して押され」という記載、及び、上記(7)の【図4】から、接触部30は、眼内レンズ2の光学部2aを押しているものと認められる。 以上の記載事項(1)-(7)及び認定事項(8)-(10)を総合すると、甲第5号証には、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。 「光学部2aと前記光学部2aの周辺部から外側に伸びるループ部2bとを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズ2を、先端に開口部11aを有する先端部材6に角柱状のプランジャー16をレンズ進行軸Aのレンズ進行方向Xに向かって移動させることで眼内に押し出し、さらに眼内レンズ2を挿入する初期動作を行うスライダー15を備える眼内レンズ挿入用器具1であって、 前記先端部材6は、 ノズル部11と、 その先端が前記ノズル部11と連通される移行部12であって、前記眼内レンズ2を折り畳むことができる先細のすり鉢形状でなる移行部12と、 前記眼内レンズ2を押し出すために前記ノズル部11の先端に設けられる開口部11aであって、レンズ進行軸Aに直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部11aと、 を備え、 前記プランジャー16は、 レンズ進行軸Aの先端部分に設けられ前記光学部2aを押す接触部30と、 を備え、 前記スライダー15は、 前記ループ部2bを係止することにより前記眼内レンズ2を固定するループガイド23と、 を備える、 眼内レンズ挿入用器具1。」 4 理由2について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「眼内レンズ20」は本件発明1の「眼内レンズ」に相当し、以下同様に、「遠位先端部15」は「先端」に、「チューブ状本体11」は「筒状の挿入部」及び「挿入部」に、「プランジャーロッド30」は「棒状の押出部材」及び「押出部材」に、「長手方向のボア18に沿って押されること」は「押出軸の先端方向に進行させること」に、「放出する」は「挿入する」及び「排出する」に、「注入器カートリッジ10」は「眼内レンズ挿入器具」に、「ノズル14」は「先端方向に伸びる筒状の先端部」及び「先端部」に、「近位端」は「基端」に、「テーパー部12」は「挿入筒部」に、「その内壁が前記眼内レンズ20を折り畳むのに資する先細り形状で形成された」は「その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された」に、「開口」は「開口部」に、「先端側に設けられ前記光学部を押す接触部」は「押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部」に、それぞれ相当する。 そうすると、両者は、 「光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズを、先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部と、 を備える、 眼内レンズ挿入器具。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)相違点1 押出部材に関し、本件発明1は、押出部より基端側に設けられ支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部であって、さらに、開口端面の傾斜方向と略同方向に形成される係止部であって、先端方向を向き前記支持部を係止する基端面と、前記基端面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されており、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している係止部を備えているのに対し、甲4発明は、そのような係止部を備えているか不明な点。 (イ)相違点2 開口部に関し、本件発明1は、前面側とは反対側である支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成され、押出部に係止部が形成される向きと略同方向に形成される開口端面を有しているのに対し、甲4発明は、そのような開口端面を有しているか不明な点。 (ウ)相違点3 開口部に関し、本件発明1は、その基端に押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、前記切り込み部全体が挿入筒部よりも先端側にて形成されているのに対し、甲4発明は、そのような切り込み部が形成されているか不明な点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲第4号証には、上記2(2)の【図1】や(4)の【図3】ないし(6)の【図5B】から、眼内レンズ20の支持部とプランジャーロッド30とが一部重なって見える部分があることは看て取れるが、当該重なって見える部分で両者が係止されているか否かは明かでない。よって、プランジャーロッド30が係止部を備えているか不明である。 また、上記第4の2及び3、さらに第4の4(2)アにて示したように、甲第2号証にも甲第3号証にも、本件発明1に係る「係止部」は記載されていない。さらに、後述するように、甲第5号証にも本件発明1に係る「係止部」は記載されていない。 よって、甲4発明に甲2技術及び甲3技術を適用して、本件発明1の相違点1に係る構成が容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。 (イ)まとめ 上記(ア)のとおり、本件発明1の相違点1に係る構成が容易に想到し得るとする理由は、見いだせないから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲4発明及び甲2技術、甲3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1の眼内レンズ挿入器具に眼内レンズをあらかじめ充填した眼内レンズ挿入システムである。 よって、本件発明4と甲4発明とを対比すると、少なくとも上記(1)ア(ア)-(ウ)に記載したのと同様に、上記相違点1-3で相違する。 そして、上記相違点1-3についての判断は、上記(1)イのとおりであるから、結局、本件発明4は、当業者が甲4発明及び甲2技術、甲3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由2によっては、本件発明1及び4に係る特許を取り消すことはできない。 5 理由3について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「光学部2a」は本件発明1の「光学部」に相当し、以下同様に、「ループ部2b」は「支持部」に、「眼内レンズ2」は「眼内レンズ」に、「開口部11a」は「開口」及び「開口部」に、「先端部材6」は「筒状の挿入部」及び「挿入部」に、「角柱状」は「棒状」に、「プランジャー16」は「押出部材」に、「レンズ進行軸A」は「押出軸」に、「レンズ進行方向Xに向かって移動させる」は「先端方向に進行させる」に、「押し出し」は「挿入する」に、「眼内レンズ挿入用器具1」は「眼内レンズ挿入器具」に、「ノズル部11」は「先端方向に伸びる筒状の先端部」に、「その先端が前記ノズル部11と連通される移行部12」は「先端部の基端に接続される挿入筒部」に、「眼内レンズ2を折り畳むことができる先細のすり鉢形状でなる移行部12」は「その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部」に、「押し出す」は「排出する」に、「先端部分」は「先端側」に、「押す」は「押し出す」に、「接触部30」は「押出部」に、それぞれ相当する。 そうすると、両者は、 「光学部と前記光学部の周辺部から外側に伸びる支持部とを有し前面が眼内で角膜側に向けられる変形可能な眼内レンズを、先端に開口を有する筒状の挿入部に棒状の押出部材を押出軸の先端方向に進行させることで眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、 前記挿入部は、 先端方向に伸びる筒状の先端部と、 前記先端部の基端に接続される挿入筒部であって、その内壁が前記眼内レンズを小さく変形するための先細り形状で形成された挿入筒部と、 前記眼内レンズを排出するために前記先端部の先端に設けられる開口部であって、押出軸に直交する方向からみて斜めにカットされた形状で形成されている開口部と、 を備え、 前記押出部材は、 押出軸の先端側に設けられ前記光学部を押し出す押出部と、 を備える、 眼内レンズ挿入器具。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)相違点1 押出部材に関し、本件発明1は、押出部より基端側に設けられ支持部の前面側と面して前記支持部を係止する係止部であって、さらに、開口端面の傾斜方向と略同方向に形成される係止部であって、先端方向を向き前記支持部を係止する基端面と、前記基端面よりも先端側において基端方向を向く解除斜面と、が形成されており、前記押出部材の側面視において、前記基端面は、前記眼内レンズを押し出す際に前記支持部が後方に伸びて前記押出部材に絡みつくことが抑制されるように前記押出軸に対して垂直に形成されており、前記解除斜面は、基端方向かつ前記押出軸から遠ざかる方向を向くように傾斜している係止部を備えているのに対し、甲5発明は、そのような係止部を備えているか不明な点。 (イ)相違点2 開口部に関し、本件発明1は、前面側とは反対側である支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成される開口端面であって、係止部によって係止された前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成され、押出部に係止部が形成される向きと略同方向に形成される開口端面を有しているのに対し、甲5発明は、そのような開口端面を有しているか不明な点。 (ウ)相違点3 開口部に関し、本件発明1は、その基端に押出軸の基端方向に向けてV字状に切り込まれた切り込み部が形成されており、前記切り込み部全体が挿入筒部よりも先端側にて形成されているのに対し、甲5発明は、そのような切り込み部が形成されているか不明な点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲5発明は、スライダー15がループ部2bを係止するループガイド23を備えているが、当該スライダー15は、眼内レンズ挿入用器具1の内部で眼内レンズ2を移動させるものであり、眼内レンズを眼内に挿入する「押出部材」であるとはいえない。また、当該ループガイド23はループ部2bの「前面側」と面しているか不明である。 よって、甲5発明の「ループガイド23」は、本件発明1の「係止部」であるとはいえない。 また、上記第4の3、及び第4の4(2)アにて示したように、甲第3号証にも、本件発明1に係る「係止部」は記載されていない。さらに、上記第4の2、及び上記2、4(1)イ(ア)にて示したように、甲第2号証、甲第4号証にも本件発明1に係る「係止部」は記載されていない。 よって、甲5発明に甲3技術を適用して、本件発明1の相違点1に係る構成が容易に想到し得るとする理由は、見いだせない。 (イ)まとめ 上記(ア)のとおり、本件発明1の相違点1に係る構成が容易に想到し得るとする理由は、見いだせないから、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲5発明及び甲3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1の眼内レンズ挿入器具に眼内レンズをあらかじめ充填した眼内レンズ挿入システムである。 よって、本件発明4と甲5発明とを対比すると、少なくとも上記(1)ア(ア)-(ウ)に記載したのと同様に、上記相違点1-3で相違する。 そして、上記相違点1-3についての判断は、上記(1)イのとおりであるから、結局、本件発明4は、当業者が甲5発明及び甲3技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)小括 以上のとおり、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、上記理由3によっては、本件発明1及び4に係る特許を取り消すことはできない。 6 理由4について 本件訂正前の請求項1の「前記係止部によって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」との記載について、当該記載では具体的にどのような構成で押出部材が支持部に引っ掛かり難くしているのか明確でなかった。 これに対して、本件訂正が認められることによって、上記記載は「前記係止部が前記支持部の前面側と面して前記支持部を係止し、前記開口端面が前記支持部の後面側が向く方向に傾斜して形成されており、前記開口端面の傾斜方向と前記押出部に前記係止部が形成される向きとが略同方向であることによって、前記眼内レンズを眼内に挿入した後に前記眼内レンズ挿入器具を眼外へと引き戻すときに、前記押出部材が前記支持部に引っ掛かり難くされている」と訂正され、押出部材が支持部に引っ掛かり難くするための構成が具体的に特定され、当該記載は明確となった。 本件発明1を引用する本件発明2についても同様である。また、同様の記載に訂正された本件発明3及び4についても同様である。 よって、上記理由4は、理由のないものとなり、上記理由4によっては、本件発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700409

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